説明

光電変換装置の製造方法及びそれに用いられる塗布装置

【課題】光電変換装置の組み立ての封止工程で用いる封止樹脂中の気泡を除去する。
【解決手段】母材基板30上に複数の太陽電池セルSCが配置されたモジュールを支持可能なヒートステージ41と、ヒートステージ41上に配置され、かつヒートステージ41に搭載された複数の太陽電池セルSC上にウレタン樹脂を塗布するスリットコータヘッド42と、ヒートステージ41上に配置され、かつ太陽電池セルSC上に塗布された前記ウレタン樹脂を加熱する赤外線ヒータ43とを有し、光電変換装置の組み立ての封止工程で、太陽電池セルSC上に塗布した前記ウレタン樹脂を赤外線ヒータ43で加熱することにより、前記ウレタン樹脂中の気泡を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置の製造技術及び塗布装置技術に関し、特に、樹脂を用いた光電変換装置の封止工程に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−157652号公報(特許文献1)には、基材上に、単又は複数枚の太陽電池素子をウレタン樹脂によって封入し、ウレタン樹脂側を受光面とすることを基本とする太陽電池パネルの構造とその組み立てについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−157652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光電変換装置である太陽電池モジュールや太陽電池パネルには、結晶シリコン系(単結晶または多結晶)、薄膜アモルファス・微結晶シリコン系、CIS(銅インジウムセレナイド)系・CIGS(二セレン化銅インジウムガリウム)系等の化合物系や色素増感・有機薄膜系等がある。
【0005】
これらの太陽電池モジュールや太陽電池パネルの一般的な構造としては、配線材によって複数の太陽電池セル(太陽電池素子ともいう)を半田付けして接続した構造体を、ガラス基板上にEVA樹脂(エチレンビニルアセテート)によって封入し、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)シートによって裏面をシールしたものが知られている。
【0006】
前述の太陽電池モジュールや太陽電池パネルの構造を組み立てるのには、まず、ガラス基板上に架橋前のEVAシートを載せ、その上に前記複数の太陽電池セルから成る構造体を載せ、さらにその上に架橋前のEVAシートを載せ、最後にPETシートでカバーした積層物を形成する。
【0007】
次に、この積層物を加熱しながら真空ラミネートによって一体化する。真空ラミネート中に加熱されて流動化したEVA樹脂によって前記複数の太陽電池セルから成る構造体全体が一体封入される。このように一体封入された積層物を再度加熱し、架橋処理を施すことで組み立て完了となる。
【0008】
前述の太陽電池モジュールや太陽電池パネルの組み立てでは、前記特許文献1(特開2010−157652号公報)に記載されているように、真空ラミネートという手法を用いることによる生産性の問題と、ガラス基板を用いることによる重量の問題、さらにコストの問題が存在している。特に生産性においてはシート1枚当たりにかかる時間が長いため、タクトタイムがかかることが問題となる。
【0009】
そこで、本発明者は、シート状の封入材や真空ラミネートを用いた手法の代わりとして、前記特許文献1(特開2010−157652号公報)に記載されているような、樹脂塗布で封止(封入)を行う方法についてさらに検討した結果、以下のような課題を見出した。
【0010】
すなわち、太陽電池セル上に液状の樹脂を塗布すると、塗布後の樹脂に気泡が含まれていることが分かった。この気泡は、塗布する樹脂(例えば、2液混合樹脂)の原液中に元から含まれているものや、樹脂がヘッド部(ノズル)から吐出された際に巻き込んで含まれるもの等である。このように塗布後の樹脂に気泡が含まれていることが課題である。
【0011】
また、太陽電池パネルや太陽電池モジュールでは、受光面上に気泡が存在すると、樹脂の劣化及び剥離現象起因によって発電効率が低下することが課題であり、さらに、外観的にも気泡が見えることは好ましくない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電変換装置の組み立ての封止工程で用いる封止樹脂中の気泡を除去することができる技術を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、光電変換装置の封止用コストの低減化を図ることができる技術を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、光電変換装置における発電効率の低下を抑制することができる技術を提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0017】
代表的な実施の形態による光電変換装置の製造方法は、(a)光電変換層と、前記光電変換層の第1面に設けられた第1電極と、前記光電変換層の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極とを有する光電変換装置本体を形成する工程と、(b)母材基板上における前記光電変換装置本体の前記第1面上に樹脂を塗布し、前記光電変換装置本体を前記樹脂で覆って光電変換装置を形成する工程と、を有している。さらに、前記(b)工程において、前記第1面と対向して配置された加熱部によって前記第1面上に塗布した前記樹脂を加熱するものである。
【0018】
