説明

光触媒発泡壁紙

【課題】優れた有機揮発性物質等の分解性能を発揮する光触媒発泡壁紙を提供すること。
【解決手段】基材上に発泡樹脂層、フィルム層、及び光触媒を含む光触媒層を順に積層してなり、該発泡樹脂層が塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである光触媒発泡壁紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙などの建築内装材としては、室内の居住空間としての快適性を高める為に高い意匠性が求められ、特に立体的な意匠を持たせるためには、柔軟性のみでなく高度に発泡させ得る材料が有利となる。こうした要求に応える材料として、塩化ビニル樹脂層上に印刷などして絵柄層を設けたもの、あるいは、さらに前記塩化ビニル樹脂層を発泡させると共にエンボス加工を施すなどして凹凸模様を施したものが広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、近年住宅部材から発生するホルムアルデヒドなどの有機揮発性物質に起因するシックハウスの問題や、あるいはペット臭や生活臭などの問題が注目されるようになり、壁紙などの建築内装材の性能として、有機揮発性物質の分解性能、悪臭防止、あるいはダニや細菌の発生防止に対するニーズが高まっている。特に、住宅内装部材での有機揮発性物質の分解を検討した場合、内装部材として最も広い面積を有する壁面にその機能を持たせることが有効であると考えられている。
【0004】
このような性能を発現させるため、壁紙に光触媒を利用することが研究されている(例えば、特許文献2)。光触媒は、光が照射されると有機揮発性物質をはじめとし、空気汚染物質や細菌などを酸化分解する性能(以下、これらの性能を有機揮発性物質等の分解性能と称することがある。)を発現することが知られており、上記したような問題の解決に有効である。しかし、光触媒は光が照射されないとその性質が発揮されないため、特許文献2に開示されるような壁紙では、十分な効果が得られないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−260287号公報
【特許文献2】特開2001−254069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような問題点を考慮して、本発明者らは、発泡させた塩化ビニル樹脂層を有する発泡壁紙において、光触媒を用いたところ、光触媒による十分な効果が得られず、該発泡させた樹脂層に用いられる可塑剤が光触媒表面に付着することが主な要因であることを発見した。そこで、本発明の課題は、発泡させた塩化ビニル樹脂層を有する発泡壁紙において、優れた有機揮発性物質等の分解性能を得ること、すなわち優れた有機揮発性物質等の分解性能を発揮する光触媒発泡壁紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、発泡させた塩化ビニル樹脂層と光触媒層とを有する発泡壁紙において、該樹脂層と光触媒層との間にフィルム層を設けることにより、優れた有機揮発性物質等の分解性能を有する発泡壁紙を得ることを見出した。すなわち、本発明は、以下の光触媒発泡壁紙を提供するものである。
【0008】
1.基材上に発泡樹脂層、フィルム層、及び光触媒を含む光触媒層を順に積層してなり、該発泡樹脂層が塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである光触媒発泡壁紙。
2.光触媒層に含まれる光触媒が、可視光応答型光触媒である上記1に記載の光触媒発泡壁紙。
3.フィルム層を構成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である上記1又は2に記載の光触媒発泡壁紙。
4.フィルム層を構成する樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である上記1又は2に記載の光触媒発泡壁紙。
5.凹凸模様を有する上記1〜4のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた有機揮発性物質等の分解性能を発揮する光触媒発泡壁紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光触媒発泡壁紙の断面を示す模式図である。
【図2】実施例1及び比較例1における湿式分解性能試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光触媒発泡壁紙の典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の好ましい光触媒発泡壁紙1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、本発明の光触媒発泡壁紙1は、基材2上に発泡樹脂層3、絵柄層5、接着剤層9、フィルム層4、プライマ層7及び光触媒層6が順次積層され、その表面に凹凸模様8を有するものである。
【0012】
[基材2]
以下、本発明の好ましい実施形態の一つを示した図1に基づいて、詳細に説明する。
本発明にかかる基材2としては、通常壁紙として用いられるものであれば、特に限定されず、例えば裏打紙、難燃紙などの紙質基材;織布、不織布、編布などの布質基材;合成樹脂シートなどを用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体など、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
【0013】
