説明

光電変換素子

【課題】光電変換効率を高めることが可能な、光電変換素子を提供する。
【解決手段】p層及びn層、p層とn層との間に配設された混合pn材料層、p層に接続された第1電極、並びに、n層に接続された第2電極を備え、該混合pn材料層は、少なくとも一部がp層に接触しているp型半導体材料と、少なくとも一部がn層に接触しているn型半導体材料と、p型半導体材料及びn型半導体材料に接触しているキャリア生成物質とを有し、該キャリア生成物質は、光を吸収して電子及び正孔を生じさせるキャリア発生部と、該キャリア発生部で生成された電子及び正孔のうち、特定のエネルギーを有する電子及び正孔の通過を許容するキャリア選択移動部とを有し、該キャリア選択移動部は、キャリア発生部の表面を覆うように配置され、キャリア発生部側から外側に向かって順に配置された、第1障壁層、量子井戸層、及び、第2障壁層を有する、光電変換素子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関し、特に、波長変換機構を用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギーを直接電力に変換できる太陽電池は、次世代のクリーンエネルギー源として期待されている。太陽電池設置面積は限られているため、より多くの電力を得るためには光電変換効率を向上させる必要があり、素子構造や作製工程の最適化、主要な材料であるSiの高品質化等の開発が進展している。
【0003】
このような太陽電池に関する技術として、例えば特許文献1には、光吸収層を構成する半導体のバンドギャップよりも高エネルギーの光を用いて生成されたキャリア(電子及び正孔。以下において同じ。)のエネルギー損失を減少させるため、光吸収層において、キャリア間のエネルギー相互作用(授受)を促進し、高いエネルギーを有する電子を取り出すホットキャリア型と呼ばれる形態の太陽電池に関する技術が開示されている。また、特許文献2には、AlInGaP材料から形成された、pn接合を有する太陽電池をトップセルとして用い、該トップセルに格子整合した、InGaAsN材料から形成された、pn接合を有する太陽電池をボトムセルとして用いる多接合太陽電池において、該トップセルのAlInGaP材料のIII族元素中のAl組成比を0.05〜0.15の範囲内にした、多接合太陽電池に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−59915号公報
【特許文献2】特開2004−296658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホットキャリア型において高い光電変換効率を得るためには、キャリア間のエネルギー相互作用(授受)を促進し、且つ、高いエネルギーを保ったまま光吸収層から電極までキャリアを移動させる必要がある。このためには、例えば1ns以上のホットキャリア寿命が必要になると考えられるが、現状の半導体材料におけるホットキャリア寿命は数ps以上数百ps以下程度に留まっている。そのため、特許文献1に開示されている技術を用いても、光電変換効率を高める効果は不十分になりやすかった。また、特許文献2に開示されている多接合型では太陽光に含まれる幅広い波長領域の光を吸収できるため、光電変換効率を高めることも可能になると考えられる。しかしながら、多接合型では、接合数の増加により、キャリアを消滅させ光電変換効率低下の原因となる欠陥密度が高い半導体界面の数が増加する。また、高価なIII−V化合物材料を多種類用いる必要が生じ、製造工程が増加するためコストが増大しやすいといった課題を有していた。すなわち、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術を組み合わせたとしても、コストの増大を抑制しつつ光電変換効率を高めることは困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、光電変換効率を高めることが可能な、光電変換素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、p層及びn層、p層とn層との間に配設された混合pn材料層、p層に接続された第1電極、並びに、n層に接続された第2電極を備え、混合pn材料層は、少なくとも一部がp層に接触しているp型半導体材料又は複数のp型半導体材料の接触を介してp層に接触するp型半導体材料と、少なくとも一部がn層に接触しているn型半導体材料又は複数のn型半導体材料の接触を介してn層に接触するn型半導体材料と、p型半導体材料及びn型半導体材料に接触しているキャリア生成物質と、を有し、該キャリア生成物質は、光を吸収して電子及び正孔を生じさせるキャリア発生部と、該キャリア発生部で生成された電子及び正孔のうち、特定のエネルギーを有する電子及び正孔の通過を許容するキャリア選択移動部と、を有し、該キャリア選択移動部は、キャリア発生部の表面を覆うように配置され、キャリア選択移動部は、キャリア発生部側から外側に向かって順に配置された、第1障壁層、量子井戸層、及び、第2障壁層を有することを特徴とする、光電変換素子である。
【0008】
本発明の第1の態様及び後述する本発明の他の態様(以下において、単に「本発明」という。)において、「光」とは、例えば太陽光のような、複数色光をいう。また、本発明において、「光電変換素子」とは、太陽電池のほか、光検出素子等も含む概念である。以下の説明において、複数色光を単に「光」ということがある。
【0009】
本発明の第1の態様にかかる光電変換素子では、キャリア生成物質に光を吸収させることにより電子及び正孔(以下において、これらをまとめて「キャリア」ということがある。)を生成する。生成されたキャリアは、キャリア発生部で生成されたホットキャリア(キャリア発生部の伝導帯下端よりも高エネルギーの電子、及び、キャリア発生部の価電子帯上端よりも高エネルギーの正孔をいう。以下において同じ。)のうち、特定のエネルギーを有するホットキャリアの通過を許容するキャリア選択移動部を経由して、正孔はp型半導体材料へ、電子はn型半導体材料へと達する。本発明の第1の態様にかかる光電変換素子では、ホットキャリア機構を活かして、幅広い波長領域を有する光から有効にキャリアを生成することができる。そして、例えば、キャリア発生部、キャリア選択移動部、p型半導体材料、及び、n型半導体材料の材料選択等を工夫することにより、ホットキャリアの状態で移動する距離を従来の太陽電池よりも短縮することができる。例えば、キャリア発生部の大きさを20nm以下にすると、ホットキャリアの移動距離を10nm以下にすることが可能になり、ホットキャリアの移動距離を従来のホットキャリア型太陽電池よりも大幅に短縮することができる。ホットキャリアの移動距離を低減することにより、エネルギー損失を低減することが可能になるので、光電変換効率を高めることが可能になる。したがって、本発明の第1の態様によれば、光電変換効率を高めることが可能な光電変換素子を提供することができる。
【0010】
また、上記本発明の第1の態様において、キャリア生成物質の形状が、粒子状又は線状であることが好ましい。かかる形状とすることにより、特定のエネルギーを有するホットキャリアの通過を許容するキャリア選択移動部の機能を高めやすくなり、その結果、光電変換効率を高めやすくなる。
【0011】
また、上記本発明の第1の態様において、キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg1、Ec1、及び、Ev1とし、キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーを、それぞれ、Eg2、Ec2、及び、Ev2とし、p型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg3、Ec3、及び、Ev3とし、n型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg4、Ec4、及び、Ev4とするとき、Eg1<Eg2<Eg3、且つ、Eg1<Eg2<Eg4、且つ、Ec1≦Ec4≦Ec2<Ec3、且つ、Ev4<Ev2≦Ev3≦Ev1であっても良い。かかる形態(タイプI)であっても、本発明の第1の態様における上記効果を奏することができる。
【0012】
ここに、本発明において、「キャリア選択移動部を構成する材料のバンドギャップ」とは、キャリア選択移動部の伝導帯に形成された離散準位(量子準位)のうち、最もエネルギーが低い離散準位(量子準位)と、キャリア選択移動部の価電子帯に形成された離散準位(量子準位)のうち、最もエネルギーが低い離散準位(量子準位)との差をいう。また、本発明において、「伝導帯における最低離散準位」とは、伝導帯に形成された離散準位(量子準位)のうち、最もエネルギーが低い離散準位(量子準位)をいう。換言すれば、上側ほど電子のエネルギーが高く、下側ほど正孔のエネルギーが高いバンド図(以下において、単に「バンド図」ということがある。)を記載した場合に、伝導帯の最も下側に位置する離散準位(量子準位)が、伝導帯における最低離散準位である。また、キャリア発生部を構成する材料あるいは発光部についても、そのサイズによっては伝導帯や価電子帯のエネルギー準位が離散的になることがある。その場合は、上記の伝導帯下端とは、伝導帯における最低離散準位のことであり、価電子帯上端とは、価電子帯における最低離散準位のことであり、バンドギャップとは、伝導帯における最低離散準位と価電子帯における最低離散準位とのエネルギー差のことである。また、本発明において、「価電子帯における最低離散準位」とは、価電子帯に形成された離散準位(量子準位)のうち、最もエネルギーが低い離散準位(量子準位)をいう。換言すれば、バンド図を記載した場合に、価電子帯の最も上側に位置する離散準位(量子準位)が、価電子帯における最低離散準位である。また、「Ev4<Ev2≦Ev3≦Ev1」とは、バンド図を記載した場合に、Ev4がEv2よりも下側に位置し、且つ、Ev2がEv3と同じ高さ又はEv2がEv3よりも下側に位置し、且つ、Ev3がEv1と同じ高さ又はEv3がEv1よりも下側に位置していることを意味する。
【0013】
また、上記本発明の第1の態様において、キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg5、Ec5、及び、Ev5とし、キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg6、Ec6、及び、Ev6とし、p型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg7、Ec7、及び、Ev7とし、n型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg8、Ec8、及び、Ev8とするとき、Eg5<Eg6<Eg7、且つ、Eg5<Eg6<Eg8、且つ、Ec5≦Ec8≦Ec6<Ec7、且つ、Ev8<Ev5≦Ev6≦Ev7であっても良い。かかる形態(タイプII)であっても、本発明の第1の態様における上記効果を奏することができる。なお、「Ev8<Ev5≦Ev6≦Ev7」とは、バンド図を記載した場合に、Ev8がEv5よりも下側に位置し、且つ、Ev5がEv6と同じ高さ又はEv5がEv6よりも下側に位置し、且つ、Ev6がEv7と同じ高さ又はEv6がEv7よりも下側に位置していることを意味する。
【0014】
本発明の第2の態様は、p層及びn層、p層とn層との間に配設されたキャリア生成膜、p層に接続された第1電極、並びに、n層に接続された第2電極を備え、キャリア生成膜は、光を吸収して電子及び正孔を生じさせるキャリア発生部と、該キャリア発生部で生成された電子及び正孔のうち、特定のエネルギーを有する電子及び正孔の通過を許容するキャリア選択移動部と、を有し、キャリア発生部は、一対のキャリア選択移動部の間に配設され、キャリア選択移動部は、キャリア発生部側から外側に向かって順に積層された、第1障壁層、量子井戸層、及び、第2障壁層を有し、p層及びn層が複数備えられ、少なくとも複数のp層に接続された正孔移動部、及び、少なくとも複数のn層に接続された電子移動部が、キャリア生成膜の側面に設けられていることを特徴とする、光電変換素子である。
【0015】
本発明の第2の態様にかかる光電変換素子では、キャリア生成膜に光を吸収させることによりキャリアを生成する。生成されたキャリアは、キャリア発生部で生成されたホットキャリアのうち、特定のエネルギーを有するホットキャリアの通過を許容するキャリア選択移動部を経由して、正孔はp層へ、電子はn層へと達する。本発明の第2の態様にかかる光電変換素子では、ホットキャリア機構を活かして、幅広い波長領域を有する光から有効にキャリアを生成することができる。そして、例えば、キャリア発生部、キャリア選択移動部、p層、及び、n層の材料選択等を工夫することにより、ホットキャリアの状態で移動する距離を従来の太陽電池よりも短縮することができる。例えば、キャリア発生部の厚さを20nm以下にすると、ホットキャリアの移動距離を10nm以下にすることが可能になり、ホットキャリアの移動距離を従来のホットキャリア型太陽電池よりも大幅に短縮することができる。ホットキャリアの移動距離を低減することにより、エネルギー損失を低減することが可能になるので、光電変換効率を高めることが可能になる。したがって、本発明の第2の態様によれば、光電変換効率を高めることが可能な光電変換素子を提供することができる。
