免疫細胞の新規エンドヌクレアーゼ、これを製造するための方法およびこれを用いる免疫アジュバント
【課題】免疫細胞から分泌され、そして外来性物質として細菌DNAを認識し、またそれをプロセシングして免疫応答に関わるCpGモチーフを含む約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを生産する新規エンドヌクレアーゼの提供。
【解決手段】当該エンドヌクレアーゼを製造するための方法であって、ヒトB−リンパ芽球IM9細胞系またはTPAで処理された骨髄性U937細胞系を適切な培地にて培養して当該エンドヌクレアーゼを生産する工程、および細胞溶解物または培養培地から当該エンドヌクレアーゼを単離する工程を含む方法。加うるに、当該エンドヌクレアーゼによって細菌DNAを処理することによって生産される、CpGモチーフを有する約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバント。
【解決手段】当該エンドヌクレアーゼを製造するための方法であって、ヒトB−リンパ芽球IM9細胞系またはTPAで処理された骨髄性U937細胞系を適切な培地にて培養して当該エンドヌクレアーゼを生産する工程、および細胞溶解物または培養培地から当該エンドヌクレアーゼを単離する工程を含む方法。加うるに、当該エンドヌクレアーゼによって細菌DNAを処理することによって生産される、CpGモチーフを有する約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫細胞から分泌され、外来性物質として細菌DNAを認識し、そしてそれをプロセシングして、免疫応答に関わることが知られているCpGモチーフを含むおよそ10塩基の一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する、新規エンドヌクレアーゼ酵素に関する。加えて本発明は、前記エンドヌクレアーゼ酵素によって産生される前記のおよそ10塩基の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバントに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物は、外来性物質に対して防御をするための免疫系を有している。その免疫系は、自然の(非特異的)免疫または後天性の(抗原特異的)免疫に分類される。生得的な、あるいは非特異的な免疫は、一つの種によって引き起こされる疾病に対する第一次の抵抗であり、構造的、生理的、エンドサイトーシス、およびファゴサイトーシス、ならびに炎症性応答などの4つのタイプとしての防御バリアを創出する。代表的な構造的防御バリアの例としては、皮膚および粘膜が挙げられる。生理的防御バリアには、例えば、温度、pH、酸素圧、および様々な水溶性因子が包含される。エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシスの防御バリアとは、外来性の巨大分子が特定の細胞の中に取り込まれてその後分解される、エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシスの分解システムのことをいう。炎症の防御バリアは、細菌の侵入とそれに続く皮膚の損傷によって産生される様々な血管作用性および化学走性物質によって導かれる炎症性応答である。その後、凝固、キニン、線維素溶解性などの酵素系または補体が活性化される。後天的免疫は、生得的な免疫と、前者が特異性、多様性、記憶ならびに自己および/または非自己認識を備えているという点で相違している。後天的免疫の特性は、Bリンパ球、Tリンパ球、抗体、サイトカイン等により応答する、体液性および細胞性の免疫に由来する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
微生物の侵入による免疫応答は、侵入の初期段階で微生物の特定の分子を速やかに認識する生得的な機構によって発生する。微生物に存在するタンパク質および脂質は、抗原に特異的に応答する免疫系を誘導する物質としてよく知られている。LPS、ホルミルメチオニン、リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン等は、補体系を直接的に活性化する物質としてよく知られている(Marrack, P., および Kapple, J. W. (1994) Cell 76, 323-332)。近年、哺乳動物において体液性および細胞性免疫が、それらの内因性DNAを細菌DNAから識別し、そしてその細菌DNAを異物として認識することにより活性化されること、そしてかかる細菌DNAが生得的免疫に関わることが、多くの研究者によって明らかにされてきている。
【0004】
全身性狼蒼エリテマトーデス(SLE)、自己免疫疾患の際に、大量の抗−DNA抗体が産生されるという事実から、抗原または自己抗原の観点でDNAが研究されてきている。抗−DNA抗体は、SLEに関連して血清学的に最も重要であると考えられ、それは腎損傷、皮膚の発疹、関節炎等に関わる主要なメディエーターとして機能する。(Tan, E. M. (1989) A Textbook in Rheumatology, 11版, D. J. McCarty, 編, Led および Febiger, Philadelphoa, PA, 1049;Isenberg, D. A. ら (1997) 1996年5月、ロンドンで開催されたDNA抗体に関する国際ワークショップでの、全身性狼蒼エリテマトーデス−AにおけるDNAに対する抗体の役割の、概説および序論、Lupus 6, 290-304;Swaak, A. J. G. ら (1979) Arthritis Rheum. 22, 226-235;ならびにIsenberg, D. A. ら (1994) Arthritis Rheum. 37, 169-180)。これらの抗体は、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAに存在する構造決定因子に結合することが示された(Isenberg, D. A. ら (1994) Arthritis Rheum. 37, 169-180;Pisetskyi, D. S. (1992) Rheum. Dis. Clin. North. Am. 18, 437-454;ならびに Shoenfield, Y., および Isenberg, D. A., (1989) Immunol. Today 10, 123-126)。SLEの原因は正確には解明していないが、最近の研究により、DNA抗原がその疾病に顕著に関係していることが明示されている(Shlomechik, M. J. ら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 9150-9154;Shlomechik, M. J. ら (1990) J. Exp. Med. 171, 265-292;および Tillman, D. M. ら (1992) J. Exp. Med. 176, 761-779)。研究者らは、細菌DNAに対する免疫応答を調べるために、正常マウスおよび自己免疫疾患マウスを使用した(Gilkeson, G. S. ら (1989) Clin. Immunol. Immunopathol. 51, 1482-1486;Gilkeson, G. S. ら (1993) J. Immunol. 151, 1353-1364;および Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402)。哺乳動物DNAとは異なり、細菌DNAはポリクローナルB細胞を活性化し、そしてマウスでの特異性を有する抗体を生産するという、強力な免疫特性を保有している(Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402;および Gilkeson, G. S. ら (1991) Clin. Immunol. Immunopathol. 59, 288-300)。活性の程度は、細菌DNAに存在する塩基配列モチーフが哺乳動物DNAの塩基配列モチーフと相違し、そして異物、すなわち非自己として認識し得るという事実に起因している(Messina, J. P. ら (1993) Cell. Immunol. 147, 148-157;Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;および Halpern, M. D. ら (1996) Cell Immunol. 167, 72-78)。正常マウスに細菌DNAで免疫誘発処理されると、マウスは細菌の二本鎖DNAだけでなく哺乳動物および細菌の一本鎖DNAにも結合することができる抗体を生産する(Gilkeson, G. S. ら (1991) Clin. Immunol. Immunopathol. 59, 288-300)。しかしながら、哺乳動物の二本鎖DNAと交差反応性を有する自己抗体はまったく生産されなかった。正常マウスと異なり、二本鎖DNAによって免疫誘発処理された前自己免疫(NZB X NZW) F1 (NZB/W)マウスは、哺乳動物の二本鎖DNAと結合する交差反応性抗体を生産した(Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402)。このように、自己免疫疾患マウスは、細菌DNAで免疫付与されると、その動物は哺乳動物DNAと交差反応性を有する抗−二本鎖DNA抗体を生産する能力を有する。それは、NZB/W マウスでの免疫レギュレーターの欠如において、細菌DNAによって生産される自己応答性の抗−二本鎖DNA B細胞がそれらの内因性DNAに応答する誤寛容が起こることに起因しており、かくして細菌DNAのみならずそれら自体のDNAにも応答する病原性自己抗体が増加したのである(Whock, M. K. ら (1997) J. Immunol. 158, 4500-4506)。
