説明

光通信システム、発光装置、照明装置、表示装置、標示装置及び光通信方法

【課題】発光ダイオードと蛍光体との組み合わせから成る光源を用いた高速なデータ通信を可能とする。
【解決手段】発光装置1は、青色発光ダイオード11から出射される青色光と、青色光に蛍光体12が励起されることにより出射される黄色光とを合成して得られる照明光を出射するとともに、データ信号に従って青色発光ダイオード11を駆動するための電気信号を変調する。受信装置2は、合成光を受光して電気信号に変換し、変換した電気信号をデータ信号に復調する。発光装置1には、電気信号に含まれる蛍光体12の周波数成分を除去するための符号化回路15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単色LED(Light Emitting Diode)と蛍光体とから成る擬似白色LED等の光源を用いて光通信を行う光通信システム、発光装置、照明装置、表示装置、標示装置及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LEDには、大別して、赤色LED、緑色LED、青色LEDを用いた3原色白色光源の他に、単色LEDと蛍光体との組み合わせから成る擬似白色LEDがある。擬似白色LED等の光源は、近年その特性が大きく向上しており、かつ、製造コスト等が低減しているため、その適用領域が急拡大している。
【0003】
一方では、照明光を用いて、データ通信を行う照明光通信装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−318836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された照明光通信装置のように、3原色LEDの合成光により照明及び通信を行う装置は数多く提案されているが、その特許文献1にも記載されているように、擬似白色LED等の発光ダイオードと蛍光体との組み合わせから成る光源は、蛍光体の応答速度の遅さにより、受信したデータの復元性が低くなるため、高速変調によるデータ通信には不向きであるとされていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、発光ダイオードと蛍光体との組み合わせから成る光源を用いた高速なデータ通信を可能とする光通信システム、発光装置、照明装置、表示装置、標示装置及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る光通信システムは、
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射するとともに、データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する発光装置と、
前記合成光を受光して電気信号に変換し、変換した電気信号をデータ信号に復調する受信装置と、
を備え、
前記発光ダイオードを駆動するための電気信号と、前記合成光から変換された電気信号のいずれか一方に含まれる前記蛍光体のスペクトル成分を除去するフィルタが設けられている。
【0008】
この場合、前記発光装置は、
前記フィルタとして、変調された前記電気信号を、mBnB符号を用いて符号化する符号化部を有し、
前記受信装置は、
前記合成光から変換された前記電気信号を復号化する復号化部を備える、
こととしてもよい。
【0009】
この場合、前記mBnB符号は、バイフェーズ符号である、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記受信装置は、
前記フィルタとして、
前記合成光から変換された電気信号に含まれる所定の周波数以下の成分を除去する高域通過フィルタを備える、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記発光ダイオードから出射される光は青色光であり、前記蛍光体から出射される光は黄色光である、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記発光ダイオードから出射される光は青色光であり、前記蛍光体から出射される光は赤色光及び緑色光である、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記発光ダイオードから出射される光は近紫外線であり、前記蛍光体から出射される光は赤色光、緑色光及び青色光である、
こととしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る発光装置は、
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射する光源と、
データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する変調部と、
前記変調部によって変調された前記電気信号をmBnB符号に符号化する符号化部と、
