光触媒モジュールおよび光触媒システム
【課題】光源からの出射光の利用効率を向上させることが可能な光触媒モジュールを提供する。
【解決手段】この光触媒モジュール100は、半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10を取り囲むように配置され、半導体レーザ装置10からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面20aを有する基材20と、基材20の表面20a上に設けられ、金属粒子21aが島状に分布した状態、または、隣接する金属粒子21a同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層21と、金属層21の表面上に設けられた光触媒材層22とを備える。
【解決手段】この光触媒モジュール100は、半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10を取り囲むように配置され、半導体レーザ装置10からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面20aを有する基材20と、基材20の表面20a上に設けられ、金属粒子21aが島状に分布した状態、または、隣接する金属粒子21a同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層21と、金属層21の表面上に設けられた光触媒材層22とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒モジュールおよび光触媒システムに関し、特に、光源と光触媒材とを備えた光触媒モジュールおよび光触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの入射光を励起光に用いた光触媒素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、外部から入射された光を導波可能に構成された基材と、基材の表面上に形成された金属被覆層と、金属被覆層上に形成された光触媒薄膜層とを備えた光触媒素子が開示されている。この特許文献1に記載の光触媒素子では、所定の部分に、素子の表面から光触媒薄膜層および金属被覆層を貫通して基材まで達する受光部(貫通部)が形成されている。そして、光触媒素子の外部に設けられるとともに受光部と対向した位置に配置された光源(発光ダイオード)から出射された光が、受光部を介して基材内部に入射されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された光触媒素子では、外部に配置された光源からの出射光のうち、受光部を通り抜ける光のみが基材内部に入射されて光触媒素子の励起光として利用される一方、受光部を通り抜けない光は、光触媒素子の励起光には利用されない構成であると考えられる。このため、光源からの出射光の利用効率が低下するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光源からの出射光の利用効率を向上させることが可能な光触媒モジュールおよび光触媒システムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光触媒モジュールは、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、基材の表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面による光触媒モジュールでは、上記のように、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材とを備えることによって、光源からの出射光の全てが基材内部に入射された後に基材の表面により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層の励起光として利用されるので、光源からの出射光の一部のみを光触媒材層の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率を向上させることができる。
【0009】
また、第1の局面による光触媒モジュールでは、上記した構成を備えることによって、光源により基材内部に入射された光が、基材と金属層との界面において反射を繰り返しながら閉空間内に閉じ込められた状態となった際、島状または網状となった金属粒子間に形成された隙間を介して基材から金属層上の光触媒材層に向かって進むエバネッセント波(エバネッセント光)が発生される。ここで、エバネッセント波とは、所定の屈折率を有する媒質A中に入射した光が、他の異なる屈折率を有する媒質Bとの接触界面において全反射する際に、接触界面から媒質B中にしみ出す光(表面波/局在波)として知られている。また、エバネッセント波の発生に伴い、金属粒子が有する自由電子とエバネッセント光とが相互作用(共鳴)して表面プラズモンが発生される。この表面プラズモンは、光強度を増強させる現象として観察される。そして、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とによる励起光を利用して、光触媒材層が有する光触媒材をより活性化させることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒モジュールを得ることができる。
【0010】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、金属層は、島状に分布した金属の粒子、または、網状の状態を有する金属層の網目が、基材の表面上に不規則的に配置されている。このように構成すれば、島を形成する金属粒子の大きさ(隣接する金属粒子同士の間隔)や、網状となった金属層の網目の大きさが規則性をしない分、金属粒子の大きさや網目が規則性を有する場合と比較して、表面プラズモンを発生させるためのエバネッセント波が有する波長(光源からの光と金属粒子と相互作用を起こすことが可能な共鳴波長)に所定の範囲の幅を持たせることができる。これにより、光源が有する出射光の波長幅(波長帯域)を広げることができるので、光源波長にばらつきが生じる場合であっても、光触媒材層における光触媒反応を活性化させるための表面プラズモンを安定して発生させることができる。
【0011】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、光源は、半導体レーザ素子である。このように構成すれば、コヒーレント光であるレーザ出射光を用いて、より強力なエバネッセント波を発生させることができる。これにより、表面プラズモンをより強力に発生させることができるので、光触媒材がより激しく励起される分、光触媒モジュールの環境浄化能力をより高めることができる。
【0012】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、基材は、透光性を有する樹脂またはガラス材料からなり、基材の表面は、尖った角部を有しない丸みを帯びた形状を有して形成されている。このように構成すれば、光源から出射されて樹脂中を透過した光を、金属層と接する基材の尖った角部のない丸みを帯びた表面において基材内部に向かって確実に反射させることができるので、表面プラズモンの元となるエバネッセント波(エバネッセント光)を容易に発生させることができる。また、基材の表面が尖った角部を有さずに丸みを帯びて形成されているので、一度反射された光が基材内部を透過して再び別な場所の表面で反射する状態を継続させることができる。これにより、基材と金属層との界面においてエバネッセント波を効率よく発生させることができる。
【0013】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、基材の表面は、複数の凹部および凸部を含む形状を有しており、1つの凹部から隣接する凸部を隔てて隣り合う凹部までの距離は、光触媒材層の厚みよりも大きい。このように構成すれば、凹部と凸部とからなる凹凸形状の起伏に沿って光触媒材層を形成することができるので、光触媒材層が外部に対して反応する際の面積(表面積)を増加させることができる。これにより、環境浄化を効率よく行うことができる。
【0014】
この発明の第2の局面による光触媒システムは、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、基材の表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを含む光触媒モジュールと、複数の光触媒モジュールを収納する筐体とを備える。
【0015】
この発明の第2の局面による光触媒システムでは、上記のように、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材とを含む光触媒モジュールを備えることによって、光源からの出射光の全てが基材内部に入射された後に基材の表面により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層の励起光として利用されるので、光源からの出射光の一部のみを光触媒材層の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュールにより構成された光触媒システムを得ることができる。
【0016】
また、第2の局面による光触媒システムでは、複数の光触媒モジュールの各々が上記した構成を含むことによって、個々の光触媒モジュールにおいてモジュール内で発生するエバネッセント波および表面プラズモンによる励起光を用いて光触媒反応を起こさせることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールを構成する基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールにおいて、基材の表面近傍でエバネッセント波により光触媒材層が励起される現象を模式的に示した図である。
【図6】金属層を構成する金属粒子のサイズとエバネッセント光の波長との関係を示した図である。
【図7】本発明の第1実施形態の第1変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第2変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の第3変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の第4変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大平面図である。
【図12】本発明の第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図14】本発明の第3実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図15】本発明の第3実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図16】本発明の第4実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図17】本発明の第5実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図18】本発明の第5実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図19】本発明の第6実施形態による光触媒モジュールを備えた光触媒システムの構造を示した断面図である。
【図20】本発明の第6実施形態による光触媒システムを構成する反応容器の蓋体に固定された光触媒モジュールの配置関係を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による光触媒モジュール100の構造について説明する。なお、図2は、図1の910−910線に沿った断面を示している。
【0020】
本発明の第1実施形態による光触媒モジュール100は、図1および図2に示すように、内部に半導体レーザ素子1(図2参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材20とを備えている。なお、半導体レーザ素子1および半導体レーザ装置10は、本発明の「光源」の一例である。
【0021】
また、基材20は、透光性を有するシリコン樹脂を用いたモールド成型品からなり、外径D1(図2参照)を有した状態で、レーザ光の出射方向(A1方向)に沿って略円柱状に延びて形成されている。また、基材20の長手方向(A方向)の両端部(隅部)近傍において、表面20aが所定の曲率からなる曲面を有して滑らかに形成されることにより、基材20は、表面20aによって内部に閉じた空間が形成されるように構成されている。ここで、表面20aには尖った角部などが形成されずに、全ての領域において丸みを帯びて形成されているのが好ましい。また、表面20aの丸みを帯びた部分が90度以下の鋭角な曲面によって構成されていないことがより好ましい。
【0022】
また、基材20はシリコン樹脂による中実体構造を有しており、長手方向の一方側(A1側)の表面20aから内部(A1方向)に向かって所定の内径を有して凹状に窪む穴部20cが形成されている。この穴部20cは、後述する半導体レーザ装置10のキャップ16の外形形状と略等しいか若干大きく形成されており、キャップ16が穴部20cの内側面に沿って隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、光触媒モジュール100では、キャップ16の窓部16a(図2参照)から出射されたレーザ光が、穴部20cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材20内部に入射されるように構成されている。また、基材20内部に閉じた空間が形成されることにより、基材20内部に入射された光が、表面20aを透過して外部に漏れ出ることがないように構成されている。
【0023】
また、基材20の表面20a上には、金属ナノ粒子からなる金属層21と、薄膜状の光触媒材層22とが形成されている。ここで、図1および図2では、基材20の表面20a上に金属層21と光触媒材層22とが形成されている様子を概略的に示している一方、詳細な層構造については、図3に図示している。すなわち、基材20の表面20a付近を拡大した状態では、図3に示すように、基材20の表面20a上に、Auからなり個々のサイズ(平均粒径など)が定まらずに不規則性を有した粒子状の金属粒子21aが形成されている。また、金属層21は、個々の金属粒子21aが表面20a上に不規則的に分布した状態で形成されている。
