説明

免疫アジュバント

【課題】安全性が高く、全身系免疫に関わるIgGのみならず、粘膜などで局所的に感染防御機構に関わり分泌型IgAの産生能を高める免疫アジュバント、免疫アジュバント分散液及びその接種方法を提供すること。
【解決手段】キトサン微粒子を含む免疫アジュバント及びその分散液並びに当該分散液を霧状として動物の肺内に噴霧することを特徴とする免疫アジュバントの接種方法。当該免疫アジュバントに含まれるキトサン微粒子は、脱アセチル化度60%以上、1質量%溶液粘度が1.5mPa・s以上1,000mPa・s以下かつ粒子径が0.5μm以上20μm以下であるものを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応において抗原に対する抗体の産生能を向上させる効果を持つ免疫アジュバントに関し、詳しくはキトサン微粒子を含む免疫アジュバント分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫とは、生体が有する病気への抵抗力や治癒力であり、分子レベルで見ると、自分自身である「自己」と、外部から侵入した異物「非自己」とを識別し、「非自己」のみを速やかに処理し、そして除去するシステムである。
【0003】
免疫には、生体に侵入する病原体を非特異的に直ちに除去する先天性免疫反応(自然免疫)と、自然免疫を突破して生体内に侵入した病原体を特異的に除去する獲得免疫反応とがある。獲得免疫反応では、生体が病原体(抗原)と特異的に相互作用する抗体を産生することで病原体に対抗する。このような病原体に感染する前に病原体に対する抵抗力(免疫)を獲得するためには、死菌や弱毒化した病原体などをワクチンとして生体に接種する必要がある。ここで、接種したワクチンによって長期間に渡り、効果的に抗体を産生するためには、抗原とともに接種し抗体産生の手助けをする免疫アジュバントの選択が非常に大きなカギとなる。
【0004】
現在ワクチンの接種方法は、筋肉注射による接種が大半である。この方法は抗原を直接体内に導入して免疫系を刺激するものであり、血中抗体が免疫の主体となるトキソイドワクチン(破傷風など)や弱毒化した生ウイルスワクチン(麻疹など)など、成功例も多い。
【0005】
一方、粘膜を介してワクチンを接種し、粘膜で局所的に免疫を成立させる方法は、解決すべき課題が多く開発途上にある。感染症の多くは病原体が粘膜表面に接触して粘膜から侵入するか、又はその部分で定着増菌して始まる。このような粘膜表面での感染を防ぐために、生体は粘膜局所で独自に発達した免疫システムを持っている。しかし、ワクチンを経皮接種しても粘膜局所に免疫はほとんど誘導されず、これまで粘膜を介して感染する病原体に対して効果的なワクチン治療を行うことはできなかった。
【0006】
また、粘膜にワクチンを接種すると、免疫はその粘膜に局所的のみならず全身系の免疫をも成立させることが知られており、多くの感染症でいかに粘膜局所での免疫を成立させるかが、感染防御の決め手になると考えられている。
【0007】
このため、粘膜を介して免疫を成立させるようなワクチン及びその接種方法の開発に期待が寄せられ、ワクチンと免疫アジュバントとの併用などについて世界中で鋭意研究されている。しかし、ワクチン接種による粘膜免疫の成立及び免疫の誘導システムに関してはまだ不明の点が多い。また、アジュバントとしての作用を有する物質として知られているものは、アルム、コレラトキシン、フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、オイルアジュバント、サポニン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物、ヘキサデシルアミン、アブリジン、イスコム、細胞壁骨格構成物、リポポリサッカライド、エンドトキシン及びリポソームなどに限られている。しかも、これらの中には毒性が強いものも多数含まれており、ヒトへの接種に認可の下りたものはアルムのみである。
【0008】
上記したものの他に、近年、キチン及びキトサンが免疫アジュバントとして有用であることが示されている。キトサンは、安全性が高い天然物由来の多糖であり、工業的にはエビ、カニなどの甲殻類から得られるキチンを脱アセチル化することによって生産されている。例えば、特許文献1は、水溶性のキチンオリゴマー及びキトサンオリゴマーを注射剤により免疫アジュバントとして使用することを開示する。特許文献2は、経口接種して使用されるキチンが免疫促進剤(アジュバント)として作用することを開示する。
しかし、このようにキチン、キトサンを免疫アジュバントとして使用する場合、抗原との結合度が高くはなく、大量に接種しなければならないという問題点がある。
【0009】
なお、キトサン特有の性質としては、製膜性、抗菌性、保水性及び凝集能などの機能が知られており、機能性高分子として各方面で実用されている。
【0010】
例えば、特許文献3に開示する方法によれば、キトサンの加水分解によりキトサンオリゴ糖が製造され、これは医薬品、食品、化粧品分野などへ利用されている。また、医療分野においてキチン、キトサンは、特許文献4が開示するように、感染防御物質としての応用が期待されている。
【0011】