これらのなかでも、スルファニル酸グアナジンやリン酸グアナジンなどの水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙や、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機質剤を混抄した無機質紙などの通常壁紙用裏打紙といわれるものが好ましく、カール防止の観点より、水中伸度1%以下であることが好ましい。ここで、水中伸度はJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27:2000に準拠して測定された値である。
【0014】
基材2の厚さについては特に制限はないが、坪量は、通常50〜300g/m2程度、好ましくは60〜160g/m2の範囲である。
また、必要に応じて難燃剤、無機質剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤などを適宜添加したものであってもよい。
【0015】
[発泡樹脂層3]
発泡樹脂層3は、本発明の光触媒発泡壁紙に良好な施工性と意匠性とを付与するために設けられ、塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである。
【0016】
《発泡樹脂組成物》
本発明で用いられる発泡樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂及び可塑剤を必須成分として含むものである。該発泡樹脂組成物に含まれる塩化ビニル系樹脂は、本発明の壁紙に、成膜性、柔軟性、低温での加工性を付与し、また比較的低コストの壁紙とすることができる。
【0017】
(可塑剤)
発泡樹脂組成物に含まれる可塑剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル化合物;ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)などのフタル酸エステル化合物などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、低コストであるとともに、汎用性の高いジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)などのフタル酸エステル化合物が好ましい。
【0018】
可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、30〜70質量部がさらに好ましい。可塑剤の添加量が上記範囲内であると、優れた柔軟性と耐候性が得られる。
【0019】
(発泡剤)
本発明で用いられる発泡剤樹脂組成物は、発泡剤を好ましく含有する。発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機発泡剤;N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジドなどのアジド化合物などが好ましく挙げられる。
【0020】
これらのうち、低コストであるとともに、分解熱が小さく、難燃性かつ自己消化性に優れ、水に安定であり、無毒であり、熱分解型化学発泡剤が分解温度以下での加工処理が可能であることから、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミドなどのアゾ化合物の熱分解型発泡剤が好ましく用いられる。
【0021】
発泡剤の添加量としては、要求される意匠性により適宜決めればよいが、発泡樹脂層3の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.5〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。なお必要に応じて、一層の発泡効果を向上させるために発泡剤の分解を促進する発泡助剤を併用することができる。その発泡助剤としては使用する発泡剤の種類により異なるが、例えば発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いる場合には発泡助剤として酸化亜鉛、硫酸鉛、尿素、ステアリン酸亜鉛などが用いられる。
【0022】
(無機充填剤)
本発明で用いられる発泡剤樹脂組成物は、無機充填剤を好ましく含有する。無機充填剤としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができるが、例えば、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカなどが挙げられ、これらの単独であるいは複数を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、分解温度が低く、吸熱量が大きく、低コストであることから炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムが好適である。
【0023】
これらの無機充填剤は、本発明の光触媒発泡壁紙に難燃性を付与する効果を有し、かつ、多量に配合されると、その効果は一層増大する。壁紙の難燃性を十分得るには、無機充填剤の添加量は、発泡樹脂層3の塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは70質量部以上、より好ましくは90質量部以上である。
本発明において用いる無機充填剤の平均粒径は、5〜25μmが好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。
【0024】
これらの無機充填剤は、そのまま配合してもよいが、無機充填剤を予めシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミニウム系などのカップリング剤、りん酸系、脂肪酸系等の界面活性剤、油脂、ワックス、ステアリン酸、シランカップリング剤などにより処理してもよい。
