免疫同等性のためのインビボモデル
【課題】本発明は、ヒトインビトロ系内で直面する欠点に取り組み、治療用抗体の免疫学的同等性を保証するという現在未解決の問題に対する解決策を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明はa) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニックであるその標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む、外因性抗体変異体の相対免疫原性を判定する方法を提供する。
【解決手段】本発明はa) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニックであるその標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む、外因性抗体変異体の相対免疫原性を判定する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体を用いた治療用または診断用の異なる調製物の相対免疫原性の評価に有用なインビボモデルに関する。免疫原性は、a) 抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニック抗体の標準調製物またはその変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法によって比較される。
【背景技術】
【0002】
治療用モノクローナル抗体は、腎臓移植での同種移植片拒絶反応の阻止に必要とされる組換えマウス抗体Orthoclone、OKT-3について認可を得て、1986年に実際の臨床上の診察に導入された[非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7]。ReoProは、FDAによって1994年に認可されており[非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10]、製薬業界によるその治療薬ならびに治療用抗体の商業的な将来性の受け入れが当初遅かったことの表れである。生物学的療法薬の大量製造に関連する技術的課題、癌治療における早々の失望、およびヒトで生じる治療薬に対する免疫反応に関する懸念によって、これらの新規治療薬の広がりが遅れたことが概ね説明される。
【0003】
治療用抗体と関連する初期課題の多くは、最近になって抗体産生、開発および製造技術の改善により克服されるようになった[非特許文献11]。2002年には、米国で認可されたモノクローナル抗体を用いた治療薬が13種類あり、臨床試験中の製品が他に400種類あった[非特許文献12]。しかしながら、これらの薬剤の多くに対して起こる免疫原性反応に関する利用できる情報は依然として限られている[非特許文献13、非特許文献14]。
【0004】
小分子薬物とは対照的に、治療用抗体は、非常に複雑な三次元構造を有する大きな分子である。合成薬物は、高感度の物理化学的分析法を用いて十分に特徴づけられることができるが、組換えタンパク質は物理化学的分析法だけを用いては十分に特徴づけられない。組換え生物タンパク質は遺伝子改変細胞によって分泌され、それらは本質的には変異性である。その産物は異なる異性体として産生されることもあり、またはその産物は凝集体を形成することもある。グリコシル化およびその他の翻訳後修飾は、異質性をもたらす別の厄介な問題である。生物学的治療薬の生産工程は合成薬剤製品に使われる工程よりもはるかに複雑である。このように、生物学的治療用タンパク質の最終的な特性は、生産工程に大きく依存しており[非特許文献15]、剤形によって影響を受けることもありうる。バッチ間のばらつきはよく起こることであり、このことから再現性が製品の品質を評価する判定基準の1つになっている。物理化学的方法は生物学的治療用製品を十分に特徴づけることができないので、物理化学的データの補うものとしてその製品を特徴づける生物学的な系が必要である[非特許文献16]。異なる生産バッチがその固有の免疫学的特性に相当することを確実にすることが、生物薬剤の製造において直面する最も困難な課題のうちの1つになっている。
【0005】
大部分の治療用タンパク質は患者に投与されると、免疫反応を引き起こし[非特許文献17]、治療用抗体も例外ではない[非特許文献18]。しかしながら、製品抗体の生成率は製品間で大きく異なっており、大部分の個体で抗体を誘導するものもあれば、それ以外の場合では、免疫反応の発生は稀有である[非特許文献19]。抗体構造内にあるヒト以外のアミノ酸配列の存在であろうと、標的分子の性質であろうと、適用経路であろうと、または治療薬が必要な疾患の種類であろうと、多くの要因は免疫反応の発生に影響を与える。まさに同じアミノ酸一次配列を含む同一産物の2つの電荷内において、凝集体の形成、違った形に折り畳まれたタンパク質の3次元構造の存在、または不純物の存在が免疫原性に大きく影響を与える場合がある[非特許文献20]。免疫原性についての劇的な結果は、製品抗体が患者の内因性タンパク質と交差反応する場合に印象的に観察されており、これは組換えエリスロポエチンαの剤形の変更後に観察された[非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24]。このように、製造変更が相対免疫原性の面で製品の品質に与えうる結果をモニターする系が早急に必要とされている。
【0006】
タンパク質の一次構造の変化は、単離されたヒト樹状細胞およびヒトヘルパーTリンパ球からなるインビトロ系を用いて、容易にモニターすることができる[非特許文献25]。これらのモデルはドナー間のT細胞前駆体頻度の相違およびMHCの多型性によって制限されることがあり、統計的に有意な結果に到達するには異なるMHC遺伝子型を有する多数のドナーの調査を必要とする。さらに重要なことには、一次構造を除くがタンパク質の三次構造を含むより微妙な変化は、単離されたインビトロ系ではモニターすることができず、より完全な免疫系のモデルを必要とする。そのようなモデルはインビボ動物系によって供与されることができる。
【0007】
とりわけ、ヒト相同体は動物において免疫原性であり、したがって、動物におけるヒト抗体の試験ではヒトにおいてその免疫原性の可能性をほとんど予測できない[非特許文献26]。しかしながら、異なる調製物の相対免疫原性は、場合によっては評価することができる[非特許文献27]。ヒトタンパク質は動物にとって外来性であり、したがって免疫反応を惹起すると考えられるが、対象とするヒトタンパク質についてトランスジェニックとなった動物はその導入遺伝子を自己と認識し、その導入遺伝子によってコードされるタンパク質に対して寛容になると考えられる。動物モデルまたはインビトロ系では、現在、もっぱらかつ確実に臨床試験で判定だけをすることができる、ヒトにおける治療用タンパク質に対する免疫反応を予測することはできないが、ヒト抗体トランスジェニックマウス[非特許文献28]は、治療用抗体に対するB細胞の寛容破壊の原因となる要因を評価するために最良のモデルであり、したがって免疫同等性(immunocomparability)、すなわち、製造変更がトランスジェニックマウスでの治療用抗体の相対免疫特性に与えうる影響の評価における重要な手段となると考えられる。
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of an international symposium on monoclonal antibody therapy with orthoclone OKT3 in renal transplantation. Transplant Proc, 1986. 18(4): p. 923-56. Burdick, J. F., et al.
【非特許文献2】Reversal of progressive renal allograft dysfunction with OKT3. Nephron, 1987. 46 Suppl 1: p. 52-5; Farges, O., et al.
【非特許文献3】A randomized trial of OKT3-based versus cyclosporine-based immunoprophylaxis after liver transplantation. Long-term results of a European and Australian multicenter study. Transplantation, 1994. 58(8): p. 891-8.; Farrell, M. L.
【非特許文献4】Orthoclone OKT3: a treatment for acute renal allograft rejection. Anna J, 1987. 15(6): p.373-6.: Friedman, J., et al.
【非特許文献5】Orthoclone OKT3 treatment of acute renal allograft rejection. Transplant Proc, 1987. 19(2 Suppl 2): p. 46; Gordon, R. D., et al.
【非特許文献6】Experience with Orthoclone OKT3 monoclonal antibody in liver transplantation. Am J Kidney Dis, 1988. 11(2): p. 141-4; Smith, S. L.
【非特許文献7】Ten years of Orthoclone OKT3 (muromonab-CD3): a review. J Transpl Coord, 1966. 6(3): p. 109-19; quiz 120-1
【非特許文献8】Tcheng, J. E., Dosing and administration of ReoPro (c7E3 Fab). J Invasive Cardiol, 1994. 6 Suppl A: p. 29A-33A; discussion 51A-54A
【非特許文献9】Faulds, D. and E. M. Sorkin, Abciximab (c7E3 Fab). A review of its pharmacology and therapeutic potential in ischaemic heart disease. Drugs, 1994. 48(4): p. 583-98
【非特許文献10】Huston, J. S. and A. J. George, Engineered antibodies take center stage. Hum Antibodies, 2001. 10(3-4): p. 127-42
【非特許文献11】Kipriyanov, S. M. and F. Le Gall, Generation and production of engineered antibodies. Mol Biotechnol, 2004. 26(1): p. 39-60
【非特許文献12】Gura, T., Therapeutic antibodies: magic bullets hit the target. Nature, 2002. 417(6889): p. 584-6
【非特許文献13】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): p. 457-62
【非特許文献14】Schellekens, H., When biotech proteins go off-patent. Trends Biotechnol, 2004. 22(8): p. 406-10
【非特許文献15】Rosenberg, A. S., immunogenicity of biological therapeutics: a hierarchy of concerns. Dev Biol(Basel), 2003. 112: p. 15-21
【非特許文献16】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): p. 457-62
【非特許文献17】Ryff, J. C. and H. Schellekens, Immunogenicity of rDNA-derived pharmaceuticals. Trends Pharmacol Sci, 2002. 23(6): p. 254-6
【非特許文献18】Ryff, J. C. and H. Schellekens, Immunogenicity of rDNA-derived pharmaceuticals. Trends Pharmacol Sci, 2002. 23(6): p. 254-6
【非特許文献19】Schellekens, H., Immunogenicity of therapeutic proteins: clinical implications and future prospects. Clin Ther, 2002. 24(11): p. 1720-40; discussion 1719
【非特許文献20】Schellekens, H.,When biotech proteins go off-patent. Trends Biotechnol, 2004. 22(8): p. 406-10
【非特許文献21】Casadevall, N., Antibodies against rHuEPO: native and recombinant. Nephrol Dial Transplant, 2002. 17 Suppl 5: p. 42-7
【非特許文献22】Casadevall, N., Pure red cell aplasia and anti-erythropoietin antibodies in patients treated with epoetin. Nephrol Dial Transplant, 2003. 18 Suppl 8: p. viii37-41
【非特許文献23】Casadevall, N. and L. Croisille, [Erythropoiesis disorders and other central autoimmune anemias]. Rev Prat, 2001. 51(14): p. 1547-51
【非特許文献24】Casadevall, N., et al., Pure red-cell aplasia and antierythropoietin antibodies in patients treated with recombinant erythropoietin. N Engl J Med, 2002. 346(7): p. 469-75
【非特許文献25】Stickler, M. M., D. A. Estell, and F. A. Harding, CD4+ T-cell epitope determination using unexposed human donor peripheral blood mononuclear cells. J Immunother, 2002. 23(6): p. 654-60
【非特許文献26】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): P. 457-62
【非特許文献27】Palleroni, A. V., et al., Interferon immunogenicity: preclinical evaluation of interferon-alpha 2a. J Interferon Cytokine Res, 1997. 17 Suppl 1: p. S23-7
【非特許文献28】Storb, U., Transgenic mice with immunoglobulin genes. Annu Rev Immunol, 1987. 5: p. 151-74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
抗体トランスジェニックマウスは当技術分野において周知である。しかしながら、それらは治療用抗体の免疫同等性評価の問題を解決するためには用いられていない。本発明は、ヒトインビトロ系内で直面する欠点に取り組み、治療用抗体の免疫学的同等性を確実にするという現在未解決の問題に対する解決策を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(1)は、外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法である。
本発明(2)は、外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(1)の方法である。
本発明(3)は、トランスジェニック標準抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(1)の方法である。
本発明(4)は、トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、本発明(3)の方法である。
本発明(5)は、非ヒト動物が哺乳類である、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(6)は、非ヒト動物が齧歯類である、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(7)は、非ヒト動物がマウスである、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(8)は、変異体が一次、二次および三次タンパク質構造の変異、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含む、本発明(1)〜(6)のいずれか一発明の方法である。