また、代表的な実施の形態による塗布装置は、光電変換層と、前記光電変換層の第1面に設けられた第1電極と、前記光電変換層の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極とを有する光電変換装置本体を支持可能なステージと、を有している。さらに、前記ステージ上に配置され、前記ステージに搭載された前記光電変換装置本体の前記第1面に樹脂を塗布するヘッド部と、前記ステージ上に配置され、前記光電変換装置本体の前記第1面に塗布された前記樹脂を加熱する加熱部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0020】
光電変換装置における封止用の樹脂中の気泡を除去することができる。
【0021】
また、光電変換装置の組み立てにおける封止用コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1の光電変換装置の構造の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法によって製造される太陽電池セルの構造の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す太陽電池セルの表面側の電極レイアウトの一例を示す平面図である。
【図4】図2に示す太陽電池セルの裏面側の電極レイアウトの一例を示す裏面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法におけるストリング工程終了後の構造の一例を示す平面図である。
【図6】図5に示す配線に沿って切断した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法のレイアップ工程における太陽電池セルのマトリクス配置状態の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法のレイアップ工程における基板搭載後の構造の一例を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造の一例を模式的に示す概略図である。
【図10】図9に示す塗布装置に設けられた赤外線ヒータから放射される赤外線の波長の範囲の一例を示す波長範囲図である。
【図11】図9に示す塗布装置の赤外線ヒータから放射される赤外線の放射特性の一例を示す特性図である。
【図12】図9に示す塗布装置で用いられるウレタンの赤外線吸収特性の一例を示す特性図である。
【図13】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の詳細構造の一例を示す斜視図である。
【図14】図13に示す塗布装置の塗布動作の手順の一例を示すフロー図である。
【図15】本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる樹脂の塗布後の硬化処理における硬化特性の一例を示す特性図である。
【図16】本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造(光密度:大)の一例を模式的に示す概略図である。
【図17】本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造(光密度:小)の一例を模式的に示す概略図である。
【図18】本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる変形例の塗布装置の主要部の基本構造を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0024】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0025】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0026】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0027】
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0029】
また、以下の実施の形態では、本発明により製造される太陽電池パネルや太陽電池モジュール等の光電変換装置の適用例として、本願発明者が具体的に検討した単結晶シリコン系または多結晶シリコン系の太陽電池を取り上げて詳しく説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の光電変換装置の構造の一例を示す断面図である。また、図2は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法によって製造される太陽電池セルの構造の一例を示す斜視図、図3は図2に示す太陽電池セルの表面側の電極レイアウトの一例を示す平面図、図4は図2に示す太陽電池セルの裏面側の電極レイアウトの一例を示す裏面図である。
【0031】
図1に示す本実施の形態1の光電変換装置について説明する。
【0032】
図1に示す光電変換装置34は、太陽電池パネルもしくは太陽電池モジュール等であり、母材基板30上に、電気的に接続された複数枚の太陽電池セル(光電変換装置本体)SCを配置し、これら複数の太陽電池セルSCが樹脂から成る封止部33によって封止(封入)され、樹脂側を受光面としている。なお、封止部33は、例えば、後述する封止用の樹脂であるウレタン樹脂60(図9参照)から形成されている。さらに、母材基板30は、例えば、ガラスエポキシ基板である。
【0033】
