説明

光触媒点火システム

【課題】大幅に少ない光エネルギー量で希薄な混合気を点火させ得る光触媒点火システムを提供すること。
【解決手段】光触媒点火システムは、光触媒10とレーザー装置20を備える。光触媒10は基板11を有し点火室30に収容されている。点火室30は、燃料と空気の混合気Fと掃気Eが可能である。レーザー装置20からのレーザー光は入射窓31から入射可能になっている。レーザー装置20はチャンバー40に収容され、レーザー光は反射ミラー21で反射され、アッテネーター22で光強度を調整され、集光レンズ23で集光された後、入射窓31を介して点火室30内に導入され、光触媒10に照射される。光触媒10にレーザー光が照射されると光触媒10が活性化し、混合気を局所的に加熱して点火する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒点火システムに係り、更に詳細には、光触媒を利用して燃料ガスと空気の混合気を点火する光触媒点火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒が注目されており、この光触媒はバンドギャップエネルギー以上の光を吸収すると価電子帯の電子が伝導帯へ励起されることにより正孔が生じる。電子と正孔は触媒表面へ移動し、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイドアニオンなどの活性種が生成すると考えられている。
【0003】
これらの活性種は非常に高い酸化力を持っており有機物を容易に酸化分解することができる。この光触媒作用を利用して、光触媒を用いた空気浄化、水浄化、防汚・防曇などが実用化されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】セラミックス、藤嶋 昭、39、2004、NO.7
【0004】
光触媒が光を吸収することができれば、上記メカニズムにより光触媒反応が進行するので、クリーンな太陽エネルギーを利用することができる。従って、従来の触媒反応のように熱エネルギー等の外部エネルギーを供給する必要がないことが特長であるが、十分な反応速度を得ることは難しい。
【0005】
十分な反応速度が得られていない理由として、太陽光の利用効率が少ない点が挙げられる。現在、価格や化学的安定性などから酸化チタンが最も多く使用されているが、酸化チタンのバンドギャップエネルギーは3.2eVと高く、紫外光しか吸収できない。
ところで、紫外光は太陽光の約3%程度しか含まれていない。室内で使用される蛍光灯では、蛍光物質により紫外光を可視光に変換している。また、車内においても、紫外線をカットするガラスが多く採用されているため、可視光のみが利用可能であるのが実情である。
【0006】
これに対し、太陽光に約50%含まれる可視光を利用することができれば、さらに速い反応速度を得ることができる。可視光利用に対しては、バンドギャップエネルギーの縮小化が検討されている。
伝道帯(Conduction band)及び価電子帯(Valence band)のエネルギーは酸素の軌道によって支配されるため、バンドギャップエネルギーを小さくするためには、いずれかの軌道を制御すればよい。しかし、これまでの知見から、金属側を制御すると、電池と正孔の再結合中心を生成するため光触媒活性が低下することが知られている。従って、価電子帯のエネルギーが酸素よりも高い元素に置換する必要がある。
【0007】
窒素原子の価電子は酸素原子の価電子よりも高いエネルギーをもつため、バンドギャップエネルギーを小さくでき可視光を利用できる可能性がある。NOx処理、アンモニア処理による窒素をドープした酸化チタン(例えば、非特許文献2参照。)や、オキシナイトライド系材料(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)が提案されている。
【非特許文献2】「光触媒とはなにか」、佐藤しんり、講談社、2004年
【特許文献1】特開2002−066333号公報
【特許文献2】特開2004−230306号公報
【0008】
一方、触媒活性そのものの向上のためにもさまざまな研究・開発がなされている。
反応物の触媒表面への吸着量を増加させるために多孔質物質とを組み合わせたり、光励起により生成した電子や正孔が失活せずに触媒表面へ到達するために、結晶性を向上させたり、粉末を微粒化している(例えば、特許文献3参照。)。また、電荷分離を促進するために金属が担持されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献3】特開2001−259436号公報
【特許文献4】特開平9−262473号公報
【0009】
また、光触媒のアプリケーションの研究開発も盛んであり、水分解による水素生成や汚れ取りなどの有機物分解以外にも多数報告されている。
