説明

免疫応答調節組成物及び該組成物を有効成分とする食品

【課題】食物アレルギー等の各種免疫疾患の治療・予防に有用な免疫応答調節組成物や免疫応答調節用食品を提供すること。
【解決手段】卵白オボムコイド等の免疫調節機能を有するタンパク質、免疫調節機能を有するその分解物及び免疫調節機能を有するそれらの化学修飾体からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質と、Th1タイプサイトカイン(IL−12やIFN−γ等)及びTh2タイプサイトカイン(IL−6やIL−10等)を誘導し、かつ、前記化学物質と協働して免疫調節機能を向上させることができるラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属に属する微生物群より選ばれる乳酸菌とを含有する免疫応答調節組成物や、該免疫応答調節組成物を有効成分とする食品を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫応答調節組成物及び該免疫応答調節組成物を有効成分として含有する食品に関し、詳しくは卵白オボムコイド等の免疫調節機能を有するタンパク質と、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導することができる免疫調節機能を有する乳酸菌との組み合わせによる非特異的な免疫応答調節機能の相互効果を利用した免疫応答調節組成物、並びに該免疫応答調節組成物を有効成分として含有する食品等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の免疫反応において、種々の免疫担当細胞から産生されるサイトカインは免疫応答の方向性を制御している。この免疫応答制御において中心的な役割を担っているのが、ヘルパーT細胞(Th)であり、産生するサイトカインのパターンによって、Th1とTh2のサブセットに分類されている。Th1タイプ細胞は、主にインターロイキン2(IL−2)、インターロイキン12(IL−12)、インターフェロンγ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子(TNF−α)等を産生し、マクロファージやナチュラルキラー細胞を活性化することで、主にウイルス、バクテリア等に対する感染防御などの細胞性免疫に関与することが知られている。他方、Th2タイプ細胞は、主にインターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン13(IL−13)等を産生し、寄生虫に対する感染防御やB細胞からのIgE等の抗体産生などの体液性免疫に関与することが知られている。特に、Th2細胞はアレルギー反応に関与するIgE抗体の産生を誘導するサイトカインを産生し、またアレルギーではTh1とTh2のバランスが崩れ、Th2優位の状態にあるとされている。
【0003】
Th1タイプのサイトカインであるIL−12はTh2細胞の分化を抑え、またIFN−γはTh2細胞の活性化を抑制することによりアレルギー反応を抑制する。Th1タイプの免疫応答は、その異常亢進に起因して、細胞性免疫反応を誘導、活性化し、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、多発性硬化症等の臓器特異的自己免疫疾患の誘発、増悪に深く関与している。また、臓器移植に伴う拒絶反応は、やはりTh1タイプの細胞性免疫反応が深く関わっている。これらの自己免疫疾患や移植後の拒絶反応を予防又は治療するためにはTh1タイプの免疫応答を制御することが重要であると考えられている。他方、Th2タイプのサイトカインであるIL−4はB細胞に対してIgE抗体の産生を誘導するとともに、肥満細胞の活性化及び増殖を誘導する作用を有している。このように、Th2タイプの免疫応答は、その異常亢進に起因して、即時型アレルギー反応、遅延型アレルギー反応などアレルギー性炎症反応を誘導・活性化し、蕁麻疹、食物アレルギー、アナフィラキシーショック、好酸球増加症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎等種々のアレルギー性疾患の誘発、増悪に深く関与している。また、全身性エリテマトーデス等の抗体産生或いは液性免疫が異常に亢進した病態にある全身性自己免疫疾患もやはりTh2タイプの免疫応答の異常亢進が深く関わっている。これらのアレルギー性疾患を予防又は治療するためにはTh2タイプの免疫応答を制御することが重要であると考えられている。
【0004】
ところで、乳酸菌の中には免疫系のバランスを調節し抗アレルギー作用を有するものがあることが知られている。例えば、乳酸菌の免疫調節機能に関して、乳製品製造に適した乳酸菌である、ラクトバチルス属菌中ラクトバチルス アシドフィルスTMC0356菌株(FERM P−19232)の生菌、死菌又は菌体処理物の何れかを有効成分とする、腸内生残性に優れ、腸管上皮に炎症反応を起こすことなく、マクロファージ細胞から炎症性及び抗炎症性サイトカインをバランスよく誘導し、生体でのIgE抗体産生を抑制する抗アレルギー作用を有する免疫機能調節剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、卵白タンパク質には他のタンパク質に対する抗体応答抑制作用があり、中でもオボムコイドは食物アレルゲンの他にもダニ等の抗原に対する抗体応答抑制作用を有することが、本発明者らによって明らかにされている(例えば、特許文献2参照)。また、本発明者らは、乳酸菌及びオボムコイドの相互効果に関して検討し、インビボでの結果は用いた乳酸菌及びオボムコイドの相互効果が認められなかったことを報告している(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
