説明

光電変換装置

【課題】 光電変換装置の光電変換効率を向上させる。
【解決手段】 光電変換装置11は、基板1と、基板1上に互いに間隔をあけて設けられた第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bと、第1の下部電極層2a上に設けられた第1の導電型を有する第1の半導体層3と、第1の半導体層3上に設けられた第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の半導体層4と、第2の下部電極層2bおよび第2の半導体層4を電気的に接続する接続導体7と、第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bの間に介在する絶縁部材6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光電変換セルが電気的に接続された光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電などに使用される光電変換装置として、基板の上に複数の光電変換セルが設けられたものがある(例えば、特許文献1など)。
【0003】
このような光電変換装置は、ガラスなどの基板の上に、金属電極などの下部電極層と、光吸収層と、バッファ層と、透明導電膜とを、この順に積層した光電変換セルが、平面的に複数並設されて構成されている。複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの透明導電膜と他方の下部電極層とが接続導体で接続されることで、電気的に直列接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−299486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電変換装置には光電変換効率の向上が常に要求される。上記光電変換装置において、光電変換効率を高める1つの方法として、下部電極層間の間隔を小さくして光電変換に寄与する部位の面積を高めることが考えられる。しかし、下部電極層間の間隔を小さくすると隣接する下部電極層間でリーク電流が生じやすく、十分に光電変換効率を高めることが困難である。
【0006】
本発明の一つの目的は、光電変換装置の光電変換効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る光電変換装置は、基板と、該基板上に互いに間隔をあけて設けられた第1の下部電極層および第2の下部電極層と、前記第1の下部電極層上に設けられた第1の導電型を有する第1の半導体層と、該第1の半導体層上に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の半導体層と、前記第2の下部電極層および前記第2の半導体層を電気的に接続する接続導体と、前記第1の下部電極層および前記第2の下部電極層の間に介在する絶縁部材とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隣接する下部電極層間のリーク電流を低減し、光電変換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】光電変換装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の光電変換装置の断面図である。
【図3】図1の光電変換装置の上面透視図である。
【図4】光電変換装置の実施の形態の他の例を示す斜視図である。
【図5】図4の光電変換装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態に係る光電変換装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<光電変換装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置の一例を示す斜視図であり、図2はその断面図である。また、図3は図1の光電変換装置を上面側から見た透視図である。光電変換装置11は、基板1上に複数の光電変換セル10が並べられて互いに電気的に接続されている。なお、図1〜3においては図示の都合上、2つの光電変換セル10のみを示しているが、実際の光電変換装置11においては、図面左右方向、あるいはさらにこれに垂直な方向に、多数の光電変換セル10が平面的に(二次元的に)配設されていてもよい。
【0012】
図1〜3において、基板1上に複数の下部電極層2が平面配置されている。隣接する下部電極層2のうち、一方の下部電極層2a(以下、第1の下部電極層2aともいう)上から他方の下部電極層2b(以下、第2の下部電極層2bともいう)上にかけて、第1の半導体層3および第1の半導体層3とは異なる導電型の第2の半導体層4が設けられている。そして、第2の下部電極層2b上において、接続導体7が第2の下部電極層2bと第2の半導体層4とを電気的に接続するように設けられている。これら、下部電極層2(第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2b)、第1の半導体層3、第2の半導体層4および接続導体7を少なくとも含むことによって、1つの光電変換セル10が構成される。そして、隣接する光電変換セル10同士が第2の下部電極層2bによって電気的に接続されており、このような構成によって、隣接する光電変換セル10同士が直列接続された光電変換装置11となる。
【0013】
なお、本実施形態における光電変換装置11は、第1の半導体層3に対して第2の半導体層4側から光が入射されるものを想定しているが、これに限定されず、基板1側から光が入射されるものであってもよい。
【0014】
基板1は、光電変換セル10を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。基板1としては、例えば、厚さ1〜3mm程度の青板ガラス(ソーダライムガラス)を用いることができる。
【0015】
下部電極層2(第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2b)は、基板1上に設けられた、Mo、Al、TiまたはAu等の導電体である。下部電極層2は、スパッタリング法または蒸着法などの公知の薄膜形成手法を用いて、0.2μm〜1μm程度の厚みに形成される。第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bの間隔は、例えば、20〜200μmとされ得る。
【0016】
第1の下部電極層2aと第2の下部電極層2bとの間には絶縁部材6が介在している。絶縁部材6は、後述する第1の半導体層3よりも抵抗率の高い材料である。絶縁部材6としては例えば1〜1000Ω・cm以上の抵抗率を有するものが用いられ得る。
