説明

光計測装置

【課題】機械的機構を用いることなくレーザ光を照射させる光計測装置を提供する。
【解決手段】被検体10のレーザ光照射位置に、レーザ光源11から照射された少なくとも一の所定の波長のレーザ光を照射させる照射手段141〜146と、被検体10内を透過したレーザ光を受光し計測する計測手段171〜176とを備えた光計測装置において、照射手段141〜146は、外部電圧の印加により液晶分子の配向制御を行い、液晶の実効的な屈折率の分布特性を可変させることによりレーザ光源11から照射されたレーザ光の焦点位置を可変させて被検体に照射する液晶光学素子151〜156とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光計測装置に係り、特に被検体に照射するレーザ光を好適に制御する光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、生体を非侵襲的に計測することを目的として、ポジトロンエミッション断層装置(PET)および機能的核磁気共鳴断層装置(fMRI)が広く用いられている。これらの装置は、生体内部の広い領域を画像化することが可能という利点がある一方、装置が大型化するという欠点がある。
【0003】
一方、血液中の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとを分離して測定する近赤外分光法(例えば、非特許文献1参照)や、レーザ光を利用した生体組織の断層検出法(例えば、非特許文献2参照)などの光計測技術が知られている。
【0004】
流速測定などに用いられる光計測技術では、被検体に対してレーザ光を照射および受光するプローブが用いられる。このプローブから照射されるレーザ光を制御するためには、例えば偏向レンズ、プリズム、スリットおよびフィルターなどのレーザ光を制御するための機械的な機構が備えられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
プローブがこのような機構を備える測定系である場合、精度よく測定を行うためには測定者にある程度の経験が求められる。また、プローブが被検体に固定された状態で計測を行う測定系である場合には、被検体の表面から限定された深さや方向、範囲のみしかレーザ光を照射することができず、測定性能には限界があった。しかも、これらの方法では、例えば被検体が幼児である場合や、成人である場合であっても何らかの動作をしながらの高精度な測定は困難であった。
【0006】
そのため、プローブおよびレーザ光を用いた測定においては、特に機械的な機構を必要とせず、被検体の断層部の十分な範囲を測定することができ、かつ軽量化・小型化が実現された光計測装置が学術的にも社会的にも望まれていた。
【0007】
ここで、従来、レーザ光の偏向や焦点位置を好適に制御する液晶光学素子やこれを備えた微粒子移動制御装置が開示されている(特許文献1および2参照)。この液晶光学素子は、液晶光学素子に備えられた電極間に電圧の印加により液晶分子の配向制御を行うことで、簡素な装置でレーザ光の集光を行うことができる。
【特許文献1】特開平8−206101号公報
【特許文献2】特開2006−91826号公報
【特許文献3】特開2006−235319号公報
【非特許文献1】F.F.Jobsis, “Non invasive,infrared monitoring of cerebral and myocardial oxygen sufficiency and circulatory parameters,” Science 198, 1264 (1977)
【非特許文献2】佐藤、牧:“光トポグラフィーによる高次脳機能計測”,応用物理,第76巻,4(2007)369
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のレーザ光を照射および受光する光計測装置に存在する上述した課題が存在する一方で、計測結果から得られる画像データなどの種々のデータの高精度化もあわせて望まれる。
【0009】
ここで、上述した液晶光学素子を、光計測技術で用いられるプローブから照射されるレーザ光の制御に用いることが考えられる。
【0010】
つまり、液晶光学素子を光計測技術に適用することにより、機械的な機構を必要とせずにレーザ光の制御を行うことができるため、好適なレーザ光の偏向や焦点位置の制御を実現でき、被検体に対して広範囲の測定が可能であると考えられる。また、液晶光学素子を滑らかに制御することで操作性が向上し、測定結果についても精度の高い結果が取得できると考えられる。