キトサンの使用にあたっては、あらかじめ微粒子化されたものが用いられる。その微細化の程度(例えば、平均粒径)は、従来光散乱法などにより決定されてきたが、測定方法や使用する溶媒により測定結果が大きく異なり、その結果得られるキトサンの性質が一定しないという問題点があった。特許文献5は、このような問題点を解決するため、キトサンの微細化の程度をその溶液の粘度で表し、溶液粘度が一定範囲であるキトサンは、性質が一定し、種々の用途に有用であることを開示する。
【0012】
【特許文献1】特公平7−47546号公報
【特許文献2】特開昭55−43041号公報
【特許文献3】特開2003−212889公報
【特許文献4】特開平9−301807号公報
【特許文献5】特開2007−2123公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を解決し、生体への安全性が高く、目的部位に局所的に免疫を誘導できる免疫アジュバント及びその接種方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、脱アセチル化度60%以上、1質量%溶液粘度が1.5mPa・s以上1,000mPa・s以下かつ粒子径が0.5μm以上20μm以下であるキトサン微粒子を含む免疫アジュバントを提供する。
【0015】
本発明は、また、上記免疫アジュバントを含む免疫アジュバント分散液を提供する。ここで、当該免疫アジュバント分散液は、pHが6.5〜9.0であること、及び、キトサン微粒子の含有量が0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明はさらに、上記免疫アジュバント分散液を、微細な霧状としてヒト以外の動物の肺内に噴霧することを特徴とする免疫アジュバントの接種方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生体への安全性が高く、主に全身系免疫に関与するIgGのみならず、粘膜などで感染防御に関わり、抗ウイルス作用を有する分泌型IgAの産生能にも優れた免疫アジュバント、免疫アジュバント分散液及び当該分散液の接種方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本発明中において「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明中において「溶液」という場合、「分散液」を含むことがある。
まず、本発明の免疫アジュバントを構成するキトサン微粒子について説明する。
【0019】
本発明で使用するキトサン微粒子は、天然物からキチンを得て、それを脱アセチル化してキトサンを得、このキトサンを微粒子化したものである。上記キチンは、カニ・エビなど甲殻類の外骨格をはじめとして、イカ、オキアミ及び昆虫並びにキノコなどの菌類などから得られるものであり、その起源は特に限定されることなく、本発明に使用することができる。
【0020】
キチンは、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチルグルコサミン)を構成単位とする天然高分子である。一方、キトサンは、キチンの脱アセチル化物であり、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(グルコサミン)を構成単位とする塩基性多糖類である。キトサンは、既に工業的に生産されており、種々のグレードのものを入手することができる。本発明に使用するキトサンは、起源及び製法に特別な制限はなく、従来より工業生産されているキトサンを使用することができる。
【0021】
本発明に使用するキトサンの脱アセチル化度は60%以上のものを使用することが好ましく、脱アセチル化度が80%〜100%であるものを使用することがより好ましい。脱アセチル化度が60%未満であると、希酢酸水溶液に容易に溶解しないなど、キトサン本来の特徴を表さなくなる点で問題がある。
【0022】
(脱アセチル化度測定方法)
上記キトサンの脱アセチル化度は、コロイド滴定を行い、その滴定量から算出することができる。具体的には、指示薬にトルイジンブルー溶液を用い、ポリビニル硫酸カリウム水溶液でコロイド滴定することにより、キトサン分子中の遊離アミノ基を定量し、キトサンの脱アセチル化度を求める。以下に脱アセチル化度測定方法の一例を示す。
【0023】
1.滴定試験
0.5%酢酸水溶液にキトサン純分濃度が0.5%となるようにキトサンを添加し、キトサンを攪拌、溶解して100gの0.5%キトサン/0.5%酢酸水溶液を調製する。次にこの溶液10gとイオン交換水90gを攪拌混合して、0.05%のキトサン溶液を調製する。さらにこの0.05%キトサン溶液10gにイオン交換水50ml、トルイジンブルー溶液約0.2mlを添加して試料溶液を調製し、ポリビニル硫酸カリウム溶液(N/400PVSK)にて滴定する。滴定速度は2ml/分〜5ml/分とし、試料溶液が青から赤紫色に変色後、30秒間以上保持する点を終点の滴定量とする。
なお、キトサン純分とは、原料キトサン試料中のキトサンの質量を意味し、具体的には、キトサン試料を105℃、2時間乾燥して求められる固形分質量である。