その他、 その表面にサイトカイン誘導物質(リステリア溶血素、サルモネラの鞭毛タンパク質フラジェリン)を融合タンパク質(シグナル配列とサイトカイン誘導物質遺伝子と膜アンカー配列とを順次結合したDNAの発現産物)として発現させたラクトバチルス・カゼイ等の乳酸菌の菌体を経口用サイトカイン誘導剤として用い、生体にIFN−γ、IL−8等のサイトカインの産生を促進することができ、感染症、自己免疫疾患、炎症、腫瘍などの各種疾患の治療に有用な経口用サイトカイン誘導剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−277381号公報
【特許文献2】特開2003−261452号公報
【特許文献3】特開2003−63991号公報
【非特許文献1】日本農芸化学会 大会講演要旨集 (2005),p280,30E149α
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
幼小児で多く発症する食物アレルギーにおけるアレルゲン除去や対症療法は、幼小児の発育、成長に支障をきたすばかりでなく、精神的な苦痛及び経済的負担を伴う。また、幼小児の成長に伴って食物アレルギーがダニアレルギーや喘息等のアレルギー性疾患の引き金になるとも言われており、アレルギーになりにくい体質への改善が望まれている。本発明の課題は、食物アレルギー等の各種免疫疾患の治療・予防に有用な免疫応答調節組成物や、該免疫応答調節組成物を食品に添加した免疫応答調節用の食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述のように、乳酸菌及びオボムコイドの相互効果に関して検討し、インビボにおける乳酸菌及びオボムコイドの相互効果が認められなかったことを報告しているが、乳酸菌及びオボムコイドの相互効果に関して、さらに乳酸菌の種類や、オボムコイドの分解物及び修飾物などの組み合わせの検討を進めるために、先ずラクトバチルス菌、ビフィドバクテリウム菌、エンテロコッカス菌に関してサイトカイン産生また抗体産生を評価し、抗アレルギー作用を有する菌株をいくつか見い出した。これら抗アレルギー作用を有する乳酸菌と、オボムコイド等の免疫調節機能を有するタンパク質との組み合わせにより、相乗的な免疫調節機能を有する免疫応答調節組成物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に依拠するものである。
【0010】
すなわち本発明は、(1)免疫調節機能を有する、タンパク質、その分解物及びそれらの化学修飾体からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質と、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導し、かつ、前記化学物質と協働して免疫調節機能を向上させることができる乳酸菌とを含有する免疫応答調節組成物や、(2)免疫調節機能を有するタンパク質が、卵白オボムコイドであることを特徴とする上記(1)記載の免疫応答調節組成物や、(3)乳酸菌が、Th1タイプサイトカインであるIL−12及びIFN−γ、並びにTh2タイプサイトカインであるIL−10を誘導する乳酸菌であることを特徴とする免疫応答調節組成物に関する。
【0011】
また本発明は、(4)Th1タイプサイトカインであるIL−12及びIFN−γ、並びにTh2タイプサイトカインであるIL−10を誘導する乳酸菌が、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T)であることを特徴とする上記(3)記載の免疫応答調節組成物や、(5)上記(1)〜(4)のいずれか記載の免疫応答調節組成物を有効成分として含有する食品や、(6)Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を含有する免疫応答調節剤や、(7)Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を添加した食品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導することができる免疫調節機能を有する乳酸菌を含有する免疫応答調節剤や、該免疫応答調節剤を有効成分とする非特異的な免疫応答調節機能を有する食品を得ることができる。また、卵白オボムコイド等の免疫調節機能を有するタンパク質と、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導することができる免疫調節機能を有する乳酸菌との組み合わせにより、非特異的な免疫応答調節機能を有する免疫応答調節組成物や、該免疫応答調節組成物を有効成分として含有する非特異的な免疫応答調節機能を有する食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の免疫応答調節組成物としては、免疫調節機能を有するタンパク質、免疫調節機能を有するその分解物、及び免疫調節機能を有するそれらの化学修飾体からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質(以下、これらを総称して「免疫調節機能を有する本件タンパク質等」ということがある)と、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導し、かつ、前記化学物質と協働して免疫調節機能を向上させることができる乳酸菌とを含有するものであれば特に制限されず、上記「免疫応答調節組成物」には、免疫応答抑制組成物、免疫応答賦活組成物等が含まれ、また「免疫調節機能」には、免疫応答抑制機能、免疫応答賦活機能等が含まれる。