【0011】
また、液晶光学素子を用いてレーザ光を制御した光計測技術に関する技術は他に開示されておらず、新規な試みであり独創性があると考える。
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、機械的な機構が不要であり、かつレーザ光を好適に制御することで高精度な計測結果を取得することができる光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る光計測装置は、上述した課題を解決するために、レーザ光源から照射された少なくとも一の所定の波長のレーザ光を被検体に照射する照射手段と、前記照射手段により照射され前記被検体内を透過した前記レーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光したレーザ光の計測を行う計測手段とを備えた光計測装置において、前記照射手段は、電圧の印加により液晶分子の配向制御を行い液晶の実効的な屈折率の分布特性を可変させることにより、前記レーザ光源から照射されたレーザ光の焦点位置を可変させて被検体に照射する液晶光学素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光計測装置は、機械的な機構を用いる必要なく、レーザ光を好適に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る光計測装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明による光計測装置の一実施形態の概略的な構成を示す図である。本実施形態では、被検体10の一例である頭部の皮膚に、近赤外半導体レーザ素子から放射されるレーザ光を照射し、生体組織の酸素濃度や血流分布の画像化データを取得する光計測技術を適用して説明する。なお、本発明は頭部に限らず他の部位、さらには生体以外の流量測定などに対しても適用可能である。
【0017】
レーザ光源11は、可視から赤外の波長領域内での所定の波長、例えば830nmの波長を持ったレーザ光を放射する半導体レーザ素子から構成される。
【0018】
レーザ光源11から放射されたレーザ光は、照射用光ファイバ12に導かれる。照射用光ファイバ12は、光スイッチ13に接続されている。
【0019】
光スイッチ13は、照射用光ファイバ12から供給されたレーザ光を、各チャネルに分岐させる。本実施形態においては、光スイッチ13は、導かれたレーザ光を16チャネルに分岐を行い、照射用光ファイバ121〜1216(以下、照射用光ファイバ12という。)に導き、多点測定を行わせる。この多点測定は、一度の計測で多数の点から測定結果を取得できる点で有効である。なお、測定点は、多点測定のみならず1点のみの測定を行うこともできるし、これより多い点数であってもよい。
【0020】
照射部141〜1416(以下、照射部14という。)は、照射用光ファイバ12から導かれたレーザ光を、被検体10の所定のレーザ光照射位置に照射する。照射部14には液晶光学素子151〜1516(以下、液晶光学素子15という。)が接続される。
【0021】
液晶光学素子15は、電極間に電圧を印加して光学的特性を制御することにより、凸レンズ特性および凹レンズ特性のいずれの特性にも制御され、また、液晶光学素子15の焦点位置を三次元に移動制御することにより、レーザ光を偏向させる。液晶光学素子15の詳細については後述する。
【0022】
受光部171〜1716(以下、受光部17という。)は被検体10内で反射され、被検体10を通過したレーザ光を所定のレーザ光受光位置から受光する。受光したレーザ光は、受光用光ファイバ181〜1816(以下、受光用光ファイバ18という。)に導かれる。
【0023】
照射部14および受光部17はプローブを構成し、これらの端面は、被検体10の表面上に軽く接触している。また、隣接するレーザ光照射位置およびレーザ光受光位置の間隔は、例えば、おおむね30mmであるが、これに限定されるものではなく、計測部位などに応じて適宜変化させることもできる。
【0024】
検出器20は、受光部17から受光されたレーザ光のうち割り当てられた受光位置ごとのレーザ光を検出し、検出したレーザ光をそれぞれ電気信号に変換する。検出器20は、例えばフォトダイオードや、高感度な光計測が実現できるアバランシェダイオード、アバランシェダイオードアレイなどで構成される。また、検出器20として光電子増倍管を用いてもよい。
【0025】
