説明

光記録媒体

【課題】
本発明は、ポリ乳酸樹脂を含む耐熱性に優れた樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体を提供する。
【解決手段】
ポリ乳酸樹脂および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体であり、好ましくは熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレートであり、熱可塑性樹脂が、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が110℃以下であるポリメチルメタクリレートであり、熱可塑性樹脂が、シンジオタクチシチーの差が3%以上である2種以上のポリメチルメタクリレートであり、基板に用いる樹脂組成物の荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が70℃以上である光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体に関するものであり、詳しくは、ポリ乳酸樹脂を含む耐熱性および強度に優れた樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、地球環境保全の見地から、土中や水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目されており、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能な生分解性ポリマーとして、例えばポリヒドロキシブチレートやポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなる脂肪族ポリエステルおよびポリ乳酸などがよく知られている。これらの中でも、ポリ乳酸は、モノマーである乳酸を、とうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により安価に製造できるようになり、また、透明性を有し、融点もおよそ170℃と高く、溶融成形可能なバイオポリマーとして期待されている。そのような特性を活かして、各種製品の素材として使用されつつある。例えば、特許文献1には、生分解性樹脂を光記録媒体の基板に用いることが記載されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸はガラス転移温度が60℃付近にあり、この温度近傍での熱変形や剛性低下が大きいため、例えば、光記録媒体の基板として用いると、通常の使用条件においても熱変形しやすく使用することが困難になるという問題点があり、光記録媒体の基板として使用可能な耐熱性に優れたポリ乳酸系材料が望まれていた。
【0004】
一方、特許文献2には、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂を配合してなる樹脂組成物が開示されており、耐熱性に優れることが記載されているが、その樹脂組成物を光記録媒体の基板として用いることは記載されていない。
【0005】
また、非特許文献1および非特許文献2には、ポリ乳酸樹脂とポリメタクリル酸メチルをブレンドすることが記載されているが、そのブレンド物を光記録媒体の基板として用いることは一切記載されていない。
【特許文献1】特開2000−11448号公報(第2−4頁)
【特許文献2】特開2003−113298号公報(第2−4頁)
【非特許文献1】Polymer,39(26),6891(1998)
【非特許文献2】Macromol.Chem.Phys,201,1295(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリ乳酸樹脂を含む耐熱性および強度に優れた樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ポリ乳酸樹脂および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体、
(2)前記熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレートである上記(1)に記載の光記録媒体、
(3)前記熱可塑性樹脂が、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が110℃以下であるポリメチルメタクリレートである上記(1)に記載の光記録媒体、
(4)前記熱可塑性樹脂が、シンジオタクチシチーの差が3%以上である2種のポリメチルメタクリレートである上記(1)に記載の光記録媒体、
(5)基板に用いる樹脂組成物の荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である上記(1)に記載の光記録媒体、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリ乳酸を含む耐熱性および強度に優れた樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光記録媒体は、基板、反射層および/または記録層、保護層およびその他の種々の層が形成されてなる光記録媒体であり、ポリ乳酸樹脂および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体である。
【0011】
本発明で用いられるポリ乳酸とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。
【0012】
本発明においては、耐熱性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0013】
ポリ乳酸の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
【0014】
ポリ乳酸の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、さらに好ましくは8万以上、特に好ましくは10万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、より好ましくは25万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0015】
ポリ乳酸の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂、アクリロニトリル・エチレン・スチレン(AES)樹脂、メチルメタクリレート・スチレン(MS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、環状オレフィン系樹脂、ナイロン46、芳香族ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。なお、本発明において、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度とは、ASTM法D648規格に従い、3.2mm厚みの試験片を用いて測定した値である。