また、複数枚の太陽電池セルSCは、めっき配線31によって直列で電気的に接続されており、めっき配線31の両端は、取り出し電極31aとして母材基板30の裏面側に取り出されている。なお、裏面側への取り出しは、母材基板30の貫通孔30aを介して母材基板30の裏面側に取り出されている。
【0034】
したがって、貫通孔30aの内部にも樹脂が充填されている。
【0035】
また、めっき配線31は、例えば、半田めっきが施された半田めっき銅配線である。
【0036】
なお、太陽電池セルSCの裏面側にも樹脂が回り込むように、シリコーン樹脂等のスペーサ32によって母材基板30と太陽電池セルSCとの間に隙間が形成されている。
【0037】
次に、図2〜図4を用いて本実施の形態1の光電変換装置34を形成する太陽電池セルSCの構造について説明する。
【0038】
図2に示すように、本実施の形態1の太陽電池セルSCは、表面(第1面)1a、表面1aの反対側に位置する図4に示す裏面(第2面)1b及び表面1aと裏面1bの間に形成された太陽電池本体(pn接合部)を備えた基板(半導体基板であり、光電変換層)1を有している。基板1は、例えば単結晶シリコンまたは多結晶シリコン(以下、単にシリコン結晶と呼ぶ)に第1不純物濃度で第1導電型(例えばp型)とするための不純物がドープされた半導体層(p型半導体層)2を有している。
【0039】
また、半導体層2の表面1a側には、シリコン結晶に第1導電型とは反対の第2導電型(例えばn型)とするための不純物がドープされた半導体層(n型半導体層)3が形成されている。太陽電池セルSCでは、この半導体層2、3のpn接合部で光起電力効果を利用して入力光から電力を発生させる。つまり、半導体層2、3のpn接合部は太陽電池本体を構成する。
【0040】
また、半導体層3の表面1a側には、反射抑制膜、あるいは保護膜として機能する絶縁膜4が形成されている。この絶縁膜4は、例えば窒化珪素(Si3)から成り、受光面である表面1a側から半導体層2、3に向かって入射した光が反射することを抑制する機能を有している。したがって、半導体層3の表面1a側の面を絶縁膜4で覆うことにより、入射光のエネルギーをpn接合部で効率的に吸収することができる。
【0041】
また、絶縁膜4は、半導体層3を、例えば汚染などから保護するパッシベーション膜として機能する。したがって、半導体層3の表面1a側の面を絶縁膜4で覆うことにより、半導体層3の汚染や損傷を防止ないしは抑制することができる。
【0042】
一方、半導体層2の裏面1b側には、前記第1不純物濃度よりも高い第2不純物濃度で第1導電型(例えばp型)の不純物がドープされた半導体層(p+ 型半導体層、逆電界領域)5が形成されている。なお、半導体層5は、半導体層5の裏面1b側に形成された面電極20aに含まれる例えばアルミニウムが熱拡散により半導体層2に分散することで形成される。この半導体層5は、pn接合部で発生したキャリアが裏面1bで再結合により焼失することを抑制するための逆電界領域であり、BSF(Back Surface Field)層と呼ばれる。
【0043】
また、基板1の表面1aには表面電極(第1電極)10が、基板1の裏面1bには裏面電極(第2電極)20がそれぞれ形成されている。表面電極10には、ある方向(例えば図2、図3ではY方向)に沿って延びる複数(多数)のフィンガ電極(電極、電極配線)10aと、フィンガ電極10aが延びる方向と交差(直交)する方向(例えば図2、図3ではX方向)に沿って延びるバス電極10bを含んでいる。
【0044】
フィンガ電極10aは、裏面電極20との間で発生した電力を取り出すための電極であって、図3に示すように表面1a全体に分布するように略等間隔で配置されている。一方、バス電極10bはフィンガ電極10aが取り出した電力を集約して外部に伝送するための集合配線(集合電極)であって、図3に示すように、複数のフィンガ電極10aと接続され、フィンガ電極10aよりも太い線幅で形成されている。
【0045】
一方、裏面電極20には、ある方向(例えば図2、図4ではX方向)に沿って延びる複数(図4では3個)の面電極20aと、複数の面電極20aの間に配置され、面電極20aと同じ方向(例えば図2、図4ではX方向)に沿って延びるバス電極20bを含んでいる。面電極20aは、複数のフィンガ電極10aとの間で発生した電力を取り出すための電極であって、図4に示すようにバス電極20bが配置された領域を除き、裏面1bの全体を覆うように配置されている。
【0046】
また、バス電極20bは面電極20aが取り出した電力を集約して外部に伝送するための集合配線(集合電極)であって、図4に示すように複数の面電極20aと接続され、フィンガ電極10a(図3参照)よりも太い線幅で形成されている。
【0047】
このように太陽電池セルSCは、受光面である表面1a側から受光し、その光のエネルギーをpn接合部で吸収して電力を生成する。言い換えれば、光エネルギーを電気的エネルギーに変換する。そして、生成した電力を表面電極10、裏面電極20を介して取り出して、外部に伝送する。そして図示は省略するが、複数の太陽電池セルSCを直列、あるいは並列で接続して、モジュール化することにより、必要な電力を得ることができる。
【0048】
したがって、光(例えば太陽光)の入射量を増加させる観点から、受光面である表面1aにおいて表面電極10から露出する面積を増やす事が好ましい。表面電極10は例えば銀(Ag)から成り、表面電極10に照射された光は反射され易く表面電極10の占有面積が増加すると、入射光の量は減少する。このため、表面1a上における表面電極10の占有面積を低減させる必要がある。一方、フィンガ電極10aは前記したように裏面電極20との間で発生した電力を取り出す電極なので、表面1a全体に分布させることで、各pn接合部で発生した電力を効率的に取り出すことができる。
【0049】
