説明

光論理ゲート

それぞれの光信号(A、B)を受け入れる第1と第2の光入力(11、12)と、および必要な論理機能を適用した結果を表わしている光信号(POUT)を出力するための光出力(15)とを備えた光論理ゲート(10)が提供される。論理ゲートは光信号を結合して、パワー(P)が光信号のパワー(P、P)の結合であるところの対応結合信号を生成するための光結合手段(13)と、結合信号(P)を受けて、非線形光学手段の特性に依存している論理機能からの光出力信号(POUT)を放出する非線形光学手段(14)を備えることを特徴としている。その非線形光学手段の特性は出力信号のパワーが結合信号のパワーと選択された論理機能を通して相関するように選択されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光論理ゲートに関し、特に、(論理機能について)再構成可能、かつ、再生可能な、オールオプティカル(全光)型の論理ゲートに関する。本願において、「全光」という用語は、対応する電気的な量に変換することなく、光領域で論理演算(論理動作)を実行することを意味する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の分野では、電気的な信号に戻すことなく、光信号のまま超高速論理演算を行うことがますます要望されている。
【0003】
例えば、広帯域(ブロードバンド)・パケット交換ネットワークでは、リアルタイムでのパケットの同期、アドレス認識および内容解析などの高速ルーチング機能を実行するために、超高速全光信号処理が要求される。全光ディジタル論理ゲートを用いることは、そのような機能を実行するために不可欠であるように思われる。論理ゲートはそれ自身の縦続接続を可能とし、かつ、低いビット誤り率を達成するために、オン状態とオフ状態の間で高いコントラスト比を持たねばならない。またリアルタイムで全光処理を達成するために、応答時間が非常に早くなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
文献によれば、全光型論理ゲートが数例報告されている。それらは(i)半導体デバイス、(ii)光ファイバ、(iii)導波路デバイスが有するの非線形効果を利用している。しかしながら、(i)の場合、半導体の応答時間により最大信号ビットレートが制限されてしまう。(ii)の場合、市販のファイバで得られる特性は不十分であるため、特別高価なファイバが必要となるが、それは製造が困難であり、商用には不向きである。(iii)の場合、導波路デバイスに基づく論理ゲートはまだ開発の初期段階であり、技術的な観点からも動作の点からも商用できるまでには更なる研究が必要である。
【0005】
本発明の一般的な目的は、実現が容易で経費が比較的安く、理想的には超高速動作が可能な全光型論理ゲートを入手可能とすることによって上記の欠点を補うことである。本発明の別の目的は、単純かつ経済的でさらに再構成可能な、すなわち提供する論理機能が容易に再構成できる、全光型論理ゲートを入手可能とすることである。その他の目的は、好適に再生可能なゲートを提供することであり、すなわち光ファイバ中を伝播する間に分散によって劣化するであろう論理レベルを再生できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば光論理ゲートは、それぞれ光信号を受け入れる第1および第2の光入力と、要求される論理機能を適用した結果を表わす光信号を出力するための光出力と、第1および第2の光入力にそれぞれ入力された光信号を結合することで、これらの光信号のパワーの和をパワーとして有した対応する結合信号を生成する光結合手段と、結合信号を受けて、光出力信号を放射する非線形光学手段とを備え、前記論理機能は、前記非線形光学手段の特性に依存しており、当該特性は、選択された論理機能によって出力信号のパワーが結合信号のパワーと相関をもつように選択された特性であることを特徴とする。
【0007】
光結合手段が信号のパワーの総和を決定し、前記特性が、出力信号のパワーが入力信号のパワーの総和と相関をもつような特性であると、有利である。光結合手段は、偏波ビーム結合器(PBC)を備えているのが好適であり、前記光信号らがその偏波が相互に直交する状態で結合されると、位相干渉による不安定性を除去するために有効である。
【0008】