【0024】
また、上述の金属層21を平面的に見た場合、図4に示すように、個々の金属粒子21aが表面20a上に不規則的に島状に分布して形成されている領域や、隣接する金属粒子21a同士が部分的に結合して網状の状態を有して形成されている領域などがあり、全体として、金属層21は、表面20a上において完全な連続膜とはなっていない。また、金属粒子21aの個々のサイズが不規則性を有するので、島状に分布した金属粒子21a間に形成される隙間の大きさも不規則性を有している。また、金属粒子21aの個々のサイズが不規則性を有するので、網状に形成されている金属層21の領域における網目(隙間)の大きさも不規則性を有している。そして、島状または網状の領域に関係なく、金属粒子21a間に形成された不規則性を有する隙間(網目)の部分から、基材20の表面20aが露出している。なお、図4では、金属層21上(紙面手前側)に積層されている光触媒材層22については、説明の都合上、図示を省略している。
【0025】
また、図3に示すように、金属層21と、金属粒子21aの隙間(網目)から露出する基材20の表面20aとを覆うように、アナターゼ型(低温型)二酸化チタン(TiO2)からなる光触媒材層22が薄膜状に形成されている。ここで、光触媒材層22は、数nm以上約1μm以下の厚み(平均厚み)を有している。また、光触媒材層22は、外部流体(気体または液体および両者が混在したもの)と接する表面22aが、下部に形成された金属粒子21aの分布状態(表面的な凹凸形状)に伴って起伏を有した状態で形成されている。
【0026】
したがって、第1実施形態では、図5に示すように、半導体レーザ装置10(図1参照)から出射されたレーザ光(複数の矢印で示す)が、金属層21または光触媒材層22と接する基材20の界面(表面20aの部分)で基材20内部に向かって反射(全反射)するように構成されている。この際、基材20の界面が90度以下の鋭角な曲面を有していないので、レーザ光は、基材20の界面において、基材20内部に向かって確実に反射するように構成されている。また、図1に示すように、基材20は穴部20cにより半導体レーザ装置10を取り囲むようにして取り付けられているので、反射後のレーザ光が再び表面20aの別な位置で反射する多重反射を繰り返しながら、レーザ出射光(反射光)が基材20内部の閉じた空間内に閉じ込められるように構成されている。
【0027】
これにより、第1実施形態では、表面20aにおいてレーザ光が多重反射を起こす際、島状および網状となった金属層21(金属粒子21aと金属粒子21aとの間)に形成された隙間(網目)の部分から、光触媒材層22側に向かって放射状に局在するエバネッセント波(エバネッセント光)が発生されるように構成されている。ここで、隙間の長さ(平均値)がエバネッセント光の有する波長以下となるように金属層21(所定の粒子サイズを有する個々の金属粒子21aが分布した状態)が形成されるのが好ましい。これにより、エバネッセント波を確実に発生させることが可能になる。
【0028】
また、第1実施形態では、基材20の表面20aの部分で発生したエバネッセント波により、金属層21を構成する個々の金属粒子21aの表面に、表面プラズモンが発生するように構成されている。すなわち、レーザ出射光(反射光)が発する光源の明るさ(光強度)が、金属粒子21aの表面に生じた表面プラズモンによってさらに増強されるように構成されている。これにより、光触媒モジュール100では、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とにより増強された励起光を利用して、光触媒材層22が有する光触媒材をより活性化させることが可能に構成されている。なお、エバネッセント波は局在波であり、光触媒材層22から外部(大気中)に放射されることはなく、光触媒モジュール100の周囲にユーザが近寄った場合でも、何ら影響を及ぼさない。
【0029】
ここで、表面プラズモンが強く発生するためには、金属粒子のサイズ(平均直径)に応じた波長(共鳴波長)が存在する。具体的には、金属粒子のサイズとエバネッセント光の波長(共鳴波長)とは、図6に示すような相関関係を有している。すなわち、金属粒子が相対的に小さければ、表面プラズモンの共鳴波長も相対的に小さくなり、金属粒子が相対的に大きければ、表面プラズモンの共鳴波長も相対的に大きくなる性質を有している。なお、図6では、グラフの横軸に示す金属粒子のサイズは、個々の金属粒子が規則的なサイズを有して形成された状態であり、基材の表面上に規則性を有して分布した場合の平均粒径として示している。この場合、金属粒子間の隙間間隔も基材の表面上において略一様であることが前提とされている。
【0030】
また、一般的に、光源として用いられる半導体レーザ素子は、レーザ光の出射波長が素子毎に所定の範囲内でばらつきを生じた状態で製造される。たとえば、約400nmの発振波長を有する半導体レーザ素子を製造した場合、個々のレーザ素子間において、約390nm〜約410nmの範囲で出射波長がばらついている。したがって、基材の表面上に形成された金属粒子のサイズと、光触媒モジュールに搭載されている半導体レーザ素子の発振波長とが図6におけるグラフP上で交わる場合には、その半導体レーザ素子(光源)の波長が表面プラズモンの共鳴波長となってエバネッセント光を発生させることが可能である一方、金属粒子のサイズと半導体レーザ素子の発振波長とが図6におけるグラフP上で交わらない(一致しない)場合には、その半導体レーザ素子(光源)の発振波長が表面プラズモンのための共鳴波長にならずにエバネッセント光を適切に発生させることができない。
【0031】
このような点を考慮した結果、第1実施形態における基材20の表面20aには、金属粒子21aのサイズが不規則性を有し、かつ、金属粒子21a間の隙間間隔も不規則性を有した金属層21が形成されているので、光源となる半導体レーザ素子1の発振波長が製造誤差に起因して素子間でばらつきを生じていても、半導体レーザ素子1が搭載された個々の光触媒モジュール100では、半導体レーザ素子1が有する発振波長のばらつき(素子毎の個体差)を吸収することが可能である。すなわち、図6を用いて説明すると、半導体レーザ素子1が波長範囲Aを有して度数分布していても、基材20の金属層21が波長範囲Aに対応する範囲Bの複数の金属粒子サイズを含んで形成されているので、波長範囲Aを有して製造されたどの半導体レーザ素子1を用いても、基材20の表面20aで表面プラズモンを確実に共鳴させることが可能であることを意味している。なお、後述する製造プロセスにおいて、金属層21の形成条件を適宜制御して金属粒子21aのサイズ(隙間や網目の大きさ)を形成することにより、光源となる半導体レーザ素子1の波長帯域(約400nm帯、約500nm帯、約700nm帯など)に応じて光触媒材層22に光触媒反応を起こさせることが可能な光触媒モジュール100を作製することができる。
【0032】
また、図1に示すように、半導体レーザ装置10は、半導体レーザ素子1(図2参照)が載置された台座14(図2参照)と、リード端子11〜13を互いに絶縁した状態で固定するとともに台座14が固定される金属製のステム15と、ステム15に取り付けられ、半導体レーザ素子1を覆うとともにレーザ出射光を透過可能な窓部16a(図2参照)を有する金属製のキャップ16とを備えている。また、半導体レーザ素子1の後方(窓部16aに対向する側とは反対側)の台座14上には、図示しないモニタ用PD(フォトダイオード)が固定されている。そして、半導体レーザ素子1およびモニタ用PDの各々のp側電極が、金属線を介してリード端子12および13にそれぞれ接続されるとともに、半導体レーザ素子1およびモニタ用PDの各々のn側電極が、台座14を介して負極側のリード端子11に接続されている。
【0033】
次に、図1〜図4を参照して、第1実施形態による光触媒モジュール100の製造プロセスについて説明する。
【0034】
まず、硬化前のシリコン樹脂を所定の形状を有する型(図示せず)に流し込み、図1および図2に示すような形状を有する基材20をモールド成型する。この際、基材20には、半導体レーザ装置10のキャップ16が嵌め込まれる穴部20cが同時に形成される。
【0035】
次に、図3に示すように、電子ビーム(EB)蒸着法などを用いて、型から取り出された基材20の表面20a上に金属層21を形成する。この際、成膜条件を制御することにより、光源となる半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光の発振波長に応じて、表面20a上に形成される金属層21の厚み(金属粒子21aの大きさ)が決定される。これにより、図4に示すように、個々の金属粒子21aが表面20a上に島状または網状に分布した状態の金属層21が形成される。その後、RFマグネトロンスパッタ法などを用いて、金属層21と、金属層21の隙間から露出する表面20aとの表面とを覆うように、光触媒材層22(図3参照)を堆積させる。
【0036】
最後に、所定の製造プロセスを用いて製造された半導体レーザ装置10を基材20の穴部20cに嵌め込むことにより、図1に示した光触媒モジュール100が製造される。
【0037】
第1実施形態では、上記のように、半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10を取り囲むように配置され、半導体レーザ装置10からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面20aを有する基材20とを備えることによって、半導体レーザ装置10からの出射光の全てが基材20内部に入射された後に基材20により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層22の励起光として利用されるので、半導体レーザ装置10からの出射光の一部のみを光触媒材層22の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率を向上させることができ、光源と光触媒構造とが一体となったコンパクトな光触媒モジュール100を得ることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記した構成を備えることによって、半導体レーザ装置10により基材20内部に入射された光が、金属層21または光触媒材層22と接する基材20の表面20aの部分(界面)で反射を繰り返しながら閉空間内に閉じ込められた状態となった際、島状に分布する金属粒子21a間に形成された隙間から、光触媒材層22側に向かって進行するエバネッセント波が発生される。また、光触媒材層22中に発生したエバネッセント波により、金属層21(個々の金属粒子21a)の表面に、表面プラズモンが発生される。そして、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とによる励起光を利用して、光触媒材層22が有する光触媒材をより活性化させることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒モジュール100を得ることができる。
【0039】
また、第1実施形態では、金属層21を構成する島状または網状に分布した個々の金属粒子21aが、基材20の表面20a上に不規則的に配置されることによって、金属粒子21aの大きさ(金属粒子21a同士の間隔)や、金属層21の網目の大きさが不規則となる分、表面プラズモンを発生させるためのエバネッセント波が有する波長(半導体レーザ素子1からの光と金属粒子21aと相互作用を起こすことが可能な共鳴波長)に所定の範囲の幅を持たせることができる。これにより、半導体レーザ素子1が有する出射光の波長幅(波長帯域)を広げることができるので、製造誤差に起因して個々の半導体レーザ素子1の波長にばらつきが生じる場合であっても、光触媒材層22における光触媒反応を活性化させるための表面プラズモンを安定して発生させることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、光源に半導体レーザ素子1を用いることによって、レーザ出射光を用いて、より強力なエバネッセント波を発生させることができる。これにより、表面プラズモンをより強力に発生させることができるので、光触媒材層22がより激しく励起される分、光触媒モジュール100の環境浄化能力をより高めることができる。
【0041】
また、第1実施形態では、透光性を有するシリコン樹脂を用いて基材20を形成し、かつ、基材20の表面20aを、尖った角部を有しない滑らかな丸みを帯びた形状を有して形成することによって、半導体レーザ素子1から出射されて樹脂中を透過した光を、金属層21と接する基材20の丸みを帯びた表面20aにおいて基材20内部に向かって確実に反射させることができるので、表面プラズモンの元となるエバネッセント波(エバネッセント光)を容易に発生させることができる。また、表面20aが尖った角部などを有さずに滑らかな丸みを帯びて形成されているので、一度反射されたレーザ光がシリコン樹脂中を透過して再び別な場所の表面20aで反射する状態を継続させることができる。これにより、基材20と金属層21との界面において、エバネッセント波を効率よく発生させることができる。
【0042】
(第1実施形態の第1変形例)
図7を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例による光触媒モジュール101では、上記第1実施形態と異なり、光触媒材層23の表面23aが平坦性を有している場合について説明する。
【0043】
すなわち、図7に示すように、光触媒材層23は、外気と接する表面23aが平坦性を有した状態で基材20の表面20aと金属層21とを覆うように形成されている。また、表面23aは、表面20aと略同じ輪郭を有するように形成されている。この場合、光触媒モジュール101の製造プロセスにおいて、金属層21が形成された基材20の表面20aに、微粒子からなる光触媒材が混入された溶剤をスピンコートなどの方法を用いて塗布した後、所定の温度条件下で基材20を加熱することにより、平坦性を有する表面23aからなる光触媒材層23を形成することが可能である。なお、光触媒モジュール101のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0044】
第1実施形態の第1変形例では、上記のように、スピンコートなどを用いて基材20の表面20aに光触媒材層23を形成することができるので、スパッタ装置などの大がかりな装置を用いて光触媒モジュールを製造する場合と異なり、製造プロセスを簡素化させることができる。これにより、光触媒モジュール101の製造コストを低減することができる。
【0045】
(第1実施形態の第2変形例)
