説明

光蓄電装置

【課題】光電変換素子により光電変換可能な波長帯域を広くし、かつ電力使用時が受光時とずれていても対応可能にする。
【解決手段】光蓄電装置1は、光発電部2と、蓄電部3を備えている。光発電部2は第1、第2光電変換素子10,20を含む。各光電変換素子10,20が、半導体層11,21と、導電層12,22と、ランダムな周期の周期構造13cを多数有する金属ナノ構造13,23を含む。第1光電変換素子10の半導体層11は、n型半導体層である。第2光電変換素子20の半導体層21は、p型半導体層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換により発電し、かつ発電した電力を蓄電する光蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、表面プラズモン共鳴を利用した光電変換素子が記載されている。素子の金属層の表面に一様な周期の凹凸構造が形成されている。凹凸構造上に半導体層が積層され、更にその上に透明電極が積層されている。金属層の裏面には他の電極が積層されている。素子に光が入射すると、金属層の凹凸構造側の表面の電子が入射光と共鳴して振動し、電流が発生する。
特許文献2に記載の光電変換素子では、表面に2種以上の微粒子を設け、少なくとも2つの波長帯域で表面プラズモン共鳴を起こすようにしている。
【0003】
また、n型Siに厚さ数μm以上のAuを積層したショットキー型の光センサーによって可視光を検出できることが1960年代から知られている。
非特許文献1には、n型SiにCoSiを積層した光センサーによって1μm〜2μmの近赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献2には、p型SiGeにCoSiを積層した光センサーによって1μm〜5μmの赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献3には、p型SiにPtを積層した光センサーによって1μm〜6μmの赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献4には、SiにIrを積層した光センサーによって10μm以下の光を検出できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−073794号公報
【特許文献2】特開2010−021189号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Roca,Elisenda,et al.,Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering2525(2),456(1995)
【非特許文献2】S.Kolondinski,et al.,Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering2554,175(1995)
【非特許文献3】J.M.Mooney and J.Silverman,IEEE Trans.Electron DevicesED−32,33−39(1985)
【非特許文献4】B−Y.Tsaur,M.M.Weeks,R.Trubiano and P.W.Pellegrini,IEEE Electron Device Left.9,650−653(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1〜4からも明らかな通り、ショットキー型光電変換素子の感応帯域は、ショットキー障壁高さに大きく依存し、金属の種類と半導体の極性(n型かp型)との組み合わせによって異なる。金属/n型Siの場合は、主に可視光域から近赤外域に感度を持っている(非特許文献1参照)。金属/p型Siの場合は、主に赤外域に感度を持っている(非特許文献2,3参照)。また、電力の使用時が、必ずしも受光時ひいては発電時と一致しているとは限らない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換可能な波長帯域を広くして光の利用効率を高め、かつ電力使用時が受光時とずれていても対応できるようにして利便性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光により発電する光発電部と、前記光発電部に接続されて前記発電した電力を蓄電する蓄電部とを備え、前記光発電部が、互いに直列、並列、又は直並列に接続された第1、第2光電変換素子を含み、前記第1、第2光電変換素子の各々が、半導体層と、前記半導体層に積層された導電層と、前記導電層に積層された多数の周期構造を有する金属ナノ構造とを含み、前記各周期構造が前記積層の方向に突出する複数の第1凸部からなり、前記第1凸部の配置間隔が前記周期構造に応じて異なり、前記第1光電変換素子の半導体層が、n型半導体層であり、前記第2光電変換素子の半導体層が、p型半導体層であることを特徴とする。
【0009】
各光電変換素子に光が入射すると、半導体層と導電層とのショットキー接合部において光電変換によりフォトキャリアが生成される。かつ、上記ショットキー接合部の近傍の金属ナノ構造によって光電変換の感度を高めることができる。第1光電変換素子では、可視光域から近赤外域の光に対し感度を高めることができる。第2光電変換素子では、赤外域の光に対し感度を高めることができる。したがって、第1、第2の光電変換素子を組み合わせることによって、光電変換可能な波長帯域を広くでき、光の利用効率を高めることができる。これら光電変換素子にて発電した電力を蓄電部に蓄電しておくことにより、受光中でなくても電力を供給することができる。
【0010】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、互いの厚さ方向に重ねられていてもよい。
そうすると、各光電変換素子の受光面積を十分に大きくすることができる。したがって、受光量ひいては発電量を大きくできる。特に、表側(光の入射側)に配置された光電変換素子の受光量ひいては発電量を十分に大きくできる。第1光電変換素子を表側(光の入射側)に配置してもよく、第2光電変換素子を表側(光の入射側)に配置してもよい。入射光が可視光域から近赤外域に偏っている場合は、第1光電変換素子を表側(光の入射側)に配置することが好ましい。入射光が赤外域に偏っている場合は、第2光電変換素子を表側(光の入射側)に配置することが好ましい。
【0011】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、互いの厚さ方向と直交する面方向に並べられていてもよい。
そうすると、光が第1、第2光電変換素子にそれぞれ直接的に入射するようにできる。したがって、第1、第2光電変換素子の各々が入射光中の感応波長成分を十分に受光して光電変換を起こすことができる。よって、光発電部の発電量を大きくすることができる。
【0012】
前記第1光電変換素子に紫外域に感度を持つn型半導体からなるナノ構造体が設けられていることが好ましい。
これによって、第1光電変換素子の光電変換感度を高めることができる。特に、第1光電変換素子の感応帯域のうち短波長側の感度を高めることができる。紫外域に感度を持つ半導体とは、波長が例えば0.4μm以下の紫外光が照射されるとキャリアが励起される性質を有する半導体を言い、例えばn型半導体である酸化亜鉛(ZnO)が挙げられ、その他、n型の窒化ガリウム(n−GaN)等が挙げられる。n型半導体ナノ構造体は、ナノワイヤー、ナノニードル、ナノチューブ、ナノロッド等のナノ構造になっていることが好ましい。これにより、量子効率を高めることができ、ひいては第1光電変換素子の感度を確実に高めることができる。この結果、発電量を増大できる。
【0013】
前記第2光電変換素子に赤外域に感度を持つp型半導体からなるナノ構造体が設けられていることが好ましい。
これによって、第2光電変換素子における光電変換感度を高めることができる。特に、第2光電変換素子の感応帯域のうち長波長側の感度を高めることができる。赤外域に感度を持つ半導体とは、波長が例えば0.7μm以上の赤外光が照射されるとキャリアが励起される性質を有する半導体を言い、例えばp型の窒化ガリウム(p−GaN)や炭素等が挙げられる。p型半導体ナノ構造体は、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノニードル、ナノチューブ、ナノロッド等のナノ構造いnなっていることが好ましい。これにより、量子効率を高めることができ、ひいては第2光電変換素子の感度を確実に高めることができ、この結果、発電量を増大できる。