【0005】
タンパク質抗原でB細胞を刺激および活性化することによる抗体の生産は、タンパク質抗原が抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされ、そして主要組織適合性複合体(MHC)に結合して、MHCによって限定されるT細胞が活性化されてその活性化されたT細胞がサイトカインを分泌してB細胞を活性化するように抗原の提示を誘導するプロセスとしてよく知られている(Parker, D. C. (1993) Annu. Rev. Immunol. 11, 331-360;ならびに Clark, E. A. および Ledbetter, J. A. (1994) Nature 367, 425-428)。タンパク質抗原と異なるミコバクテリアの細胞壁の構成要素の加工体であるリポアラビノマンナンリポグリカン(LAM)、ミコール酸脂質が、hCD1b(Beckman, E. M. ら (1994) Nature 372, 691-694;Bendelac, A. (1995) Science 269, 185-186;Sieling, P. A. ら (1995) Science 269, 227-230;およびPrigozy, T. I. ら (1997) Immunity 6, 187)およびhCD1c (Beckman, E. M. ら (1996) J. Immunol. 157, 2795-2803)によって提示され得ることもよく知られている。CD1ファミリーは、MHC分子と異なる部位にてコードされる非多形細胞表面糖タンパク質である。CD1−T細胞の結合は明瞭には特定されていないが、mCD1d1はCD8+およびCD4+ T細胞によって認識され(Castano, A. R. ら (1995) Science 269, 223-226;Cardell, S. ら (1995) J. Exp. Med. 182, 993-1004)そしてhCD1bはCD4-およびCD8- T細胞によって認識される(Bendelac, A. (1995) Science 269, 185-186)らしいことが示唆された。このように、CD1は病原性微生物に認められるタンパク質以外の様々な抗原の提示に関わることが推定される。多くの研究で、DNAは抗−DNA−特異的なB細胞刺激に関わっていることが報告された。Krishnan および Marionは、DNAおよびペプチドの組み合わせでのマウスの免疫付与によって抗−DNA抗体を誘発できることを示した(Krishnaa, M. R. および Marion, T. N. (1993) J. Immunol. 150, 4948-4957)。従って、抗−DNA抗体が様々な自己免疫疾患の際に産生されるという事実に鑑みて、抗−DNA抗体の生産のためのB細胞の活性化が、MHCで限定されるT細胞刺激に依存しているか否かを確かめることが重要である。Waisman は、DNAによるT細胞の特異的活性化がMHCクラスII分子によるDNA提示に関わることを示唆した(Waisman, A. ら (1996) Cell. Immunol. 173, 7-14)。すなわち、彼はAPC表面上のMHCクラスII分子にDNAが結合し、そしてその結果、T細胞はDNAによって特異的に増殖されることができるという事実を示し、その事実に基づいて、DNAが自己免疫疾患で重大な役割を果たしていると提唱した。しかしながら、DNA抗原のプロセシングおよび提示機構に関するさらなる研究および知見はまったくない。例えば、細菌DNAがAPCによってプロセシングされ、タンパク質抗原におけるようにMHC分子により提示されるか否か、または他の分子がこのような提示に関わっているのかどうかは、未だ解明されていない。
【0006】
脊椎動物は、細菌DNA由来とそれらの内因性DNAを識別し、それにより免疫細胞が細菌DNAによって活性化されることを、多くの研究者が示した。脊椎動物によって非自己として認識される細菌DNAは、高レベルで非メチル化CpGジヌクレオチドを産生していることにより特徴付けられる。細菌DNAと脊椎動物DNAとの間の甚だしい相違は、以下のように要約され得る。第1に、細菌DNAは最多レベルで16ジヌクレオチドのCpGジヌクレオチドを産生しているが、脊椎動物DNAでは、細菌DNAの 1/4 を産生している。このことは、CpG抑制が脊椎動物DNAに存在することを意味している。第2に、細菌DNAに存在するCpGジヌクレオチドのメチル化頻度は低い。脊椎動物DNAは80%のメチル化を示すが、微生物のシトシンのメチル化はほとんど認められない(Bird, A. P. (1995) Trends Genet. 11, 94-100)。第3に、細菌DNAは、CpGジヌクレオチドの両側端部で2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンの側方に位置する頻度が、脊椎動物DNAよりも高い(Razin A., および Friedman, J. (1981) Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 25, 33-52)。「CpGモチーフ」と称される細菌DNAのその特異的な構造は、免疫応答を活性化することが報告された。すなわち、2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンがCpGジヌクレオチドの両側端部で側方に位置する場合(マイトジェン性CpG)、他の塩基がCpGジヌクレオチドの両側端部で側方に位置する場合(非刺激性CpG)に比較して、免疫細胞の活性化は随分高い。
【0007】
多くの研究者は、細菌DNAの特異的塩基配列による免疫細胞の活性化および作用を解明するために、化学的に合成されたオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)を使用した。Yamamoto および他の研究者は、細菌DNAがNK細胞の溶解性活性化を増加させ、またインターフェロンγ(IFN−γ)の生産を誘導することを示した(Yamamoto, S. ら (1992) J. Immunol. 148, 4072-4076;Cowdery, J. S. ら (1996) J. Immunol. 156, 4570-4575;および Ballas, Z. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 1840-1845)。Kuramoto は、このような効果が、細菌DNAに含まれるCpGモチーフのパリンドロームの塩基配列に関連することを報告した(Kuramoto, E. ら (1992) J. Cancer Res. 83, 1128-1131;およびKimura, Y. ら (1994) J. Biochem. 116, 991-994)。加うるに、細菌DNAはDNA結合性タンパク質に結合して、B細胞の活性化を誘導することが報告された(Gilkeson, G. S. ら (1989) J. Immunol. 142, 1398-1402;Yamamoto, S. ら (1992) J. Immunol. 148, 4072-4076;Gilkeson, G. S. ら (1989) J. Immunol. 142, 1482-1486;Messina, J. P. ら (1991) J. Immunol. 147, 1759-1764;Field, A. K. ら (1967) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 58, 1004-1010;ならびにOehler, J. R. および Herverman, R. B. (1978) Int. J. Cancer 21, 221-220)。すなわち、B細胞の活性化は、細菌の6塩基からなるCpGモチーフによって促進されることが理解される。細菌感染による、B細胞の活性化を包含した免疫応答は、免疫調節性サイトカインを生産することによって特徴付けられる(Van Damme, J. ら (1989) Eur. J. Immunol. 19, 163-168;およびPaul, W. E. ら Adv. Immunol. 53, 1-29)。さらにまた、CpGモチーフは、細胞性免疫に関わるIL−12および体液性免疫に関わるIL−6の分泌に関与することも報告された(Halpern, M. D. ら (1996) Cell, Immunol. 167, 72-78;Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 5394-5402;およびKlinman, D. M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 2879-2883)。それより生じるサイトカインとして、T細胞およびB細胞を活性化するうえで役割を果たすIL−6(Uyttenhove, C. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 1417-1427;Muraguchi, A. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 332-344;Le, J. M., および Vilcek, J. (1989) Lab. Invest. 