次に、本実施の形態1の光電変換装置の製造方法について説明する。
【0050】
図5は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法におけるストリング工程終了後の構造の一例を示す平面図、図6は図5に示す配線に沿って切断した断面図、図7は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法のレイアップ工程における太陽電池セルのマトリクス配置状態の一例を示す平面図、図8は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法のレイアップ工程における基板搭載後の構造の一例を示す平面図である。
【0051】
まず、図2〜図4に示すような太陽電池セル(光電変換装置本体)SCを複数形成する。すなわち、光電変換層である基板1と、基板1の表面(第1面)1aに設けられた表面電極(第1電極)10と、基板1の表面1aと反対側の裏面(第2面)1bに設けられた裏面電極(第2電極)20とを有する太陽電池セル(光電変換装置本体)SCを複数形成して準備する。
【0052】
次に、図5及び図6に示すストリング工程を実施する。ここでは、各太陽電池セルSCに半田めっきの銅線であるめっき配線31を半田付けし、その後、太陽電池セルSC同士を半田付けして電気的に接続する。
【0053】
次に、図7及び図8に示すレイアップ工程を実施する。ここでは、ストリング工程で形成した太陽電池セルSCの構造体(この構造体をストリングともいう)を、図7に示すようにマトリクス状に整列配置する。
【0054】
続いて、マトリクス状に整列配置された太陽電池セルSC(ストリング)を直列に電気的に接続する。さらに、母材基板30の所定位置にスペーサ32(図1参照)を配置した後、図8に示すように、直列に接続された太陽電池セルSC(ストリング)を母材基板30上に搭載し、母材基板30の貫通孔30aに各取り出し電極31aを配置して母材基板30の裏面側に各取り出し電極31aを取り出しておく。
【0055】
次に、封止(封入)工程を実施する。
【0056】
図9は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造の一例を模式的に示す概略図、図10は図9に示す塗布装置に設けられた赤外線ヒータから放射される赤外線の波長の範囲の一例を示す波長範囲図、図11は図9に示す塗布装置の赤外線ヒータから放射される赤外線の放射特性の一例を示す特性図、図12は図9に示す塗布装置で用いられるウレタンの赤外線吸収特性の一例を示す特性図である。また、図13は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の詳細構造の一例を示す斜視図、図14は図13に示す塗布装置の塗布動作の手順の一例を示すフロー図、図15は本発明の実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる樹脂の塗布後の硬化処理における硬化特性の一例を示す特性図である。
【0057】
封止工程では、各太陽電池セルSCの表面1a上に樹脂を塗布し、各太陽電池セルSCを前記樹脂で覆って太陽電池モジュールや太陽電池パネル等の光電変換装置34を形成する。
【0058】
ここで、封止工程で用いられる塗布装置について説明する。図9は前記塗布装置であるスリットコータ装置40の基本構成を示しており、スリットコータ装置40は、基本構成として、複数の太陽電池セルSCが母材基板30上で電気的に接続された構造体(モジュール)を支持可能なヒートステージ(ステージ、第1加熱部)41と、ヒートステージ41上に配置され、かつヒートステージ41に搭載された複数の太陽電池セルSCそれぞれの表面1aに樹脂を塗布するスリットコータヘッド(ヘッド部)42と、ヒートステージ41上に配置され、かつ複数の太陽電池セルSCそれぞれの表面1aに塗布された前記樹脂を上方から加熱する加熱部(第2加熱部)とを備えている。ヒートステージ41は、ヒータ機能を備えたステージである。
【0059】
すなわち、本実施の形態1のスリットコータ装置40は、各太陽電池セルSCの表面1a上に塗布した前記樹脂を、表面1aと対向して配置された前記加熱部によって上方から加熱することが可能になっており、前記加熱部によって塗布後の前記樹脂を加熱することで、前記樹脂中に含まれる気泡60aを除去(脱泡)することが可能なものである。
【0060】
なお、本実施の形態1では、前記加熱部(第2加熱部)が、前記樹脂に赤外線43aを放射して加熱する赤外線ヒータ43の場合を一例として説明する。赤外線ヒータ43から樹脂と逆方向に放射された赤外線43aは、赤外線43aの上方に設置された反射板44aで反射して樹脂に照射される構造となっている。
【0061】
また、本実施の形態1では、複数の太陽電池セルSCを覆う樹脂、すなわちスリットコータ装置40のスリットコータヘッド42から吐出される液状の前記樹脂が、熱硬化性樹脂であり、透明で、かつ耐水性、耐光性、UV(Ultraviolet)に対する耐劣化性がそれぞれ高い樹脂が好ましく、前記熱硬化性樹脂がウレタン樹脂60の場合を一例として説明する。
【0062】
したがって、図9に示す基本構成によるスリットコータ装置40では、スリットコータヘッド42から吐出された液状のウレタン樹脂60を赤外線ヒータ43により短時間、かつ高温で加熱することで、ウレタン樹脂60中に含まれる気泡60aを除去(脱泡)することができる。
【0063】
ここで、加熱部として赤外線ヒータ43を用いる理由について説明する。
【0064】
図10は、各種光線の一般的な波長区分を示すものであり、赤外線43aの波長は、0.8μm〜1000μmの範囲であり、可視光線よりも長く、マイクロ波より短い。