を備える。
【0015】
本発明の第3の観点に係る照明装置は、
本発明の発光装置から出射される合成光を用いて照明を行う。
【0016】
本発明の第4の観点に係る表示装置は、
本発明の発光装置が、表示面に複数配列された表示部と、
複数の前記発光装置の発光状態を制御して、情報を前記表示面に表示させるとともに、前記データ信号を前記各発光装置に入力する制御部と、
を備える。
【0017】
本発明の第5の観点に係る標示装置は、
本発明の発光装置が、標示面に複数配列された標示部と、
複数の前記発光装置の発光状態を制御して、情報を前記標示面に標示させるとともに、前記データ信号を前記各発光装置に入力する制御部と、
を備える。
【0018】
本発明の第6の観点に係る光通信方法は、
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射するとともに、データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する発光工程と、
前記合成光を受光して電気信号に変換し、変換した電気信号をデータ信号に復調する受信工程と、
を含み、
前記発光工程において前記発光ダイオードを駆動するための電気信号に含まれる前記蛍光体の周波数成分を、フィルタを用いて除去するか、前記受信工程において前記合成光から変換された電気信号に含まれる前記蛍光体の周波数成分を、フィルタを用いて除去する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発光ダイオードを駆動するための電気信号か、受光された合成光に相当する電気信号のいずれかから、蛍光体の周波数成分が除去される。これにより、データ信号の復元元である電気信号のスペクトル成分の包絡線のうねりを除去することができるので、受信装置におけるデータ信号の復元性を高めることができる。この結果、発光ダイオードと蛍光体との組み合わせから成る光源を用いた高速なデータ通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)は、符号化回路による電圧信号の符号化を行わずに、青色発光ダイオードを点滅させた場合の光源の周波数応答の一例を示すグラフである。図2(B)は、その周波数応答に含まれるスペクトル成分を説明するためのグラフである。
【図3】図3(A)は、符号化される前の電圧信号の信号波形の一例であり、図3(B)は、バイフェーズ符号により符号化された後の電圧信号の信号波形の一例である。
【図4】NRZ符号とバイフェーズ符号との電力スペクトルを示すグラフである。
【図5】光源から出射される擬似白色光のスペクトル成分の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図7】高域通過フィルタから出力される電圧信号のスペクトル成分の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る光通信システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る光通信システム100の構成が示されている。図1に示すように、光通信システム100は、発光装置1と、受信装置2とを備える。
【0024】
発光装置1は、例えば室内の天井等に設置され、室内を照明する照明装置である。発光装置1は、光源10を備える。光源10は、青色発光ダイオード11と、蛍光体12とを備える。
【0025】
青色発光ダイオード11は、青色光(例えば波長が約450nmの光)を出射する。蛍光体12は、青色発光ダイオード11から出射された青色光によって励起され、黄色光(例えば波長が約580nmの光)を発生させる。
【0026】
青色発光ダイオード11から出射された青色光と、蛍光体12から出射された黄色光は合成され、その合成光として擬似的な白色光が光源10から出射される。発光装置1は、この擬似白色光を用いて室内を照明する。
【0027】
この照明を行うため、発光装置1は、駆動回路13をさらに備える。駆動回路13は、不図示の電源から印加される電圧に基づいて、青色発光ダイオード11に駆動電流を流すことにより青色発光ダイオード11を発光させる。この結果、擬似白色光が光源10から出射される。
【0028】
発光装置1は、駆動回路13の前段に、変調回路14及び符号化部15をさらに備える。
【0029】
変調回路14は、不図示の電源から印加される電圧信号を入力し、データ信号に基づいて電圧信号を変調して、符号化回路15に出力する。
【0030】
図2(A)には、後述する符号化回路15による電圧信号の符号化を行わずに、青色発光ダイオード11を点滅させた場合の光源10の周波数応答の一例が示されている。図2(A)に示すように、この周波数応答の包絡線には、低域から高域にかけてうねりが生じている。このうねりは、光源10からの合成光を受光してデータ信号の復調を行う際に、データ信号の復元性を著しく低下させる原因となる。
