説明

免疫学的検出方法

【課題】本発明の課題は簡易、迅速、かつ高感度の免疫学的検出方法を提供することにある。
【解決手段】免疫学的検出方法であって、a)検体または検体を含む試料に、金属を含む標識により修飾された検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第一の蛋白質(Y)を作用させ、前記分析対象物および前記Yを含む複合体を形成させる工程、b)前記工程において生じた前記複合体と分析対象物と複合体を形成しなかった前記標識を含む第一の蛋白質Yとを分離する工程、c)前記複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させる工程、及びd)前記CDおよび前記Cpより生じた色素を検出する工程を有し、前記CDが下記一般式(I)で表される化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物を含む試料を、簡易、迅速、高感度で検知することができる免疫学的検出方法に関する。特に発色反応を用いて高精度で分析対象物を検出する免疫学的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物、毒素、ホルモン、又は農薬等の生理活性物質又は環境汚染物質の中には、極微量で作用するものが非常に多い。従って、これらの物質の定性的及び定量的測定には、従来、高感度分析が可能な機器分析法が広く用いられてきた。しかし、機器分析法は、特異性が低く、試料の前処理工程を含め、分析に時間を要する上、操作が煩雑なため、近年要求されている迅速簡便測定目的には不都合である。一方、免疫学的測定法は、特異性も高く、操作も機器分析よりはるかに簡便であることから、生理活性物質又は環境汚染物質の測定分野に徐々に普及してきた。この中にはラテックス凝集法、RIA法あるいはEIA法(酵素免疫測定法)といった免疫学的測定法があるが、ラテックス凝集法は必ずしも測定の迅速簡便性あるいは検出感度を満たすものではなく、RIA法は標識物質に放射性同位元素を使用するので、特殊な環境が必要である。
【0003】
酵素免疫測定法は、人体に対して危険性の少ない免疫測定法として開発され、種々の物質の測定系に利用されている。しかしながら、臨床化学分析においては、その測定対象が生体試料(主として血清、尿等)であり、その測定値は病態の診断又は経過観察等に用いられることが多く、そのためのより高感度及び高精度な測定の要求を比色法で完全に満足させることは難しい。この要求を満たすことを目的として化学発光酵素免疫法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。化学発光酵素免疫測定法は、酵素の触媒活性によって化学発光性物質が中間体を経て励起状態となり、この状態から基底状態に戻る際に放出される発光量を測定して酵素活性を定量し、この酵素活性と相関性を有する測定対象物質の量を定量する方法である。この方法においては、化学反応により化学発光性物質を発光させるため光源が不要であり、光源に起因するバックグラウンドの上昇等がないため測定の高感度化が可能である。
【0004】
しかしながら、ウイルスのような増殖する分析対象物の場合、より早い段階、すなわち少ないウイルス量での検出が必要であり、さらに高感度で簡便な検出方法が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−146968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分析対象物を含む試料を、簡易、迅速、高感度で検知することができる免疫学的検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
【0007】
<1> 免疫学的検出方法であって、
a)検体または検体を含む試料に、金属を含む標識により修飾された検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第一の蛋白質(Y)を作用させ、前記分析対象物および前記Yを含む複合体を形成させる工程、
b)前記工程において生じた前記複合体と分析対象物と複合体を形成しなかった前記標識を含む第一の蛋白質Yとを分離する工程、
c)前記複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させる工程、及びd)前記CDおよび前記Cpより生じた色素を検出する工程を有し、前記CDが下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする免疫学的検出方法:
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(I)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。)。
<2> 金属を含む標識が銀、金および白金原子の少なくとも1つを含むことを特徴とする<1>に記載の免疫学的検出方法。
<3> 金属を含む標識が銀粒子であることを特徴とする<2>に記載の免疫学的検出方法。
<4> 金属を含む標識がハロゲン化銀粒子であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の免疫学的検出方法。
<5> 前記CDが、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の免疫学的検出方法:
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。)。
<6> 前記CDが、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする<5>に記載の免疫学的検出方法:
【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(III)においてR12はアルキル基、ヘテロ環基を表し、X21、X23、及びX25は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσ値とX22、X24のハメットのσ値の和は1.5以上である。)。
<7> 前記CDが一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の免疫学的検出方法:
【0014】
【化4】

【0015】
(一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(I)におけるものと同義である。)。
<8> 前記CDが親油性微粒子中に含有されていることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の免疫学的検出方法。
<9> 前記Cpが下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の免疫学的検出方法:
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは、それぞれ独立に、電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。);
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。);
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。);
【0024】
【化9】

【0025】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。);
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R10はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0028】
【化11】

