説明

光触媒を用いた空気浄化装置

【課題】 光触媒を用いて有害化学物質や悪臭を分解して無害化や脱臭を行なう空気浄化装置で、光触媒フィルタのメンテナンス時以外は浸漬槽の水を抜くことができる、光触媒を用いた空気浄化装置を提供する。
【解決手段】 光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する浸漬槽3と、浸漬槽3の上方に設けた光源13により照射して光触媒フィルタ11の光触媒を活性化させる光照射域10とを設け、光源13を照射して光触媒フィルタ11で浄化する際は光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置し、水Wを浸漬槽3に注入して光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する際は光触媒フィルタ11が光照射域から浸漬槽3に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いて有害化学物質や悪臭を分解して無害化や脱臭を行なう空気浄化装置に関し、特に光触媒フィルタのメンテナンスの期間を延長できるようにした空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンなどの光触媒に紫外線光源(ブラックライト、水銀灯など)や可視光光源を当てて励起させてOHラジカルを生成し、その活性化した光触媒に浄化すべき空気を通過させて汚染物質を分解し、無害化や脱臭あるいは殺菌をする空気浄化装置は知られている。
【0003】
そのような空気浄化装置には、例えば光触媒の担持体としてセラミック質の多孔性基材に塗工し、乾燥凝固させた膜を焼成して微細孔性の光触媒膜を形成した光触媒フィルタが用いられる。
【0004】
このような光触媒フィルタを用いた空気浄化装置では、空気中の有機化合物を分解する工程において、その対象とするガスに硫化水素やアンモニア成分などが含まれていると、分解後に生じた硫酸イオンや硝酸イオンが付着して触媒毒となり、光触媒の性能が劣化する。
【0005】
また、空気中の埃の無機成分の大きなものはプレフィルタで取り除くことができるが、微細な埃は取り除くことができず、無機成分を光触媒で分解することはできないから光触媒フィルタに堆積する。
【0006】
硫酸イオンや硝酸イオンなどの触媒毒や無機質の埃を除去するため、定期的に光触媒フィルタを取り出して洗浄し、機能を回復させる光触媒フィルタのメンテナンスが必要となる。対象とするガスにそのようなものが多く含まれていると、メンテナンスの期間が短くなる。
【0007】
そこで、光触媒フィルタを取り出さずに、光触媒フィルタに散水して洗い流す、または光触媒フィルタを水に浸漬して洗い流すなど、自動的に光触媒フィルタのメンテナンスを行うようにした空気浄化装置が知られている。
【0008】
例えば、特開平05−337337号公報に示されるように、中空円筒形の多孔質材料から成る担持体に光触媒を塗布して光触媒フィルタとし、中空円筒形の光触媒フィルタの中心線を水平方向としてその中心軸芯を回転させ、中空円筒形の光触媒フィルタの下周の1/3程度を水に浸漬し、光触媒フィルタの上周の2/3程度の外周から紫外線光源を照射し、望ましくない化学物質で汚染されたガスを光触媒フィルタの外周方向から通過させて浄化する装置が知られている。
【0009】
この装置では、光触媒フィルタが連続的または不連続的に洗浄区域を通って、形成される触媒毒を洗い落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−337337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
対象とするガスに望ましくない化学物質が多く含まれている場合には、上記のような装置で連続的に光触媒フィルタを洗浄することが望ましいが、それ程汚染がひどくないが、定期的に光触媒フィルタを取り出して洗浄するのはわずらわしい程度の汚染がある。例えば一週間から一ヶ月程度の間に光触媒フィルタのメンテナンスが必要となる場合である。
【0012】
上記のような、中空円筒形の光触媒フィルタの中心線を水平方向としてその中心軸芯を回転させる装置には、回転させるための動力装置(電動機)が必要となり、装置が大掛かりとなる。