【0031】
図2(B)には、図2(A)に示す周波数応答に含まれる各種スペクトル成分が示されている。図2(B)に示すように、この周波数応答には、青色発光ダイオード11によるスペクトル成分と、蛍光体12によるスペクトル成分とが含まれている。
【0032】
青色発光ダイオード11によるスペクトル成分は、蛍光体12によるスペクトル成分に対して、より高域までフラットとなっている。これに対し、蛍光体12によるスペクトル成分は、青色発光ダイオード11によるスペクトル成分よりも、低域においてその振幅比が大きくなっている。この2つのスペクトル成分のため、全体の周波数応答の包絡線にうねりが生じているのである。
【0033】
符号化回路15は、このうねりによるデータ信号の復元性低下を防止するために設けられている。符号化回路15は、変調回路14で変調された電圧信号をデータ信号として入力し、そのデータ信号を符号化する。この符号化には、バイフェーズ符号が用いられる。バイフェーズ符号とは、伝送すべき2値信号に対してそれぞれビットの中央で立ち上がり及び立ち下がりを持たせる符号である。
【0034】
図3(A)には、符号化される前の電圧信号の信号波形の一例が示されており、図3(B)には、バイフェーズ符号により符号化された後の電圧信号の信号波形の一例が示されている。図3(B)に示すように、このバイフェーズ符号では、”1”を示す信号は、ローレベル→ハイレベルと遷移し、”0”を示す信号は、ハイレベル→ローレベルと遷移する。このように、バイフェーズ符号化により、1ビット分に相当する電圧信号が2ビット分の電圧信号に変換される。図3(B)に示すバイフェーズ符号は、マンチェスター符号とも呼ばれる。
【0035】
図3(A)に示すように、符号化される前の電圧信号は、いわゆるNRZ(Non Return to Zero)符号となっている。図4には、NRZ符号の電圧信号と、バイフェーズ符号の電圧信号との電力スペクトルが示されている。図4に示すグラフでは、横軸は、基準周波数f/f0を示しており、縦軸が基準化電力スペクトルを示している。図4に示すように、NRZ符号の電圧信号と、バイフェーズ符号の電圧信号との電力スペクトルを比較すると、NRZ符号では、直流成分が最大で1.0あるのに対し、バイフェーズ符号では、直流成分が含まれておらず、0.0である。
【0036】
本実施形態では、この変調され、バイフェーズ符号化された電圧信号に従って、駆動回路13の内部に設けられたトランジスタ(変調された電圧がベース電圧として入力されるトランジスタ)がオンオフして、青色発光ダイオード11に流れる駆動電流が変調され、青色発光ダイオード11が点滅する。
【0037】
この青色発光ダイオード11の点滅により、蛍光体12から発せられる黄色光の強度も変動する。この結果、それらの合成光である擬似白色光の強度が変動する。この変動の速度は非常に高速であるため、人間によって知覚されることはない。
【0038】
図1に戻り、受信装置2は、室内に設置された家電機器や通信機器などに設けられている。
【0039】
受信装置2は、光電気変換器(O/E)20と、復号化回路21と、復調回路22とを備える。光電気変換器20は、シリコンフォトダイオード(不図示)を受光素子として有し、光源10から出射された擬似白色光を受光素子で受光し、受光した擬似白色光を電流信号に変換する。復号化回路21は、その電流信号に基づく電圧信号を復号化する。復調回路22は、復号化された電気信号に基づいてデータ信号を復調して出力する。
【0040】
次に、本実施形態に係る光通信システム100の動作について説明する。
【0041】
不図示の電源スイッチがオンになり、変調回路14で変調され符号化回路15により符号化された電圧信号が駆動回路13に印加されると、駆動回路13は、その電圧信号に基づいて青色発光ダイオード11を駆動する。データ信号が変調回路14に入力されていない状態では、青色発光ダイオード11を流れる駆動電流は一定となり、光源10は、一定の光量で室内を照明する。
【0042】
不図示の上位装置からデータ信号が入力されると、変調回路14は、符号化回路15に印加される電圧をデータ信号に従って変調する。これにより、青色発光ダイオード11には、変調された駆動電流が流れ、青色発光ダイオード11から出射される青色光の強度が変調される。この変調により蛍光体12で発生する黄色光の強度も変調され、最終的に、擬似白色光の強度が変調されるようになる。光源10から出射される擬似白色光の強度変調は、人間の眼では知覚できないほど高速なので、光源10は、依然として、白色光源として室内を照明し続けることができる。
【0043】
受信装置2の光電気変換器20は、光源10から発せられる擬似白色光を受光し、その受光した擬似白色光の強度に応じた電流信号を出力する。復号化回路21は、その電流信号をバイフェーズ符号からNRZ符号に復号化して、NRZ符号の電圧信号として出力する。復調回路22は、その電圧信号に基づいてデータ信号を復調する。復調回路23で復調されたデータ信号は、家電機器又は通信機器に出力され、例えば、それらの制御に用いられる。