【0014】
各光電変換素子の導電層を構成する金属成分として例えばn型Si基板の場合(第1光電変換素子)では、Au、Fe、Co、Pt、W、Ni、Ag、Alが、p型Si基板の場合(第2光電変換素子)では、Ti、In、Zn、Mg、Li、Cuが挙げられる。前記導電層は、金属でもよく、金属と半導体の混合物ないしは合金でもよい。金属と半導体の混合物ないしは合金として、例えば金属シリサイドが挙げられる。前記半導体層がシリコンからなる場合、前記導電層が、前記金属成分と前記半導体層の表層部分とが相互に拡散してなる金属シリサイドであってもよい。上記拡散は、例えばアニール処理によって行なうことができる。上記列記の金属の内、特に(Fe、Co、W、Ni、Ti、Mg)はシリサイド化に適している。
【0015】
各光電変換素子の導電層に正負一対の電極を設け、これら電極を他方の光電変換素子又は蓄電部との接続端子とするのが好ましい。
第1光電変換素子のカソード電極と導電層との間に極性確定層を介在させることが好ましい。第2光電変換素子のアノード電極と導電層との間に極性確定層を介在させることが好ましい。極性確定層は、アルミナ、樹脂等の絶縁体等からなる障壁層であってもよく、素子の半導体層から一体に突出された凸層であってもよい。
第1光電変換素子においては、半導体層と導電層とのショットキー界面でフォトキャリア(電子)が生成され、電子が空乏層に沿って半導体層内を移動する。
第2光電変換素子においては、半導体層と導電層とのショットキー界面でフォトキャリア(正孔)が生成され、正孔が空乏層に沿って半導体層内を移動する。
【0016】
第1光電変換素子において前記極性確定層が絶縁体等からなる障壁層である場合、カソード電極と導電層とが、障壁層を挟んでコンデンサを形成する。これによって、導電層におけるカソード電極と対向する部分に電子が蓄積される。第2光電変換素子において前記極性確定層が絶縁体等からなる障壁層である場合、アノード電極と導電層とが、障壁層を挟んでコンデンサを形成する。これによって、導電層におけるアノード電極と対向する部分に正孔が蓄積される。したがって、アノードになる電極とカソードになる電極を確実に定めることができる。
前記障壁層の厚さは、1nm未満であることが好ましい。これによって、キャリアがトンネル効果等によって障壁層を確実に通過でき、光誘起電流を確実に取り出すことができる。
前記第1光電変換素子において、前記凸層が、前記導電層のカソード電極側の端面とショットキー接触し、かつ前記カソード電極とオーミック接触していることが好ましい。これによって、凸層と導電層とのショットキー接合部においてキャリアの電子が凸層側ひいてはカソード電極へ向けて流れるようにでき、極性を確実に確定できる。
前記第2光電変換素子において、前記凸層が、前記導電層のアノード電極側の端面とショットキー接触し、かつ前記アノード電極とオーミック接触していることが好ましい。これによって、凸層と導電層とのショットキー接合部においてキャリアの正孔が凸層側ひいてはアノード電極へ向けて流れるようにでき、極性を確実に確定できる。
前記導電層の成分組成等を一方の電極から他方の電極に向かう方向に沿って不均一にすることによって、アノードになる電極とカソードになる電極を制御してもよい。
【0017】
前記金属ナノ構造に光が入射すると、プラズモン共鳴が起き、これにより、光誘起電場の増大に寄与する。
前記金属ナノ構造は、ナノサイズの金属微粒子の集合体であることが好ましい。前記金属微粒子を構成する金属としては、Au、Ag、Pt、Cu、又はPdを用いることが好ましい。これら列記の金属元素は、化学的安定性が比較的高く、合金化しにくく、Si等の半導体と化合しにくい。そのため、表面プラズモンを確実に形成できる。
【0018】
前記金属ナノ構造は、前記導電層における前記一対の電極どうし間の部分に設けられていることが好ましく、前記一対の電極どうし間の部分に広く分布していることがより好ましい。
【0019】
前記金属ナノ構造は、例えば次のようにして形成する。前記金属ナノ構造となるべき金属原料を前記導電層上に配置し、アニール処理する。前記金属原料の形状ないし性状は、特に限定が無く、薄膜状、小片状、小塊状、粒状、粉体状、コロイド状、ファイバー状、ワイヤー状、ドット状の何れでもよく、その他の形状ないし性状でもよい。前記アニール処理によって、前記金属原料の微粒子が前記導電層の表面に沿って拡散する。拡散によって前記金属原料の微粒子が多段ないしは多重に枝分かれし、例えばフラクタル構造の集合体になる。これによって、前記金属ナノ構造を容易に形成できる。前記金属ナノ構造の表面には、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸が形成されている。前記金属ナノ構造の表面は、積層方向(厚さ方向)に突出する多数の凸部を含み、例えばクラスター状になる。
【0020】
前記電極を前記金属ナノ構造の金属原料として兼用してもよい。前記電極を構成する金属をアニール処理によって前記電極の周辺にクラスター状又はフラクタル状になるよう拡散させてもよい。そうすると、前記電極の近傍に前記金属ナノ構造を形成できる。この場合、前記電極と前記金属ナノ構造とは、互いに同一の金属成分を含む。
【0021】
前記金属ナノ構造において、前記周期構造がランダムな周期を有していることが好ましい。前記周期構造の周期が変化していることが好ましい。すなわち、前記第1凸部の配置間隔が周期構造に応じて異なっていることが好ましい。これにより、周期構造に応じて異なる波長の光に感応するようにできる。したがって、全体として金属ナノ構造が感応可能な波長域を広くすることができる。よって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ広帯域に対応可能な光電変換素子を提供できる。
【0022】
第1凸部の配置間隔(周期)は、入射光の波長λの約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、波長λの0.1倍程度がより好ましい。又は第1凸部の配置間隔(周期)は、半導体層と導電層とで作るショットキー素子の感応波長の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましい。前記周期構造は、当該周期構造を構成する第1凸部の周期の約1倍〜10倍程度(特に上記周期の10倍程度)の波長λを有する入射光に対し敏感に感応してプラズモン共鳴を起こし、光誘起電場の増幅に寄与する。
第1光電変換素子の周期構造の周期(第1凸部の配置間隔)が、第2光電変換素子の周期構造の周期(第1凸部の配置間隔)より小さいことが好ましい。第1光電変換素子の第1凸部の配置間隔(周期)は、約100nm以下であることがより好ましい(図10参照)。これにより、波長が約1μm以下の赤外光域〜可視光域の光に対し良好な感度を持つことができる。第2光電変換素子の第1凸部の配置間隔(周期)は、約150nm以下であることがより好ましい。これにより、波長が約1μm〜4μmの赤外光に対し良好な感度を持つことができる。
第1凸部の突出高さは、約10nm〜20nm程度であることが好ましい。
【0023】
前記周期構造の少なくとも1つが、ある波長範囲内(好ましくは可視光域から赤外光域)の任意の波長の約0.1倍〜1倍の大きさ(特に0.1倍程度の大きさ)の配置間隔を有することが好ましい。これによって、入射光が上記波長範囲内に含まれていれば、金属ナノ構造の少なくとも1つの周期構造がその入射光に対し感度を持つようにできる。
【0024】
前記金属ナノ構造が、前記第1凸部より大きく突出する複数の第2凸部を更に含み、これら第2凸部が互いに分散し、かつ各第2凸部が、前記周期構造の何れか1つと重なって又は近接して配置されていることが好ましい。
前記金属ナノ構造に光が入射すると、前記ランダム構造を構成する第2凸部どうし間又は第1、第2凸部どうし間に近接場相互作用が起きる(K.Kobayashi,et.al.,Progress in Nano−Electro−Optecs I.ed.M.Ohtsu,p.119(Sptinger−Verlag,Berlin,2003)参照)。この近接場相互作用とプラズモン共鳴との相乗効果によって、光誘起電場を一層増幅させることができ、感度を高めることができる。入射光が微弱であっても、光起電力を高感度に発生させることができる。
【0025】
前記第2凸部の突出高さは、約50nm〜200nm程度であることが好ましい。
前記第2凸部の分散間隔(隣り合う第2凸部どうしの離間距離)は、入射光の波長より大きいことが好ましく、半導体層と導電層とで作るショットキー素子の感応波長より大きいことが好ましい。