61, 588-602;ならびに Hirano, T. ら (1990) Immunol. Today 11, 443-449)、細胞内および細胞外病原性細菌を排除するマクロファージの機能を促進するIFN−γ(Murray, H. W. (1990) Diagn. Microbial. Infect. Dis. 13, 411-421)およびIFN−γの生産を調節しNK細胞を活性化するIL−12(Trinchieri, G. (1994) Blood 84, 4008-4027;Zhan, Y., および Cheers, C. (1995) Infect. Immun. 63, 1387-1390;ならびに Bohn, E. ら (1994) Infect. Immun. 62, 3027-3032)が挙げられる。IL−12およびIFN−γは、1型サイトカインを増加することによりヒト病原性細菌を排除する、重要な役割を果たしている(Klinman, D. M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 2879-2883;Zhan, Y., および Cheers, C. (1995) Infect. Immun. 63, 1387-1390;Bohn, E. ら (1994) Infect. Immun. 62, 3027-3032;ならびにHeinzel, F. P. ら (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 7011-7015)。IL−6は、2型サイトカインによってT細胞およびB細胞の成長および分化を促進することにより抗体の生産を刺激する(Uyttenhove, C. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 1417-1427;Muraguchi, A. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 332-344;Le, J. M., および Vilcek, J. (1989) Lab. Invest. 61, 588-602;ならびに Hirano, T. ら (1990) Immunol. Today 11, 443-449)。実際、ノックアウトIL−6遺伝子を有するマウスは、容易に感染されることが観察された(Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 5394-5402;および Libert, C. ら (1994) Eur. J. Immunol. 24, 2237-2242)。このように、細菌DNAは、細胞性および体液性免疫に関わるサイトカインの生産を誘導することが理解される。近年、B細胞の増殖および発生は、細菌DNAによってもたらされることが、さらに報告されている(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;Liang, H., (1996) J. Clin. Invest. 98, 1119-1129;および Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 156, 558-564)。Krieg の研究は、ODNに存在するCpGモチーフが、B細胞の活性化および増殖を行ないつつIgMの分泌を誘導するのに必須であること、ならびにB細胞が活性化された場合に起こる典型的な現象であるクラスII MHC分子の発現が増大し、そしてG0からG1まで細胞周期が開始することを示した。Sato の報告(Sato, Y. ら (1996) Science 273, 352-354)によると、免疫刺激性DNA配列(ISS)を短いCpGモチーフと共に含むプラスミドDNAが単球にトランスフェクトされた場合に、IFN−α、IFN−βおよびIL−12の量が増加することが見られた。この結果は、ISSを含むプラスミドが骨髄幹細胞へトランスフェクトされると、その後周囲のマクロファージおよびT細胞が活性化されて、その幹細胞のイン・ビボの再配置が誤って起こり得ることを示唆するものである。かくして、体細胞または幹細胞置換療法のためのベクターは、ISSを含まないように設計されるべきなのである。対照として、ワクチンの効能を改善するための一つのアプローチは、多くの反復ISSを含むようにプラスミドDNAを設計することである。
【0008】
細胞を活性化するために、細菌DNAは細胞内に取り込まれるべきである。細胞培養容器上に吸着されたODNは、B細胞を活性化しないこと(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549)そしてオリゴヌクレオチドがリポフェクトされた場合に、NK細胞の活性化が大幅に増大するに伴って、その取り込みが増大すること(Yamamoto, T. ら (1994) Microbiol. Immunol. 38, 831-836)が見出された。また、CpGモチーフを含んでいるか否かに関わらず、オリゴヌクレオチドが細胞表面に結合する能力の間に有意な差異はないことも見出された(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;および Yamamoto, T. ら (1994) Microbiol. Immunol. 38, 831-836)。Bennett は、単核細胞内に取り込まれたDNAがエンドソーム画分にて分解されることを示した(Bennett, R. M. ら (1985) J. Clin. Invest. 76, 2182-2190)。Stacey は、細菌DNAがマクロファージ中の転写因子核因子−kBに結合し、そしてTNF−α、IL1−βおよびプラスミノーゲン活性化インヒビター−2 mRNAの発現が大幅に増大することを示した(Stacey, K. J. ら (1996) J. Immunol. 157, 2116-2122)。細胞表面上のレセプターの媒介を伴う、オリゴヌクレオチドの細胞内への取り込みは、エンドサイトーシスによって引き起こされるであろうことが予期された(Bennett, R. M. ら (1985) J. Clin. Invest. 76, 2182-2190)。また、蛍光でラベルされたホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドを末梢血、骨髄細胞および白血球細胞系で使用することによっても、研究が実施された(Loke, S. L. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 3474-3478;Yakubov, L. A. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 6454-6458;Zhao, Q. ら (1996) Blood 88, 1788-1795;Ribeiro J. M., および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)が、その特性および機構は未だまったく明確にされていない。
【0009】
細菌DNAはこれまでに、免疫系において重大な役割を果たすことが理解されている。自己免疫疾患であるSLEは、細菌DNAによって抗−DNA抗体が産生されることによって発症すること、そして細菌DNAのCpGモチーフは免疫細胞内へ取り込まれて細胞を活性化し、それによりサイトカインおよびIgMの分泌を促進することが知られている。しかしながら、どのような機構によって、このように重大な細菌DNAが抗体を生産することが可能ならしめられるのか、そしてCpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドがどのように細胞内で作られるのかについての報告はまったくない。
【0010】
本発明者らにより、DNA−未変性−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(DNA−未変性−PAGE)を使用して、ヒトB−リンパ芽球IM9細胞、および12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセテートで処理された分化型骨髄性U937ならびにその培養培地から、新規エンドヌクレアーゼが同定された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一側面において、本発明は、免疫細胞から分泌され、そして外来性物質として細菌DNAを認識し、またそれをプロセシングして免疫応答に関わるCpGモチーフを有する約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを生産する新規エンドヌクレアーゼに関する。
【0012】
別の側面において、本発明は、本発明のエンドヌクレアーゼを製造するための方法であって、ヒトB−リンパ芽球IM9またはTPAで処理された骨髄性U937細胞系を適切な培地にて培養して当該エンドヌクレアーゼを生産する工程、および細胞溶解物または培養培地から当該エンドヌクレアーゼを単離する工程を含む方法を提供する。
【0013】
さらなる側面において、本発明は、本発明のエンドヌクレアーゼを用いて細菌DNAを処理することによって生産されるCpGモチーフを有する、約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバントを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
