説明

光硬化型不飽和ポリエステル組成物の硬化物の製造法

【目的】 光重合開始剤を用いることなく淡色または淡黄色透明な硬化物色相が得られる光硬化型ポリエステル組成物の硬化法を提供する。
【構成】 ジシクロペンタジエン、不飽和二塩基酸を含む酸成分及びアルコール成分、さらに必要に応じて水を反応させて得られる不飽和ポリエステルを主成分とする光硬化型不飽和ポリエステル組成物を光の照射によって硬化させる硬化物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光硬化型不飽和ポリエステル組成物の硬化物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、不飽和ポリエステル樹脂の硬化法には、■重合開始剤を添加し、加温して硬化する方法、■重合開始剤とともに促進剤を添加し、加温若しくは常温で硬化する方法及び■光重合開始剤を添加して光の存在下において硬化する方法がある。これらのうち、常温で硬化する方法は、経済的に望ましいばかりでなく、加熱を避けなければならない木材製品などの加工製品の製造に際して特に必要な方法であり、重合開始剤と促進剤の種々の組合せが提案されている。
【0003】重合開始剤と促進剤の組合せとしては、例えば、過酸化ベンゾイルとジアルキルアニリンやトルイジン誘導体の組合せ、メチルエチルケトンパーオキサイドとナフテン酸コバルト又はそれらにジアルキルアニリンやトルイジン誘導体を加えた組合せなどが知られている。しかし、これらの促進剤を用いた場合には、硬化物の色相が黄褐色又は淡赤紫色を呈するという欠点があり、例えば、ボタン、化粧板などのように硬化物の色相が特に問題となるように製品には用いることができなかった。一方、光重合開始剤を添加して光の存在下において硬化する方法は、常温でも硬化することができ、淡色又は淡黄色の硬化物を得ることができるが、コスト高となり、工業生産において難しい問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来技術の問題点を解消し、常温で硬化でき、淡色または淡黄色透明な硬化物の色相が得られ、コスト的に安価なポリエステル樹脂硬化物を生成しうる光硬化型ポリエステル組成物の硬化物の製造法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ジシクロペンタジエンを反応成分に加えた不飽和ポリエステルが上記目的に合致するものであることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、ジシクロペンタジエン、不飽和二塩基酸を含む酸成分及びアルコール成分、さらに必要に応じて水を反応させて得られる不飽和ポリエステルを主成分とする光硬化型不飽和ポリエステル組成物を光の照射によって硬化させることを特徴とする硬化物の製造法に関する。
【0006】本発明に用いられる不飽和ポリエステルは、ジシクロペンタジエン、不飽和二塩基酸を含む酸成分及びアルコール成分、さらに必要に応じて水を公知の方法により反応させて得られるものである。酸成分として、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸の1種又は2種以上が用いられ、さらに、必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸等の飽和二塩基酸、安息香酸、トリメリット酸等の二塩基酸以外の酸などを併用することもできる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノール、1,6−ヘキサジンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上が用いられ、さらに、必要に応じてグリセリン、ペンタエリスリトール等のグリコール以外のアルコールを併用することもできる。
【0007】本発明に用いる不飽和ポリエステルは、光硬化性の点から、ジシクロペンタジエンを不飽和二塩基酸:ジシクロペンタジエンのモル比で1:0.1〜2の割合で反応させて得られるものであることが好ましい。
【0008】本発明に用いる不飽和ポリエステルを製造するには、ジシクロペンタジエン、酸成分及びアルコール成分を混合して反応させ、重合させてもよいが、ジシクロペンタジエンと不飽和二塩基酸とを混合し、加熱して付加重合させた後、アルコール成分を添加し、エステル化するのが好ましい。ここで、付加重合に際して、ハイドロキノン等の重合禁止剤を使用することもできる。また、反応材料に、水を使用することもできる。エステル化は、光硬化性から生成するポリエステルは酸価20〜40の範囲とすることが好ましい。