第1光電変換素子の第2凸部の分散間隔は、第2光電変換素子の第2凸部の分散間隔より小さいことが好ましい。例えば、第1光電変換素子の前記第2凸部の分散間隔は、1μm以上であることが好ましく、約2μm〜3μm程度であることが好ましい。第2光電変換素子の前記第2凸部の分散間隔は、約3μm〜5μm程度であることが好ましい。これにより、隣り合う第2凸部どうしが干渉して電場を弱めてしまうのを回避できる。
第1光電変換素子の第2凸部の分散間隔の上限は、3μm−5μm程度であることが好ましい。第2光電変換素子の第2凸部の分散間隔の上限は、5μm〜6μm程度であることが好ましい。これによって、第2凸部の存在密度を確保でき、第2凸部との相互作用を生じ得る周期構造の数を確保でき、感応帯域を確実に広くできる。
【0026】
前記金属ナノ構造に炭素化合物等の絶縁体が混在し、金属−絶縁体−金属(M−I−M:metal−insulator−metal)構造が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、可視光域から赤外域にわたる広波長域の光を電力に変換でき、かつ上記電力を蓄電できる。したがって、光発電部により発電していない時又は発電量が小さい時でも、蓄電しておいた電力を供給でき、利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る光蓄電装置の概略構造を示す断面図である。
【図7(a)】実施例1における金属ナノ構造の表面の一箇所をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した画像である。
【図7(b)】実施例1における金属ナノ構造の表面の、図7(a)とは異なる箇所をSEMで観察した
【図8】実施例1における金属ナノ構造の表面構造をAFM(原子間力顕微鏡)にて観察した立体画像である。
【図9】、図8の立体画像の解説図である。
【図10】表面周期構造のフーリエ分解スペクトル(模式図)
【図11】アニーリング温度特性グラフである。
【図12】波長感度特性グラフ(兵庫県立大理学部 高木 芳弘 教授の協力)である。
【図13】波長−太陽放射スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光蓄電装置1を示したものである。光蓄電装置1は、光発電部2と、この光発電部2に接続された蓄電部3とを備えている。光発電部2が、入射光により発電する。蓄電部3が、上記発電した電力を蓄電する。以下、詳述する。
【0030】
光発電部2は、第1光電変換素子10と、第2光電変換素子20を含む。これら光電変換素子10,20が電気的に並列接続されている。
【0031】
第1光電変換素子10は、n型半導体層11と、導電層12と、金属ナノ構造13を含む。n型半導体層11上に導電層12が積層されている。導電層12上に金属ナノ構造13が積層されている。
【0032】
半導体層11は、シリコン(Si)にて構成されているが、これに限られず、Ge、GaAs等の他の半導体にて構成されていてもよい。半導体層11には、P(リン)等のn型不純物がドープされている。半導体層11は、n型半導体を構成している。
【0033】
n型半導体層11は、第1光電変換素子10の基板を兼ねている。半導体層11は、シリコン基板にて構成されている。シリコン基板にn型不純物がドープされている。シリコン基板として、シリコンウェハ等を用いることができる。シリコン基板によって、第1光電変換素子10の保形性が確保されている。基板がn型半導体層11とは別途に設けられていてもよい。例えば、ガラスや樹脂フィルムからなる基板にn型半導体層11が被膜されていてもよい。上記別途の基板の表面にCVD等によってn型半導体層11を成膜してもよい。
【0034】
導電層12は、基板11の表面(図1において上面)の全体を覆っている。導電層12は、金属シリサイドにて構成され、導電性を有している。シリコン基板11の表層のシリコンが自己組織化し、導電層12のシリコン成分を構成している。導電層12を構成する金属成分としては、Au、Fe、Co、Pt、W、Ni、Ag、Alが挙げられるが、これに限定されるものではない。ここでは、導電層12を構成する金属成分として、Coが用いられている。導電層12がCoSixにて構成され、好ましくはCoSiにて構成されている。これにより、導電層12と半導体層11との間に良好なショットキー界面が形成されている。導電層12が、金属成分のみにて構成されていてもよい。導電層12の厚さは、数nm〜数十nm程度であり、好ましくは数nm程度である。図面の導電層12の厚さは、基板11、電極14,15、や金属ナノ構造13等の厚さに対して誇張されている。
【0035】
導電層12の表面(図1において上面)に金属ナノ構造13が設けられている。金属ナノ構造13は、導電層12の表面に広く分布している。ここでは、金属ナノ構造13は、導電層12の表面における後記電極14,15どうしの間の部分(以下「電極間部分」と称す)に配置されており、より好ましくは上記電極間部分の全体に分布している。金属ナノ構造13は、導電層12の一部分にだけ積層されていてもよい。例えば、金属ナノ構造13が、導電層12の電極14又は15の近傍部分にだけ設けられていてもよい。
【0036】
金属ナノ構造13は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属を主成分として構成されている。ここでは、金属ナノ構造13を構成する金属として、Auが用いられている。金属ナノ構造13は、Auリッチの構造物である。金属ナノ構造13を構成する金属に炭素化合物等の絶縁体が混在していてもよく、金属ナノ構造13が前記のM−I−M構造になっていてもよい。
【0037】
金属ナノ構造13の表面には、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸が形成されている。詳述すると、金属ナノ構造13は、Auのナノ微粒子がクラスター状又はフラクタル状に集合した構造になっている(図8及び図9参照)。金属ナノ構造13のAuナノ微粒子の集合体は、第1光電変換素子10の厚さ方向ないしは積層方向(図1において上方)に突出する多数の凸部を含む。これら凸部がクラスター状に集合している。或いは、Auナノ粒子の集合体が多重に枝分かれするよう拡散したフラクタル構造になっている。金属ナノ構造13は、多数の第1凸部13aと、第2凸部13bを含む。上記多数の凸部の一部が第1凸部13aを構成し、他の一部が第2凸部13bを構成している。
【0038】
金属ナノ構造13は、少なくとも1つの周期構造13cを有し、好ましくは複数ないしは多数ないしは無数の周期構造13cを有している。金属ナノ構造13の上記多数の凸部における隣り合う複数の凸部13a,13a…によって1つの周期構造13cが構成されている。各周期構造13cを構成する第1凸部13a,13a…どうしは、素子10の面方向(積層方向と直交する方向)に沿ってある間隔(周期)で配列されている。周期構造13cに応じて第1凸部13aの配置間隔(周期)が異なっている。これら周期構造13cにおける第1凸部13aの配置間隔(周期)は、数十nmから数μm程度が好ましく、約40nm〜100nm程度がより好ましい。この配置間隔(周期)は、入射光Lの波長の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、約0.1倍程度がより好ましい。更に、上記配置間隔(周期)は、n型半導体層11と導電層12とからなるショットキー素子の感応波長(可視光域から赤外光域)の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、約0.1倍程度がより好ましい。金属ナノ構造13は、上記ショットキー素子の感応域内の任意の波長の約0.1倍〜1倍の大きさの配置間隔を有する周期構造を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0039】
更に、金属ナノ構造13には、複数の第2凸部13bが分散して配置されている。各第2凸部13bは、何れかの周期構造13cと重なるように配置されている。又は、各第2凸部13bは、何れかの周期構造13cに近接して配置されている(図10参照)。第2凸部13bは、第1凸部13aより突出高さが大きく、第1凸部13aより尖り度(突出高さと底部の幅の比)が大きい。第2凸部13bの突出高さは、約50nm〜200nm程度であることが好ましい。第2凸部13bどうしの分散間隔は、入射光の波長より大きいことが好ましく、例えば1μm以上であることが好ましく、約2μm〜3μm程度であることが好ましい。第2凸部13bどうしの分散間隔の上限は、3μm〜5μm程度であることが好ましい。