【0029】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0030】
【化12】

【0031】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【0032】
【化13】

【0033】
(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。)。
<10>検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第二の蛋白質(X)および検体中の分析対象物を特異的に認識し得る酵素標識により修飾された第一の蛋白質(Y)を同時にまたは段階的に作用させ、前記X、前記分析対象物および前記Yの複合体を形成させる工程を含むことを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の免疫学的検出方法。
<11> 前記分析対象物が抗原であり、前記分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質が抗体であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれかに記載の免疫学的検出方法。
<12> 前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする<11>に記載の免疫学的検出方法。
<13> 前記分析対象物を特異的に認識し得る前記蛋白質Xが不溶性担体に坦持されていることを特徴とする<1>〜<12>のいずれかに記載の免疫学的検出方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、試料中に含まれる分析対象物を、簡易、迅速、高感度で検知することができる免疫学的検出方法が提供される。特に増幅された発色反応を用いて分析対象物を高精度で検出する免疫学的検出方法が提供される。
本発明は、抗原抗体反応を利用し、抗体または抗原上に固定された標識を触媒とした酸化還元反応を増幅して、さらに発色反応を誘導し発色した色を検知することにより、簡便に高精度で検出するものである。また、分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質の1つを基質に固定化して、クロマトグラフによりさらに簡便に高精度で検出することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の免疫学的検出方法は下記の工程を含む。
a)検体または検体を含む試料に、金属を含む標識により修飾された検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第一の蛋白質(Y)を作用させ、前記分析対象物および前記Yを含む複合体を形成する工程
【0036】
本工程においては、分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質を標識化した第一の蛋白質(Y)を準備する。分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質としては、抗原抗体反応を利用する場合、抗体が好ましく用いられる。本発明に於いては、標識としては、過酸化物の酸化還元反応の触媒として機能することができる金属標識が用いられる。そのような金属標識としては、銀、金、白金などの金属、あるいはハロゲン化銀などの金属塩から選ばれる金属が用いられる。
検体または検体を緩衝液などに分散した検体を含む測定用試料に、第一の蛋白質(Y)を作用させると、抗原抗体反応などの特異的相互作用により分析対象物と第一の蛋白質(Y)を含む複合体が形成される。
【0037】
b)前記複合体と前記複合体を形成していない前記第一の蛋白質(Y)とを分離する工程
該分離工程は、前記形成された複合体を複合体を形成していない遊離の第一の蛋白質(Y)から分離する工程である。即ち、該分離工程では検体中に存在する分析対象物の量に対応した量の複合体が分離される。
【0038】
c)前記分離された複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させる発色工程
複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させると、金属を含む標識が触媒となって、過酸化物を介した連鎖反応が起こり、還元剤が酸化され、還元剤の酸化体を生成する。続いて還元剤の酸化体と発色素材との発色反応が起こり、発色色素を生成する。生成する色素の量は、複合体量に依存するので、分析対象物の量に相当する。
【0039】
d)前記発色工程により生成した色素を検出する工程
生成した色素量は、公知の種々の手段により検出することができる。例えば、分析対象物の有無は、発色の有無を視覚的に官能評価することにより、瞬時に判定することができる。色素量を定量的に測定することも、濃度計、或いは分光光度計を用いて行うことが可能である。
【0040】
該分離工程に用いることのできる複合体の分離手段としては、比重差を利用した遠心分離や超遠心分離法、溶解度差を利用して沈降法、塩析法、濾過法、透析法、限外濾過法、磁気を利用した分離法などの従来公知の分離手段を利用することができるが、本発明で特に有効は分離手段は、分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質を予めメンブレンあるいはクロマトグラフの固定層などの不溶性坦体上に固定化しておき、複合体を形成後、複合体を形成していない検体中の成分や検体試料作製に用いた成分等を洗浄して洗い流すか、あるいはクロマトグラフにより分離する方法である。
【0041】
また、分離された他方の成分である遊離の第一の蛋白質(Y)の量は、当初含有する第一の蛋白質(Y)の量から複合体を形成した量を差し引いた量に相当するので、この量も検体中に存在する分析対象物の量を反映した量である。従って、複合体量及び遊離の第一の蛋白質(Y)量のいずれも分析対象物の量の検出に利用することができる。高精度かつ簡便に検出するには、複合体を直接検出する手段が好ましい。
【0042】
分離された複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させる手段としては、過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)のそれぞれを含有するかもしくはこれらの2以上を混合して含有する溶液もしくは分散液の状態で作用させる方法を用いることができる。別の態様として、過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)の少なくとも1つを含有する発色シートを準備し、分離された複合体に該発色シートを重ね合わせて、該複合体と発色剤とを接触させ、発色反応を起こさせる方法である。好ましくは、発色シートが還元剤(CD)および発色素材(Cp)を含有し、過酸化物を含有する溶液を該複合体と発色シートの重ね合わせ体に供給する方法である。