図8を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。この第1実施形態の第2変形例による光触媒モジュール102では、上記第1実施形態と異なり、光触媒材層22が、誘電体などからなるバッファ層30(保護膜)を介して形成される場合について説明する。
【0046】
すなわち、図8に示すように、金属層21が形成された基材20の表面20aをバッファ層30が覆うとともに、バッファ層30上に光触媒材層22が形成されている。ここで、バッファ層30は、AlNやAl2O3などの材料からなる誘電体膜により構成されていてもよいし、SiO2などの酸化膜であってもよい。また、バッファ層30は、金属層21と光触媒材層22とが直接接触した際に化学反応が起きやすくなることを抑制するために設けられている。
【0047】
また、第1実施形態の第2変形例における光触媒モジュール102の製造プロセスでは、金属層21が形成された基材20の表面20aに、RFマグネトロンスパッタ法などを用いて先にバッファ層30を形成した後、バッファ層30の表面上に光触媒材層22を堆積させる方法が適用される。なお、光触媒モジュール102のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0048】
第1実施形態の第2変形例では、上記のように、光触媒材層22がバッファ層30を介して金属層21(基材20)の表面に形成されているので、光触媒モジュール102の使用時に、金属層21と光触媒材層22とが直接的に化学反応を起こすことを抑制することができる。
【0049】
(第1実施形態の第3変形例)
図9を参照して、第1実施形態の第3変形例について説明する。この第1実施形態の第3変形例による光触媒モジュール103では、上記第1実施形態の第2変形例の製造プロセスと異なり、スピンコートにより光触媒材層24を形成する場合について説明する。
【0050】
すなわち、図9に示すように、金属層21が形成された基材20の表面20a上にRFマグネトロンスパッタ法などを用いてバッファ層30を形成した後、上記第1実施形態の第1変形例の製造プロセスと同様にスピンコートを用いて光触媒材層24を塗布し、その後、所定の温度条件下で基材20を加熱することにより平坦性を有する表面24aからなる光触媒材層24を形成することが可能である。なお、光触媒モジュール103のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0051】
第1実施形態の第3変形例では、上記のように、バッファ層30を形成した後に光触媒材層24をスピンコートを用いて形成しているので、製造コストが低減された光触媒モジュール103を製造することができ、かつ、光触媒モジュール103の使用時に、金属層21と光触媒材層24とが直接的に化学反応を起こすことを抑制することができる。
【0052】
(第1実施形態の第4変形例)
図10を参照して、第1実施形態の第4変形例について説明する。この第1実施形態の第4変形例による光触媒モジュール104では、上記第1実施形態の第2変形例の製造プロセスと異なり、バッファ層30および光触媒材層24を共にスピンコートにより形成する場合について説明する。
【0053】
すなわち、図10に示すように、バッファ層30は、基材20とは反対側の表面30aが平坦性を有した状態で表面20aと金属層21とを覆うように形成されている。そして、バッファ層30を覆う光触媒材層24についても、バッファ層30との接触面(内表面)および外気と接する表面24aとが共に平坦性を有した状態で形成されている。なお、光触媒モジュール104のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。また、第1実施形態の第4変形例の効果については、上記第3変形例と同様である。
【0054】
(第1実施形態の第5変形例)
図11および図12を参照して、第1実施形態の第5変形例について説明する。この第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュール105では、上記第1実施形態および上記第1実施形態の第1〜第4変形例の製造プロセスと異なり、基材20の表面20a上に、不規則的に分布する細孔36を多数有して多孔質膜となった金属層35を形成する場合について説明する。
【0055】
すなわち、図11に示すように、基材20の表面20a上には、Alの多孔質膜からなり平面的に見て網状を有する金属層35が形成されている。ここで、金属層35の表面には不規則的に分布する大小様々な大きさ(内径)の細孔36が形成されている。また、細孔36は、基材20側に略半球状に形成された底部36aを有しており、金属層35の表面は、底部36aの形状に沿って山の裾野が広がるような稜線を有して形成されている。また、細孔36の底部は表面20aに達しており、図12に示すように、金属層35が存在しない細孔36の底部36aから基材20の表面20aが露出している。なお、図12では、金属層35上(紙面手前側)に積層されている光触媒材層22については、説明の都合上、図示を省略している。
【0056】
したがって、第1実施形態の第5変形例においても、表面20aにおいてレーザ光が多重反射を起こした際、網状となった金属層35に形成された網目となる細孔36の部分から、光触媒材層22側に向かって放射状に進行するエバネッセント波が発生されるように構成されている。この際、光触媒材層22は、表面22a(図11参照)が、下部に形成された金属層35の稜線に沿った起伏を有して形成されている。なお、光触媒モジュール105のその他の構成については、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0057】
また、第1実施形態の第5変形例における光触媒モジュール105の製造プロセスでは、電子ビーム(EB)蒸着法などを用いて、型から取り出された基材20の表面20a上に完全な膜状の金属層35(例えば、アルミニウム)を形成する。その後、基材20を硫酸などの水溶液からなる電解液中に沈めるとともに、電解液中で基材20に形成された金属層35を陽極酸化することにより、電解液と接する金属層35の表面から基材20側に向かって延びる細孔36を多数形成して金属層35の多孔質膜を形成する。この際、金属層35の表面から進行した陽極酸化により、金属層35内部には、筒状の金属酸化物(例えば、アルミナ:Al2O3)が細孔36を囲むように徐々に深さ方向に生成される。したがって、陽極酸化の後にアルミナの部分をウェットエッチングを用いて除去することにより、金属層35に不規則的に分布した多数の細孔36が形成される。
【0058】
なお、光触媒モジュール105のその他の製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0059】
第1実施形態の第5変形例では、上記のように、金属層35を陽極酸化する製造プロセスを用いることによって、不規則的に分布した多数の細孔36を有する金属層35を、基材20の表面20a上に容易に形成することができる。また、陽極酸化を用いることにより、不規則的に分布した多数の細孔36を基材20の表面20a上に再現性よく形成することができる。これにより、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュール105を容易に作製することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図2および図13を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による光触媒モジュール200では、上記第1実施形態と異なり、外形が略球形状を有するように形成された基材220を用いて光触媒モジュール200を構成する場合について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0061】
本発明の第2実施形態による光触媒モジュール200は、図13に示すように、半導体レーザ素子1(図2参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材220とを備えている。
【0062】
ここで、第2実施形態では、基材220は、外径D1を有した状態で、外形が略球形状を有して形成されている。すなわち、レーザ光の出射方向(A方向)に沿って見た場合(図2参照)でも、レーザ光の出射方向と直交する方向(B方向)から見た場合(図13参照)でも、基材220の外形が略同様の球形状に構成されており、基材220の内部に光学的に閉じた空間が形成されている。また、シリコン樹脂からなる基材220には、一方側(A1側)の表面220aから内部(A1方向)に向かって凹状に窪む穴部220cが形成されており、半導体レーザ装置10のキャップ16が穴部220cの内側面に沿って隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、窓部16a(図2参照)から出射されたレーザ光が、穴部220cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材220内に入射されるように構成されている。
【0063】
なお、第2実施形態による光触媒モジュール200のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態による光触媒モジュール200においても、基材220の表面220a上に形成される金属層、光触媒材層およびバッファ層に関しては、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明した構成と同様の構成を有して形成することが可能である。
【0064】
第2実施形態では、上記のように、基材220を、略球形状を有して形成することによって、レーザ出射光(反射光)を、基材220の内部により容易に閉じ込めることができるので、光触媒材を活性化させるための励起光となるエバネッセント波および表面プラズモンを容易に発生させることができる。これにより、環境浄化能力がより高められた光触媒モジュール200を得ることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
(第3実施形態)
図14および図15を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態による光触媒モジュール300では、上記第1実施形態と異なり、光源の出射方向から見た断面形状が略矩形形状を有するように形成された基材320を用いて光触媒モジュール300を構成する場合について説明する。なお、図15は、図14の930−930線に沿った断面を示している。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0066】
本発明の第3実施形態による光触媒モジュール300は、図14および図15に示すように、半導体レーザ素子1(図15参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、穴部320cを嵌合させることにより半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材320とを備えている。
【0067】
ここで、第3実施形態では、基材320は、図15に示すように、光源の出射方向から見た場合の断面が矩形形状(辺々の長さがL2を有する略正方形形状)を有して形成されている。また、この際、基材320の隅部近傍において表面320aが所定の曲率を有して形成されている。また、図14に示すように、基材320の長手方向(A方向)の隅部近傍においても表面320aは所定の曲率を有して形成されている。これにより、基材320の内部に光学的に閉じた空間が形成されるように構成されている。なお、表面320aの隅部における曲率は、上記第1実施形態の場合よりも小さく形成されている。
【0068】
なお、第3実施形態による光触媒モジュール300のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第3実施形態による光触媒モジュール300においても、基材320の表面320a上に形成される金属層、光触媒材層およびバッファ層に関しては、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明した構成と同様の構成を有して形成することが可能である。
【0069】
第3実施形態では、上記のように、光源の出射方向から見た場合の基材320の断面を矩形形状(略正方形形状)を有して形成することによって、上記第1実施形態における基材20と比較して、表面320aの表面積をより大きく確保することができるので、表面積が増加する分、金属層21と光触媒材層22との形成領域をより広くすることができる。すなわち、外気と接触する光触媒材層22の表面積が増加するので、光触媒モジュール300の浄化能力をより向上させることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
(第4実施形態)
図16を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態による光触媒モジュール400では、上記第1実施形態と異なり、外殻部420bにより内部が中空構造を有するように形成された基材420を用いて光触媒モジュール400を構成する場合について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0071】
本発明の第4実施形態による光触媒モジュール400は、図16に示すように、半導体レーザ素子1が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材420とを備えている。
【0072】
ここで、第4実施形態では、基材420は、所定の厚みを有する外殻部420bと、長手方向の一方側(A2側)の表面(外側の表面)420aから外殻部420bを厚み方向(A1方向)に貫通する穴部420cとにより構成されている。また、穴部420cは、半導体レーザ装置10のステム15の外径と略等しいか若干大きく形成されており、ステム15が穴部420cに隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、光触媒モジュール400では、外殻部420bから基材420の内部空間Qに突出するように取り付けられたキャップ16の窓部16aから出射されたレーザ光が、確実に基材420の内部空間Qに入射されるように構成されている。
【0073】
また、第4実施形態では、基材420は、ガラス材料を用いて形成されている。すなわち、光触媒モジュール400の製造プロセスでは、外殻部420bを有する基材420を作製する際、ガラス電球製造時の製造技術を応用することが可能である。なお、基材420に金属層21および光触媒材層22を形成する点については、上記第1実施形態の製造プロセスと略同様である。