【0025】
また、発泡樹脂組成物は、要求される物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えばセル調整剤、光安定剤、防カビ剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、希釈剤、消臭剤などが挙げられる。
【0026】
《発泡樹脂層3の形成》
発泡樹脂層3は、上記した発泡樹脂組成物を、例えばエマルジョン化してエマルジョン組成物としたものを、あるいはペレット化したものを、コンマコーター法や、押出製膜法、カレンダー製膜法などの方法によって形成することができる。ここで、エマルジョン化は通常なされる方法ですることができ、エマルジョン組成物は例えば、発泡樹脂組成物中の熱可塑性樹脂を乳化重合法などによりエマルジョン化した後に、発泡剤や無機充填剤を所定量加えて得ることができる。
また、発泡樹脂層3の厚みは、製膜状態において50〜300μmが好ましく、発泡後の厚みは500〜1200μmが好ましい。
【0027】
[フィルム層4]
フィルム層4は、発泡樹脂層3の上に設けられる層であり、上記した発泡樹脂層の形成に用いられる可塑剤が後述する光触媒に付着するのを抑えることで、該光触媒の活性の低下を抑制する、すなわち本発明の光触媒発泡壁紙に優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与するものである。さらに、耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与することも可能である。
【0028】
フィルム層4を構成する樹脂としては、特に制限はないが、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリブテン系などのポリオレフィン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂単体及び各種共重合体樹脂を好ましく挙げることができる。これらのなかでも、本発明の壁紙に耐汚染性、耐セロファンテープ性、耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与し、エンボス加工を施す場合には優れた凹凸追従性を付与し、燃焼時の煙濃度が少なく、かつ製造コストを安価におさえる観点から、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂が好ましい。
【0029】
フィルム層4に用いられるフィルムの厚みは、5〜25μmであることが好ましく、5〜15μmがより好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、該フィルムの製造上の制約をうけることなく、またエンボス加工による壁紙の凹凸追従性を確保することができる。
【0030】
[絵柄層5]
絵柄層5は、基材2に装飾性を与えるものであり、図1に示されるように好ましくは発泡樹脂層3とフィルム層4との間に積層される層である。
絵柄層5は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等、周知の印刷方法により形成することができる。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0031】
絵柄層5の形成に用いられるインキ組成物としては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂などを1種単独で又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
絵柄層5は厚さ1〜20μm程度が好ましい。
【0032】
[光触媒層6]
光触媒を含む光触媒層6は、本発明の光触媒発泡壁紙に、優れた有機揮発性物質等の分解性能を付与する層である。
光触媒としては、公知の光触媒を制限なく用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンなどが好ましく挙げられる。これらのうち、室内などの用途を考慮すると、蛍光灯や白熱球などの室内灯から照射される可視光領域の光により光触媒作用を発現する可視光応答型光触媒が好ましく、酸化タングステン、硫化亜鉛、硫化カドミウム、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンが好ましく、窒素(N)ドープした酸化チタン、硫黄(S)ドープした酸化チタンがより好ましい。
【0033】
光触媒層6は、好ましくは上記の光触媒を含むコーティング剤を塗工し、乾燥などを行うことにより形成することができる。該コーティング剤としては、光触媒層の密着強度あるいは光触媒層の強度を向上させる観点から、光触媒と、有機溶剤や水などの溶媒及び無機バインダーを含んだものが好ましく挙げられる。無機バインダーは、光触媒作用により分解されないシリカ結合を有するシリカ化合物、例えばシランカップリング剤といったアルコキシシラン化合物及びその加水分解物や縮合物のほか、シリコーンワニスなどが好ましく挙げられる。
【0034】
コーティング剤中の光触媒の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。光触媒の含有量が上記範囲内であれば、コーティング剤の塗工性が良好となり、光触媒層の透明性が低下することもない。
また、コーティング剤中の無機バインダーの含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。無機バインダーの含有量が上記範囲内であれば、コーティング剤の安定性が良好となり、光触媒の性能を阻害することがない。
【0035】