【0016】
また、上記本発明の第2の態様において、キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg11、Ec11、及び、Ev11とし、キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーを、それぞれ、Eg12、Ec12、及び、Ev12とし、p層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg13、Ec13、及び、Ev13とし、n層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg14、Ec14、及び、Ev14とするとき、Eg11<Eg12<Eg13、且つ、Eg11<Eg12<Eg14、且つ、Ec11≦Ec14≦Ec12<Ec13、且つ、Ev14<Ev12≦Ev13≦Ev11であっても良い。かかる形態(タイプI)であっても、本発明の第2の態様における上記効果を奏することができる。なお、「Ev14<Ev12≦Ev13≦Ev11」とは、バンド図を記載した場合に、Ev14がEv12よりも下側に位置し、且つ、Ev12がEv13と同じ高さ又はEv12がEv13よりも下側に位置し、且つ、Ev13がEv11と同じ高さ又はEv13がEv11よりも下側に位置していることを意味する。
【0017】
また、上記本発明の第2の態様において、キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg15、Ec15、及び、Ev15とし、キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg16、Ec16、及び、Ev16とし、p層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg17、Ec17、及び、Ev17とし、n層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg18、Ec18、及び、Ev18とするとき、Eg15<Eg16<Eg17、且つ、Eg15<Eg16<Eg18、且つ、Ec15≦Ec18≦Ec16<Ec17、且つ、Ev18<Ev15≦Ev16≦Ev17であっても良い。かかる形態(タイプII)であっても、本発明の第2の態様における上記効果を奏することができる。なお、「Ev18<Ev15≦Ev16≦Ev17」とは、バンド図を記載した場合に、Ev18がEv15よりも下側に位置し、且つ、Ev15がEv16と同じ高さ又はEv15がEv16よりも下側に位置し、且つ、Ev16がEv17と同じ高さ又はEv16がEv17よりも下側に位置していることを意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光電変換効率を高めることが可能な、光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池100を説明する断面図である。
【図2】バンド構造を説明する図である。
【図3】キャリア生成粒子16を説明する断面図である。
【図4】太陽電池110を説明する断面図である。
【図5】バンド構造を説明する図である。
【図6】キャリア生成細線18を説明する図である。
【図7】太陽電池200を説明する断面図である。
【図8】バンド構造を説明する図である。
【図9】キャリア生成膜22を説明する図である。
【図10】バンド構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一形態である太陽電池について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。図面では、一部符号の記載を省略することがある。
【0021】
図1は、第1実施形態にかかる本発明の太陽電池100を説明する断面図である。図1では、p型半導体材料12a、n型半導体材料12b、及び、キャリア生成粒子16を簡略化して示している。また、図2は、p型半導体材料12a、n型半導体材料12b、及び、キャリア生成粒子16のバンド構造を説明する図であり、図3は、キャリア生成粒子16を説明する断面図である。図2では、紙面上側ほど電子のエネルギーが大きく、紙面下側ほど正孔のエネルギーが大きく、「●」は電子であり、「○」は正孔である。
【0022】
図1に示したように、太陽電池100は、p層11及びn層13、並びに、p層11とn層13との間に配設された混合pn材料層12を有している。p層11には裏面電極14が接続されており、n層13には表面電極15が接続されている。混合pn材料層12は、p型半導体材料12a、12a、…、及び、n型半導体材料12b、12b、…を有し、さらに、p型半導体材料12a、12a、…、及び、n型半導体材料12b、12b、…に接触しているキャリア生成粒子16、16、…を有している。混合pn材料層12において、p型半導体材料12a、12a、…の一部はp層11と接触あるいは複数のp型半導体材料12a、12a、…の接触を介してp層11に接触しており、p型半導体材料12a、12a、…からp層11へ正孔が移動可能なように構成されている。また、n型半導体材料12b、12b、…の一部はn層13と接触あるいは複数のn型半導体材料12b、12b、…の接触を介してn層13に接触しており、n型半導体材料12b、12b、…からn層13へ電子が移動可能なように構成されている。p層11を構成する半導体材料の価電子帯上端のエネルギーは、p型半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーと同程度であり、n層13を構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーは、n型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーと同程度である。
【0023】
図2及び図3に示したように、キャリア生成粒子16は、キャリア発生部16xと、該キャリア発生部16xの表面を覆うように配置されたキャリア選択移動部16yと、を有している。キャリア発生部16x及びキャリア選択移動部16yは、何れも、半導体材料によって構成されている。キャリア選択移動部16yは、キャリア発生部16xの表面に形成された第1障壁層16ya、該第1障壁層16yaの表面に形成された量子井戸層16yb、及び、該量子井戸層16ybの表面に形成された第2障壁層16ycを有している。キャリア生成粒子16では、その中心側から外側へ向かって、キャリア発生部16x、第1障壁層16ya、量子井戸層16yb、及び、第2障壁層16ycが同心円状に配置されており、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycは、キャリアがトンネル伝導により通過可能な厚さとされている。
【0024】
図2に示したように、キャリア生成粒子16は、キャリア発生部16xを構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーEc1と価電子帯上端のエネルギーEv1との差(バンドギャップ)がEg1である。また、量子井戸層16ybを構成する半導体材料の伝導帯における最低離散準位のエネルギーがEc2、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーがEv2であり、Ec2とEv2との差(キャリア選択移動部16yを構成する半導体材料のバンドギャップ)がEg2である。一方、p型半導体材料12aは、伝導帯下端のエネルギーEc3と価電子帯上端のエネルギーEv3との差(バンドギャップ)がEg3であり、n型半導体材料12bは、伝導帯下端のエネルギーEc4と価電子帯上端のエネルギーEv4との差(バンドギャップ)がEg4である。キャリア生成粒子16、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bは、以下の関係を満たしている。
Eg1<Eg2<Eg3
Eg1<Eg2<Eg4
Ec1≦Ec4≦Ec2<Ec3
Ev4<Ev2≦Ev3≦Ev1
Ec2−Ec4≒0.1eV
|Ev3−Ev2|≒0.1eV
【0025】
太陽電池100に太陽光が照射されると、太陽光の一部がn層13に吸収され、n層13に吸収されなかった太陽光(以下において、単に「光」ということがある。)が混合pn材料層12へと達する。n層13のバンドギャップはn型半導体材料12bのバンドギャップと同程度であり、n層13、n型半導体材料12b、及び、p型半導体材料12aのバンドギャップは、太陽光に含まれている様々なエネルギーの光のうち、高エネルギーの光(例えば紫外線)のみを吸収可能なように調整されている。それゆえ、太陽電池100に太陽光が照射されると、高エネルギーの光がn層13によって吸収され、n層13で電子及び正孔が形成される。そして、n層13によって吸収されなかった光が混合pn材料層12に吸収される。
【0026】
図2に示したように、混合pn材料層12を構成する半導体材料の中では、キャリア発生部16xを構成する半導体材料のバンドギャップEg1が最小のバンドギャップである。そのため、混合pn材料層12へ光が達すると、キャリア発生部16xを構成する半導体材料のバンドギャップEg1以上のエネルギーを有する光が吸収される。こうして光が吸収されると、様々なエネルギーを有する電子が、キャリア発生部16xを構成する半導体材料の価電子帯から伝導帯へと励起され、当該半導体材料の価電子帯には様々なエネルギーを有する正孔が形成される。より具体的には、キャリア発生部16xを構成する半導体材料の伝導帯には図2に示したような電子エネルギー分布が形成され、当該半導体材料の価電子帯には図2に示したような正孔エネルギー分布が形成される。
【0027】
キャリア発生部16xで生成された電子のうち、量子井戸層16ybを構成する半導体材料の伝導帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層16ybの伝導帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEc2と一致する電子は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部16yを通過してn型半導体材料12bの伝導帯へと達することができる。ここで、Ec2、及び、キャリア生成粒子16に接触しているn型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーEc4は、Ec4≦Ec2、且つ、Ec2−Ec4≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、n型半導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。
【0028】
キャリア発生部16xで生成された電子のうち、量子井戸層16ybの伝導帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する電子は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子は量子井戸層16ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層16ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc2と一致した上記電子と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部16yを通過してn型半導体材料12bへと達する。そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。
【0029】
一方、キャリア発生部16xで生成された正孔のうち、量子井戸層16ybを構成する半導体材料の価電子帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層16ybの価電子帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEv2と一致する正孔は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部16yを通過して、p型半導体材料12aの価電子帯へと達することができる。ここで、Ev2、及び、キャリア生成粒子16に接触しているp型半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーEv3は、Ev2≦Ev3、且つ、|Ev3−Ev2|≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面電極14へと収集される。
【0030】