【0065】
また、本実施の形態1の塗布装置に設けられる赤外線ヒータ43は、図11の放射特性に示すように、平均放射率0.85となっている。
【0066】
さらに、図12に示す光照射によるポリウレタンの吸光率のデータでは、図中A部,B部,C部,D部及びE部に示すように波長3〜8μmの範囲で光を良く吸収しているのが分かる。
【0067】
このことから、図11における波長3〜8μmの範囲をおおよそ吸光範囲とすると、本実施の形態1の赤外線ヒータ43の放射特性も特に問題なく、また、前述の赤外線43aの波長の範囲、0.8μm〜1000μmの範囲にも問題なく入っている。
【0068】
すなわち、本実施の形態1の赤外線ヒータ43は、ウレタン樹脂60の吸光範囲に対しても特に問題がなく、ウレタン樹脂60を使用する上でも十分な吸光条件が揃っており、したがって、赤外線ヒータ43を用いている。
【0069】
ただし、塗布後の樹脂を加熱する加熱部は、赤外線ヒータ43以外の加熱手段を用いても良いことは言うまでもない。
【0070】
次に、図13に示す本実施の形態1のスリットコータ装置40の詳細構造の一例について説明する。なお、図13に示すスリットコータ装置40は、2液混合型の塗布装置である。本実施の形態1では、2液中、一方がウレタン樹脂原液(第1液、主剤)で、他方が硬化剤(第2液)の場合を説明する。
【0071】
スリットコータ装置40は、装置架台47と、装置架台47上に設けられたヒートステージ41と、ヒートステージ41上に配置されるスリットコータヘッド42と、スリットコータヘッド42の近傍に設置された赤外線ヒータ43と、スリットコータヘッド42が下面に取り付けられたヘッドブロック44と、ヘッドブロック44上に設けられたスタティックミキサー46と、ヘッドブロック44を支持する光密度調整部である支持ブロック45とを備えている。ヒートステージ41はヒータ41aが組み込まれたホットプレート型のステージであり、例えば、常温〜200℃程度の範囲の温度設定で加熱するものである。
【0072】
なお、図9に示す反射板44aは、例えば、ヘッドブロック44の前記下面等にスリットコータヘッド42とともに設けられていてもよい。
【0073】
また、支持ブロック45は、駆動用モータ49a,49bの駆動により上下動し、さらに駆動用モータ49cの駆動で、かつ移動用ブロック48及びガイドレール50の案内により、装置架台47上を母材基板30の長手方向に沿って移動する。
【0074】
また、スリットコータ装置40は、2液混合型の塗布装置であるため、スタティックミキサー46には洗浄液を加えた3つの液体の供給系が接続されている。
【0075】
すなわち、塗布用の樹脂の主剤(ウレタン樹脂原液)である第1液を供給する第1液供給系51と、塗布用の樹脂の硬化剤である第2液を供給する第2液供給系52とが接続され、これら第1液供給系51と第2液供給系52とにそれぞれ洗浄液の供給を行う洗浄液供給系53が接続されている。
【0076】
なお、第1液供給系51には、第1液(ウレタン樹脂原液)を収容した第1タンク51aと、第1モータ51bの駆動により作動する第1ポンプ51cと、第1液の供給を制御する第1バルブ51dとが設けられ、一方、第2液供給系52にも、同様に、第2液(硬化剤)を収容した第2タンク52aと、第2モータ52bの駆動により作動する第2ポンプ52cと、第2液の供給を制御する第2バルブ52dとが設けられている。
【0077】
さらに、洗浄液供給系53には、洗浄液を収容した洗浄液タンク53aと、洗浄液の供給を制御するストップバルブ53bとが設けられ、第1液供給系51と第2液供給系52とにそれぞれ洗浄液供給系53が接続されている。
【0078】
これにより、樹脂塗布を行う際には、第1液供給系51から第1液であるウレタン樹脂原液をスタティックミキサー46に供給するとともに、第2液供給系52から第2液である硬化剤をスタティックミキサー46に供給し、これらの2液を混合して形成された塗布用の液状の樹脂であるウレタン樹脂60をスリットコータヘッド42に送り込み、その後、スリットコータヘッド42から各太陽電池セルSCに対してウレタン樹脂60を塗布(滴下)する。
【0079】
一方、スリットコータヘッド42等の洗浄を行う際には、第1液供給系51及び第2液供給系52からの供給を停止した状態で、洗浄液供給系53から洗浄液をスタティックミキサー46を介してスリットコータヘッド42等に供給してヘッドの洗浄を行う。
【0080】
次に、図14に示すスリットコータ装置40の樹脂の塗布手順について説明する。
【0081】
まず、ステップS1に示す基板投入を行う。すなわち、図13に示すスリットコータ装置40の加熱されたヒートステージ41上に、複数の太陽電池セルSCが搭載された母材基板30(モジュール)を搬入し、その後、ステップS2に示す基板位置決め/加熱を行う。ここでは、母材基板30をヒートステージ41上に搬入して位置決めを行い、さらにヒートステージ41によって母材基板30をその裏面側から加熱する。
【0082】
一方、樹脂供給系では、ステップS3に示す2液注入を行う。ここでは、第1液供給系51から主剤(ウレタン樹脂原液)をスタティックミキサー46に供給するとともに、第2液供給系52から硬化剤をスタティックミキサー46に供給する。
【0083】
その後、ステップS4に示す2液混合を行う。すなわち、スタティックミキサー46内で、主剤であるウレタン樹脂原液と硬化剤とを練り混ぜ(攪拌し)、この練り混ぜた塗布用の液状の樹脂であるウレタン樹脂60をスリットコータヘッド42に供給する。
【0084】
その後、ステップS5に示す1回目塗布を行う。
【0085】