【0014】
上記免疫調節機能を有するタンパク質としては、免疫応答抑制機能、免疫応答賦活機能等を有するタンパク質であれば特に制限されないが、免疫応答抑制機能を有するタンパク質としては、卵類、牛乳類、肉類、魚類、甲殻類及び軟体動物類、穀類、豆類及びナッツ類、果実類、野菜類、ビール酵母若しくはゼラチンなどアレルギーを引き起こす食品に含まれるアレルゲン、特に乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼインや、β−ラクトグロブリンや、卵白アレルゲン成分としてはオボアルブミンとオボムコイドや、小麦アレルゲンの主要成分としてグリアジンや、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質や、落花生の主要タンパク質であるAra h1、中でも卵白オボムコイドを好適に例示することができる。また、免疫応答賦活機能等を有するタンパク質としては、ラクトフェリン、インターフェロン誘導シグナル伝達活性を有するタンパク質(特開2004−173679)、膜局在型プロテインチロシンキナーゼ(特開平10−313868)、ホエーのプロテアーゼ処理物等を挙げることができる。
【0015】
上記免疫調節機能を有するその分解物としては、トリプシン、V8プロテアーゼ等プロテアーゼによる分解物を例示することができ、また免疫調節機能を有するそれらの化学修飾体としては、グルコシル化及びリン酸化などの酵素による修飾物、アセチル化、エステル化、アミド化などの化学修飾物、加熱、酸化、酸加水分解、アルカリ処理、脱糖などの処理物を挙げることができる。
【0016】
上記Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導しうる乳酸菌としては、生菌や死菌(断片も含む)の状態で、Th1タイプサイトカイン及びTh2タイプサイトカインを誘導しうる乳酸菌や、Th1タイプサイトカインを誘導しうる乳酸菌が好ましく、Th1タイプサイトカイン及びTh2タイプサイトカインを誘導しうる乳酸菌がより好ましい。ここで、Th1タイプサイトカインとしては、IL−2、IL−12、IFN−γ、TNF−α等を挙げることができるが、中でも、IL−12やIFN−γを好適に例示することができ、またTh2タイプサイトカインとしては、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−13等を挙げることができるが、中でも、IL−6やIL−10を好適に例示することができる。例えば、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導しうる乳酸菌の選択基準としては、マクロファージ系細胞株J774.1細胞を用いた評価において、LPS 1μg/mlでの刺激による場合と同等のIL−12p40あるいはIL−6産生量を示す乳酸菌を選択するのが好ましい。また、マウス脾臓細胞を用いた評価において、500pg/ml以上好ましくは2000pg/ml以上のIL−12p70産生量、あるいは10ng/ml以上好ましくは30ng/ml以上のIFN−γ産生量を示す乳酸菌を選択するのが好ましい。このような免疫調節機能を有する乳酸菌は、ラクトバチラス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、などの乳酸菌群からも選ぶことができ、特に好適に、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T)を具体的に例示することができる。
【0017】
また、前記免疫調節機能を有する本件タンパク質等と協働して免疫調節機能を向上させることができる乳酸菌は、例えば、供試乳酸菌と、オボムコイド等の免疫調節機能を有する本件タンパク質等とをマウスに連続的に経口投与し、アレルゲン等の抗原で免疫した後、血清中の抗原特異的IgE抗体、IgG抗体、IgG1抗体及びIgG2a抗体をELISAにより測定し、これら抗体の内1以上の抗体産生を、供試乳酸菌単独及び本件タンパク質等単独の場合よりも有意に抑制する乳酸菌を選択することにより得ることができる。
【0018】
本発明の免疫応答調節組成物は、そのまま用いて免疫応答抑制剤や免疫応答賦活剤等の免疫応答調節剤として、あるいは食品に添加して免疫応答抑制用や免疫応答賦活剤用の免疫応答調節用食品として、主に経口摂取される。免疫応答調節剤としての摂取形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型は特に制限されず、また、摂取量等も年齢や症状、疾患の程度により適宜決定することができる。さらに、免疫応答抑制組成物は食経験がある食品素材を利用することから、免疫応答抑制組成物中に含まれる食物アレルゲンに対するアレルギーを有する人を除いて、生体に悪影響を与えないという利点を有する。この場合の投与量については、基本的にはアレルゲンタンパク質に対する免疫応答を抑制することができる量であればよく、例えば、1日あたり、5〜500mg/kg体重の投与が適当である。また、経口投与する場合、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
【0019】