キャリア発生部16xで生成された正孔のうち、量子井戸層16ybの価電子帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する正孔は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の正孔は量子井戸層16ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層16ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった正孔は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEv2と一致した上記正孔と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部16yを通過してp型半導体材料12aへと達する。そして、p型半導体材料12aへと達した正孔は、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面電極14へと収集される。
【0031】
このように、太陽電池100では、キャリア発生部16xで発生させた電子を、キャリア選択移動部16y、n型半導体材料12b、及び、n層13を経由して表面電極15へと移動させ、キャリア発生部16xで発生させた正孔を、キャリア選択移動部16y、p型半導体材料12a、及び、p層11を経由して裏面電極14へと移動させる。電子及び正孔をこのように移動させることにより、電気エネルギーを得ることができる。ここで、p型半導体材料12aに移動した正孔とn型半導体材料12bに移動した電子の両者の界面で再結合を防ぐため、両者の界面に十分な幅の空乏層が形成されるようなキャリア密度となるように、ドーパント濃度を調整する必要がある。太陽電池100では、Ec4≦Ec2、且つ、Ec2−Ec4≒0.1eVとされているので、キャリア発生部16xで生成された電子がn型半導体材料12bへと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。また、Ev2≦Ev3、且つ、|Ev3−Ev2|≒0.1eVとされているので、キャリア発生部16xで生成された正孔がp型半導体材料12aへと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。従来のホットキャリア型太陽電池では、太陽光を十分に吸収するためにキャリア発生部の厚みが少なくとも100nm以上必要であり、キャリアがキャリア選択移動部へと達するまでのエネルギー損失が大きく、変換効率向上の妨げとなっていた。太陽電池100では、キャリア発生部16xの直径を制御して、キャリア発生部16xで発生させたキャリアがp型半導体材料12aやn型半導体材料12bへと達するまでの移動距離を10nm以下程度にすることにより、移動時に失われるエネルギーを大幅に低減することが可能になる。さらに、太陽電池100では、Ec3がEc2よりも図2の紙面上側に位置し、Ec3とEc2との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部16xで発生させた電子がp型半導体材料12aへ移動し難くなるので、p型半導体材料12aにおいて電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。加えて、太陽電池100では、Ev4がEv2よりも図2の紙面下側に位置し、Ev4とEv2との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部16xで発生させた正孔がn型半導体材料12bへ移動し難くなるので、n型半導体材料12bにおいて電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。したがって、本発明によれば、光電変換効率を高めることが可能な太陽電池100を提供することができる。
【0032】
太陽電池100において、キャリア発生部16xを構成する半導体材料のバンドギャップEg1は、例えば、0.4eV以上1.6eV以下とすることができる。また、キャリア発生部16xの直径は、キャリアを発生可能な大きさにする等の観点から、例えば2nm以上とし、量子効果が得られる大きさにする等の観点から、例えば20nm以下とすることができる。なお、キャリア発生部16xの大きさを、発生させたホットキャリアの移動距離が10nm以下になるような大きさにする場合、量子効果により、キャリア発生部16xのバンドギャップはバルクのバンドギャップよりも大きくなる。また、キャリア発生部16xを構成可能な半導体材料としては、PbSe、InAs、PbS、Ge、GaSb、GaAsSb、GaInAs、Si、InP、GaAs、CdTe等を例示することができる。キャリア発生部16xを、Ge、Si等のIV族元素や、InAs、GaSb、GaAsSb、GaInAs、InP、GaAs等のIII−V族化合物で構成する場合、キャリア発生部16xは有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、キャリア発生部16xを、PbSe、PbS等のIV−VI族化合物や、CdTe等のII−VI族化合物で構成する場合、キャリア発生部16xはイオンプレーティングを含む真空蒸着法や、スパッタ法等の気相成長法や、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等の化学的合成法によって作製することができる。
【0033】
また、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、1.2eV以上4.0eV以下とすることができる。また、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycの厚さは、キャリアがトンネル伝導により通過可能な厚さにする等の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。また、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycを構成可能な半導体材料としては、InP、GaAs、CdTe、CdSe、AlGaAs、GaInP、AlAs、ZnTe、GaP、CdS、ZnSe、GaN、ZnS等を例示することができる。第1障壁層16yaや第2障壁層16ycを、InP、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlAs、GaP、GaN等のIII−V族化合物で構成する場合、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycは、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycを、CdTe、CdSe、ZnTe、CdS、ZnSe、ZnS等のII−VI族化合物で構成する場合、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycは、イオンプレーティングを含む真空蒸着法や、スパッタ法等の気相成長法や、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等の化学的合成法によって作製することができる。
【0034】
また、量子井戸層16ybを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、0.6eV以上3.0eV以下とすることができる。また、量子井戸層16ybの厚さは、離散準位が形成される厚さにする等の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。量子井戸層16ybをこのような厚さにすると、量子効果により、量子井戸層16ybのバンドギャップはバルクのバンドギャップよりも大きくなる。また、量子井戸層16ybを構成可能な半導体材料としては、Ge、GaSb、InPAs、GaAsSb、GaInAs、Si、InP、GaAs、CdTe、CdSe、AlGaAs、GaInP、AlAs、ZnTe、GaP、CdS、ZnSe等を例示することができる。量子井戸層16ybを、Ge、Si等のIV族元素や、GaSb、GaAsSb、GaInAs、InP、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlAs、GaP等のIII−V族化合物で構成する場合、量子井戸層16ybは、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、量子井戸層16ybを、CdTe、CdSe、ZnTe、CdS、ZnSe等のII−VI族化合物で構成する場合、量子井戸層16ybは、イオンプレーティングを含む真空蒸着法や、スパッタ法等の気相成長法や、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等の化学的合成法によって作製することができる。
【0035】
化学的合成法を用いたキャリア生成粒子16の作製法の具体例として、キャリア発生部16xにPbSe、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycにZnS、量子井戸層16ybにCdTeを用いた場合について、以下に説明する。
【0036】
<キャリア発生部16xの合成>
フラスコ(キャリア生成粒子16の作製法に関する以下の説明において、「第1フラスコ」という。)に、溶媒となるフェニルエーテル、オレイン酸、及び、トリオクチルフォスフィンと、Pb源である酢酸鉛とを入れ、不活性ガス中で85℃程度に加熱することにより酢酸鉛を溶解した後、45℃程度に冷却する。次いで、第1フラスコに、Se源であるセレン化トリオクチルフォスフィンを加える。一方、第1フラスコとは別のフラスコ(キャリア生成粒子16の作製法に関する以下の説明において、「第2フラスコ」という。)にフェニルエーテルを入れ、不活性ガス中で200℃程度に加熱する。その後、加熱された第2フラスコへ、Se源が加えられた第1フラスコ中の溶液を注入し、120℃程度に冷却する。以上の過程を経ることにより、直径8nm程度のキャリア発生部16x(PbSe量子ドット)を生成することができる。なお、PbSeのバンドギャップはバルクでは0.27eVであるが、量子効果により0.7eV程度となる。
【0037】
<第1障壁層16yaの合成>
フラスコ(キャリア生成粒子16の作製法に関する以下の説明において、「第3フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、さらに、Zn源であるジメチル亜鉛、及び、S源であるビストリメチルシリルサルファイドを加え、300℃程度に加熱する。その後、第3フラスコの溶液を、200℃程度に再加熱した第2フラスコへと加え、100℃程度に冷却する。以上の過程を経ることにより、キャリア発生部16xの周囲に、厚さ3nm程度の第1障壁層16ya(ZnS層)を形成することができる。このようにして形成したZnS層のバンドギャップは、3.58eVである。
【0038】
<量子井戸層16ybの合成>
フラスコ(キャリア生成粒子16の作製法に関する以下の説明において、「第4フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、Cd源であるジメチルカドミウム、及び、Te源であるトリオクチルフォスフィンテルルを加え、220℃程度に加熱して溶解する。その後、第4フラスコの溶液を、240℃程度に再加熱した第2フラスコへと加える。以上の過程を経ることにより、第1障壁層16yaの周囲に、厚さ5nm程度の量子井戸層16yb(CdTe層)を形成することができる。なお、CdTeのバンドギャップはバルクでは1.44eVであるが、量子効果により1.65eV程度となる。
【0039】
<第2障壁層16ycの合成>
フラスコ(キャリア生成粒子16の作製法に関する以下の説明において、「第5フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、さらに、Zn源であるジメチル亜鉛、及び、S源であるビストリメチルシリルサルファイドを加え、300℃程度に加熱する。その後、第5フラスコの溶液を、200℃程度に再加熱した第2フラスコへと加え、100℃程度に冷却する。以上の過程を経ることにより、量子井戸層16ybの周囲に、厚さ3nm程度の第2障壁層16yc(ZnS層)を形成することができる。このようにして形成したZnS層のバンドギャップは、3.58eVである。こうして第2障壁層16ycを形成したら、例えばメタノールを用いた洗浄を行う工程を経て、キャリア生成粒子16を得ることができる。
【0040】
また、太陽電池100において、p型半導体材料12aとしては、ポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT)、ペンタセン、テトラセン、MDMO−PPV等の有機半導体を用いることができ、p型半導体材料12aの形状は、粒子状、分子状、高分子状とすることができる。また、n型半導体材料12bとしては、フラーレン(C60)、フラーレン誘導体(PCBM)、キノリノールアルミ錯体等の有機半導体を用いることができ、n型半導体材料12bの形状は、粒子状、分子状、高分子状とすることができる。また、混合pn材料層12に含まれる、キャリア生成粒子16、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bの混合比率は特に限定されず、例えば、質量比で、キャリア生成粒子16:p型半導体材料12a:n型半導体材料12b=2:1:1とすることができる。キャリア生成粒子16、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bの混合比率は、それぞれ、0.1倍〜10倍の範囲で適宜変化させても良い。