ここでは、スリットコータヘッド42からウレタン樹脂60を母材基板30上の各太陽電池セルSC上に滴下する。その際、ヘッドブロック44ごとスリットコータヘッド42を移動させて各太陽電池セルSC上にウレタン樹脂60を塗布する。
【0086】
その後、ステップS6に示す2回目塗布を行う。
【0087】
ここでも、1回目塗布と同様に、スリットコータヘッド42からウレタン樹脂60を母材基板30上の各太陽電池セルSC上に滴下する。このように2回に分けてウレタン樹脂60の塗布を行うことで、塗布後のウレタン樹脂60の液面の均一性を向上させることができる。
【0088】
その後、ステップS7に示す脱泡を行う。図9に示すように、スリットコータヘッド42から吐出されたウレタン樹脂60は塗布される際に気泡60aを巻き込んでおり、このウレタン樹脂60中に巻き込まれた気泡60aを瞬間的に加熱して取り除く。なお、ウレタン樹脂原液や硬化剤に元々気泡60aが含まれている場合もあり、このような気泡60aも含めて除去する。
【0089】
ここでは、各太陽電池セルSC上に塗布したウレタン樹脂60を、図9に示すように、赤外線ヒータ43によって加熱して脱泡する。すなわち、各太陽電池セルSC上に塗布されたウレタン樹脂60に対して、赤外線ヒータ43から放射される赤外線43aを照射してウレタン樹脂60を加熱し、これによって、ウレタン樹脂60中に含まれる気泡60aを除去する。
【0090】
なお、脱泡における加熱温度は、例えば、数百℃以上、好ましくは600℃以上あるいは数千℃であり、加熱時間は、例えば、数秒程度である。この場合、例えば、赤外線ヒータ43の設定温度を数百℃以上、好ましくは600℃以上あるいは数千℃とし、この設定温度に調節された赤外線ヒータ43から放射される赤外線43aを数秒間程度ウレタン樹脂60に照射して、瞬間的にウレタン樹脂60を高温に加熱することで気泡60aを除去する。
【0091】
ここで、ウレタン樹脂60は、加熱されるとその粘度が低下するのと同時に気泡60aの大きさが大きくなるため、泡は弾かれ易くなる。したがって、塗布後のウレタン樹脂60を瞬間的に加熱してその粘度を下げて気泡60aを弾き易くし、ウレタン樹脂60中から気泡60aを弾き出して取り除く(気泡60aを抜く)。
【0092】
なお、脱泡のための加熱は、数秒程度(例えば2、3秒程度)と非常に短い時間であるため、熱硬化性樹脂であるウレタン樹脂60が硬化することはない。すなわち、脱泡のための加熱で、ウレタン樹脂60の硬化温度を超えた温度まで加熱してもその際の加熱時間が短ければウレタン樹脂60が硬化することはない。
【0093】
脱泡完了後、ステップS8に示す樹脂硬化を行う。
【0094】
ここでは、脱泡後のウレタン樹脂60を再度加熱(ベーク)して硬化させる。硬化のための加熱温度は、例えば、30〜80℃で、加熱時間は、例えば、数分〜数十分、好ましくは30分程度である。なお、樹脂硬化工程でのウレタン樹脂60の加熱(ベーク)は、ヒートステージ41によって行う。
【0095】
すなわち、本実施の形態1の光電変換装置34の組み立てでは、脱泡のための加熱処理と、脱泡後の樹脂硬化のための加熱処理とを行っており、両工程では、加熱温度及び加熱時間が全く異なっている。
【0096】
ここで、図15は、スリットコータ装置40によるウレタン樹脂60の塗布の時間(2分)と、ベーク(脱泡後の硬化のための加熱)の時間(30分)と、ウレタン樹脂60を硬化させるための時間(24時間)と、それぞれの温度との関係を示しており、脱泡のための数秒程度の加熱は、塗布における2分の中で行っている。
【0097】
以上により、ステップS7の脱泡におけるウレタン樹脂60の加熱温度は、ステップS8の樹脂硬化におけるウレタン樹脂60の加熱温度より遥かに高く、さらに、ステップS7の脱泡におけるウレタン樹脂60の加熱時間は、ステップS8の樹脂硬化におけるウレタン樹脂60の加熱時間より遥かに短い。
【0098】
つまり、本実施の形態1の光電変換装置34の組み立てでは、脱泡のための加熱温度と、樹脂硬化のための加熱温度が全く異なっており、脱泡のための加熱温度は樹脂硬化の加熱温度に比べて遥かに高いため、スリットコータ装置40に脱泡用の赤外線ヒータ(加熱部、第2加熱部)43を設けたことで、塗布後の脱泡のための樹脂加熱は赤外線ヒータ43で行い、一方、脱泡後の硬化のための樹脂加熱はヒートステージ(第1加熱部)41で行っている。
【0099】
樹脂硬化終了後、ステップS9に示す乾燥/ベークを行ってウレタン樹脂60を含むワークを乾燥させることで、各太陽電池セルSCを覆う図1に示すような封止部33の形成を終える。
【0100】
その後、ステップS10の基板払い出しにより、封止(封入)工程を完了する。
【0101】
その後、必要に応じてフレーム取り付け、裏面側端子組み付け及び検査を行って図1に示す光電変換装置(太陽電池パネルもしくは太陽電池モジュール)34の組み立て完了となる。
【0102】
本実施の形態1の光電変換装置34の製造方法及びスリットコータ装置40によれば、光電変換装置34の組み立ての封止工程で、各太陽電池セルSCの表面1a上に塗布したウレタン樹脂60を加熱することにより、ウレタン樹脂60の粘度を下げることができるのと同時にウレタン樹脂60中の気泡60aの大きさを大きくして気泡60aをはじき易くすることができる。
【0103】
これにより、塗布後のウレタン樹脂60中の気泡60aを除去することができる。
【0104】
なお、太陽電池パネルや太陽電池モジュール等の光電変換装置34では、太陽電池セルSCの受光面(表面1a)上に気泡60aが存在すると、樹脂の劣化及び剥離現象起因によって発電効率が低下することがあるため、塗布後のウレタン樹脂60中の気泡60aを除去することで、発電効率の低下を抑制することができる。
【0105】