【0043】
本発明においては、発色反応には、好ましくは、還元剤の酸化体とカプラーのカップリング反応が用いられる。特に、有機銀塩を用いた熱現像記録材料中で熱現像により効率的にカップリング反応が可能な一般式(I)〜(IV)で表される還元剤と一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種のカプラーが好ましく用いられる。
【0044】
本発明の好ましい態様は、さらに検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第二の蛋白質(X)を含み、該第二の蛋白質(X)を前記分析対象物および前記第一の蛋白質(Y)に同時にまたは段階的に作用させ、前記X、前記分析対象物および前記Yを含む複合体を形成する工程を有する。
【0045】
好ましくは、前記分析対象物が抗原であり、前記分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質が抗体である。より好ましくは、前記抗体がモノクローナル抗体である。
さらに本発明の好ましい態様は、前記第二の蛋白質(X)を不溶性担体に坦持し、クロマトグラフにより複合体を分離して検出するイムノクロマトグラフである。
【0046】
本発明に利用できる免疫反応段階を構成する抗原抗体反応は任意であり、従来公知のいずれの反応も採用することができる。
【0047】
本発明においては、分離工程に用いられる不溶性担体としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド等の高分子化合物、その他、ガラス、金属、磁性粒子及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、不溶性担体の形状としては、例えば、トレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、マイクロプレート、試験管等の種々の形状で用いることができる。
さらに、これら不溶性担体への抗原又は抗体の固定化方法は任意であるが、物理的吸着法、共有結合法、イオン結合法等を用いることができる。
【0048】
また、本発明において用いられる抗体類(第一の蛋白質(X)、第二の蛋白質(Y)は、分析対象によって適当なものを適宜用いることができる。ここで、抗体類としてモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれを使うことも可能であり、その形態としては全抗体又はF(ab’)、Fab等の断片を用いることができる。また、抗体の起源は任意であるが、マウス、ラット、兎、羊、山羊、鶏等に由来する抗体が好適に用いられる。第一の蛋白質および第二の蛋白質の両方または一方がモノクローナル抗体であること、又はF(ab’)またはF(ab’)であることが好ましい。
【0049】
本発明の抗体とタンパク質との結合は、通常緩衝液中で行なわれる。ここに用いる緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液等を任意に用いることができる。これらの緩衝液の濃度は1mM〜1Mの範囲で用いるのが望ましい。また、反応時に界面活性剤、キレート剤等の添加剤を任意に用いることができる。
【0050】
本発明における免疫学的検出方法は、分析対象物と該分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質との相互作用による複合体形成工程、該複合体の分離工程、分離された複合体に過酸化物、還元剤(CD)及び発色素材(Cp)を作用させ発色させる発色工程を有する。複合体形成工程に要する温度及び時間は、用いられる分析対象物と蛋白質の組合せによって異なるが、概ね0℃〜50℃で、10秒〜1時間である。また、発色工程に要する温度及び時間は、用いられる複合体、還元剤(CD)及び発色素材(Cp)の組合せによって異なるが、概ね5℃〜60℃で、30秒〜30分である。
複合体の分離工程は、分離方法によって、それぞれ好ましい工程所要時間が設定される。
発色の判定時間は任意であるが、上記発色工程の後に、発色濃度が高く維持され、発色が安定した時間を選択することが望ましい。発色の判定時間は、概ね発色工程の後、0〜24時間が好ましく、より好ましくは0〜2時間、特に好ましくは0〜30分である。発色工程の後の時間が長すぎると発色した色素の変色や退色が起こるので好ましくない。
【0051】
本発明においては、抗原抗体反応などの免疫学的反応を増幅して検出する手段として、金属を触媒中心とした過酸化物の酸化還元反応を利用したものである。金属を触媒中心とした過酸化物の酸化還元反応は、一般的に知られていて、例えば、引例US特許4414305号明細書にはカラー現像液およびHを含む現像補力液で処理する処理方法が開示されている。
【0052】
金属としては、金、銀、白金およびこれらの合金、あるいはハロゲン化銀(塩化銀、臭化銀、沃化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀等)が用いられる。また、錫や鉄などの過酸化物を分解することが知られている金属も用いることができる。本発明に於いては、特に好ましくは、金または銀である。金属の粒子サイズは特に制限されないが、好ましくは、球相当粒径が1nm〜1μmであり、10nm〜100nmがより好ましい。
これらの金属に過酸化物が接触すると該金属を反応中心として過酸化物から活性酸化成分が生成する。該活性酸化成分が還元剤(CD)に作用し、該CDを酸化し、その酸化体(CDox)を生成し、活性酸化成分より過酸化物を再生する。再生された過酸化物は再び活性酸化成分を生成するので一連のサイクルが繰り返し進行する。酸化体(CDox)は発色色剤(Cp)をカップリング反応して色素を形成する。チェインリアクションによって酸化体(CDox)が増幅して形成されるので、増幅されて色素が生成する。従って、抗体に金属標識を修飾することによって微量の抗体量を大きく増幅する結果、検出精度を飛躍的に高めることができる。
【0053】
(過酸化物)
本発明に用いられる過酸化物は、過酸化水素の金属塩の化学式で表される無機過酸化物やペルオキソ酸化合物、又は過カルボン酸を有する有機過酸化物を用いることができ、過酸化水素又は過酸化水素を放出する化合物が好ましい。過酸化水素を放出する化合物としては過ホウ酸又は過炭酸等が好ましい。この中では過酸化水素が特に好ましい。使用する量は発色するCpに対して、同じモル数から100万倍程度が好ましく。同じモル数から1万倍がさらに好ましい。
【0054】
(還元剤)
本発明に用いられる還元剤は、その酸化体が発色素材とカップリングして色素を形成し得る還元剤(CD)であり、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0055】
【化14】