親水性メッシュシート、特に、親水性層として光触媒含有層を有する親水性メッシュシートを温室屋内に設置し、親水性メッシュシートに水を流下して蒸発させ、気化熱により周囲温度を低下し、また気化した水蒸気により周囲の湿度を調節できる温室の温度及び/又は湿度の調節が行われている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献5】特開2005−013132号公報
【0010】
更に最近では、光触媒を混合気の点火に利用する提案がなされ(特許文献6参照)、このように、光を利用した混合気の点火方法は公知である。かかる提案では、空間において焦点を結んで熱プラズマを形成して混合気を点火していたため、最小点火エネルギーが高いという不具合があった。
なお、これに対しては、ターゲットを用いることにより、最小点火エネルギーを更に低減できるという報告がされている(例えば、特許文献7、8参照)
【特許文献6】特開2006−307839号公報
【特許文献7】特開昭58−133482号公報
【特許文献8】特開昭59−221523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、光触媒材料を使用して混合気を点火するシステムには、混合気の点火に必要なラジカルを光触媒表面で比較的容易に生成できるため、最小点火エネルギーを低減できるという利点があるが、有効性の高い光触媒材料が提案されておらず、その低減効果は未だ十分とはいえず、現状においては、実用性の高い光触媒点火システムが提案されているとは言い難い。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大幅に少ない光エネルギー量で希薄な混合気を点火させ得る光触媒点火システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、光触媒機能を有し、且つ酸素吸放出能力を持つ材料を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の光触媒点火システムは、燃料と空気を含む混合気に接触し得る光触媒と、この光触媒に光を照射する光源を備える光触媒点火システムであって、
上記光触媒に含まれる光触媒材料が、酸素吸放出機能を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光触媒点火システムの好適形態は、上記光触媒が更に光熱変換材料を含み、この光熱変換材料が、セリウム、チタン又は銅以外の遷移金属の酸化物、遷移金属硫化物及び遷移金属窒化物から成る群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属化合物から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光触媒機能を有し、且つ酸素吸放出能力を併有する材料を用いることとしたため、 大幅に少ない光エネルギー量で希薄な混合気を点火させ得る光触媒点火システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の光触媒点火システムにつき詳細に説明する。なお、本明細書及び請求の範囲において、濃度や含有量、充填量などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0018】
上述の如く、本発明の光触媒点火システムは、燃料ガスと空気を含む混合気を点火するシステムであって、光触媒と光源を備えるものである。
本発明の点火システムにおいて、光源は光触媒に光を供給する機能を果たし、光触媒は、光触媒機能と酸素吸放出機能を併有する光触媒材料を含む。
本発明の点火システムによれば、上記混合気を局所的に加熱して点火することができる。
【0019】
ここで、混合気に含まれる燃料としては、特に限定されるものではなく、通常、燃料として使用される炭化水素類やアルコール類、特に内燃機関の燃料、例えば、ガソリン、軽油、重油、バイオガソリン、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、メタノール及びエタノールなどを挙げることができる。
【0020】
また、光源は、使用する光触媒材料が活性化する光を光触媒に供給できれば十分であり、紫外光、可視光及び赤外光のいずれか又はこれらが混在する光を照射するものであればよく、従来公知の光源を用いることができる。
典型的には、使用する光触媒材料のバンドギャップに対応するエネルギー以上の波長を有する光であれば、光触媒材料の価電子帯の電子が伝導帯に励起されて、価電子帯に正孔が発生するので、光触媒反応を進行させることができる。
【0021】
次に、光触媒は、光触媒材料を必須成分とするが、必要に応じて、光熱変換材料、助触媒及び無機質担持材などを含むものである。
まず、光触媒が含有する光触媒材料について説明する。