【0017】
このような絶縁部材6が設けられていることにより、第1の下部電極層2aと第2の下部電極層2bとの間におけるリーク電流を低減できる。よって、第1の下部電極層2aと第2の下部電極層2bとの間隔を小さくして、光電変換セルの光電変換に寄与する部位の面積を大きくすることができる。その結果、光電変換装置11の光電変換効率が高められる。
【0018】
絶縁部材6としては、ケイ酸ガラスや石英ガラス等のガラス、シリカやアルミナ、チタニア等の無機化合物、ポリイミド等の有機樹脂等が挙げられる。絶縁部材6は、基板1上
に第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bが形成された後、第1の下部電極層2aと第2の下部電極層2bとの間に、例えば、スパッタリング法やゾルゲル法、塗布法等を用いて設けられて形成される。あるいは、基板1上に絶縁部材6が所望のパターン形状に形成された後、第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bが形成されてもよい。
【0019】
絶縁部材6は光吸収層としての第1の半導体層3が吸収する光を反射する複数の粒子を含んでいてもよい。あるいは、第2の半導体層4が光吸収層として機能する場合は、絶縁部材6は第2の半導体層4が吸収する光を反射する複数の粒子を含んでいてもよい。このような構成により、利用されずに基板1側へ進行する光を第1の半導体層3または第2の半導体層4側へ反射させることができ、光電変換装置11の光電変換効率がより高くなる。
【0020】
上記のような第1の半導体層3または第2の半導体層4が吸収する光を反射する粒子を含む絶縁部材6としては、例えば、ガラスや有機樹脂中に白色のシリカ等の粒子が分散されたものが採用され得る。
【0021】
また、絶縁部材6は、複数の空孔を有する構造であってもよい。このように空孔を有する場合、絶縁部材6と空孔との屈折率の差により光を良好に反射させて第1の半導体層3または第2の半導体層4側へ導くことができ、光電変換効率をより高めることができる。このような空孔を有する絶縁部材6は、例えばゾルゲル法を用いて形成され得る。
【0022】
第1の半導体層3は第1導電型の半導体層である。本実施形態では、第1の半導体層3は、例えば1μm〜3μm程度の厚みを有するp型半導体層を想定しているが、これに限定されない。第1の半導体層3の材料としては特に限定されず、金属カルコゲナイドや非晶質シリコン等が用いられ得る。比較的高い光電変換効率を有するという観点で、例えば、I−III−VI族化合物、I−II−IV−VI族化合物およびII−VI族化合物等の金属カルコ
ゲナイドが第1の半導体層3の材料として用いられてもよい。
【0023】
I−III−VI族化合物とは、I−B族元素(11族元素ともいう)とIII−B族元素(13族元素ともいう)とVI-B族元素(16族元素ともいう)との化合物である。I−III−VI族化合物としては、例えば、CuInSe(二セレン化銅インジウム、CISともいう)、Cu(In,Ga)Se(二セレン化銅インジウム・ガリウム、CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)(二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム、CIGSSともいう)等が挙げられる。あるいは、第1の半導体層3は、薄膜の二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム層を表面層として有する二セレン化銅インジウム・ガリウム等の多元化合物半導体薄膜にて構成されていてもよい。I−III−VI族化合物は
光吸収係数が比較的高く、第1の半導体層3が薄くても良好な光電変換効率が得られる。
【0024】
I−II−IV−VI族化合物とは、I−B族元素とII−B族元素(12族元素ともいう)とIV−B族元素(14族元素ともいう)とVI−B族元素との化合物半導体である。I−II−IV−VI族化合物としては、例えば、CuZnSnS(CZTSともいう)、CuZnSnS4−xSe(CZTSSeともいう。なお、xは0より大きく4より小さい数である。)、およびCuZnSnSe(CZTSeともいう)等が挙げられる。
【0025】
II−VI族化合物とは、II−B族元素とVI−B族元素との化合物半導体である。II−VI族化合物としてはCdTe等が挙げられる。
【0026】
第2の半導体層4は、第1の半導体層3とは異なる第2導電型を有する半導体層である。第1の半導体層3および第2の半導体層4が電気的に接続されることにより、電荷を良
好に取り出すことが可能な光電変換層が形成される。例えば、第1の半導体層3がp型であれば、第2の半導体層4はn型である。第1の半導体層3がn型で、第2の半導体層4がp型であってもよい。なお、第1の半導体層3と第2の半導体層4との間に高抵抗のバッファ層が介在していてもよい。また、光吸収層としての第1の半導体層3と、第2の半導体層4とは逆の構成であってもよく、下部電極層2上に第2の半導体層4および第1の半導体層3が順に積層されていてもよい。
【0027】
第2の半導体層4は、第1の半導体層3とは異なる材料が第1の半導体層3上に積層されたものであってもよく、あるいは第1の半導体層3の表面部が他の元素のドーピングによって改質されたものであってもよい。
【0028】
第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、In、InSe、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられる。この場合、第2の半導体層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で10〜200nmの厚みで形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとを主に含む化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとを主に含む化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとを主に含む化合物をいう。
【0029】
図1、図2のように、第2の半導体層4上にさらに上部電極層5が設けられていてもよい。上部電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3および第2の半導体層4で生じた電荷を良好に取り出すことが可能となる。光電変換効率をより高めるという観点からは、上部電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であってもよい。