【0017】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂としては、特にポリ乳酸樹脂と配合した場合に耐熱性に優れ、かつ透明性が高いという点で、ポリメチルメタクリレートがより好ましく、他のビニル系単量体を共重合したポリメチルメタクリレート共重合体であることがさらに好ましい。その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、ラクトン環、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、耐熱性や低吸湿性の点で、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ラクトン環、N−置換マレイミド、メタクリル酸シクロヘキシルを共重合することが好ましい。なお、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレートである場合には、耐熱性および成形性の点で、荷重たわみ温度の上限として、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0019】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレートである場合には、耐熱性および成形性の点で、重量平均分子量は5万〜45万が好ましく、7万〜20万が好ましく、9万〜15万がより好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0020】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレートである場合には、耐熱性の点で、シンジオタクチシチーが35%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で、90%以下が好ましい。また、耐熱性の点で、ヘテロタクチシチーが45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましい。また、耐熱性の点で、アイソタクチシチーが20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定において、0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmに観察される直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度比の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度比の割合を百分率で表した値である。
【0021】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂としては、耐熱性の点で、シンジオタクチシチーの差が3%以上である2種以上のポリメチルメタクリレートを用いることが好ましく、シンジオタクチシチーの差が5%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。シンジオタクチシチーの差が3%未満であると、耐熱性改良効果が不充分である。また、シンジオタクチシチーの差の上限は特に限定されないが、透明性の点で、50%以下であることが好ましい。なお、本発明において、シンジオタクチシチーの差とは、用いるポリメチルメタクリレートの中で、シンジオタクチシチーが最も高い値を示すものと、最も低い値を示すものの差のことをいう。
【0022】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂として、2種以上のポリメチルメタクリレートを用いる場合におけるそれぞれのポリメチルメタクリレートの組成は、特に限定されないが、耐熱性および流動性の点で、シンジオタクチシチーが最も高い値を示すポリメチルメタクリレートをポリメチルメタクリレート1とし、シンジオタクチシチーが最も低い値を示すポリメチルメタクリレートをポリメチルメタクリレート2として、ポリメチルメタクリレート1とポリメチルメタクリレート2の重量比(ポリメチルメタクリレート1/ポリメチルメタクリレート2)が10/90〜90/10であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
【0023】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレートである場合には、荷重たわみ温度、重量平均分子量、シンジオタクチシチーを好ましい条件とすることで、ポリ乳酸樹脂との分子間相互作用が増大し親和性が向上するため、耐熱性および強度に優れた樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体を得ることができる。
【0024】
本発明で用いられる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレートである場合には、ポリメチルメタクリレートの製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができ、例えば、特開昭58−13603号公報に記載の方法などにより、本発明で用いるポリメチルメタクリレートを得ることができる。重合時の温度条件は特に限定されないが、ポリメチルメタクリレートの耐熱性の点で、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、―10℃以下が特に好ましい。
【0025】
本発明で用いる荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂は、温度がガラス転移温度+100℃で、荷重が37.2Nでのメルトフローレートが、0.1〜40g/10分であることが好ましく、成形加工性の点で、1〜30g/10分であることがより好ましく、2〜20g/10分であることがさらに好ましく、5〜15g/10分であることが特に好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分未満では、成形加工性が低下する傾向にあり、40g/10分を越えると耐熱性向上効果が低下する傾向にある。
【0026】
本発明において、ポリ乳酸樹脂および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂の配合比は、特に限定されるものではないが、重量比(ポリ乳酸樹脂/荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂)で99/1〜1/99であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましく、80/20〜20/80であることがさらに好ましく、70/30〜30/70であることが特に好ましく、59/41〜35/65であることが最も好ましい。
【0027】
本発明で用いられる樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、核化剤、帯電防止剤などを添加することができる。中でも、機械特性、成形性、耐熱性および透明性などに優れた樹脂組成物が得られるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。離型剤の配合量は、植物資源由来の樹脂と天然由来の有機充填剤の合計100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明で用いられる樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ナイロン6、ポリブチレンテレフタレートなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに配合することができる。