また、塗布後のウレタン樹脂60中の気泡60aを除去することで、光電変換装置34の外観品質を向上させることができる。
【0106】
また、スリットコータ装置40を用いて封止を行うことで、真空装置や真空設備は使用しないため、封止用コストの低減化を図ることができる。
【0107】
また、母材基板30にガラスエポキシ基板を用い、ウレタン樹脂60のみで各太陽電池セルSCを覆うことがてきるため、太陽電池モジュールや太陽電池パネル等の光電変換装置34の軽量化を図ることができる。
【0108】
さらに、塗布用の樹脂として、ウレタン樹脂60を用いることで封止用コストの更なる低減化を図ることができる。
【0109】
また、本実施の形態1の光電変換装置34の組み立てでは、脱泡のための加熱温度と、樹脂硬化のための加熱温度が全く異なっており、脱泡のための加熱温度は樹脂硬化の加熱温度に比べて遥かに高いため、スリットコータ装置40のヒートステージ41の上方に脱泡用の赤外線ヒータ(加熱部、第2加熱部)43を設けたことで、塗布後の脱泡のための樹脂加熱を赤外線ヒータ43で行い、一方、脱泡後の硬化のための樹脂加熱をヒートステージ(第1加熱部)41で行うことができる。
【0110】
これにより、脱泡のための樹脂加熱と硬化のための樹脂加熱を別々の加熱手段(第2加熱部/第1加熱部)で行うことができ、スリットコータ装置40を大型化させることなく、かつ脱泡と硬化とで加熱温度の大幅な違いにもヒータ温度の昇降温調整に無駄な時間を費やすことなく脱泡と硬化の処理をスループットを低下させずに行うことができる。
【0111】
なお、本実施の形態1の光電変換装置34の組み立てにおいてその脱泡工程でのウレタン樹脂60の加熱温度は、好ましくは600℃以上であるが、この脱泡時の加熱温度を、例えば、数百℃とし、赤外線ヒータ43の単位照射時間を調整することで、脱泡に加えてウレタン樹脂60の表面を、ハンドリング可能な程度に仮硬化させる効果が期待できる。
【0112】
すなわち、600℃より低い数百℃の温度でウレタン樹脂60を加熱して脱泡を行うことで、ウレタン樹脂60をハンドリング可能な程度に硬化させることができるものと考えられ、この場合、脱泡工程後、脱泡済みのワークを次工程に搬送させることも可能になり、光電変換装置34の生産性を高めることに繋げることもできる。
【0113】
(実施の形態2)
図16は本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造(光密度:大)の一例を模式的に示す概略図、図17は本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる塗布装置の主要部の基本構造(光密度:小)の一例を模式的に示す概略図、図18は本発明の実施の形態2の光電変換装置の製造方法の封止工程で用いられる変形例の塗布装置の主要部の基本構造を模式的に示す概略図である。
【0114】
本実施の形態2の塗布装置は、実施の形態1と同様のスリットコータ装置40であるが、図16及び図17に示すスリットコータ装置40は、赤外線ヒータ43から放射される赤外線43aを集光する機能と、かつ前記集光による赤外線43aの光密度の大小を予め調整可能なように可変式にする(可変し得る)機能とを備えたものである。
【0115】
すなわち、赤外線43aを集める集光部として反射板44bを設置し、この反射板44bの曲がり具合が、放射された赤外線43aをウレタン樹脂60上付近で集光するような角度に調節されている。さらに、赤外線43aの集光による光密度を可変する光密度調整部を支持ブロック45が兼ねている。
【0116】
図16及び図17に示す構造では、赤外線ヒータ43が、例えば、ヒートステージ41と赤外線ヒータ43の距離を調整可能なように上下動自在に支持ブロック45に支持されており、支持ブロック45に対してリニアガイド方式で取り付けられている。
【0117】
したがって、例えば、図16に示すように、支持ブロック45によって赤外線ヒータ43を上方に移動させることで、赤外線ヒータ43のウレタン樹脂60付近での照射幅Lを狭くして光密度を大きくすることができ、一方、図17に示すように、支持ブロック45によって赤外線ヒータ43を下方に移動させることで、赤外線ヒータ43のウレタン樹脂60付近での照射幅Mを広くして光密度を小さくすることができる。
【0118】
このようにウレタン樹脂60に照射する光密度を可変式にすることで、脱泡工程での樹脂の加熱温度を種々設定することができる。
【0119】
なお、図16及び図17に示すスリットコータ装置40においても、スリットコータヘッド42や反射板44bは、例えば、ヘッドブロック44の下面等に取り付けられている。
【0120】
また、本実施の形態2のスリットコータ装置40は、実施の形態1の光電変換装置の製造方法の封止工程に適用可能であることは言うまでもなく、本実施の形態2のスリットコータ装置40を適用した場合でも、実施の形態1のスリットコータ装置40と同様の効果を得ることができる。
【0121】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0122】
例えば、前記実施の形態1では、光電変換装置の製造方法の封止工程においてスリットコータ装置40でウレタン樹脂60を2回塗布する場合を説明したが、1回の塗布でウレタン樹脂60の液面の均一性を確保することができる場合は、1回のみの塗布動作としてもよい。
【0123】
また、図18の変形例は、スリットコータ装置40において、赤外線43aを集める集光部として、図16に示すような反射板44bを用いるのではなく、赤外線ヒータ43とウレタン樹脂60との間の位置にレンズ54を配置し、このレンズ54によって赤外線43aの集光を行うものである。例えば、シリンドリカルレンズ等のレンズ54を用いることで、ウレタン樹脂60付近に赤外線43aを集光させることができ、図18に示す変形例のスリットコータ装置40においても、図16及び図17に示すスリットコータ装置40と同様の効果を得ることができる。