【0024】
2.空試験
上記滴定試験に使用した0.5%キトサン/0.5%酢酸水溶液の代わりに、イオン交換水を使用し、同様の滴定試験を行う。
【0025】
3.アセチル化度の計算
X=1/400×161×f×(V−B)/1000
=0.4025×f×(V−B)/1000
Y=0.5/100−X
X:キトサン中の遊離アミノ基質量
(グルコサミン残基質量に相当)
Y:キトサン中の結合アミノ基質量
(N−アセチルグルコサミン残基質量に相当)
f:N/400PVSKの力価
V:試料溶液の滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
脱アセチル化度(%)
=(遊離アミノ基)/{(遊離アミノ基)+(結合アミノ基)}×100
=(X/161)/(X/161+Y/203)×100
なお、161はグルコサミン残基の分子量、203はN−アセチルグルコサミン残基の分子量である。
【0026】
本発明の免疫アジュバントを構成するキトサン微粒子は、1質量%溶液粘度が1.5mPa・s以上1,000mPa・s以下であるものを使用する。より好ましくは1.5mPa・s以上500mPa・s以下である。
上記粘度が1.5mPa・s未満とするためには、微細化のためのコストがかさみ、製造コスト上不利である。一方、粘度が1,000mPa・sを超えると、溶液としたときに粘度が高くなりすぎ、使用の妨げとなり、接種方法も限定されるため、好ましくない。
【0027】
また、本発明においては、キトサン微粒子の粒子径が0.5μm以上20μm以下のものを使用する。粒子径が20μmを超えると、相対的に表面積が小さくなること及び移動性が低下し、免疫アジュバントとしての作用が弱くなるため好ましくない。粒子径は細かいほどよいが、キトサンの粒子径を0.5μm未満にするためには、コストが飛躍的に高くなり、経済性の面から好ましくない。
【0028】
なお、上記キトサン溶液の粘度は、例えば、1%酢酸水溶液にキトサン純分濃度が1%となるようにキトサンを溶解させ、この溶液を、恒温槽にて20℃に保ちながらB型回転粘度計を用いて粘度測定を行うことにより、決定することができる。なお、キトサン純分とは、キトサン試料における固形分換算を意味し、具体的には、キトサン試料を105℃で2時間乾燥した後の固形分質量である。
【0029】
1質量%溶液粘度が1.5mPa・s以上1,000mPa・s以下かつ粒子径が0.5μm以上20μm以下であるキトサン微粒子は、特開2007−2123公報に開示される方法により得ることができる。当該方法で得られるキトサン微粒子は、粒子径が均一であるため、投与ごとの効果が一定するという点で優れている。
【0030】
本発明の免疫アジュバントは、水に加えて免疫アジュバント分散液として使用することができる。
本発明の免疫アジュバント分散液は、そのpHが6.5〜9.0であることが好ましい。pHが6.5未満では、キトサン微粒子の溶解が起こり、微粒子としての特徴が損なわれる。また、pHが9.0を超えると生物に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。
【0031】
pHの調整に使用する物質は、特に制限されず、当業者に周知の物質を使用することができる。pH調製に使用するアルカリ物質としては、アルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニア及びアミン類があり、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、モルホリン、N−メチルモルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン及びアミノメチルプロパノールなどを挙げることができる。特に好ましいものは、水酸化ナトリウム及びアンモニアである。
【0032】
一方、pH調整に使用できる酸性物質は、水溶性であれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、タウリン、ピロリドンカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ビドロキシマロン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、アミノ安息香酸、フタル酸、けい皮酸及びビタミンCなどの有機酸、並びに、塩酸、リン酸、硝酸及び硫酸などの無機酸を挙げることができる。
【0033】
当該免疫アジュバント分散液におけるキトサン微粒子の含有量は、全質量中0.1〜10%を占める量であることが好ましく、1〜5%であることがより好ましい。キトサン微粒子の量が0.1%未満では、免疫応答を促進するという免疫アジュバントとしての効果が十分には得られず、一方、添加量が10%を超えると当該分散液が流動性を失い、接種に不便であり好ましくない。
【0034】
本発明の免疫アジュバント分散液と抗原とを混合する方法は、特に制限はなく、当業者に周知の混合分散機、微分散機及び微粒化機を使用することができる。具体的には、超音波発生機、ボールミル、ダイノミル、サンドミル、ロールミル、グレンミル、ディゾルバー、ディスパー及びペイントシェーカーを挙げることができ、混合と同時に微細化処理を行うことができるものを用いることが好ましい。