検出器20により変換された電気信号は、変調信号の選択的な検出回路、例えば複数のロックイン増幅器から構成される多チャンネルロックイン増幅器21で、光照射位置および波長に対応した変調信号を選択的に検出する。本実施形態においては、アナログ変調の場合に対応する変調信号検出回路としての多チャンネルロックイン増幅器21を示しているが、デジタル変調を用いた場合、変調信号検出のためにデジタルフィルタもしくはデジタルシグナルプロセッサを用いる。
【0026】
演算装置22は、多チャンネルロックイン増幅器21から送信された電気信号に基づき測定結果の演算を行う。演算装置22は被検体10の測定結果から、例えば酸素濃度を画像化する。演算装置22は、送信された電気信号に対して、高速フーリエ変換の周波成分によって例えば血流の解析を行う。
【0027】
表示装置23は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成され、演算装置22により画像化された流速分布などの解析結果を表示する。
【0028】
次に、液晶光学素子15の詳細な構成について説明する。
【0029】
図2は、図1のレーザ光の照射部14の先端に取り付けられた液晶光学素子15を示す図であり、(A)は液晶光学素子15の側面図、(B)は液晶光学素子15の第2の電極33の平面図である。
【0030】
液晶光学素子15の第1の基板30は透明ガラスで構成され矩形状を有する基板である。この第1の基板30の上部面には、例えばITO(酸化インジウムスズ)材で構成された第1の電極31が配置される。
【0031】
第2の基板32は、第1の基板30とほぼ同形状を有する透明ガラスで構成される基板である。第1の電極31を挟んで、第1の基板30と第2の基板32は、平行に対向して配置される。第2の基板32の上部面には、例えばアルミニウムで構成された第2の電極33が配置される。この第2の電極33は、図2(B)に示すように、例えば直径3.8mmの丸穴35を有する。
【0032】
第3の電極36は、例えば薄いガラスから構成される絶縁層38、および直径40μmの球状のスペーサ37を介して、第2の電極33の上部面に配置される。第3の電極36は、例えばITO材で構成される。この第3の電極36の上部面にはガラスからなる保護層40が配置される。
【0033】
第1の基板30の表面のうち、第1の電極31が配置された側と第2の基板32との間には、液晶分子を一方向に配向させた液晶層41が、例えば厚さ110μmで構成されている。また、液晶層41は、例えば直径が110μmの球状のスペーサ42によって封入されている。
【0034】
液晶層41を挟む第1の基板30と第2の基板32との面には、ポリイミドがコーティングされている。またx軸方向にラビング処理されている。
【0035】
電圧供給部45は第1の電極31と第2の電極33との間、および電圧供給部46は第1の電極31と第3の電極36との間に電圧を印加する。また、図示しないコントロール部は、各電極間に電圧を印加する際に電圧を制御する。
【0036】
ここで、第2の電極33は、図2(B)に示すように8つに分割されている。第2の電極33の8つの電圧である電極33a〜32hには、コントロール部の制御に基づき異なる電圧が与えられる。図3は、第2の電極33の具体的構成例を示す図である。
【0037】
第2の電極33の電極33a〜32hに与えられる電圧は、それぞれ電圧供給部45a〜45hから与えられ、それぞれ独立して異なる電圧を印加することができる。
【0038】
次に、本実施形態における光計測装置の作用について説明する。
【0039】
図示しないプローブを構成した照射用光ファイバ12および受光用光ファイバ18は、被検体10である例えば頭部の皮膚に装着される。また、隣接するレーザ光照射位置およびレーザ光受光位置の間隔は、例えば、おおむね30mmであるが、これに限定されるものではない。
【0040】
光計測装置のレーザ光源11からレーザ光が照射され、照射用光ファイバ12に導かれる。照射用光ファイバ12に導かれたレーザ光は、光スイッチ13に案内される。光スイッチ13は、所定のチャネル数にレーザ光を分岐させる。本実施形態においては、光スイッチ13は、導かれたレーザ光を16チャネルに分岐を行い、レーザ光は照射用光ファイバ12にそれぞれ導かれる。
【0041】