【0040】
導電層12上の互いに離れた位置に一対の電極14,15が配置されている。ここでは、一方の電極14(カソード電極)が、導電層12の上面の一端部(図1において右)に配置されている。他方の電極15(アノード電極)が、導電層12の上面の他端部(図1において左)に配置されている。電極14,15の配置は、上記に限られず、例えば電極14,15の一方が第1光電変換素子10の中央部に配置され、他方が第1光電変換素子10の四隅(周辺部)に配置されていてもよい。
【0041】
電極14,15は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属にて構成されている。ここでは、電極14,15を構成する第2金属として、Auが用いられている。したがって、電極14,15は、金属ナノ構造13を構成する金属成分と同じ金属成分にて構成されている。金属ナノ構造13を構成する金属成分と電極14,15を構成する金属成分とが、互いに異なっていてもよい。2つの電極14,15が互いに異なる金属成分にて構成されていてもよい。
【0042】
カソード電極14と導電層12との間に障壁層16(極性確定層)が介在されている。障壁層16は、アルミナ、SiO、SiN、炭素化合物(例えば樹脂)等の絶縁体にて構成されている。障壁層16の厚さは、トンネル効果を生じ得る程度に十分小さい。例えば、障壁層16の厚さは、オングストロームオーダーすなわち1nm未満である。図面において、障壁層16の厚さは、導電層12や金属ナノ構造13等の厚さに対し誇張されている。
【0043】
電極14と導電層12が、障壁層16を挟んで対峙することによって、コンデンサを構成している。後述するように、導電層12の電極14と対峙する部分には、光電変換にて生じたキャリア(電子)が蓄積される。これにより、電極14がカソードになる。電極15はアノードになる。
【0044】
アノード電極15と導電層12は、直接的に接触している。好ましくは、アノード電極15は、導電層12にオーミック接合している。
【0045】
次に、第2光電変換素子20について説明する。第2光電変換素子20は、第1光電変換素子10と略同様の構造になっている。すなわち、第2光電変換素子20は、半導体層21と、導電層22と、金属ナノ構造23を含む。半導体層21上に導電層22が積層されている。導電層22上に金属ナノ構造23が積層されている。
【0046】
第2光電変換素子20が第1光電変換素子10と異なる点は、半導体層21がp型である点である。半導体層21には、B(ボロン)等のp型不純物がドープされている。半導体層21は、シリコン(Si)にて構成されているが、これに限られず、Ge、GaAs等の他の半導体にて構成されていてもよい。
【0047】
p型半導体層21は、第2光電変換素子20の基板を兼ねている。p型半導体層21は、p型不純物がドープされたシリコン基板にて構成されている。シリコン基板として、シリコンウェハ等を用いることができる。シリコン基板によって、第2光電変換素子20の保形性が確保されている。基板がp型半導体層21とは別途に設けられていてもよい。例えば、ガラスや樹脂フィルムからなる基板にp型半導体層21が被膜されていてもよい。上記別途の基板の表面にCVD等によってp型半導体層21を成膜してもよい。
【0048】
導電層22は、基板21の表面(図1において上面)の全体を覆っている。導電層22は、金属シリサイドにて構成され、導電性を有している。シリコン基板21の表層のシリコンが自己組織化し、導電層22のシリコン成分を構成している。導電層22を構成する金属成分としては、Ti、In、Zn、Mg、Li、Cuが挙げられるが、これに限定されるものではない。ここでは、導電層22を構成する金属成分として、Coが用いられている。導電層22がCoSixにて構成され、好ましくはCoSiにて構成されている。これにより、導電層22と半導体層21との間に良好なショットキー界面が形成されている。導電層22が、金属成分のみにて構成されていてもよい。導電層22の厚さは、数nm〜数十nm程度である。図面の導電層22の厚さは、基板21及び金属ナノ構造23等の厚さに対して誇張されている。
【0049】
導電層22の表面(図1において上面)に金属ナノ構造23が設けられている。金属ナノ構造23は、導電層22の表面に広く分布している。ここでは、金属ナノ構造23は、導電層22の表面における後記電極24,25どうしの間の部分(以下「電極間部分」と称す)に配置されており、より好ましくは上記電極間部分の全体に分布している。金属ナノ構造23は、導電層22の表面の略全体に積層されているのに限られず、導電層22の一部分にだけ積層されていてもよい。
【0050】
金属ナノ構造23は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属を主成分として構成されている。ここでは、金属ナノ構造23を構成する金属として、Auが用いられている。金属ナノ構造23は、Auリッチの構造物である。金属ナノ構造23を構成する金属に炭素化合物等の絶縁体が混在していてもよく、金属ナノ構造23が前記のM−I−M構造になっていてもよい。
【0051】
金属ナノ構造23の表面には、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸が形成されている。詳述すると、金属ナノ構造23は、Auのナノ微粒子がクラスター状又はフラクタル状に集合した構造になっている(図8及び図9参照)。金属ナノ構造23のAuナノ微粒子の集合体は、第2光電変換素子20の厚さ方向ないしは積層方向(図1において上方)に突出する多数の凸部を含む。これら凸部がクラスター状に集合している。或いは、Auナノ粒子の集合体が多重に枝分かれするよう拡散したフラクタル構造になっている。金属ナノ構造23は、多数の第1凸部23aと、第2凸部23bを含む。金属ナノ構造23における上記多数の凸部の一部が第1凸部23aを構成し、他の一部が第2凸部23bを構成している。
【0052】
金属ナノ構造23は、少なくとも1つの周期構造23cを有し、好ましくは複数ないしは多数ないしは無数の周期構造23cを有している。金属ナノ構造23の上記多数の凸部における隣り合う複数の凸部23a,23a…によって1つの周期構造23cが構成されている。各周期構造23cを構成する第1凸部23a,23a…どうしは、素子10の面方向(積層方向と直交する方向)に沿ってある間隔(周期)で配列されている。周期構造23cに応じて第1凸部23aの配置間隔(周期)が異なっている。これら周期構造23cにおける第1凸部23aの配置間隔(周期)は、数十nmから数μm程度が好ましく、第1光電変換素子のそれよりやや大きいことがより好ましく、約60nm〜150nm程度がより好ましい。この配置間隔(周期)は、入射光Lの波長の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、約0.1倍程度がより好ましい。更に、上記配置間隔(周期)は、P型半導体層21と導電層22とからなるショットキー素子の感応波長(赤外光域)の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、約0.1倍程度がより好ましい。金属ナノ構造23は、P型半導体層21と導電層22とからなるショットキー素子の感応域内の任意の波長の約0.1倍〜1倍の大きさの配置間隔を有する周期構造を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0053】
更に、金属ナノ構造23には、複数の第2凸部23bが分散して配置されている。各第2凸部23bは、何れかの周期構造23cと重なるように配置されている。又は、各第2凸部23bは、何れかの周期構造23cに近接して配置されている。第2凸部23bは、第1凸部23aより突出高さが大きく、第1凸部23aより尖り度(突出高さと底部の幅の比)が大きい。第2凸部23bの突出高さは、約50nm〜200nm程度であることが好ましい。第2凸部23bどうしの分散間隔は、入射波長ないしはp型半導体層21と導電層22とからなるショットキー素子の感応波長より大きいことが好ましく、第1光電変換素子10の第2凸部13bの分散間隔より大きいことが好ましい。例えば第2凸部23bどうしの分散間隔は、3μm〜5μm程度であることが好ましい。第2凸部23bどうしの分散間隔の上限は、5μm〜6μm程度が好ましい。
【0054】