【0035】
本発明の免疫アジュバント分散液は、当業者に周知の種々の接種方法により接種することができるが、当該水溶液を微細な霧状として粘膜に噴霧することにより、より適切なアジュバント効果を発揮することができる。接種部位にも特に制限はないが、鼻腔内、口腔内、肺内、膣内及び直腸内に接種することが好ましく、肺内に接種することが最も好ましい。本発明の免疫アジュバント分散液を、経鼻接種及び経口接種する場合、キトサン微粒子の濃度は0.5〜5%が好ましい。また、経肺接種の場合、0.1〜3%が好ましい。
【0036】
また、本発明の免疫アジュバント分散液を、経鼻接種及び経口接種する場合、キトサン微粒子の粒子径は、3μm〜10μmであることが好ましい。粒子径が10μmより大きい場合、粒子の表面積は相対的に少なく、アジュバントとしての効果が不十分であり、3μm未満とすると製造コストが高くなり不経済である。一方、経肺接種の場合、粒子径が1μm〜4μmであることが好ましい。粒子径が4μmより大きい場合、噴霧器シリンジの内部に目詰まりが起こる恐れがある。1μm未満とすると製造コストが高くなり、不経済である。
【0037】
本発明の免疫アジュバント及びその分散液を接種できる動物は、特に制限されず、例として、ニワトリ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどの家畜類、ネコ、イヌ、ハムスター、ウサギ、鳥などの愛玩動物、ペット類、魚類、海洋生物並びにマウス、サル及びヒトを挙げることができる。
【0038】
抗体産生能の高い免疫アジュバントの条件としては、まず目的の抗原物質と結合しやすいことが必要である。また、細胞内に取り込まれやすいこと、及び、細胞内で長期間にわたって抗原物質を徐放することが必要である。本発明の免疫アジュバントの作用機序は不明であるが、本発明の免疫アジュバントに使用するキトサン微粒子がこのような条件を満たしているために、少ないワクチン接種量で長期間免疫効果を発揮することができるものと考えられる。
【実施例】
【0039】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
(キトサン微粒子の調製)
目開き4mmの篩を通過させた粗砕カニ殻1部を水30部に分散させておき、これに塩酸1部を加え、30℃で6時間撹拌し、カニ殻をろ別した。次いで、この処理後のカニ殻を水30部中に再分散し、ろ別する操作を10回繰り返し、脱カルシウムカニ殻を得た。次に、この脱カルシウムカニ殻を水30部中に再分散し、水酸化ナトリウム3部を加え、70℃に加熱して3時間撹拌した後、キチンをろ別して水30部中に再分散し、再びろ別する操作を10回繰り返した。次いで、キチンを50℃の温風にて20時間乾燥して原料キチンを得た。
【0041】
このキチン100部を水2,000部に分散し、炭酸ナトリウム2.5部を加えた後、亜臭素酸ナトリウム0.15部を加え室温で6時間撹拌した。処理後キチンをろ別し、水30部中に再分散した後、ろ別する。この操作を5回繰り返した後、50℃の温風で20時間乾燥後、脱アセチル化してキトサンとした。
【0042】
このキトサンをハンマーミルで粉砕後、目開き400μmの篩を通過させ、さらにボールミルにて48時間粉砕し、さらにジェットミルで粉砕してキトサン微粒子を得た。このキトサン微粒子は、粒度分布の中心が4.5μmであり、10μm以下の微粒子が100%であった。このキトサンの1%の溶液粘度を測定したところ、4mPa・sであった。また、このキトサン微粒子の脱アセチル化度は87%であった。なお、キトサン微粒子の粒子径は、電子顕微鏡(日立製作所製高分解能走査電子顕微鏡S−5200型)による実測値である。
【0043】
(マウスへのOVA抗原の免疫)
上記キトサン微粒子1部に精製水99部を加え、1%キトサン微粒子分散液を得た。当該分散液5部に対して0.25%OVA(卵白由来アルブミン)水溶液2部を加え、塩酸と水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調製し、キトサン微粒子−OVA混合液を得た。
当該混合液7μLを、ジエチルエーテルで麻酔した6週齢、雌のBALB/cマウス5匹に経鼻接種した。この経鼻接種の日から1週間ごとに計3回、同様に上記混合液7μLを経鼻接種した。この3回目の経鼻接種の日を第0週として、その後週に一度、以下の要領で血液、便及び膣洗浄液を得た。また、ブースター効果を確認するために、上記3回目の経鼻接種の日から2〜3ヶ月の後、同様に4回目の経鼻接種を行った。
【0044】
血液:ジエチルエーテルで麻酔後、尾静脈から採血した。
便:各個体を樹脂製ケージ中に数分間放置し、便をエッペンドルフチューブに回収した。
膣洗浄液:1%BSA(ウシ血清アルブミン)50μLを膣中でピペッティングした。この作業を2回行い、膣洗浄液を得た。
【0045】
(サンプルの調製)
上記手順により得た血液、便及び膣洗浄液を以下のように処理し、抗体価測定のためのサンプルを調製した。