新規エンドヌクレアーゼは、DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼアッセイシステムを使用して、IM9細胞溶解物および培養培地から同定された。そのエンドヌクレアーゼの分子量は、SDS−PAGEにより72.4 kDと測定された。本発明のエンドヌクレアーゼ活性は、培養時間の間にはIM9細胞核に検出され、そして酵素活性の蓄積が、アポトーシス細胞のIM9細胞核タンパク質抽出物中に示された。骨髄性U937細胞の増殖および分化に対するシグナルは、リポ多糖(LPS)および12-O-テトラデカノイルホルビル 13-アセテート(TPA)などの細胞外刺激により提供される。実験結果から、TPAがエンドヌクレアーゼ分泌の程度に対して有意な効果を有することが示唆された。その酵素活性はLPS処理によりU937細胞において誘導されたが、一方酵素の分泌は培養培地では検出されなかった。多重高次コイルプラスミドDNAを基質として用いて、細胞培養培地から単離された酵素についてエンドヌクレアーゼ活性を定量した。エンドヌクレアーゼは、Mg2+のみと共に、プラスミドDNAの直鎖状体への変換を触媒し、続いてさらに分解することができた。触媒活性に必要とされるpH至適値は、pH 6.6〜7.4の範囲に決定された。DNA−未変性−PAGEアッセイシステムで、免疫細胞系のエンドヌクレアーゼ活性は、DNアーゼ(デオキシリボヌクレアーゼ)Iのものと異なることが、実験結果から明らかに立証された。抗−DNアーゼI抗体を使用した免疫沈降分析で、分泌されたエンドヌクレアーゼはその抗体によって認識されないことが示された。本発明によって特徴付けられたMg2+−依存性エンドヌクレアーゼは、酵素活性に対する陽イオン依存性、未変性−PAGEにおける電気泳動移動度、および触媒作用に必要とされる至適pHを含めたいくつかの側面で、これまでに報告されたヌクレアーゼと異なると考えられる。エンドヌクレアーゼ活性によってプロセシングされるDNA断片は、免疫細胞系でのサザンブロット分析によって検出した。細胞培養培地にて部分的にプロセシングされた外来性DNA抗原は、細胞表面に結合し、その後細胞内へと取り込まれるようである。放射ラベルされたDNA断片を外来性抗原として用い、オートラジオグラフィーによって、免疫細胞系でのDNA抗原のさらなるプロセシングを立証した。エンドヌクレアーゼによって産生されたおよそ10塩基の一本鎖DNA断片は、S1ヌクレアーゼ反応によって分解されることが、実験結果によって示された。短い一本鎖DNA配列は、2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンが側方に位置する非メチル化CpGジヌクレオチドを有するCpGモチーフを含む、相補的合成オリゴヌクレオチドに、首尾良くハイブリダイズした。本発明は、ヒト免疫細胞系およびそれらの培養培地の双方に存在する新規エンドヌクレアーゼの存在および特徴を示すものである。また本発明は、免疫細胞由来のエンドヌクレアーゼが、異物として細菌DNAを認識し、そしてCpGモチーフを含むDNA断片を産生することにより免疫学的プロセスを遂行することも示している。
【0015】
本発明は、以下の実施例によって例証されよう。
【0016】
実施例1:
免疫細胞由来のエンドヌクレアーゼの生合成および分泌
DNアーゼIの酵素活性がヒトの組織および体液に広く分布しているという事実から、その酵素は消化機能に加えて、特定の生理的なイン・ビボの機構を保有していることが推定された(Nadano D. ら (1993) Clin. Chem. 39, 448-452;および Yasuda T. ら (1993) Clin. Chim. Acta 218, 5-16)。DNアーゼIは、アポトーシスの際にヌクレオソーム間DNAを切断することが知られている(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)。ヒト血清中にDNアーゼIが存在すること、およびその生化学的特性が報告された(Love J. D., および Hewitt R. R. (1979) J. Biol. Chem. 254, 12588-12594;ならびに Kishi K. ら(1990) Am. J. Hum. Genet. 47, 121-126)。血清DNアーゼIは、膵臓から分泌されることが教示された(Love J. D., および Hewitt R. R. (1979) J. Biol. Chem. 254, 12588-12594;ならびに Ito K. ら (1984) J. Biochem. 95, 1399-1406)が、他の組織からの分泌についての研究がなお必要である。Messina の研究では、DNアーゼIが細菌DNAを完全に分解するので、B細胞およびマクロファージを活性化するCpGモチーフを生産しないことが示された(Messina, J. P. ら (1991) J. Immunol. 147, 1759-1764)。加えて、Messinaの研究から、DNアーゼIによって処理されていない細菌DNAは、免疫細胞を活性化し、サイトカインおよびIgMの分泌を促進することが明らかにされた。これらのことは、CpGモチーフを有するODNで細胞が処理された場合に得られた結果に一致するものである。従って、外来性DNAを認識し、プロセシングによってCpGモチーフを生産することができる、1つの新しいタイプのエンドヌクレアーゼが免疫細胞に存在しているとの推定のもとに、本発明者らは、このようなエンドヌクレアーゼの活性の存在を確認すべく、様々な免疫細胞系を使用して実験を行なった。
【0017】
1−1 細胞培養および前処理
ヒトB−リンパ芽球(IM9およびRPMI1788)細胞系、Tリンパ芽球(Molt-4 および Jurkat)細胞系ならびに骨髄性(U937)細胞系は、American Type Culture Collection から購入した。細胞は、加熱した胎児ウシ血清(FBS、Gibco BRL)10%を含有するRPMI1640 で、4〜5 x 105 細胞/mlに維持して培養した。細胞培養は、37℃にて、5% CO2を含むインキュベーター(Forma)で行なった。培養中の細胞数および細胞の生存度は、血球計数器を使用して、トリパンブルー除去法によって定期的に測定した。細胞の生存度は、実験全体にわたって95%以上に保った。IM9細胞系は、細胞におけるエンドヌクレアーゼの生合成を確認するべく、アクチノマイシンD(ACD、Sigma)0.33 ug/mlで前処理した(Cooper H. L., および Braverman R. (1977) Nature 269, 527-529)。IM9細胞系は、ACDで処理して、30分間培養し、洗浄した。その後、細胞を10% FBSを含有するRPMI1640 にて48時間培養しながら、エンドヌクレアーゼの酵素活性を定期的な間隔で測定した。
【0018】
DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼ活性アッセイを実施して、細胞培養溶液および細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ酵素活性を検出した。試験した細胞培養物に分泌されたエンドヌクレアーゼの活性は、IM9細胞系のみで観察された(図5B、レーン2)。しかしながら、そのエンドヌクレアーゼ活性は常に、ヒトTリンパ芽球 Molt-4 細胞系の細胞溶解物中に常に検出された(図5A、レーン4)が、細胞培養溶液中には検出されなかった。骨髄性U937細胞系、Bリンパ芽球RPMI1788細胞系およびTリンパ芽球Jurkat細胞系については、エンドヌクレアーゼ活性は細胞溶解物または細胞培養溶液のいずれにも検出されなかった。図4に示すように、細胞におけるエンドヌクレアーゼの生合成(図4A)および細胞培養溶液中へのエンドヌクレアーゼの分泌(図4B)は、ACD前処理の後、初期に顕著に減少した。これらの結果から、IM9細胞系におけるエンドヌクレアーゼの生合成と分泌に、密接な相関関係があることが示唆される。
【0019】
エンドヌクレアーゼのサイトカインおよび分泌に対するサイトカインの効果を確認するべく、サイトカインが関与する免疫応答を、インターフェロン−γ(IFN−γ、10 単位/ml、Genetech Inc.)およびインターロイキン−1β(IL−1β、10 単位/ml、Genetech Inc.)で処理した。DNA−未変性−PAGEアッセイは、インターロイキンを含有する培地にて24時間細胞を培養しながら行なった。図6に示すように、このようなサイトカインはエンドヌクレアーゼの分泌に有意に影響を及ぼさなかった。また、リポ多糖(LPS)またはテトラデカノイルホルボール 13-アセテート(TPA、Sigma)のいずれも、エンドヌクレアーゼの分泌に影響を及ぼさないことも観察された。
【0020】
示された時間にわたり、異なる濃度にてTPAでU937細胞を処理しながら、生合成および分泌を観察した。シクロヘキシミド(CHX、10 ug/ml、Sigma)およびLPS(1 ng/ml、Sigma)によって処理されたU937細胞を、TPAによって処理されたU937細胞と比較した。細胞はリン酸緩衝性生理食塩水(PBS、137 mM NaCl、2.7 mM KCl、10 mM Na2HPO4、1.8 mM KH2PO4、pH 7.4)で洗浄し、そして様々な薬剤による処理の後の細胞形状を観察するために、細胞遠心分離スライド上でライト−ギムザ(Sigma)によって染色した。その結果、TPA刺激で分化したヒト骨髄性白血病細胞系の細胞形状は、成熟するようになって成長が停止するが、LPSの刺激後の細胞には増殖が起こった。このようなマイトジェンによって刺激される細胞の成長曲線を、図9に示す。図9から、U937細胞系はTPAによって分化されて細胞形状を変化させ、そして最終的に成長が終了することと、そしてその細胞はLPSによって増殖したことが認められる。加えて、アポトーシスを引き起こす薬剤であるCHXの処理によって、細胞は死滅することが観察された。さらなる実験を行ない、このような培養条件下でエンドヌクレアーゼが生産および分泌されるか否かを確認した。図10Aは、漸増TPA濃度で処理した細胞系で、細胞内のエンドヌクレアーゼの生合成が、増加したことを示す。図10Bは、細胞内でのエンドヌクレアーゼの生合成が増加すると同時にエンドヌクレアーゼ酵素が細胞から分泌されたことを示している。また図10Aは、10 ng/ml以上のTPAでエンドヌクレアーゼの生合成が速やかに増加したことを示している。図11には、10 ng/mlのTPAによる、U937細胞培養溶液の処置後に、定期的な間隔でエンドヌクレアーゼ活性を観察して得られた結果を示している。エンドヌクレアーゼ酵素の生合成および分泌はTPAの処理6時間後に開始され、そしてTPAの処理後24時間にそのピークに達することが認められる。図12には、1 ng/mlのLPSによる処理後、定期的な間隔でエンドヌクレアーゼ活性を定量して得られた結果を示す。その結果、LPSの処理後12時間で細胞溶解物にエンドヌクレアーゼ活性が検出され、そして24時間にわたり細胞培養溶液中にはまったくエンドヌクレアーゼ活性は検出されなかったことが示唆されている。U937細胞系は、アポトーシスを誘導する薬剤であるCHXによる処理に際して死滅し、そしてこのような処理はエンドヌクレアーゼの生合成に影響しないことが、顕微鏡的に観察された(図13、レーン4)。TPA、LPSおよびCHXによる、U937細胞系の処理後のエンドヌクレアーゼ活性を、図13に示す。