照射用光ファイバ12の端部である照射部14に導かれたレーザ光は、液晶光学素子15に入射する。液晶光学素子15は、電圧供給部45により第1の電極31と第2の電極33間に所定の電圧(第1の電圧)Voが印加される。また、電圧供給部45とは別に、電圧供給部46により、第1の電極31と第3の電極36の間に所定の電圧(第2の電圧)Vcが印加される。各電極間に電圧が印加された液晶光学素子15に対して、液晶レンズとして機能させて光学的特性を制御することができる。液晶光学素子15の詳細な説明については後述する。
【0042】
照射部18の液晶光学素子15を透過して屈折したレーザ光は、被検体10の所定のレーザ光照射位置に照射する。被検体10に入射した後に、被検体10内で反射され、さらに被検体10を通過したレーザ光は、所定のレーザ光受光位置から受光部17によって受光される。受光されたレーザ光は、受光用光ファイバ18に導かれる。
【0043】
なお、レーザ光は光スイッチ13により16チャネルに分岐されているため、被検体10表面に位置する16点のレーザ光照射位置からそれぞれ被検体内部に入射する。また、被検体10内で反射されて被検体10を通過したレーザ光は、被検体10表面に位置する16点のレーザ受光位置からそれぞれ受光部17に受光される。
【0044】
この多点測定は、一度の計測で多数の点から測定結果を取得できる点で有効である。なお、測定点は、多点測定のみならず1点のみの測定を行うこともできるし、これより多い点数の計測点を設けてもよい。
【0045】
検出器20は、受光部17から受光されたレーザ光のうち割り当てられたレーザ光受光位置ごとのレーザ光を検出し、検出したレーザ光をそれぞれ電気信号に変換する。
【0046】
検出器20により変換された電気信号は、変調信号の選択的な検出回路である多チャンネルロックイン増幅器21に導かれる。導かれた電気信号の中から、光照射位置および波長に対応した変調信号が選択的に検出される。また、この信号は演算装置22に導かれる。
【0047】
信号を受け付けた演算装置22は、多チャンネルロックイン増幅器21から送信された電気信号に基づき測定結果の演算を行う。演算装置22は被検体10の測定結果から、例えば酸素濃度を画像化する。演算装置22は、送信された電気信号に対して、高速フーリエ変換の周波成分によって流速、例えば血流の解析を行う。
【0048】
演算装置22により画像化された流速分布などの解析結果は、表示装置23に表示される。
【0049】
次に、照射部18としての液晶光学素子15の作用について説明する。
【0050】
図4は、液晶光学素子15がレーザ光を照射する場合を概念的に示す図である。
【0051】
図4(A)は、凹レンズ特性を有する液晶光学素子15が被検体10に対してレーザ光を照射した場合、(B)は、凸レンズ特性を有する液晶光学素子15が被検体10に対してレーザ光を照射した場合を説明する図である。また、図4(C)は、凹レンズ特性を有する液晶光学素子15が被検体10に対してレーザ光を偏向させながら照射した場合、(D)は、凸レンズ特性を有する液晶光学素子15が被検体10に対してレーザ光を偏向させながら照射した場合を説明する図である。
【0052】
本実施形態における光計測装置は、凹レンズ機能および凸レンズ機能を備えており、液晶光学素子15の光学的特性である凹レンズ特性および凸レンズ特性を制御可能に構成される。凹レンズ特性および凸レンズ特性は、液晶光学素子15の第1の電極31と第2の電極33間と、第1の電極31と第3の電極36間と、にそれぞれ所定の第1の電圧Voおよび第2の電圧Vcを印加することにより制御される。液晶光学素子15の凹レンズ特性および凸レンズ特性の制御方法およびその作用については、例えば特開2006−91826号公報に記載されている。
【0053】
このように、第1の電圧Voおよび第の2電圧Vcを好適に制御することにより、図4(A)および(C)に示すように、レーザ光の照射幅を制御することができる。また、凹レンズ特性を用いてレーザ光を照光させる場合、液晶光学素子15から照射されるレーザ光は広い領域に対して放出されるため、計測範囲を拡大することができる。
【0054】
さらに、液晶光学素子15は、レーザ光を偏向させるため、焦点位置を三次元方向(図4(A)のX、Y、Z軸方向)に移動させるように光学的特性を制御することができる。
【0055】
例えば、第2の電圧Vcを可変することにより、液晶光学素子15の光学的特性は変化され、例えばZ軸方向に焦点距離がごく小さい状態から無限に近い状態まで可変される。なお、液晶光学素子15の光学的特性がこのように可変されるのは、複数に分割された第2の電極33に対して印加される第2の電圧Vcが一様に変化された場合である。
【0056】