【0056】
一般式(I)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。
還元剤(CD)の好ましい態様の1つは、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0057】
【化15】

【0058】
一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。
さらに好ましくは、前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0059】
【化16】

【0060】
一般式(III)においてR12はアルキル基、ヘテロ環基を表し、X21、X23、及びX25は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσ値とX22、X24のハメットのσ値の和は1.5以上である。
還元剤(CD)の好ましい別の態様は、下記一般式(IV)で表される化合物である。
【0061】
【化17】

【0062】
一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(I)におけるものと同義である。
【0063】
本発明に用いられる一般式(I)で表される還元剤は、特開昭64−10233号等に記載された造核作用を有するヒドラジン化合物とは異なり、アルカリ溶液中、露光されたハロゲン化銀によって酸化された現像主薬と直接または間接に酸化反応し、酸化される化合物であり、その酸化体は更に色素形成カプラーと反応し、色素を形成することを特徴とする化合物である。
【0064】
以下に還元剤CDの構造について詳しく説明する。R11は置換基を有してもよいアリール基またはヘテロ環基を示す。R11のアリール基としては好ましくは炭素数6ないし14のもので、例えば、フェニルやナフチルが挙げられる。R11のヘテロ環基としては、好ましくは窒素、酸素、硫黄、セレンのうち少なくとも一つを含有する飽和または不飽和の5員環、6員環または7員環のものである。これらにベンゼン環またはヘテロ環が縮合していても良い。R11のヘテロ環の例としては、フラニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピロリジニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、プリニル、プテリジニル、アゼピニル、ベンゾオキセピニル等が挙げられる。
【0065】
11の有する置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルカルバモイル基、カルバモイルカルバモイル基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、イミド基、アゾ基等が挙げられる。R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表わす。
【0066】
12のアルキル基としては好ましくは炭素数1ないし16の直鎖、分岐または環状のもので、例えばメチル、エチル、ヘキシル、ドデシル、2−オクチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等が挙げられる。R12のアルケニル基としては、好ましくは炭素数2ないし16の鎖状または環状のもので、例えばビニル、1−オクテニル、シクロヘキセニルが挙げられる。
【0067】
12のアルキニル基としては、好ましくは炭素数2ないし16のもので、例えば1−ブチニル、フェニルエチニル等が挙げられる。R12のアリール基及びヘテロ環基としては、R11で述べたものが挙げられる。R12の有する置換基としてはR11の置換基で述べたものが挙げられる。Xとして好ましくは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−N(R13)−であり、さらに好ましくは、−SO−、−CO−N(R13)−である。特にXが−CO−N(R13)−であるとき、この化合物と反応するカプラーとして2当量カプラーを用いることができ、また未処理の感光材料の長期保存によるステインの上昇も本発明において特に効果的に低く抑えることができ、好ましい。
【0068】
またR11としては好ましくは含窒素ヘテロ環基または一般式(V)で表される基であり、一般式(IV)で表される化合物については好ましくは6員環の含窒素ヘテロ環基または一般式(V)で表される基であり、一般式(II)で表される化合物については好ましくは一般式(V)で表される基である。
【0069】
【化18】

【0070】
一般式(V)において、X21、X23、X25は水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσp値とX22、X24のハメットのσm値の和は1.5以上である。本発明の還元剤は層中で非拡散性のものが好ましい。以下に一般式(I)の具体的化合物例を示す。
【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【0073】
【化21】

【0074】
【化22】

【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

【0077】
【化25】

【0078】
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
【化28】

【0081】
【化29】

【0082】
【化30】

【0083】
【化31】

【0084】
【化32】

【0085】
【化33】

【0086】
【化34】

【0087】
【化35】

【0088】
【化36】

【0089】
【化37】

【0090】
【化38】

【0091】
【化39】

【0092】
【化40】

【0093】
本発明の一般式(I)で表わされる化合物の一部は、例えば米国特許第2,424,256号、同第4,481,268号、欧州特許第565,165A1号、特開昭61−259249号等に記載されており、他の化合物に記載されている方法で合成できる。本発明において、前記の一般式(I)の還元剤と酸化カップリング反応によって色素を形成する化合物(カプラー)を使用する。このカプラーは4当量カプラーであっても2当量カプラーであってもよいが、還元剤がスルホンヒドラシドの場合は4当量カプラーが好ましい。何故ならば、第一に還元剤のカップリング部位であるアミノ基がスルホニル基(置換基X)によって保護されており、カップリング時にカプラー側のカップリング部位に置換基があると立体障害によって反応が阻害されるからである。第二に、このスルホニル基はカップリング後、スルフィン酸として離脱するため、カプラー側の離脱基はカチオンとして離脱しなければならず、通常の2当量カプラーではこのような離脱基にはなりえないからである。カプラーの具体例は、4当量、2当量の両者ともセオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(4th.Ed.T.H.James 編集 Macmillan ,1977)291頁〜334頁、および354頁〜361頁、特開昭58−12353号、同58−149046号、同58−149047号、同59−11114号、同59−124399号、同59−174835号、同59−231539号、同59−231540号、同60−2951号、同60−14242号、同60−23474号、同60−66249号などに詳しく記載されている。
【0094】
(還元剤の添加方法)
本発明においては、還元剤は、水溶液あるいは有機溶剤に溶解した溶液、乳化分散物、あるいは固体状分散物で用いることができる。
【0095】
微粒子分散物で用いられる場合の数平均粒子サイズは、0.001μm〜5μmであることが好ましく、0.001μm〜0.5μmであることが更に好ましい。
【0096】
(還元剤及びカプラーの添加量)
本発明における還元剤CDは十分な発色濃度を得るために、発色層1層当たり0.001mmol/m〜10mmol/m使用することが好ましい。更に好ましい使用量は0.005mmol/m〜5mmol/mであり特に好ましい使用量は0.01mmol/m〜1mmol/mである。
本発明におけるカプラーの好ましい使用量は、還元剤に対してモル換算で0.05倍〜20倍で、更に好ましくは0.1倍〜10倍、特に好ましくは0.2倍〜5倍である。
本発明の還元剤とカプラーは親油性微粒子中に含有されて親水性コロイド層に分散されているのが好ましい。親油性微粒子は高沸点有機溶媒からなるのが一般的であるが、必須ではない。
【0097】
(カプラー)
以下、本発明に用いることの出来るカプラーについて詳細に説明する。
本発明に用いることの出来るカプラーは、本発明の還元剤の酸化体とカップリングして可視部に吸収を持つ色素を形成できる化合物であればいかなる構造をしていてもよい。このような化合物はカラー写真系ではよく知られた化合物であり、その代表例としてピロロトリアゾール型カプラー、フェノール型カプラー、ナフトール型カプラー、ピラゾロトリアゾール型カプラー、ピラゾロン型カプラー、アシルアセトアニリド型カプラーなどが挙げられる。
【0098】
本発明において好ましいカプラーは一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)、または(Y−3)で表される構造を有するカプラーである。
【0099】
【化41】