血清サンプル:室温にて、15,000r.p.m.で15分間遠心分離し、その上清を再度同じ条件で遠心分離して得た上清を血清サンプルとした。当該血清サンプルは、使用するまで−30℃で冷凍保存した。
便サンプル:上記便を4℃にて1%BSA溶液中に分散し、この分散液を4℃にて15,000r.p.m.で15分間遠心分離して、その上清を便サンプルとした。当該便サンプルは、使用するまで−30℃で冷凍保存した。
膣洗浄液サンプル:上記膣洗浄液を室温にて、15,000r.p.m.で15分間遠心分離し、その上清を膣洗浄液サンプルとした。当該サンプルは、使用するまで−30℃で冷凍保存した。
【0046】
ELISA法を用いて、各サンプルについてIgG抗体価及びIgA抗体価を測定した。当該測定は以下の手順で行った。
(IgG抗体価の測定)
OVA抗原(生化学工業株式会社製)をコーティングバッファー(精製水1LにNa2CO3:1.6g、NaHCO3:2.82g、NaN3:0.1gを含む;pH9.0)で5μg/mLに希釈し、この溶液を96穴ELISAプレート(Costar3690 A/2、コーニング社)に1穴あたり50μLずつ分注し、4℃で一晩静置して、抗原を吸着(コーティング)させた。この際、プレート表面にプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。
【0047】
上記コーティング終了後、コーティングバッファーを廃棄し、次いでELISAプレートにブロッキングバッファー(精製水1Lに10×ダルベッコPBS:100mL、アルブミン(Fr.V):10g、NaN3:1gを含む)を1穴あたり100μLずつ分注し、1時間放置した。
ELISAプレートとは別にU底プレートを用意し、上記各サンプルを26〜215倍に希釈した10段階の2倍希釈系列を調製した。希釈にはブロッキングバッファーを用い、最終希釈測定法(エンド・ポイント・ダイリューション法)を行った。
【0048】
上記ブロッキング終了後、ELISAプレートからブロッキングバッファーを廃棄し、U底プレートで調製したサンプルを1穴あたり50μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。
なお、陽性コントロールとしては、単クローン抗体抗鶏卵アルブミン(MONOCLONAL ANTI-CHICKEN EGG ALBUMIN CLONE OVA)(SIGMA社)を1万〜512万倍に希釈した10段階の2倍希釈系列を用いた。また、陰性コントロールとしては、OVA抗原を免疫していないマウスから、上記と同様にして調製した血清サンプルをブロッキングバッファーで希釈して調製した26〜215の10段階の2倍希釈系列を用いた。
【0049】
インキュベートの際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後サンプル液を廃棄し、ELISAプレート洗浄機(バイオテック社、MW-96F)を用いて、洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり200μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0050】
2次抗体として、ビオチン標識ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch社)を希釈液(1×PBS、0.2%Tween20)で1,000倍希釈し、これを1穴あたり50μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後溶液を廃棄し、洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり200μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0051】
3次抗体として、アルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(インビトロジェン社)を希釈液(1×PBS、0.2%Tween20)で2,000倍希釈し、これを1穴あたり50μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後溶液を廃棄し、洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり200μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0052】
フォスファターゼ用発色基質p−ニトロフェニルリン酸(KPL社)の1粒を発色基質用緩衝液(精製水1Lにジエタノールアミン:0.97mL、MgCl2・6H2O:0.1g、NaN3:0.1gを含む;pH9.8)5mLに溶解して発色液を調製し、この発色液を1穴あたり100μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後、反応停止液として1N NaOHを1穴あたり50μLずつ分注して反応を止め、波長405nm及び630nm(主波長405nm、副波長630nm)で各穴の吸光度を測定した。なお、吸光度の測定には、ELISA用プレートリーダー Multiskan EX(Thermo Labsystems社)を使用した。