【0041】
また、p層11及びn層13を構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、0.9eV以上3.0eV以下とすることができ、p層11及びn層13の厚さは例えば100nm程度とすることができる。p層11は、GaAsSb、GaInAs、Si、InP、GaAs、CdTe、CdSe、AlGaAs、GaInP、AlAs、ZnTe、GaP、CdS、ZnSe等に公知のp型不純物を添加することによって作製することができ、n層13は、GaAsSb、GaInAs、Si、InP、GaAs、CdTe、CdSe、AlGaAs、GaInP、AlAs、ZnTe、GaP、CdS、ZnSe等に公知にn型不純物を添加することによって作製することができる。このほか、p層11は、p型半導体材料12aと同様の材料によって構成することも可能であり、n層13は、n型半導体材料12bと同様の材料によって構成することも可能である。p層11やn層13に、Si等のIV族元素や、GaAsSb、GaInAs、InP、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlAs、GaP等のIII−V族化合物を用いる場合、p層11やn層13は、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、p層11やn層13に、CdTe、CdSe、ZnTe、CdS、ZnSe等のII−VI族化合物を用いる場合、p層11やn層13は、イオンプレーティングを含む真空蒸着法や、スパッタ法等の気相成長法や、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等の化学的合成法によって作製することができる。あるいは、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等により粒子を合成した後、有機溶媒に混合し、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、又は、スクリーン印刷法やインクジェット法等の印刷法等により、p層11やn層13を形成すべき物質の表面へ塗布した後、アニール処理を行うことによっても作製することができる。
【0042】
また、表面電極15及び裏面電極14は、例えば蒸着法等の公知の方法によって作製することができる。表面電極15は、例えばくし型形状のAl、Ag、Au等の金属材料、あるいは酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の透明導電膜等、太陽電池の電極として使用可能な公知の材料を適宜用いることができ、裏面電極14は、例えばAl、Ag、Au等、太陽電池の電極として使用可能な公知の材料を適宜用いることができる。表面電極15及び裏面電極14の厚さは、例えば金属材料の場合は1〜10μm、透明導電膜の場合は0.1〜1μm程度とすることができる。
【0043】
このように構成される太陽電池100の製造方法の一形態を、以下に説明する。太陽電池100を製造するには、まず、公知のガラスやプラスチック等の基板の上に、蒸着法等の公知の方法によって、Al、Ag、Au等によって構成される裏面電極14を形成する。次いで、1〜10質量%程度となる量の、p層11を構成すべきp型半導体材料を、有機溶媒(例えば、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン等。以下において同じ。)に混合して作製したp層用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の方法で裏面電極14の表面に塗布する。その後、室温で数十分〜2時間程度、又は、100℃程度の乾燥炉内で10分程度保持し、有機溶媒を蒸発させることにより、p層11を形成する。こうしてp層11を形成したら、有機溶媒に、合計で1〜10質量%程度となる量のキャリア生成粒子16、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bを加えることにより、混合pn材料層用組成物を作製する。ここで、キャリア生成粒子16は上述の方法によって作製することができる。次いで、混合pn材料層用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の方法でp層11の表面に塗布する。その後、室温で数十分〜2時間程度、又は、100℃程度の乾燥炉内で10分程度保持し、有機溶媒を蒸発させることにより、混合pn材料層12を形成する。こうして混合pn材料層12を形成したら、蒸着法等の公知の方法によって、混合pn材料層12の表面に、ZnO等によって構成されるn層13を形成する。又は、1〜10質量%程度となる量の、n層13を構成すべきn型半導体材料を、有機溶媒に混合して作製したn層用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の方法で混合pn材料層12の表面に塗布した後、室温で数十分〜2時間程度、又は、100℃程度の乾燥炉内で10分程度保持し、有機溶媒を蒸発させることにより、n層13を形成する。こうしてn層13を形成したら、真空蒸着法等の公知の用法によって、くし型形状の金属材料、あるいは透明導電膜等によって構成される表面電極15をn層13の表面に形成する。太陽電池100は、例えばこのような過程を経ることにより、作製することができる。なお、太陽電池100を製造する際の乾燥雰囲気は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0044】
図4は、本発明の太陽電池110を説明する断面図である。図4において、太陽電池100と同様の構成には、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図4では、p型半導体材料12a、n型半導体材料12b、及び、キャリア生成細線18を簡略化して示している。また、図5は、p型半導体材料12a、n型半導体材料12b、及び、キャリア生成細線18のバンド構造を説明する図であり、図6は、キャリア生成細線18を説明する断面図である。図5では、紙面上側ほど電子のエネルギーが大きく、紙面下側ほど正孔のエネルギーが大きく、「●」は電子であり、「○」は正孔である。図6の紙面奥/手前方向が、キャリア生成細線18の軸方向である。
【0045】
図4に示したように、太陽電池110は、p層11及びn層13、並びに、p層11とn層13との間に配設された混合pn材料層17を有している。p層11には裏面電極14が接続されており、n層13には表面電極15が接続されている。混合pn材料層17は、p型半導体材料12a、12a、…、及び、n型半導体材料12b、12b、…を有し、さらに、p型半導体材料12a、12a、…、及び、n型半導体材料12b、12b、…に接触しているキャリア生成細線18、18、…を有している。混合pn材料層17において、p型半導体材料12a、12a、…の一部はp層11と接触あるいは複数のp型半導体材料12a、12a、…の接触を介してp層11に接触しており、p型半導体材料12a、12a、…からp層11へ正孔が移動可能なように構成されている。また、n型半導体材料12b、12b、…の一部はn層13と接触あるいは複数のn型半導体材料12b、12b、…の接触を介してn層13に接触しており、n型半導体材料12b、12b、…からn層13へ電子が移動可能なように構成されている。p層11を構成する半導体材料の価電子帯上端のエネルギーは、p型半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーと同程度であり、n層13を構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーは、n型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーと同程度である。すなわち、太陽電池110は、太陽電池100におけるキャリア生成粒子16、16、…に代えてキャリア生成細線18、18、…が用いられているほかは、太陽電池100と同様に構成されている。
【0046】
図5及び図6に示したように、キャリア生成細線18は、キャリア発生部18xと、該キャリア発生部18xの表面を覆うように配置されたキャリア選択移動部18yと、を有している。キャリア発生部18x及びキャリア選択移動部18yは、何れも、半導体材料によって構成されている。キャリア選択移動部18yは、キャリア発生部18xの表面に形成された第1障壁層18ya、該第1障壁層18yaの表面に形成された量子井戸層18yb、及び、該量子井戸層18ybの表面に形成された第2障壁層18ycを有している。キャリア生成細線18では、その中心側から外側へ向かって、キャリア発生部18x、第1障壁層18ya、量子井戸層18yb、及び、第2障壁層18ycが同心円状に配置されており、第1障壁層18ya及び第2障壁層18ycは、キャリアがトンネル伝導により通過可能な厚さとされている。
【0047】
図5に示したように、キャリア生成細線18は、キャリア発生部18xを構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーEc21と価電子帯上端のエネルギーEv21との差(バンドギャップ)がEg21である。また、量子井戸層18ybを構成する半導体材料の伝導帯における最低離散準位のエネルギーがEc22、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーがEv22であり、Ec22とEv22との差(キャリア選択移動部18yを構成する半導体材料のバンドギャップ)がEg22である。キャリア生成細線18、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bは、以下の関係を満たしている。
Eg21<Eg22<Eg3
Eg21<Eg22<Eg4
Ec21≦Ec4≦Ec22<Ec3
Ev4<Ev22≦Ev3≦Ev21
Ec22−Ec4≒0.1eV
|Ev3−Ev22|≒0.1eV
【0048】
太陽電池110に太陽光が照射されると、高エネルギーの光がn層13によって吸収され、n層13で電子及び正孔が形成される。そして、n層13によって吸収されなかった光が混合pn材料層17に吸収される。
【0049】
図5に示したように、混合pn材料層17を構成する半導体材料の中では、キャリア発生部18xを構成する半導体材料のバンドギャップEg21が最小のバンドギャップである。そのため、混合pn材料層17へ光が達すると、キャリア発生部18xを構成する半導体材料のバンドギャップEg21以上のエネルギーを有する光が吸収される。こうして光が吸収されると、様々なエネルギーを有する電子が、キャリア発生部18xを構成する半導体材料の価電子帯から伝導帯へと励起され、当該半導体材料の価電子帯には様々なエネルギーを有する正孔が形成される。より具体的には、キャリア発生部18xを構成する半導体材料の伝導帯には図5に示したような電子エネルギー分布が形成され、当該半導体材料の価電子帯には図5に示したような正孔エネルギー分布が形成される。
【0050】
キャリア発生部18xで生成された電子のうち、量子井戸層18ybを構成する半導体材料の伝導帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層18ybの伝導帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEc22と一致する電子は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部18yを通過してn型半導体材料12bの伝導帯へと達することができる。ここで、Ec22、及び、キャリア生成細線18に接触しているn型半導体材料12bの伝導帯下端のエネルギーEc4は、Ec4≦Ec22、且つ、Ec22−Ec4≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、n型半導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。
【0051】
キャリア発生部18xで生成された電子のうち、量子井戸層18ybの伝導帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する電子は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子は量子井戸層18ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層18ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc22と一致した上記電子と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部18yを通過してn型半導体材料12bへと達する。そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層13へと移動し、n層13に接続されている表面電極15へと収集される。