【0100】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0101】
【化42】

【0102】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。
【0103】
【化43】

【0104】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。
【0105】
【化44】

【0106】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。
【0107】
【化45】

【0108】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。
【0109】
【化46】

【0110】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R10はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0111】
【化47】

【0112】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。
【0113】
【化48】

【0114】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。
【0115】
【化49】

【0116】
式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。
【0117】
一般式(C−1)において、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
は水素原子または離脱基で、好ましくは離脱基である。
本発明で言う離脱基とは、還元剤の酸化体とカップリングし、色素を形成する際に母核から離脱可能な基を意味する。離脱基としてはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、イミド基、メチロール基、ヘテロ環基等が挙げられる。X1としてはカルバモイルオキシ基またはベンゾイルオキシ基がより好ましい。YおよびYは電子求引性基を表す。具体的には、シアノ基、ニトロ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルホキシド基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、ヘテロ環基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子が挙げられる。その中でも好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基、スルホニル基で、より好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基である。YとYのいずれか一方がシアノ基であることがさらに好ましく、Yがシアノ基であることが特に好ましい。Yはオキシカルボニル基であることが好ましく、かさ高い基で置換されたオキシカルボニル基(例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピペラジニルオキシカルボニル基)が特に好ましい。Rは好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。一般式(C−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0118】
一般式(C−2)において、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。
は水素原子もしくはXと同様の離脱基であるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、ハロゲン原子またはアリールオキシ基がより好ましい。Rは好ましくはアシルアミノ基またはウレイド基である。Rとしては炭素数の総和が2〜12の範囲が好ましく、より好ましくは2〜8の範囲である。Rは好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基または炭素数2〜8のアシルアミノ基である。Rは好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子またはアシルアミノ基で、特に塩素原子が好ましい。一般式(C−2)のカプラーは分子量が500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。
【0119】
一般式(C−3)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基であるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、アルコキシ基またはアルキルチオ基がより好ましい。Rはアシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が好ましく、カルバモイル基またはスルファモイル基がより好ましい。Rとして炭素数の和が1〜12の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜10である。Rは水素原子もしくは置換基であるが、置換基としては好ましくはアミド基、スルホンアミド基、ウレタン基またはウレイド基であり、アミド基またはウレタン基がより好ましい。置換位置としてはナフトール環の5位または8位が好ましく、5位がより好ましい。Rとして炭素数の和が2〜10の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜6である。一般式(C−2)のカプラーは分子量が550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、450以下であることがさらに好ましい。
【0120】
一般式(M−1)においてXは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基またはヘテロ環基で、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アリールチオ基またはヘテロ環基がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基で、これらの基は置換基を有していてもよい。好ましくは2級もしくは3級のアルキル基またはアリール基である。アルキル基としては炭素数が2〜14の基が好ましく、より好ましくは炭素数3〜10の基である。アリール基としては好ましくは炭素数が6〜18の基で、より好ましくは6〜14の基である。Rは好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。アリールオキシ基としては炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましく炭素数6〜10の基がより好ましい。アルキルチオ基、アリールチオ基もそれぞれアルコキシ基、アリールオキシ基と同様の炭素数の基が好ましい。一般式(M−1)のカプラーは分子量が600以下であることが好ましく、550以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
【0121】
一般式(M−2)のカプラーのX、RおよびR10で表される基はそれぞれ一般式(M−1)のカプラーのX、RおよびRで表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(M−1)のカプラーと同様である。
【0122】
一般式(M−3)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはアルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環基で、より好ましくはアリールチオ基またはヘテロ環基である。アリールチオ基としてはフェニル基が好ましく、特に2位にアルコキシ基、アミド基が置換したアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の炭素数の和は6〜16の範囲が好ましく、7〜12の範囲がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。R11としてはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基が好ましく、アシルアミノ基またはアニリノ基がより好ましい。最も好ましいのはアニリノ基である。アルキル基としては炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、アリール基としては炭素数6〜14のアリール基が好ましい。アシルアミノ基としては炭素数2〜14の基が好ましく2〜10の基がより好ましい。アニリノ基としては炭素数6〜16の基が好ましく6〜12の基がより好ましい。アニリノ基の置換基としてはハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましい。一般式(M−3)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0123】
一般式(Y−1)において、Xは水素原子もしくはXと同様の離脱基あるが、Xとして好ましいのはアリールオキシ基、イミド基またはヘテロ環基である。アリールオキシ基としては電子求引性基で置換されたアリールオキシ基が好ましい。イミド基としては環状のイミド基が好ましく、ヒダントイン基、1,3−オキサゾリジン−2,5−ジオン基およびコハクイミド基が特に好ましい。イミド基の炭素数の総和は3〜15の範囲が好ましく、より好ましくは4〜11の範囲で、さらに好ましくは5〜9の範囲である。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基が好ましく、イミダゾール基がより好ましい。アゾール基の炭素数の総和は3〜12の範囲が好ましく、より好ましくは3〜10の範囲で、さらに好ましくは3〜8の範囲である。R13は好ましくは2級もしくは3級のアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。アルキル基はシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であってもよく3級アルキル基がより好ましい。1−アルキルシクロプロピル基、ビシクロアルキル基、アダマンチル基は特に好ましい。R14はアリール基もしくはヘテロ環基で、アリール基がより好ましい。そのなかでも2位にハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が置換したフェニル基が特に好ましい。R14の炭素数の総和は6〜18の範囲が好ましく、より好ましくは7〜16の範囲、さらに好ましくは8〜14の範囲である。一般式(Y−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0124】
一般式(Y−2)のカプラーのXおよびR15で表される基はそれぞれ一般式(Y−1)のカプラーのX、R14で表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(Y−1)のカプラーと同様である。Zは5ないし7員の環を形成するために必要な2価の基を表し、この環には置換基があってもよいし、別の環が縮環していてもよい。
【0125】
一般式(Y−2)のなかでも好ましいのは一般式(Y−3)で表されるカプラーである。
一般式(Y−3)のカプラーにおいて、Xは一般式(Y−1)のXと同義で、好ましい範囲も同じである。R16は好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、スルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基またはアルキルチオ基で炭素数1〜4の置換基であることがより好ましい。nは好ましくは0〜3の整数で、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。R17は好ましくはR16と同様の基で、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、スルホニル基である。特にNH基に対してオルト位にハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキルチオ基であるR17が置換されていることがより好ましい。最も好ましいのはアルキルチオ基である。一般式(Y−3)のカプラーは分子量が750以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、650以下であることがさらに好ましい。
以下に本発明のカプラーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
【化50】