上記のように、本発明の免疫応答調節組成物、好ましくは本発明の免疫応答抑制組成物は、食品に配合しても使用されるが、かかる本発明の免疫応答調節組成物を有効成分として含有する食品としては、例えば、上記免疫応答抑制剤を添加した食品を例示することができ、ここで、食品としてはヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜などを挙げることができる。食品中の免疫応答抑制組成物の含量については、上記と同様に、例えばアレルゲンタンパク質に対する免疫応答を抑制することができる量であればよい。
【0020】
次に本発明は、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を含有する免疫応答調節剤や、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を添加した食品にも関し、これらの内、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)及びEnterococcus faecium(JCM5804T)は独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(JCM)から入手することができる。また、Enterococcus faecium(FERM P−20637)は、平成17年(西暦2005年)8月24日(受領日)付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−5466 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託されている。
【0021】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
[J774.1細胞を用いた評価]
(1)乳酸菌の培養
ラクトバチルス属(Lactobacillus)乳酸菌であるL.gasseri19菌株(L1〜L19)、L.acidophilus15株(L20〜L34)、L.johnsonii5菌株(L35〜L39)、L.salivarius ssp. Salicinius10菌株(L40〜L49)、L.reuteri1菌株(L50)、L.casei ssp. alactosus1菌株(L51)、L. rhamnosus1菌株(L52)、L.amylovorus4菌株(L53〜L56)、L. crispatus2菌株(L57〜L58)の計58菌株(L1〜L58)を供試した。これらの乳酸菌は、APT−broth培地(Difco Laboratories)で37℃・40時間培養を行った。
【0023】
(2)J774.1細胞の培養
マウスのmonocyte-macrophage cell line J774.1はATCCより購入した。FCSを10%加えたRPMI1640培地(Sigma)を用い、37℃・5%CO条件下でJ774.1細胞の培養を行った。細胞の継代は3日おきに、また、培地交換は継代して48時間後に行った。
【0024】
(3)サイトカインの測定
J774.1細胞を5×105個/mlに調製し、48ウェル培養プレートに0.5ml/ウェルずつ播種した。1時間プレインキュベートした後、乳酸菌(湿重量1、10mg/ml)を50μl/ウェル添加した。乳酸菌は生理食塩水で調製し、死菌は100℃・50分加熱したものを用いた。24時間培養後、上清を回収した。そして、サイトカインIL−12p40及びIL−6の測定は、Mouse BD Opt EIA ELISA set(BD Pharmingen)を用いて行った。
【0025】
(4)結果
各乳酸菌によるIL−12p40の産生量を図1(生菌)及び図3(死菌)に、IL−6の産生量を図2(生菌)及び図4(死菌)に示す。生菌では、IL−12p40誘導能の高い菌が6菌株、IL−6誘導能の高い菌が13菌株認められた。一方、死菌では、IL−12p40誘導能の高い菌が3菌株、IL−6誘導能の高い菌が21菌株認められた。
【0026】
(5)考察
J774.1細胞においてサイトカイン産生に影響を与え、IL−12p40又はIL−6を誘導している菌株は、生体におけるサイトカイン産生に対しても影響を与える可能性が高いと考えられる。そこで、IL−12p40及びIL−6誘導能の高い菌、IL−12p40又はIL−6誘導能のどちらかが高い菌など特徴的なサイトカイン誘導能を示した乳酸菌、また菌種を考慮して選択した乳酸菌の8菌株(L2、L16、L32、L34、L39、L41、L52、L56)に関して、マウス脾臓細胞を用いた評価を行うこととした。なお、L2はL. gasseri(JCM1017)、L16はL. gasseriの一菌株、L32はL. acidophilusの一菌株、L34はL. acidophilusの一菌株、L39はL. johnsoniiの一菌株、L41はL. salivarius ssp. salicinius(JCM1042)、L52はL. rhamnosus(JCM1136T)、L56はL. amylovorusの一菌株を示す。
【実施例2】
【0027】
[マウス脾臓細胞を用いた評価]
(1)乳酸菌の培養
J774.1細胞を用いた評価で選択した乳酸菌8菌株(L2、L16、L32、L34、L39、L41、L52、L56)について、評価を行った。これらの乳酸菌は、APT−broth培地(Difco Laboratories)で37℃・18時間培養を行った。
【0028】
(2)脾臓細胞の調製