【0044】
図5には、光源10から発せられる擬似白色光のスペクトル成分が示されている。図5において、実線は、符号化回路15によりバイフェーズ符号化を行った場合の擬似白色光のスペクトル成分を示しており、破線は、符号化回路15によりバイフェーズ符号化を行わなかった場合の擬似白色光のスペクトル成分を示している。
【0045】
上述のように、バイフェーズ符号化により、1ビット分のデータ信号が2ビット分のデータ信号に変換されて、直流成分が0になる(図3参照)。このため、符号化回路15でバイフェーズ符号化を行うことにより、図5に示すように、擬似白色光のスペクトル成分では、低い周波数帯域の成分、すなわち蛍光体12によるスペクトル成分に相当する成分が低減される。これにより、擬似白色光のスペクトル成分の包絡線に含まれるうねりを除去することができるので、受信回路2において復調されるデータ信号の復元性の低下を防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、符号化に用いるバイフェーズ符号を、マンチェスター符号(ダイパルス符号)としたが、CMI(Coded Mark Inversion Code)符号を採用してもよいし、DMI(Differential Mode Inversion Code)符号を採用してもよい。
【0047】
なお、本実施形態では、バイフェーズ符号により電圧信号を符号化したが、本発明はこれには限られない。3B4B符号や、6B7B符号等のmBnB符号により電圧信号を符号化してもよい。
【0048】
mBnB符号とは、mビットのデータ信号からnビットのデータ信号に符号化された符号であり、m<nである。バイフェーズ符号は、1B2B符号である。これらmBnB符号は、いずれも原信号の低周波成分を除去するのに有効である。
【0049】
mとnの値は、光源10や、光電気変換器20の間のデータの転送速度に応じて適宜決定することができる。mとnとの比n/mが大きければ大きいほど、高い転送速度が要求されるようになる。逆に言えば、蛍光体12のスペクトル成分を十分に除去できるのであれば、装置の転送能力の限界を考慮すると、比n/mは、できるだけ小さい方が望ましいといえる。
【0050】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、青色発光ダイオード11を駆動するための電圧信号から、蛍光体12の周波数成分が除去される。これにより、データ信号の復元元の電圧信号のスペクトル成分の包絡線に含まれるうねりを除去することができるので、受信装置2におけるデータの復元性を高めることができる。この結果、青色発光ダイオード11と蛍光体12とを組み合わせた光源10(擬似白色LED)を用いた高速なデータ通信が可能となる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0052】
図6には、本実施形態に係る光通信システム100の構成が示されている。図6に示すように、光通信システム100は、発光装置1と、受信装置2とを備える。
【0053】
図6に示すように、発光装置1は、符号化回路15を備えていない。これにより、発光装置1では、変調回路14によって変調された電圧信号がそのまま駆動回路13に入力されて、その電圧信号に従って青色発光ダイオード11が変調され、最終的に光源10から出射される擬似白色光の強度が変調される。
【0054】
本実施形態では、青色発光ダイオード11を駆動する電圧信号がmBnB符号で符号化されていないので、図7に点線で示すように、擬似白色光のスペクトル成分は、その包絡線にうねりが生じたままとなる。
【0055】
本実施形態では、受信装置2は、復号化回路21に代えて、高域通過フィルタ23が設けられている。図7では、この高域通過フィルタ23の周波数応答が、一点鎖線で示されている。高域通過フィルタ23が合成光から変換された電流信号に含まれる所定の周波数(カットオフ周波数)fc以下の成分を除去する。このカットオフ周波数fcは、図2(A)に示す青色発光ダイオード11を点滅させた場合の光源10の周波数応答の包絡線が、蛍光体12によるスペクトル成分のものから、青色発光ダイオード11によるスペクトル成分のものに移行する周波数とほぼ同等の周波数に設定されている。
【0056】
図7では、復調回路13において復調される電圧信号のスペクトル成分が実線で示されている。図7に示すように、高域通過フィルタ23により、電圧信号の周波数成分のうち、蛍光体12によるスペクトル成分が低減され、その包絡線は、広い帯域でフラットとなっている。これにより、復調回路22で復調されるデータ信号の復元性の低下が防止される。