【0029】
本発明で用いられる樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸樹脂、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、耐熱性の点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。
【0030】
本発明で用いる樹脂組成物の表面硬度(鉛筆硬度)は特に限定されないが、基板に加工した際に傷が付きにくく、読みとりエラーなどが発生しにくくなるという点で、JIS K5600−5−4に準じて測定した鉛筆硬度が、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、落下などの衝撃に対して光記録媒体が破壊されにくくなるという点で、3H以下であることが好ましく、2H以下であることがより好ましい。
【0031】
このような表面硬度(鉛筆硬度)を有する樹脂組成物は、例えば前記好ましい熱可塑性樹脂を用いることにより得ることができる。
【0032】
本発明で用いる樹脂組成物について、メルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、JIS K7210に準じて、190℃、21.2N荷重において測定したMFRが、11g/10分以下であることが好ましく、10.5g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましく、9g/10分以下であることが特に好ましく、8g/10分以下であることが最も好ましい。メルトフローレートが11g/10分を越えると耐熱性が低下する傾向にある。下限は特に制限されないが、成形加工性の点で0.1g/10分以上であることが好ましい。
【0033】
本発明で用いる樹脂組成物について、飽和吸水率は特に限定されないが、ASTM D570に準じて測定した飽和吸水率が、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されない。飽和吸水率が0.4重量%を越えると吸湿による変形が発生しやすく、使用できなくなる可能性が大きくなるため好ましくない。
【0034】
本発明で用いる樹脂組成物について、透明性は特に限定されないが、光記録媒体を使用する際に、基板の透明性が必要であるものに関しては、光透過性が重要となる。光透過性としては、例えば、JIS K6714に従って測定した全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、ブルーレイディスクのように光透過性の必要がないものに関しては、透明性は必要ではなく、不透明のものであってもよい。
【0035】
本発明で用いる樹脂組成物について、レターデーション(複屈折量)は特に限定されないが、市販のエリプソメーターを用い23℃、405nmのレーザー光を基板面に対して30℃の角度で照射して測定したレターデーションが50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが50nmを越えると読みとりエラーなどが発生しやすくなり好ましくない。
【0036】
本発明の光記録媒体について、その基板の製造方法は特に限定されることなく公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形法、押出成形法、射出プレス成形法等が挙げられ、良好な特性を有する製品を安定して大量に製造できる点で、射出成形法が好ましい。また、基板の上に形成される反射層、記録層、接着層、誘電体層、保護層などの種々の層は、公知の方法を用いて形成させることができる。なお、接着層に用いる接着剤としては、耐熱性の点で、ポリイミド系などの高耐熱性の接着剤を用いることが好ましい。また、基板上に形成させる層の種類や積層数などを変えることにより、再生専用型、追記型、書き換え型などをそれぞれ製造することができる。
【0037】
本発明において、光記録媒体の強度とは、光記録媒体の破壊強度、すなわち、割れにくさのことをいう。本発明においては、光記録媒体の一端を万力などで固定した状態で、他端を手で持ち折り曲げたときの割れるまでの角度で判定することができ、15度以上であれば割れにくいといえる。好ましくは20度以上、より好ましくは30度以上であれば強度がさらに向上したといえる。
【0038】
本発明の光記録媒体は、用いた樹脂組成物を回収しリサイクルすることが可能である。例えば、光記録媒体を80℃以上、好ましくは100℃以上で熱処理した後、アセトンもしくはテトラヒドロフランなどの溶媒を用いて、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75度以上である熱可塑性樹脂、好ましくはポリメチルメタクリレートを単離し、その後、クロロホルムなどの溶媒を用いて、残留物からポリ乳酸樹脂を単離することができる。単離した樹脂をそれぞれ単独で用いてもよく、配合して得られる樹脂組成物を用いて光記録媒体とすることも可能である。
【0039】
本発明の光記録媒体は、各種の光記録媒体に用いることができ、具体的には、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、レーザーディスク(登録商標)、ブルーレイディスクなどに用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。ここで、実施例中の配合比は重量%を示す。また、使用した原料および表中の符号を以下に示す。
【0041】
(A)ポリ乳酸樹脂
(A−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.3%、Mw16万)
(B)メタクリル系樹脂
(B−1)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックス” LG35、シンジオタクチシチー39%、MFR35g/10分(230℃、37.3N))
(B−2)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックス”LG、シンジオタクチシチー41%、MFR10g/10分(230℃、37.3N))
(B−3)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックス”MHF、シンジオタクチシチー46%、MFR2g/10分(230℃、37.3N))
(B−4)メタクリル樹脂(三菱レイヨン製“アクリペット”UT100、シンジオタクチシチー45%、MFR0.4g/10分(230℃、37.3N))
なお、シンジオタクチシチーは、1H−NMR測定により測定した値である。1H−NMR測定は、日本電子製JNM−AL400を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、試料濃度20mg/mLとして測定した。
【0042】
[実施例1〜6、比較例1]
ポリ乳酸樹脂および表1に示す荷重たわみ温度(DTUL)を有する熱可塑性樹脂を表1に示す配合割合に従い、二軸押出機を用いて、温度210℃で溶融押出し、ペレット状の樹脂組成物を得た。なお、上記DTULは、ASTM法D648に従って127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を用いて測定した値である。
【0043】