【0021】
1−2 細胞溶解物の調製およびDNA−未変性−PAGEでのエンドヌクレアーゼ活性の定量
細胞培養物は、1,500 rpmで5分間遠心分離し、そして上清を取り出した。遠心分離された細胞を冷PBSで2回洗浄し、そして150 mM NaCl、10 mM Tris−HCl、pH 7.5、1 mM EDTAおよび1 mM PMSFを含有する 0.5% Nonidet P-40 (NP−40)緩衝溶液(溶解緩衝溶液)中に、1 x 107細胞/mlとなるように再懸濁した。その溶液を4℃にて15分間静置した後、それを12,000 rpm、4℃にて15分間遠心分離し、そして上清を細胞溶解物として使用した。
【0022】
修正された未変性ポリアクリルアミドゲルアッセイシステムを使用して、エンドヌクレアーゼ活性を定量し、その特徴を同定した。Hoefer Tall Mighty Small(0.75 mm x 8 cm x 11 cm)垂直電気泳動装置を使用することにより、150 /mlの最終濃度となるように多重高次コイルプラスミドDNA(PGEM−Tベクター、3.0 kb、Promega)を含む 7%ポリアクリルアミドゲルを重合した。細胞培養溶液または細胞溶解物のタンパク質試料ウェル当たり10 ug を付し、次いで4℃にて電気泳動を行なった。電気泳動後、ゲルを蒸留水で3回洗浄し、そして20 mM Tris−HCl、pH 7.0、1 mM CaCl2および10 mM MgCl2を含有する反応緩衝溶液(TCM緩衝液)中で、37℃にて4時間、攪拌しながら反応させた。エンドヌクレアーゼ酵素の酵素活性を、反応時間を変えながら観察して、DNA−未変性−PAGEでその酵素の反応特異性を同定した。反応したゲルは、1/ml エチジウムブロミドを含むTCM緩衝溶液で37℃にて30分間染色し、そして302 nmトランスイルミネーターで撮影した。ゲル上でヌクレアーゼ活性を呈している部位は、オレンジの背景上で黒いバンドとして観察された。エンドヌクレアーゼ活性に対する標準は、ウシ膵臓DNアーゼI(RNアーゼ不含 10〜50 x 103単位/ml、Boehringer Mannheim)であった。
【0023】
細胞培養物および細胞溶解物における酵素活性は、感度と共に、本発明のために設計されたDNA−未変性−PAGEヌクレアーゼアッセイシステムによって定量することができる(図1)。10 ugのタンパク質を含む細胞培養溶液および細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ活性を呈する部位で、強い反応バンドが観察された。IM9細胞の、示した時間の間でのエンドヌクレアーゼの生合成および分泌の分析結果を、図1に示す。細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ活性は、48時間培養している間、絶えず検出された(図1A)が、同じ反応条件下に、細胞培養溶液中のエンドヌクレアーゼ活性はかなり蓄積した(図1B)。IM9細胞培養物をPBSで数回洗浄し、その後無血清培地に移すと、図1Bに示すエンドヌクレアーゼ活性に対する主要バンドが実際に検出されたが、DNアーゼI酵素活性はまったく検出されなかった(図1C)。この結果は、IM9細胞培養物および細胞溶解物で検出されたエンドヌクレアーゼは、細胞が培養された培地組成物の成分であるFBSに由来するものでなく、細胞で合成されて培地へと分泌されたものであることを示唆している。図1Bの細胞培養物での電気泳動上で速やかに移動したヌクレアーゼ活性の弱いバンドは、Boehringer Mannheimから入手したウシDNアーゼIと比較することによって、DNアーゼIとして同定された。
【0024】
図2は、異なる反応溶液の条件下にDNA−未変性−PAGEによって検出された1時間および4時間の酵素活性を示す。10 mM Mg2+を含有する 20 mM Tris−HCl、pH 7.0の緩衝溶液で1時間反応が実施されると、活性は、図2Aに示すように、IM9細胞によって分泌されたエンドヌクレアーゼのみに検出された。しかしながら、4時間というさらに長い時間にわたり同じ条件下に反応を行なった場合、購入したDNアーゼIのみならずFBS中に存在するDNアーゼIも、同じ部位に酵素活性を示した。この結果は、IM9細胞によって合成および分泌されたエンドヌクレアーゼの未変性−PAGE上の移動距離は、DNアーゼの移動距離と異なっており、そして所定反応条件下では酵素反応性もまた、互いに異なっていることを示している。
【0025】
1−3 DNアーゼIに対する抗体の生産および免疫沈降
免疫前の血清を得るために、Sprague Dawley(SD、150〜250 g)の尾から血液を採取した。ウシ膵臓DNアーゼI(Sigma)は、免疫付与のために滅菌PBS中で小断片へと消化した。SDラットは、標準法に従って、100 ugのタンパク質で免疫付与した(Harlow, E., および Lane, D. (1988) Antibodies, 実験マニュアル、Cold Spring Harbor, New York)。ラットを4回免疫誘発処理して10日後に血液を採取し、そして抗体価および特異性をアッセイした。DNアーゼIを含む血清中の抗−DNアーゼI抗体は、Immunopure plus protein A/G IgG 精製キット(Pierce)およびウシDNアーゼIを結合させたSepharose−CL 4Bを使用することによって精製した。PBSで10倍に希釈した、50 mlの細胞培養液または50 mlのヒト血清を、精製抗−DNアーゼI抗体およびProtein A-Sepharose−CL 4Bを結合させたビーズによって免疫沈降させた。免疫沈降は、攪拌しながら4℃にて6時間実施した。免疫沈降された上清を集めて、エンドヌクレアーゼの酵素活性をDNA−未変性−PAGEで検出した。
【0026】
図3Aは、調製された抗体が、FBSに由来するDNアーゼIを認識し、そしてヒト血清に存在するDNアーゼIと交差反応性を有することを示している。免疫前血清は、FBSおよびヒト血清DNアーゼIを認識しなかった。それより調製されたDNアーゼIを使用することによって、分泌されたエンドヌクレアーゼの各DNアーゼIとの交差反応性を検出した。抗−DNアーゼI抗体によりIM9細胞培養溶液から免疫沈降された上清は、速やかに移動するDNアーゼI酵素活性を示したが、分泌されたエンドヌクレアーゼの酵素活性は、免疫沈降されず、実際に回収されなかった。この結果は、IM9細胞系から分泌されるエンドヌクレアーゼが、免疫学的にDNアーゼIと異なることを立証するものである。
【0027】
1−4 エンドヌクレアーゼ活性の部分精製および特徴付け
IM9細胞の培養溶液からエンドヌクレアーゼを部分的に精製するために、前記実施例1―2による電気泳動によって酵素活性を呈するタンパク質バンドを溶出した。ヌクレアーゼ活性を呈するタンパク質バンドを切り出し、小片に断片化してエッペンドルフミクロチューブに移した。その後、20 mM Tris−HCl、pH 7.0 緩衝溶液を使用することにより、攪拌しながら4℃にて10時間、溶出を行なった。試料は、4℃、14,000 rpmにて10分間遠心分離し、そして上清を20 ulに分けた。溶出されたタンパク質試料の20 ngを、20 mM Tris−HCl緩衝溶液(pH 7.0)中で、高次構造コイルプラスミドDNAと37℃にて10時間反応させた。酵素活性に対するpHの効果を調べるために、各々異なるpHを有する、1 mM CaCl2および10 mM MgCl2を含有する20 mM MOPS緩衝溶液中で酵素活性を定量した。示した反応時間のエンドヌクレアーゼの酵素活性を分析するために、10 mM MgCl2を含有する20 mM Tris−HCl緩衝溶液(pH 7.0)中において、37℃にて180分間の間における定期的な間隔で、酵素反応を観察した。DNA試料緩衝溶液(30% グリセロール、0.5% ブロモフェノールブルーおよび0.5% キシレンシノール)を含有するTE(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、1 mM EDTA)緩衝溶液を添加した後、氷を添加することによって反応を停止した。エチジウムブロミド(0.5 ng/ml)を含有する1% アガロースゲルで電気泳動を行なうことによって、反応産物を同定した。単離された酵素は、pH 7に至適活性を有していることが調べられた。しかしながら、触媒活性は比較的広い範囲のpHで検出された(図7)。20 mM Tris−HCl(pH 7.0)緩衝溶液中でのエンドヌクレアーゼの酵素活性は、Mg2+に依存しており、Ca2+によっては影響を受けなかった(図8A)。酵素は、1から10 mMのCa2+の範囲で活性化されなかったが、Mg2+の濃度に依存した酵素活性によりプラスミドから直鎖状DNAが形成され、示した反応時間での、エンドヌクレアーゼによる直鎖状DNAの形成が観察された。高次構造コイルプラスミドDNAの直鎖状DNAへの変換反応は、10分間反応後に始まり、そして60分の反応まで徐々に増加した。ヌクレアーゼ活性は、同じ実験条件下に180分間持続した(図8B)。このように、本酵素は高次構造コイルプラスミドDNAを直鎖状DNAに変換し、続いてそのDNAを消化することが確認された。この結果は、IM9免疫細胞によって分泌されるエンドヌクレアーゼ活性は、Mg2+−依存性であることを立証している。