マウスから採取した脾臓をセルストレイナー(Falcon2350)で濾過した後、RPMI1640培地(Sigma)10mlで懸濁し、遠心した(190×g・10分)。沈殿した細胞に溶血バッファー(0.15M NHCl、10mM KHCO、0.1mM NaEDTA:pH7.2)を2ml添加し、5分静置した。RPMI培地を10ml添加し、2回洗浄を行った後、FCSを10%加えたRPMI培地を用いて6×106個/mlに調製した。
【0029】
(3)サイトカインの測定
脾臓細胞を48ウェル培養プレートに0.5ml/ウェルずつ播種した。1時間プレインキュベートした後、乳酸菌(湿重量5、50、500μg/ml)を50μl/ウェル添加した。乳酸菌は生理食塩水で調製し、死菌は100℃・50分加熱したものを用いた。24時間及び72時間培養後、上清を回収した。そして、サイトカインIL−12p70、IFN−γ及びIL−10の測定は、Mouse BD Opt EIA ELISA set(BD Pharmingen)を用いて行った。
【0030】
(4)結果
各乳酸菌によるIL−12p70の産生量を図5、IFN−γの産生量を図6、IL−10の産生量を図7に示す。L16及びL41は、生菌、死菌ともに、IL−12p70、IFN−γ及びIL−10を強く誘導し、Th1タイプサイトカイン誘導能が高いことが示唆された。また、他の菌株では、L34は生菌でIFN−γを、L52は生菌及び死菌でIL−12p70を強く誘導していた。
【0031】
(5)考察
マウス脾臓細胞においてTh1タイプサイトカイン産生に影響を与え、IL−12p70及びIFN−γを誘導している菌株は、生体においてもTh1タイプサイトカインを誘導する可能性が高いと考えられる。そこで、生菌、死菌ともにTh1タイプサイトカイン誘導能が高かったL41に関して、マウスへの投与試験を行うこととした。
【実施例3】
【0032】
[マウスへの投与試験による評価]
(1)乳酸菌の培養
脾臓細胞を用いた評価でTh1タイプサイトカイン誘導能の高かった乳酸菌L41について、評価を行った。L41は、APT−broth培地(Difco Laboratories)で37℃・18時間培養を行った。
【0033】
(2)マウスへの投与及び免疫
投与試験は、1試験区あたりマウス10匹を用いた。経口投与は生理食塩水又は乳酸菌(湿重量10mg/ml)を1匹あたり200μlずつ7日連続で行った。乳酸菌は生理食塩水で調製し、死菌は100℃・50分加熱したものを用いた。また、免疫は1週目及び3週目に、生理食塩水で1mg/mlに調製したオボアルブミン(OVA)とAlum(40〜50mg/ml 水酸化アルミニウムゲル)を等量混合した溶液を1匹あたり100μl腹腔内に注射した。
【0034】
(3)抗体の測定
4週目に採血を行い、血清中のOVA特異的IgE抗体、IgG抗体、IgG1抗体及びIgG2a抗体をELISAにより測定した。
【0035】
(4)結果
OVA特異的IgE抗体量を図8、IgG抗体量、IgG1抗体量及びIgG2a抗体量を図9に示す。L41の生菌及び死菌は、OVA特異的IgE抗体量を有意に抑制していた(<0.05)。一方、OVA特異的IgG抗体の産生に対する影響はなかったが、IgG1抗体の産生を抑制、IgG2a抗体の産生を誘導する傾向が認められた。
【0036】
(5)考察
マウスへの投与試験では、L41は、IgE抗体の産生を抑制したが、IgG抗体など他の抗体の産生は抑制しなかった。また、L41は、IgG1抗体の産生を抑制し、IgG2a抗体の産生を誘導する傾向が認められたことから、IgG1抗体及びIgG2a抗体産生に関与するTh2タイプサイトカイン(IL−4)が抑制され、Th1タイプサイトカイン(IFN-γ)が誘導されていると考えられた。したがって、L41は、他の抗体反応に大きな影響を与えることなくIgE抗体が関与するアレルギー作用を抑制し、またTh1細胞の分化を誘導して免疫バランスを調節する可能性があると考えられた。
【実施例4】
【0037】
[マウス脾臓細胞を用いた評価]
(1)乳酸菌の培養
ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)乳酸菌であるB.bifidum3菌株(B1〜B3)、B.breve3菌株(B4〜B6)、B. adolescentis4菌株(B7〜B10)、B.thermophilum2菌株(B11〜B12)、B.infantis2菌株(B13〜B14)、B.longum4菌株(B15〜B18)、B.pseudocatenulatum1菌株(B19)、B.pseudolongum2菌株(B20〜B21)、B.suis1菌株(B22)、B.catenulatum1菌株(B23)、B.angulatum1菌株(B24)、B.gallicum1菌株(B25)の計25菌株(B1〜B25)を供試した。これらの乳酸菌は、MRS−broth培地(Difco Laboratories)で35℃・40時間培養を行った。
【0038】
(2)脾臓細胞の調製
マウスから採取した脾臓をセルストレイナー(Falcon2350)で濾過した後、RPMI1640培地(Sigma)10mlで懸濁し、遠心した(190×g・10分)。沈殿した細胞に溶血バッファー(0.15M NHCl、10mM KHCO、0.1mM NaEDTA:pH7.2)を2ml添加し、5分静置した。RPMI培地を10ml添加し、2回洗浄を行った後、FCSを10%加えたRPMI培地を用いて6×106個/mlに調製した。
【0039】
(3)サイトカインの測定
脾臓細胞を48ウェル培養プレートに0.5ml/ウェルずつ播種した。1時間プレインキュベートした後、乳酸菌(湿重量5、50、500μg/ml)を50μl/ウェル添加した。乳酸菌は生理食塩水で調製し、死菌は100℃・50分加熱したものを用いた。24時間及び72時間培養後、上清を回収した。そして、サイトカインIL−12p70、IFN-γ及びIL−10の測定は、Mouse BD Opt EIA ELISA set(BD Pharmingen)を用いて行った。