【0013】
また、上記の装置を回転させないで止めておくことも考えられるが、その間に浸漬槽の水を抜くことはできない。浸漬槽の水を抜くと、光触媒フィルタの下周の紫外線光源が照射されていない部分から分解対象とするガスが分解されずに通り抜けてしまう。そのため、抜かずに浸漬槽に滞留した水が光触媒で浄化されない。または、不必要に浸漬槽の水を入れ替えなければならない。
【0014】
そこで本発明は、光触媒フィルタのメンテナンス時以外は浸漬槽の水を抜くことができ、光触媒フィルタの浸漬槽への浸漬に際して動力装置を必要としない、光触媒を用いた空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明による光触媒を用いた空気浄化装置は、光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する浸漬槽3と、浸漬槽3の上方に設けた光源13により照射して光触媒フィルタ11の光触媒を活性化させる光照射域10とを設け、光源13を照射して光触媒フィルタ11で浄化する際は光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置し、水Wを浸漬槽3に注入して光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する際は光触媒フィルタ11が光照射域から浸漬槽3に移動するものである。
【0016】
請求項2の発明による光触媒を用いた空気浄化装置は、光照射域10に複数の滑車14を設け、一端が光触媒フィルタ11に固定され滑車14を通り浸漬槽3に至る複数のワイヤー15を設け、浸漬槽3側のワイヤー15の先端に錘16を固定し、空中での重さは光触媒フィルタ11より錘16の方が重くなるようにし、水中に没して浮力を受けたときの重さは錘16より光触媒フィルタ11の方が重くなるように浮力を受ける錘16としたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する浸漬槽3と、浸漬槽3の上方に設けた光源13により照射して光触媒フィルタ11の光触媒を活性化させる光照射域10とを設け、光源13を照射して光触媒フィルタ11で浄化する際は光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置するから、その間に浸漬槽3の水Wを抜くことができ、滞留した水による懸念が無い。
【0018】
請求項2の発明によれば、光照射域10に複数の滑車14を設け、一端が光触媒フィルタ11に固定され滑車14を通り浸漬槽3に至る複数のワイヤー15を設け、浸漬槽3側のワイヤー15の先端に錘16を固定し、空中での重さは光触媒フィルタ11より錘16の方が重くなるようにしたから、浸漬槽3の水Wを抜くと錘16の重さにより光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置する。また同様に、水中に没して浮力を受けたときの重さは錘16より光触媒フィルタ11の方が重くなるように浮力を受ける錘16としたから、浸漬槽3に水Wを注入すると光触媒フィルタ11の重さにより光触媒フィルタ11が光照射域から浸漬槽3に移動する。つまり、浸漬槽3の水位の上下により光触媒フィルタ11が移動し、光触媒フィルタ11の浸漬槽3への浸漬に際して動力装置を必要としない、簡単な装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は光触媒を用いた空気浄化装置の実施例を示す一部を切り欠いた平面図である。
【図2】図2は図1のA−Aに沿う断面図である。
【図3】図3は図2の別な状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る光触媒を用いた空気浄化装置1である。
【0021】
この空気浄化装置1には、矩形箱状の外枠2を設け、外枠2内の中央下部に上方が開放された円筒形状の浸漬槽3を設ける。
【0022】
浸漬槽3には、その内側に上下が開放された円筒形状の仕切板6を設け、浸漬槽3の仕切板6の内側を内槽4とし、浸漬槽3の仕切板6の外側を外槽5とする。仕切板6の底部には多数の小孔を設け、内槽4と外槽5を連通させる。浸漬槽3の内槽4の底面から所定の高さの台座7を設ける。
【0023】