また、液晶光学素子15はZ軸方向に加えてX、Y軸方向に対してもレーザ光の焦点位置を変化させることができる。第2の電極33は、図2(B)に示すように8分割されており、それぞれの電極33a〜33hに印加される第2の電圧Vcを、図示しないコントロール部により微小に可変制御させることにより焦点位置を変更することができる。
【0057】
液晶光学素子15の光学的特性の変化に伴い焦点位置を変化させるため、第2の電圧Vcを個別に制御する方法およびその作用については、例えば特開2006−235319号公報に記載されている。
【0058】
このように第2の電圧Vcを制御して焦点位置を三次元方向に移動させることにより、例えば図4(C)および(D)に示すように測定を希望する範囲にレーザ光を自在に照射させることができる。また、プローブを動かすことなく、希望の領域にレーザ光を照射させることができる。
【0059】
この光計測装置によれば、血液中の濃度や血流の測定などに用いられる光計測装置に、液晶光学素子を備えてこの光学的特性を好適に制御することで、機械的な機構を用いることなく光計測を行うことができる。
【0060】
具体的には、液晶光学素子の電極間に印加する電圧を制御して光学的特性を好適に制御することで、凸レンズ機能、凹レンズ機能のいずれの機能をも備え、かつ、焦点位置を三次元的に制御することができる。よって、従来では複数の機械的な機構を備えることで実現していたレーザ光の偏向を、一の液晶光学素子で実現することができる。
【0061】
また、機械的な機構を省略することができるため、光計測装置全体の小型化および簡易化を図ることができる。
【0062】
さらに、本実施形態においては液晶光学素子の第2の電極を8分割し独立に制御可能としたため、光学的特性をより精密に制御することができ、高い分解能を有する測定を実施することができる。さらに、このようにして取得された計測データに基づく画像化データなどについても、より精密な結果を得ることができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、図1でレーザ光源から照射する単一波長のレーザ光を用いて計測を行ったが、これに限らず複数の波長のレーザ光をレーザ光源とする構成にしてもよい。図5は、複数の波長のレーザ光をレーザ光源として構成した光計測装置の概略を示す図である。
【0064】
この光計測装置は、一例としてレーザ光源11Aおよびレーザ光源11Bの二つのレーザ光源を備える。また、他の構成については図1の光計測装置とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0065】
この光計測装置は、例えばレーザ光源11Aを780nmの波長のレーザ光を照射する近赤外半導体レーザで構成し、レーザ光源11Bを830nmの波長のレーザ光を照射する近赤外半導体レーザで構成する。レーザ光源11Aおよび11Bから照射されたレーザ光は、混合されて照射用光ファイバ12に送り込まれ被検体10に照射される。
【0066】
このように、複数波長のレーザ光源を備えることにより、吸光度の異なる酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの血流濃度について計測することもできる。
【0067】
また、図6に示すように本発明に係る光計測装置におけるプローブ62部分を、二次元面発光レーザアレイ60と液晶光学素子アレイ61を一体化して構成することも可能である。液晶光学素子15をアレイ状に配置することで、より広範囲を短時間で計測したり、光計測装置の小型化をさらに図ることができる。
【0068】
さらに、液晶光学素子15を出射するレーザ光の偏光方向に対して直交方向となるように、受光部17であるの受光用光ファイバ18に取り付けることにより、被検体10の表面からのノイズ光となる表面反射光を遮断することもできる。これにより、ヘモグロビンにおける散乱光信号のS/Nの向上を図ることができる。
【0069】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【0070】
例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0071】
第3の電極36の形状が、正弦波関数または正弦波関数の重畳関数、またはべき乗の関数のいずれかで与えられていてもよい。また、液晶レンズを1つ示したが、複数が配列される構成であってもよい。また複眼のような二次元的な配列であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る光計測装置の概略的な構成を示す図。