【0052】
一方、キャリア発生部18xで生成された正孔のうち、量子井戸層18ybを構成する半導体材料の価電子帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層18ybの価電子帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEv22と一致する正孔は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部18yを通過してp型半導体材料12aの価電子帯へと達することができる。ここで、Ev22、及び、キャリア生成細線18に接触しているp型半導体材料12aの価電子帯上端のエネルギーEv3は、Ev22≦Ev3、且つ、|Ev3−Ev22≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面電極14へと収集される。
【0053】
キャリア発生部18xで生成された正孔のうち、量子井戸層18ybの価電子帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する正孔は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の正孔は量子井戸層18ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層18ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった正孔は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEv22と一致した上記正孔と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部18yを通過してp型半導体材料12aへと達する。そして、p型半導体材料12aへと達した正孔は、p型半導体材料12aを移動してp層11へと移動し、p層11に接続されている裏面電極14へと収集される。
【0054】
このように、太陽電池110では、キャリア発生部18xで発生させた電子を、キャリア選択移動部18y、n型半導体材料12b、及び、n層13を経由して表面電極15へと移動させ、キャリア発生部18xで発生させた正孔を、キャリア選択移動部18y、p型半導体材料12a、及び、p層11を経由して裏面電極14へと移動させる。ここで、p型半導体材料12aに移動した正孔とn型半導体材料12bに移動した電子の両者の界面で再結合を防ぐため、両者の界面に十分な幅の空乏層が形成されるようなキャリア密度となるように、ドーパント濃度を調整する必要がある。電子及び正孔をこのように移動させることにより、電気エネルギーを得ることができる。太陽電池110では、Ec4≦Ec22、且つ、Ec22−Ec4≒0.1eVとされているので、キャリア発生部18xで生成された電子がn型半導体材料12bへと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。それゆえ、太陽電池100と同様に、太陽電池110によれば、高エネルギーの電子が移動時に失うエネルギーを大幅に低減することが可能になる。また、太陽電池110では、Ev22≦Ev3、且つ、|Ev3−Ev22|≒0.1eVとされているので、キャリア発生部18xで生成された正孔がp型半導体材料12aへと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。それゆえ、太陽電池100と同様に、太陽電池110によれば、高エネルギーの正孔が移動時に失うエネルギーを大幅に低減することが可能になる。特に、キャリア発生部18xの直径を制御して、キャリア発生部18xで発生させたキャリアがp型半導体材料12aやn型半導体材料12bへと達するまでの移動距離を10nm以下程度にすることにより、移動時に失われるエネルギーを大幅に低減することが可能になる。さらに、太陽電池110では、Ec3がEc22よりも図5の紙面上側に位置し、Ec3とEc22との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部18xで発生させた電子がp型半導体材料12aへ移動し難くなるので、p型半導体材料12aにおいて電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。加えて、太陽電池110では、Ev4がEv22よりも図5の紙面下側に位置し、Ev4とEv22との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部18xで発生させた正孔がn型半導体材料12bへ移動し難くなるので、n型半導体材料12bにおいて電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。したがって、本発明によれば、光電変換効率を高めることが可能な太陽電池110を提供することができる。
【0055】
太陽電池110において、キャリア発生部18xを構成する半導体材料のバンドギャップEg21は、例えば、0.4eV以上1.6eV以下とすることができる。また、キャリア発生部18xの直径は、キャリア発生部16xと同様の観点から、例えば2nm以上20nm以下とすることができる。上記太さのキャリア発生部18xにすると、量子効果により、キャリア発生部18xのバンドギャップはバルクのバンドギャップよりも大きくなる。また、キャリア発生部18xには、キャリア発生部16xを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができ、キャリア発生部16xと同様の方法を用いてキャリア発生部18xを作製することができる。また、混合pn材料層17の厚さは1μm以下程度になると考えられ、キャリア生成細線18は、この層を突き破らないようにすることが好ましい。それゆえ、キャリア生成細線18の軸方向長さは、例えば20nm以上500nm以下とすることが好ましい。
【0056】
また、第1障壁層18ya及び第2障壁層18ycを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、1.2eV以上4.0eV以下とすることができる。また、第1障壁層18ya及び第2障壁層18ycの厚さは、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycと同様の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。第1障壁層18ya及び第2障壁層18ycには、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができ、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycと同様の方法を用いて、第1障壁層18yaや第2障壁層18ycを作製することができる。
【0057】
また、量子井戸層18ybを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、0.6eV以上3.0eV以下とすることができる。また、量子井戸層18ybの厚さは、量子井戸層16ybと同様の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。量子井戸層18ybには、量子井戸層16ybを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができ、量子井戸層16ybと同様の方法を用いて、量子井戸層18ybを作製することができる。
【0058】
化学的合成法を用いたキャリア生成細線18の作製法の具体例として、キャリア発生部18xにPbSe、第1障壁層18ya及び第2障壁層18ycにZnS、量子井戸層18ybにCdTeを用いた場合について、以下に説明する。
【0059】
<キャリア発生部18xの合成>
フラスコ(キャリア生成細線18の作製法に関する以下の説明において、「第1フラスコ」という。)に、溶媒となるフェニルエーテル、及び、オレイン酸と、Pb源である酢酸鉛とを入れ、不活性ガス中で150℃程度に加熱することにより酢酸鉛を溶解した後、60℃程度に冷却する。次いで、第1フラスコに、Se源であるセレン化トリオクチルフォスフィン、及び、トリオクチルフォスフィンを加える。一方、第1フラスコとは別のフラスコ(キャリア生成細線18の作製法に関する以下の説明において、「第2フラスコ」という。)に、フェニルエーテル及びテトラデシルフォスフィンを入れ、不活性ガス中で250℃程度(注入溶液の温度)に加熱する。その後、加熱された第2フラスコへ、Se源等が加えられた第1フラスコ中の溶液を注入し、180℃程度(反応温度)に保持する。以上の過程を経ることにより、太さ6nm程度のキャリア発生部18x(PbSe細線)を生成することができる。ここで、注入溶液の温度及び反応温度が高くなるほど、溶液中の原料濃度比率Pb/Seが大きくなると、球状粒子ではなく細線を生成しやすくなる。なお、PbSeのバンドギャップはバルクでは0.27eVであるが、量子効果により0.7eV程度となる。
【0060】
<第1障壁層18yaの合成>
フラスコ(キャリア生成細線18の作製法に関する以下の説明において、「第3フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、さらに、Zn源であるジメチル亜鉛、及び、S源であるビストリメチルシリルサルファイドを加え、300℃程度に加熱する。その後、第3フラスコの溶液を、200℃程度に再加熱した第2フラスコへと加え、100℃程度に冷却する。以上の過程を経ることにより、キャリア発生部18xの周囲に、厚さ3nm程度の障壁層18ya(ZnS層)を形成することができる。このようにして形成したZnS層のバンドギャップは、3.58eVである。
【0061】
<量子井戸層18ybの合成>
フラスコ(キャリア生成細線18の作製法に関する以下の説明において、「第4フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、Cd源であるジメチルカドミウム、及び、Te源であるトリオクチルフォスフィンテルルを加え、220℃程度に加熱して溶解する。その後、第4フラスコの溶液を、240℃程度に再加熱した第2フラスコへと加える。以上の過程を経ることにより、第1障壁層18yaの周囲に、厚さ5nm程度の量子井戸層18yb(CdTe層)を形成することができる。なお、CdTeのバンドギャップはバルクでは1.44eVであるが、量子効果により1.65eV程度となる。
【0062】
<第2障壁層18ycの合成>
フラスコ(キャリア生成細線18の作製法に関する以下の説明において、「第5フラスコ」という。)に、トリオクチルフォスフィンを入れ、さらに、Zn源であるジメチル亜鉛、及び、S源であるビストリメチルシリルサルファイドを加え、300℃程度に加熱する。その後、第5フラスコの溶液を、200℃程度に再加熱した第2フラスコへと加え、100℃程度に冷却する。以上の過程を経ることにより、量子井戸層18ybの周囲に、厚さ3nm程度の第2障壁層18yc(ZnS層)を形成することができる。このようにして形成したZnS層のバンドギャップは、3.58eVである。こうして第2障壁層18ycを形成したら、例えばメタノールを用いた洗浄を行う工程を経て、キャリア生成細線18を得ることができる。
【0063】
このような手順で作製可能なキャリア生成細線18を備える太陽電池110は、キャリア生成粒子16に代えてキャリア生成細線18を用いるほかは、太陽電池100と同様の方法によって作製することができる。太陽電池110において、混合pn材料層17に含まれる、キャリア生成細線18、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bの混合比率は特に限定されず、例えば、質量比で、キャリア生成細線18:p型半導体材料12a:n型半導体材料12b=2:1:1とすることができる。キャリア生成細線18、p型半導体材料12a、及び、n型半導体材料12bの混合比率は、それぞれ、0.1倍〜10倍の範囲で適宜変化させても良い。
【0064】
太陽電池100、110に関する上記説明では、キャリア生成粒子16又はキャリア生成細線18が用いられている形態を例示したが、本発明の光電変換素子は、当該形態に限定されない。本発明の光電変換素子は、キャリア生成粒子16及びキャリア生成細線18が同一層内に分散された形態の層を有していても良い。
【0065】
第1実施形態にかかる本発明の太陽電池において、図2に示したバンド構造、及び、図5に示したバンド構造は、例えば、キャリア発生部(キャリア発生部16x又はキャリア発生部18x)、第1障壁層(第1障壁層16ya又は第1障壁層18ya)、量子井戸層(量子井戸層16yb又は量子井戸層18yb)、第2障壁層(第2障壁層16yc又は第2障壁層18yc)、p型半導体材料(p型半導体材料12a)、及び、n型半導体材料(n型半導体材料12b)に、それぞれ以下に示す材料を用いることにより、実現可能である。