導電層22上の互いに離れた位置に一対の電極24,25が配置されている。ここでは、一方の電極24(アノード電極)が、導電層22の上面の一端部(図1において右)に配置されている。他方の電極25(カソード電極)が、導電層22の上面の他端部(図1において左)に配置されている。電極24,25の配置は、上記に限られず、例えば電極24,25の一方が第2光電変換素子20の中央部に配置され、他方が第2光電変換素子20の四隅(周辺部)に配置されていてもよい。
【0055】
電極24,25は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属にて構成されている。ここでは、電極24,25を構成する第2金属として、Auが用いられている。したがって、電極24,25は、金属ナノ構造23を構成する金属成分と同じ金属成分にて構成されている。金属ナノ構造23を構成する金属成分と電極24,25を構成する金属成分とが、互いに異なっていてもよい。2つの電極24,25が互いに異なる金属成分にて構成されていてもよい。電極24,25が、第1光電変換素子10の電極14,15とは異なる金属成分にて構成されていてもよい。
【0056】
アノード電極24と導電層22との間に障壁層26(極性確定層)が介在されている。障壁層26は、アルミナ、SiO、SiN、炭素化合物(例えば樹脂)等の絶縁体にて構成されている。障壁層26の厚さは、トンネル効果を生じ得る程度に十分小さい。例えば、障壁層26の厚さは、オングストロームオーダーすなわち1nm未満である。図面において、障壁層26の厚さは、導電層22や金属ナノ構造23等の厚さに対し誇張されている。
【0057】
電極24と導電層22が、障壁層26を挟んで対峙することによって、コンデンサを構成している。後述するように、導電層22の電極24と対峙する部分には、光電変換にて生じたキャリア(正孔)が蓄積される。これより、電極24がアノードになる。電極25はカソードになる。
【0058】
カソード電極25と導電層22は、直接的に接触している。好ましくは、カソード電極25は、導電層22にオーミック接合している。
【0059】
第1光電変換素子10と第2光電変換素子20が互いの厚さ方向(図1において上下)に重ねられている。ここでは、第1光電変換素子10が表側(光Lの入射側、上側)に配置され、第2光電変換素子20が裏側(下側)に配置されている。光電変換素子10,20どうしの間には若干の隙間が形成されている。
【0060】
各光電変換素子10,20は、光Lの入射方向に対し交差するように配置され、好ましくは上記入射方向に対し略直交するように配置されている。各光電変換素子0,20の金属ナノ構造13,23が表側(光Lの入射側)に向けられ、基板11,21が裏側に向けられている。
【0061】
第1光電変換素子10と第2光電変換素子20が並列に接続されている。
【0062】
蓄電部3は、一対の電極31,32と、これら電極31,32の間に挟まれた誘電体層33を備え、コンデンサを構成している。誘電体層33の材質は、誘電体(絶縁体)であり、例えばアルミナ、樹脂、酸化シリコン、窒化シリコン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。負極31に端子31eが設けられている。正極32に端子32eが設けられている。
【0063】
光発電部2の負極に蓄電部3の負極端子31eが接続されている。光発電部2の正極に蓄電部2の正極端子32eが接続されている。
【0064】
光蓄電装置1の製造方法を説明する。
第1光電変換素子10は、次のようにして作製する。
[第1導電層原料被膜工程]
Pドープのn型シリコン基板11を用意する。基板11上に導電層12の原料成分であるCoを成膜する。Co成膜方法として、スパッタリングや蒸着等のPVD(Physical Vapour Deposition)を採用できる。PVDに限られず、スピンコート等の他の成膜方法にてCoを被膜してもよい。
【0065】
[第1障壁配置工程]
上記Co膜上の第1電極14が配置されるべき位置に、オングストロームオーダーの厚さの絶縁体(例えばアルミナ)からなる障壁層16を配置する。障壁層16の配置は、CVD等の種々の成膜方法にて行なうことができる。
【0066】
[第1電極配置工程]
上記障壁層16上に第1電極14となるAuを設ける。また、Co膜上の第2電極15が配置されるべき位置に第2電極15となるAuを設ける。電極14,15用のAuの配置は、スパッタリング、蒸着等の種々の成膜方法にて行なうことができる。
【0067】
[第1金属ナノ構造原料配置工程]
更に、上記Co膜上の電極14,15間の部分に金属ナノ構造13となる金属原料(Au)を配置する。上記金属原料(Au)の形状ないし性状は、特に限定が無く、薄膜状、小片状、小塊状、粒状、粉体状、コロイド状、ファイバー状、ワイヤー状、ドット状等の何れでもよく、その他の形状ないし性状でもよい。上記金属原料(Au)が薄膜状である場合、例えばスパッタリングや蒸着等のPVDによって成膜することができる。上記電極14,15となるAuの一部を、後記の拡散工程において電極間部分に拡散させて金属ナノ構造13とすることもでき、その場合、金属ナノ構造原料配置工程を省略してもよい。
【0068】
[第1拡散工程]
次に、基板11をアニール処理槽に入れ、アニール処理を行なう。アニール処理の温度条件は、400℃〜800℃程度が好ましく、図11のように、600℃程度がより好ましい。アニール処理は、可及的に100%の不活性ガス雰囲気にて行なう。アニール処理用の不活性ガスとして、He、Ar、Ne等の希ガスを用いることができ、その他、Nを用いてもよい。アニール処理の圧力条件は、大気圧近傍であり、例えば大気圧より数Pa程度低圧である。
【0069】
上記アニール処理によって、基板11の表面部分を構成するSiにCoが拡散する。これにより、Si基板11の表面部分を自己組織化してなるCoSix層12が形成され、半導体層11と導電層12を確実にショットキー接合させることができる。
【0070】
更に、上記アニール処理によって、導電層12上に配置したAuの微粒子が、導電層12の表面に沿ってクラスター又はフラクタルを形成するよう拡散する。すなわち、Au微粒子が多重に枝分かれするよう拡散し、フラクタル構造の集合体になる。集合体の表面は、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸を有し、クラスター状になる。これにより、金属ナノ構造13を自然形成できる。
こうして、第1光電変換素子10を作製できる。
【0071】
次に、第2光電変換素子20の作製手順を説明する。
第2光電変換素子20の作製に際しては、基板としてBドープのp型シリコン基板21を用意する。そして、第1光電変換素子10の作製手順と同様に、p型シリコン基板21に対し、導電層原料被膜工程、障壁配置工程、金属ナノ構造原料配置工程、拡散工程を順次施す。
【0072】
[第2導電層原料被膜工程]
p型シリコン基板21上に導電層22の原料成分であるCoをPVD等によって成膜する。
【0073】
[第2障壁配置工程]
上記Co膜上の第1電極24が配置されるべき位置に、オングストロームオーダーの厚さの絶縁体(例えばアルミナ)からなる障壁層26をCVD等によって成膜する。
【0074】
[第2電極配置工程]
上記障壁層26上に第1電極24となるAuを配置する。また、Co膜上の第2電極25が配置されるべき位置に第2電極25となるAuを配置する。電極24,25用のAuの配置は、スパッタリング、蒸着等の種々の成膜方法にて行なうことができる。
【0075】
[第2金属ナノ構造原料配置工程]
更に、上記Co膜上の電極24,25間の部分に金属ナノ構造23となる金属原料(Au)を配置する。上記金属ナノ構造23の金属原料(Au)の形状ないし性状は、特に限定が無く、薄膜状、小片状、小塊状、粒状、粉体状、コロイド状、ファイバー状、ワイヤー状、ドット状等の何れでもよく、その他の形状ないし性状でもよい。上記金属ナノ構造23の金属原料(Au)が薄膜状である場合、例えばスパッタリングや蒸着等のPVDによって成膜することができる。上記電極24,25となるAuの−部を、後記の第2拡散工程において電極間部分に拡散させて金属ナノ構造23とすることもでき、その場合、第2金属ナノ構造原料配置工程を省略してもよい。
【0076】
[第2拡散工程]
次に、基板21をアニール処理槽に入れ、アニール処理を行なう。アニール処理の温度条件は、400℃〜800℃程度が好ましく、図11のように、600℃程度がより好ましい。アニール処理は、可及的に100%の不活性ガス雰囲気にて行なう。アニール処理用の不活性ガスとして、He、Ar、Ne等の希ガスを用いることができ、その他、Nを用いてもよい。アニール処理の圧力条件は、大気圧近傍であり、例えば大気圧より数Pa程度低圧である。