【0074】
なお、第4実施形態による光触媒モジュール400のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第4実施形態による光触媒モジュール400においても、基材420に形成する金属層、光触媒材層およびバッファ層に関して、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明したのと同様の変更を加えて形成することが可能である。
【0075】
第4実施形態では、上記のように、ガラス材料を用いて外殻部420bを有する中空構造の基材420を形成することによって、従来から用いられているガラス電球製造時の製造技術を応用することにより、光源からの出射光の利用効率が向上され、かつ、環境浄化能力が高められた光触媒モジュール400を容易に作製することができる。また、基材がガラス材料であるので、レーザ光による基材420の光損傷が生じず、長寿命の光触媒モジュール400を提供することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
(第5実施形態)
図17および図18を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態による光触媒モジュール500では、上記第1実施形態と異なり、表面520aが複数の凹部2と凸部3とを有するように形成された基材520を用いて光触媒モジュール500を構成する場合について説明する。なお、図18は、図17の950−950線に沿った断面を示している。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0077】
本発明の第5実施形態による光触媒モジュール500は、図17および図18に示すように、半導体レーザ素子1(図18参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材520とを備えている。
【0078】
ここで、第5実施形態では、シリコン樹脂からなる基材520は、表面520aが複数の凹部2および凸部3によって凹凸形状を有した状態で形成されている。また、複数の凹部2および凸部3は、表面520aの全ての領域に形成されている。これにより、上記第1実施形態における基材20、上記第3実施形態における基材320および上記第4実施形態における基材420と比較して、基材520の表面積は凹凸形状を有する分増加されて構成されている。また、表面520aに形成されている複数の凹部2および凸部3は、90度以下の鋭角な曲面により構成されていないのが好ましい。これにより、レーザ光を、基材520の表面520aの部分において、基材520内部に向かって確実に反射させることが可能になる。
【0079】
また、凹凸形状を有する表面520a上に、上記第1実施形態と同様の材料からなる金属層21および光触媒材層22が形成されている。なお、第5実施形態では、凹凸形状を構成する1つの凹部2から隣接する凸部3を隔てて隣り合う凹部2までの距離L3が、光触媒材層22の厚み(最大厚み)よりも大きく構成されている。したがって、金属層21および光触媒材層22は、凹凸形状の起伏に沿って基材520の表面520aを確実に覆うように積層されている。
【0080】
なお、表面520aが凹凸形状を有している場合においても、基材520の内部には閉じた空間が形成されており、基材520に入射された光が、表面520aを透過して外部に漏れ出ることがないように構成されている。また、基材520には、A1側の表面520aから内部に向かって所定の内径を有して凹状に窪む穴部520c(図17参照)が形成されており、半導体レーザ装置10のキャップ16が穴部520cと嵌合するように構成されている。したがって、窓部16a(図18参照)から出射されたレーザ光が、穴部520cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材520内に入射されるように構成されている。
【0081】
なお、第5実施形態による光触媒モジュール500のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第5実施形態による光触媒モジュール500の製造プロセスでは、表面520aが複数の凹部2および凸部3からなる凹凸形状を有するように基材520をモールド成型する点を除いて、EB蒸着法などを用いて、型から取り出された基材520の表面520a上に金属層21および光触媒材層22を形成する製造プロセス点などは、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
また、第5実施形態による光触媒モジュール500においても、基材520に形成する金属層および光触媒材層に関して、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例にて説明したのと同様の変更を加えて形成することが可能である。
【0083】
第5実施形態では、上記のように、基材520の表面520aが、複数の凹部2および凸部3を含む凹凸形状を有して形成されており、凹凸形状を構成する1つの凹部2から隣接する凸部3を隔てて隣り合う凹部2までの距離L3を、光触媒材層22の厚み(最大厚み)よりも大きく構成することによって、凹凸形状の起伏に沿って光触媒材層22を形成することができるので、光触媒材層22が外部に対して反応する際の面積(表面積)を増加させることができる。これにより、光触媒モジュール500は、環境浄化を効率よく行うことができる。なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第6実施形態)
図1、図19および図20を参照して、第6実施形態について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0085】
本発明の第6実施形態による光触媒システム600は、図19に示すように、上記第1実施形態による光触媒モジュール100が、反応容器610内に所定の配列形態をなした状態で複数(23個)収納されて構成されている。なお、反応容器610は、本発明の「筐体」の一例である。
【0086】
また、反応容器610は、流体の浄化作用が行われる凹部611aが形成された下部筐体611と、下部筐体611の開口部611bを塞ぐ蓋体612とによって構成されている。また、下部筐体611の側面には、浄化前の流体(気体あるいは液体)を反応容器610に流し込むための吸入部613と、浄化後の流体を反応容器610から外部に排出するための排出部614とが設けられている。そして、蓋体612の下面612aに、光触媒モジュール100が複数懸架された状態で取り付けられている。また、光源となる半導体レーザ装置10のリード端子11〜13(図1参照)が、蓋体612に設けられた図示しない引き出し電極に接続されることにより、光触媒モジュール100が動作可能に構成されている。
【0087】
また、図20に示すように、光触媒モジュール100は、蓋体612の面内方向において千鳥配列をなして取り付けられている。これにより、吸入部613から取り込まれた浄化前の流体が光触媒モジュール100群の間を通り抜けていく間に、光触媒材による浄化作用を受けて浄化された後、排出部614から排出されるように構成されている。
【0088】
このようにして、複数の光触媒モジュール100が取り付けられた光触媒システム600が構成されている。
【0089】
第6実施形態における光触媒システム600では、上記第1実施形態における光触媒モジュール100を備えているので、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュール100を用いて、流体の浄化を行うことが可能な光触媒システム600を実現することができる。
【0090】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0091】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、光触媒モジュールの光源として半導体レーザ素子を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源として発光ダイオード(LED)を用いてもよい。
【0092】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、基材を中実体構造として構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第5実施形態と同様に、基材を中空体構造としてもよい。
【0093】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、シリコン樹脂を用いて基材を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、透光性を有する樹脂としてたとえばエポキシ樹脂などを用いて基材を形成してもよい。
【0094】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、樹脂を用いて基材を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第5実施形態と同様に、基材をガラス材料を用いて形成してもよい。
【0095】
また、上記第1〜第6実施形態では、Auからなる金属粒子を用いて金属層を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、島状に分布した状態または網状に形成されるような金属層であれば、Au以外の、たとえば、Pt、Ag、Cu、Fe、Pd、AlおよびWなどの金属を用いて金属層を形成してもよい。このような金属を用いても、基材の表面近傍においてエバネッセント波を発生させることが可能であり、金属粒子が有する自由電子とエバネッセント波とが相互作用して表面プラズモンを発生させることが可能である。
【0096】
また、上記第1実施形態の第5変形例では、Alの多孔質膜を用いて基材20の表面20a上に金属層35を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、陽極酸化によって形状および分布状態に不規則性を有するような細孔が形成可能な金属多孔質膜であれば、Al以外の、たとえば、Ti、TaおよびNbなどの金属を用いて金属層を形成してもよい。
【0097】
また、上記第1〜第6実施形態では、TiO2からなる光触媒材を用いた光触媒材層を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、TiO2以外の、たとえば、窒素ドープのTiO2、炭素ドープのTiO2、硫黄ドープのTiO2などのその他の光触媒材を用いて光触媒材層を形成してもよい。
【0098】
また、上記第6実施形態では、光触媒モジュール100を反応容器610を構成する蓋体612にのみ取り付けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、蓋体612のみならず、光触媒モジュール100を下部筐体611の内側面や底面などの場所に取り付けて光触媒システムを構成してもよい。すなわち、光触媒モジュール100の平面的な配列のみならず、反応容器610内において光触媒モジュール100を立体的に配置するようにしてもよい。
【0099】
また、上記第6実施形態では、複数の光触媒モジュール100を蓋体612の面内方向において千鳥配列をなすように取り付けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の光触媒モジュール100をマトリクス状(碁盤の目状)に配置してもよい。
【0100】
また、上記第6実施形態では、第1実施形態による光触媒モジュール100を用いて光触媒システム600を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上記第1実施形態の第1〜第5変形例による光触媒モジュールや、上記第2〜第5実施形態による光触媒モジュールを個々に用いて光触媒システムを構成してもよいし、各々を組み合わせてもよい。
【0101】
また、上記第1〜第6実施形態では、金属製のキャップ16が被せられた半導体レーザ装置10を基材20に取り付けることにより光触媒モジュール100を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体レーザ装置10にキャップ16を設けることなく、基材の穴部を半導体レーザ装置に直接被せて取り付けて光触媒モジュールを構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 半導体レーザ素子(光源)
2 凹部
3 凸部
10 半導体レーザ装置(光源)
20、220、320、420、520 基材
20a、220a、320a、420a、520a 表面
21、35 金属層
22、23、24 光触媒材層
100、101、102、103、104、105 光触媒モジュール
200、300、400、500 光触媒モジュール
600 光触媒システム
610 反応容器(筐体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒モジュールおよび光触媒システムに関し、特に、光源と光触媒材とを備えた光触媒モジュールおよび光触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの入射光を励起光に用いた光触媒素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、外部から入射された光を導波可能に構成された基材と、基材の表面上に形成された金属被覆層と、金属被覆層上に形成された光触媒薄膜層とを備えた光触媒素子が開示されている。この特許文献1に記載の光触媒素子では、所定の部分に、素子の表面から光触媒薄膜層および金属被覆層を貫通して基材まで達する受光部(貫通部)が形成されている。そして、光触媒素子の外部に設けられるとともに受光部と対向した位置に配置された光源(発光ダイオード)から出射された光が、受光部を介して基材内部に入射されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された光触媒素子では、外部に配置された光源からの出射光のうち、受光部を通り抜ける光のみが基材内部に入射されて光触媒素子の励起光として利用される一方、受光部を通り抜けない光は、光触媒素子の励起光には利用されない構成であると考えられる。このため、光源からの出射光の利用効率が低下するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光源からの出射光の利用効率を向上させることが可能な光触媒モジュールおよび光触媒システムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光触媒モジュールは、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、基材の表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面による光触媒モジュールでは、上記のように、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材とを備えることによって、光源からの出射光の全てが基材内部に入射された後に基材の表面により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層の励起光として利用されるので、光源からの出射光の一部のみを光触媒材層の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率を向上させることができる。
