説明

免疫学的測定法、キット及び展開溶媒

【課題】非特異的反応を抑制しつつ短時間で正確に被検出物質の検出を行う。
【解決手段】被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、上記多孔性分離マトリックスに界面活性剤を予め浸潤せしめそして該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールを含有する展開溶媒で展開せしめる免疫学的測定方法、上記免疫クロマトグラフィー用試験片と上記展開溶媒との組合せからなるキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学的測定法、免疫学的測定用キットならびにそのために用いられる免疫クロマトグラフィー用試験片および展開溶媒に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫学的測定法により被検出物質を測定例えば血液中の被検出物質を測定する場合には、血液中の赤血球等が細胞分離マトリックスの細孔を詰まらせて抗体等が担持されたラテックス粒子や金コロイド粒子等の不溶性担体を流れにくくしたり、あるいは赤血球が溶血して色素判定を妨害したり、ヘモグロビンが非特異的反応を起きやすくするといった問題がある。
この問題を解決するために、特許文献1には、免疫クロマトグラフィー用試験片の多孔性分離マトリックスの細胞分離構造に特徴を持たせたり、あるいは該多孔性分離マトリックスにマンニトールを含浸させることが開示されている。しかしながら、かかる提案では免疫クロマトグラフィー用試験片の構造を煩雑とすることは避けられずまた溶血の問題を完全に解決し得たとは云い難い。多孔性分離マトリックスに含浸されるマンニトールは例えばMAP液の成分として用いられているように、赤血球の溶血防止作用を有することが知られているが、免疫学的測定法において溶血を防止するに十分な濃度で用いると、被検出物質の検出時間が長くなりまた非特異的反応が起り易くなるといった新たな問題が発生することがあった。
【特許文献1】特開2006−177970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、それ故、短い検出時間でしかも非特異的反応を抑制しうる免疫学的測定法を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的は、血液中の被検出物質を、測定系内においてマンニトールと界面活性剤とを共存させることで、溶血反応を防止しつつ短い検出時間で、非特異的反応を抑制して検出し得る免疫学的測定法を提供することにある。
【0005】
本発明のさらに他の目的は、上記測定法のためのキットならびに免疫クロマトグラフィー用試験片および展開溶媒を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、上記多孔性分離マトリックスに界面活性剤を予め浸潤せしめそして該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールを含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法により達成される。
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法により達成される。
【0009】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、上記多孔性分離マトリックスに界面活性剤を予め浸潤せしめそして該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法により達成される。
【0010】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第4に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および界面活性剤で浸潤された、細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールを含有する展開溶媒の組み合わせからなることを特徴とする免疫学的測定用キットにより達成される。
【0011】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第5に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒の組合せからなることを特徴とする免疫学的測定用キットにより達成される。
【0012】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第6に、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および界面活性剤で浸潤された、細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒の組合せからなることを特徴とする免疫学的測定用キットにより達成される。
本発明の技術的特徴は測定系内にマンニトールと界面活性剤の共存によってもたらされるものと考える。
【0013】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第7に、マンニトールを含有することを特徴とする免疫クロマトグラフィー用展開溶媒により達成される。
【0014】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短い時間で被検出物質の検出を可能とし且つ非特異的反応を抑制して正確な検出を可能とする免疫学的測定法、そのためのキットおよび展開溶媒が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の免疫学的測定法で用いられる、界面活性剤としては、生化学用として使用される界面活性剤であればいかなるものでもよい。好ましくはHLBが8〜20の界面活性剤であり、より好ましくはHLBが8〜20の非イオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には、Triton X−100(商品名):ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、Tween20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Tween80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、Nonidet P−40:ノニデット P−40、ZWITTERGENT 3−14:n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネ−ト、CHAPS:3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独であるいは2種類以上混合して用いることができる。
免疫クロマトグラフィーの手法は公知であるが、その原理を模式的に図1に示す。
【0017】
図1の資料添加部位(1)に、検査対象となる被検出物質についての検体の試料が滴下される。
試料添加部位(1)は細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片からなる。多孔性分離マトリックスは、試料が滴下される前に予め界面活性剤で浸潤されていることが好ましい。多孔性分離マトリックスを界面活性剤で浸潤する方法は特に限定されず、例えば界面活性剤溶液に該マトリックスを浸漬した後、熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0018】
本発明で対象とする検体としては、細胞や血球を含むものであれば良く、例えば血液、尿、髄液が挙げられる。