【0077】
上記アニール処理によって、基板21の表面部分を構成するSiにCoが拡散する。これにより、Si基板21の表面部分を自己組織化してなるCoSix層22が形成され、半導体層21と導電層22を確実にショットキー接合させることができる。
【0078】
更に、上記アニール処理によって、導電層22上に配置したAuの微粒子が、導電層22の表面に沿ってクラスター又はフラクタルを形成するよう拡散する。すなわち、Au微粒子が多重に枝分かれするよう拡散し、フラクタル構造の集合体になる。集合体の表面は、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸を有し、クラスター状になる。これにより、金属ナノ構造23を自然形成できる。
こうして、第2光電変換素子20を作製できる。
【0079】
第1光電変換素子10の製造と第2光電変換素子20の製造を併行して行なってもよい。例えば、基板11,21を共通のアニール処理槽に入れ、第1、第2拡散工程を同時に行なってもよい。
【0080】
上記のようにして作製した第1光電変換素子10及び第2光電変換素子20を並列接続する。更に、光発電部2と蓄電部3を接続する。こうして、光蓄電装置1を作製できる。
【0081】
上記光蓄電装置1の動作を説明する。
光Lが第1光電変換素子10に入射する。これにより、第1光電変換素子10において光電変換が起き、電力が発生する。第1光電変換素子10を透過した光Lが更に第2光電変換素子20に入射する。これにより、第2光電変換素子20において光電変換が起き、電力が発生する。光電変換素子10,20で発生した電力が蓄電部3に蓄電される。よって、受光中ひいては発電中でなくても電力を供給することができる。
光蓄電装置1は、各光電変換素子10,20の面積を光蓄電装置1の設置面積と略同じ大きさにすることができる。したがって、受光効率を十分に高くできる。
【0082】
光電変換素子10,20の作用を更に詳述する。
第1光電変換素子10では、入射光Lによってn型半導体層11と導電層12のショットキー接合部でフォトキャリアが発生する。特に、n型の第1光電変換素子10は、入射光Lのうち可視光域から近赤外域(具体的には波長約0.4μm〜2μm程度)の光に対し感度を持つ(図12参照)。
【0083】
上記フォトキャリアの電子は、空乏層の電界によってn−Si層11側へ移動する。これに伴って、電極15から導電層12に電子が流れ込む。電極15と導電層12との間では、電流がスムーズに流れ得る。導電層12に沿って電子が電極14側へ流れる。導電層12における電極14と対向する部分には電子が蓄積される。この電子は、トンネル効果により障壁層16を潜り抜け、電極14に移動することができる。これにより、光誘起電流を取り出すことができる。したがって、電極14がカソードになる。電極15がアノードになる。このようにして、アノードになる電極15とカソードになる電極14を確定でき、光誘起電流の向きを制御できる。よって、電流−電圧特性を正側と負側で確実に非対称にでき、障壁電圧が向上したダイオード特性を得ることができる。
【0084】
光誘起電場が導電層12の面方向に沿って形成されるため、キャリアが上記面方向に加速され、化合物半導体レベルの高速で移動できる。
【0085】
さらに、上記ショットキー接合部の近傍の金属ナノ構造13によって、第1光電変換素子10の光電変換の感度を高めることができる。金属ナノ構造13を構成するAuナノ微粒子の表面にはプラズモンが局在する。この表面プラズモンと入射光が共鳴し、大きな電場が発生する。金属ナノ構造13の周期構造13cは、その周期(第1凸部13aの配置間隔)に応じた波長の入射光に対する光電変換の感度を高める。周期構造13cは、その周期の約1倍〜10倍程度、特に約10倍の波長の入射光に対し敏感に感応してプラズモン共鳴を起こす。第1凸部13aの周期は周期構造13cに応じて異なるから、金属ナノ構造13が感応可能な波長域を広くすることができる。更に、第2凸部13bの周囲に近接場光が発生する。この近接場光と上記周期構造13cによるプラズモン共鳴との相乗効果によって、大きな光誘起電場を発生させることができる。これによって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ波長の光に対し敏感に感応し、光電変換を確実に起こすことができる。入射光が微弱であっても、光起電力を高感度に発生させることができる。第2凸部13bの分散間隔を入射光の波長(可視光域〜赤外光域)より大きくし、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm〜3μmとすることによって、隣接する第2凸部13b,13bどうしが干渉して電場を弱めるのを回避できる。第2凸部13bの分散間隔の上限を3μm〜5μmとすることによって、第2凸部13bの存在密度を高く維持でき、第2凸部13bとの相互作用を生じ得る周期構造13cの数を確保でき、感応帯域を確実に広くできる。よって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ広帯域に対応可能な光電変換素子1を提供できる。
【0086】
第1光電変換素子10に入射した光Lのうち一部が第1光電変換素子10を透過する。透過光は、主に第1光電変換素子10の感応帯域外の波長を有している。第1光電変換素子10を構成する膜12,13を薄くすることで、上記透過光を確実に得ることができる。
【0087】
上記透過光が、第2光電変換素子20に入射する。これによって、p型半導体層21と導電層22のショットキー結合部でフォトキャリアが発生する。特に、p型の第2光電変換素子20は、赤外域(具体的には波長約1μm〜4μm程度)の光に対し感度を持つ。
【0088】
上記フォトキャリアの正孔は、空乏層の電界によってp−Si層21側へ移動する。これに伴って、電極25から導電層22に正孔が流れ込む。電極25と導電層22との間では、電流がスムーズに流れ得る。導電層22に沿って正孔が電極24側へ流れる。導電層22における電極24と対向する部分には正孔が蓄積される。この正孔は、トンネル効果により障壁層26を潜り抜け、電極24に移動することができる。これにより、光誘起電流を取り出すことができる。したがって、電極24がアノードになる。電極25がカソードになる。このようにして、アノードになる電極24とカソードになる電極25を確定でき、光誘起電流の向きを制御できる。よって、電流−電圧特性を正側と負側で確実に非対称にでき、障壁電圧が向上したダイオード特性を得ることができる。
【0089】
光誘起電場が導電層22の面方向に沿って形成されるため、キャリアが上記面方向に加速され、化合物半導体レベルの高速で移動できる。
【0090】
さらに、上記ショットキー接合部の近傍の金属ナノ構造23によって、第2光電変換素子20の光電変換の感度を高めることができる。金属ナノ構造23を構成するAuナノ微粒子の表面にはプラズモンが局在する。この表面プラズモンと入射光が共鳴し、大きな電場が発生する。金属ナノ構造23の周期構造23cは、その周期(第1凸部23aの配置間隔)に応じた波長の入射光に対する光電変換の感度を高める。周期構造23cは、その周期の約1倍〜10倍程度、特に約10倍の波長の入射光に対し敏感に感応してプラズモン共鳴を起こす。第1凸部23aの周期は周期構造23cに応じて異なるから、金属ナノ構造23が感応可能な波長域を広くすることができる。更に、第2凸部23Bの周囲に近接場光が発生する。この近接場光と上記周期構造23cによるプラズモン共鳴との相乗効果によって、大きな光誘起電場を発生させることができる。これによって、第1光電変換素子1を透過した約1μm〜4μmの赤外光域の光に敏感に感応し、光電変換を確実に起こすことができる。入射光が微弱であっても、光起電力を高感度に発生させることができる。第2凸部23bの分散間隔を入射光の波長より大きくすることによって、隣接する第2凸部23b,23bどうしが干渉して電場を弱めるのを回避できる。第2凸部23bの分散間隔の上限を定める(例えば5μm〜6μm程度)ことによって、第2凸部23bの存在密度を高く維持でき、第2凸部23bとの相互作用を生じ得る周期構造23cの数を確保でき、感応帯域を確実に広くできる。よって、赤外光域に十分に対応可能な光電変換素子1Aを提供できる。
【0091】
光蓄電装置1によれば、日中は言うまでも無く、日没後でも大気中に散乱する赤外光を光電変換して電力を得、これを蓄電できる。赤外光を吸収することにより、赤外光の熱変換を防止でき、地球温暖化対策の手段としても期待できる(図13参照)。