この光触媒材料としては、光照射により光触媒反応を発現するとともに、酸素吸放出機能を併有するものであれば特に限定されるものではない。ここで、本発明に係る光触媒材料が酸素吸放出機能を有することの必要性につき、推定メカニズムを用いて以下に説明する。
まず、光触媒に光を照射すると、電子(e)と、正孔(すなわち、ホール)(h)が光触媒表面に生成する。生成した電子は、空気中の酸素分子と反応することによりOからOとなる。Oは、更に電子を1つもらってOとなり、Oが燃料の炭化水素から水を引き抜くことで、燃料の炭化水素は「炭化水素ラジカル」となり、連鎖反応による燃料が進行する。
一方、酸素吸放出機能を有する光触媒材料は、酸素をOの状態で放出するが、この場合、光触媒表面で生成した正孔と反応することによりOから電子が1つ取られ、Oが生成される可能性が考えられる。上述したように、Oは連鎖反応に必要な活性種である。よって、酸素吸放出機能を有することにより、より多くのOが生成することから、燃焼が促進されるものと考えられる。その結果、大幅に少ない光エネルギー量で希薄な混合気を点火させることが可能となる。
なお、酸素吸放出機能を有する光触媒材料の具体例としては、酸化セリウム(CeO)、酸化チタン(TiO)又は酸化銅(CuO)、及びこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0022】
ここで例えば、酸化セリウムは、室温での吸収端を410〜450nmにもつ光触媒であるとともに、自動車等の内燃機関の排ガス浄化触媒の助触媒としても頻繁に使用されている。
酸化セリウムは、セリウムの4価状態と3価状態の酸化還元サイクルを利用して、酸化還元雰囲気に応じて酸素を吸収、放出することが知られている。
【0023】
酸素吸放出機能を有する光触媒材料として酸化セリウムを用いる場合、その平均粒子径が20nm以下のものが好ましい。
平均粒子径が20nmを超えると、十分な性能が得られないことがある。
なお、酸化セリウムに限らず、光触媒反応では粒径を小さくすることにより、電子や正孔の移動距離が短くなるので失活しにくくなる。また、このようなナノ粒子状態の酸化セリウムは結晶性が高いため欠陥が少なく、電子や正孔が触媒表面に移動する過程でも失活しにくくなる。このような理由から、上記粒子径範囲の酸化セリウムを好適に使用することができる。
【0024】
次に、光熱変換材料について説明する。
この光熱変換材料は、上述の光触媒材料とともに光触媒に使用されるものであるが、光を熱に変換して放出する機能を有すれば特に限定されるものではない。
例えば、セリウム、チタン若しくは銅以外の遷移金属の酸化物、遷移金属(この場合、セリウム、チタン又は銅も含める)の硫化物、又は遷移金属(この場合、セリウム、チタン又は銅も含める)の窒化物、及びこれらの任意の混合物に係る遷移金属化合物を挙げることができる。
【0025】
本発明の光触媒点火システムでは、上述の光熱変換材料のうちでも、鉄(Fe)及びバナジウム(V)の少なくとも一方を遷移金属とする遷移金属化合物を好ましく用いることができる。
鉄やバナジウムの上記化合物は光を吸収すると発熱する。これは、(1)励起エネルギーが熱エネルギーに変換されたか、又は(2)化合物が光還元され、周囲の酸素により再び酸化される際に反応熱が発生したと考えられる。
いずれにしても、熱を放出して光触媒材料を加熱し、光触媒表面の温度を上昇させることで反応を促進し、酸化性能、ひいては点火性能の向上に寄与するものと考えられる。
【0026】
なお、このような鉄やバナジウムの化合物のうちでも、鉄の酸化物が良好であり、特に光触媒材料としての酸化セリウムと併用することが望ましい。また、この場合、FeとCeとが複合酸化物を形成していてもよい。
本発明において、セリウムと鉄との含有割合(Ce/Fe)は、モル比で2/8〜8/2となるようにすることが好ましい。
この範囲を逸脱し、鉄の量が少なくなると、発熱の効果が加算されず、十分な性能の向上が見られないことがあり、一方、鉄の量が多くなりすぎると、点火性能が低下することがある。
【0027】
次に、助触媒について説明する。
この助触媒も、上述の光触媒材料とともに光触媒に使用されるものであり、光触媒反応に際し、分離した電荷を集めることにより電子と正孔の再結合を抑制し、電荷分離を促進する機能を果たす。即ち、光吸収によって分離した電荷は触媒表面に移動して反応物を活性化するが、その途中で再結合すると失活してしまう。電荷を有効に分離できれば再結合を抑制でき、よって、電荷の電子を集めることのできる材料であれば助触媒として用いることができる。
【0028】
かかる助触媒としては、特に限定されるものではないが、貴金属とニッケルの少なくとも一方、具体的には、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)若しくはニッケル(Ni)、又はこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0029】
