説明

光触媒組成物

【課題】設置場所を問わずに適用が可能で、且つ被覆による光触媒機能の低下を抑えられる光触媒組成物を提供する。
【解決手段】光触媒機能が波長380nmの可視光で発現されることと、光触媒微粒子の表面の一部が保護物質により被覆されていることとが相俟って、屋外、屋内を問わず高い光触媒機能を発現させることができ、且つ保護物質に光が透過しない物質を用いた場合でも波長380nm未満の紫外光と比較してエネルギーの低い波長380nm以上の可視光を透過させて高い光触媒機能を発現させることができる。
【参照図】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能を発現する光触媒組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒機能を発現する光触媒組成物を用い、その酸化力や親水性を利用した様々な製品が実用化されている。光触媒組成物を製品に適用するに当たっては、合成樹脂中に練り込んだり、塗料に配合したりして塗布する等の方法が簡便でよく用いられてきているが、かかる製品において光触媒微粒子の表面付近の合成樹脂や塗膜が侵食され、製品の劣化に繋がる恐れがある。その対策として、例えば酸化チタンからなる表面を持つ基材の該表面に、多孔質リン酸カルシウム膜をコートした環境浄化材料が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−244166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の光触媒組成物では、紫外光により光触媒機能を発現する酸化チタンを用いていることで、設置される場所が限定され、またコートした多孔質リン酸カルシウム膜により光が遮られ、光触媒機能の低下が懸念されるものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、設置場所を問わずに適用が可能で、且つ被覆による光触媒機能の低下を抑えられる光触媒組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる光触媒組成物は、光触媒機能を備えた光触媒微粒子の表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により被覆された光触媒組成物であって、前記光触媒機能が、波長380nm以上の可視光において発現するようになされていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わる光触媒組成物によれば、光触媒機能が波長380nmの可視光で発現されることと、光触媒微粒子の表面の一部が保護物質により被覆されていることとが相俟って、屋外、屋内を問わず高い光触媒機能を発現させることができ、且つ保護物質に光が透過しない物質を用いた場合でも波長380nm未満の紫外光と比較してエネルギーの低い波長380nm以上の可視光を透過させて高い光触媒機能を発現させることができる。
【0008】
また請求項1に記載の光触媒組成物において、前記光触媒微粒子は、チタン原子又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換したものであれば、波長380nm以上の可視光において高い光触媒機能を確実に発現するものとなり好ましい。
【0009】
また請求項1又は2に記載の光触媒組成物において、前記保護物質が異臭分子あるいは有害化学物質の吸着性能を備えたものであれば、空気中の悪臭や有害化学物質を積極的に吸着して高い分解性能を発現することができ好ましい。
【0010】
また請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒組成物において、前記保護物質は、液体状物質の分子を透過させず、気体状物質を透過する程度に前記光触媒微粒子を被覆していれば、気体状の悪臭や有害化学物質に対する光触媒機能の発現を阻害することなく、合成樹脂への練り込みや塗料への配合等における光触媒微粒子表面への悪影響を防止することができ好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係わる光触媒組成物によれば、光触媒機能が波長380nmの可視光で発現されることと、光触媒微粒子の表面の一部が保護物質により被覆されていることとが相俟って、屋外、屋内を問わず高い光触媒機能を発現させることができ、且つ保護物質に光が透過しない物質を用いた場合でも波長380nm未満の紫外光と比較してエネルギーの低い波長380nm以上の可視光を透過させて高い光触媒機能を発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係わる最良の実施の形態について、以下に具体的に説明する。
【0013】
波長380nm以上の可視光で光触媒機能を発現する光触媒微粒子としては、Fe、CuO、In、WO、FeTiO、PbO、V、FeTiO、Bi、Nb、SrTiO、ZnO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、ZrOなどの金属酸化物半導体材料の、金属原子及び/又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置き換えたもの等を用いることができるが、コストや作業性等から金属酸化物半導体材料は酸化チタン(TiO)が好適であり、これらの光触媒微粒子の内、380nm以上の可視光に対して光触媒機能を発現するものを適宜選択して用いることができる。また380nm以上の可視光に対して光触媒機能を発現するものとしては、酸化チタン原子又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換したものが挙げられる。更にはこれら窒素ドープ及び/又は硫黄ドープ型の酸化チタン微粒子に、鉄、銅等の金属イオンを導入して更に光触媒機能を高めたものも好適に用いることができる。これらの光触媒微粒子の表面の一部に保護物質が被覆される。
【0014】
保護物質は、酸化チタン等の光触媒微粒子の表面に付着可能で、光触媒微粒子による光触媒機能に対して不活性なものであれば特に限定されるものではないが、光触媒組成物が屋内における悪臭や有害化学物質を分解するために用いられるものであれば、保護物質を悪臭や有害化学物質を吸着可能な吸着剤を用いて形成することで、空気中の悪臭や有害化学物質を積極的に吸着して更に高い分解性能を発現することができる。かかる吸着剤としては、主成分が無機系のモンモリロナイト、タルク、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸塩、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、セラミックス、アパタイト、チタンアパタイト、マグネシア、コーディライト、セピオライト、水酸化カルシウム等又はこれらの複合体が挙げられる。
【0015】
保護物質を光触媒微粒子の表面の一部に付着させて形成するには、上述の如き保護物質を形成するための物質を水等の溶媒に分散させてその溶液中に光触媒微粒子を適宜の時間浸漬して光触媒微粒子の表面に保護物質を点在する結晶状に析出させたり、マスクメロンのネット構造状に析出させたりすること等で形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を備えた光触媒微粒子の表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により被覆された光触媒組成物であって、前記光触媒機能が、波長380nm以上の可視光において発現するようになされていることを特徴とする光触媒組成物。
【請求項2】
前記光触媒微粒子は、チタン原子又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換したものであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒組成物。
【請求項3】
前記保護物質が異臭分子あるいは有害化学物質の吸着性能を備えたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒組成物。
【請求項4】
前記保護物質は、液体状物質の分子を透過させず、気体状物質を透過する程度に前記光触媒微粒子を被覆していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒組成物。

【公開番号】特開2006−192318(P2006−192318A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3329(P2005−3329)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】