【0092】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する内容に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図2は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、光電変換素子10,20が、第1実施形態の並列接続に代えて、直列に接続されている。第2実施形態のそれ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0093】
上述した第1、第2実施形態では、各光電変換素子10,20の受光面積ひいては発電可能な面積を十分に大きくできる。その一方で、下側の光電変換素子20については、入射光の一部が上側の光電変換素子10で遮られる。特に、下側の光電変換素子20の感応帯域のうち上側の光電変換素子10の感応帯域と重複する波長の光が上側の光電変換素子10で遮られやすい。以下の第3、第4実施形態は、第1、第2実施形態の上記短所を解消したものである。
【0094】
図3は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、第1光電変換素子10及び第2光電変換素子20が、互いの厚さ方向と直交する面方向に並べられている。光電変換素子10,20は並列に接続されている。
【0095】
第3実施形態では、光Lが第1光電変換素子10と第2光電変換素子20にそれぞれ直接的に入射する。何れの光電変換素子10,20においても、入射光が他方の光電変換素子によって遮られることがない。したがって、両方の光電変換素子10,20が互いに重複する感応帯域の光を十分に受光して光電変換することができる。よって、これら光電変換素子10,20の光電変換能力を十分に発現させることができる。
【0096】
図4に示すように、本発明の第4実施形態では、光電変換素子10,20が、第3実施形態の並列接続に代えて、直列に接続されている。第4実施形態のそれ以外の構成は、第3実施形態と同じである。
【0097】
第3、第4実施形態では、各光電変換素子10,20の受光面積が第1、第2実施形態の約半分になる。
受光面積を優先する場合は第1、第2実施形態を採用するのが好ましい。或いは、光電変換する光の波長域が何れか一方の光電変換素子10,20の感応帯域に偏っている場合には、第1、第2実施形態を採用するのが好ましい。双方の光電変換素子10,20の光電変換能力を十分に活用したい場合には、第3、第4実施形態を採用するのが好ましい。
【0098】
図5は、本発明の第5実施形態を示したものである。第5実施形態は、第4実施形態の変形例に係る。第1光電変換素子10の表面(図5において上面)に酸化亜鉛のナノ構造体41が設けられている。酸化亜鉛は、n型半導体を構成している。ナノ構造体41は、ナノワイヤーにて構成され、第1光電変換素子10の表面に突き立てられている。ここでは、ナノ構造体41は、金属ナノ構造体13から突出されているが、金属ナノ構造体13が導電層12の一部分だけに被膜されている場合、金属ナノ構造体13が被膜されていない部分については、ナノ構造体41が導電層12から突出されていてもよい。ナノワイヤーは、CVD、PVD、ゾルゲル法等によって形成できる。ナノ構造体41は、ナノワイヤーに限られず、ナノニードルでもよく、ナノチューブでもよく、ナノロッドでもよい。
【0099】
第2光電変換素子20の表面(図5において上面)には炭素のナノ構造体42が設けられている。炭素ナノ構造体42は、炭素(カーボン)ナノチューブにて構成され、第2光電変換素子20の表面に突き立てられている。ここでは、炭素ナノ構造体42は、金属ナノ構造体23から突出されているが、金属ナノ構造体23が導電層22の一部分だけに被膜されている場合、金属ナノ構造体23が被膜されていない部分については、炭素ナノ構造体42が導電層22から突出されていてもよい。カーボンナノチューブは、CVD、PVD、ゾルゲル法等によって形成できる。ナノ構造体42は、ナノチューブに限られず、ナノワイヤーでもよく、ナノニードルでもよく、ナノロッドでもよい。
【0100】
第5実施形態によれば、酸化亜鉛ナノ構造体41によって、第1光電変換素子10における光電変換感度を高めることができる。特に、第1光電変換素子10の感応帯域のうち短波長側の感度を高めることができる。具体的には、約0.4μm未満の紫外光域から1μm程度の可視光域までの光に対し、感度を向上させることができる。酸化亜鉛ナノ構造体41がナノワイヤーであることで量子効率を高めることができ、ひいては第1光電変換素子10の感度を確実に高めることができる。さらに、炭素ナノ構造体42によって、第2光電変換素子20における光電変換感度を高めることができる。特に、第2光電変換素子20の感応帯域のうち長波長側の感度を高めることができる。具体的には、2μm程度の可視光域から約4μm強の赤外光域までの光に対し、感度を向上させることができる。炭素ナノ構造体41がカーボンナノチューブにて構成されているため、量子効率が高く、ひいては第2光電変換素子20の感度を確実に高めることができる。これによって、光電変換可能な波長帯域を短波長側にも長波長側にも更に拡大することができる。
【0101】
図6は、本発明の第6実施形態を示したものである。第6実施形態は、極性確定層の変形例に係る。n型の第1光電変換素子10には、極性確定層として、既述の障壁層16に代えて凸層17が設けられている。凸層17は、n型半導体層11と一体に形成されている。半導体層11の表面(上面)のカソード電極14寄りの部分が突出され、この突出部が凸層17を構成している。凸層17の突出高さは、導電層12の厚さと同程度であり、例えば約1nm〜10nm程度であり、好ましくは数nm程度である。凸層17の幅寸法(図6において左右の寸法)は、例えば数100μm〜約1mm程度である。図6において、凸層17の突出高さ(上下寸法)は、幅(左右寸法)に対して誇張されている。
【0102】
凸層17の一側面(図6において左側面)が、導電層12の端面とショットキー接触している。凸層17の他側面(図6において右側面)が、カソード電極14とオーミック接触している。金属ナノ構造13が、導電層12から凸層17の上面に跨るように形成されている。金属ナノ構造13は、凸層17の上面だけに設けられていてもよい。或いは、金属ナノ構造13が、導電層12の上面にだけ設けられていてもよい。
【0103】
p型の第2光電変換素子20には、極性確定層として、既述の障壁層26に代えて凸層27が設けられている。凸層27は、p型半導体層21と一体に形成されている。半導体層21の表面(上面)のアノード電極24寄りの部分が突出され、この突出部が凸層27を構成している。凸層27の突出高さは、導電層22の厚さと同程度であり、例えば約1nm〜10nm程度であり、好ましくは数nm程度である。凸層27の幅寸法(図6において左右の寸法)は、例えば数100μm〜約1mm程度である。図6において、凸層27の突出高さ(上下寸法)は、幅(左右寸法)に対して誇張されている。
【0104】
凸層27の一側面(図6において右側面)が、導電層22の端面とショットキー接触している。凸層27の他側面(図6において左側面)が、アノード電極24とオーミック接触している。金属ナノ構造23が、導電層22から凸層27の上面に跨るように形成されている。金属ナノ構造23は、凸層27の上面だけに設けられていてもよい。或いは、金属ナノ構造23が、導電層22の上面にだけ設けられていてもよい。
【0105】
第6実施形態の光発電部2に光が入射すると、n型の第1光電変換素子10においては、導電層12の底部と半導体層11との間のショットキー接合部でフォトキャリアが生成されるのに加えて、導電層12の端部と凸層17とのショットキー接合部においてもフォトキャリアが生成される。このキャリアの電子が、導電層12と凸層17との間の空乏層電界によって凸層17側ひいては電極14へ流れる。したがって、電極14をカソードにすることができる。電極15をアノードにすることができる。
【0106】
また、p型の第2光電変換素子20においては、導電層22の底部と半導体層21との間のショットキー接合部でフォトキャリアが生成されるのに加えて、導電層22の端部と凸層27とのショットキー接合部においてもフォトキャリアが生成される。このキャリアの正孔が、導電層22と凸層27との間の空乏層電界によって凸層27側ひいては電極24へ流れる。したがって、電極24をアノードにすることができる。電極25をカソードにすることができる。
【0107】