【0053】
吸光度の測定値から、陰性コントロールの吸光度平均値とその標準偏差(SD)を求めた。次いで、サンプルの吸光度を希釈率に対してプロットして標準曲線を作成し、陰性コントロールの吸光度平均値+2SDの標準曲線との交点を求め、この交点の2の乗数をIgG抗体価として得た。3回目の経鼻接種の日を第0週として、経鼻接種の日からの時間経過に対してプロットした血清サンプルのIgG抗体価を図1中に◆で示す。
【0054】
(IgA抗体価の測定)
OVA抗原(生化学工業株式会社製)をコーティングバッファー(精製水1LにNa2CO3:1.6g、NaHCO3:2.82g、NaN3:0.1gを含む;pH9.0)で5μg/mLに希釈し、この溶液を96穴ELISAプレート(SUMILON ELISAプレートS MS-8496F、住友ベークライト株式会社)に1穴あたり100μLずつ分注し、4℃で一晩静置して、抗原を吸着させた。この際、プレート表面にプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。
【0055】
上記コーティング終了後、コーティングバッファーを廃棄し、次いで当該ELISAプレートにブロッキングバッファー(精製水1Lに10×ダルベッコPBS:100mL、アルブミン(Fr.V):50g、NaN3:1gを含む)を1穴あたり200μLずつ分注し、1時間放置した。
【0056】
ELISAプレートとは別にU底プレートを用意し、各サンプルについて5倍及び10倍の希釈液を調製した。希釈にはブロッキングバッファーを使用した。
【0057】
インキュベーション終了後、ELISAプレートからブロッキングバッファーを廃棄し、U底プレートで調製したサンプルを1穴あたり100μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。インキュベートの際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。
【0058】
なお、陽性コントロールとしては、コレラ毒素(以下、CTと略す)−OVA混合液(1×PBS緩衝液で2mg/mLに調製したCT溶液1部に対して0.25%OVA水溶液2部を加え、ピペッティングにより十分に混合して調製したもの)を多量に接種してIgA抗体を産生させたマウスから、上記と同様にして調製した血清サンプルをブロッキングバッファーで5倍及び10倍希釈したものを用いた。また、陰性コントロールとしては、OVA抗原を免疫していないマウスから、上記と同様にして調製した血清サンプルをブロッキングバッファーで5倍及び10倍希釈したものを用いた。
【0059】
インキュベーション終了後、サンプル液を廃棄し、ELISAプレート洗浄機(バイオテック社、MW−96F)を用いて、洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり400μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0060】
2次抗体として、ビオチン標識ヤギ抗マウスIgA(KPL社)を希釈液(1×PBS、0.2%Tween20)で1,000倍希釈し、これを1穴あたり100μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベーション終了後溶液を廃棄し、洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり400μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0061】
3次抗体として、アルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(インビトロジェン社)を希釈液(1×PBS、0.2%Tween20)で2,000倍希釈し、これを1穴あたり100μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にはプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後、ELISAプレートから溶液を廃棄し、次いで洗浄液(1×PBS、0.2%Tween20)を1穴あたり400μL分注後、廃棄することを4回繰り返してプレートを洗浄した。
【0062】
フォスファターゼ用発色基質p−ニトロフェニルリン酸(KPL社)の1粒を発色基質用緩衝液(精製水1Lにジエタノールアミン:0.97mL、MgCl2・6H2O:0.1g、NaN3:0.1gを含む;pH9.8)5mLに溶解して発色液を調製し、この発色液を1穴あたり100μLずつ分注して37℃で1時間インキュベートした。この際、プレート表面にプレートシールを貼って溶液の乾燥を防いだ。インキュベート終了後、反応停止液として1N NaOHを1穴あたり50μLずつ分注して反応を止め、波長405nm及び630nmで各穴の吸光度を測定した。なお、吸光度の測定には、ELISA用プレートリーダー Multiskan EX(Thermo Labsystems社)を使用した。