浸漬槽3の高位に水Wを注入するための注入弁21と、浸漬槽3の低位に水Wを排出するための排出弁22を設ける。また、光触媒フィルタ11が充分に浸る水位にオーバーフロー排水口を設ける。図2は、注入弁21を閉じ排出弁22を開いて浸漬槽3から水Wを排出した、通常の空気浄化装置1の稼働状態を示す。図3は、排出弁22を閉じ注入弁21を開いて浸漬槽3に水Wを注入した、光触媒フィルタ11の洗浄状態を示す。
【0024】
光触媒フィルタ11の汚染物質は、水Wを浸漬槽3に注入して浸漬槽3の内槽4で洗浄する。水Wは不純物の無い純水が望ましい。
【0025】
浸漬槽3の上方に、光源13により照射して光触媒フィルタ11の光触媒を活性化させる光照射域10を設ける。
【0026】
光源13を照射して光触媒フィルタ11で浄化する際は、光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置する。水Wを浸漬槽3に注入して光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する際は、光触媒フィルタ11が光照射域から浸漬槽3に移動する。
【0027】
光触媒フィルタ11は、多孔質セラミックの表面に光触媒として酸化チタンを担持したもので、所定厚さの板を組み合わせて平面視が中空の六角形としている。実施例では、光触媒フィルタ11の厚さは約1.5cmとし、数ミリメートル径の孔が無数に連通している。
【0028】
光触媒フィルタ11の底面に、光触媒フィルタ11の底面をふさぎ、光触媒フィルタ11を支える底板12を設ける。底板12は光触媒フィルタ11の底面に固着される。光照射域10に位置する光触媒フィルタ11の上面は、外枠2の内側天井に密着する。
【0029】
光源13は、細長い「U」字蛍光灯形状のコンパクト型ブラックライトブルーランプで、紫外線360nm付近に発光スペクトルのピークをもつものである。光源13は、光照射域10の外枠2内側天井中央から下方に設け、光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置するとき、光触媒フィルタ11の内側に位置する。光触媒フィルタ11が酸化タングステンのように可視光活性がある場合には、光源13は可視光を多く含むものとしても良い。
【0030】
光照射域10の外枠2内側天井に複数の滑車14を設ける。滑車14は中空六角形な光触媒フィルタ11の外周上方に位置し、等間隔に設ける。滑車14は、ワイヤー15の上下移動を妨げないよう自由に回転する。実施例では、滑車14を3等配に設けた。
【0031】
一端が光触媒フィルタ11の底板12に固定され、滑車14を通り浸漬槽3の外槽5に至る倒立Uの字状に複数のワイヤー15を設ける。ワイヤー15は、ステンレスやナイロン樹脂のように防食性に富み、細い撚線で柔軟性のあるものとする。
【0032】
浸漬槽3の外槽5側のワイヤー15の先端に錘16を固定する。錘16は中空の輪状であり、重さと体積を兼ね備えている。
【0033】
空中での重さは、つまり乾燥重量は、光触媒フィルタ11より錘16の方が重くなるようにする。実施例では、光触媒フィルタ11と底板12などを合わせた重さが約5.5kg、錘16の重さを約6.5kgとした。
【0034】
水中に没して浮力を受けたときの重さは、錘16より光触媒フィルタ11の方が重くなるように浮力を受ける錘16とする。実施例では、光触媒フィルタ11と底板12などを合わせた体積が約3リットル、錘16の体積が約5リットルとし、水中に没して浮力を受けたときの重さは、光触媒フィルタ11と底板12などを合わせた重さが約2.5kg、錘16の重さを約1.5kgとした。
【0035】
光照射域10の上方で外枠2の排出口に送風ファン8を設ける。送風ファン8が回転することにより、外枠2の周面の吸込口から汚染された空気流23が流入し、光源13に照射されて活性化した光触媒フィルタ11の光触媒により浄化され、外枠2の排出口から浄化された空気流24として排出される。
【0036】
次に、使用方法を説明する。
【0037】
通常の空気浄化装置1の稼働状態は、図2に示すように、注入弁21を閉じ排出弁22を開いて浸漬槽3から水Wを排出し、光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置する。
【0038】