本発明(9)は、治療用抗体の免疫同等性を評価する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階を含む方法である。
本発明(10)は、トランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するための標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物の使用である。
本発明(11)は、外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(10)の使用である。
本発明(12)は、トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、本発明(10)の使用である。
本発明(13)は、非ヒト動物が哺乳類である、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(14)は、非ヒト動物が齧歯類である、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(15)は、非ヒト動物がマウスである、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(16)は、特に以下に記載の例に関連して実質的に本明細書に記載される方法および使用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニックであるその標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む、外因性抗体変異体の相対免疫原性を判定する方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、抗体の免疫同等性を評価する方法を提供し、それにより抗体調製物が標準抗体調製物と比較して免疫反応を誘発するか否か(相対免疫原性)を判定することを可能にする。
【0013】
本発明は、以下の段階を含む、外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法を提供する:
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) そのトランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、および
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階。
【0014】
外因性抗体は治療用抗体であってもよい。好ましくは、外因性抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドまたはその変異体に対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGの変異体である。抗AβIgGは、参照として本明細書に完全に組み入れられる特許出願であるWO03/070760の中に詳細に記載されている。
【0015】
好ましくは、トランスジェニック標準抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGである。
【0016】
トランスジェニック非ヒト動物は任意の非ヒト動物であってよい。好ましい非ヒト動物は哺乳類である。より好ましくは、非ヒト動物はマウスまたはラットなどの齧歯類である。
【0017】
本明細書で用いられる「標準抗体」という用語は、限定条件の下で作製された抗体であって、定量値または定性値に関する一般的に認められた計測に役立つ抗体のことをいう。
【0018】
本明細書で用いられる「変異体」または「抗体変異体」という用語は、標準抗体と構造特性、調製方法、製剤形態、または保存条件が異なる抗体のことをいう。構造変異体は一次、二次および三次タンパク質構造の変異(すなわち、立体構造変化)、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含んでもよい。さらなる構造変異は、すなわち選択的ドメイン間構築体(VL/VL、VH/VH)、二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体である。
【0019】
相対免疫特性に対し影響がありうる要因としては、原体の構造変化、製剤の剤形、不純物および夾雑物を挙げることができる。特に対象となるのは天然タンパク質と下流のプロセシング、保存、剤形および取扱いの変化から生じうる構造変異体との間の免疫原性の相違である[Sharma, V. K. and D. S. Kalonia, Temperature- and pH-induced multiple partially unfolded states of recombinant human interferon-alpha2a: possible implications in protein stability. Pharm Res, 2003. 20(11): p. 1721-9; Chirino, A. J. and A. Mire-Sluis, Characterizing biological products and assessing comparability following manufacturing changes. Nat Biotechnol, 2004. 22(11): p. 1383-91]。これらの変異はアミノ酸交換のような一次構造の変化、グリコシル化変異体およびアセチル化、アスパラギン脱アミド化、メチオニン、ヒスチジンもしくはトリプトファン酸化のような化学修飾、または、例えば、酸化ストレスもしくは光ストレス、誘導体化を誘導する可能性のある賦形剤もしくは不純物によって引き起こされるその他の化学修飾を含む[Moss, C. X., et al., Asparagine deamidation perturbs antigen presentation on class II MHC molecules. J Biol Chem, 2005; Mamula, M. J., et al., Isoaspartyl post-translational modification triggers autoimmune responses to self-proteins. J Biol Chem, 1999. 274(32): p. 22321-7; Duenas, E. T., et al., Comparison between light induced and chemically induced oxidation of rhVEGF. Pharm Res, 2001. 18(10): p. 1455-60; Gribben, J. G., et al., Development of antibodies to unprotected glycosylation sites on recombinant human GM-CSF. Lancet, 1990. 335(8687): p. 434-7; Mimura. Y., et al., Role of oligosaccharide residues of IgG1-Fc in Fc gamma RIIb binding. J Biol Chem, 2001. 276(49): p. 45539-47; Chianese-Bullock, K. A., et al., Antigen processing of two H2-IEd-restricted epitopes is differentially influenced by the structural changes in a viral glycoprotein. J Immunol, 1998. 161(4): p. 1599-607; Khossravi M, Shire SJ, Borchardt RT. Evidence for the involvement of histidine A(12) in the aggreegation and precipitation of human relaxin induced by metal-catalyzed oxidation. Biochemistry. 2000 May 16; 39(19): 5876-85; Margiloff L, Chaplia L, Chow A, Singhal PC, Mattana J. Metal-catalyzed oxidation of immunoglobulin G impairs Fc receptor-mediated binding to macrophages. Free Radic Biol Med. 1998 Nov 1; 25(7): 780-5; Duenas, E. T., et al., Comparison between light induced and chemically induced oxidation of rhVEGF. Pharm Res, 2001. 18(10): p. 1455-60]。二次および三次構造変異体は、例えば、一次構造の改変の結果として、完全なもしくは部分的な還元、分子内ジスルフィド架橋の変化(「スクランブリング」)、または分子内共有架橋によって生じうる。天然タンパク質と同じ一次配列を有する配座異性体は、例えば、熱応力、短時間のpH変化または有機溶媒とのインキュベーションによって形成するることができる[Sharma, V.K. and D. S. Kalonia, Temperature- and pH-induced multiple partially unfolded states of recombinant human interferon-alpha2a: possible implications in protein stability. Pharm Res, 2003. 20(11): p. 1721-9; Vermeer, A. W. and W. Norde, The thermal stability if immunoglobulin: unfolding and aggregation of a multi-domain protein. Biophys J, 2000. 78(1): p. 394-404; Ronnelid, J., et al., Immune complexes from SLE sera induce IL10 production from normal peripheral blood mononuclear cells by an FcgammaRII dependent mechanism: implications for a possible vicious cycle maintaining B cell hyperactivity in SLE. Ann Rheum Dis, 2003. 62(1): p. 37-42; Melnikova, Y. I., et al., Antigen-binding activity of monoclonal antibodies after incubation with organic solvents. Biochemistry (Mosc), 2000. 65(11): p. 1256-65; Reed MA, et al., The denatured state under native conditions: a non-native-like collapsed state of N-PGK. J Mol Biol. 2006 Mar 24;357(2):365-72]。選択的ドメイン間構築体(VL/VL、VH/VH)、二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体のようなより高次の構造変異は、共有結合性の分子間架橋によって形成されることができ、例えば、酸化ストレスおよび/または分子間架橋を誘導する可能性のある賦形剤もしくは不純物の存在によって誘導されることができる。二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体は同様に、非共有結合性の分子間相互作用によって、例えば、非天然性配座異性体の形成、ミセル形成または一次構造の改変の結果として形成されることができる。
【0020】
特に対象となるのは立体構造変化に加えて、その反復的なエピトープ特性が原因となるより大きな凝集体であり、これらは種々の治療用タンパク質の免疫原性を増大させることが知られている(Braun, A., et al., Protein aggregates seem to play a key role among the parameters influencing the antigenicity of interferon alpha(IFN-alpha) in normal and transgenic mice. Pharm Res, 1997. 14(10): p. 1472-8; Hochuli, E., Interferon immunogenicity: technical evaluation of interferon-alpha 2a. J Interferon Cytokine Res, 1997. 17 Suppl 1: p. S15-21; Hermeling S, et al., Structural characterization and immunogenicity in wild-type and immune tolerant mice of degraded recombinant human interferon alpha2b. Pharm Res. 2005 Dec;22(12):1997-2006)。凝集体形成は、例えば、光への曝露、物理的応力(振盪または撹拌)によって促進されることが知られており、とりわけ高温下での長期保存の間にまたは製剤の不適切な取扱い(物理的応力)によって起こりうる(Wang, W. Protein aggregation and its inhibition in biopharmaceutics. Int J Pharm. 2005 Jan 31, 289(1-2): 1-30、および本明細書の引用文献)。
【0021】
本明細書で用いられる「免疫反応」という用語は、抗体産生、細胞性免疫、および免疫寛容を含む、抗原刺激に対する免疫系の任意の反応のことをいう。
【0022】
本明細書で用いられる「治療用抗体」という用語は、疾患の処置、治療および診断に使用できるモノクローナル抗体のことをいう。治療用抗体は抗原に対する免疫反応として任意の動物によって産生される抗体であってよい。好ましくは、治療用抗体は齧歯類によって、より好ましくはマウスによって産生される。治療用抗体はまた遺伝子操作によって産生される抗体であってもよい。適当な方法、すなわち、ファージディスプレイ法は当技術分野において周知である(Brekke OH and Loset GA, New technologies in therapeutic antibody development Curr Opin Pharmaco. 2003 Oct: 3(5): 544-50.)。好ましくは、治療用抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0023】
本発明はさらに、以下の段階を含む、治療用抗体の免疫同等性を評価する方法を提供する:
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) そのトランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階。
【0024】
治療用抗体に対して作製された血清中の抗体は、治療用抗体に対する免疫反応としてトランスジェニック動物により産生された抗体である。
【0025】
トランスジェニック非ヒト動物を産生する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、すなわち、Hogan B., Beddington R., Costantini F. and Lacy E. Manipulating the mouse embryo. A laboratory manual. 2nd Edition (1994). Cold Spring Harbor Laboratory Pressにある。
【0026】
トランスジェニック非ヒト動物での抗体の発現は構成的または誘導性であってよい。好ましくは、抗体の発現は構成的である。
【0027】
免疫反応を評価する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、例えば、ELISAである。さらなる方法はHarlow E. and Lane D. Antibodies. A laboratory manual. (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Pressで見ることができる。
【0028】
さらに、本発明は標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物およびトランスジェニック標準抗体の、好ましくは治療用抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するためのその使用に関する。
【0029】