5倍及び10倍希釈したサンプルの吸光度の各平均値をIgA抗体価として得た。3回目の経鼻接種の日を第0週として、経鼻接種の日からの時間経過に対してプロットした血清サンプルのIgA抗体価を図2中に◆で示す。
【0063】
[比較例1]
実施例1で用いたキトサン微粒子に代えて、粘膜免疫アジュバントとして定評のある、コレラ毒素(CT)を用いて実施例1と同様の実験を行った。すなわち、CT−OVA混合液を、実施例1と同様にして調製し、当該混合液3μLを、実施例1と同様にジエチルエーテルで麻酔した6週齢、雌のBALB/cマウス5匹に経鼻接種し、血液、便及び膣洗浄液を得てサンプルを調製し、ELISA法を用いてIgG及びIgAの抗体価を求めた。
【0064】
実施例1と同様にして得た血清サンプルのIgG抗体価及びIgA抗体価を、それぞれ図1及び図2に△で示す。
図1及び図2から、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、OVAに対する抗体価が有意に高いことが明らかとなった。この血清サンプルについての結果と同様に、便サンプル、膣洗浄液サンプルについても、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、OVAに対する抗体価が有意に高いという結果を示した。
【0065】
[実施例2]
実施例1と同様にして調製したキトサン−OVA混合液7μLを、ジエチルエーテルで麻酔した6週齢、雌の多量体免疫グロブリンレセプターノックアウトマウス(Polymeric immunoglobulin receptor knockout mice)5匹に経鼻接種し、実施例1と同様の手順及び方法で血液を得て血清サンプルを調製した。IgA抗体価の測定において血清サンプルを100倍及び200倍に希釈して用いたこと以外は、実施例1と同様の手順及び方法でELISA法を用いてIgG及びIgAの抗体価を求めた。IgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図3及び図4中に◆で示す。
【0066】
[比較例2]
実施例2で用いたキトサン微粒子に代えて、コレラ毒素(CT)を用いて実施例2と同様の実験を行った。すなわち、比較例1と同様にして調製したCT−OVA混合液3μLを、実施例2と同様にジエチルエーテルで麻酔した6週齢、雌の多量体免疫グロブリンレセプターノックアウトマウス5匹に経鼻接種し、実施例2と同様の手順及び方法で血液を得て血清サンプルを調整し、ELISA法を用いてIgG及びIgAの抗体価を求めた。IgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図3及び図4中に△で示す。
【0067】
図3及び図4から、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、OVAに対する抗体価が有意に高いことが明らかとなった。
【0068】
[実施例3]
実施例1と同様にして1%キトサン微粒子分散液を調製し、当該分散液5部に対して0.25%OVA水溶液2部及び1×PBS18部を加え、ピペッティングにより十分に混合し、キトサン−OVA混合液を得た。当該混合液25μLを、5mg/mLネンブタール(マウス体重1gあたり、約0.01mL使用)腹腔内注射で麻酔した6週齢、雌のBALB/cマウス5匹に経肺接種した。なお、肺への接種の噴霧器としてはPENNCENTURY社製、モデル1A−1Cを使用した。
【0069】
この経肺接種の日から1週間ごとに計3回、同様に上記混合液の経肺接種を行った。この3回目の経肺接種の日を第0週として、その後、実施例1と同様の手順及び方法により、週に一度、血液、便及び膣洗浄液を得てサンプルを調製し、ELISA法によりIgG及びIgAの抗体価を求めた。また、ブースター効果を確認するために、上記3回目の経肺接種の日から2〜3ヶ月の後、同様に4回目の経肺接種を行った。血清サンプルについて求めたIgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図5及び図6中に◆で示す。
【0070】
[比較例3]
実施例3で用いたキトサン微粒子に代えて、コレラ毒素(CT)を用いて実施例3と同様の実験を行った。すなわち、1×PBSで2mg/mLに調製したCT溶液1部に対して0.25%OVA溶液2部を加え、さらに1×PBSを22部加えて希釈し、ピペッティングにより十分に混合した。このCT−OVA混合液25μLを実施例3と同様に雌のBALB/cマウス5匹に経肺接種した。その後、実施例3と同様の手順及び方法で経肺接種、サンプル調製をし、ELISA法によりIgG及びIgAの抗体価を求めた。血液サンプルについて求めたIgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図5及び図6に△で示す。
【0071】
図5及び図6から、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、OVAに対する抗体価が有意に高いことが明らかとなった。この血清サンプルについての結果と同様に、便サンプル及び膣洗浄液サンプルについても、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、OVAに対する抗体価が有意に高いという結果を示した。