また、検体から検出する被検出物質としては、例えばHBs抗原等のウイルス表面抗原、PSA、CEA、AFP等の腫瘍マーカー、抗HIV抗体、抗HBV抗体、抗HCV抗体、抗ダニアレルゲン抗体、抗スギ花粉アレルゲン抗体等の免疫グロブリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの検体は、細胞や血球を破壊しない方法で採取されることが好ましい。
試料添加部位(1)に滴下された試料は、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原(それぞれ第2抗体、第2抗原という)が固定された不溶性担体が保持された標識物質保持部位(2)を経てクロマトグラフィー媒体(3)を介して吸収部位(5)の方向に試料が展開される。検出部位(4)には被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原(それぞれ、第1抗体、第1抗原という)が固定されている。被検出物質をクロマトグラフィー媒体(3)で展開するための、そして検出部位(4)を有する担体は膜担体からなる。
【0019】
本発明では、上記クロマトグラフィー媒体として、マンニトールを含有する展開溶媒が用いられる。マンニトールは好ましくは展開溶媒中に1〜15重量%の割合で含有される。かかるマンニトール濃度の展開溶媒を用いることにより、溶血防止をしつつ非特異的反応を抑制して短時間で被検出物質を検出することができる。かかるマンニトール濃度の溶媒は、免疫クロマトグラフィー用展開溶媒としては知られていない。
検体中に対象とする被検出物質が混入している場合には、被検出物質と第2抗体あるいは第2抗原が反応し、これらの複合体が検出部位(4)に第1抗原または第1抗体によって補足され、着色のバンドが現れる。(4)に現れたバンドの色調等により、検体中に含まれる被検出物質の量を概略的に把握することができる。
標識物質保持部位(2)に使用する第2抗原または第2抗体、及び検出部位(4)に使用する第1抗原または第1抗体は、被検出物質の異なる部位を結合するものであれば良い。
【0020】
抗体としては、被検出物質と特異的に結合する抗体が用いられる。抗体は、その産生動物種としてヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等があり、それぞれに所定範囲の免疫グロブリンがある。IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでも良く、また、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びこれらの断片(抗原と結合能を有するもの;例えば、H鎖、L鎖、Fab、F(ab’)等のいずれでも良い。)が挙げられる。
具体的には、抗PSA抗体、抗AFP抗体、抗CEA抗体、抗HBs抗体、抗IgG抗体、抗ヒトIgE抗体等、及びこれらの断片(抗原と結合能を有するもの;例えばF(ab)’2又はFab’等のいずれでも良い。)が挙げられる。
また、抗原としても、被検出物質と特異的に結合する抗原が用いられる。例えば、HBs抗原、HCV抗原、ダニアレルゲン、スギ花粉アレルゲン等が挙げられる。
【0021】
さらに、抗原や抗体を標識する不溶性担体としては、例えば金コロイド粒子等の金属コロイド粒子、セレニウムコロイド粒子等の非金属コロイド粒子、ラテッックス粒子等の着色樹脂粒子、染料コロイド粒子及び着色リポソーム等の不溶性粒状物質等が挙げられる。抗原や抗体を標識する酵素としては、例えばペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられる。
また、クロマトグラフィー媒体のための膜担体としては、毛細管現象により試料検体を吸収し流動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。
【0022】
上記の如く、本発明方法で用いられる免疫クロマトグラフィー用試験片は、好ましくは多孔性分離マトリックスが予め界面活性剤、より好ましくはHLBが8〜20の界面活性剤により浸潤されている特徴を有する。かかる特徴に基づき、本発明によれば、被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および界面活性剤で浸潤された、細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明方法を実施するためのキットとして、本発明の上記免疫クロマトグラフィー用試験片と、マンニトールを、好ましくは1〜15重量%の濃度で含有する展開溶媒の組合せからなる免疫学的測定キットが同様に提供される。また、上記発明方法を実施するためのキットには、上記免疫学的測定法で用いられる界面活性剤およびマンニトールを含有する展開溶媒の好ましい範囲が同様に提供される。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
(1)クロマトグラフィー媒体上への判定部の作製
膜担体(メンブレン)としてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120,300mm×25mm)を用いた。5重量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mLの濃度になるようにマウス由来抗前立腺癌特異抗原(PSA)モノクローナル抗体(第1抗体)を希釈した。この溶液150μLをメンブレン上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させた。乾燥後、0.5重量%のカゼイン(和光純薬工業(株)製)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)100mLに室温で30分間浸漬し、ブロッキングを行った。ブロッキング後、0.05重量%のTween20を含有するリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフィー媒体(第1抗原が固定された膜担体)を作製した。
【0025】
(2)標識物質溶液の作製
金コロイド分散液(田中貴金属工業(株)製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mlの濃度になるように希釈したマウス由来抗PSAモノクローナル抗体(第2抗体)を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミン(以下BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8,000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1重量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加えた。以上の手順で標識物質溶液を作製した。
【0026】
(3)免疫クロマトグラフィー用試験片の作製
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10重量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを15mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識保持部材(第2抗体が固定された不溶性担体)を作製した。
サンプルパッド(多孔性分離マトリックス)には血球分離膜(ポール社製:300mm×30mm)を用いた。このサンプルパッドを0.1重量%のTriton(登録商標) X−100(HLB=13)を含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を均一に3mL吸収させた後、40℃にて1時間、乾燥させた。