トランスジェニック非ヒト動物は任意の非ヒト動物であってよい。好ましい非ヒト動物は哺乳類である。より好ましくは、非ヒト動物はマウスまたはラットなどの齧歯類である。トランスジェニック非ヒト動物を産生する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、すなわち、Hogan B., Beddington R., Costantini F. and Lacy E. Manipulating the mouse embryo. A laboratory manual. 2nd Edition (1994). Cold Spring Harbor Laboratory Pressの中にある。
【0030】
免疫反応を評価する方法は同様に、当技術分野において周知である。適当な方法は、例えば、ELISAである。さらなる方法はHarlow E. and Lane D. Antibodies. A laboratory manual. (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Pressで見ることができる。
【0031】
外因性抗体は治療用抗体であってもよい。好ましくは、外因性抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドまたはその構造変異体に対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGの変異体である。抗AβIgGは、参照として本明細書に完全に組み入れられる特許出願であるWO03/070760の中に詳細に記載されている。
【0032】
好ましくは、トランスジェニック標準抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGである。
【0033】
これまで本発明を概ね説明してきたが、説明の目的のみで本明細書に含まれており、特別の定めのない限り限定することを意図するわけではない具体例を添付の図とともに参照することによって、本発明はいっそう理解されるようになると思われる。
【実施例】
【0034】
実施例の中で挙げる市販の試薬は特に指定のない限り、製造元の使用説明書にしたがって使用した。
【0035】
実施例1: ヒト免疫グロブリンのトランスジェニックマウスの作製
構築体の作製
ヒトAbペプチドに特異性を有する、アイソタイプγ1の免疫グロブリン(Ig)重鎖(H)をコードするcDNA(配列番号:1)およびアイソタイプκの軽鎖(L)をコードするcDNA(配列番号:2)を使用した[Bardroff, M.e.a, Anti-amyloid beta antibodies and their use. EP03001759 EP, 2003]。表1のプライマーを用いて、これらのcDNAをPCR反応で増幅させた。pHSE3'ベクターへの定方向挿入用に、その5'プライマーはSalI(または適合するXhoI)部位を含んでおり、その5'プライマーはBamHI(または適合するBglII)部位を含んでいる[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]。PCR増幅されたcDNAをはじめに両制限酵素SalIおよびBamHIで切断し、その後、ベクターpHSE3'の対応部位に個別に挿入した。pHSE3'でのIg cDNAの発現はMHCクラスI遺伝子H-2kのマウスプロモーターにより動かされ、クローニングした遺伝子の3'側に位置するマウスIg H遺伝子エンハンサーにより促進される[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]。この発現ベクターはトランスジェニックマウスのTおよびBリンパ球において対応する挿入遺伝子産物の高レベルの産生を確実にする([Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]および未発表の知見)。次に、H-2kプロモーター、挿入したcDNA、ポリ-Aおよびスプライス部位ならびにIg H遺伝子エンハンサー要素を含む(5'から3'へ)、発現カセット全体をXhoIによる制限酵素切断およびアガロースゲル精製によってベクターから切り出し、受精マウス卵母細胞への微量注入に十分な濃度(10 mM TrisHCl/0.1 mM EDTA, pH7中で2 μg/ml)に調製した。cDNAのコーディング領域として可能性のある領域は、抗Aβ Ig HおよびL遺伝子をコードするcDNA全体を配列決定することによって確認された(図1を参照されたい)。
【0036】
(表1)クローニングプライマーの配列
【0037】
抗Aβ IgG1トランスジェニックマウスの作製
C57BL/6雌性ドナーから得た受精卵母細胞に、前項で記載したIgGおよびIgL遺伝子をコードする精製XhoI断片の1:1混合物を微量注入してダブルトランスジェニックマウスを得た。尾部生検から調製したゲノムDNAを特異的プライマーで増幅することによって導入遺伝子が存在するかどうか、これらの微量注入胚から生まれた産仔をスクリーニングした。使用したプライマーは表2に示されている。
【0038】
(表2)導入遺伝子の検出用のプライマー配列
【0039】
PCR反応は尾部生検から得た総DNA 1 μl(約100 ng)を用いて、以下の条件によるPCR反応で行った: 90℃で1分、30サイクル×[94℃で10秒、64℃で30秒、72℃で90秒]、72℃で7分。PCR増幅された約660 bpのDNA断片を最終的に、トランスジェニックIg HおよびIg L遺伝子に対して個別に1.5%アガロースゲルで可視化した。
【0040】
全体で、トランスジェニックIg HおよびIg L両遺伝子を持ったダブルトランスジェニックマウス5匹とIg H遺伝子のみを持ったシングルトランスジェニックマウス1匹を作製し飼育した。
【0041】
実施例2: トランスジェニックマウスの表現型の特徴付け
血清分析
血液を尾静脈穿刺により得た。凝固を室温で一晩行った。血清を500×g、10分間の遠心によって分離し、さらに分析するまで-20℃で凍結した。
【0042】
トランスジェニックマウスがヒト抗体を十分に発現するかどうかを確認するために、ELISA系を開発した。ヒト抗体はポリクローナルヤギ抗ヒトκ鎖特異抗体(Sigma K 3502)を用いて捕捉した。検出はペルオキシダーゼ(POD, Sigma A 0170)に結合したモノクローナルマウス抗ヒトγ鎖特異抗体で行った。図5に示されるように、トランスジェニックマウスはヒト免疫グロブリンを十分に発現する。
【0043】
リンパ球亜集団をFACSで測定した。血液を尾静脈穿刺により得て、ヘパリンコーティングチューブ(Sarstedt)の中に回収した。製造元によって記載されているとおり、赤血球を溶解緩衝液(Buffer EL, カタログ番号70217, Qiagen)で溶解させた。細胞をFACS緩衝液(PBS, 0.05% NaN3, 3% FCS)の中に再懸濁し、抗体染色を製造元の提案(Becton-Dickinson)にしたがって行った。図4に示されるように、野生型マウスもトランスジェニックマウスもともに同程度の割合のB細胞(B220+)、T細胞(CD5+)、CD4+ Tヘルパー細胞およびCD8+ 細胞傷害性T細胞を含む。したがって、トランスジェニックヒトIgG1の発現はリンパ球亜集団に影響を与えない。
【0044】
免疫適格性の評価のために、5匹のトランスジェニックマウスおよび野生型同腹仔対照マウスの群にモデル抗原KLH(Keyhole Limpet Hemocynin, Sigma, H-7017, Lot 121K4838)を免疫した。KLHがコーティングされたmaxisorpプレート(Nunc)を捕捉用におよび抗マウスIgG1(BD Pharmigen)を検出用に用いて、抗KLHの力価をELISAで測定した。野生型マウスおよびトランスジェニックマウスはKLHに対し同程度の免疫反応を起こす(図5)。従って、hIgG1トランスジェニックマウスは免疫適格性である。
【0045】
ヒトIgG1抗体HUMIRA(Abbott)を用いた免疫によって、密接に関わる抗原に対する反応を評価した。HUMIRA 10 μgをRehydragel HPA (Reheis) 200 μlで乳化させた。0日目に動物の腹腔内に(i.p.)免疫し、7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって採血し、かつ血清を調製し、HUMIRAをmaxisorpプレート(Nunc)にコーティングすることで捕捉用に使用し、抗マウスIgG(BD Pharmigen)によって抗HUMIRA抗体を検出して、抗HUMIRAの力価をELISAにより評価した。図6に示されるように、トランスジェニックマウスは、密接に関わるヒトIgG1抗体HUMIRAに対する反応を起こす。
【0046】
実施例3: Mab11(Aβ-IgG1抗体としても呼ばれる)の産生、精製および特徴付け
細胞培養
チャイニーズハムスター卵巣細胞(Hoffmann-La Roche, Switzerland)を自家DHI培地組成(Invitrogen)での無血清増殖に順応させた。その培地組成は0.2% 大豆 1510および0.2% イネ HyPep 4601 (Kerry Bioscience)の植物加水分解物を加えたDMEM、HamのF12およびIMDMの各割合1:1:2(v:v:v)の混合物(Schlaeger and Schumpp 1992)である。細胞はスピナーフラスコ(Bellco, Inotech AG, Dotlikon, Switzerland)の中で、推奨される動作容積およそ70%を使い80〜100 rpmで日常的に増殖させた。大量培養およびトランスフェクションは、6 Lスピナーフラスコ中または5〜14リットルの撹拌槽型バイオリアクター(Chemap, MBR, Zurich, and Infors, Bottmingen, Switzerland)中のいずれかで行った。pMAb-11のプラスミド調製は、市販のキット(Nucleobond Ax, Macherey-Nagel AG, Switzerland)を用いて行った。プラスミド濃度を分光光度法により測定し、標準物質としてpUC18 DNA (Pharmacia Biotech, Zurich, Switzerland)を用いたアガロースゲル電気泳動法により推定した。
【0047】
トランスフェクション手順
トランスフェクション実験の場合、DHI培地中で増殖した懸濁CHO細胞を最終容器中に1×106個/mlの密度で播いて、細胞2〜3×106個/mlの密度まで培養した(1〜2日)。その後、再度細胞濃度を直前に調製したDHI培地で細胞1〜1.5×106個/mlに調整し、トランスフェクションを行う前に、この培養物を3〜4時間増殖させた。トランスフェクション複合体の添加後、細胞をトランスフェクションから24時間37℃で培養した。24時間を超えてから、温度を5〜6日の培養の残りの期間に33℃まで変化させた。上清試料を24時間毎に定期的に回収し、モノクローナル抗体(mAb)含有量をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Amersham, Aekta FPLCシステム)により測定した。上清は、ろ過により回収し、プロテインA樹脂(mAb Select, Amersham, GE)の入った第1精製カラムに直接添加した。
【0048】
トランスフェクション複合体の調製
DNA複合体は室温で、ヘパリンなしのHL培地中にて培養体積の1/10中で形成させた(Schlaeger and Schumpp 1990, Schlaeger 1996)。CHO細胞に対して最適化された遺伝子送達条件の下で、細胞1 ml当たりDNA 0.7 μgを直前に調製した培地0.1 mlに添加し、穏やかに混合した。2分後、Ro 1539 Xtreme Gene (Roche Applied Science, Indianapolis, USA) 1 μlを添加し混合した。室温で15分インキュベートした後、トランスフェクション複合体を等量の細胞に、すなわち、バイオリアクターまたはスピナーフラスコの中に移した。
【0049】
発酵上清からのMab11の単離および精製
強化ガラス器具だけを使うことによって、手順は全て内毒素を含まない条件の下で実施し、カラムを含めた機器全ての衛生化を0.5 M NaOHで行い、全ての緩衝液の滅菌ろ過(0.22 μm)を行った。直前に調製したゲル材料だけを使用した。
【0050】
第1段階: プロテインAアフィニティークロマトグラフィー
BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたMab Selectゲル(Amersham)を最初にゲル容量(GV)の3倍量の平衡化緩衝液(25 mM Tris/HCl; 25 mM NaCl, 5 mM EDTA pH 7.1)、GVの2倍量の再生緩衝液(2 Mグアニジン、100 mM Tris pH 7.5)で洗浄し、続いてGVの5倍量の平衡化緩衝液で洗浄した。プレラン後、最大でMab 20 mg/mlをゲルに添加した。カラムを最初にGVの3倍量の平衡化緩衝液で洗浄し、次いでGVの4倍量の洗浄緩衝液(1 M Tris/HCl pH 7.2)およびGVの3倍量の平衡化緩衝液で洗浄した。プロテインA結合抗体を100 mM HAc pH 2.9で溶出した。ウイルス不活化の場合には、溶出液をHAcでpH≦3.6に調整し、その後、RTで15分間インキュベートし、次いで1 M TrisでpH 4.0に調整する。
【0051】
第2段階: イオン交換クロマトグラフィー(陽イオン交換クロマトグラフィー)
BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたSP-Toyopearl 650M (Tosoh)を最初にGVの2倍量の再生緩衝液(0.5 M NaOH, 1 M NaCl)およびGVの3倍量の再生緩衝液A緩衝液(50 mM HAc, pH 5.0)で洗浄した。プレラン後、最大でMab 10 mg/mlをゲルに添加した。カラムを最初にGVの0.5倍量のA緩衝液で洗浄し、次いでB緩衝液(50 mM HAc, 1 M NaCl pH 5.0) 0〜100%までの勾配溶出を行った。タンパク質溶出画分を回収し、IEXおよびSEC HPLCにより分析した。
【0052】
第3段階: サイズ排除クロマトグラフィー(フロースルー陰イオン交換クロマトグラフィー)
第2段階の画分を限外ろ過によって濃縮し、pH 7.5に調整し、BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたQ-Sepharose FFゲル(BioRad)に添加した。SECクロマトグラフィーは移動相として25 mM Tris/HCl, 80 mM 酢酸Na, pH 7.5を用いて行った。溶出物をUVシグナルにしたがって分画し、pH 5.5に調整した。20 mMヒスチジン/140 mM NaCl, pH 5.5を含有するMab11偽薬への緩衝液の交換および濃縮の調整は、10 kDaの膜を使ったAmicon撹拌セル(Amicon)の中で行った。溶液を最後に0.22 μmのMillex-GV滅菌フィルター(Millipore)によってろ過し、-80℃で分注保存した。
【0053】
Mab11の特徴付け
サイズ排除クロマトグラフィー
Jasco PU-980 HPLCシステムを使用することによって、精製Mab11の試料をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。移動相として0.2 M K2HPO4, 0.25 M KCl, pH 7.0を用いて、試料をTSK-Gel G3000SWXL, 7.8×300 mm, 5 μmカラム(Tosho Biosciences)でクロマトグラフィーにより分析した。流速は0.5 ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、吸光度を220 nmでモニターした。
【0054】
安定なベースラインが得られるまで、カラムを平衡化した。ゲルろ過標準物質(670 kDのウシチログロブリン、158 kDのウシIgG、44 kDのオボアルブミン(OVA)、17 kDのウマ(eq.)ミオグロビン、1.35 kDのビタミンB12を含む、BioRad, 151-1901)、Mab11偽薬(陰性対照: Mab11なしの緩衝液)、Mab11試料の順に注入した。注入量は試料およそ50 μg相当であった。代表的なサイズ排除クロマトグラムは図7に示されている。結果: 155〜160 kDaに対応する保持時間に対称性のピークあり。凝集体または断片は検出できなかった。
【0055】
イオン交換クロマトグラフィー
Jasco PU-980 HPLCシステムを使ったイオン交換クロマトグラフィーにより、精製Mab11の試料を分析した。20分でB 0% 〜B 52% (移動相A: 50 mM マロン酸/マロネート水溶液, pH 5.3; 移動相B: 1 M酢酸Naの移動相A, pH 5.3溶液)の勾配を用いて、試料をMono S 5/50 GLカラム(Amersham Biosciences)でクロマトグラフィーにより分析した。流速は1 ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、吸光度を280 nmでモニターした。
【0056】
安定なベースラインが得られるまで、カラムを移動相Aで平衡化した。Mab11偽薬、Mab11試料の順に注入した。Mab11の注入量はおよそ50 μg相当であった。代表的なイオン交換クロマトグラム(IEC)は図8に示されている。結果: Mab11試料の95%が分離しない肩を持つ単一ピークとして高い保持時間に溶出する。約5%が短い保持時間で溶出する。
【0057】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