【0028】
本発明は、Mg2+−依存性のエンドヌクレアーゼ活性が一定量生産され、そして細胞培養物に定常的に分泌されていることを示した。また、そのエンドヌクレアーゼは、FBSおよびヒト血清中に存在するDNアーゼIと異なるという事実が、未変性−PAGEでの移動距離の差異と、抗−DNアーゼI抗体を使用することにより得られた免疫沈降の結果によって確認された。これらは、本発明のエンドヌクレアーゼが、酵素活性に対する陽イオン−依存性、未変性−PAGEでの移動度、活性に必要とされる至適pH等といった様々な生化学的特性の側面において、これまでに報告されていた、アポトーシスのプロセスでDNAを消化するエンドヌクレアーゼと異なることを示唆するものである。また、エンドヌクレアーゼが、U937細胞系が分化した際に生産および分泌されるという事実は、そのエンドヌクレアーゼが、免疫反応において外来性DNAを認識して好適なサイズへと消化することができる、非常に重要な生物学的機能を有することを確証するものである。本発明のエンドヌクレアーゼの機能は、細菌DNAが細胞内に取り込まれるとマクロファージが活性化されるという Staceyの報告、および単核細胞/マクロファージによって媒介される細胞毒性がヌクレアーゼによって引き起こされ得るというHigashiの報告を裏付けるものである(Stacey, K. J. ら (1986) J. Immunol. 157, 2116-2122;および Higashi, N. ら (1993) Cell. Immunol. 150, 333-342)。
【0029】
実施例2:
ヌクレオソーム間DNA断片化を誘導する、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼの同定
アポトーシスは、クロマチン凝縮、膜小疱形成、またはエンドヌクレアーゼ活性による様々なヌクレオソームサイズとしてのクロマチン断片化などといった「細胞死」の特定のタイプとして定義される(Wyllie, A. H. ら (1984) J. Pathol. 142, 67-77;Wyllie, A. H. (1980) Nature 284, 555-556;および Kerr, J. F. R. ら (1972) Cancer. 26, 239-257)。エンドヌクレアーゼ活性化は、アポトーシスのプロセスの重大な原因を担っている(Arends, M. J., およびWyllie, A. H. (1990) J. Pathol. 136, 593-608)。多くの研究者が、ヌクレオソーム断片化に関わる様々な酵素があることを示した。ヌクレオソーム間DNA断片化に関わる酵素の例としては、DNアーゼI(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)、DNアーゼII(Torriglia A., (1995) J. Biol. Chem. 270, 28579-28585;ならびに Barry M. A., および Eastman A. (1993) Arch. Biochem. Biophys. 300, 440-450)およびNUC−18(Wawabata, H. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)が挙げられる。また、様々なタイプの組織および細胞内のヌクレオソーム間DNAは、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling, W. H. ら (1984) J. Biol. Chem. 259, 5893-5898;Pandey S. ら (1997) Biochemistry 36, 711-720;ならびに Ribeiro J. M. および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)またはMg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Anzai N. ら (1995) Blood 86, 917-923;Kawabata, H. ら (1993) Biochem. Biophys. Res. Comun. 191, 247-254;Sun X. M. および Cohen G. M. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14857-14860;ならびに Wawabata, H., Anzai, N. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)によって断片化され得ることを提唱する多くの報告がある。しかしながら、多くのエンドヌクレアーゼの各々が、異なる複合的な細胞システムに関与していること、あるいは、細胞死があらゆるタイプの細胞で活発に起こった場合に、クロマチン断片化のために働くなんらかの未知酵素が存在することは、未だ立証されていない。従って、アポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼを特徴付けし、そしてその機構を明らかにすることが必要とされている。
【0030】
ヒトBリンパ芽球IM9細胞系によるエンドヌクレアーゼ酵素の生合成、およびDNA−未変性−PAGEによる当該エンドヌクレアーゼの単離を、前記実施例1に例証した。単離されたエンドヌクレアーゼ酵素は、未変性−PAGEでの電気泳動の移動度、触媒のために必要とされる至適pHおよび酵素活性への二価陽イオン依存性の側面において、これまでに知られているエンドヌクレアーゼのいずれのものとも判別されることが今回見出された。
【0031】
また、本発明者らにより、前記実施例によって調製された細胞溶媒溶液および細胞溶解物中に存在するエンドヌクレアーゼと同一と考えられる酵素の活性が、細胞核に検出され、その酵素はアポトーシスのプロセスの間は核に沈着することも見出された。このようなエンドヌクレアーゼが、核におけるヌクレオソームの断片化を誘導するという事実は、殺される標的とされる細胞が、このような作用によって排除されるという点において、防御作用として解釈され得る。アガロースゲル電気泳動によって、IM9細胞系がCHXによって処理されると、DNAのオリゴヌクレオソーム断片が生産されることが立証された。かかる断片の産生は、アポトーシスに際した生化学的現象のアペックスとして知られている。加えて、典型的なDNAの断片化が、IM9細胞系から単離された核をMg2+の存在下に反応させた場合に見出された。自己消化によるDNA断片化は、Mg2+−依存性かつCa2+−非依存性であることが同定された。核に存在するエンドヌクレアーゼ酵素の活性は、DNA−未変性−PAGEアッセイシステムによっても観察された。その酵素に対する至適pHは、6.5と7.5の間であった。これらの結果は、前記実施例1にて記載したIM9細胞系によって合成および分泌されたエンドヌクレアーゼが、IM9細胞系の核に存在する酵素と同じであることを立証するものである。そのエンドヌクレアーゼは、様々な組織および細胞に存在すると多くの研究者によって報告された、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼに密接に関連すると推定される(Anzai N. ら (1995) Blood 86, 917-923;Kawabata, H. ら (1993) Biochem. Biophys. Res. Comun. 191, 247-254;Sun X. M. および Cohen G. M. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14857-14860;ならびに Wawabata, H., Anzai, N. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)。しかしながら、これまでに公表されたアポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼについての報告のいずれも、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼが、タンパク質バンドまたは酵素活性バンドとして同定されたことは教示していない。
【0032】