【0040】
(4)結果
各乳酸菌によるIL−12p70の産生量を図10、IFN-γの産生量を図11、IL−10の産生量を図12に示す。B16の生菌はIFN-γを、死菌はIL−12p70を強く誘導していた。また、B20の死菌はIL−12p70を、B22の生菌はIFN-γ及びIL−10を、B24の生菌はIFN-γを誘導していた。なお、B16はB.longumの一菌株、B20はB. pseudolongumの一菌株、B22はB. suisの一菌株、B24はB. angulatum(JCM7096T)を示す。
【0041】
(5)考察
マウス脾臓細胞においてTh1タイプサイトカイン産生に影響を与え、IL−12p70及びIFN−γを誘導している菌株は、生体においてもTh1タイプサイトカインを誘導する可能性が高いと考えられる。したがって、B16の生菌及び死菌、B20の死菌などは、Th1細胞の分化を誘導して免疫バランスを調節する可能性があると考えられた。
【実施例5】
【0042】
[マウス脾臓細胞を用いた評価]
(1)乳酸菌の培養
エンテロコッカス属(Enterococcus)乳酸菌であるE.faecalis8菌株(E1〜E5及びE13〜E15)、E.faecium8菌株(E6〜E12及びE16)の計16菌株を供試した。これらの乳酸菌は、SCD−broth培地(Difco Laboratories)で35℃・18時間培養を行った。
【0043】
(2)脾臓細胞の調製
マウスから採取した脾臓をセルストレイナー(Falcon2350)で濾過した後、RPMI1640培地(Sigma)10mlで懸濁し、遠心した(190×g・10分)。沈殿した細胞に溶血バッファー(0.15M NHCl、10mM KHCO、0.1mM NaEDTA:pH7.2)を2ml添加し、5分静置した。RPMI培地を10ml添加し、2回洗浄を行った後、FCSを10%加えたRPMI培地を用いて6×106個/mlに調製した。
【0044】
(3)サイトカインの測定
脾臓細胞を48ウェル培養プレートに0.5ml/ウェルずつ播種した。1時間プレインキュベートした後、乳酸菌(湿重量5、50、500μg/ml)を50μl/ウェル添加した。乳酸菌は生理食塩水で調製し、100℃・50分加熱したものを用いた。24時間及び72時間培養後、上清を回収した。そして、サイトカインIL−12p70、IFN-γ及びIL−10の測定は、Mouse BD Opt EIA ELISA set(BD Pharmingen)を用いて行った。
【0045】
(4)結果
各乳酸菌によるIL−12p70の産生量を図13、IFN-γの産生量を図14、IL−10の産生量を図15に示す。E12は、IL−12p70、IFN-γ及びIL−10を強く誘導し、Th1タイプサイトカイン誘導能が高いことが示唆された。また、E10はIL−12p70、IFN-γを、E14及びE16はIFN−γを誘導していた。なお、E10はE. faeciumの一菌株、E12はE. faecium(FERM P−20637)、E14はE. faecalis(JCM5803T)、E16はE. faecium(JCM5804T)を示す。
【0046】
(5)考察
マウス脾臓細胞においてTh1タイプサイトカイン産生に影響を与え、IL−12p70及びIFN−γを誘導している菌株は、生体においてもTh1タイプサイトカインを誘導する可能性が高いと考えられる。そこで、Th1タイプサイトカイン誘導能が高かったE12及びE16に関して、マウスへの投与試験を行うこととした。
【実施例6】
【0047】
[マウスへの投与試験による評価]
(1)乳酸菌の培養
脾臓細胞を用いた評価でTh1タイプサイトカイン誘導能の高かった乳酸菌E12及びE16について、評価を行った。SCD−broth培地(Difco Laboratories)で35℃・18時間培養を行った。
【0048】
(2)マウスへの投与及び免疫
投与試験は、1試験区あたりマウス10匹を用いた。経口投与は生理食塩水又は乳酸菌(湿重量10mg/ml)を1匹あたり200μlずつ7日連続で行った。乳酸菌は生理食塩水で調製し、100℃・50分加熱したものを用いた。また、免疫は1週目及び3週目に、生理食塩水で1mg/mlに調製した OVAとAlum(40〜50mg/ml 水酸化アルミニウムゲル)を等量混合した溶液を1匹あたり100μl腹腔内に注射
した。
【0049】
(3)抗体の測定
4週目に採血を行い、血清中のOVA特異的IgE抗体、IgG抗体をELISAにより測定した。
【0050】
(4)結果
OVA特異的IgE抗体量を図16、IgG抗体量を図17に示す。E12及びE16は、OVA特異的IgE抗体量を有意に抑制していた(<0.05)。一方、OVA特異的IgG抗体の産生に対する影響はなかった。したがって、E12及びE16は、他の抗体反応に大きな影響を与えることなくIgE抗体が関与するアレルギー作用を抑制する可能性があると考えられた。
【0051】
(5)考察
マウスへの投与試験では、E12及びE16は、IgE抗体の産生を抑制したが、IgG抗体など他の抗体の産生は抑制しなかった。したがって、E12及びE16は、他の抗体反応に大きな影響を与えることなくIgE抗体が関与するアレルギー作用を抑制する可能性があると考えられた。
【実施例7】
【0052】
[マウスへの投与試験による評価]