【図2】本発明に係る光計測装置の液晶光学素子を示す図であり、(A)は液晶光学素子の側面図、(B)は液晶光学素子の第2の電極の平面図。
【図3】本発明に係る光計測装置の液晶光学素子の第2の電極の具体的構成例を示す図。
【図4】本発明に係る光計測装置の液晶光学素子がレーザ光を照射する場合を概念的に示す図。
【図5】本発明に係る光計測装置において、複数の波長のレーザ光をレーザ光源とした構成の概略を示す図。
【図6】本発明に係る光計測装置における二次元面発光レーザアレイと液晶光学素子アレイを一体化して構成したプローブを示す図。
【符号の説明】
【0073】
10 被検体
11、11A、11B レーザ光源
12 照射用光ファイバ
13 光スイッチ
14 照射部
15 液晶光学素子
17 受光部
18 受光用光ファイバ
20 検出器
21 多チャンネルロックイン増幅器
22 演算装置
23 表示装置
30 第1の基板
31 第1の電極
32 第2の基板
33 第2の電極
35 丸穴
36 第3の電極
38 絶縁層
40 保護層
41 液晶層
45 電圧供給部
46 電圧供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から照射された少なくとも一の所定の波長のレーザ光を被検体に照射する照射手段と、前記照射手段により照射され前記被検体内を透過した前記レーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光したレーザ光の計測を行う計測手段とを備えた光計測装置において
前記照射手段は、
電圧の印加により液晶分子の配向制御を行い液晶の実効的な屈折率の分布特性を可変させることにより、前記レーザ光源から照射されたレーザ光の焦点位置を可変させて被検体に照射する液晶光学素子を備えたことを特徴とする光計測装置。
【請求項2】
前記液晶光学素子は、電圧の印加により液晶分子の配向制御を行い液晶の実効的な屈折率の分布特性を可変させることにより、さらに凹レンズ機能および凸レンズ機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項3】
前記レーザ光源から照射されたレーザ光を複数チャネル化する手段をさらに備え、
前記照射手段および受光手段は、対応したチャネルから導かれた前記レーザ光を多点的に照射および受光し、
前記計測手段は、前記受光手段が多点的に受光したレーザ光の計測を行うことを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項4】
前記液晶光学素子は、アレイ状に配列され、
前記レーザ光源は、前記アレイ状に配列された前記液晶光学素子に積層された二次元面発光レーザアレイであって、
前記液晶光学素子と前記レーザ光源は一体型プローブを構成したことを特徴とする請求項1記載の光計測装置。
【請求項5】
レーザ光源から照射された所定の波長のレーザ光を照射させる照射手段と、前記照射手段により照射され前記被検体内を透過した前記レーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段が受光したレーザ光の計測を行う計測手段とを備えた光計測装置において、
前記照射手段は、
第1の電極を有する第1の基板と、
前記第1の基板に対向して配置された第2の基板と、
前記第1の基板と第2の基板との間に一方向に配向された液晶分子からなる液晶層と、
前記第2の基板に対向して配置された、丸穴を有し、かつそれぞれ独立に電圧の印加が可能な複数に分割された第2の電極と、
前記第2の電極に対向して、絶縁層を介して配置された第3の電極と、
前記第3の電極に対向して配置された保護層とを備えた前記液晶光学素子と、
前記第1の電極と第2の電極との間、および前記第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加する電圧供給部と、
前記第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加する際に、複数に分割された前記第2の電極に印加する電圧をそれぞれ独立して制御するコントロール部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の光計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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