【0057】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、受光された合成光から変換された電圧信号から、蛍光体12のスペクトル成分が除去される。これにより、データ信号の復元元の電圧信号のスペクトル成分を低域から高域に渡ってフラットにすることができるので、受信装置2におけるデータ信号の復元性を高めることができる。この結果、青色発光ダイオード11と蛍光体12とを組み合わせから成る光源10を用いた高速なデータ通信が可能となる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態に係る光通信システム100は、図8に示すように、表示装置50と、受光装置2とを備える。表示装置50は、表示部40と、制御部41とを備える。
【0060】
表示部40の表示画面には、発光装置1が多数配列されている。1つ1つの発光装置1がこの表示画面の画素を構成している。発光装置1及び受信装置2の回路構成は、図1に示すものであってもよいし。図6に示すものであってもよい。
【0061】
制御部41は、表示部40の表示画面上に発光装置1のそれぞれの発光状態を制御して、画像や文字情報を表示画面に表示させる。
【0062】
制御部41は、この画像表示に加え、データ信号を発光装置1の変調回路14に入力して、青色発光ダイオード11を駆動するための電圧信号を変調させる。
【0063】
受光装置2は、受光した合成光の強度の変動を検出して、データ信号を復調する。
【0064】
上記第1、第2の実施形態と異なり、この光通信システム100では、各発光装置1から取捨される合成光の強度が、表示される画像に従って随時変化する。しかしながら、この画像による発光装置1の合成光の強度変化の周波数は、データ通信による強度変調の周波数よりも極めて低いので、画像の変化による光の強度の変化分を除去して、データ信号だけを抽出することは十分に可能である。
【0065】
なお、画像等を標示する表示装置50に代えて、発光装置1が標示面に複数設けられ、複数の発光装置1の発光により、標識や広告等を標示する標示装置を備えるようにしてもよい。
【0066】
なお、上記各実施形態では、青色発光ダイオード11と蛍光体12との組み合わせから成る光源10を採用したが、本発明はこれには限られない。発光ダイオードから出射される光により、蛍光体がその光とは異なる光を発光し、2つ以上の光の合成光が出射される光源であれば、本発明を適用することができる。
【0067】
例えば、光源10に代えて、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードから出射される青色光に励起されて赤色光を発生させる蛍光体と、青色光に励起されて緑色光を発生させる蛍光体とを備え、青色光、赤色光、緑色光の合成光を出射する光源を用いるようにしてもよい。このような光源は、いわゆる高演色型の擬似白色LEDとも呼ばれるものである。この場合にも、発光ダイオードから出射される青色光と、2つの蛍光体から出射される赤色光、緑色光とにより、スペクトル成分の包絡線にうねりが生じるようになるので、本発明を適用すれば、データ信号の復元性を高めることができる。
【0068】
また、光源10に代えて、近紫外線(例えば300nm〜400nmの波長の光)の光を発光する発光ダイオードと、発光ダイオードから出射される近紫外線に励起されて赤色光を発生させる蛍光体と、近紫外線に励起されて緑色光を発生させる蛍光体と、近紫外線に励起されて緑色光を発生させる蛍光体とを備え、蛍光体から出射された赤色光、緑色光、青色光の合成光を出射する光源を用いるようにしてもよい。
【0069】
この光源では、上記合成光が出射されるが、それとともに発光ダイオードからの近紫外線も出射される。したがって、近紫外線を変調すれば、近紫外線と、赤色光、緑色光、青色光との合成光が変調されて出力され、受信装置でこれを受光して復調すれば、データ通信が可能となる。なお、この場合、受信装置では、受光素子として、300nm〜400nmの波長の光に対して感度があるもの(例えば、シリコンフォトダイオード)を用いる必要がある。
【0070】
この場合にも、発光ダイオードから出射される近紫外線と、3つの蛍光体から出射される赤色光、緑色光、青色光とにより、スペクトル成分の包絡線にうねりが生じるようになるので、本発明を適用すれば、データ信号の復元性を高めることができる。
【0071】
このように、擬似白色LEDに限らず、発光ダイオードから出射される光と、蛍光体から出射される光との両方が出射される光源であれば、本発明を適用することができる。
【0072】
なお、変調回路14、符号化回路15、復号化回路21、復調回路22は、高域通過フィルタ23は、電気回路で構成してもよいし、ソフトウエアで構成してもよい。
【0073】
このような光通信システムは、そのユビキタス性や環境影響面での優位性から今後あらゆる場所で用いられることが予想される。例えば、屋内外でのLAN(Local Area Network)にこのシステムを適用することができる。また、信号機と車輌間の路車間通信等にこのシステムを適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、発光ダイオードと蛍光体とを組み合わせた光源を用いた照明装置、表示装置、標示装置等を用いた光通信に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 発光装置