E12(Enterococcus faecium(FERM P−20637))は、SCD−broth培地(Difco Laboratories)で35℃・18時間培養を行った。
【0053】
(2)卵白の調製
鶏卵の卵白を凍結乾燥した。
【0054】
(3)β−ラクトグロブリン(以下β−LG)の調製
新鮮な牛乳よりAschaffenburgとDrewryの方法に従い、粗β−LG画分を得た。この粗画分をさらにDEAE 650S(TOSOH)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。移動相には50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH6.4)を用い、NaClの0から0.5Mのリニアグラジェントによりβ−LGを分画し、透析による脱塩後、凍結乾燥を行った。
【0055】
(4)マウスへの投与及び免疫
投与試験は、1試験区あたりマウス8匹を用いた。経口投与は、下記4試験区(表1)で実施した。
乳酸菌及び卵白は7日間連続で投与した。卵白及び乳酸菌は生理食塩水で調製し、乳酸菌は調製後100℃・50分加熱したものを用いた。また、免疫は投与開始から1週目及び3週目に、1匹あたりβ−LG50μgを 水酸化アルミニウムゲル(40〜50mg/ml)とともに腹腔内に注射した。
【0056】
【表1】

【0057】
(5)抗体の測定
4週目に採血を行い、血清中のβ−LG特異的IgE抗体量をELISAにより測定した。
【0058】
(6)結果
各投与区のβ−LG特異的IgE抗体量を図18に示す。TEST1を対照としたt検定により、TEST2の乾燥卵白のみ、あるいはTEST3のE12のみの投与ではβ−LG特異的IgE抗体産生の低下は認められなかった。しかし、単独では効果の認められなかった乾燥卵白とE12を組み合わせたTEST4では有意にβ−LG特異的IgE抗体の産生の低下が認められた(P≦0.05%)。
【0059】
(7)考察
卵白成分のオボムコイドが乳、ダニ、花粉などに対する過剰な免疫を抑制する作用を有することを本発明者らにより明らかにしているが、今回の試験では、通常の食品である卵白を投与した場合、あるいは卵白に免疫調節機能を有する乳酸菌を加えた場合の免疫応答に対する影響を検討した。その結果、卵白の投与は、乳の主要アレルゲンであるβ−LGに対する特異的IgE抗体の産生を抑制する傾向にあるものの有意ではなかった。また、実施例6ではE12の10mg/ml投与によりOVAに対する特異的IgE抗体抑制作用を示したが、実施例7では、OVAと同じ濃度のβ−LGに対し、特異的IgE抗体の産生を抑制する傾向にあるものの有意ではなかった。しかし、有意な抑制効果を示さない乾燥卵白とE12を組み合わせることにより相乗的な免疫調節機能を示し、β−LG特異的IgE抗体の産生を抑制すること(TEST4)が明らかとなった。このことから、免疫調製剤は、単一性分を利用するよりも、複数の有効成分の組み合わせにより、より効果的な商品設計が可能になると考えられた。さらに、乳酸菌の製造コストが最終製品のコストアップにつながるが、乳酸菌を他の食品成分と組み合わせることにより相乗的な効果が得られることが明らかとなり、免疫調製剤のコストダウンにも貢献できるものと考えられた。
【実施例8】
【0060】
[オボムコイド及び乳酸菌の組み合わせによるマウスの免疫応答に対する効果]
(1)乳酸菌の培養
E12(Enterococcus faecium(FERM P−20637))は、SCD−broth培地(Difco Laboratories)で35℃・18時間培養を行った。
【0061】
(2)ニワトリオボムコイド(以下「OM」という)の調製
新鮮卵白よりアセトン沈殿法(Lineweaver & Murry)により粗OMを調製した。さらに0.1M酢酸緩衝液に対し透析後、8,000rpm×20分遠心し、上精を回収した。さらに、TSK gel DEAE 650S(TOSOH)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。移動相には50mMイミダゾール−塩酸緩衝液(pH6.4)を用い、NaClの0から0.3MのリニアグラジェントによりOMを分画し、透析による脱塩後、凍結乾燥を行った。
【0062】
(3)マウスへの投与及び免疫
投与試験は、1試験区あたりマウス8匹を用いた。経口投与は、下記4試験区(表2)で実施した。
乳酸菌及びOMは7日間連続で投与した。OM及び乳酸菌は生理食塩水で調製し、乳酸菌は調製後100℃・50分加熱したものを用いた。また、免疫は投与開始から1週目及び3週目に、1匹あたりβ−LG50μgを水酸化アルミニウムゲル(40〜50mg/ml)とともに腹腔内に注射した。
【0063】
【表2】

【0064】
(4)抗体の測定
4週目に採血を行い、血清中の総IgE抗体量をELISAにより測定した。
【0065】
(5)結果
各投与区の総IgE抗体量を図19に示す。TEST1を対照としたt検定により、TEST2のOMのみ、あるいはTEST3のE12のみの投与では総IgE抗体量の低下は認められなかった。しかし、単独では効果の認められなかったOMとE12を組み合わせたTEST4では有意に総IgE抗体量の低下が認められた(P≦0.05%)。
【0066】
(6)考察
単独で免疫抑制効果を示さない少量のE12と、卵白アレルゲンのOMと組み合わせることにより、免疫抑制効果を示すことが明らかとなった。これらの結果は実施例7と同様の傾向を示し、実施例7でβ−LG特異的IgE抗体を抑制していた卵の成分は主にOMと考えられ、OMとE12を組み合わせることにより、効果的な免疫調節機能を発現できるものと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】J774.1細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌(生菌)によるIL−12p40の産生量についての評価結果を示す図である。