【0009】
また、第1の局面による光触媒モジュールでは、上記した構成を備えることによって、光源により基材内部に入射された光が、基材と金属層との界面において反射を繰り返しながら閉空間内に閉じ込められた状態となった際、島状または網状となった金属粒子間に形成された隙間を介して基材から金属層上の光触媒材層に向かって進むエバネッセント波(エバネッセント光)が発生される。ここで、エバネッセント波とは、所定の屈折率を有する媒質A中に入射した光が、他の異なる屈折率を有する媒質Bとの接触界面において全反射する際に、接触界面から媒質B中にしみ出す光(表面波/局在波)として知られている。また、エバネッセント波の発生に伴い、金属粒子が有する自由電子とエバネッセント光とが相互作用(共鳴)して表面プラズモンが発生される。この表面プラズモンは、光強度を増強させる現象として観察される。そして、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とによる励起光を利用して、光触媒材層が有する光触媒材をより活性化させることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒モジュールを得ることができる。
【0010】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、金属層は、島状に分布した金属の粒子、または、網状の状態を有する金属層の網目が、基材の表面上に不規則的に配置されている。このように構成すれば、島を形成する金属粒子の大きさ(隣接する金属粒子同士の間隔)や、網状となった金属層の網目の大きさが規則性をしない分、金属粒子の大きさや網目が規則性を有する場合と比較して、表面プラズモンを発生させるためのエバネッセント波が有する波長(光源からの光と金属粒子と相互作用を起こすことが可能な共鳴波長)に所定の範囲の幅を持たせることができる。これにより、光源が有する出射光の波長幅(波長帯域)を広げることができるので、光源波長にばらつきが生じる場合であっても、光触媒材層における光触媒反応を活性化させるための表面プラズモンを安定して発生させることができる。
【0011】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、光源は、半導体レーザ素子である。このように構成すれば、コヒーレント光であるレーザ出射光を用いて、より強力なエバネッセント波を発生させることができる。これにより、表面プラズモンをより強力に発生させることができるので、光触媒材がより激しく励起される分、光触媒モジュールの環境浄化能力をより高めることができる。
【0012】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、基材は、透光性を有する樹脂またはガラス材料からなり、基材の表面は、尖った角部を有しない丸みを帯びた形状を有して形成されている。このように構成すれば、光源から出射されて樹脂中を透過した光を、金属層と接する基材の尖った角部のない丸みを帯びた表面において基材内部に向かって確実に反射させることができるので、表面プラズモンの元となるエバネッセント波(エバネッセント光)を容易に発生させることができる。また、基材の表面が尖った角部を有さずに丸みを帯びて形成されているので、一度反射された光が基材内部を透過して再び別な場所の表面で反射する状態を継続させることができる。これにより、基材と金属層との界面においてエバネッセント波を効率よく発生させることができる。
【0013】
上記第1の局面による光触媒モジュールにおいて、好ましくは、基材の表面は、複数の凹部および凸部を含む形状を有しており、1つの凹部から隣接する凸部を隔てて隣り合う凹部までの距離は、光触媒材層の厚みよりも大きい。このように構成すれば、凹部と凸部とからなる凹凸形状の起伏に沿って光触媒材層を形成することができるので、光触媒材層が外部に対して反応する際の面積(表面積)を増加させることができる。これにより、環境浄化を効率よく行うことができる。
【0014】
この発明の第2の局面による光触媒システムは、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、基材の表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを含む光触媒モジュールと、複数の光触媒モジュールを収納する筐体とを備える。
【0015】
この発明の第2の局面による光触媒システムでは、上記のように、光源と、光源を取り囲むように配置され、光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材とを含む光触媒モジュールを備えることによって、光源からの出射光の全てが基材内部に入射された後に基材の表面により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層の励起光として利用されるので、光源からの出射光の一部のみを光触媒材層の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュールにより構成された光触媒システムを得ることができる。
【0016】
また、第2の局面による光触媒システムでは、複数の光触媒モジュールの各々が上記した構成を含むことによって、個々の光触媒モジュールにおいてモジュール内で発生するエバネッセント波および表面プラズモンによる励起光を用いて光触媒反応を起こさせることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールを構成する基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による光触媒モジュールにおいて、基材の表面近傍でエバネッセント波により光触媒材層が励起される現象を模式的に示した図である。
【図6】金属層を構成する金属粒子のサイズとエバネッセント光の波長との関係を示した図である。
【図7】本発明の第1実施形態の第1変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第2変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の第3変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の第4変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した拡大平面図である。
【図12】本発明の第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュールの基材の表面近傍を示した平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図14】本発明の第3実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図15】本発明の第3実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図16】本発明の第4実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図17】本発明の第5実施形態による光触媒モジュールの構造を示した上面図である。
【図18】本発明の第5実施形態による光触媒モジュールの構造を示した正面図である。
【図19】本発明の第6実施形態による光触媒モジュールを備えた光触媒システムの構造を示した断面図である。
【図20】本発明の第6実施形態による光触媒システムを構成する反応容器の蓋体に固定された光触媒モジュールの配置関係を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による光触媒モジュール100の構造について説明する。なお、図2は、図1の910−910線に沿った断面を示している。
【0020】
本発明の第1実施形態による光触媒モジュール100は、図1および図2に示すように、内部に半導体レーザ素子1(図2参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材20とを備えている。なお、半導体レーザ素子1および半導体レーザ装置10は、本発明の「光源」の一例である。
【0021】
また、基材20は、透光性を有するシリコン樹脂を用いたモールド成型品からなり、外径D1(図2参照)を有した状態で、レーザ光の出射方向(A1方向)に沿って略円柱状に延びて形成されている。また、基材20の長手方向(A方向)の両端部(隅部)近傍において、表面20aが所定の曲率からなる曲面を有して滑らかに形成されることにより、基材20は、表面20aによって内部に閉じた空間が形成されるように構成されている。ここで、表面20aには尖った角部などが形成されずに、全ての領域において丸みを帯びて形成されているのが好ましい。また、表面20aの丸みを帯びた部分が90度以下の鋭角な曲面によって構成されていないことがより好ましい。
【0022】
また、基材20はシリコン樹脂による中実体構造を有しており、長手方向の一方側(A1側)の表面20aから内部(A1方向)に向かって所定の内径を有して凹状に窪む穴部20cが形成されている。この穴部20cは、後述する半導体レーザ装置10のキャップ16の外形形状と略等しいか若干大きく形成されており、キャップ16が穴部20cの内側面に沿って隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、光触媒モジュール100では、キャップ16の窓部16a(図2参照)から出射されたレーザ光が、穴部20cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材20内部に入射されるように構成されている。また、基材20内部に閉じた空間が形成されることにより、基材20内部に入射された光が、表面20aを透過して外部に漏れ出ることがないように構成されている。
【0023】
また、基材20の表面20a上には、金属ナノ粒子からなる金属層21と、薄膜状の光触媒材層22とが形成されている。ここで、図1および図2では、基材20の表面20a上に金属層21と光触媒材層22とが形成されている様子を概略的に示している一方、詳細な層構造については、図3に図示している。すなわち、基材20の表面20a付近を拡大した状態では、図3に示すように、基材20の表面20a上に、Auからなり個々のサイズ(平均粒径など)が定まらずに不規則性を有した粒子状の金属粒子21aが形成されている。また、金属層21は、個々の金属粒子21aが表面20a上に不規則的に分布した状態で形成されている。
【0024】
また、上述の金属層21を平面的に見た場合、図4に示すように、個々の金属粒子21aが表面20a上に不規則的に島状に分布して形成されている領域や、隣接する金属粒子21a同士が部分的に結合して網状の状態を有して形成されている領域などがあり、全体として、金属層21は、表面20a上において完全な連続膜とはなっていない。また、金属粒子21aの個々のサイズが不規則性を有するので、島状に分布した金属粒子21a間に形成される隙間の大きさも不規則性を有している。また、金属粒子21aの個々のサイズが不規則性を有するので、網状に形成されている金属層21の領域における網目(隙間)の大きさも不規則性を有している。そして、島状または網状の領域に関係なく、金属粒子21a間に形成された不規則性を有する隙間(網目)の部分から、基材20の表面20aが露出している。なお、図4では、金属層21上(紙面手前側)に積層されている光触媒材層22については、説明の都合上、図示を省略している。
【0025】
また、図3に示すように、金属層21と、金属粒子21aの隙間(網目)から露出する基材20の表面20aとを覆うように、アナターゼ型(低温型)二酸化チタン(TiO2)からなる光触媒材層22が薄膜状に形成されている。ここで、光触媒材層22は、数nm以上約1μm以下の厚み(平均厚み)を有している。また、光触媒材層22は、外部流体(気体または液体および両者が混在したもの)と接する表面22aが、下部に形成された金属粒子21aの分布状態(表面的な凹凸形状)に伴って起伏を有した状態で形成されている。
【0026】
したがって、第1実施形態では、図5に示すように、半導体レーザ装置10(図1参照)から出射されたレーザ光(複数の矢印で示す)が、金属層21または光触媒材層22と接する基材20の界面(表面20aの部分)で基材20内部に向かって反射(全反射)するように構成されている。この際、基材20の界面が90度以下の鋭角な曲面を有していないので、レーザ光は、基材20の界面において、基材20内部に向かって確実に反射するように構成されている。また、図1に示すように、基材20は穴部20cにより半導体レーザ装置10を取り囲むようにして取り付けられているので、反射後のレーザ光が再び表面20aの別な位置で反射する多重反射を繰り返しながら、レーザ出射光(反射光)が基材20内部の閉じた空間内に閉じ込められるように構成されている。
【0027】
これにより、第1実施形態では、表面20aにおいてレーザ光が多重反射を起こす際、島状および網状となった金属層21(金属粒子21aと金属粒子21aとの間)に形成された隙間(網目)の部分から、光触媒材層22側に向かって放射状に局在するエバネッセント波(エバネッセント光)が発生されるように構成されている。ここで、隙間の長さ(平均値)がエバネッセント光の有する波長以下となるように金属層21(所定の粒子サイズを有する個々の金属粒子21aが分布した状態)が形成されるのが好ましい。これにより、エバネッセント波を確実に発生させることが可能になる。