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p型半導体材料、n型半導体材料)=(PbS、ZnSe、CdTe、ZnSe、P3HT、フラーレンC60)、又は、
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p型半導体材料、n型半導体材料)=(InAs、AlGaAs、GaInAs、AlGaAs、MDMO−PPV、フラーレン誘導体)、又は、
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p型半導体材料、n型半導体材料)=(Ge、GaInP、GaInAs、GaInP、テトラセン、キノリノールアルミ錯体)。
【0066】
図7は、第2実施形態にかかる本発明の太陽電池200を説明する断面図である。図7において、太陽電池100と同様の構成には、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。図7では、キャリア生成膜22を簡略化して示している。図7の紙面左右方向が、光の進行方向である。また、図8は、p層21、キャリア生成膜22、及び、n層23のバンド構造を説明する図である。図8では、紙面上側ほど電子のエネルギーが大きく、紙面下側ほど正孔のエネルギーが大きく、「●」は電子であり、「○」は正孔である。また、図9は、キャリア生成膜22を説明する断面図である。図9の紙面上下方向が、光の進行方向であり、キャリア生成膜22の厚さ方向である。
【0067】
図7に示したように、太陽電池200は、裏面電極14及び表面電極15、裏面電極14に接続されたp層21、21、…(以下において、単に「p層21」ということがある。)、表面電極15に接続されたn層23、23、…(以下において、単に「n層23」ということがある。)、並びに、p層21、21、…とn層23、23、…との間に配置されたキャリア生成膜22、22、…(以下において、単に「キャリア生成膜22」ということがある。)を有している。光の進行方向の上流側に配置された表面電極15側の端にはn層23が、光の進行方向の下流側に配置された裏面電極14側の端にはp層21が、それぞれ配置されており、表面電極15と裏面電極14との間には、光の進行方向上流側から順に配置されたn層23、キャリア生成膜22、及び、p層21によって構成される複数の積層体24、24、…が、連続して配置されている。積層体24、24、…に含まれるp層21、21、…は、図7の紙面下側に配置されたp層21に接続されており、積層体24、24、…に含まれるn層23、23、…は、図7の紙面上側に配置されたn層23に接続されている。積層体24において、キャリア生成膜22の一方の面はp層21と接触しており、キャリア生成膜22の他方の面はn層23と接触している。
【0068】
図8及び図9に示したように、キャリア生成膜22は、その厚さ方向中央部に配置されたキャリア発生部22xと、該キャリア発生部22xを挟むように配置されたキャリア選択移動部22y、22yと、を有している。キャリア発生部22x、及び、キャリア選択移動部22y、22yは、半導体材料によって構成されている。キャリア選択移動部22yは、キャリア発生部22x側から外側へ向かって順に配置された、第1障壁層22ya、量子井戸層22yb、及び、第2障壁層22ycを有しており、第1障壁層22ya及び第2障壁層22ycは、キャリアがトンネル伝導により移動可能な厚さとされている。
【0069】
図8に示したように、キャリア生成膜22は、キャリア発生部22xを構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーEc11と価電子帯上端のエネルギーEv11との差(バンドギャップ)がEg11である。また、量子井戸層22ybを構成する半導体材料の伝導帯における最低離散準位のエネルギーがEc12、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーがEv12であり、Ec12とEv12との差(キャリア選択移動部22yを構成する半導体材料のバンドギャップ)がEg12である。一方、p層21は、伝導帯下端のエネルギーEc13と価電子帯上端のエネルギーEv13との差(バンドギャップ)がEg13であり、n層23は、伝導帯下端のエネルギーEc14と価電子帯上端のエネルギーEv14との差(バンドギャップ)がEg14である。キャリア生成膜22、p層21、及び、n層23は、以下の関係を満たしている。
Eg11<Eg12<Eg13
Eg11<Eg12<Eg14
Ec11≦Ec14≦Ec12<Ec13
Ev14<Ev12≦Ev13≦Ev11
Ec12−Ec14≒0.1eV
|Ev13−Ev12|≒0.1eV
【0070】
太陽電池200に太陽光が照射されると、太陽光の一部がn層23やp層21を通過して、キャリア生成膜22へと達する。ここで、n層23やp層21を構成する半導体材料のバンドギャップは、太陽光に含まれている様々なエネルギーの光のうち、高エネルギーの光(例えば紫外線)のみを吸収可能なように調整されている。それゆえ、n層23やp層21に光が達すると、高エネルギーの光が吸収され、キャリアが生成される。そして、n層23やp層21によって吸収されなかった光が、キャリア生成膜22に吸収される。
【0071】
図8に示したように、キャリア生成膜22を構成する半導体材料の中では、キャリア発生部22xを構成する半導体材料のバンドギャップEg11が最小のバンドギャップである。そのため、キャリア生成膜22へ光が達すると、キャリア発生部22xを構成する半導体材料のバンドギャップEg11以上のエネルギーを有する光が吸収される。こうして光が吸収されると、様々なエネルギーを有する電子が、キャリア発生部22xを構成する半導体材料の価電子帯から伝導帯へと励起され、当該半導体材料の価電子帯には様々なエネルギーを有する正孔が形成される。より具体的には、キャリア発生部22xを構成する半導体材料の伝導帯には図8に示したような電子エネルギー分布が形成され、当該半導体材料の価電子帯には図8に示したような正孔エネルギー分布が形成される。
【0072】
キャリア発生部22xで生成された電子のうち、量子井戸層22ybを構成する半導体材料の伝導帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層22ybの伝導帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEc12と一致する電子は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部22yを通過してn層23の伝導帯へと達することができる。ここで、Ec12、及び、キャリア生成膜22に接触しているn層23の伝導帯下端のエネルギーEc14は、Ec14≦Ec12、且つ、Ec12−Ec14≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、n層23を移動して表面電極15へと収集される。
【0073】
キャリア発生部22xで生成された電子のうち、量子井戸層22ybの伝導帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する電子は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の電子は量子井戸層22ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層22ybの伝導帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった電子は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEc12と一致した上記電子と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部22yを通過してn型半導体材料12bへと達する。そして、n型半導体材料12bへと達した電子は、n型半導体材料12bを移動してn層23へと移動し、n層23に接続されている表面電極15へと収集される。
【0074】
一方、キャリア発生部22xで生成された正孔のうち、量子井戸層22ybを構成する半導体材料の価電子帯に形成されている最低離散準位(以下において、「量子井戸層22ybの価電子帯側の最低離散準位」ということがある。)のエネルギーEv12と一致する正孔は、トンネル伝導によりキャリア選択移動部22yを通過してp層21の価電子帯へと達することができる。ここで、Ev12、及び、キャリア生成膜22に接触しているp層21の価電子帯上端のエネルギーEv13は、Ev12≦Ev13、且つ、|Ev13−Ev12|≒0.1eVであるため、ほとんどエネルギーを失うことなく、p層21を移動して裏面電極14へと収集される。
【0075】
キャリア発生部22xで生成された正孔のうち、量子井戸層22ybの価電子帯側の最低離散準位とは異なるエネルギーを有する正孔は、相互にエネルギーの授受を行い、一部の正孔は量子井戸層22ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーになる。こうして量子井戸層22ybの価電子帯側の最低離散準位と同じエネルギーを有することになった正孔は、相互にエネルギーの授受を行うことなくEv12と一致した上記正孔と同様に、トンネル伝導によりキャリア選択移動部22yを通過してp層21へと達する。そして、p層21へと達した正孔は、p層21を移動して裏面電極14へと収集される。
【0076】
このように、太陽電池200では、キャリア発生部22xで発生させた電子を、キャリア選択移動部22y、及び、n層23を経由して表面電極15へと移動させ、キャリア発生部22xで発生させた正孔を、キャリア選択移動部22y、及び、p層21を経由して裏面電極14へと移動させる。ここで、p層21に移動した正孔とn層23に移動した電子の両者の界面で再結合を防ぐため、両者の界面に十分な幅の空乏層が形成されるようなキャリア密度となるように、ドーパント濃度を調整する必要がある。あるいは、両者の界面に厚さ5nm以上の絶縁層を形成することによって正孔と電子の再結合を防ぐこともできる。電子及び正孔をこのように移動させることにより、電気エネルギーを得ることができる。太陽電池200では、Ec14≦Ec12、且つ、Ec12−Ec14≒0.1eVとされているので、キャリア発生部22xで生成された電子がn層23へと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。また、Ev12≦Ev13、且つ、|Ev13−Ev12|≒0.1eVとされているので、キャリア発生部22xで生成された正孔がp層21へと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。従来のホットキャリア型太陽電池では、太陽光を十分に吸収するためにキャリア発生部の厚みが少なくとも100nm以上必要であり、キャリアがキャリア選択移動部へと達するまでのエネルギー損失が大きく、変換効率向上の妨げとなっていた。太陽電池200では、キャリア発生部22xの直径を制御して、キャリア発生部22xで発生させたキャリアがp層21やn層23へと達するまでの移動距離を10nm以下程度にすることにより、移動時に失われるエネルギーを大幅に低減することが可能になる。さらに、太陽電池200では、Ec13がEc12よりも図8の紙面上側に位置し、Ec13とEc12との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部22xで発生させた電子がp層21へ移動し難くなるので、p層21において電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。加えて、太陽電池200では、Ev14がEv12よりも図8の紙面下側に位置し、Ev14とEv12との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部22xで発生させた正孔がn層23へ移動し難くなるので、n層23において電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。したがって、本発明によれば、光電変換効率を高めることが可能な太陽電池200を提供することができる。
【0077】