カルシウム依存性、未変性−PAGEでの移動距離および至適pHの側面において、本発明者らによって同定されたエンドヌクレアーゼは、例えば、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling, W. H. ら (1984) J. Biol. Chem. 259, 5893-5898;Pandey S. ら (1997) Biochemistry 36, 711-720;ならびに Ribeiro J. M. および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)、DNアーゼI(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)、DNアーゼII(Torriglia A., ら (1995) J. Biol. Chem. 270, 28579-28585;ならびに Barry M. A., および Eastman A. (1993) Arch. Biochem. Biophys. 300, 440-450)およびNUC−18(Kawabata, H. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)などといった、これまでに報告されたDNAのヌクレオソーム間断片化に関与する酵素と異なっている。本発明のエンドヌクレアーゼは、アポトーシスのプロセス中に細胞核内に観察されるので、そのエンドヌクレアーゼはアポトーシスのプロセスにおいて重要な役割を果たすものと考えられる。
【0033】
2−1 アポトーシスの誘導
ヒトB−リンパ芽球(IM9)細胞を培養し、次いでその細胞を、10 ug/ml CHX(Sigma)で処理し、その後それらを24時間培養することによって、アポトーシスを誘導した(Chow, S. C. ら (1995) Exp. Cell. Res. 216, 149-159)。CHXによって誘導されたアポトーシス細胞の形状の変化は、遠心分離スライド上でライト−ギムザ(Sigma)によって染色することによって同定した。
【0034】
図15Aには、IM9細胞のCHX(10 /ml)での24時間の処理によって、ヌクレオソーム間DNA消化の特徴的な形態としてのDNA断片が提供されることが示されている。24時間後にCHXの効果が呈され、そしてさらに24時間後に大量のDNA断片が形成された。アポトーシスによって起こされる、細胞死の際の細胞形状を観察するべく、細胞をライト−ギムザ染料で染色した。その結果を図15Cに示す。多くのアポトーシス細胞がCHX処理によって産生され、そして歪曲、染色体凝集および核断片化によって特徴付けられる細胞形状が、正常に成長している細胞のものと異なっていた。
【0035】
2−2 CHXで処理されたIM9細胞のエンドヌクレアーゼによるDNA断片化の同定
IM9細胞系は、5 x 105細胞/ml にまで培養し、そして 10 ug/mlのCHX(Sigma)で処理した。24時間培養を行ないながら、定期的な間隔で1 x 106 細胞を集め、その後 Blin および Stafford(Blin, N., および Stafford, D. W. (1976) Nucleic Acid Res. 3, 2303-2308)の変法に従ってDNAを抽出した。1 x 106 細胞をPBSで2回洗浄し、そしてTE緩衝溶液中に再懸濁した。1 mlのDNA抽出緩衝溶液(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、10 mM EDTA、100 mM NaCl、0.2% SDSおよび100 ug/ml プロテイナーゼK)を添加した後、反応混合液を50℃にて8時間反応させ、そしてタンパク質を除去するべくフェノール/クロロホルムで2回処理した。0.3 M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)を添加した後、反応混合液を冷エタノールで沈殿させた。沈殿をTE(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、10 mM EDTA)緩衝溶液に再溶解して、RNアーゼ(リボヌクレアーゼ)Aで処理した。次いで、1.8%アガロースゲルにて電気泳動を行なった。電気泳動ゲルは、0.5 ug/ml エチジウムブロミドを含有する溶液中に 30分間入れ、そしてUV下に撮影した。
【0036】
CHXで処理したIM9細胞を定期的な間隔で集め、そして細胞溶解物および核を調製した。細胞溶解物および核を可溶化した後、DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼ活性のゲルアッセイを実施して、核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を同定した。図16Aには、IM9細胞を24時間培養すると、エンドヌクレアーゼの酵素活性が、その期間中にわたって絶えず細胞溶解物中に検出されたことが示されている。しかしながら、CHXで処理された細胞溶解物中の酵素活性は、6から12時間に減少し(図16B)、一方核内の酵素活性は蓄積された(図16C)。
【0037】
2−3 細胞核の単離および自己溶解
1 x 107 細胞を冷PBSで3回洗浄し、そして 50 ml Tris-HCl、pH 8.0、0.5 mM MgCl2および 0.9 M スクロースを含む 0.5 mlの冷緩衝溶液中に40℃にて20分間可溶化し、細胞の核を単離した。調製された細胞溶解物を、0.5 mlの1.2 M スクロース溶液中に入れ、そして800 gにて 40分間遠心分離した。この結果得られた沈殿を20 mM Tris-HCl、pH 7.0の緩衝溶液中に懸濁して、核を得た。
【0038】
単離された核の自己溶解を、Mg2+およびCa2+の濃度を変化させることによって、37℃にて定期的な間隔で行なった。10 mM Tris−HCl、pH 7.5、100 ml NaCl、1 mM EDTA、1% SDS プロテイナーゼKを含む、0.5 mlのDNA抽出緩衝溶液を添加することによって、反応を停止した。混合液は、50℃にて30分間反応させ、タンパク質を除去するべくフェノール/クロロホルムで2回処理した。0.3 M 酢酸ナトリウム、pH 5.2を添加した後、混合液を冷エタノールで沈殿させた。沈殿をTE緩衝溶液に溶解した後、その溶液をRNアーゼAで処理した。次いで、1.8%アガロースゲルにて電気泳動を行なった。電気泳動ゲルは、0.5 /ml エチジウムブロミドを含有する溶液中に入れ、そしてUV下に撮影した。
【0039】
単離された細胞核の自己溶解法を使用することによって、IM9細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を定量して、DNA断片がMg2+濃度に依存して生産される現象を観察した。しかしながら、同じ実験条件下にMg2+をCa2+に置き換えたところ、このようなDNA断片は観察されなかった。Ca2+およびMg2+の双方の存在下では、Mg2+のみが存在する場合と同じタイプのDNA断片が生産された。その結果から、Mg2+の濃度に依存して、DNAがエンドヌクレアーゼによって消化されることが示唆される。1 mM Zn2+および5 mM EDTAの存在下では、DNA断片は核内に生産されなかった(図14B)。DNA断片化は、Mg2+(10 mM)およびCa2+(10 mM)の一定濃度で、0〜4 時間行なった。その結果、Mg2+のみの存在下で反応が開始された後30分で、DNA断片が生産され、そして60から240分に、DNA断片は蓄積された(図14C)。しかし、Ca2+の存在下では、DNA断片の形成は4時間にわたって観察されることがなかった(図14D)。これらの結果は、IM9細胞の核に活性を有して存在するエンドヌクレアーゼがDNA断片を形成するには、Mg2+が必要とされることを示唆するものである。
【0040】
2−4 細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの部分精製および特徴付け
細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼを、核を可溶化し、そして前記実施例1−4に記載したようにエンドヌクレアーゼ活性を呈するタンパク質バンドを溶出させることによって部分精製した。酵素活性は、基質として高次構造コイルプラスミドDNAを使用することによって測定し、そして二価陽イオン依存性を、前記実施例1−4に従って観察した。また、アポトーシス阻害物質であるZnCl2、およびキレート剤であるEDTAの処理による、酵素活性の変化も観察した。
【0041】
酵素は、DNA−未変性−PAGEによって同定されたIM9細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を特徴付けするべく、未変性−PAGEによって単離および溶出した。観察によって、そのエンドヌクレアーゼがMg2+−依存性であることが明らかになった(図17)。そのエンドヌクレアーゼ活性は、アポトーシス阻害物質であるZn2+、およびキレート剤であるEDTAによって完全に阻害された。その結果は、高次構造コイルプラスミドDNAを直鎖状DNAへと変換するのに、Mg2+が必要とされることを示唆するもので、これは図8に示された結果に一致するものである。
【0042】
実施例3
免疫細胞中の外来DNAに対するエンドヌクレアーゼの作用および反応生成物の特徴付け