次に、バッキングシートから成る基材に、上記作製したクロマトグラフィー媒体、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いる上記サンプルパッド、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、免疫クロマトグラフィー用試験片とした。
【0027】
(4)展開用溶媒の作製
1重量%のBSAと150mMのNaClを含むHEPES緩衝液(pH8.0)10mLに10重量%となるようにD−マンニトール(和光純薬工業(株)製)を加えたものを調製し、展開用溶媒とした。
【0028】
(5)測定
上記作製した免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて、以下の方法で血液中のPSAの存在の有無を測定した。
即ち、血液中のPSA濃度が0.1ng/mL未満の陰性検体と、PSA濃度が4ng/mLである陽性検体を被検体とし、被検体25μLを免疫クロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に載せて、次いで100μLの展開用溶媒をサンプルパッド上に載せて展開させ、15分後に目視判定をした。テストラインの赤い線を確認できるものを「+」、赤い線は確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、赤い線を確認できないものを「−」、溶血により測定できないものを「判定不可」とした。その結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0029】
実施例2
実施例1でサンプルパッドに吸収させる界面活性剤をTriton(登録商標) X−100からTween20(HLB=17)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0030】
実施例3
実施例1でサンプルパッドに吸収させる界面活性剤をTriton(登録商標) X−100からアデカノールNK−4(HLB=9)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0031】
実施例4
実施例1で展開用溶媒中のD−マンニトール濃度を3重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0032】
実施例5
実施例1で展開用溶媒中のD−マンニトール濃度を12重量%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0033】
実施例6
実施例1で展開溶媒中にTriton X−100を0.05重量%となるように加えた以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
尚、実施例6でサンプルパッドに界面活性剤を吸収させないこと以外は、実施例6と同様の方法で測定を行った場合も同等の結果が得られる。
【0034】
比較例1
実施例1で展開用溶媒中のD−マンニトールをグリセロールに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。また、溶血の有無を表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
実施例7
実施例1でメンブレンに塗布する抗体をマウス由来抗癌胎児性抗原(CEA)モノクローナル抗体(第1抗体)に変更し、金コロイドに固定する抗体をマウス由来抗CEAモノクローナル抗体(第2抗体)に変更したこと、測定に用いた被検体は、陰性検体がCEA濃度1ng/mL未満の血液、陽性検体がCEA濃度10ng/mLの血液としたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。溶血の有無を含め結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】免疫クロマトグラフィー用試験片の概略図。
【符号の説明】
【0040】
1 試料添加部位
2 標識物質保持部位
3 クロマトグラフィー媒体
4 検出部位
5 吸収部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、上記多孔性分離マトリックスに界面活性剤を予め浸潤せしめそして該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールを含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法。
【請求項2】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法。
【請求項3】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、上記多孔性分離マトリックスに界面活性剤を予め浸潤せしめそして該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法。
【請求項4】
上記界面活性剤のHLBが8〜20の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の免疫学的測定方法。
【請求項5】
上記展開溶媒が1〜15重量%の濃度でマンニトールを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の免疫学的測定方法。
【請求項6】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および界面活性剤で浸潤された、細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールを含有する展開溶媒の組み合わせからなることを特徴とする免疫学的測定用キット。
【請求項7】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒の組合せからなることを特徴とする免疫学的測定用キット。
【請求項8】
被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体、被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体および界面活性剤で浸潤された、細胞分離が可能な多孔性分離マトリックスからなる免疫クロマトグラフィー用試験片ならびに該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を展開するための、マンニトールと界面活性剤との両方を含有する展開溶媒の組合せからなることを特徴とする免疫学的測定用キット。
【請求項9】
上記界面活性剤のHLBが8〜20の範囲にある請求項6〜8のいずれかに記載の免疫学的測定用キット。
【請求項10】
上記展開溶媒が1〜15重量%の濃度でマンニトールを含有する請求項6〜8のいずれかに記載の免疫学的測定用キット。
【請求項11】
マンニトールを含有することを特徴とする免疫クロマトグラフィー用展開溶媒。
【請求項12】
マンニトールと界面活性剤との両方を含有することを特徴とする免疫クロマトグラフィー用展開溶媒。
【請求項13】
上記界面活性剤のHLBが8〜20の範囲にある請求項12に記載の免疫クロマトグラフィー用展開溶媒。
【請求項14】
マンニトールが1〜15重量%の濃度である請求項11または12に記載の免疫クロマトグラフィー用展開溶媒。

【図1】
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【公開番号】特開2009−210505(P2009−210505A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56180(P2008−56180)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業委託開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)