太陽電池200において、キャリア発生部22xを構成する半導体材料のバンドギャップEg11は、例えば、0.4eV以上1.6eV以下とすることができる。また、キャリア発生部22xの厚さは、キャリアを発生可能な厚さにする等の観点から、例えば2nm以上とし、量子効果が得られる厚さにする等の観点から、例えば20nm以下とすることができる。なお、キャリア発生部22xの厚さを、発生させたホットキャリアの移動距離が10nm以下になるような厚さにする場合、量子効果により、キャリア発生部22xのバンドギャップはバルクのバンドギャップよりも大きくなる。また、キャリア発生部22xには、キャリア発生部16xを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。キャリア発生部22xを、Ge、Si等のIV族元素や、InAs、GaSb、GaAsSb、GaInAs、InP、GaAs等のIII−V族化合物で構成する場合、キャリア発生部22xは有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、キャリア発生部22xを、PbSeやPbS等のIV−VI族化合物や、CdTe等のII−VI族化合物で構成する場合、キャリア発生部22xは、イオンプレーティングを含む真空蒸着法、スパッタ法等の気相成長法、ゾルゲル法、ケミカルバスディポジション法等の化学的合成法によって作製することができる。あるいは、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等により粒子を合成した後、有機溶媒に混合し、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、又は、スクリーン印刷法やインクジェット法等の印刷法等により、キャリア発生部22xを形成すべき物質の表面へ塗布した後、アニール処理を行うことによっても作製することができる。
【0078】
また、第1障壁層22ya及び第2障壁層22ycを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば1.2eV以上4.0eV以下とすることができる。また、第1障壁層22ya及び第2障壁層22ycの厚さは、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycと同様の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。また、第1障壁層22ya及び第2障壁層22ycには、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。第1障壁層22yaや第2障壁層22ycを、InP、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlAs、GaP、GaN等のIII−V族化合物で構成する場合、第1障壁層22yaや第2障壁層22ycは、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、第1障壁層22yaや第2障壁層22ycを、CdTe、CdSe、ZnTe、CdS、ZnSe、ZnS等のII−VI族化合物で構成する場合、第1障壁層22yaや第2障壁層22ycは、イオンプレーティングを含む真空蒸着法、スパッタ法等の気相成長法、ゾルゲル法、ケミカルバスディポジション法等の化学的合成法によって作製することができる。あるいは、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等により粒子を合成した後、有機溶媒に混合し、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、又は、スクリーン印刷法やインクジェット法等の印刷法等により、第1障壁層22yaや第2障壁層22ycを形成すべき物質(キャリア発生部22xや量子井戸層22ybを含む)の表面へ塗布した後、アニール処理を行うことによっても作製することができる。
【0079】
また、量子井戸層22ybを構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば0.6eV以上3.0eV以下とすることができる。また、量子井戸層22ybの厚さは、量子井戸層16ybと同様の観点から、例えば2nm以上10nm以下とすることができる。量子井戸層22ybをこのような厚さにすると、量子効果により、量子井戸層22ybのバンドギャップはバルクのバンドギャップよりも大きくなる。また、量子井戸層22ybには、量子井戸層16ybを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。量子井戸層22ybを、Ge、Si等のIV族元素や、GaSb、GaAsSb、GaInAs、InP、GaAs、AlGaAs、GaInP、AlAs、GaP等のIII−V族化合物で構成する場合、量子井戸層22ybは、有機金属気相成長法(MOCVD)や分子線エピタキシ法(MBE)等の気相成長法によって作製することができる。また、量子井戸層22ybを、CdTe、CdSe、ZnTe、CdS、ZnSe等のII−VI族化合物で構成する場合、量子井戸層22ybは、イオンプレーティングを含む真空蒸着法、スパッタ法等の気相成長法、ゾルゲル法、ケミカルバスディポジション法等の化学的合成法によって作製することができる。あるいは、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等により粒子を合成した後、有機溶媒に混合し、スピンコート法やディップコート法等の塗布法、又は、スクリーン印刷法やインクジェット法等の印刷法等により、量子井戸層22ybを形成すべき障壁層22yaの表面へ塗布した後、アニール処理を行うことによっても作製することができる。
【0080】
また、p層21及びn層23を構成する半導体材料のバンドギャップは、例えば、0.9eV以上3.0eV以下とすることができ、p層21及びn層23の厚さは、例えば100nm程度とすることができる。p層21は、p層11と同様の材料を用いて、p層11と同様の方法によって作製することができる。また、n層23は、n層13と同様の材料を用いて、n層13と同様の方法によって作製することができる。
【0081】
太陽電池200において、図8に示したバンド構造は、例えば、キャリア発生部22x、第1障壁層22ya、量子井戸層22yb、第2障壁層22yc、p層21、及び、n層23に、それぞれ以下に示す材料を用いることにより、実現可能である。
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p層、n層)=(InAs、AlGaAs、GaInAs、AlGaAs、GaInAs、GaInAs)、又は、
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p層、n層)=(Ge、GaInP、GaInAs、GaInP、GaAs、GaAs)、又は、
(キャリア発生部、第1障壁層、量子井戸層、第2障壁層、p層、n層)=(PbS、ZnSe、CdTe、ZnSe、ZnTe、CdS)。
【0082】
太陽電池200に関する上記説明では、複数の積層体24、24、…が連続して配置されている形態を例示したが、キャリア生成膜22を備えた本発明の光電変換素子は、当該形態に限定されない。本発明の光電変換素子は、すべてのn層とp層との間にキャリア生成膜22が配設された形態とすることも可能である。このようにn層とp層とが接することがないような構造の場合には、n層に移動した電子とp層に移動した正孔の、n層とp層との界面での再結合の防止を考慮するためのn層、p層のキャリア密度に関する制約は課せられない。
【0083】
本発明に関する上記説明では、キャリア生成粒子16、キャリア生成細線18、及び、キャリア生成膜22が、何れも、量子井戸層及びこれを挟む障壁層のバンド構造がtypeIをなす形態を例示したが、本発明の光電変換素子は当該形態に限定されない。本発明の光電変換素子に備えられるキャリア選択移動部は、量子井戸層及びこれを挟む障壁層のバンド構造がtypeIIをなしていても良い。そこで、バンド構造がtypeIIとなるキャリア選択移動部のバンド構造について、以下に説明する。
【0084】
図10は、本発明の光電変換素子に用いられるキャリア生成粒子、キャリア生成細線、及び、キャリア生成膜(以下において、これらをまとめて「キャリア生成物質30」ということがある。)が採り得るバンド構造を説明する図であり、図10は、図2や図5と対応している。便宜上、図10では、キャリア生成物質30が粒子状又は細線状であり、且つ、キャリア生成物質30とp型半導体材料31及びn型半導体材料32とが接触している形態を示しているが、キャリア生成物質30は、太陽電池200に用いられているキャリア生成膜22のように、多層膜構造にして、p層及びn層と接触させることも可能である。キャリア生成物質30が粒子状又は細線状である場合、キャリア生成物質30を用いた光電変換素子は、太陽電池100や太陽電池110と同様の形状にすることができる。これに対し、キャリア生成物質30が多層膜構造である場合、キャリア生成物質30を用いた光電変換素子は、太陽電池200と同様の形状にすることができる。キャリア生成物質30を多層膜構造にする場合は、図10のp型半導体材料をp層に置き換え、図10のn型半導体材料をn層に置き換えて考えれば良い。
【0085】
キャリア生成物質30は、中心側から外側に向かって、キャリア発生部30x及びキャリア選択移動部30yを有し、キャリア選択移動部30yは、キャリア発生部30x側から外側に向かって、第1障壁層30ya、量子井戸層30yb、及び、第2障壁層30ycを有している。第1障壁層30ya及び第2障壁層30ycは、キャリアがトンネル伝導により通過可能な厚さとされており、キャリア発生部30x及びキャリア選択移動部30yは、半導体材料によって構成されている。キャリア発生物質30は、キャリア発生部30xを構成する半導体材料の伝導帯下端のエネルギーEc5と価電子帯上端のエネルギーEv5との差(バンドギャップ)がEg5である。また、量子井戸層30ybを構成する半導体材料の伝導帯における最低離散準位のエネルギーEc6と価電子帯上端のエネルギーEv6との差(キャリア選択移動部30yを構成する半導体材料のバンドギャップ)がEg6である。一方、キャリア生成物質30に接触しているp型半導体材料31は、伝導帯下端のエネルギーEc7と価電子帯上端のエネルギーEv7との差(バンドギャップ)がEg7であり、キャリア生成物質30に接触しているn型半導体材料32は、伝導帯下端のエネルギーEc8と価電子帯上端のエネルギーEv8との差(バンドギャップ)がEg8である。キャリア生成物質30、p型半導体材料31、及び、n型半導体材料32は、以下の関係を満たしている。
Eg5<Eg6<Eg7
Eg5<Eg6<Eg8
Ec5≦Ec8≦Ec6<Ec7
Ev8<Ev5≦Ev6≦Ev7
Ec6−Ec8≒0.1eV
|Ev7−Ev6|≒0.05eV
|Ev6−Ev5|≒0.05eV
【0086】
キャリア生成物質30に光が達すると、キャリア発生部30xのバンドギャップEg5よりも大きいエネルギーを有する光が吸収され、キャリア発生部30xにおいて様々なエネルギーを有する電子及び正孔が生成される。量子井戸層30ybには、伝導帯側にのみ離散準位が形成されている。それゆえ、キャリア発生部30xで生成された電子のうち、量子井戸層30ybの伝導帯における最低離散準位Ec6と一致するエネルギーを有する電子、及び、他の電子とエネルギーの授受を行うことにより当該最低離散準位Ec6と一致するエネルギーを有することになった電子は、トンネル伝導により、量子井戸層30ybの当該離散準位を経由してn型半導体材料32へと達する。ここで、上述したように、Ec6−Ec8≒0.1eVである。そのため、n型半導体材料32へと達した電子は、ほとんどエネルギーを失うことなく、n型半導体材料32、及び、当該n型半導体材料に接続されているn層を経由して電極へと移動することができる。これに対し、キャリア選択移動部30yの価電子帯には離散準位が形成されていない。それゆえ、キャリア発生部30xで生成された正孔に対しては量子閉じ込め効果が働かず、キャリア発生部30xで生成された正孔は、キャリア選択移動部30yを経て速やかにp型半導体材料31へと移動する。こうしてp型半導体材料31へと移動した正孔は、p型半導体材料31に接続されているp層を経由して電極へと移動することができる。
【0087】
キャリア生成物質30では、量子井戸層30ybの伝導帯側には離散準位が形成されているのに対し、価電子帯側には離散準位が形成されていない。それゆえ、キャリア発生部30xで生成された電子及び正孔のうち、電子に対しては量子閉じ込め効果が働く一方、正孔に対しては量子閉じ込め効果が働かない。したがって、電子のみを閉じ込めて相互作用させる機能を有する。キャリア発生部30xで生成された正孔がp型半導体材料31へ速やかに移動するため、キャリア発生部30xの正孔密度が大幅に減少する。すなわち、キャリア発生部30xで電子と再結合する相手である正孔の数を低減することが可能になるので、ホットキャリアの寿命を延ばすことが可能になる。なお、価電子帯側に離散準位が形成されないキャリア生成物質30では、正孔同士を相互作用させることが困難になるため、図2、図5、及び、図8に示したバンド構造を有するキャリア生成物質よりも正孔のエネルギー損失が増大しやすい。しかしながら、キャリア発生部30xにおける正孔のエネルギー分布幅は電子のエネルギー分布幅よりも小さいので、エネルギー損失の影響は僅かである。キャリア生成物質30によっても、電子同士を相互作用させてエネルギー損失を低減することができるので、キャリア生成物質30を用いる本発明の光電変換素子であっても、光電変換効率を高めることが可能になる。
【0088】