【0028】
また、第1実施形態では、基材20の表面20aの部分で発生したエバネッセント波により、金属層21を構成する個々の金属粒子21aの表面に、表面プラズモンが発生するように構成されている。すなわち、レーザ出射光(反射光)が発する光源の明るさ(光強度)が、金属粒子21aの表面に生じた表面プラズモンによってさらに増強されるように構成されている。これにより、光触媒モジュール100では、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とにより増強された励起光を利用して、光触媒材層22が有する光触媒材をより活性化させることが可能に構成されている。なお、エバネッセント波は局在波であり、光触媒材層22から外部(大気中)に放射されることはなく、光触媒モジュール100の周囲にユーザが近寄った場合でも、何ら影響を及ぼさない。
【0029】
ここで、表面プラズモンが強く発生するためには、金属粒子のサイズ(平均直径)に応じた波長(共鳴波長)が存在する。具体的には、金属粒子のサイズとエバネッセント光の波長(共鳴波長)とは、図6に示すような相関関係を有している。すなわち、金属粒子が相対的に小さければ、表面プラズモンの共鳴波長も相対的に小さくなり、金属粒子が相対的に大きければ、表面プラズモンの共鳴波長も相対的に大きくなる性質を有している。なお、図6では、グラフの横軸に示す金属粒子のサイズは、個々の金属粒子が規則的なサイズを有して形成された状態であり、基材の表面上に規則性を有して分布した場合の平均粒径として示している。この場合、金属粒子間の隙間間隔も基材の表面上において略一様であることが前提とされている。
【0030】
また、一般的に、光源として用いられる半導体レーザ素子は、レーザ光の出射波長が素子毎に所定の範囲内でばらつきを生じた状態で製造される。たとえば、約400nmの発振波長を有する半導体レーザ素子を製造した場合、個々のレーザ素子間において、約390nm〜約410nmの範囲で出射波長がばらついている。したがって、基材の表面上に形成された金属粒子のサイズと、光触媒モジュールに搭載されている半導体レーザ素子の発振波長とが図6におけるグラフP上で交わる場合には、その半導体レーザ素子(光源)の波長が表面プラズモンの共鳴波長となってエバネッセント光を発生させることが可能である一方、金属粒子のサイズと半導体レーザ素子の発振波長とが図6におけるグラフP上で交わらない(一致しない)場合には、その半導体レーザ素子(光源)の発振波長が表面プラズモンのための共鳴波長にならずにエバネッセント光を適切に発生させることができない。
【0031】
このような点を考慮した結果、第1実施形態における基材20の表面20aには、金属粒子21aのサイズが不規則性を有し、かつ、金属粒子21a間の隙間間隔も不規則性を有した金属層21が形成されているので、光源となる半導体レーザ素子1の発振波長が製造誤差に起因して素子間でばらつきを生じていても、半導体レーザ素子1が搭載された個々の光触媒モジュール100では、半導体レーザ素子1が有する発振波長のばらつき(素子毎の個体差)を吸収することが可能である。すなわち、図6を用いて説明すると、半導体レーザ素子1が波長範囲Aを有して度数分布していても、基材20の金属層21が波長範囲Aに対応する範囲Bの複数の金属粒子サイズを含んで形成されているので、波長範囲Aを有して製造されたどの半導体レーザ素子1を用いても、基材20の表面20aで表面プラズモンを確実に共鳴させることが可能であることを意味している。なお、後述する製造プロセスにおいて、金属層21の形成条件を適宜制御して金属粒子21aのサイズ(隙間や網目の大きさ)を形成することにより、光源となる半導体レーザ素子1の波長帯域(約400nm帯、約500nm帯、約700nm帯など)に応じて光触媒材層22に光触媒反応を起こさせることが可能な光触媒モジュール100を作製することができる。
【0032】
また、図1に示すように、半導体レーザ装置10は、半導体レーザ素子1(図2参照)が載置された台座14(図2参照)と、リード端子11〜13を互いに絶縁した状態で固定するとともに台座14が固定される金属製のステム15と、ステム15に取り付けられ、半導体レーザ素子1を覆うとともにレーザ出射光を透過可能な窓部16a(図2参照)を有する金属製のキャップ16とを備えている。また、半導体レーザ素子1の後方(窓部16aに対向する側とは反対側)の台座14上には、図示しないモニタ用PD(フォトダイオード)が固定されている。そして、半導体レーザ素子1およびモニタ用PDの各々のp側電極が、金属線を介してリード端子12および13にそれぞれ接続されるとともに、半導体レーザ素子1およびモニタ用PDの各々のn側電極が、台座14を介して負極側のリード端子11に接続されている。
【0033】
次に、図1〜図4を参照して、第1実施形態による光触媒モジュール100の製造プロセスについて説明する。
【0034】
まず、硬化前のシリコン樹脂を所定の形状を有する型(図示せず)に流し込み、図1および図2に示すような形状を有する基材20をモールド成型する。この際、基材20には、半導体レーザ装置10のキャップ16が嵌め込まれる穴部20cが同時に形成される。
【0035】
次に、図3に示すように、電子ビーム(EB)蒸着法などを用いて、型から取り出された基材20の表面20a上に金属層21を形成する。この際、成膜条件を制御することにより、光源となる半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光の発振波長に応じて、表面20a上に形成される金属層21の厚み(金属粒子21aの大きさ)が決定される。これにより、図4に示すように、個々の金属粒子21aが表面20a上に島状または網状に分布した状態の金属層21が形成される。その後、RFマグネトロンスパッタ法などを用いて、金属層21と、金属層21の隙間から露出する表面20aとの表面とを覆うように、光触媒材層22(図3参照)を堆積させる。
【0036】
最後に、所定の製造プロセスを用いて製造された半導体レーザ装置10を基材20の穴部20cに嵌め込むことにより、図1に示した光触媒モジュール100が製造される。
【0037】
第1実施形態では、上記のように、半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10を取り囲むように配置され、半導体レーザ装置10からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面20aを有する基材20とを備えることによって、半導体レーザ装置10からの出射光の全てが基材20内部に入射された後に基材20により構成された閉空間内に閉じ込められた状態で光触媒材層22の励起光として利用されるので、半導体レーザ装置10からの出射光の一部のみを光触媒材層22の励起光に利用する場合と比較して、光源からの出射光の利用効率を向上させることができ、光源と光触媒構造とが一体となったコンパクトな光触媒モジュール100を得ることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記した構成を備えることによって、半導体レーザ装置10により基材20内部に入射された光が、金属層21または光触媒材層22と接する基材20の表面20aの部分(界面)で反射を繰り返しながら閉空間内に閉じ込められた状態となった際、島状に分布する金属粒子21a間に形成された隙間から、光触媒材層22側に向かって進行するエバネッセント波が発生される。また、光触媒材層22中に発生したエバネッセント波により、金属層21(個々の金属粒子21a)の表面に、表面プラズモンが発生される。そして、エバネッセント波の発生とエバネッセント波に伴う表面プラズモンの発生とによる励起光を利用して、光触媒材層22が有する光触媒材をより活性化させることができるので、環境浄化能力が高められた光触媒モジュール100を得ることができる。
【0039】
また、第1実施形態では、金属層21を構成する島状または網状に分布した個々の金属粒子21aが、基材20の表面20a上に不規則的に配置されることによって、金属粒子21aの大きさ(金属粒子21a同士の間隔)や、金属層21の網目の大きさが不規則となる分、表面プラズモンを発生させるためのエバネッセント波が有する波長(半導体レーザ素子1からの光と金属粒子21aと相互作用を起こすことが可能な共鳴波長)に所定の範囲の幅を持たせることができる。これにより、半導体レーザ素子1が有する出射光の波長幅(波長帯域)を広げることができるので、製造誤差に起因して個々の半導体レーザ素子1の波長にばらつきが生じる場合であっても、光触媒材層22における光触媒反応を活性化させるための表面プラズモンを安定して発生させることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、光源に半導体レーザ素子1を用いることによって、レーザ出射光を用いて、より強力なエバネッセント波を発生させることができる。これにより、表面プラズモンをより強力に発生させることができるので、光触媒材層22がより激しく励起される分、光触媒モジュール100の環境浄化能力をより高めることができる。
【0041】
また、第1実施形態では、透光性を有するシリコン樹脂を用いて基材20を形成し、かつ、基材20の表面20aを、尖った角部を有しない滑らかな丸みを帯びた形状を有して形成することによって、半導体レーザ素子1から出射されて樹脂中を透過した光を、金属層21と接する基材20の丸みを帯びた表面20aにおいて基材20内部に向かって確実に反射させることができるので、表面プラズモンの元となるエバネッセント波(エバネッセント光)を容易に発生させることができる。また、表面20aが尖った角部などを有さずに滑らかな丸みを帯びて形成されているので、一度反射されたレーザ光がシリコン樹脂中を透過して再び別な場所の表面20aで反射する状態を継続させることができる。これにより、基材20と金属層21との界面において、エバネッセント波を効率よく発生させることができる。
【0042】
(第1実施形態の第1変形例)
図7を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例による光触媒モジュール101では、上記第1実施形態と異なり、光触媒材層23の表面23aが平坦性を有している場合について説明する。
【0043】
すなわち、図7に示すように、光触媒材層23は、外気と接する表面23aが平坦性を有した状態で基材20の表面20aと金属層21とを覆うように形成されている。また、表面23aは、表面20aと略同じ輪郭を有するように形成されている。この場合、光触媒モジュール101の製造プロセスにおいて、金属層21が形成された基材20の表面20aに、微粒子からなる光触媒材が混入された溶剤をスピンコートなどの方法を用いて塗布した後、所定の温度条件下で基材20を加熱することにより、平坦性を有する表面23aからなる光触媒材層23を形成することが可能である。なお、光触媒モジュール101のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0044】
第1実施形態の第1変形例では、上記のように、スピンコートなどを用いて基材20の表面20aに光触媒材層23を形成することができるので、スパッタ装置などの大がかりな装置を用いて光触媒モジュールを製造する場合と異なり、製造プロセスを簡素化させることができる。これにより、光触媒モジュール101の製造コストを低減することができる。
【0045】
(第1実施形態の第2変形例)
図8を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。この第1実施形態の第2変形例による光触媒モジュール102では、上記第1実施形態と異なり、光触媒材層22が、誘電体などからなるバッファ層30(保護膜)を介して形成される場合について説明する。
【0046】
すなわち、図8に示すように、金属層21が形成された基材20の表面20aをバッファ層30が覆うとともに、バッファ層30上に光触媒材層22が形成されている。ここで、バッファ層30は、AlNやAl2O3などの材料からなる誘電体膜により構成されていてもよいし、SiO2などの酸化膜であってもよい。また、バッファ層30は、金属層21と光触媒材層22とが直接接触した際に化学反応が起きやすくなることを抑制するために設けられている。
【0047】
また、第1実施形態の第2変形例における光触媒モジュール102の製造プロセスでは、金属層21が形成された基材20の表面20aに、RFマグネトロンスパッタ法などを用いて先にバッファ層30を形成した後、バッファ層30の表面上に光触媒材層22を堆積させる方法が適用される。なお、光触媒モジュール102のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0048】
第1実施形態の第2変形例では、上記のように、光触媒材層22がバッファ層30を介して金属層21(基材20)の表面に形成されているので、光触媒モジュール102の使用時に、金属層21と光触媒材層22とが直接的に化学反応を起こすことを抑制することができる。
【0049】
(第1実施形態の第3変形例)
図9を参照して、第1実施形態の第3変形例について説明する。この第1実施形態の第3変形例による光触媒モジュール103では、上記第1実施形態の第2変形例の製造プロセスと異なり、スピンコートにより光触媒材層24を形成する場合について説明する。
【0050】
すなわち、図9に示すように、金属層21が形成された基材20の表面20a上にRFマグネトロンスパッタ法などを用いてバッファ層30を形成した後、上記第1実施形態の第1変形例の製造プロセスと同様にスピンコートを用いて光触媒材層24を塗布し、その後、所定の温度条件下で基材20を加熱することにより平坦性を有する表面24aからなる光触媒材層24を形成することが可能である。なお、光触媒モジュール103のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0051】
第1実施形態の第3変形例では、上記のように、バッファ層30を形成した後に光触媒材層24をスピンコートを用いて形成しているので、製造コストが低減された光触媒モジュール103を製造することができ、かつ、光触媒モジュール103の使用時に、金属層21と光触媒材層24とが直接的に化学反応を起こすことを抑制することができる。
【0052】
(第1実施形態の第4変形例)
図10を参照して、第1実施形態の第4変形例について説明する。この第1実施形態の第4変形例による光触媒モジュール104では、上記第1実施形態の第2変形例の製造プロセスと異なり、バッファ層30および光触媒材層24を共にスピンコートにより形成する場合について説明する。
【0053】