【0072】
[実施例4]
実施例3と同様の手順及び方法でキトサン−OVA混合液を調製した。当該混合液25μLを、5mg/mLネンブタール(マウス体重1gあたり、約0.01mL使用)腹腔内注射で麻酔した6週齢、雌の多量体免疫グロブリンレセプターノックアウトマウス5匹に経肺接種した。なお、肺への接種は実施例3と同様にして行った。
【0073】
実施例3と同様の手順及び方法により、この経肺接種の日から1週間ごとに計3回、上記混合液の経肺接種を行った。この3回目の経肺接種の日を第0週としてその後、実施例3と同様の手順及び方法により、週に一度、血液を得て血清サンプルを調製し、ELISA法によりIgG及びIgAの抗体価を求めた。また、ブースター効果を確認するために、3回目の経肺接種の日から2〜3ヶ月の後、4回目の経肺接種を行った。血清サンプルについて求めたIgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図7及び図8に◆で示す。
【0074】
[比較例4]
実施例4で用いたキトサン微粒子に代えて、コレラ毒素(CT)を用いて実施例4と同様の実験を行った。すなわち、比較例3と同様にして調製したCT−OVA混合液25μLを、実施例4と同様にネンブタールで麻酔した6週齢、雌の多量体免疫グロブリンレセプターノックアウトマウス5匹に計4回経肺接種した。実施例4と同様の手順及び方法により、週に一度、血清サンプルを調製し、ELISA法によりIgG及びIgAの抗体価を求めた。血清サンプルについて求めたIgG及びIgAの抗体価をそれぞれ図7及び図8中に△で示す。
【0075】
図7及び図8から、CT−OVA混合液を用いて免疫したマウスよりも、キトサン−OVA混合液を用いて免疫したマウスの方が、OVAに対する抗体価が有意に高いことが明らかとなった。
【0076】
全ての実施例において、OVAの免疫アジュバントとしてコレラ毒素を使用した比較例よりも、キトサン微粒子分散液を使用した実施例の方が、OVAに対する抗体価が有意に高いという結果を示した。また、図中14週目の抗体価が高まっていることから4回目の免疫を行うことにより、急激に抗体産生能が高まるブースター効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、生体への安全性が高く、全身系免疫に関わるIgGのみならず、粘膜などで局所的に感染防御に関わり、抗ウイルス作用を有する分泌型IgAの産生能に優れた免疫アジュバント、免疫アジュバント分散液及び当該分散液の接種方法が提供される。本発明の免疫アジュバント分散液を本発明の接種方法で粘膜に接種することにより、接種部位に局所的に免疫を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgG抗体価の比較を示すグラフである。
【図2】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgA抗体価の比較を示すグラフである。
【図3】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgG抗体価の比較を示すグラフである。
【図4】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgA抗体価の比較を示すグラフである。
【図5】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgG抗体価の比較を示すグラフである。
【図6】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgA抗体価の比較を示すグラフである。
【図7】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgG抗体価の比較を示すグラフである。
【図8】キトサン微粒子とCTを免疫アジュバントとして用いた場合のIgA抗体価の比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱アセチル化度60%以上、1質量%溶液粘度が1.5mPa・s以上1,000mPa・s以下かつ粒子径が0.5μm以上20μm以下であるキトサン微粒子を含むことを特徴とする免疫アジュバント。
【請求項2】
請求項1に記載の免疫アジュバントを含むことを特徴とする免疫アジュバント分散液。
【請求項3】
pHが6.5〜9.0である請求項2に記載の免疫アジュバント分散液。
【請求項4】
キトサン微粒子の含有量が0.1〜10質量%である請求項2に記載の免疫アジュバント分散液。
【請求項5】
請求項2に記載の免疫アジュバント分散液を、微細な霧状としてヒト以外の動物の肺内に噴霧することを特徴とする免疫アジュバントの接種方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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