特に好適な実施例において、非線形光学手段は、非線形光ループミラー(NOLM)を備えている。NOLMの特別の利点は、それが光ファイバをベースとしているので、応答時間が非常に早く、論理ゲートが非常に高いビットレート、例えば、160Gbit/s以上での動作を実現できることである。NOLMの第1の構成は、自己位相変調(SPM)をベースとしたタイプであり、結合信号が分割されてファイバループの中を対向伝播するようになる。そのような構成でAND(論理積)、OR(論理和)およびXOR(排他的論理和)の各論理ゲートの実現が可能である。別の構成としては、NOLMは、相互位相変調(XPM)をベースとしたタイプであり、結合信号が、光ポンプを構成し、入力信号としての光プローブ信号をさらに備えている。そのような構成ではNOR(否定論理和)およびEQIUVALENCE(EQ:等価)の各論理ゲートが実現可能となる。後者の構成の場合、ゲートがXPM NOLMの出力に接続される光ペデスタル抑制器をさらに備えることが有利である。光ペデスタル抑制器はSPM NOLMを備えるのが便利である。
【0009】
特に好適な実施形態としては、光論理ゲートは、非線形光ループミラーのファイバループの中に偏波制御器をさらに備えてもよい。偏波制御器は、NOLMの特性を変えることで要求される論理機能を選択する手段である。そのような構成によって再構成可能な光論理ゲートが実現可能となる。
【0010】
NOLMのファイバループの中で発生する4波混合(FWM)と、ウォークオフ劣化を避けるために、各光信号は同じ搬送波波長を持つのが有利である。
【0011】
それぞれ調整可能な光減衰器を、光入力と光結合手段の間に設けることで、光信号のパワーレベルを望みのレベルに維持するのが好適である。
【0012】
NOLMの特性は、結合信号のピークパワーに依存する。そのため、光論理ゲートは、光増幅器、望むらくはエルビウム・ドープト・ファイバ・アンプ(EDFA)をさらに備え、NOLMに入力される前に結合信号を増幅するのが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明をよりよく理解するために本発明による論理ゲートを付属の図面を参照しながら以下に記述するが、これは例示だけを目的とするものである。
【0014】
図1を参照すると、本発明の原理による光論理ゲート10のブロック概略図が示されている。論理ゲート10は、2つの光入力11と12を備えていて、そこに論理演算が行われるべきディジタル光信号AとBが印加される。2つの光信号AとBは光結合(パワーの総和)手段13によって加えられ、パワーPIN=P+Pを持つ光信号を発生する。ここでPとPは、入力信号AとBのパワーである。総和手段13から出力されるパワーPINは適当な非線形特性を有した非線形光デバイス14に印加される。その光出力15は論理ゲートの出力である。
【0015】
本質的には、非線形ブロックへの入力パワーPINが2つのディジタル信号AとBのパワーの総和であるときには、非線形ブロックからの出力パワーPOUTはAとBの論理機能を提供することができる。
【0016】
非線形ブロック14の理想的な非線形特性は、実装しようとする論理ゲートに依存する。実際に、AとBが共に高いレベルの場合(ケース11)または低いレベルの場合(ケース00)、あるいは片方が高く、他方が低い場合(ケース10と01)、望みの論理機能に応じて、対応する入力パワーに対して出力パワーが高い(低い)状態でなければならない。もしもAとBが同じピークパワーを持つ場合、01の場合と10の場合は区別が出来なくなり、対応するポンプパワーは11の場合の半分になることは注意すべきことである。
【0017】
図2は、NAND(否定論理積)、EQ(EQUIVALENCE)、NOR、XOR(NON EQUIVALENCEまたはNEQ)、OR、およびANDの論理機能を実現するための非線形ブロックの理想特性(POUT対PIN)を示す。図2において、横軸は、2つのディジタル光信号AとBのパワーの総和PINを表わし、(両方の信号AとBともに低いレベルのときは)低いレベルPIN=P、(AとBのうちの片方が低いレベルで他方が高いレベルのときは)高いレベルPIN=P、(AとBの両方とも高いレベルのときは)高いレベルPIN=2Pである。例えば、この図からわかるように、ANDゲート機能に対しては、入力信号のどちらかまたは両方が低い場合には(すなわち、ケース00に対応するPIN=P、あるいはケース01および10に対応するPIN=Pの場合)、出力パワーは低くなる。両方の入力が高い場合(ケース11に対応するPIN=2Pの場合)、出力パワーは高くなる。A=Bの場合を考えると、NORゲートを用いれば、NOT機能が実現されることは注意すべきである。
【0018】
本発明の基礎をなす原理は、それぞれ対応する論理ゲートを実現する目的に対して、たった1つの非線形素子を用いることで図2に示したのと同様の特性を提供できるということである。実現される論理ゲートの特性(論理機能)は、非線形ブロック14の特性に依存する。