すなわち、図10に示すように、バッファ層30は、基材20とは反対側の表面30aが平坦性を有した状態で表面20aと金属層21とを覆うように形成されている。そして、バッファ層30を覆う光触媒材層24についても、バッファ層30との接触面(内表面)および外気と接する表面24aとが共に平坦性を有した状態で形成されている。なお、光触媒モジュール104のその他の構成および製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。また、第1実施形態の第4変形例の効果については、上記第3変形例と同様である。
【0054】
(第1実施形態の第5変形例)
図11および図12を参照して、第1実施形態の第5変形例について説明する。この第1実施形態の第5変形例による光触媒モジュール105では、上記第1実施形態および上記第1実施形態の第1〜第4変形例の製造プロセスと異なり、基材20の表面20a上に、不規則的に分布する細孔36を多数有して多孔質膜となった金属層35を形成する場合について説明する。
【0055】
すなわち、図11に示すように、基材20の表面20a上には、Alの多孔質膜からなり平面的に見て網状を有する金属層35が形成されている。ここで、金属層35の表面には不規則的に分布する大小様々な大きさ(内径)の細孔36が形成されている。また、細孔36は、基材20側に略半球状に形成された底部36aを有しており、金属層35の表面は、底部36aの形状に沿って山の裾野が広がるような稜線を有して形成されている。また、細孔36の底部は表面20aに達しており、図12に示すように、金属層35が存在しない細孔36の底部36aから基材20の表面20aが露出している。なお、図12では、金属層35上(紙面手前側)に積層されている光触媒材層22については、説明の都合上、図示を省略している。
【0056】
したがって、第1実施形態の第5変形例においても、表面20aにおいてレーザ光が多重反射を起こした際、網状となった金属層35に形成された網目となる細孔36の部分から、光触媒材層22側に向かって放射状に進行するエバネッセント波が発生されるように構成されている。この際、光触媒材層22は、表面22a(図11参照)が、下部に形成された金属層35の稜線に沿った起伏を有して形成されている。なお、光触媒モジュール105のその他の構成については、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0057】
また、第1実施形態の第5変形例における光触媒モジュール105の製造プロセスでは、電子ビーム(EB)蒸着法などを用いて、型から取り出された基材20の表面20a上に完全な膜状の金属層35(例えば、アルミニウム)を形成する。その後、基材20を硫酸などの水溶液からなる電解液中に沈めるとともに、電解液中で基材20に形成された金属層35を陽極酸化することにより、電解液と接する金属層35の表面から基材20側に向かって延びる細孔36を多数形成して金属層35の多孔質膜を形成する。この際、金属層35の表面から進行した陽極酸化により、金属層35内部には、筒状の金属酸化物(例えば、アルミナ:Al2O3)が細孔36を囲むように徐々に深さ方向に生成される。したがって、陽極酸化の後にアルミナの部分をウェットエッチングを用いて除去することにより、金属層35に不規則的に分布した多数の細孔36が形成される。
【0058】
なお、光触媒モジュール105のその他の製造プロセスについては、上記第1実施形態で示した光触媒モジュール100と略同様である。
【0059】
第1実施形態の第5変形例では、上記のように、金属層35を陽極酸化する製造プロセスを用いることによって、不規則的に分布した多数の細孔36を有する金属層35を、基材20の表面20a上に容易に形成することができる。また、陽極酸化を用いることにより、不規則的に分布した多数の細孔36を基材20の表面20a上に再現性よく形成することができる。これにより、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュール105を容易に作製することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図2および図13を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による光触媒モジュール200では、上記第1実施形態と異なり、外形が略球形状を有するように形成された基材220を用いて光触媒モジュール200を構成する場合について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0061】
本発明の第2実施形態による光触媒モジュール200は、図13に示すように、半導体レーザ素子1(図2参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材220とを備えている。
【0062】
ここで、第2実施形態では、基材220は、外径D1を有した状態で、外形が略球形状を有して形成されている。すなわち、レーザ光の出射方向(A方向)に沿って見た場合(図2参照)でも、レーザ光の出射方向と直交する方向(B方向)から見た場合(図13参照)でも、基材220の外形が略同様の球形状に構成されており、基材220の内部に光学的に閉じた空間が形成されている。また、シリコン樹脂からなる基材220には、一方側(A1側)の表面220aから内部(A1方向)に向かって凹状に窪む穴部220cが形成されており、半導体レーザ装置10のキャップ16が穴部220cの内側面に沿って隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、窓部16a(図2参照)から出射されたレーザ光が、穴部220cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材220内に入射されるように構成されている。
【0063】
なお、第2実施形態による光触媒モジュール200のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第2実施形態による光触媒モジュール200においても、基材220の表面220a上に形成される金属層、光触媒材層およびバッファ層に関しては、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明した構成と同様の構成を有して形成することが可能である。
【0064】
第2実施形態では、上記のように、基材220を、略球形状を有して形成することによって、レーザ出射光(反射光)を、基材220の内部により容易に閉じ込めることができるので、光触媒材を活性化させるための励起光となるエバネッセント波および表面プラズモンを容易に発生させることができる。これにより、環境浄化能力がより高められた光触媒モジュール200を得ることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
(第3実施形態)
図14および図15を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態による光触媒モジュール300では、上記第1実施形態と異なり、光源の出射方向から見た断面形状が略矩形形状を有するように形成された基材320を用いて光触媒モジュール300を構成する場合について説明する。なお、図15は、図14の930−930線に沿った断面を示している。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0066】
本発明の第3実施形態による光触媒モジュール300は、図14および図15に示すように、半導体レーザ素子1(図15参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、穴部320cを嵌合させることにより半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材320とを備えている。
【0067】
ここで、第3実施形態では、基材320は、図15に示すように、光源の出射方向から見た場合の断面が矩形形状(辺々の長さがL2を有する略正方形形状)を有して形成されている。また、この際、基材320の隅部近傍において表面320aが所定の曲率を有して形成されている。また、図14に示すように、基材320の長手方向(A方向)の隅部近傍においても表面320aは所定の曲率を有して形成されている。これにより、基材320の内部に光学的に閉じた空間が形成されるように構成されている。なお、表面320aの隅部における曲率は、上記第1実施形態の場合よりも小さく形成されている。
【0068】
なお、第3実施形態による光触媒モジュール300のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第3実施形態による光触媒モジュール300においても、基材320の表面320a上に形成される金属層、光触媒材層およびバッファ層に関しては、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明した構成と同様の構成を有して形成することが可能である。
【0069】
第3実施形態では、上記のように、光源の出射方向から見た場合の基材320の断面を矩形形状(略正方形形状)を有して形成することによって、上記第1実施形態における基材20と比較して、表面320aの表面積をより大きく確保することができるので、表面積が増加する分、金属層21と光触媒材層22との形成領域をより広くすることができる。すなわち、外気と接触する光触媒材層22の表面積が増加するので、光触媒モジュール300の浄化能力をより向上させることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
(第4実施形態)
図16を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態による光触媒モジュール400では、上記第1実施形態と異なり、外殻部420bにより内部が中空構造を有するように形成された基材420を用いて光触媒モジュール400を構成する場合について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0071】
本発明の第4実施形態による光触媒モジュール400は、図16に示すように、半導体レーザ素子1が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材420とを備えている。
【0072】
ここで、第4実施形態では、基材420は、所定の厚みを有する外殻部420bと、長手方向の一方側(A2側)の表面(外側の表面)420aから外殻部420bを厚み方向(A1方向)に貫通する穴部420cとにより構成されている。また、穴部420cは、半導体レーザ装置10のステム15の外径と略等しいか若干大きく形成されており、ステム15が穴部420cに隙間なく嵌め込まれるように構成されている。したがって、光触媒モジュール400では、外殻部420bから基材420の内部空間Qに突出するように取り付けられたキャップ16の窓部16aから出射されたレーザ光が、確実に基材420の内部空間Qに入射されるように構成されている。
【0073】
また、第4実施形態では、基材420は、ガラス材料を用いて形成されている。すなわち、光触媒モジュール400の製造プロセスでは、外殻部420bを有する基材420を作製する際、ガラス電球製造時の製造技術を応用することが可能である。なお、基材420に金属層21および光触媒材層22を形成する点については、上記第1実施形態の製造プロセスと略同様である。
【0074】
なお、第4実施形態による光触媒モジュール400のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第4実施形態による光触媒モジュール400においても、基材420に形成する金属層、光触媒材層およびバッファ層に関して、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例の各々において説明したのと同様の変更を加えて形成することが可能である。
【0075】
第4実施形態では、上記のように、ガラス材料を用いて外殻部420bを有する中空構造の基材420を形成することによって、従来から用いられているガラス電球製造時の製造技術を応用することにより、光源からの出射光の利用効率が向上され、かつ、環境浄化能力が高められた光触媒モジュール400を容易に作製することができる。また、基材がガラス材料であるので、レーザ光による基材420の光損傷が生じず、長寿命の光触媒モジュール400を提供することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0076】
(第5実施形態)
図17および図18を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態による光触媒モジュール500では、上記第1実施形態と異なり、表面520aが複数の凹部2と凸部3とを有するように形成された基材520を用いて光触媒モジュール500を構成する場合について説明する。なお、図18は、図17の950−950線に沿った断面を示している。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0077】
本発明の第5実施形態による光触媒モジュール500は、図17および図18に示すように、半導体レーザ素子1(図18参照)が搭載された半導体レーザ装置10と、半導体レーザ装置10のリード端子11〜13以外の部分を取り囲むように取り付けられた基材520とを備えている。
【0078】
ここで、第5実施形態では、シリコン樹脂からなる基材520は、表面520aが複数の凹部2および凸部3によって凹凸形状を有した状態で形成されている。また、複数の凹部2および凸部3は、表面520aの全ての領域に形成されている。これにより、上記第1実施形態における基材20、上記第3実施形態における基材320および上記第4実施形態における基材420と比較して、基材520の表面積は凹凸形状を有する分増加されて構成されている。また、表面520aに形成されている複数の凹部2および凸部3は、90度以下の鋭角な曲面により構成されていないのが好ましい。これにより、レーザ光を、基材520の表面520aの部分において、基材520内部に向かって確実に反射させることが可能になる。
【0079】
また、凹凸形状を有する表面520a上に、上記第1実施形態と同様の材料からなる金属層21および光触媒材層22が形成されている。なお、第5実施形態では、凹凸形状を構成する1つの凹部2から隣接する凸部3を隔てて隣り合う凹部2までの距離L3が、光触媒材層22の厚み(最大厚み)よりも大きく構成されている。したがって、金属層21および光触媒材層22は、凹凸形状の起伏に沿って基材520の表面520aを確実に覆うように積層されている。