【0009】本発明における不飽和ポリエステル組成物は、さらに架橋性モノマーを含むことができる。ここで、架橋性モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、酢酸ビニル、ジアクリルフタレートなどが挙げられる。この架橋性モノマーの配合量には特に制限はなく、反応性、作業性、その他種々の目的に応じて調整することができるが、一般には、不飽和ポリエステル組成物の総量を100重量部として不飽和ポリエステル100〜40重量部に対して架橋性モノマーを0〜60重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0010】上記のようにして得られる不飽和ポリエステル組成物は、光の照射により硬化することができる。すなわち、本発明の不飽和ポリエステル組成物は、光重合開始剤を用いなくても、光の存在だけで常温又は高温で光重合し、淡色あるいは淡黄色で透明な硬化物を生じる。
【0011】したがって、本発明の不飽和ポリエステル組成物は、種々の成形材料や塗料として好適であり、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ガラス繊維等の補強剤、ナフテン酸コバルト等の硬化促進剤、エロジール等の揺変剤、ワックス等の表面乾燥性付与剤などを含有することができる。
【0012】例えば、本発明の不飽和ポリエステル組成物を塗料として使用する場合には、目的に応じて所望の添加剤を添加した後、該組成物を基材上にスプレー、刷毛塗り、フローコーター、ロールコーター、浸漬等の方法で塗布した後、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、空気雰囲気下又は不活性ガス及び空気雰囲気下で、光を照射して硬化させることができる。このとき使用される光源としては、太陽光、人工光源からなるカーボンアーク灯、水銀蒸気灯などがあり、200〜7500Å、特に200〜4000Åの波長のものが使用され、電子線によっても硬化が可能である。
【0013】
【実施例】次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において、「部」は特に断らない限り、「重量部」を意味する。
【0014】実施例1加熱装置、温度計、窒素ガス吹き込み装置及び縮合水留出装置を備えた1リットルの反応釜中に無水マレイン酸1.0モル、ジシクロペンタジエン1.0モル、水1.0モル及びハイドロキノン0.07gを仕込み、窒素雰囲気中で攪拌しながら140℃に加熱して付加重合した後、プロピレングリコール0.1モル及びジエチレングリコール0.5モルをさらに仕込んだ。210℃まで加熱し、この温度で酸価が約25になるまで反応させて不飽和ポリエステルを合成した。この不飽和ポリエステル70部をスチレンモノマー30部に溶解させて不飽和ポリエステル組成物を得た。
【0015】実施例2無水マレイン酸0.9モル、無水フタル酸0.1モル、ジシクロペンタジエン0.6モル、プロピレングリコール0.2モル、エチレングリコール0.85モル及びハイドロキノン0.03gを実施例1と同様の合成装置を用いて実施例1と同様にして操作し、酸価30の不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステル70部をスチレンモノマー30部に溶解させて不飽和ポリエステル組成物を得た。
【0016】比較例1無水マレイン酸0.5モル、無水フタル酸0.5モル、プロピレングリコール0.8モル、エチレングリコール0.3モル及びハイドロキノン0.03gを実施例1と同様の合成装置を用いて実施例1と同様にして操作し、酸価33の不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステル70部をスチレンモノマー30部に溶解させて不飽和ポリエステル組成物を得た。
【0017】上記の実施例及び比較例で得られた不飽和ポリエステル組成物を光の照射により硬化物の色相及び硬さを下記の方法で評価し、結果を表1に示す。
■色相各不飽和ポリエステル組成物5gを直径6cmの金属シャーレに入れた後、晴天日に屋外に4時間放置し、色相を目視で観察した。
■硬さ各不飽和ポリエステル組成物120gを20×20cmに切り出したチョップドストランドマット3層に含浸させ、晴天日に屋外に4時間放置し、硬さをバーコル硬度計GYZ−J935で測定した。
【0018】
【表1】


【0019】
【発明の効果】本発明の製造法によれば、光重合開始剤を用いることなく、光の照射によって硬化でき、得られる硬化物は淡色又は淡黄色透明であり、また、コストは安価である。したがって、本発明になる不飽和ポリエステル組成物は、各種の注型材料、ボタン、化粧板、FRP等の成形材料、塗料などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジシクロペンタジエン、不飽和二塩基酸を含む酸成分及びアルコール成分、さらに必要に応じて水を反応させて得られる不飽和ポリエステルを主成分とする光硬化型不飽和ポリエステル組成物を光の照射によって硬化させることを特徴とする硬化物の製造法。
【請求項2】 不飽和ポリエステルを、ジシクロペンタジエンを不飽和二塩基酸:ジシクロペンタジエンのモル比で1:0.1〜2の割合で反応させて得られる不飽和ポリエステルとした請求項1記載の硬化物の製造法。
【請求項3】 不飽和ポリエステル組成物を、さらに架橋性モノマーを含む不飽和ポリエステル組成物とした請求項1記載の硬化物の製造法。