Xcell Mini-Cell II Gelsystem (Invitrogen)を使ったSDS-PAGEにより、精製Mab11の試料を分析した。予め希釈した試料を還元性または非還元性の試料用緩衝液と混合して、20 μL当たり2〜8 μgの濃度にした。還元性の試料用緩衝液は製造元の助言にしたがい、NuPAGE LDS試料用緩衝液(Invitrogen)をNuPAGE還元剤(Invitrogen)と混合することによって調製した。還元性の試料用緩衝液中の試料は70℃で10分間インキュベートした。試料および標準物質を10ウェルコーム、1.0 mm厚のNuPAGE 4〜12% Bis-Tris Gel (Invitrogen, #NP0301BOX)に添加した。標準物質として、200〜2.5 kDaの範囲にわたるMark 12(商標)分子量マーカー(Invitrogen, #LC5677)を使用した。NuPAGE MOPS SDS泳動用緩衝液(Invitrogen)を用いて、ゲルを200Vで1時間泳動した。ゲルをStainEase Gel染色トレイ(Invitrogen)に入れて一晩染色し、デンシトメトリーによってスキャンし分析した。同一ゲル内で泳動された基準標準物質から得られた標準試料曲線を参照して、タンパク質濃度を算出した。結果: 還元条件下でのSDS-PAGEによって、IgG1 H鎖およびL鎖の分子量に相当する2本のバンドが示される。凝集体または断片は検出できない(図9を参照されたい)。
【0058】
質量分析
質量分析の場合、還元/カルボキシメチル化した抗体を実施例5に記載の方法にしたがって調製した。Agilent 1100 Capillary-HPLCシステムを使用することにより、試料を分析的なRP-HPLC分析に供した。試料は勾配系(A: 0.1%ギ酸水溶液、B: 0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)を使うことによって、Agilent Poroshell C8-逆相(0.5×75 mm)カラムでクロマトグラフィーにより分析した。流速は15 μl/分に設定し、カラム温度は70℃に設定した。クロマトグラフィー溶出物(stream)を次に質量分析計のESIイオン源に供した。測定はESI-Q-TOF質量分析計(Micromass/Waters Q-TOF Ultima, Manchester, UK)で、lockspray質量補正を用いポジティブモードにて行った。タンパク質のスペクトルをMasslynx MaxEnt1モジュールで解析した。
【0059】
RA-Mab11のLC/MS分析は図10に示されており、実測し算出した質量は表3で割り当てられている。
【0060】
(表3)RA-Mab11のLC/MS分析、実測質量の割り当ての結果 (図10を参照されたい)
L鎖 = 軽鎖、H鎖 = 重鎖。
【0061】
結果: 検出された質量はH鎖でpyro-Gluを1残基有しLysを1残基欠損しているMab11一次配列を有する、還元/カルボキシメチル化した抗体のH鎖およびL鎖に対して理論的に予測されるものと一致する。H鎖は主にG0グリコシル化およびG1グリコシル化されており、G2はわずかな伸びだけである。
【0062】
実施例4: 寛容の免疫学的評価
5匹のトランスジェニックマウスおよび野生型同腹仔対照マウスの群に、Rehydragel-HPA (Reheis) 200 μlで乳化させた組換えMab-11 10 μgを腹腔内経路で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって血液を得た。凝固によって血清を調製し、血清の抗Mab-11の力価をmaxisorpプレート(Nunc)をMab-11でコーティングすることによってELISAで測定し、抗マウスIgG(BD Pharmingen)により抗Mab-11抗体を検出した。ELISA分析は、野生型動物においてMab-11に対する強い免疫反応を起こし、その一方でhIgG1トランスジェニック動物においてはrhIgG1に対する免疫反応を起こすことができないことを明らかにした(図11)。このように、hIgG1トランスジェニックマウスは、外来的に供給された同じアイソタイプの抗体および特異性に対し、例えば、その導入遺伝子の産物に対し寛容である。
【0063】
実施例5: 原体の変異体の作製
構造変異体として、還元/アルキル化したMab11を選択した。この誘導体は詳細に明らかにされており、包括的な物理化学的特徴付けに適しているからである。鎖間ジスルフィド結合の還元切断によって、抗体は重鎖と軽鎖に切断される。次に遊離スルフヒドリル基をヨード酢酸でアルキル化して、再酸化による重合を阻止した。
【0064】
還元/アルキル化したMab11の産生および特徴付け
完全に還元されカルボキシメチル化されたMab11の調製のため、ジチオスレイトール(DTT)を脱イオン水に溶解して0.1 g/mlとし、これを1 mg/ml Mab11の6 M グアニジンHCl 0.3 M Tris/HCl pH 8.5溶液に添加して20 mMの終濃度にした。50℃+/-3℃で60分インキュベーション後、脱イオン水に直前に溶解したヨード酢酸(IAA) 0.33 g/mlを50 mMの終濃度になるまで添加した。アルキル化は30分間室温で暗所にて進めた。IAAに対し1.5倍モル過剰のDTTを添加することおよびRTで10分間インキュベーションすることで、IAAを不活化した。
【0065】
還元/アルキル化した抗体(RA-Mab-11)は20 mM Tris/HCl緩衝液pH 8.5を移動相とし、カラム当たり最大で試料添加を1.5 mlとし、製造元の助言にしたがってPD-10脱塩カラム(Amersham)を使用することにより精製した。タンパク質を含有する溶出物を2回、PBS pH 7.4またはMab 11偽薬を移動相とし、PD-10またはNAP-5脱塩カラム(Amersham)を使用して精製した。タンパク質を含有する画分を回収し、層流下でろ過滅菌し、無菌のポリプロピレンチューブに分注し、-80℃で保存した。生産管理および還元/カルボキシメチル化した抗体のタンパク質濃度の決定は、実施例3に概説されているとおり、キャピラリーLC-QTOF-MSおよびSDS-PAGEによって行った。
【0066】
RA-Mab11の特徴付け、結果: 還元条件下でのSDS-PAGEによって、IgG1 H鎖およびL鎖の分子量に相当する2本のバンドが示される。凝集体または断片は検出できない(図9を参照されたい)。質量分析の結果は、実施例3(表3および図10)を参照されたい。
【0067】
実施例6: Mab-11トランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック産仔での還元/アルキル化した(RA-) Mab-11変異体の免疫原性の評価
天然タンパク質と比べて立体構造変化がインビボトランスジェニックマウスモデルでの感作に重大な寄与をもたらすかどうかを確認するため、本発明者らはトランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック産仔をジスルフィド結合の完全なまたは部分的な還元およびアルキル化によって調製されたMab-11誘導体で免疫した。天然タンパク質または構造変異体に対する液性免疫反応の規模をELISAによって評価した。
【0068】
野生型およびトランスジェニックマウスの群(N=5)にRehydragel-HPA (Reheis) 200 μlで乳化させたRA-Mab-11 10 μgを使って、0日目に腹腔内経路で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって採血した。血清を凝固によって調製し、-20℃で保存した。
【0069】
RA-Mab-11に結合する抗体をELISAにより測定した。96ウェルMaxiSorp(商標)プレート(Nunc)のウェルを4℃で一晩RA-Mab-11のPBSでコーティングした。ブロッキングは2% BSAの0.05% Tween 20含有PBS (PBST)で行った。PBSTを洗浄に使用し、0.5% BSAのPBSTを希釈液として使用した。3回洗浄後、希釈した血清試料100 μlをコーティングウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。抗マウスIgG1抗体(BD Pharmigen)を使用して抗体レベルを評価した。抗体の結合はABTS基質溶液(Roche)による発色後に、自動プレートリーダーを用いて450 nmで検出した。
【0070】
ELISA分析によって、RA-Mab-11はMab-11トランスジェニックマウスと非トランスジェニック産仔の両者で強力な液性免疫反応を引き起こす(図12)のに対し、Mab-11トランスジェニックマウスは天然の組換えMab-11処理に対し寛容である(図11)ことが明らかになった。しかしながら、天然Mab-11は野生型産仔では免疫反応を引き起こした(図11)。興味深いことに、RA-Mab-11で免疫することによって一部の動物では天然の自己タンパク質に対する寛容を破壊した(図13)。これはRA-Mab-11によって免疫すると、マウスが天然Mab-11に対する交差反応抗体を発現したからであった。一次免疫から3ヶ月後の天然Mab-11抗体による追加免疫は、交差反応性抗RA-Mab-11によって特徴づけられる記憶B細胞の反応、つまり同一の交差反応性マウスで以前に検出された抗Mab-11の力価をもたらした(図13)。これらの結果は、Mab-11の構造変異体が、未改変の天然タンパク質に寛容であるトランスジェニックマウスで免疫反応を引き起こしたことを明確に示している。このように、Mab-11トランスジェニックマウスは、抗体の二次および三次構造の変化を検出するために適した系である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1−1】トランスジェニック発現用の発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgγ1遺伝子の全コード配列を示す図である。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図1−2】トランスジェニック発現用の発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgγ1遺伝子の全コード配列を示す図であり、図1-1の続きである。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図2】トランスジェニック発現を目的に発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgκ遺伝子の全コード配列を示す図である。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図3】トランスジェニックマウスの血清分析のグラフ表示を示す図である。ヒトκ軽鎖およびヒトγ重鎖に特異的なサンドイッチELISAを行った。MS: マウス血清。hIgG1: γ1アイソタイプの組換えヒト免疫グロブリン。F 2F: 初代マウス2F。Neg: PCR陰性産仔対照。TG 5M+: トランスジェニックマウス5M+。TG 7M+: トランスジェニックマウス7M+。トランスジェニックマウスは両抗体鎖を同一分子内で発現する。
【図4】FACS(蛍光活性化細胞選別)でのリンパ球亜集団の評価のグラフ表示を示す図である。野生型マウスおよびトランスジェニックマウス由来の末梢血リンパ球をB細胞、T細胞ならびにヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞に特異的な抗体で染色した。野生型マウスおよびhIgG1トランスジェニックマウスのリンパ球亜集団間の有意差は検出することができない。A) 野生型B1/6、B) トランスジェニックマウス。
【図5】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)マウスでの抗KLH抗体の力価のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目にKLHで免疫した。7日目および12日目に、抗KLH抗体の力価を評価した。KLH曝露後、トランスジェニックマウスは野生型マウスと同じように反応する。
【図6】トランスジェニックマウスでの抗HUMIRA力価のグラフ表示を示す図である。トランスジェニックマウスを0日目にヒトIgG1抗体HUMIRAで免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、血清の抗HUMIRA力価を測定した。トランスジェニックマウスはHUMIRAに対する反応を起こす。
【図7】A) 分子量標準物質 B) Mab11偽薬およびC) Mab11のサイズ排除クロマトグラム(SEC)を示す図である。機器、使用条件および手順は方法の項に記載したとおりとした。
【図8】A) Mab11偽薬およびB) Mab11のイオン交換クロマトグラムを示す図である。機器、使用条件および手順は方法の項に記載したとおりとした。
【図9】A) 非還元性 B) 還元性の条件下の4〜12% Bis-Trisゲル泳動でのMab11および還元/アルキル化したMab11 (RA-Mab11)のSDS-PAGEの写真を示す図である。
【図10】還元/アルキル化したMab11 (RA-Mab11)のLC/MS分析のグラフ表示を示す図である。A) C8 RP-HPLC、UV追跡(214 nm) B) 解析した質量スペクトル。C) B)のHMW質量ピークの拡大域。実測し算出した質量の割り当てについては、表3を参照されたい。
【図11】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)動物での抗Mab-11力価のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目に天然Mab-11で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、抗Mab-11抗体の力価を評価した。トランスジェニックマウスはMab-11曝露に対し寛容である。
【図12】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)マウスでの抗RA Mab-11力価(RA = 還元アルキル化した)のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目にRA Mab-11で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、抗RA Mab-11力価を評価した。野生型マウスもトランスジェニックマウスもどちらもRA Mab-11に対し反応する。
【図13】Mab-11 (◆)および還元アルキル化した(RA)-Mab-11 (●)に対するトランスジェニック(TG)マウスの抗体反応のグラフ表示を示す図である。トランスジェニックマウスを天然Mab-11およびRA Mab-11で免疫した。最初の免疫から3ヵ月後に、動物を天然Mab-11で追加免疫した。天然Mab-11に対する抗体反応を追加免疫の前後で評価した。2/5のマウスが天然Mab-11との交差反応を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体を用いた治療用または診断用の異なる調製物の相対免疫原性の評価に有用なインビボモデルに関する。免疫原性は、a) 抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニック抗体の標準調製物またはその変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法によって比較される。
【背景技術】
【0002】
治療用モノクローナル抗体は、腎臓移植での同種移植片拒絶反応の阻止に必要とされる組換えマウス抗体Orthoclone、OKT-3について認可を得て、1986年に実際の臨床上の診察に導入された[非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7]。ReoProは、FDAによって1994年に認可されており[非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10]、製薬業界によるその治療薬ならびに治療用抗体の商業的な将来性の受け入れが当初遅かったことの表れである。生物学的療法薬の大量製造に関連する技術的課題、癌治療における早々の失望、およびヒトで生じる治療薬に対する免疫反応に関する懸念によって、これらの新規治療薬の広がりが遅れたことが概ね説明される。
【0003】
治療用抗体と関連する初期課題の多くは、最近になって抗体産生、開発および製造技術の改善により克服されるようになった[非特許文献11]。2002年には、米国で認可されたモノクローナル抗体を用いた治療薬が13種類あり、臨床試験中の製品が他に400種類あった[非特許文献12]。しかしながら、これらの薬剤の多くに対して起こる免疫原性反応に関する利用できる情報は依然として限られている[非特許文献13、非特許文献14]。
【0004】