【0127】
【化51】

【0128】
【化52】

【0129】
【化53】

【0130】
【化54】

【0131】
【化55】

【0132】
【化56】

【0133】
【化57】

【0134】
【化58】

【0135】
【化59】

【0136】
【化60】

【0137】
【化61】

【0138】
【化62】

【0139】
【化63】

【0140】
【化64】

【0141】
【化65】

【0142】
【化66】

【0143】
【化67】

【0144】
【化68】

【0145】
【化69】

【0146】
【化70】

【0147】
【化71】

【0148】
【化72】

【0149】
【化73】

【0150】
【化74】

【0151】
【化75】

【0152】
【化76】

【0153】
【化77】

【0154】
【化78】

【0155】
【化79】

【0156】
【化80】

【0157】
上記の他に、特開2004−4439に記載の化合物No.CP101〜CP117、CP201〜CP220、およびCP301〜CP331なども本発明に用いることが出来る。
【0158】
本発明のカプラーはオイル乳化物あるいは固体微粒子分散物として、例えばゼラチンやポリマーラテックスをバインダーとした塗布膜として用いることができる。このときの塗布量は、好ましくは1×10−6モル/m〜1×10−2モル/mが好ましく、さらに好ましくは1×10−5モル/m〜1×10−3モル/mで使用することである。
【0159】
(不活性坦体)
本発明に用いられる不活性坦体(基質)は坦持する抗体蛋白を含むメンブレンや固定層に拡散せず、生成した複合体がメンブレンや固定層に固定もしくは拡散するのを妨害することのない不活性な材料が好ましい。
本発明に用いられる不活性坦体としては、例えば、ニトロセルロースが挙げられる。
本発明に用いられる不活性坦体が発色した色素を観察する背景となる場合は、白色の光反射性基質であることが好ましく、また、不活性坦体を通りして発色した色素を観察する場合は、透明基質であることが好ましい。
【実施例】
【0160】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0161】
実施例1
1.発色シートA〜Eの作製
表1に記載の本願の還元剤もしくは比較用還元剤、Cp、色像安定剤(ST−1)1.3g、色像安定剤(ST−2)0.22g、色像安定剤(ST−3)1.4gを溶媒(SOL−1)6.7g、溶媒(SOL−2)6.7gおよび溶媒(酢酸エチル)19gに溶解し、この液を1.0gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む25質量%のゼラチン水溶液84mLと混合して、高速攪拌乳化機(ディゾルバー)で乳化分散し、さらに水を加えて230gの乳化分散物A〜Eを作製した。
得られたそれぞれの乳化分散物とゼラチン水溶液を加えて塗布溶液とし、以下の組成(1mmあたりの塗布量として表した)となるようにトリアセチルセルロース(TAC)支持体上に塗布した。これを5mm×18mmのサイズに裁断し、発色シートA〜Eを作製した。
【0162】
CD−1 表1に記載
CP−1 表1に記載
ST−1 0.079g
ST−2 0.0133g
ST−3 0.085g
SOL−1 0.41g
SOL−2 0.41g
ゼラチン 2.2g
H−1 0.026g
【0163】
【表1】