光触媒層6の厚さは、0.5〜5μmの範囲内が好ましく、0.5〜2μmの範囲内がより好ましい。光触媒層6の厚さが上記範囲内であれば、光触媒の性能が十分に得られ、層の強度も良好となる。
【0036】
[プライマ層7]
本発明の光触媒発泡壁紙は、光触媒層6とフィルム層4との密着性を向上させる目的で、これらの層の間に必要に応じてプライマ層7を設けることができる。ここで好ましく用いられる樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ウレタン−アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。また、層間接着力の強化の目的で、発泡樹脂層3とフィルム層4との層間に、プライマ層7を設けることもできる。
【0037】
[凹凸模様8]
本発明の光触媒発泡壁紙は、意匠性に優れたものとするために、凹凸模様を有することが好ましい。図1に示される凹凸模様8は、好ましくは製造過程にある壁紙がいずれかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、光触媒層6の上面、すなわち最外層側からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。エンボス版で加熱加圧することにより形成される凹凸は、その最深部分は、発泡樹脂層3の上面に達するものである。凹凸模様8の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が好ましく用いられ、凹凸模様8の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などがある。
【0038】
[接着剤層9]
フィルム層4と発泡樹脂層3との接着性が低い場合、例えば上記のエチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂フィルムを用いた場合は、必要に応じて両層間に接着剤層9を設けることが好ましい。接着剤層9に用いられる接着剤としては、特に制限はないが、製造工程の観点より感熱接着剤が好ましい。感熱接着剤とは、一般に常温では固体であり、加熱により溶融又は軟化して接着性を発現し、冷却すると固化して強固に接着する性質を有する熱可塑性樹脂を主要成分とする接着剤のことをいう。これを適当な溶剤に溶解、もしくは加温により溶融させて、被接着体の一方又は両方の接着面に塗布し、両者を重ね合わせて加熱加圧することにより接着させるものである。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系共重合体樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、アイオノマー系樹脂、オレフィン−αオレフィン系共重合体樹脂などの易接着樹脂単体、及びポリオレフィン系樹脂や発泡樹脂組成物の主成分となる熱可塑性樹脂、フィルム層の主成分となる熱可塑性樹脂とのブレンド品などが好ましく挙げられる。
【0039】
接着剤層9は、層間接着力の向上を図ることを目的に、必要に応じて基材2と発泡樹脂層3との層間に設けることもできる。また、接着剤層を設ける以外に、層間接着力を向上させるために、所望により、基材の表面に片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0040】
[製造方法]
本発明の光触媒発泡壁紙は、例えば以下の製造方法によって製造されるが、これによって制限されるものではない。
本発明の光触媒発泡壁紙は以下のように製造される。熱可塑性樹脂のフィルムからなるフィルム層4の一方の面に必要に応じて接着剤及び/又はプライマ層を構成する樹脂を塗工し、さらに光触媒層コーティング剤を塗工・乾燥させて、光触媒層を有するシートを得る。また、基材2上に塩化ビニル樹脂、可塑剤、その他発泡剤、無機充填剤、添加剤を含む発泡樹脂組成物をコンマコーター法にてコーティングし、さらに絵柄層5を形成するインキ組成物をグラビア印刷により塗工した後、加熱発泡炉を用いて220〜250℃程度で前記発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層3を形成して基材シートを得る。次いで、該基材シートを冷却した後、150℃程度まで再加熱してから、前記光触媒層を有するシートの最外層側よりエンボス版が形成された冷却ロール(光触媒層を有するシート側)と加圧ロール間を通すことで両シートを熱圧着し、凹凸模様8を形成した後、冷却することで、光触媒層6から発泡樹脂層3にかけて凹凸模様8を形成した本発明の光触媒発泡壁紙を得ることができる。なお、前記のように、プライマ層7及び接着剤層9は必要に応じて、所望の層間に設けることができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた光触媒発泡壁紙について、以下の方法で評価した。
(光触媒湿式分解性能試験)
各実施例及び比較例で得られた光触媒発泡壁紙を5cm×10cmの大きさに裁断し、壁紙試験片とした。該試験片を、内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、5Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕をテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cm2で16時間初期化処理を行った。
その後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバック内に送り込み、ブラックライト1mW/cm2を照射して、アセトアルデヒドによる湿式分解性能試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度(ppm)の経時変化はガスクロマトグラフィーにより測定した。測定結果を図2に示す。