得た樹脂組成物について、127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作成し、ASTM法D648に従って荷重1.82MPaにおけるDTULを測定した。
【0044】
また、得た樹脂組成物について、JIS K7210に準じて、メルトインデクサーを用い、190℃、21.2N荷重におけるメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0045】
また、50mm×50mm×1mmの試験片を作成し、JIS K5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0046】
続いて、得られた樹脂組成物を用いて射出成形により、凹凸のピットが形成されたディスク基板を作成した。得られたディスク基板について、JIS K5600−5−4に準じて、鉛筆硬度を測定した。得たディスク基板にアルミニウムの反射膜をスパッタ蒸着させた後、その上に紫外線硬化型樹脂(大日本インキ工業社製SD−1700)をスピンコートし、保護層を形成させ、再生専用型の光記録媒体であるコンパクトディスクを作成した。
【0047】
作成した光記録媒体の強度について、半円部を万力で固定した後、もう一方の半円部の頂点を手で持ち折り曲げたときの割れるまでの角度を測定し、下記基準により判定した。
◎:30度以上
○:20〜30度
△:15〜20度
×:15℃以下
【0048】
作成した光記録媒体を、熱風乾燥機を用いて70℃、200時間処理した後、もしくは、恒温恒湿槽を用いて温度50℃、相対湿度95%(95%RH)の条件で200時間処理した後、プレーヤーで音声を再生できるかどうか、下記基準により判断した。また、未処理品についても同様に行った。
◎:問題なく再生することができる。
○:やや変形しているもののものの、再生することができる。
△:読みとりエラーが一部あり、再生が不充分である。
×:全く再生できない。
【0049】
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の実施例、比較例より以下のことが明らかである。
【0052】
実施例1〜6と比較例1との比較から、ポリ乳酸および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物は、耐熱性および強度に優れており、それを基板に用いた光記録媒体は、問題なく使用できることがわかる。また、上記熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート樹脂を使用することにより、透明な樹脂組成物が得られ、コンパクトディスクとして問題なく使用ができることがわかる。また、上記熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート樹脂を使用することにより、鉛筆硬度も優れており、CD−ROMなどに一般的に使用されているポリカーボネート(2B)以上であるため、光記録媒体の基板として充分な耐傷性を有していると言える。また、ポリ乳酸および荷重たわみ温度が80℃〜110℃である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物を基板に用いる、もしくは、ポリ乳酸樹脂および熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物の荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が70℃以上である樹脂組成物を基板に用いることにより、どの様な条件においても制限なく使用可能な光記録媒体を得ることができることがわかる。
【0053】
[実施例7〜10]
ポリ乳酸樹脂および表2に示す荷重たわみ温度(DTUL)を有する熱可塑性樹脂を表2に示す配合割合に従い、二軸押出機を用いて、温度210℃で溶融押出し、ペレット状の樹脂組成物を得た。なお、上記DTULは、ASTM法D648に従って127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を用いて測定した値である。また、シンジオタクチシチーの差は、ぞれぞれの熱可塑性樹脂について、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定による直鎖分岐のメチル基の積分強度比から算出した値を用いて求めた。
【0054】
得た樹脂組成物について、127mm×12.7mm×3.2mmの試験片を作成し、ASTM法D648に従って荷重1.82MPaにおけるDTULを測定した。
【0055】
また、得た樹脂組成物について、JIS K7210に準じて、メルトインデクサーを用い、190℃、21.2N荷重におけるメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0056】
また、50mm×50mm×1mmの試験片を作成し、JIS K5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0057】
続いて、得られた樹脂組成物を用いて射出成形により、凹凸のピットが形成されたディスク基板を作成した。得たディスク基板にアルミニウムの反射膜をスパッタ蒸着させた後、その上に紫外線硬化型樹脂(大日本インキ工業社製SD−1700)をスピンコートし、保護層を形成させ、再生専用型の光記録媒体であるコンパクトディスクを作成した。
【0058】
各種評価を実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の実施例より以下のことが明らかである。
【0061】
実施例7〜10から、ポリ乳酸および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物は、耐熱性に優れており、それを基板に用いた光記録媒体は、問題なく使用できることがわかる。また、上記熱可塑性樹脂としてシンジオタクチシチーの差が3%以上である2種のポリメチルメタクリレート樹脂を用いることで、より耐熱性に優れる樹脂組成物を得ることができ、その樹脂組成物を基板に用いることにより、どの様な条件においても制限なく使用可能な光記録媒体を得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂および荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が75℃以上である熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物を基板に用いた光記録媒体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレートである請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が110℃以下であるポリメチルメタクリレートである請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、シンジオタクチシチーの差が3%以上である2種以上のポリメチルメタクリレートである請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
基板に用いる樹脂組成物の荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が70℃以上である請求項1に記載の光記録媒体。