次に、無機質担持材について説明する。
この無機質担持材は、上述の光触媒材料を支持・固定化する機能を果たし、具体的には、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)及びマグネシア(MgO)などを例示することができる。
【0030】
また、本発明においては、上述の光触媒を固定化する基体、典型的には、基板を用いることができる。このような場合においては、光触媒を無機系接着剤で基体に固定することが好ましい。
なお、無機系接着剤は、光触媒、具体的には、光触媒材料及び/又は無機質担持材と基体の双方に対して接着可能なものであるのがよく、これにより、光触媒の剥離やクラック発生を抑制することができる。
【0031】
かかる無機系接着剤としては、アルミナ(Al)やジルコニア(ZrO)などを挙げることができる。
【0032】
図1は、本発明の光触媒点火システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
図1において、この光触媒点火システムは、光触媒10と、光源の一例であるレーザー装置20を備えている。
【0033】
光触媒10は基板11を有し点火室30に収容されているが、点火室30は、矢印Fで示すように燃料と空気の混合気が供給可能であるとともに、矢印Eで示すように掃気も可能な構成となっている。また、その内部圧力は圧力センサー32で検出可能であり、レーザー装置20からのレーザー光は、石英ガラス製の入射窓31から入射可能になっている。
【0034】
一方、レーザー装置20から出射されたレーザー光は、反射ミラー21で反射され、アッテネーター22で光強度を調整され、集光レンズ23(f=200)を通過し、上記入射窓31を介して点火室30内に導入され、光触媒10で集光、照射される。
【0035】
以上のように、光触媒10にレーザー光が照射されると、上述のように、光触媒10が活性化し、上記混合気を局所的に加熱して点火する。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
図1に示した光触媒点火システムを作製し、その性能を評価した。システムの作製及び性能評価の手順は下記の通りである。
【0038】
[光触媒の作製]
基板11として直径60mmのアルミニウム製基盤をアルコールで脱脂処理した後、無機系接着剤(主成分αアルミナ)をコートした。次いで、粒径20nmの酸化セリウムゾルを厚さ数μmとなるよう噴霧し、焼成して水分を除去し、光触媒10を作製した。
【0039】
[装置仕様]
レーザー光の条件としては、媒質をNd−YAGレーザー(355nm)とし、パルス幅を5〜7nsecで照射した。レーザー光は355nm波長分離ミラー、アッテネーター(1/2波長板と偏向板)、集光レンズ(f=200)、石英ガラスを通して点火室内に入射し、光触媒を照射するようにした。
また、点火室内にはCHとAirをマスフローコントローラーで10vol%CH/Airとなるように制御した。チャンバー内の圧力は0.2MPa、温度は室温とした。点火室の容積は約600ccである。
【0040】
[性能評価]
まず、点火室内を真空ポンプにより排気した後、CHとAirの混合ガスを供給して上記のレーザーを発振した。レーザーのエネルギーを38.6mJ→35.7mJ→31.9mJ→25.1mJの順に変動させて、レーザーを照射した。
照射エネルギーはパワーメーターで測定した。点火(燃焼)の有無は、点火室の内圧力変化から確認した。燃焼時の圧変化は、圧力センサーからの電圧をサンプリング間隔5msecで測定することにより行った。
得られた圧力変化の結果を図2に示す。また、表1に、本例の光触媒を用いた場合の最小点火エネルギー(mJ)を示す。
【0041】
(実施例2)
硝酸鉄と硝酸セリウムをFe/Ce=0.8/0.2(モル比)となるようにした混合した水溶液を攪拌しながら28%アンモニア水を徐々に滴下し、pH=8として一昼夜攪拌を行った。
次いで、純水で洗浄ろ過を行い、600℃で5時間焼成を行いFe0.8Ce0.2を調製した。
このようにして得られたFe−Ce系材料を光触媒に用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。表1に、本例の光触媒を用いた場合の最小点火エネルギー(mJ)を示す。
【0042】
(実施例3)
硝酸鉄と硝酸セリウムをFe/Ce=0.2/0.8(モル比)となるようにした混合した以外は実施例2と同様の操作を繰り返した。最小点火エネルギー(mJ)を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
粒径数μmの酸化チタンを光触媒に用いた以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。最小点火エネルギー(mJ)を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