【0042】
実施例1
基材として壁紙用裏打紙(「WK−FKKD(製品名)」,興人株式会社製,米秤量:60g/m2)を用いる。該基材上にコンマコーター法により、下記組成の発泡樹脂組成物を100μmの厚みとなるように塗工し、その上に水性インキ(「ハイドリック(製品名)」,大日精化工業株式会社製)を用いて布目模様をグラビア印刷にて施して絵柄層を形成した。
上記とは別に、フィルム層としてあらかじめ接着剤が塗工されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(エバールフィルム「HF−ME(製品名)」,株式会社クラレ製,厚み:12μm),エチレン含有量:44mol%)を用い、該フィルム層の上面(接着剤が塗工されていない側)に可視光型光触媒コーティング液(「TCS−4115(製品名)」,住友化学株式会社製)を乾燥後の厚さが1μmとなるように塗工乾燥し、光触媒層を形成した。
次いで、上記の絵柄層を設け、発泡樹脂組成物を塗工して得られた基材を、加熱発泡炉を用いて230℃で発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層を形成し、上記で得られた光触媒層を設けたフィルムと同時に布目模様パターンを有するエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロール間を通し、エンボス加工しながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する光触媒発泡壁紙を得た。
【0043】
発泡樹脂組成物 組成
塩化ビニル樹脂(「R−720(製品名)」,東ソー株式会社製):100質量部
可塑剤(フタル酸ジイソノニル,三建加工株式会社製):55質量部
二酸化チタン(「タイピュアR−018(製品名)」,デュポン社製):17質量部
炭酸カルシウム(「ホワイトンH(製品名)」,白石工業株式会社製):100質量部
発泡剤(「ADCA#3(製品名)」,永和化成株式会社製):4質量部
光安定剤(「OF−101(製品名)」,株式会社ADEKA製):1質量部
セル調整剤(「KF−110A−6(製品名)」,共同薬品株式会社製):1質量部
【0044】
比較例1
基材として壁紙用裏打紙(「WK−FKKD(製品名)」,興人株式会社製,米秤量:60g/m2)を用いる。該基材上にコンマコーター法により、上記組成の発泡樹脂組成物を100μmの厚みとなるように塗工し、その上に水性インキ(「ハイドリック(製品名)」,大日精化工業株式会社製)を用いて布目模様をグラビア印刷にて施して絵柄層を形成し、該絵柄層の上に可視光型光触媒コーティング液(「TCS−4115(製品名)」,住友化学株式会社製)を乾燥後の厚さが1μmとなるように塗工乾燥し、光触媒層を形成した。これを、加熱発泡炉を用いて230℃で発泡樹脂組成物を発泡させて発泡樹脂層を形成し、光触媒層側からエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型して光触媒発泡壁紙を得た。
【0045】
実施例1及び比較例1で得られた光触媒発泡壁紙について光触媒湿式分解性能試験を行った。図2によれば、実施例1で得られた光触媒発泡壁紙は、ブラックライトの照射時間の経過とともにアセトアルデヒド濃度が減少し、優れた分解性能を有していることが示された。一方、フィルム層を有しない比較例1の壁紙は、十分な分解性能を示すことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、優れた有機揮発性物質等の分解性能を発揮する光触媒発泡壁紙を得ることができる。この光触媒発泡壁紙は、壁紙などの建築内装材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
1.光触媒発泡壁紙
2.基材
3.発泡樹脂層
4.フィルム層
5.絵柄層
6.光触媒層
7.プライマ層
8.凹凸模様
9.接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に発泡樹脂層、フィルム層、及び光触媒を含む光触媒層を順に積層してなり、該発泡樹脂層が塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含む発泡樹脂組成物を発泡させてなるものである光触媒発泡壁紙。
【請求項2】
光触媒層に含まれる光触媒が、可視光応答型光触媒である請求項1に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項3】
フィルム層を構成する樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1又は2に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項4】
フィルム層を構成する樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である請求項1又は2に記載の光触媒発泡壁紙。
【請求項5】
凹凸模様を有する請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒発泡壁紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208332(P2011−208332A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79758(P2010−79758)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】