キャリア生成物質30を用いる本発明の光電変換素子では、キャリア発生部30xで発生させた電子を、キャリア選択移動部30y及びn型半導体材料32を経由して、n型半導体材料32に接続されているn層へと移動させ、このn層を経由して電極へと移動させる。また、キャリア発生部30xで発生させた正孔を、キャリア選択移動部30y及びp型半導体材料31を経由して、p型半導体材料31に接続されているp層へと移動させ、このp層を経由して電極へと移動させる。電子及び正孔をこのように移動させることにより、電気エネルギーを得ることができる。キャリア生成物質30及びn型半導体材料32は、Ec8≦Ec6、且つ、Ec6−Ec8≒0.1eVとされているので、キャリア発生部30xで生成された電子がn型半導体材料32へと達した後は、エネルギーがほとんど失われない。従来のホットキャリア型太陽電池では、太陽光を十分に吸収するためにキャリア発生部の厚みが少なくとも100nm以上必要であり、キャリアがキャリア選択移動部へと達するまでのエネルギー損失が大きく、変換効率向上の妨げとなっていた。キャリア生成物質30を用いる本発明の光電変換素子においては、キャリア発生部30xの直径を制御して、キャリア発生部30xで発生させたキャリアがp型半導体材料31やn型半導体材料32へと達するまでの移動距離を10nm以下程度にすることにより、移動時に失われるエネルギーを大幅に低減することが可能になる。さらに、キャリア生成物質30及びp型半導体材料31は、Ec7がEc6よりも図10の紙面上側に位置し、Ec7とEc6との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部30xで発生させた電子がp型半導体材料31へ移動し難くなるので、p型半導体材料31において電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。また、キャリア生成物質30及びn型半導体材料32は、Ev8がEv6よりも図10の紙面下側に位置し、Ev8とEv6との差が大きい。かかる形態とすることにより、キャリア発生部30xで発生させた正孔がn型半導体材料32へ移動し難くなるので、n型半導体材料32において電子と正孔とが結合して消滅することに伴うエネルギー損失を低減することができる。したがって、キャリア生成物質30、p型半導体材料31、及び、n型半導体材料32を用いる形態の光電変換素子であっても、光電変換効率を高めることが可能になる。なお、キャリア生成物質30を用いる本発明の光電変換素子においても、太陽電池100、110、200と同様に、p層やn層を構成する半導体材料のバンドギャップを、太陽光に含まれている様々なエネルギーの光のうち、高エネルギーの光(例えば紫外線)のみを吸収可能なように調整することにより、キャリア生成物質30に光を吸収させてキャリアを生成させることができる。
【0089】
キャリア生成物質30では、第1障壁層30ya、量子井戸層30yb、及び、第2障壁層30ycの材料選定や組成、さらには、量子井戸層30ybの厚さを調節することにより、Ec6を自在に調節することができる。Ec6を調節することにより、n型半導体材料32へと移動する電子のエネルギーを調節することができる。
【0090】
また、キャリア生成物質30では、Ec6−Ec8≒0.1eV、|Ev7−Ev6|≒0.05eV、及び、|Ev6−Ev5|≒0.05eVとすることにより、キャリアがキャリア発生部30xからp型半導体材料31やn型半導体材料32へと移動する際に失われるエネルギーを低減することが容易になる。
【0091】
上述のように、キャリア生成物質30は、図2、図5、及び、図8に示したバンド構造を有する物質よりも正孔のエネルギー損失が増大しやすい。しかしながら、キャリア生成物質30では、キャリア選択移動部30yの価電子帯側に離散準位を形成する必要がないので、Ec6を最適値に調節しやすい。したがって、キャリア生成物質30は、図2、図5、及び、図8に示したバンド構造を有する物質よりも製造しやすい傾向がある。
【0092】
キャリア生成物質30において、キャリア発生部30xの厚さ及び作製方法は、それぞれ、キャリア発生部16xの厚さ及び作製方法と同様にすることができ、キャリア発生部30xには、キャリア発生部16xを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。また、第1障壁層30ya及び第2障壁層30ycの厚さ及び作製方法は、それぞれ、第1障壁層16ya及び第2障壁層16ycの厚さ及び作製方法と同様にすることができ、第1障壁層30ya及び第2障壁層30ycには、第1障壁層16yaや第2障壁層16ycを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。また、量子井戸層30ybの厚さ及び作製方法は、それぞれ、量子井戸層16ybの厚さ及び作製方法と同様にすることができ、量子井戸層30ybには量子井戸層16ybを構成可能な半導体材料と同様の材料を用いることができる。例えば、キャリア発生部30xに、ドーピングによりエネルギーレベルを調整されたPbS、第1障壁層30ya及び第2障壁層30ycにZnTe、量子井戸層30ybにCdTe、p型半導体材料31にテトラセン、並びに、n型半導体材料32にフラーレンC60を用いることにより、図10に示したバンド構造を実現することができる。このほか、例えば、キャリア発生部30xにInAs、第1障壁層30ya及び第2障壁層30ycにGaAs、量子井戸層30ybにGaAsSb、p型半導体材料31にアントラセン、n型半導体材料32にフラーレン誘導体を用いた場合であっても、図10に示したバンド構造を実現することができる。
【0093】
本発明において、キャリア生成物質の形状は特に限定されないが、ホットキャリアのエネルギー損失を低減しやすい形態にして光電変換効率を高めやすい光電変換素子を提供する等の観点からは、多層膜構造よりも粒子状又は線状とすることが好ましく、特に、粒子状とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0094】
11、21…p層
12、17…混合pn材料層
12a、31…p型半導体材料
12b、32…n型半導体材料
13、23…n層
14…裏面電極(第1電極)
15…表面電極(第2電極)
16…キャリア生成粒子(キャリア生成物質)
16x、18x、22x、30x…キャリア発生部
16y、18y、22y、30y…キャリア選択移動部
16ya、18ya、22ya、30ya…第1障壁層
16yb、18yb、22yb、30yb…量子井戸層
16yc、18yc、22yc、30yc…第2障壁層
18…キャリア生成細線(キャリア生成物質)
22…キャリア生成膜
24…積層体
30…キャリア生成物質
100、110、200…太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p層及びn層、前記p層と前記n層との間に配設された混合pn材料層、前記p層に接続された第1電極、並びに、前記n層に接続された第2電極を備え、
前記混合pn材料層は、少なくとも一部が前記p層に接触しているp型半導体材料又は複数のp型半導体材料の接触を介して前記p層に接触するp型半導体材料と、少なくとも一部が前記n層に接触しているn型半導体材料又は複数のn型半導体材料の接触を介して前記n層に接触するn型半導体材料と、前記p型半導体材料及び前記n型半導体材料に接触しているキャリア生成物質と、を有し、
前記キャリア生成物質は、光を吸収して電子及び正孔を生じさせるキャリア発生部と、該キャリア発生部で生成された前記電子及び前記正孔のうち、特定のエネルギーを有する前記電子及び前記正孔の通過を許容するキャリア選択移動部と、を有し、
前記キャリア選択移動部は、前記キャリア発生部の表面を覆うように配置され、
前記キャリア選択移動部は、前記キャリア発生部側から外側に向かって順に配置された、第1障壁層、量子井戸層、及び、第2障壁層を有することを特徴とする、光電変換素子。
【請求項2】
前記キャリア生成物質の形状が、粒子状又は線状であることを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg1、Ec1、及び、Ev1とし、
前記キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーを、それぞれ、Eg2、Ec2、及び、Ev2とし、
前記p型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg3、Ec3、及び、Ev3とし、
前記n型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg4、Ec4、及び、Ev4とするとき、
Eg1<Eg2<Eg3、且つ、Eg1<Eg2<Eg4、且つ、Ec1≦Ec4≦Ec2<Ec3、且つ、Ev4<Ev2≦Ev3≦Ev1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg5、Ec5、及び、Ev5とし、
前記キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg6、Ec6、及び、Ev6とし、
前記p型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg7、Ec7、及び、Ev7とし、
前記n型半導体材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg8、Ec8、及び、Ev8とするとき、
Eg5<Eg6<Eg7、且つ、Eg5<Eg6<Eg8、且つ、Ec5≦Ec8≦Ec6<Ec7、且つ、Ev8<Ev5≦Ev6≦Ev7であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項5】
p層及びn層、前記p層と前記n層との間に配設されたキャリア生成膜、前記p層に接続された第1電極、並びに、前記n層に接続された第2電極を備え、
前記キャリア生成膜は、光を吸収して電子及び正孔を生じさせるキャリア発生部と、該キャリア発生部で生成された前記電子及び前記正孔のうち、特定のエネルギーを有する前記電子及び前記正孔の通過を許容するキャリア選択移動部と、を有し、
前記キャリア発生部は、一対の前記キャリア選択移動部の間に配設され、
前記キャリア選択移動部は、前記キャリア発生部側から外側に向かって順に積層された、第1障壁層、量子井戸層、及び、第2障壁層を有し、
前記p層及び前記n層が複数備えられ、
少なくとも複数の前記p層に接続された正孔移動部、及び、少なくとも複数の前記n層に接続された電子移動部が、前記キャリア生成膜の側面に設けられていることを特徴とする、光電変換素子。
【請求項6】
前記キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg11、Ec11、及び、Ev11とし、
前記キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯における最低離散準位のエネルギーを、それぞれ、Eg12、Ec12、及び、Ev12とし、
前記p層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg13、Ec13、及び、Ev13とし、
前記n層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg14、Ec14、及び、Ev14とするとき、
Eg11<Eg12<Eg13、且つ、Eg11<Eg12<Eg14、且つ、Ec11≦Ec14≦Ec12<Ec13、且つ、Ev14<Ev12≦Ev13≦Ev11であることを特徴とする、請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記キャリア発生部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれEg15、Ec15、及び、Ev15とし、
前記キャリア選択移動部を構成する材料の、バンドギャップ、伝導帯における最低離散準位のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg16、Ec16、及び、Ev16とし、
前記p層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg17、Ec17、及び、Ev17とし、
前記n層の、バンドギャップ、伝導帯下端のエネルギー、及び、価電子帯上端のエネルギーを、それぞれ、Eg18、Ec18、及び、Ev18とするとき、
Eg15<Eg16<Eg17、且つ、Eg15<Eg16<Eg18、且つ、Ec15≦Ec18≦Ec16<Ec17、且つ、Ev18<Ev15≦Ev16≦Ev17であることを特徴とする、請求項5に記載の光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26493(P2013−26493A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160779(P2011−160779)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(510313603)インペリアル イノベーションズ リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL INNOVATIONS LIMITED
【Fターム(参考)】