【0080】
なお、表面520aが凹凸形状を有している場合においても、基材520の内部には閉じた空間が形成されており、基材520に入射された光が、表面520aを透過して外部に漏れ出ることがないように構成されている。また、基材520には、A1側の表面520aから内部に向かって所定の内径を有して凹状に窪む穴部520c(図17参照)が形成されており、半導体レーザ装置10のキャップ16が穴部520cと嵌合するように構成されている。したがって、窓部16a(図18参照)から出射されたレーザ光が、穴部520cの窓部16aと対向する底面を介して確実に基材520内に入射されるように構成されている。
【0081】
なお、第5実施形態による光触媒モジュール500のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。また、第5実施形態による光触媒モジュール500の製造プロセスでは、表面520aが複数の凹部2および凸部3からなる凹凸形状を有するように基材520をモールド成型する点を除いて、EB蒸着法などを用いて、型から取り出された基材520の表面520a上に金属層21および光触媒材層22を形成する製造プロセス点などは、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
また、第5実施形態による光触媒モジュール500においても、基材520に形成する金属層および光触媒材層に関して、上記した第1実施形態の第1〜第5変形例にて説明したのと同様の変更を加えて形成することが可能である。
【0083】
第5実施形態では、上記のように、基材520の表面520aが、複数の凹部2および凸部3を含む凹凸形状を有して形成されており、凹凸形状を構成する1つの凹部2から隣接する凸部3を隔てて隣り合う凹部2までの距離L3を、光触媒材層22の厚み(最大厚み)よりも大きく構成することによって、凹凸形状の起伏に沿って光触媒材層22を形成することができるので、光触媒材層22が外部に対して反応する際の面積(表面積)を増加させることができる。これにより、光触媒モジュール500は、環境浄化を効率よく行うことができる。なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第6実施形態)
図1、図19および図20を参照して、第6実施形態について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、上記第1実施形態と同じ符号を付している。
【0085】
本発明の第6実施形態による光触媒システム600は、図19に示すように、上記第1実施形態による光触媒モジュール100が、反応容器610内に所定の配列形態をなした状態で複数(23個)収納されて構成されている。なお、反応容器610は、本発明の「筐体」の一例である。
【0086】
また、反応容器610は、流体の浄化作用が行われる凹部611aが形成された下部筐体611と、下部筐体611の開口部611bを塞ぐ蓋体612とによって構成されている。また、下部筐体611の側面には、浄化前の流体(気体あるいは液体)を反応容器610に流し込むための吸入部613と、浄化後の流体を反応容器610から外部に排出するための排出部614とが設けられている。そして、蓋体612の下面612aに、光触媒モジュール100が複数懸架された状態で取り付けられている。また、光源となる半導体レーザ装置10のリード端子11〜13(図1参照)が、蓋体612に設けられた図示しない引き出し電極に接続されることにより、光触媒モジュール100が動作可能に構成されている。
【0087】
また、図20に示すように、光触媒モジュール100は、蓋体612の面内方向において千鳥配列をなして取り付けられている。これにより、吸入部613から取り込まれた浄化前の流体が光触媒モジュール100群の間を通り抜けていく間に、光触媒材による浄化作用を受けて浄化された後、排出部614から排出されるように構成されている。
【0088】
このようにして、複数の光触媒モジュール100が取り付けられた光触媒システム600が構成されている。
【0089】
第6実施形態における光触媒システム600では、上記第1実施形態における光触媒モジュール100を備えているので、光源からの出射光の利用効率が向上された光触媒モジュール100を用いて、流体の浄化を行うことが可能な光触媒システム600を実現することができる。
【0090】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0091】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、光触媒モジュールの光源として半導体レーザ素子を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光源として発光ダイオード(LED)を用いてもよい。
【0092】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、基材を中実体構造として構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第5実施形態と同様に、基材を中空体構造としてもよい。
【0093】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、シリコン樹脂を用いて基材を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、透光性を有する樹脂としてたとえばエポキシ樹脂などを用いて基材を形成してもよい。
【0094】
また、上記第1〜第4実施形態および第6実施形態では、樹脂を用いて基材を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第5実施形態と同様に、基材をガラス材料を用いて形成してもよい。
【0095】
また、上記第1〜第6実施形態では、Auからなる金属粒子を用いて金属層を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、島状に分布した状態または網状に形成されるような金属層であれば、Au以外の、たとえば、Pt、Ag、Cu、Fe、Pd、AlおよびWなどの金属を用いて金属層を形成してもよい。このような金属を用いても、基材の表面近傍においてエバネッセント波を発生させることが可能であり、金属粒子が有する自由電子とエバネッセント波とが相互作用して表面プラズモンを発生させることが可能である。
【0096】
また、上記第1実施形態の第5変形例では、Alの多孔質膜を用いて基材20の表面20a上に金属層35を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、陽極酸化によって形状および分布状態に不規則性を有するような細孔が形成可能な金属多孔質膜であれば、Al以外の、たとえば、Ti、TaおよびNbなどの金属を用いて金属層を形成してもよい。
【0097】
また、上記第1〜第6実施形態では、TiO2からなる光触媒材を用いた光触媒材層を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、TiO2以外の、たとえば、窒素ドープのTiO2、炭素ドープのTiO2、硫黄ドープのTiO2などのその他の光触媒材を用いて光触媒材層を形成してもよい。
【0098】
また、上記第6実施形態では、光触媒モジュール100を反応容器610を構成する蓋体612にのみ取り付けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、蓋体612のみならず、光触媒モジュール100を下部筐体611の内側面や底面などの場所に取り付けて光触媒システムを構成してもよい。すなわち、光触媒モジュール100の平面的な配列のみならず、反応容器610内において光触媒モジュール100を立体的に配置するようにしてもよい。
【0099】
また、上記第6実施形態では、複数の光触媒モジュール100を蓋体612の面内方向において千鳥配列をなすように取り付けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の光触媒モジュール100をマトリクス状(碁盤の目状)に配置してもよい。
【0100】
また、上記第6実施形態では、第1実施形態による光触媒モジュール100を用いて光触媒システム600を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上記第1実施形態の第1〜第5変形例による光触媒モジュールや、上記第2〜第5実施形態による光触媒モジュールを個々に用いて光触媒システムを構成してもよいし、各々を組み合わせてもよい。
【0101】
また、上記第1〜第6実施形態では、金属製のキャップ16が被せられた半導体レーザ装置10を基材20に取り付けることにより光触媒モジュール100を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体レーザ装置10にキャップ16を設けることなく、基材の穴部を半導体レーザ装置に直接被せて取り付けて光触媒モジュールを構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 半導体レーザ素子(光源)
2 凹部
3 凸部
10 半導体レーザ装置(光源)
20、220、320、420、520 基材
20a、220a、320a、420a、520a 表面
21、35 金属層
22、23、24 光触媒材層
100、101、102、103、104、105 光触媒モジュール
200、300、400、500 光触媒モジュール
600 光触媒システム
610 反応容器(筐体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源を取り囲むように配置され、前記光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、
前記基材の前記表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する前記金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、
前記金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを備える、光触媒モジュール。
【請求項2】
前記金属層は、島状に分布した前記金属の粒子、または、網状の状態を有する前記金属層の網目が、前記基材の表面上に不規則的に配置されている、請求項1に記載の光触媒モジュール。
【請求項3】
前記光源は、半導体レーザ素子である、請求項1または2に記載の光触媒モジュール。
【請求項4】
前記基材は、透光性を有する樹脂またはガラス材料からなり、
前記基材の前記表面は、尖った角部を有しない丸みを帯びた形状を有して形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒モジュール。
【請求項5】
前記基材の表面は、複数の凹部および凸部を含む形状を有しており、
1つの前記凹部から隣接する前記凸部を隔てて隣り合う前記凹部までの距離は、前記光触媒材層の厚みよりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光触媒モジュール。
【請求項6】
光源と、前記光源を取り囲むように配置され、前記光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、前記基材の前記表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する前記金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、前記金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを含む光触媒モジュールと、
複数の前記光触媒モジュールを収納する筐体とを備える、光触媒システム。
【請求項1】
光源と、
前記光源を取り囲むように配置され、前記光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、
前記基材の前記表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する前記金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、
前記金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを備える、光触媒モジュール。
【請求項2】
前記金属層は、島状に分布した前記金属の粒子、または、網状の状態を有する前記金属層の網目が、前記基材の表面上に不規則的に配置されている、請求項1に記載の光触媒モジュール。
【請求項3】
前記光源は、半導体レーザ素子である、請求項1または2に記載の光触媒モジュール。
【請求項4】
前記基材は、透光性を有する樹脂またはガラス材料からなり、
前記基材の前記表面は、尖った角部を有しない丸みを帯びた形状を有して形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒モジュール。
【請求項5】
前記基材の表面は、複数の凹部および凸部を含む形状を有しており、
1つの前記凹部から隣接する前記凸部を隔てて隣り合う前記凹部までの距離は、前記光触媒材層の厚みよりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光触媒モジュール。
【請求項6】
光源と、前記光源を取り囲むように配置され、前記光源からの光を閉空間内に閉じ込めるように構成された表面を有する基材と、前記基材の前記表面上に設けられ、金属の粒子が島状に分布した状態、または、隣接する前記金属の粒子同士が部分的に結合して網状の状態を有する金属層と、前記金属層の表面上に設けられた光触媒材層とを含む光触媒モジュールと、
複数の前記光触媒モジュールを収納する筐体とを備える、光触媒システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−218240(P2011−218240A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86329(P2010−86329)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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