小分子薬物とは対照的に、治療用抗体は、非常に複雑な三次元構造を有する大きな分子である。合成薬物は、高感度の物理化学的分析法を用いて十分に特徴づけられることができるが、組換えタンパク質は物理化学的分析法だけを用いては十分に特徴づけられない。組換え生物タンパク質は遺伝子改変細胞によって分泌され、それらは本質的には変異性である。その産物は異なる異性体として産生されることもあり、またはその産物は凝集体を形成することもある。グリコシル化およびその他の翻訳後修飾は、異質性をもたらす別の厄介な問題である。生物学的治療薬の生産工程は合成薬剤製品に使われる工程よりもはるかに複雑である。このように、生物学的治療用タンパク質の最終的な特性は、生産工程に大きく依存しており[非特許文献15]、剤形によって影響を受けることもありうる。バッチ間のばらつきはよく起こることであり、このことから再現性が製品の品質を評価する判定基準の1つになっている。物理化学的方法は生物学的治療用製品を十分に特徴づけることができないので、物理化学的データの補うものとしてその製品を特徴づける生物学的な系が必要である[非特許文献16]。異なる生産バッチがその固有の免疫学的特性に相当することを確実にすることが、生物薬剤の製造において直面する最も困難な課題のうちの1つになっている。
【0005】
大部分の治療用タンパク質は患者に投与されると、免疫反応を引き起こし[非特許文献17]、治療用抗体も例外ではない[非特許文献18]。しかしながら、製品抗体の生成率は製品間で大きく異なっており、大部分の個体で抗体を誘導するものもあれば、それ以外の場合では、免疫反応の発生は稀有である[非特許文献19]。抗体構造内にあるヒト以外のアミノ酸配列の存在であろうと、標的分子の性質であろうと、適用経路であろうと、または治療薬が必要な疾患の種類であろうと、多くの要因は免疫反応の発生に影響を与える。まさに同じアミノ酸一次配列を含む同一産物の2つの電荷内において、凝集体の形成、違った形に折り畳まれたタンパク質の3次元構造の存在、または不純物の存在が免疫原性に大きく影響を与える場合がある[非特許文献20]。免疫原性についての劇的な結果は、製品抗体が患者の内因性タンパク質と交差反応する場合に印象的に観察されており、これは組換えエリスロポエチンαの剤形の変更後に観察された[非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24]。このように、製造変更が相対免疫原性の面で製品の品質に与えうる結果をモニターする系が早急に必要とされている。
【0006】
タンパク質の一次構造の変化は、単離されたヒト樹状細胞およびヒトヘルパーTリンパ球からなるインビトロ系を用いて、容易にモニターすることができる[非特許文献25]。これらのモデルはドナー間のT細胞前駆体頻度の相違およびMHCの多型性によって制限されることがあり、統計的に有意な結果に到達するには異なるMHC遺伝子型を有する多数のドナーの調査を必要とする。さらに重要なことには、一次構造を除くがタンパク質の三次構造を含むより微妙な変化は、単離されたインビトロ系ではモニターすることができず、より完全な免疫系のモデルを必要とする。そのようなモデルはインビボ動物系によって供与されることができる。
【0007】
とりわけ、ヒト相同体は動物において免疫原性であり、したがって、動物におけるヒト抗体の試験ではヒトにおいてその免疫原性の可能性をほとんど予測できない[非特許文献26]。しかしながら、異なる調製物の相対免疫原性は、場合によっては評価することができる[非特許文献27]。ヒトタンパク質は動物にとって外来性であり、したがって免疫反応を惹起すると考えられるが、対象とするヒトタンパク質についてトランスジェニックとなった動物はその導入遺伝子を自己と認識し、その導入遺伝子によってコードされるタンパク質に対して寛容になると考えられる。動物モデルまたはインビトロ系では、現在、もっぱらかつ確実に臨床試験で判定だけをすることができる、ヒトにおける治療用タンパク質に対する免疫反応を予測することはできないが、ヒト抗体トランスジェニックマウス[非特許文献28]は、治療用抗体に対するB細胞の寛容破壊の原因となる要因を評価するために最良のモデルであり、したがって免疫同等性(immunocomparability)、すなわち、製造変更がトランスジェニックマウスでの治療用抗体の相対免疫特性に与えうる影響の評価における重要な手段となると考えられる。
【0008】
【非特許文献1】Proceedings of an international symposium on monoclonal antibody therapy with orthoclone OKT3 in renal transplantation. Transplant Proc, 1986. 18(4): p. 923-56. Burdick, J. F., et al.
【非特許文献2】Reversal of progressive renal allograft dysfunction with OKT3. Nephron, 1987. 46 Suppl 1: p. 52-5; Farges, O., et al.
【非特許文献3】A randomized trial of OKT3-based versus cyclosporine-based immunoprophylaxis after liver transplantation. Long-term results of a European and Australian multicenter study. Transplantation, 1994. 58(8): p. 891-8.; Farrell, M. L.
【非特許文献4】Orthoclone OKT3: a treatment for acute renal allograft rejection. Anna J, 1987. 15(6): p.373-6.: Friedman, J., et al.
【非特許文献5】Orthoclone OKT3 treatment of acute renal allograft rejection. Transplant Proc, 1987. 19(2 Suppl 2): p. 46; Gordon, R. D., et al.
【非特許文献6】Experience with Orthoclone OKT3 monoclonal antibody in liver transplantation. Am J Kidney Dis, 1988. 11(2): p. 141-4; Smith, S. L.
【非特許文献7】Ten years of Orthoclone OKT3 (muromonab-CD3): a review. J Transpl Coord, 1966. 6(3): p. 109-19; quiz 120-1
【非特許文献8】Tcheng, J. E., Dosing and administration of ReoPro (c7E3 Fab). J Invasive Cardiol, 1994. 6 Suppl A: p. 29A-33A; discussion 51A-54A
【非特許文献9】Faulds, D. and E. M. Sorkin, Abciximab (c7E3 Fab). A review of its pharmacology and therapeutic potential in ischaemic heart disease. Drugs, 1994. 48(4): p. 583-98
【非特許文献10】Huston, J. S. and A. J. George, Engineered antibodies take center stage. Hum Antibodies, 2001. 10(3-4): p. 127-42
【非特許文献11】Kipriyanov, S. M. and F. Le Gall, Generation and production of engineered antibodies. Mol Biotechnol, 2004. 26(1): p. 39-60
【非特許文献12】Gura, T., Therapeutic antibodies: magic bullets hit the target. Nature, 2002. 417(6889): p. 584-6
【非特許文献13】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): p. 457-62
【非特許文献14】Schellekens, H., When biotech proteins go off-patent. Trends Biotechnol, 2004. 22(8): p. 406-10
【非特許文献15】Rosenberg, A. S., immunogenicity of biological therapeutics: a hierarchy of concerns. Dev Biol(Basel), 2003. 112: p. 15-21
【非特許文献16】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): p. 457-62
【非特許文献17】Ryff, J. C. and H. Schellekens, Immunogenicity of rDNA-derived pharmaceuticals. Trends Pharmacol Sci, 2002. 23(6): p. 254-6
【非特許文献18】Ryff, J. C. and H. Schellekens, Immunogenicity of rDNA-derived pharmaceuticals. Trends Pharmacol Sci, 2002. 23(6): p. 254-6
【非特許文献19】Schellekens, H., Immunogenicity of therapeutic proteins: clinical implications and future prospects. Clin Ther, 2002. 24(11): p. 1720-40; discussion 1719
【非特許文献20】Schellekens, H.,When biotech proteins go off-patent. Trends Biotechnol, 2004. 22(8): p. 406-10
【非特許文献21】Casadevall, N., Antibodies against rHuEPO: native and recombinant. Nephrol Dial Transplant, 2002. 17 Suppl 5: p. 42-7
【非特許文献22】Casadevall, N., Pure red cell aplasia and anti-erythropoietin antibodies in patients treated with epoetin. Nephrol Dial Transplant, 2003. 18 Suppl 8: p. viii37-41
【非特許文献23】Casadevall, N. and L. Croisille, [Erythropoiesis disorders and other central autoimmune anemias]. Rev Prat, 2001. 51(14): p. 1547-51
【非特許文献24】Casadevall, N., et al., Pure red-cell aplasia and antierythropoietin antibodies in patients treated with recombinant erythropoietin. N Engl J Med, 2002. 346(7): p. 469-75
【非特許文献25】Stickler, M. M., D. A. Estell, and F. A. Harding, CD4+ T-cell epitope determination using unexposed human donor peripheral blood mononuclear cells. J Immunother, 2002. 23(6): p. 654-60
【非特許文献26】Schellekens, H., Bioequivalence and the immunogenicity of biopharmaceuticals. Nat Rev Drug Discov, 2002. 1(6): P. 457-62
【非特許文献27】Palleroni, A. V., et al., Interferon immunogenicity: preclinical evaluation of interferon-alpha 2a. J Interferon Cytokine Res, 1997. 17 Suppl 1: p. S23-7
【非特許文献28】Storb, U., Transgenic mice with immunoglobulin genes. Annu Rev Immunol, 1987. 5: p. 151-74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
抗体トランスジェニックマウスは当技術分野において周知である。しかしながら、それらは治療用抗体の免疫同等性評価の問題を解決するためには用いられていない。本発明は、ヒトインビトロ系内で直面する欠点に取り組み、治療用抗体の免疫学的同等性を確実にするという現在未解決の問題に対する解決策を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(1)は、外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法である。
本発明(2)は、外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(1)の方法である。
本発明(3)は、トランスジェニック標準抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(1)の方法である。
本発明(4)は、トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、本発明(3)の方法である。
本発明(5)は、非ヒト動物が哺乳類である、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(6)は、非ヒト動物が齧歯類である、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(7)は、非ヒト動物がマウスである、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(8)は、変異体が一次、二次および三次タンパク質構造の変異、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含む、本発明(1)〜(6)のいずれか一発明の方法である。
本発明(9)は、治療用抗体の免疫同等性を評価する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階を含む方法である。
本発明(10)は、トランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するための標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物の使用である。
本発明(11)は、外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、本発明(10)の使用である。
本発明(12)は、トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、本発明(10)の使用である。
本発明(13)は、非ヒト動物が哺乳類である、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(14)は、非ヒト動物が齧歯類である、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(15)は、非ヒト動物がマウスである、本発明(10)〜(12)のいずれか一発明の使用である。
本発明(16)は、特に以下に記載の例に関連して実質的に本明細書に記載される方法および使用である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、b) そのトランスジェニック非ヒト動物をa)のトランスジェニックであるその標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、およびc) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む、外因性抗体変異体の相対免疫原性を判定する方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、抗体の免疫同等性を評価する方法を提供し、それにより抗体調製物が標準抗体調製物と比較して免疫反応を誘発するか否か(相対免疫原性)を判定することを可能にする。
【0013】
本発明は、以下の段階を含む、外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法を提供する:
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) そのトランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、および
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階。
【0014】
外因性抗体は治療用抗体であってもよい。好ましくは、外因性抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドまたはその変異体に対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGの変異体である。抗AβIgGは、参照として本明細書に完全に組み入れられる特許出願であるWO03/070760の中に詳細に記載されている。