【0164】
【化81】

【0165】
【化82】

【0166】
【化83】

【0167】
2.hCG検出イムノクロマトキットの作製
【0168】
(1)hCG検出イムノクロマトキットの作製
(1−1)抗hCG抗体修飾銀コロイドの作製
直径80nm銀コロイド溶液(EM.SC80、BBI社)90mLを8000G、4℃、15分遠心(himacCF16RX、日立)し上精を取り除くことで9mlにまで濃縮した。この銀コロイド溶液に20mMホウ酸バッファー(pH9.0)1mLを加えることでpHを調整した銀コロイド溶液に、60μg/mLの抗hCGモノクローナル抗体(Anti−hCG 5008 SP−5、Medix Biochemica社、等電点=7.4)溶液1mLを加え攪拌した。10分間静置した後、1質量%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000、品番168−11285、和光純薬)水溶液を550μL加え攪拌し、続いて10質量%牛血清アルブミン(BSA FractionV、品番A−7906、SIGMA)水溶液を1.1mL加え攪拌した。この溶液を8000G、4℃、30分遠心(himacCF16RX、日立)した後、1mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により銀コロイドを再分散した。この後、20mLの銀コロイド保存液(20mM Tris−HClバッファー(pH8.2),0.05質量%PEG(Mw.20000),150mM NaCl,1質量%BSA,0.1質量%NaN)に分散し、再び8000G、4℃、30分間遠心した後、1mL程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により銀コロイドを再分散し、抗体修飾銀コロイド(80nm)溶液を得た。
【0169】
(1−2)銀コロイド抗体保持パットの作製
(1−1)で作製した各抗体修飾銀コロイドを、銀コロイド塗布液(20mM Tris−Hclバッファー(pH8.2),0.05質量%PEG(Mw.20000),5質量%スクロース)及び水により希釈した。その際、光路長1cmの条件で455nmの単色光により光学濃度を測定し、1.25となるように希釈した。この溶液を、8mm×150mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社)1枚あたり0.8mLずつ均一に塗布し、一晩減圧乾燥し、銀コロイド抗体保持パッドを得た。
【0170】
(1−3)抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ担体)の作製
25mm×200mmに切断したニトロセルロースメンブレン(プラスチックの裏打ちあり、HiFlow Plus HF120、ミリポア社)に関し以下のような方法により抗体を固定し抗体固定化メンブレンを作製した。メンブレンの長辺を下にし、下から8mmの位置に、0.5mg/mLとなるように調製した固定化用抗hCGモノクローナル抗体(Anti−Alpha subunit 6601 SPR−5、Medix Biochemica社、等電点=7.4)溶液をインクジェット方式の塗布機(BioDot社)を用いて幅1mm程度のライン状に塗布した。同様に、下から12mmの位置に、0.5mg/mLとなるように調製したコントロール用抗マウスIgG抗体(抗マウスIgG(H+L),ウサギF(ab’)2,品番566−70621、和光純薬)溶液をライン状に塗布した。塗布したメンブレンは、温風式乾燥機で50℃、30分間乾燥した。ブロッキング液(0.5質量%カゼイン(乳由来、品番030−01505、和光純薬)含有50 mMホウ酸バッファー(pH8.5))500mLをバットに入れ、そのまま30分間静置した。その後、同様のバットに入れた洗浄・安定化液(0.5質量%スクロースおよび0.05質量%コール酸ナトリウムを含む50mM Tris−HCl(pH7.5)バッファー)500mLに移して浸し、そのまま30分間静置した。メンブレンを液から取り出し、室温で一晩乾燥し、抗体固定化メンブレンとした。
【0171】
(1−4)イムノクロマトグラフキットの作製
バック粘着シート(ARcare9020、ニップンテクノクラスタ社)に、(1−3)で作製した抗体固定化メンブレンを貼り付けた。その際メンブレン長辺側のうち、抗hCG抗体ライン側を下側とする。抗体固定化メンブレンの下側に約2mm重なるように(1−2)で作製した銀コロイド抗体保持パッドを貼り付け、約4mm重なるようにして銀コロイド抗体保持パッド下側に試料添加パッド(18mm×150mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))を重ねて貼り付けた。さらに、抗体固定化メンブレンの上側には約5mm重なるように吸収パッド(80mm×150mmに切ったセルロース・グラス膜(CF6、ワットマン社))を重ねて貼り付けた。これら重ね張り合わせた部材を、部材の長辺側を5mm幅になるように短辺に平行にギロチン式カッター(CM4000、ニップンテクノクラスタ社)切断していくことで、5mm×55mmのイムノクロマト用ストリップを作製した。これらをプラスチックケース(ニップンテクノクラスタ社)に入れ、試験用イムノクロマトキットとした。
【0172】
(1−5)現像液の作製
リン酸水素カリウム46、亜硫酸カリウム0.5gを含む水溶液に水酸化カリウムを加えてpH12.8のバッファー水溶液1Lを調製し、現像処理液とした。
【0173】
(2)検出ラインでのシグナル増幅
(2−1)検出ラインでの抗体修飾金属コロイドの吸着処理
1質量%BSAを含むPBSバッファーにhCG(リコンビナントhCG R−506、ロ−ト製薬(株)製)を溶解し、各濃度の試験用hCG溶液を作製した。この試験用hCG溶液を各試験用イムノクロマトキットの試料添加パッドに100μL滴下し、10分静置した。
【0174】
(2−2)発色シートおよび現像液によるシグナル増幅
(2−1)の処理後のイムノクロマトキットのケースからメンブレンを取り出し、さらに吸水パットを取り除き、新たな吸水パットとして5×20mm(Cellulose Fiber Sample Pad、ミリポア社))を取り除いた場所に3枚をセロハンテープで付けた。検出ライン部に発色シートを重ね、その重ねた部位を2枚のアクリル板で挟み固定した。このメンブレンを、現像液9mLに30質量%の過酸化水素水を混合した液を200μL入れたマイクロチューブ(ビーエム機器(株)、BM4020)に検体滴下部が液に漬かるように立てかけた。立てかけた時点を0分として10分後に取り出し、発色シートを剥がし1質量%酢酸溶液に1分間浸すことで発色反応を停止させた。
【0175】
(実施例2)
(1−1)で示した抗hCG抗体修飾銀コロイドの作製において、濃縮した銀コロイドの代わりとして、直径50nm金コロイド溶液(EM.GC50、BBI社)9mLに50mM KHPOバッファー(pH7.0)1mLを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、50μg/mLの抗hCGモノクローナル抗体溶液1mLを加え攪拌したこと以外は同様にして、イムノクロマトキットを得た。ただし、金コロイド抗体保持パッドの作製における金コロイド塗布液は、光路長1cmの条件で520nmの単色光により光学濃度を測定し、1.5となるように希釈して作製したものを使用した。
次いで、実施例1と同様に検出ラインでのシグナル増幅処理を実施した。
【0176】
(実施例3)(比較例)
実施例1同様に抗体修飾銀コロイドを標識としたイムノクロマトキットを作製した。得られたイムノクロマトキットを用いて実施例1と同様に検出ラインでの検出を行った。但し、実施例1で行った発色シートおよび現像液によるシグナル増幅処理を施さなかった。
【0177】
(実施例4)(比較例))
実施例2同様に抗体修飾金コロイドを標識としたイムノクロマトキットを作製した。得られたイムノクロマトキットを用いて実施例1と同様に検出ラインでの検出を行った。但し、実施例1で行った発色シートおよび現像液によるシグナル増幅処理を施さなかった。
【0178】
<検出結果>
実施例および比較例で得られたメンブレンの検出ラインに接した発色シートの部位もしくはメンブレンの検出ラインを、通常の明るさの蛍光灯を照明とした室内で目視観察した。得られた各イムノクロマトキットの評価結果を表2に示した。
表中、判定基準は下記に従った。
○:コントロール(hCG濃度0)の場合と明確に識別できる。
×:コントロールとの識別ができない。
【0179】
【表2】