【図2】J774.1細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌(生菌)によるIL−6の産生量についての評価結果を示す図である。
【図3】J774.1細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌(死菌)によるIL−12p40の産生量についての評価結果を示す図である。
【図4】J774.1細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌(死菌)によるIL−6の産生量を示す図である。
【図5】マウス脾臓細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌によるIL−12p70の産生量を示す図である。
【図6】本発明のマウス脾臓細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌によるIFN−γの産生量についての評価結果を示す図である。
【図7】本発明のマウス脾臓細胞を用いたラクトバチルス属乳酸菌によるIL−10の産生量についての評価結果を示す図である。
【図8】本発明のラクトバチルス属乳酸菌のマウス投与試験に関する血清中OVA特異的IgE抗体量についての結果を示す図である。
【図9】本発明のラクトバチルス属乳酸菌のマウス投与試験に関する血清中IgG抗体量、IgG1抗体量及びIgG2a抗体量についての結果を示す図である。
【図10】本発明のマウス脾臓細胞を用いたビフィドバクテリウム属乳酸菌によるIL−12p70の産生量についての評価結果を示す図である。
【図11】本発明のマウス脾臓細胞を用いたビフィドバクテリウム属乳酸菌によるIFN−γの産生量についての評価結果を示す図である。
【図12】本発明のマウス脾臓細胞を用いたビフィドバクテリウム属乳酸菌によるIL−10の産生量についての評価結果を示す図である。
【図13】本発明のマウス脾臓細胞を用いたエンテロコッカス属乳酸菌によるIL−12p70の産生量についての評価結果を示す図である。
【図14】本発明のマウス脾臓細胞を用いたエンテロコッカス属乳酸菌によるIFN−γの産生量についての評価結果を示す図である。
【図15】本発明のマウス脾臓細胞を用いたエンテロコッカス属乳酸菌によるIL−10の産生量についての評価結果を示す図である。
【図16】本発明のエンテロコッカス属乳酸菌のマウス投与試験に関する血清中OVA特異的IgE抗体量についての結果を示す図である。
【図17】本発明のエンテロコッカス属乳酸菌のマウス投与試験に関する血清中IgG抗体量についての結果を示す図である。
【図18】本発明のβ−LG特異的IgE抗体産生に及ぼす卵白あるいは乳酸菌投与の影響を示す図である。
【図19】本発明の総IgE抗体産生に及ぼすOMあるいは乳酸菌投与の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫調節機能を有する、タンパク質、その分解物及びそれらの化学修飾体からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質と、Th1タイプサイトカイン及び/又はTh2タイプサイトカインを誘導し、かつ、前記化学物質と協働して免疫調節機能を向上させることができる乳酸菌とを含有する免疫応答調節組成物。
【請求項2】
免疫調節機能を有するタンパク質が、卵白オボムコイドであることを特徴とする請求項1記載の免疫応答調節組成物。
【請求項3】
乳酸菌が、Th1タイプサイトカインであるIL−12及びIFN−γ、並びにTh2タイプサイトカインであるIL−10を誘導する乳酸菌であることを特徴とする免疫応答調節組成物。
【請求項4】
Th1タイプサイトカインであるIL−12及びIFN−γ、並びにTh2タイプサイトカインであるIL−10を誘導する乳酸菌が、Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T)であることを特徴とする請求項3記載の免疫応答調節組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の免疫応答調節組成物を有効成分として含有する食品。
【請求項6】
Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を含有する免疫応答調節剤。
【請求項7】
Lactobacillus salivarius ssp. Salicinius(JCM1042)、Enterococcus faecium(FERM P−20637)又はEnterococcus faecium(JCM5804T) を添加した食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−84533(P2007−84533A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227564(P2006−227564)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会 2005年度(平成17年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】