2 受信装置
10 光源
11 青色発光ダイオード
12 蛍光体
13 駆動回路
14 変調回路
15 符号化回路
20 光電気変換器
21 復号化回路
22 復調回路
23 高域通過フィルタ
40 表示部
41 制御部
50 表示装置
100 光通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射するとともに、データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する発光装置と、
前記合成光を受光して電気信号に変換し、変換した電気信号をデータ信号に復調する受信装置と、
を備え、
前記発光ダイオードを駆動するための電気信号と、前記合成光から変換された電気信号のいずれか一方に含まれる前記蛍光体のスペクトル成分を除去するフィルタが設けられている、
ことを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
前記発光装置は、
前記フィルタとして、変調された前記電気信号を、mBnB符号を用いて符号化する符号化部を有し、
前記受信装置は、
前記合成光から変換された前記電気信号を復号化する復号化部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記mBnB符号は、バイフェーズ符号である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記受信装置は、
前記フィルタとして、
前記合成光から変換された電気信号に含まれる所定の周波数以下の成分を除去する高域通過フィルタを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記発光ダイオードから出射される光は青色光であり、前記蛍光体から出射される光は黄色光である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記発光ダイオードから出射される光は青色光であり、前記蛍光体から出射される光は赤色光及び緑色光である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記発光ダイオードから出射される光は近紫外線であり、前記蛍光体から出射される光は赤色光、緑色光及び青色光である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項8】
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射する光源と、
データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する変調部と、
前記変調部によって変調された前記電気信号をmBnB符号に符号化する符号化部と、
を備える発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置から出射される合成光を用いて照明を行う照明装置。
【請求項10】
請求項8に記載の発光装置が、表示面に複数配列された表示部と、
複数の前記発光装置の発光状態を制御して、情報を前記表示面に表示させるとともに、前記データ信号を前記各発光装置に入力する制御部と、
を備える表示装置。
【請求項11】
請求項8に記載の発光装置が、標示面に複数配列された標示部と、
複数の前記発光装置の発光状態を制御して、情報を前記標示面に標示させるとともに、前記データ信号を前記各発光装置に入力する制御部と、
を備える標示装置。
【請求項12】
発光ダイオードから出射される光と、前記光に蛍光体が励起されることにより出射される少なくとも1色の光とを合成して得られる合成光を出射するとともに、データ信号に従って前記発光ダイオードを駆動するための電気信号を変調する発光工程と、
前記合成光を受光して電気信号に変換し、変換した電気信号をデータ信号に復調する受信工程と、
を含み、
前記発光工程において前記発光ダイオードを駆動するための電気信号に含まれる前記蛍光体の周波数成分を、フィルタを用いて除去するか、前記受信工程において前記合成光から変換された電気信号に含まれる前記蛍光体の周波数成分を、フィルタを用いて除去する、
ことを特徴とする光通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211364(P2011−211364A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75295(P2010−75295)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】