【0015】
好ましくは、トランスジェニック標準抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGである。
【0016】
トランスジェニック非ヒト動物は任意の非ヒト動物であってよい。好ましい非ヒト動物は哺乳類である。より好ましくは、非ヒト動物はマウスまたはラットなどの齧歯類である。
【0017】
本明細書で用いられる「標準抗体」という用語は、限定条件の下で作製された抗体であって、定量値または定性値に関する一般的に認められた計測に役立つ抗体のことをいう。
【0018】
本明細書で用いられる「変異体」または「抗体変異体」という用語は、標準抗体と構造特性、調製方法、製剤形態、または保存条件が異なる抗体のことをいう。構造変異体は一次、二次および三次タンパク質構造の変異(すなわち、立体構造変化)、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含んでもよい。さらなる構造変異は、すなわち選択的ドメイン間構築体(VL/VL、VH/VH)、二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体である。
【0019】
相対免疫特性に対し影響がありうる要因としては、原体の構造変化、製剤の剤形、不純物および夾雑物を挙げることができる。特に対象となるのは天然タンパク質と下流のプロセシング、保存、剤形および取扱いの変化から生じうる構造変異体との間の免疫原性の相違である[Sharma, V. K. and D. S. Kalonia, Temperature- and pH-induced multiple partially unfolded states of recombinant human interferon-alpha2a: possible implications in protein stability. Pharm Res, 2003. 20(11): p. 1721-9; Chirino, A. J. and A. Mire-Sluis, Characterizing biological products and assessing comparability following manufacturing changes. Nat Biotechnol, 2004. 22(11): p. 1383-91]。これらの変異はアミノ酸交換のような一次構造の変化、グリコシル化変異体およびアセチル化、アスパラギン脱アミド化、メチオニン、ヒスチジンもしくはトリプトファン酸化のような化学修飾、または、例えば、酸化ストレスもしくは光ストレス、誘導体化を誘導する可能性のある賦形剤もしくは不純物によって引き起こされるその他の化学修飾を含む[Moss, C. X., et al., Asparagine deamidation perturbs antigen presentation on class II MHC molecules. J Biol Chem, 2005; Mamula, M. J., et al., Isoaspartyl post-translational modification triggers autoimmune responses to self-proteins. J Biol Chem, 1999. 274(32): p. 22321-7; Duenas, E. T., et al., Comparison between light induced and chemically induced oxidation of rhVEGF. Pharm Res, 2001. 18(10): p. 1455-60; Gribben, J. G., et al., Development of antibodies to unprotected glycosylation sites on recombinant human GM-CSF. Lancet, 1990. 335(8687): p. 434-7; Mimura. Y., et al., Role of oligosaccharide residues of IgG1-Fc in Fc gamma RIIb binding. J Biol Chem, 2001. 276(49): p. 45539-47; Chianese-Bullock, K. A., et al., Antigen processing of two H2-IEd-restricted epitopes is differentially influenced by the structural changes in a viral glycoprotein. J Immunol, 1998. 161(4): p. 1599-607; Khossravi M, Shire SJ, Borchardt RT. Evidence for the involvement of histidine A(12) in the aggreegation and precipitation of human relaxin induced by metal-catalyzed oxidation. Biochemistry. 2000 May 16; 39(19): 5876-85; Margiloff L, Chaplia L, Chow A, Singhal PC, Mattana J. Metal-catalyzed oxidation of immunoglobulin G impairs Fc receptor-mediated binding to macrophages. Free Radic Biol Med. 1998 Nov 1; 25(7): 780-5; Duenas, E. T., et al., Comparison between light induced and chemically induced oxidation of rhVEGF. Pharm Res, 2001. 18(10): p. 1455-60]。二次および三次構造変異体は、例えば、一次構造の改変の結果として、完全なもしくは部分的な還元、分子内ジスルフィド架橋の変化(「スクランブリング」)、または分子内共有架橋によって生じうる。天然タンパク質と同じ一次配列を有する配座異性体は、例えば、熱応力、短時間のpH変化または有機溶媒とのインキュベーションによって形成するることができる[Sharma, V.K. and D. S. Kalonia, Temperature- and pH-induced multiple partially unfolded states of recombinant human interferon-alpha2a: possible implications in protein stability. Pharm Res, 2003. 20(11): p. 1721-9; Vermeer, A. W. and W. Norde, The thermal stability if immunoglobulin: unfolding and aggregation of a multi-domain protein. Biophys J, 2000. 78(1): p. 394-404; Ronnelid, J., et al., Immune complexes from SLE sera induce IL10 production from normal peripheral blood mononuclear cells by an FcgammaRII dependent mechanism: implications for a possible vicious cycle maintaining B cell hyperactivity in SLE. Ann Rheum Dis, 2003. 62(1): p. 37-42; Melnikova, Y. I., et al., Antigen-binding activity of monoclonal antibodies after incubation with organic solvents. Biochemistry (Mosc), 2000. 65(11): p. 1256-65; Reed MA, et al., The denatured state under native conditions: a non-native-like collapsed state of N-PGK. J Mol Biol. 2006 Mar 24;357(2):365-72]。選択的ドメイン間構築体(VL/VL、VH/VH)、二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体のようなより高次の構造変異は、共有結合性の分子間架橋によって形成されることができ、例えば、酸化ストレスおよび/または分子間架橋を誘導する可能性のある賦形剤もしくは不純物の存在によって誘導されることができる。二量体、オリゴマーおよびさらに大きな凝集体は同様に、非共有結合性の分子間相互作用によって、例えば、非天然性配座異性体の形成、ミセル形成または一次構造の改変の結果として形成されることができる。
【0020】
特に対象となるのは立体構造変化に加えて、その反復的なエピトープ特性が原因となるより大きな凝集体であり、これらは種々の治療用タンパク質の免疫原性を増大させることが知られている(Braun, A., et al., Protein aggregates seem to play a key role among the parameters influencing the antigenicity of interferon alpha(IFN-alpha) in normal and transgenic mice. Pharm Res, 1997. 14(10): p. 1472-8; Hochuli, E., Interferon immunogenicity: technical evaluation of interferon-alpha 2a. J Interferon Cytokine Res, 1997. 17 Suppl 1: p. S15-21; Hermeling S, et al., Structural characterization and immunogenicity in wild-type and immune tolerant mice of degraded recombinant human interferon alpha2b. Pharm Res. 2005 Dec;22(12):1997-2006)。凝集体形成は、例えば、光への曝露、物理的応力(振盪または撹拌)によって促進されることが知られており、とりわけ高温下での長期保存の間にまたは製剤の不適切な取扱い(物理的応力)によって起こりうる(Wang, W. Protein aggregation and its inhibition in biopharmaceutics. Int J Pharm. 2005 Jan 31, 289(1-2): 1-30、および本明細書の引用文献)。
【0021】
本明細書で用いられる「免疫反応」という用語は、抗体産生、細胞性免疫、および免疫寛容を含む、抗原刺激に対する免疫系の任意の反応のことをいう。
【0022】
本明細書で用いられる「治療用抗体」という用語は、疾患の処置、治療および診断に使用できるモノクローナル抗体のことをいう。治療用抗体は抗原に対する免疫反応として任意の動物によって産生される抗体であってよい。好ましくは、治療用抗体は齧歯類によって、より好ましくはマウスによって産生される。治療用抗体はまた遺伝子操作によって産生される抗体であってもよい。適当な方法、すなわち、ファージディスプレイ法は当技術分野において周知である(Brekke OH and Loset GA, New technologies in therapeutic antibody development Curr Opin Pharmaco. 2003 Oct: 3(5): 544-50.)。好ましくは、治療用抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0023】
本発明はさらに、以下の段階を含む、治療用抗体の免疫同等性を評価する方法を提供する:
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) そのトランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階。
【0024】
治療用抗体に対して作製された血清中の抗体は、治療用抗体に対する免疫反応としてトランスジェニック動物により産生された抗体である。
【0025】
トランスジェニック非ヒト動物を産生する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、すなわち、Hogan B., Beddington R., Costantini F. and Lacy E. Manipulating the mouse embryo. A laboratory manual. 2nd Edition (1994). Cold Spring Harbor Laboratory Pressにある。
【0026】
トランスジェニック非ヒト動物での抗体の発現は構成的または誘導性であってよい。好ましくは、抗体の発現は構成的である。
【0027】
免疫反応を評価する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、例えば、ELISAである。さらなる方法はHarlow E. and Lane D. Antibodies. A laboratory manual. (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Pressで見ることができる。
【0028】
さらに、本発明は標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物およびトランスジェニック標準抗体の、好ましくは治療用抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するためのその使用に関する。
【0029】
トランスジェニック非ヒト動物は任意の非ヒト動物であってよい。好ましい非ヒト動物は哺乳類である。より好ましくは、非ヒト動物はマウスまたはラットなどの齧歯類である。トランスジェニック非ヒト動物を産生する方法は当技術分野において周知である。適当な方法は、すなわち、Hogan B., Beddington R., Costantini F. and Lacy E. Manipulating the mouse embryo. A laboratory manual. 2nd Edition (1994). Cold Spring Harbor Laboratory Pressの中にある。
【0030】
免疫反応を評価する方法は同様に、当技術分野において周知である。適当な方法は、例えば、ELISAである。さらなる方法はHarlow E. and Lane D. Antibodies. A laboratory manual. (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Pressで見ることができる。
【0031】
外因性抗体は治療用抗体であってもよい。好ましくは、外因性抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドまたはその構造変異体に対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGの変異体である。抗AβIgGは、参照として本明細書に完全に組み入れられる特許出願であるWO03/070760の中に詳細に記載されている。
【0032】
好ましくは、トランスジェニック標準抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。より好ましくは、トランスジェニック抗体は免疫グロブリンγ(IgG)である。さらにより好ましくは、抗体はヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である。最も好ましい抗体は抗AβIgGである。
【0033】
これまで本発明を概ね説明してきたが、説明の目的のみで本明細書に含まれており、特別の定めのない限り限定することを意図するわけではない具体例を添付の図とともに参照することによって、本発明はいっそう理解されるようになると思われる。
【実施例】
【0034】
実施例の中で挙げる市販の試薬は特に指定のない限り、製造元の使用説明書にしたがって使用した。
【0035】
実施例1: ヒト免疫グロブリンのトランスジェニックマウスの作製
構築体の作製