本発明は、上記実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、光発電部2が、第1光電変換素子20第2光電変換素子20の少なくとも一方を2つ以上含んでいてもよい。光発電部2が光電変換素子10,20を3つ以上含んでいてもよい。2つ以上の光電変換素子10,20が直並列に接続されていてもよい。
障壁層16,26は、導電層12,22と電極14,24の間の少なくとも一部分に介在されていればよく、必ずしも導電層12,22と電極14,24の間の全体に介在されている必要はない。
導電層12を構成する金属成分は、Au、Fe、Co、Pt、W、Ni、Ag、Al等であってもよい。導電層22を構成する金属成分は、Ti、In、Zn、Mg、Li、Cu等であってもよい。
金属ナノ構造13,23を構成する金属成分は、Auに限られず、Ag、Pt、Cu、Pd等であってもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば第1光電変換素子と第2光電変換素子が、互いの厚さ方向に部分的に重なりあい、かつ上記厚さ方向と直交する面方向にずれていてもよい。
第1〜第3実施形態の光電変換素子10,20に、第5実施形態と同様のナノ構造体41,42を設けてもよい。第1〜第3実施形態において、極性確定層として、障壁層16,26に代えて、第6実施形態(図6)と同様の凸層17,27を適用してもよい。
2種類のナノ構造体41,42のうち酸化亜鉛ナノ構造体41のみを第1光電変換素子10に設けることにし、第2光電変換素子20には炭素ナノ構造体42を設けないことにしてもよい。
2種類のナノ構造体41,42のうち炭素ナノ構造体42のみを第2光電変換素子20に設けることにし、第1光電変換素子10には酸化亜鉛ナノ構造体41を設けないことにしてもよい。
光蓄電装置1の製造工程は、適宜、順序の入れ替え、ないしは変更を行なってもよい。
第1、第2実施形態において、第2光電変換素子20が表側(入射側、上側)に配置され、第1光電変換素子10が裏側(下側)に配置されていてもよい。
光電変換素子10の基板11が表側(光Lの入射側)に向けられ、金属ナノ構造13が裏側に向けられていてもよい。光電変換素子20の基板21が表側(光Lの入射側)に向けられ、金属ナノ構造23が裏側に向けられていてもよい。
【実施例1】
【0108】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
実施例1では、金属ナノ構造の作製及び観察を行った。金属ナノ構造は、次のようにして作製した。
ほぼ正方形のn型Si基板の表面全体にCo膜をスパッタリングにて成膜した。Co膜の厚さは8nmとした。
次に、5分間有機洗浄した後、マスク印刷を行ってCo膜の表面の四隅と中央に厚さAu膜をスパッタリングで成膜した。Au膜の厚さは、約10nmであった、
次に、アニール処理を行った。アニール処理の雰囲気ガスは、He100%とした。アニール温度は600℃であった(図11参照)。アニール処理時間は3分とした。
アニール処理によって、n型Si基板の表層部分にCoが拡散してCoSixが形成された。
【0109】
上記Au膜の近傍の2つの場所をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した。図7(a)及び(b)が、その画像である。Au膜の微粒子がCoSix膜の表面に沿って拡散し、Au膜の周囲に金属ナノ構造が自然形成されたことが確認された。金属ナノ構造の形態は、場所に応じて異なっていた。同図(b)に示すように、金属ナノ構造には、場所によってフラクタル構造が形成されていた。
【0110】
上記金属ナノ構造の幾つかの地点にレーザー光(波長635nm)を照射し、ゼロバイアスでの光誘起電流が最大になった地点の表面構造をAFM(原子間力顕微鏡)にて立体的に観察した。
図8がその画像である。図9は、図8の画像を模写し、解説したものである。
金属ナノ構造の表面にはサブオーダーないしはナノオーダーの凹凸が形成されており、クラスター構造ないしはフラクタル構造が確認された。更に、上記凹凸形状の中に、多数の周期構造13cと、多数の第2凸部13bが確認された。各周期構造13cは、複数の第1凸部13aを含み、これら第1凸部13aが周期構造13cに応じたランダムな周期(配置間隔)で配列されていた。周期構造13cの周期は、おおよそ100nm以下であった。各第1凸部13aの突出高さは約10nm〜20nm程度であった。各第2凸部13bは、ある周期構造13cと重なって配置されているか、又は周期構造13cの近傍に配置されていた。第2凸部13bの突出高さは、第1凸部13aより突出高さより大きく、約50nm〜200nm程度であった。第2凸部13bの分散間隔は、おおよそ2μm〜3μm程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えば太陽光蓄電池等に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
L 入射光
1 光蓄電装置
2 光発電部
10 第1光電変換素子(金属/n型半導体)
11 n型半導体層、基板
12 導電層
13 金属ナノ構造
13a 第1凸部
13b 第2凸部
13c 周期構造
14 第1電極(一方の電極)
15 第2電極(他方の電極)
16 障壁層(極性確定層)
17 凸層(極性確定層)
20 第2光電変換素子(金属/p型半導体)
21 p型半導体層、基板
22 導電層
23 金属ナノ構造
23a 第1凸部
23b 第2凸部
23c 周期構造
23d ランダム構造
24 第1電極(一方の電極)
25 第2電極(他方の電極)
26 障壁層(極性確定層)
27 凸層(極性確定層)
3 蓄電部
31 負極
31e 端子
32 正極
32e 端子
33 誘電体層
41 酸化亜鉛ナノ構造体
42 炭素ナノ構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光により発電する光発電部と、前記光発電部に接続されて前記発電した電力を蓄電する蓄電部とを備え、前記光発電部が、互いに直列、並列、又は直並列に接続された第1、第2光電変換素子を含み、前記第1、第2光電変換素子の各々が、半導体層と、前記半導体層に積層された導電層と、前記導電層に積層された多数の周期構造を有する金属ナノ構造とを含み、前記各周期構造が前記積層の方向に突出する複数の第1凸部からなり、前記第1凸部の配置間隔が前記周期構造に応じて異なり(図10参照)、前記第1光電変換素子の半導体層が、n型半導体層であり、前記第2光電変換素子の半導体層が、p型半導体層であることを特徴とする光蓄電装置。
【請求項2】
前記周期構造の少なくとも1つが、可視光域から赤外域のある波長範囲内の任意の波長の0.1倍〜1倍の大きさの配置間隔を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記金属ナノ構造が、前記第1凸部より大きく突出する複数の第2凸部を更に含み、これら第2凸部が互いに分散し、かつ各第2凸部が、前記周期構造の何れか1つと重なって又は近接して配置されている(図10参照)ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、互いの厚さ方向に重ねられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光蓄電装置。
【請求項5】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子とが、互いの厚さ方向と直交する面方向に並べられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光蓄電装置。
【請求項6】
前記第1光電変換素子に紫外域に感度を持つn型半導体からなるナノ構造体が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光蓄電装置。
【請求項7】
前記第2光電変換素子に赤外域に感度を持つp型半導体からなるナノ構造体が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−115418(P2013−115418A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271708(P2011−271708)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(513023000)株式会社リン ソレーション (3)
【Fターム(参考)】