【0019】
好適な実施例では、良く知られた非線形光ループミラー(NOLM)が非線形ブロックとして用いられる。
【0020】
良く知られているように、NOLMは2つの異なる構成を用いて実現できる。第1の構成では、入力信号が分割され、それらがループの周りを対向伝播する。2つの対向伝播する入力信号のうちの1つは、ループのパワー不均衡を利用した(入力信号が光ポンプとして作用する)自己位相変調(SPM)効果による非線形位相シフトを受ける。第2の構成によれば、入力信号はループを1方向に伝播し、ループの外部から発生した対向伝播するポンプ光によってポンプ(増幅)される。入力信号は、相互位相変調(XPM)効果によって誘起される非線形位相シフトを受ける。
【0021】
NOLMが偏波保存型でない(非PM)光ファイバを用いて構築される場合、偏波制御器(PC)がループの中に設けられ、一定の位相シフトを付け加えることによって出力においてポンプパワーレベルの違いに応じた建設的または破壊的干渉を作り出すことによってNOLMの非線形特性を変えることができる。
【0022】
どちらのNOLM構成に対しても、位相シフトを誘起する信号を2つの異なるディジタル信号AとBの総和と考えると、NOLMの出力パワーはAとBの論理機能を表わすことができる。実際、偏波制御器の設定を簡単に変えるだけで、AとBのいろいろな場合、すなわち両方とも高いレベルの場合(ケース11)あるいは両方とも低いレベルの場合(ケース00)、あるいは1方が高く、他方が低い(ケース10と01)の場合に、対応するポンプパワーに対して出力パワーは高い(または低い)状態にすることができる。もしAとBが同一ピークパワーを持つ場合は、ケース01と10は区別不可能であり、対応するポンプパワーはケース11のときの半分になることは注意すべきである。結果として偏波制御器を適当に制御することによって、図2に示した場合のそれぞれに対応した非線形特性を作り出すことができる。
【0023】
図3を参照して、ループの中の偏波制御器(PC)を適当に制御することによって、AND、ORおよびXORの論理機能を実現するための、図5に例示される自己位相変調(SPM)に基づく非線形光ループミラー(NOLM)の非線形特性(正規化出力パワーPOUT対入力パワーPINの特性)の測定された描画が示されている。NOLMは、長さ1kmの非偏波保存の分散シフトファイバ(DSF)を備え、ループの中には5dBの集中定数的な損失を持っている。DSFは非線形係数として2km−1watt−1を持っている。図表は、0から3Wの範囲の入力信号パワーPINに対して示されている。各特性についてNOLMの出力パワーはその最大値で正規化されている。
【0024】
NOLMの入力信号(図3の横軸)は、2つのディジタル信号AとBの総和であると考えられる。それぞれ低いレベルが0Wで高いレベルが1.5Wである場合、図3の特性は信号AとBの論理機能AND、OR又はXORを表わす。例えば、ANDゲートにおいては、NOLM出力パワーがPIN=0W(ケース00)とPIN=1.5W(ケース01と10)に対しては低く、PIN=3W(ケース11)に対しては高い。
【0025】
同様に、図4には、NORおよびEQUIVALENCEの論理機能を実現するための、図6に示されるXPMに基づくNOLMの非線形特性が示されている。NOLMは長さ1kmの非偏波保存DSFを備え、出力パワーは正規化されている。非偏波保持ファイバを用いて実現すれば、反転機能を実現できる。この場合、NOLM入力信号は、CWプローブ信号であり、ランプ信号がプローブ信号にXPMを誘起するためにループ内に挿入されたポンプ信号として用いられる。前の場合と同じパワーレベルを考えると、図4は信号AとBの間で論理機能EQUIVALENCEおよびNORを示している。
【0026】
図3と4から色々な論理機能のそれぞれに対してオン・オフ・コントラスト比を測定することもできる。最良の場合(AND、XOR、OR)、コントラスト比は20dBよりも良く、最悪の場合(EQUIVALENCE)、出力信号のペデスタルによって比は6.5dBよりも高い。後者の場合、以下で説明するように、SPMベースのNOLMを追加することによって、コントラスト比をさらに改善することができる。
【0027】
図5は、非線形素子14がSPMに基づくNOLMを備えた、本発明による再構成可能な論理ゲートを示す。論理ゲートは、再構成可能であり、偏波制御器19の設定によってAND(A・B)、OR(A+B)およびXOR(A xor B)の論理ゲートとして動作できる。
【0028】
図6は、非線形素子14がXPMに基づくNOLMを備えた、本発明による再構成可能な論理ゲートを示す。論理ゲートは、再構成可能であり、偏波制御器19の設定によってEQUIVALENCE(NOT(A xor B))およびNOR(NOT(A+B))の論理ゲートとして動作できる。