光触媒を作製せず(アルミニウム製基盤も設置せず)、実施例1と同様の操作を繰り返した。最小点火エネルギー(mJ)を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
アルミニウム製基盤を設置して光触媒を作製しなかった以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。最小点火エネルギー(mJ)を表1に示す。
【0046】
(比較例3)
光触媒に酸化鉄を用いた以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。最小点火エネルギー(mJ)を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
以上から、光触媒として酸化鉄を用いた比較例1と、光触媒として酸化セリウム(光触媒材料)を用いた実施例1との比較の結果、光触媒材料として酸素吸放出材料を用いた場合の方が、より少ないエネルギー量で混合気を点火することができることが分かる。
また、光触媒として酸化セリウム(光触媒材料)のみを用いた実施例1と、光触媒として酸化セリウム(光触媒材料)及び鉄(光熱変換材料)を用いた実施例2又は実施例3との比較の結果、光触媒として光熱変換材料を用いた場合の方が、より少ないエネルギー量で混合気を点火できることが分かる。更に、実施例1と、光触媒として酸化チタン(光触媒材料)のみを用いた実施例4との比較の結果、光触媒材料として酸化セリウムを用いた場合の方が、より少ないエネルギー量で混合気を点火できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の光触媒点火システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】実施例1において、点火室内の圧力変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
10 光触媒
11 基板
20 レーザー装置
21 反射ミラー
22 アッテネーター
23 集光レンズ
30 点火室
31 入射窓
32 圧力センサー
40 チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気を含む混合気に接触し得る光触媒と、この光触媒に光を照射する光源を備える光触媒点火システムであって、
上記光触媒に含まれる光触媒材料が、酸素吸放出機能を有することを特徴とする光触媒点火システム。
【請求項2】
上記光触媒材料が、酸化セリウム、酸化チタン及び酸化銅から成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒点火システム。
【請求項3】
上記光触媒材料が酸化セリウムであり、その平均粒子径が20nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒点火システム。
【請求項4】
上記光触媒が更に光熱変換材料を含み、この光熱変換材料が、セリウム、チタン又は銅以外の遷移金属の酸化物、遷移金属硫化物及び遷移金属窒化物から成る群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属化合物から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の光触媒点火システム。
【請求項5】
上記光熱変換材料の遷移金属が鉄及び/又はバナジウムであることを特徴とする請求項4に記載の光触媒点火システム。
【請求項6】
上記光触媒材料が酸化セリウムであり、且つ上記光熱変換材料が鉄の酸化物であり、上記光触媒において、セリウムと鉄との含有割合がモル比で2/8〜8/2であることを特徴とする請求項4に記載の光触媒点火システム。
【請求項7】
上記光触媒が更に助触媒を含み、この助触媒が貴金属及び/又はNiであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の光触媒点火システム。
【請求項8】
上記光触媒が、更に無機質担持材を含み、無機系接着剤で基体に固定化されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の光触媒点火システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50845(P2009−50845A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109006(P2008−109006)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】