【0124】
また、前記実施の形態1、2では、スリットコータ装置(塗布装置)40が2液混合型の場合について説明したが、スリットコータ装置40は、単液(1液)塗布型であってもよく、さらに3液以上の複数の樹脂を混合して塗布するタイプであってもよい。
【0125】
また、前記塗布装置はスリットコータ装置に限定されるものではなく、スリットコータ装置以外の塗布装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、例えば、光電変換装置や光電変換装置を組み込んだ電気製品に幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 基板(光電変換層)
1a 表面(第1面)
1b 裏面(第2面)
2,3 半導体層
4 絶縁膜
5 半導体層
10 表面電極(第1電極)
10a フィンガ電極
10b バス電極
20 裏面電極(第2電極)
20a 面電極
20b バス電極
30 母材基板
30a 貫通孔
31 めっき配線
31a 取り出し電極
32 スペーサ
33 封止部
34 光電変換装置(太陽電池パネル、太陽電池モジュール)
40 スリットコータ装置(塗布装置)
41 ヒートステージ(ステージ、第1加熱部)
41a ヒータ
42 スリットコータヘッド(ヘッド部)
43 赤外線ヒータ(加熱部、第2加熱部)
43a 赤外線
44 ヘッドブロック
44a 反射板
44b 反射板(集光部)
45 支持ブロック(光密度調整部)
46 スタティックミキサー
47 装置架台
48 移動用ブロック
49a,49b,49c 駆動用モータ
50 ガイドレール
51 第1液供給系
51a 第1タンク
51b 第1モータ
51c 第1ポンプ
51d 第1バルブ
52 第2液供給系
52a 第2タンク
52b 第2モータ
52c 第2ポンプ
52d 第2バルブ
53 洗浄液供給系
53a 洗浄液タンク
53b ストップバルブ
54 レンズ
60 ウレタン樹脂(樹脂)
60a 気泡
SC 太陽電池セル(光電変換装置本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光電変換層と、前記光電変換層の第1面に設けられた第1電極と、前記光電変換層の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極とを有する光電変換装置本体を形成する工程と、
(b)母材基板上における前記光電変換装置本体の前記第1面上に樹脂を塗布し、前記光電変換装置本体を前記樹脂で覆って光電変換装置を形成する工程と、
を有し、
前記(b)工程において、前記第1面と対向して配置された加熱部によって前記第1面上に塗布した前記樹脂を加熱することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記加熱部として、赤外線ヒータを用いることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記赤外線ヒータから放射される赤外線を集光し、前記集光による光密度を可変し得ることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(b)工程の後、さらに
(c)前記樹脂を加熱して前記樹脂を硬化させる工程を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(b)工程での前記樹脂の加熱温度は、前記(c)工程での前記樹脂の加熱温度より高いことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記(b)工程での前記樹脂の加熱時間は、前記(c)工程での前記樹脂の加熱時間より短いことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の光電変換装置の製造方法において、
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項8】
光電変換層と、前記光電変換層の第1面に設けられた第1電極と、前記光電変換層の前記第1面と反対側の第2面に設けられた第2電極とを有する光電変換装置本体を支持可能なステージと、
前記ステージ上に配置され、前記ステージに搭載された前記光電変換装置本体の前記第1面に樹脂を塗布するヘッド部と、
前記ステージ上に配置され、前記光電変換装置本体の前記第1面に塗布された前記樹脂を加熱する加熱部と、
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項8に記載の塗布装置において、
前記加熱部は、赤外線ヒータであることを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
請求項9に記載の塗布装置において、
前記赤外線ヒータから放射される赤外線を集光する集光部と、
前記ステージと前記赤外線ヒータの距離を調整して前記集光による光密度を可変する光密度調整部と、
を有することを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−77707(P2013−77707A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216856(P2011−216856)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】