【0029】
両構成とも、光入力信号AとBはそれぞれの可変減衰光減衰器(Att.)16、16に印加されて、そのパワーレベルが適当なレベルになるように減衰されるのが有利である。その後、これらの光入力信号は、光結合手段13によって光学的に結合される。光結合手段13は偏波ビーム結合器(PBC)を備えることが有利である。可変光減衰器は、各信号のパワーレベルを対応する論理状態に対して同一になることを確保するために設けられた手段であるが、入力信号のパワーが保証されている場合には、設ける必要はない。PBCからの結合信号出力は非線形デバイス14への入力信号を構成する。信号AとBのそれぞれはNOLMのDSF20内での4波混合(FWM)とウォークオフ劣化を避けるために、同じ搬送波波長(λ)を持つ。信号AとBは位相干渉による不安定性を低減するために、偏波が直交するように結合される。
【0030】
図5を参照すると、非線形ブロック14がSPMに基づくNOLMを備える、本発明による光論理ゲートが示されている。当業者にはNOLMは良く知られており、従って、その実現法も容易に導くことができるので、NOLMに関しては簡単な記述だけを行う。図5のNOLMは、入力光増幅器(良く知られたEDFA増幅器が有利である。)17と、入力信号の各半分がそれぞれファイバループ20の周りを対向伝播するように入力信号を分岐したり結合したりする50:50の光結合器(カプラ)/分岐器(スプリッタ)18を備えている。50:50結合器18は、溶融ファイバ結合器と、1km長の分散シフトファイバDSF(非線形係数は2km−1watt−1)を有するファイバループとを備えている。図中、入力信号のうち反時計方向に伝播する信号部分はポンプ光/プローブ光を構成し、信号の他の部分と自己位相変調過程を通じて相互作用する。結合器/分岐器18の最後のポートは、時計回りに伝播し、ファイバループを1周してSPMを受けた後の信号を取り出すために用いられる。この信号は非線形ブロックの出力信号15を構成する。ファイバループの中には偏波制御器PC19と7dB減衰器21が備わっている。偏波制御器19はゲートの論理機能、すなわちAND(A・B)、OR(A+B)およびXOR(A xor B)を設定するために用いられる。減衰器21は結合信号の半分づつとなる各分岐信号間のパワー不均衡を確保する。これらは、すなわち反時計回りに伝播するポンプ光/プローブ光と時計回りに伝播する入力信号のことである。
【0031】
図6には、非線形ブロック14がXPMに基づくNOLMを備える、本発明に係る光論理ゲートが示されている。光論理ゲートは、その論理機能が偏波制御器に依存して決定されるので、EQUIVALENCE(NOT(A xor B))およびNOR(NOT(A+B))の論理機能として、再構成可能である。図5の実施例と同じ部品には同じ参照番号が用いられている。この実施例の中で、光ポンプを構成する入力信号は光結合器22によってファイバループに結合し、時計回りの方向に伝播する。結合器22は溶融ファイバ結合器からなるのが有利である。波長λpの連続波(CW)光プローブ信号は50:50結合器/分岐器23によってファイバループに結合される。ここでも結合器/分岐器は溶融ファイバ結合器による構成されるのが有利であり、CWプローブ信号を分岐して得られた半分の信号のそれぞれは時計方向および反時計方向に伝播する。結合器23の最後のポートに接続されたバンド・パス・フィルタBPF24は、再生された波長λの出力信号を選択するために用いられる。BPF24は波長λの光を通過させ、他の波長、特に入力信号に対応する波長λの光を遮断するように選択された通過帯域特性を有している。一般に、プローブ信号と(信号AとBの総和によって生成した)ポンプ信号とは位相シフトが最大になるように整合される必要がある。この場合、2つの直交するポンプ成分を用いることによるXPM効率の減少は、ループの途中に設けられた偏波制御器19を適当に調整することによって補償することができる。各構成で用いられる偏波制御器19は、良く知られている多重ファイバループ構成を基礎として構築されいる。
【0032】