【0180】
上記表に示されるように、本発明の発色シートを用いてシグナル増幅処理をすることで、少ない抗原(hCG)量でも検出できた(検出感度を増加できた)。特に、銀コロイドを標識とした場合に検出感度増加が大きかった。また、還元剤のなかで本発明の一般式(I)で表される還元剤が顕著な効果を示すことがわかった。
従って、本発明により極めて検出感度が高い免疫学的検出方法が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫学的検出方法であって、
a)検体または検体を含む試料に、金属を含む標識により修飾された検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第一の蛋白質(Y)を作用させ、前記分析対象物および前記Yを含む複合体を形成させる工程、
b)前記工程において生じた前記複合体と分析対象物と複合体を形成しなかった前記標識を含む第一の蛋白質Yとを分離する工程、
c)前記複合体に過酸化物、還元剤(CD)および発色素材(Cp)を作用させる工程、及びd)前記CDおよび前記Cpより生じた色素を検出する工程を有し、前記CDが下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする免疫学的検出方法:
【化1】


(一般式(I)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。Xは−SO−、−CO−、−COCO−、−CO−O−、−CO−N(R13)−、−COCO−O−、−COCO−N(R13)−または−SO−N(R13)−である。ここでR13は水素原子または前記R12として挙げた基より選ばれる基である。)。
【請求項2】
金属を含む標識が銀、金および白金原子の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の免疫学的検出方法。
【請求項3】
金属を含む標識が銀粒子であることを特徴とする請求項2に記載の免疫学的検出方法。
【請求項4】
金属を含む標識がハロゲン化銀粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の免疫学的検出方法。
【請求項5】
前記CDが、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法:
【化2】


(一般式(II)においてR11は置換基を有してもよいアリール基又はヘテロ環基であり、R12は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基である。)。
【請求項6】
前記CDが、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の免疫学的検出方法:
【化3】


(一般式(III)においてR12はアルキル基、ヘテロ環基を表し、X21、X23、及びX25は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基を表し、X22、X24は、それぞれ独立に、水素原子、またはニトロ基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アシルチオ基を表す。ただし、X21、X23、X25のハメットのσ値とX22、X24のハメットのσ値の和は1.5以上である。)。
【請求項7】
前記CDが一般式(IV)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法:
【化4】


(一般式(IV)におけるR11とR12は、それぞれ一般式(I)におけるものと同義である。)。
【請求項8】
前記CDが親油性微粒子中に含有されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法。
【請求項9】
前記Cpが下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法:
【化5】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、YおよびYは、それぞれ独立に、電子求引性の置換基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化6】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、Rは水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、Rは水素原子、または置換基を表す。RとRが互いに連結して環を形成してもよい。);
【化7】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。);
【化8】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Rは置換基を表す。);
【化9】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Rはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。);
【化10】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R10はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化11】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化12】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。);
【化13】


(式中、Xは水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。)。
【請求項10】
検体中の分析対象物を特異的に認識し得る第二の蛋白質(X)および検体中の分析対象物を特異的に認識し得る酵素標識により修飾された第一の蛋白質(Y)を同時にまたは段階的に作用させ、前記X、前記分析対象物および前記Yの複合体を形成させる工程を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法。
【請求項11】
前記分析対象物が抗原であり、前記分析対象物を特異的に認識し得る蛋白質が抗体であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法。
【請求項12】
前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項11に記載の免疫学的検出方法。
【請求項13】
前記分析対象物を特異的に認識し得る前記蛋白質Xが不溶性担体に坦持されていることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の免疫学的検出方法。

【公開番号】特開2009−168681(P2009−168681A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8368(P2008−8368)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】