送風ファン8の回転により汚染された空気流23は、光触媒フィルタ11の底面をふさぐ底板12と、光触媒フィルタ11の上面が外枠2の内側天井に密着していることにより、光触媒フィルタ11の無数の孔を通過し、光源13に照射されて活性化した光触媒フィルタ11の光触媒により浄化され、浄化された空気流24として排出される。
【0039】
光触媒フィルタ11の汚染物質の洗浄状態は、図3に示すように、排出弁22を閉じ注入弁21を開いて浸漬槽3に水Wを注入し、光触媒フィルタ11の重さにより光触媒フィルタ11が光照射域から浸漬槽3に移動し、光触媒フィルタ11の底板12が浸漬槽3の台座7に接して停止する。このとき、送風ファン8は回転を止め、光源13は消灯する。
【0040】
充分な時間、光触媒フィルタ11は水Wに浸漬され、硫酸イオンや硝酸イオンなどの触媒毒は水Wに溶け出す。光触媒フィルタ11の表面に付着した無機質の埃は、光触媒フィルタ11に水Wが流入する際や流出する際に洗い出される。
【0041】
再び、通常の空気浄化装置1の稼働状態とするには、注入弁21を閉じ排出弁22を開いて浸漬槽3から水Wを排出し、光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置し、光触媒フィルタ11の上面が外枠2の内側天井に接して停止する。
【0042】
これにより、浸漬槽3の水位の上下により光触媒フィルタ11が移動し、光触媒フィルタ11の浸漬槽3への浸漬に際して動力装置を必要としない、簡単な装置となる。
【0043】
以上の実施例では、光触媒フィルタ11の浸漬槽3と光照射域10との移動が滑車14とワイヤー15を用い浸漬槽3の水位の上下による例を示したが、水位検知手段と油圧シリンダーなどの上下動手段としても良く、光触媒フィルタ11が浸漬槽3から出て光照射域10に位置する間に浸漬槽3の水Wを抜くことができれば良い。
【0044】
また、光触媒フィルタ11として、多孔質セラミックの表面に光触媒として酸化チタンを担持したものを示したが、金属繊維不織布に光触媒を担持したものでも、水Wが浸漬するものであれば良い。
【0045】
また、光触媒フィルタ11の汚染物質を洗浄する水Wとして純水を示したが、洗剤や酸・アルカリを含む水で洗浄した後に純水で洗浄するようにしても良い。
【0046】
また、浸漬槽3の仕切板6の底部には多数の小孔を設け、内槽4と外槽5を連通させる例を示したが、仕切板6に孔を設けず、内槽4に純水を、外槽5に水道水を注入するようにして、純水の使用量を減ずるようにしても良い。
【0047】
また、光触媒ユニットが一個の単段装置の例を示したが、直列に連結して多段としたり、並列に並べて大風量の大型装置としても良い。
【符号の説明】
【0048】
3 浸漬槽
10 光照射域
11 光触媒フィルタ
13 光源
14 滑車
15 ワイヤー
16 錘
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒フィルタの汚染物質を洗浄する浸漬槽と、浸漬槽の上方に設けた光源により照射して光触媒フィルタの光触媒を活性化させる光照射域とを設け、光源を照射して光触媒フィルタで浄化する際は光触媒フィルタが浸漬槽から出て光照射域に位置し、水を浸漬槽に注入して光触媒フィルタの汚染物質を洗浄する際は光触媒フィルタが光照射域から浸漬槽に移動する光触媒を用いた空気浄化装置。
【請求項2】
光照射域に複数の滑車を設け、一端が光触媒フィルタに固定され滑車を通り浸漬槽に至る複数のワイヤーを設け、浸漬槽側のワイヤーの先端に錘を固定し、空中での重さは光触媒フィルタより錘の方が重くなるようにし、水中に没して浮力を受けたときの重さは錘より光触媒フィルタの方が重くなるように浮力を受ける錘とした請求項1記載の光触媒を用いた空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−301(P2012−301A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138891(P2010−138891)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000137063)株式会社ホクエイ (29)
【出願人】(304016516)有限会社関 (6)
【Fターム(参考)】