図3と4に示されている非線形特性を完全に利用するためには、全ピークポンプパワーとして33dBmが必要であることがわかる。信号AとBに対してNRZ(ノンリターンツーゼロ)の擬似ランダム・ビット・パターンを考えると、これは平均パワーが30dBmに相当する。この場合、全(AとB)平均ポンプパワーの最大値を27dBmとすることで高いピークパワーを実現できるよう、ゼロに対して1の数を少なくした特別なビット系列を用いることができる。より長い区間を持つDSFを用いると、必要なピークパワーを減らすことができる。別の方法として、非線形係数が1000km−1watt−1の程度の大きさを持つ高度非線形ファイバ(HNLF)を用いることができ、必要なファイバの長さを削減してよりコンパクトなゲートを作ることができる。例えば、HNLFを用いると、必要なファイバループはたった数メートル(1−2m)となり、これはDSFを用いた場合の1kmと対比すると非常に短くできることがわかる。
【0033】
図7と8は、本発明による光ゲートに対して測定された応答を示す。応答波形は正規化された振幅対時間であり、入力信号AとB(上段)と対応するゲートの色々な論理演算に対する正規化出力(下段)を示す。図7はNRZ入力信号に対する応答であり、図8は超短RZ(リターン・ツー・ゼロ)信号に対するものである。各応答は50GHzのディジタルオシロスコープを用いて測定された。
【0034】
図7と8には4つの可能な入力の組み合わせ(AB=00、01、11、および10)の全てが示されている。入力信号の両変調フォーマットを用いることで、対向伝播する信号によって生じるNOLM内の望ましくない効果を補償することについて、非偏波保持ファイバループの有効性を評価できる。実際に、このような効果はAとBがNRZ信号である場合または高いビットレートパルス列である場合に顕著なものとなる。さらに、テストに用いられた15psRZ信号は、本発明の光ゲートが超高速応用分野に適していることを確認するものである。図7と8の曲線は全ての論理ゲートの正しい挙動を確認するものであり、オン・オフ・コントラスト比について測定された値は、図3と4に示した結果を確認するものである。AND、XOR、およびORの場合、17dBの入力オン・オフ・コントラスト比に関して3dBの改善が確認された。この改善は、SPMベースのNOLMがペデスタル抑制器として動作できることによるものである。
【0035】
さらに、信号AとBの両方とも入力Q−値が5であったが、EQUIVALENCEゲートを除く全ての論理ゲートについて、出力Q−値の1ないし2の範囲で増加が確認された(なお、EQUIVALENCEゲートをについて出力Q−値が1だけ減少した)。ペデスタル出力信号によるQ‐値の減少は、ペデスタル光抑制器ステージ25(図6のPSによって一般的に示されている。)を非線形デバイスの出力側に挿入することで回避できる。抑制器は別のSPMベースのNOLMによって実現するのが有利である。
【0036】
最後に、光ファイバにおけるSPMやXPMのようなカー効果による高速応答時間を利用することで、160GHz以上で動作を必要とする応用分野においても、本発明により実現される全光型論理ゲートが適しているといえよう。
【0037】
以上説明したように、本発明の所定の目的は、単純で効率のよい全光型論理ゲートを入手可能とすることによって達成された。本発明の原理によって、光ドメインで全ての論理機能(NOT、AND、OR、XOR、EQUIVALENCE、NOR、NAND)を得ることが可能となった。もし非線形ブロックを自己位相変調(SPM)または相互位相変調(XPM)を利用するNOLMによって実現する場合、再構成可能かつ再生可能な超高速論理ゲートが得られる。そのような論理ゲートの有効性はNRZ信号でもRZ信号でも実証された。
【0038】
本発明の技術範囲を逸脱することなく色々な変形が可能であることは理解できるであろう。例えば、NOLMを非線形ブロックとして用いることは、超高速応答時間を実現する上で特に好適である。光論理ゲートが、160GHz以上の動作を可能としているが、他の非線形光デバイスを採用してもよい。例えば、干渉計の形をした半導体増幅器のような半導体光デバイスを採用してもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による論理ゲートのブロック概略図である。
【図2】本発明において用いられる、論理機能NAND、EQ、NOR、XOR、ORおよびANDを実現する非線形ブロックの理想特性を示す図である。
【図3】、
【図4】それぞれ自己位相変調(SPM)と相互位相変調(XPM)に基づく非線形光ループミラー(NOLM)の(正規化された出力パワーPOUT対入力パワーPIN)の非線形特性を表わす図である。
【図5】SPMに基づく本発明によるAND、OR、およびXORゲートの構成を示す図である。
【図6】XPMに基づく本発明によるNOR、およびEQゲートの構成を示す図である。
【図7】本発明によるAND、OR、XOR、EQ、NOR論理ゲートへの2つのノン・リターン・ツー・ゼロ(NRZ)信号入力と対応する出力波形との関係を示す図である。