ヒトAbペプチドに特異性を有する、アイソタイプγ1の免疫グロブリン(Ig)重鎖(H)をコードするcDNA(配列番号:1)およびアイソタイプκの軽鎖(L)をコードするcDNA(配列番号:2)を使用した[Bardroff, M.e.a, Anti-amyloid beta antibodies and their use. EP03001759 EP, 2003]。表1のプライマーを用いて、これらのcDNAをPCR反応で増幅させた。pHSE3'ベクターへの定方向挿入用に、その5'プライマーはSalI(または適合するXhoI)部位を含んでおり、その5'プライマーはBamHI(または適合するBglII)部位を含んでいる[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]。PCR増幅されたcDNAをはじめに両制限酵素SalIおよびBamHIで切断し、その後、ベクターpHSE3'の対応部位に個別に挿入した。pHSE3'でのIg cDNAの発現はMHCクラスI遺伝子H-2kのマウスプロモーターにより動かされ、クローニングした遺伝子の3'側に位置するマウスIg H遺伝子エンハンサーにより促進される[Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]。この発現ベクターはトランスジェニックマウスのTおよびBリンパ球において対応する挿入遺伝子産物の高レベルの産生を確実にする([Pircher, H., et al., T cell tolerance to Mlsa encoded antigens in T cell receptor V beta 8.1 chain transgenic mice. Embo J, 1989. 8(3): p. 719-27]および未発表の知見)。次に、H-2kプロモーター、挿入したcDNA、ポリ-Aおよびスプライス部位ならびにIg H遺伝子エンハンサー要素を含む(5'から3'へ)、発現カセット全体をXhoIによる制限酵素切断およびアガロースゲル精製によってベクターから切り出し、受精マウス卵母細胞への微量注入に十分な濃度(10 mM TrisHCl/0.1 mM EDTA, pH7中で2 μg/ml)に調製した。cDNAのコーディング領域として可能性のある領域は、抗Aβ Ig HおよびL遺伝子をコードするcDNA全体を配列決定することによって確認された(図1を参照されたい)。
【0036】
(表1)クローニングプライマーの配列
【0037】
抗Aβ IgG1トランスジェニックマウスの作製
C57BL/6雌性ドナーから得た受精卵母細胞に、前項で記載したIgGおよびIgL遺伝子をコードする精製XhoI断片の1:1混合物を微量注入してダブルトランスジェニックマウスを得た。尾部生検から調製したゲノムDNAを特異的プライマーで増幅することによって導入遺伝子が存在するかどうか、これらの微量注入胚から生まれた産仔をスクリーニングした。使用したプライマーは表2に示されている。
【0038】
(表2)導入遺伝子の検出用のプライマー配列
【0039】
PCR反応は尾部生検から得た総DNA 1 μl(約100 ng)を用いて、以下の条件によるPCR反応で行った: 90℃で1分、30サイクル×[94℃で10秒、64℃で30秒、72℃で90秒]、72℃で7分。PCR増幅された約660 bpのDNA断片を最終的に、トランスジェニックIg HおよびIg L遺伝子に対して個別に1.5%アガロースゲルで可視化した。
【0040】
全体で、トランスジェニックIg HおよびIg L両遺伝子を持ったダブルトランスジェニックマウス5匹とIg H遺伝子のみを持ったシングルトランスジェニックマウス1匹を作製し飼育した。
【0041】
実施例2: トランスジェニックマウスの表現型の特徴付け
血清分析
血液を尾静脈穿刺により得た。凝固を室温で一晩行った。血清を500×g、10分間の遠心によって分離し、さらに分析するまで-20℃で凍結した。
【0042】
トランスジェニックマウスがヒト抗体を十分に発現するかどうかを確認するために、ELISA系を開発した。ヒト抗体はポリクローナルヤギ抗ヒトκ鎖特異抗体(Sigma K 3502)を用いて捕捉した。検出はペルオキシダーゼ(POD, Sigma A 0170)に結合したモノクローナルマウス抗ヒトγ鎖特異抗体で行った。図5に示されるように、トランスジェニックマウスはヒト免疫グロブリンを十分に発現する。
【0043】
リンパ球亜集団をFACSで測定した。血液を尾静脈穿刺により得て、ヘパリンコーティングチューブ(Sarstedt)の中に回収した。製造元によって記載されているとおり、赤血球を溶解緩衝液(Buffer EL, カタログ番号70217, Qiagen)で溶解させた。細胞をFACS緩衝液(PBS, 0.05% NaN3, 3% FCS)の中に再懸濁し、抗体染色を製造元の提案(Becton-Dickinson)にしたがって行った。図4に示されるように、野生型マウスもトランスジェニックマウスもともに同程度の割合のB細胞(B220+)、T細胞(CD5+)、CD4+ Tヘルパー細胞およびCD8+ 細胞傷害性T細胞を含む。したがって、トランスジェニックヒトIgG1の発現はリンパ球亜集団に影響を与えない。
【0044】
免疫適格性の評価のために、5匹のトランスジェニックマウスおよび野生型同腹仔対照マウスの群にモデル抗原KLH(Keyhole Limpet Hemocynin, Sigma, H-7017, Lot 121K4838)を免疫した。KLHがコーティングされたmaxisorpプレート(Nunc)を捕捉用におよび抗マウスIgG1(BD Pharmigen)を検出用に用いて、抗KLHの力価をELISAで測定した。野生型マウスおよびトランスジェニックマウスはKLHに対し同程度の免疫反応を起こす(図5)。従って、hIgG1トランスジェニックマウスは免疫適格性である。
【0045】
ヒトIgG1抗体HUMIRA(Abbott)を用いた免疫によって、密接に関わる抗原に対する反応を評価した。HUMIRA 10 μgをRehydragel HPA (Reheis) 200 μlで乳化させた。0日目に動物の腹腔内に(i.p.)免疫し、7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって採血し、かつ血清を調製し、HUMIRAをmaxisorpプレート(Nunc)にコーティングすることで捕捉用に使用し、抗マウスIgG(BD Pharmigen)によって抗HUMIRA抗体を検出して、抗HUMIRAの力価をELISAにより評価した。図6に示されるように、トランスジェニックマウスは、密接に関わるヒトIgG1抗体HUMIRAに対する反応を起こす。
【0046】
実施例3: Mab11(Aβ-IgG1抗体としても呼ばれる)の産生、精製および特徴付け
細胞培養
チャイニーズハムスター卵巣細胞(Hoffmann-La Roche, Switzerland)を自家DHI培地組成(Invitrogen)での無血清増殖に順応させた。その培地組成は0.2% 大豆 1510および0.2% イネ HyPep 4601 (Kerry Bioscience)の植物加水分解物を加えたDMEM、HamのF12およびIMDMの各割合1:1:2(v:v:v)の混合物(Schlaeger and Schumpp 1992)である。細胞はスピナーフラスコ(Bellco, Inotech AG, Dotlikon, Switzerland)の中で、推奨される動作容積およそ70%を使い80〜100 rpmで日常的に増殖させた。大量培養およびトランスフェクションは、6 Lスピナーフラスコ中または5〜14リットルの撹拌槽型バイオリアクター(Chemap, MBR, Zurich, and Infors, Bottmingen, Switzerland)中のいずれかで行った。pMAb-11のプラスミド調製は、市販のキット(Nucleobond Ax, Macherey-Nagel AG, Switzerland)を用いて行った。プラスミド濃度を分光光度法により測定し、標準物質としてpUC18 DNA (Pharmacia Biotech, Zurich, Switzerland)を用いたアガロースゲル電気泳動法により推定した。
【0047】
トランスフェクション手順
トランスフェクション実験の場合、DHI培地中で増殖した懸濁CHO細胞を最終容器中に1×106個/mlの密度で播いて、細胞2〜3×106個/mlの密度まで培養した(1〜2日)。その後、再度細胞濃度を直前に調製したDHI培地で細胞1〜1.5×106個/mlに調整し、トランスフェクションを行う前に、この培養物を3〜4時間増殖させた。トランスフェクション複合体の添加後、細胞をトランスフェクションから24時間37℃で培養した。24時間を超えてから、温度を5〜6日の培養の残りの期間に33℃まで変化させた。上清試料を24時間毎に定期的に回収し、モノクローナル抗体(mAb)含有量をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Amersham, Aekta FPLCシステム)により測定した。上清は、ろ過により回収し、プロテインA樹脂(mAb Select, Amersham, GE)の入った第1精製カラムに直接添加した。
【0048】
トランスフェクション複合体の調製
DNA複合体は室温で、ヘパリンなしのHL培地中にて培養体積の1/10中で形成させた(Schlaeger and Schumpp 1990, Schlaeger 1996)。CHO細胞に対して最適化された遺伝子送達条件の下で、細胞1 ml当たりDNA 0.7 μgを直前に調製した培地0.1 mlに添加し、穏やかに混合した。2分後、Ro 1539 Xtreme Gene (Roche Applied Science, Indianapolis, USA) 1 μlを添加し混合した。室温で15分インキュベートした後、トランスフェクション複合体を等量の細胞に、すなわち、バイオリアクターまたはスピナーフラスコの中に移した。
【0049】
発酵上清からのMab11の単離および精製
強化ガラス器具だけを使うことによって、手順は全て内毒素を含まない条件の下で実施し、カラムを含めた機器全ての衛生化を0.5 M NaOHで行い、全ての緩衝液の滅菌ろ過(0.22 μm)を行った。直前に調製したゲル材料だけを使用した。
【0050】
第1段階: プロテインAアフィニティークロマトグラフィー
BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたMab Selectゲル(Amersham)を最初にゲル容量(GV)の3倍量の平衡化緩衝液(25 mM Tris/HCl; 25 mM NaCl, 5 mM EDTA pH 7.1)、GVの2倍量の再生緩衝液(2 Mグアニジン、100 mM Tris pH 7.5)で洗浄し、続いてGVの5倍量の平衡化緩衝液で洗浄した。プレラン後、最大でMab 20 mg/mlをゲルに添加した。カラムを最初にGVの3倍量の平衡化緩衝液で洗浄し、次いでGVの4倍量の洗浄緩衝液(1 M Tris/HCl pH 7.2)およびGVの3倍量の平衡化緩衝液で洗浄した。プロテインA結合抗体を100 mM HAc pH 2.9で溶出した。ウイルス不活化の場合には、溶出液をHAcでpH≦3.6に調整し、その後、RTで15分間インキュベートし、次いで1 M TrisでpH 4.0に調整する。
【0051】
第2段階: イオン交換クロマトグラフィー(陽イオン交換クロマトグラフィー)
BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたSP-Toyopearl 650M (Tosoh)を最初にGVの2倍量の再生緩衝液(0.5 M NaOH, 1 M NaCl)およびGVの3倍量の再生緩衝液A緩衝液(50 mM HAc, pH 5.0)で洗浄した。プレラン後、最大でMab 10 mg/mlをゲルに添加した。カラムを最初にGVの0.5倍量のA緩衝液で洗浄し、次いでB緩衝液(50 mM HAc, 1 M NaCl pH 5.0) 0〜100%までの勾配溶出を行った。タンパク質溶出画分を回収し、IEXおよびSEC HPLCにより分析した。
【0052】
第3段階: サイズ排除クロマトグラフィー(フロースルー陰イオン交換クロマトグラフィー)
第2段階の画分を限外ろ過によって濃縮し、pH 7.5に調整し、BioRadエコノカラム(BioRad)に入れたQ-Sepharose FFゲル(BioRad)に添加した。SECクロマトグラフィーは移動相として25 mM Tris/HCl, 80 mM 酢酸Na, pH 7.5を用いて行った。溶出物をUVシグナルにしたがって分画し、pH 5.5に調整した。20 mMヒスチジン/140 mM NaCl, pH 5.5を含有するMab11偽薬への緩衝液の交換および濃縮の調整は、10 kDaの膜を使ったAmicon撹拌セル(Amicon)の中で行った。溶液を最後に0.22 μmのMillex-GV滅菌フィルター(Millipore)によってろ過し、-80℃で分注保存した。
【0053】
Mab11の特徴付け
サイズ排除クロマトグラフィー
Jasco PU-980 HPLCシステムを使用することによって、精製Mab11の試料をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。移動相として0.2 M K2HPO4, 0.25 M KCl, pH 7.0を用いて、試料をTSK-Gel G3000SWXL, 7.8×300 mm, 5 μmカラム(Tosho Biosciences)でクロマトグラフィーにより分析した。流速は0.5 ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、吸光度を220 nmでモニターした。
【0054】
安定なベースラインが得られるまで、カラムを平衡化した。ゲルろ過標準物質(670 kDのウシチログロブリン、158 kDのウシIgG、44 kDのオボアルブミン(OVA)、17 kDのウマ(eq.)ミオグロビン、1.35 kDのビタミンB12を含む、BioRad, 151-1901)、Mab11偽薬(陰性対照: Mab11なしの緩衝液)、Mab11試料の順に注入した。注入量は試料およそ50 μg相当であった。代表的なサイズ排除クロマトグラムは図7に示されている。結果: 155〜160 kDaに対応する保持時間に対称性のピークあり。凝集体または断片は検出できなかった。
【0055】
イオン交換クロマトグラフィー
Jasco PU-980 HPLCシステムを使ったイオン交換クロマトグラフィーにより、精製Mab11の試料を分析した。20分でB 0% 〜B 52% (移動相A: 50 mM マロン酸/マロネート水溶液, pH 5.3; 移動相B: 1 M酢酸Naの移動相A, pH 5.3溶液)の勾配を用いて、試料をMono S 5/50 GLカラム(Amersham Biosciences)でクロマトグラフィーにより分析した。流速は1 ml/分に設定した。Merck-Hitachi D-2500記録システムに接続されたJasco UV-975検出器を用いて、吸光度を280 nmでモニターした。
【0056】
安定なベースラインが得られるまで、カラムを移動相Aで平衡化した。Mab11偽薬、Mab11試料の順に注入した。Mab11の注入量はおよそ50 μg相当であった。代表的なイオン交換クロマトグラム(IEC)は図8に示されている。結果: Mab11試料の95%が分離しない肩を持つ単一ピークとして高い保持時間に溶出する。約5%が短い保持時間で溶出する。
【0057】
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
Xcell Mini-Cell II Gelsystem (Invitrogen)を使ったSDS-PAGEにより、精製Mab11の試料を分析した。予め希釈した試料を還元性または非還元性の試料用緩衝液と混合して、20 μL当たり2〜8 μgの濃度にした。還元性の試料用緩衝液は製造元の助言にしたがい、NuPAGE LDS試料用緩衝液(Invitrogen)をNuPAGE還元剤(Invitrogen)と混合することによって調製した。還元性の試料用緩衝液中の試料は70℃で10分間インキュベートした。試料および標準物質を10ウェルコーム、1.0 mm厚のNuPAGE 4〜12% Bis-Tris Gel (Invitrogen, #NP0301BOX)に添加した。標準物質として、200〜2.5 kDaの範囲にわたるMark 12(商標)分子量マーカー(Invitrogen, #LC5677)を使用した。NuPAGE MOPS SDS泳動用緩衝液(Invitrogen)を用いて、ゲルを200Vで1時間泳動した。ゲルをStainEase Gel染色トレイ(Invitrogen)に入れて一晩染色し、デンシトメトリーによってスキャンし分析した。同一ゲル内で泳動された基準標準物質から得られた標準試料曲線を参照して、タンパク質濃度を算出した。結果: 還元条件下でのSDS-PAGEによって、IgG1 H鎖およびL鎖の分子量に相当する2本のバンドが示される。凝集体または断片は検出できない(図9を参照されたい)。
【0058】
質量分析
質量分析の場合、還元/カルボキシメチル化した抗体を実施例5に記載の方法にしたがって調製した。Agilent 1100 Capillary-HPLCシステムを使用することにより、試料を分析的なRP-HPLC分析に供した。試料は勾配系(A: 0.1%ギ酸水溶液、B: 0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)を使うことによって、Agilent Poroshell C8-逆相(0.5×75 mm)カラムでクロマトグラフィーにより分析した。流速は15 μl/分に設定し、カラム温度は70℃に設定した。クロマトグラフィー溶出物(stream)を次に質量分析計のESIイオン源に供した。測定はESI-Q-TOF質量分析計(Micromass/Waters Q-TOF Ultima, Manchester, UK)で、lockspray質量補正を用いポジティブモードにて行った。タンパク質のスペクトルをMasslynx MaxEnt1モジュールで解析した。
【0059】
RA-Mab11のLC/MS分析は図10に示されており、実測し算出した質量は表3で割り当てられている。
【0060】
(表3)RA-Mab11のLC/MS分析、実測質量の割り当ての結果 (図10を参照されたい)
L鎖 = 軽鎖、H鎖 = 重鎖。
【0061】