【0030】
上部電極層5は、例えばITO、ZnO等の0.05〜3μmの透明導電膜である。透光性および導電性を高めるため、上部電極層5は第2の半導体層4と同じ導電型の半導体で構成されてもよい。上部電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成され得る。
【0031】
また、図1〜3に示すように、上部電極層5上にさらに集電電極8が形成されていてもよい。集電電極8は、第1の半導体層3および第2の半導体層4で生じた電荷をさらに良好に取り出すためのものである。集電電極8は、例えば、図1〜3に示すように、光電変換セル10の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3および第4の半導体層4で生じた電流が上部電極層5を介して集電電極8に集電され、接続導体7を介して隣接する光電変換セル10に良好に導電される。
【0032】
集電電極8は、第1の半導体層3への光透過率を高めるとともに良好な導電性を有するという観点から、50〜400μmの幅を有していてもよい。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
【0033】
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストがパターン状に印刷され、これが硬化されることによって形成される。
【0034】
図1、図2において、接続導体7は、第1の半導体層3、第2の半導体層4および第2の電極層5を貫通する溝内に設けられた導体である。接続導体7は、金属や導電ペースト等が用いられ得る。図1、図2においては、集電電極8を延伸して接続導体7が形成されているが、これに限定されない。例えば、上部電極層5が延伸したものであってもよい。
【0035】
<光電変換装置の他の例>
上記一実施形態では、絶縁部材6が下部電極層2と同じ厚みで形成されていたが、これに限られない。例えば、図4、図5のように、絶縁部材26が下部電極層2よりも厚くても良い。なお、図4は他の例である光電変換装置21の斜視図であり、図5は光電変換装置21の断面図である。図4、図5において、図1〜3と同じ構成のものには同じ符号が付されている。図4、図5のように絶縁部材26が下部電極層2よりも厚い場合、接続導体7と第1の下部電極層2aとの間におけるリーク電流をも低減でき、光電変換装置21の光電変換効率がより向上する。
【0036】
図4、図5に示す光電変換装置21は、例えば以下のようにして作製される。まず、基板1上に下部電極層2が所望のパターン形状に形成され、この上に第1の半導体層3が形成される。そして、第1の下部電極層2aと第2の下部電極層2bとの間隙に対応する第1の半導体層3が上面から下面にかけて除去される。この第1の半導体層3の除去された隙間内に絶縁部材26が充填される。このような方法であれば、第1の半導体層3を高温で熱処理して作製した後に絶縁部材26を形成すれば良いので、絶縁部材26の耐熱性の制限が比較的緩やかになり、絶縁部材26の材料選択の範囲が広くなる。
【0037】
絶縁部材26は、図1〜3に示す光電変換装置11における絶縁部材6と同様に、光電変換装置21の光電変換効率を高めるという観点から、第1の半導体層3または第2の半導体層4が吸収する光を反射する複数の粒子を含んでいてもよい。
【0038】
また、絶縁部材26は、図1〜3に示す光電変換装置11における絶縁部材6と同様に、光電変換装置21の光電変換効率を高めるという観点から、複数の空孔を有する構造であってもよい。
【0039】
また、絶縁部材26が第1の下部電極層2よりも厚い場合、斜め方向からの光の入射を遮るのを低減するという観点から、絶縁部材26は第1の半導体層3または第2の半導体層4が吸収する光を透過する構成であってもよい。
【0040】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が施されることは何等差し支えない。例えば、絶縁部材6は第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bに接触するように設けられた例を示したが、絶縁部材6は第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2b間の一部に設けられていればよく、第1の下部電極層2aおよび第2の下部電極層2bのいずれか一方、あるいは両方に接触していなくてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:基板
2:下部電極層
2a:第1の下部電極層
2b:第2の下部電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:上部電極層
6、26:絶縁部材
7:接続導体
8:集電電極
10、20:光電変換セル
11、21:光電変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に互いに間隔をあけて設けられた第1の下部電極層および第2の下部電極層と、前記第1の下部電極層上に設けられた第1の導電型を有する第1の半導体層と、
該第1の半導体層上に設けられた前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第2の半導体層と、
前記第2の下部電極層および前記第2の半導体層を電気的に接続する接続導体と、
前記第1の下部電極層および前記第2の下部電極層の間に介在する絶縁部材と
を具備することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記絶縁部材は前記第1の下部電極層よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は前記第1の半導体層または前記第2の半導体層が吸収する光を透過することを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は前記第1の半導体層または前記第2の半導体層が吸収する光を反射する複数の粒子を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記絶縁部材は複数の気孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−110341(P2013−110341A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255885(P2011−255885)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】