【図8】本発明によるAND、OR、XOR、EQ、NOR論理ゲートへの2つのリターン・ツー・ゼロ(RZ)信号入力と対応する出力波形との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号(A)を受け入れる第1光入力と、光信号(B)を受け入れる第2光入力と、要求される論理機能を適用した結果を表わす光信号を出力するための光出力とを備えた光論理ゲート(10)であって、
前記第1および第2の光入力にそれぞれ入力された光信号(A,B)を結合することで、これらの光信号のパワー(P,P)の和となるパワー(P)を有した結合信号を生成する光結合手段(13)と、
前記結合信号(P)を受けて、対応する光出力信号(Pout)を放射する非線形光学手段(14)と
を備え、
前記論理機能は、前記非線形光学手段の特性に依存して決定され、該特性は、前記論理機能によって前記光出力信号のパワーが前記結合信号のパワーと相関をもつことになるように選択された特性であることを特徴とする光論理ゲート。
【請求項2】
前記光結合手段(13)は、前記光信号(A,B)の総和を演算する手段であることを特徴とする請求項1に記載の光論理ゲート。
【請求項3】
前記光結合手段(13)は、偏波ビーム結合器(PBC)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光論理ゲート。
【請求項4】
前記非線形光学手段は、非線形光ループミラー(NOLM)を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項5】
前記非線形光ループミラー(NOLM)は、前記結合信号から分岐された2つの光信号が光ファイバループ内を対向伝播するように前記結合信号を分岐する、自己位相変調(SPM)をベースとしたタイプであることを特徴とする請求項4に記載の光論理ゲート。
【請求項6】
前記非線形光ループミラー(NOLM)は、前記結合信号からポンプ光を生成し、かつ、入力信号として光プローブ信号(CW)を有する、相互位相変調(XPM)をベースとしたタイプであることを特徴とする請求項4に記載の光論理ゲート。
【請求項7】
前記非線形光ループミラー(NOLM)の出力部に接続された光ペデスタル抑圧器(25)をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の光論理ゲート。
【請求項8】
前記非線形光ループミラー(NOLM)が備えるファイバループの途中に偏波制御器(19)をさらに含み、前記偏波制御器(19)によって前記非線形光ループミラー(NOLM)の特性を変更することで、実現すべき論理機能を選択することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項9】
前記光信号(A,B)は、ともに同一の搬送波波長(λ)を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項10】
前記光信号(A,B)は、前記光結合手段(13)によって、相互に偏波が直交した状態で結合されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項11】
前記第1及び第2の光入力(11,12)と、前記光結合手段(13)との間に、調整可能な光減衰器(16A、16B)をさらに設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項12】
前記結合信号(P)を増幅する光増幅器(17)をさらに備え、増幅された前記結合信号(P)が前記非線形光ループミラー(NOLM)に供給されることを特徴とする請求項4乃至11のいずれか1項に記載の光論理ゲート。
【請求項13】
前記論理機能は、AND、OR、XOR、EQUIVALENCE、NOR、NANDから選択されたものであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光論理ゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−503781(P2008−503781A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517269(P2007−517269)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052437
【国際公開番号】WO2006/000508
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507002756)エリクソン エービー (26)
【Fターム(参考)】