結果: 検出された質量はH鎖でpyro-Gluを1残基有しLysを1残基欠損しているMab11一次配列を有する、還元/カルボキシメチル化した抗体のH鎖およびL鎖に対して理論的に予測されるものと一致する。H鎖は主にG0グリコシル化およびG1グリコシル化されており、G2はわずかな伸びだけである。
【0062】
実施例4: 寛容の免疫学的評価
5匹のトランスジェニックマウスおよび野生型同腹仔対照マウスの群に、Rehydragel-HPA (Reheis) 200 μlで乳化させた組換えMab-11 10 μgを腹腔内経路で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって血液を得た。凝固によって血清を調製し、血清の抗Mab-11の力価をmaxisorpプレート(Nunc)をMab-11でコーティングすることによってELISAで測定し、抗マウスIgG(BD Pharmingen)により抗Mab-11抗体を検出した。ELISA分析は、野生型動物においてMab-11に対する強い免疫反応を起こし、その一方でhIgG1トランスジェニック動物においてはrhIgG1に対する免疫反応を起こすことができないことを明らかにした(図11)。このように、hIgG1トランスジェニックマウスは、外来的に供給された同じアイソタイプの抗体および特異性に対し、例えば、その導入遺伝子の産物に対し寛容である。
【0063】
実施例5: 原体の変異体の作製
構造変異体として、還元/アルキル化したMab11を選択した。この誘導体は詳細に明らかにされており、包括的な物理化学的特徴付けに適しているからである。鎖間ジスルフィド結合の還元切断によって、抗体は重鎖と軽鎖に切断される。次に遊離スルフヒドリル基をヨード酢酸でアルキル化して、再酸化による重合を阻止した。
【0064】
還元/アルキル化したMab11の産生および特徴付け
完全に還元されカルボキシメチル化されたMab11の調製のため、ジチオスレイトール(DTT)を脱イオン水に溶解して0.1 g/mlとし、これを1 mg/ml Mab11の6 M グアニジンHCl 0.3 M Tris/HCl pH 8.5溶液に添加して20 mMの終濃度にした。50℃+/-3℃で60分インキュベーション後、脱イオン水に直前に溶解したヨード酢酸(IAA) 0.33 g/mlを50 mMの終濃度になるまで添加した。アルキル化は30分間室温で暗所にて進めた。IAAに対し1.5倍モル過剰のDTTを添加することおよびRTで10分間インキュベーションすることで、IAAを不活化した。
【0065】
還元/アルキル化した抗体(RA-Mab-11)は20 mM Tris/HCl緩衝液pH 8.5を移動相とし、カラム当たり最大で試料添加を1.5 mlとし、製造元の助言にしたがってPD-10脱塩カラム(Amersham)を使用することにより精製した。タンパク質を含有する溶出物を2回、PBS pH 7.4またはMab 11偽薬を移動相とし、PD-10またはNAP-5脱塩カラム(Amersham)を使用して精製した。タンパク質を含有する画分を回収し、層流下でろ過滅菌し、無菌のポリプロピレンチューブに分注し、-80℃で保存した。生産管理および還元/カルボキシメチル化した抗体のタンパク質濃度の決定は、実施例3に概説されているとおり、キャピラリーLC-QTOF-MSおよびSDS-PAGEによって行った。
【0066】
RA-Mab11の特徴付け、結果: 還元条件下でのSDS-PAGEによって、IgG1 H鎖およびL鎖の分子量に相当する2本のバンドが示される。凝集体または断片は検出できない(図9を参照されたい)。質量分析の結果は、実施例3(表3および図10)を参照されたい。
【0067】
実施例6: Mab-11トランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック産仔での還元/アルキル化した(RA-) Mab-11変異体の免疫原性の評価
天然タンパク質と比べて立体構造変化がインビボトランスジェニックマウスモデルでの感作に重大な寄与をもたらすかどうかを確認するため、本発明者らはトランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック産仔をジスルフィド結合の完全なまたは部分的な還元およびアルキル化によって調製されたMab-11誘導体で免疫した。天然タンパク質または構造変異体に対する液性免疫反応の規模をELISAによって評価した。
【0068】
野生型およびトランスジェニックマウスの群(N=5)にRehydragel-HPA (Reheis) 200 μlで乳化させたRA-Mab-11 10 μgを使って、0日目に腹腔内経路で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に尾静脈穿刺によって採血した。血清を凝固によって調製し、-20℃で保存した。
【0069】
RA-Mab-11に結合する抗体をELISAにより測定した。96ウェルMaxiSorp(商標)プレート(Nunc)のウェルを4℃で一晩RA-Mab-11のPBSでコーティングした。ブロッキングは2% BSAの0.05% Tween 20含有PBS (PBST)で行った。PBSTを洗浄に使用し、0.5% BSAのPBSTを希釈液として使用した。3回洗浄後、希釈した血清試料100 μlをコーティングウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。抗マウスIgG1抗体(BD Pharmigen)を使用して抗体レベルを評価した。抗体の結合はABTS基質溶液(Roche)による発色後に、自動プレートリーダーを用いて450 nmで検出した。
【0070】
ELISA分析によって、RA-Mab-11はMab-11トランスジェニックマウスと非トランスジェニック産仔の両者で強力な液性免疫反応を引き起こす(図12)のに対し、Mab-11トランスジェニックマウスは天然の組換えMab-11処理に対し寛容である(図11)ことが明らかになった。しかしながら、天然Mab-11は野生型産仔では免疫反応を引き起こした(図11)。興味深いことに、RA-Mab-11で免疫することによって一部の動物では天然の自己タンパク質に対する寛容を破壊した(図13)。これはRA-Mab-11によって免疫すると、マウスが天然Mab-11に対する交差反応抗体を発現したからであった。一次免疫から3ヶ月後の天然Mab-11抗体による追加免疫は、交差反応性抗RA-Mab-11によって特徴づけられる記憶B細胞の反応、つまり同一の交差反応性マウスで以前に検出された抗Mab-11の力価をもたらした(図13)。これらの結果は、Mab-11の構造変異体が、未改変の天然タンパク質に寛容であるトランスジェニックマウスで免疫反応を引き起こしたことを明確に示している。このように、Mab-11トランスジェニックマウスは、抗体の二次および三次構造の変化を検出するために適した系である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1−1】トランスジェニック発現用の発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgγ1遺伝子の全コード配列を示す図である。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図1−2】トランスジェニック発現用の発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgγ1遺伝子の全コード配列を示す図であり、図1-1の続きである。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図2】トランスジェニック発現を目的に発現ベクターpHSE3'の中にクローニングされるヒトAβに特異的なヒトIgκ遺伝子の全コード配列を示す図である。PCR増幅で用いられるプライマーの位置および名称は対応する配列の上または下に示されている。終止コドンは太字で示されている。
【図3】トランスジェニックマウスの血清分析のグラフ表示を示す図である。ヒトκ軽鎖およびヒトγ重鎖に特異的なサンドイッチELISAを行った。MS: マウス血清。hIgG1: γ1アイソタイプの組換えヒト免疫グロブリン。F 2F: 初代マウス2F。Neg: PCR陰性産仔対照。TG 5M+: トランスジェニックマウス5M+。TG 7M+: トランスジェニックマウス7M+。トランスジェニックマウスは両抗体鎖を同一分子内で発現する。
【図4】FACS(蛍光活性化細胞選別)でのリンパ球亜集団の評価のグラフ表示を示す図である。野生型マウスおよびトランスジェニックマウス由来の末梢血リンパ球をB細胞、T細胞ならびにヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞に特異的な抗体で染色した。野生型マウスおよびhIgG1トランスジェニックマウスのリンパ球亜集団間の有意差は検出することができない。A) 野生型B1/6、B) トランスジェニックマウス。
【図5】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)マウスでの抗KLH抗体の力価のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目にKLHで免疫した。7日目および12日目に、抗KLH抗体の力価を評価した。KLH曝露後、トランスジェニックマウスは野生型マウスと同じように反応する。
【図6】トランスジェニックマウスでの抗HUMIRA力価のグラフ表示を示す図である。トランスジェニックマウスを0日目にヒトIgG1抗体HUMIRAで免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、血清の抗HUMIRA力価を測定した。トランスジェニックマウスはHUMIRAに対する反応を起こす。
【図7】A) 分子量標準物質 B) Mab11偽薬およびC) Mab11のサイズ排除クロマトグラム(SEC)を示す図である。機器、使用条件および手順は方法の項に記載したとおりとした。
【図8】A) Mab11偽薬およびB) Mab11のイオン交換クロマトグラムを示す図である。機器、使用条件および手順は方法の項に記載したとおりとした。
【図9】A) 非還元性 B) 還元性の条件下の4〜12% Bis-Trisゲル泳動でのMab11および還元/アルキル化したMab11 (RA-Mab11)のSDS-PAGEの写真を示す図である。
【図10】還元/アルキル化したMab11 (RA-Mab11)のLC/MS分析のグラフ表示を示す図である。A) C8 RP-HPLC、UV追跡(214 nm) B) 解析した質量スペクトル。C) B)のHMW質量ピークの拡大域。実測し算出した質量の割り当てについては、表3を参照されたい。
【図11】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)動物での抗Mab-11力価のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目に天然Mab-11で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、抗Mab-11抗体の力価を評価した。トランスジェニックマウスはMab-11曝露に対し寛容である。
【図12】野生型(WT)およびトランスジェニック(TG)マウスでの抗RA Mab-11力価(RA = 還元アルキル化した)のグラフ表示を示す図である。野生型およびトランスジェニックマウスを0日目にRA Mab-11で免疫した。7日目、12日目、21日目および35日目に、抗RA Mab-11力価を評価した。野生型マウスもトランスジェニックマウスもどちらもRA Mab-11に対し反応する。
【図13】Mab-11 (◆)および還元アルキル化した(RA)-Mab-11 (●)に対するトランスジェニック(TG)マウスの抗体反応のグラフ表示を示す図である。トランスジェニックマウスを天然Mab-11およびRA Mab-11で免疫した。最初の免疫から3ヵ月後に、動物を天然Mab-11で追加免疫した。天然Mab-11に対する抗体反応を追加免疫の前後で評価した。2/5のマウスが天然Mab-11との交差反応を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法。
【請求項2】
外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
トランスジェニック標準抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
非ヒト動物が哺乳類である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
非ヒト動物が齧歯類である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
非ヒト動物がマウスである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
変異体が一次、二次および三次タンパク質構造の変異、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
治療用抗体の免疫同等性を評価する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階を含む方法。
【請求項10】
トランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するための標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物の使用。
【請求項11】
外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、請求項10記載の使用。
【請求項13】
非ヒト動物が哺乳類である、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
非ヒト動物が齧歯類である、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
非ヒト動物がマウスである、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
特に以下に記載の例について実質的に本明細書に記載される方法および使用。
【請求項1】
外因性抗体の相対免疫原性を判定する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物をトランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体と接触させる段階、
c) (b)の外因性抗体によって誘発されたトランスジェニック非ヒト動物の免疫反応を判定する段階を含む方法。
【請求項2】
外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
トランスジェニック標準抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
非ヒト動物が哺乳類である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
非ヒト動物が齧歯類である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
非ヒト動物がマウスである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
変異体が一次、二次および三次タンパク質構造の変異、グリコシル化ならびにアミノ酸の化学修飾を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
治療用抗体の免疫同等性を評価する方法であって、
a) 標準抗体がトランスジェニックである、非ヒト動物を作製する段階、
b) 該トランスジェニック非ヒト動物を標準抗体の変異体である治療用抗体で免疫する段階、
c) 免疫したトランスジェニック動物の血清を回収する段階、
d) 治療用抗体に対して作製された血清中の抗体を測定する段階を含む方法。
【請求項10】
トランスジェニック標準抗体の変異体である外因性抗体の相対免疫原性を判定するための標準抗体がトランスジェニックである非ヒト動物の使用。
【請求項11】
外因性抗体がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
トランスジェニック標準抗体がヒトアミロイドβペプチドに対する抗体である、請求項10記載の使用。
【請求項13】
非ヒト動物が哺乳類である、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
非ヒト動物が齧歯類である、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
非ヒト動物がマウスである、請求項10〜12のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
特に以下に記載の例について実質的に本明細書に記載される方法および使用。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−6891(P2007−6891A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180749(P2006−180749)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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