細菌のDNAが、哺乳動物のDNA中には存在しない種々の構造を決定する因子を含む外来因子としてこれまでのところ認識されており、そしてこのような因子が免疫細胞の作用に関係することは、公知である(Gilkeson,G.S.ら(1995)J.Glin.Invest.95,1398−1402;Gilkeson,G.S.ら(1991)Clin.Immunol.Immunopathol.59,288−300;Messina,J.P.ら(1993)Cell.Immunol.147,148−157;Kreig,A.M.ら(1995)Nature、374、546−549;およびHalperm,M.D.ら(1996)Cell.Immunol.、167,72−78)。細菌のDNAとの哺乳動物のDNAの差異の1つは、哺乳動物のDNAが、多量のCpG制限を受け、そしてCpGジヌクレオチドのシトシンに対して選択的にメチル化されることである(Bird,A.P.(1995)Trends Genet.11、94−100;Razin,A.,およびFriedman,J.(1981)Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.25,33−52;ならびにHan,J.ら(1994)Antisense Res.Dev.4,53−65)。最近の報告は、細菌のDNA中に存在するCpGモチーフが、IgMの分泌を促進するようにポリクローナルB細胞を活性化することを示し(Kreig,A.M.ら(1995)Nature、374、546−549;Liang,H.ら(1996)J.Clin.Invest.98,1119−1129;およびYi,A.−K.ら(1996)J.Immunol.156、558−564)、そして細胞周期が、抗IgM抗体によって停止させられ、そして細菌性のCpGモチーフがB細胞のc−mycの発現を阻害するが、一方、アポトーシスからの細胞の保護のために、myn、blc、およびbcl−X1 mRNAの発現を増大させることを示唆する(Y.A.K.ら(1996)J.Immunol.157、4918−4925)。Halpenは、CpGモチーフが、IL−6およびIL−12の短期間での分泌を促進するようにB細胞を直接活性化することを報告した(Halpem,M.D.ら(1996)Cell Immunol.167,72−78;Yi.A.−K.ら(1996)J.Immunol.157、5394−5402;およびKlinman,D.M.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93、2879−2883)。Birdは、CpGモチーフが、NK細胞に対してCD4+からIFN−γを誘導するように弱く作用することを示した(Bird,A.P.(1995)Trends Genet,11、94−100;ald Yamamoto,S.ら(1992)Microbiol.Immunol.36、983−997)。従って、CpG DNAによる免疫細胞の活性化は、IL−6による体液性の免疫を増大させ、そしてIFN−γの分泌による細胞性免疫を増大させる。細菌のDNAがマクロファージによって消化され、そして次いでマクロファージがTNF−α、IL−1β、およびプラスミノーゲン活性化因子インヒビター−2 mRNAを産生するように活性化されることが知られている(Stacey,K.J.ら(1996)J.Immunol.157、2116−2122)。
【0043】
3−1 エンドヌクレアーゼによる細菌のDNAのプロセシング
IM9細胞の培養溶液を、エンドヌクレアーゼの酵素活性の特異性、および最終反応生成物の特性を分析するために、酵素供給源として使用した。IM9細胞を、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で、5%のCO2インキュベーター中で37℃にて48時間培養し、そして次いで、培養溶液を、酵素供給源として使用した。36時間のFBSを含有しない培地中で細胞を培養することによって得た培養溶液を、DNaseIを含まないIN9細胞によって分泌されたエンドヌクレアーゼのみを含む酵素供給源として使用した。
【0044】
酵素の基質として使用したプラスミド(pGEM−Tベクター、3.0Kb)を、アルカリ溶解法(Birboim,H.C.,およびDoly,J.(1979)Nucleic Acids Res.7、1513−1523)によってE.coliを破壊させ、続いてフェノール/クロロホルムで2回抽出し、そしてエタノールで沈殿させることによって得た。E.coliのゲノムDNAおよびIM9細胞のDNAを、BlimおよびStaffordの改変された方法によって抽出した。細胞を、PBSで2回洗浄し、そしてTE緩衝溶液に浮かべた。DNA抽出緩衝溶液(10mMのTris−HCl、pH7.6、10mMのEDTA、50mMのNaCl、0.2%のSDS,20μg/mlのRNase A)を添加し、そして溶液を、37℃にて10分間放置した。プロテイナーゼKを100μg/mlまで添加し、そして混合溶液を50℃にて8時間反応させた。反応溶液を、タンパク質を除去するためにフェノール/クロロホルムで3回抽出し、そしてエタノール沈殿反応を、ゲノムDNAに対して行った。サケの精子DNAをもまた抽出し、そして上記のように使用した。DNA中に存在するLPSの量を、Limulus変形細胞溶解物アッセイ(Sullivan,J.D.ら(1976)、Mechanisms in Bacterial Toxicity,A.W.Bernheimer編、Wiley,New York、217頁)によって測定し、そして2.5ng/mlまたはそれ未満であった。
【0045】
10%のFBSを含有する培地上で培養されたIM9細胞中とFBSを含有しない培地上で培養されたIM9細胞中との酵素活性を比較するために、100ngのプラスミドDNAを、20μlの各培養物と混合し、そして37℃にて一定の間隔で反応させた。細胞培養物を使用することによるエンドヌクレアーゼの酵素活性のアッセイにおいては、FBSを含有しない培地上での細胞培養物を、FBS中に存在するDNaseIの影響を排除するために使用した。また、E.coli、IM9細胞、およびサケの精子の、100ngの各ゲノムDNAを、上記のような同じ条件下で反応させ、そして従って、酵素活性を、1%のアガロースゲル電気泳動において決定した。
【0046】
10%のFBSを含有するRPMI 1640培地およびIM9細胞培養物を、インビトロでの細菌のDNAの消化の程度を観察するために、細菌のDNAと直接反応させた。図18Aは、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中のプラスミドDNAの消化の程度を示す。図1Dに示す結果とは異なり、この結果は、DNaseIが培地中に存在するにもかかわらず、弱い酵素活性が検出されることを示した。このことは、培地が、DNaseI活性に対して影響を与え得るイオンまたはインヒビターを含むことを示す。しかし、プラスミドDNAは、FBSを含有しない細胞培養溶液または10%のFBSを含有する細胞培養溶液によって消化された(図18Bおよび18C)。このことは、プラスミドDNAが、IM9細胞株によって分泌されたエンドヌクレアーゼによって消化されたことを示す。図18Bと図18Cとの比較は、10%のFBSを含有する細胞培養溶液中での酵素活性がより高いことを示す。細胞培養が、2×105細胞/mlで開始された場合には、FBSの存在下での細胞の増殖が活性に生じ、そして大量のエンドヌクレアーゼが分泌された。図19は、E.coli、IM9細胞のDNA、およびサケの精子のDNAの全てが、エンドヌクレアーゼによって消化されたことを示す。
【0047】
3.2 細胞中への細菌のDNAの取りこみおよびDNA塩基配列の分析
IM9細胞株を、加熱した10%のFBSを含有するRPMI 1640培地とIM9細胞培養溶液(48時間培養した)との1:1で混合した培地上で培養した。細菌のDNA(25μg/ml)を、培養溶液に添加した。IM9細胞株を1×106細胞/mlの細胞密度で培養しながら、細胞を一定の間隔で回収し、そして細胞中に取りこまれたDNAを抽出するために使用した。
【0048】
IM9細胞株を細菌のDNAで処理した後、細胞を一定の間隔で回収し、そしてPBSで3回洗浄した。細胞を、冷却した溶解緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.5、1mMのEDTA、150mMのNaCl、1mMのPMSF、および0.5%のNP−40)中に再懸濁し、細胞溶解物を、上記の実施例1−2に記載した方法によって得た。同じ容量のDNA抽出緩衝液を細胞溶解物に添加し、そして42℃にて3時間放置し、そして次いで、タンパク質を除去するためにフェノール/クロロホルムで2回処理した。次いで、細胞溶解物中に存在するDNAを、エタノール沈殿によって抽出した。沈殿物を、TE緩衝液中に溶解させ、そしてRNaseAで処理し、そしてサザンブロッティングのサンプルに使用した。
【0049】
細胞溶解物から抽出したDNAを、1.8%のアガロースゲル上での電気移動によって分離し、そしてサザン転移を行った。電気泳動後、アガロースゲルを、およそ200mlのアルカリ溶液(1.5MのNaClおよび0.5MのNaOH)中で20分間振盪させ、滅菌水で洗浄し、そしておよそ200mlの中和溶液(1.5MのNaCl、0.5MのTris−HCl、pH 7.5)中に20分間放置した。続いて、アガロースゲルを、新しい中和溶液中で振盪した。175.3gのNaCl、88.2gのクエン酸ナトリウム溶液、および2mlの0.5MのEDTAを滅菌水に添加して、1lの溶液を作成し、そして得られた溶液を、SSC溶液を得るために121℃でオートクレーブした。容器1の底が容器B中に含まれる容器の表面に配置され得るように、1つの長方形の容器Aを、20×SSCを含有する別の容器B上に逆向きに置いた。20×SSCで飽和させた2mmの幅のWhatman No.3ペーパーを、両方の20×SSCがくっつき得るように、気泡を含まずに容器Aの底に置いた。アガロースゲルをペーパー上に逆向きにお気、そしてHybond+ナイロンメンブレンを、気泡が生じることを防ぐためにアガロースゲル上に置いた。アガロースゲルよりも小さい3枚のWhatman No.3ペーパーを、それぞれを2mmで4面に置き、気泡を含まないようにHybond+ナイロンメンブレン上に置いた。次いで、ペーパータオルを、10から20cmまでの高さになるように、積み上げ、そして約500gの錘を置いた。ゲルの底の周辺は、パラフィルムで囲み、そして毛細管転移を、8時間行った。DNAが載っているメンブレンを、120,000μl/cmのUV照射に2分間曝して、UVによって架橋した。
【0050】
細菌のDNAを、37℃にて30分間、エンドヌクレアーゼと反応させ、そして得られた100から200bpの生成物を、1%のアガロースゲル上で電気泳動した。Gene Clean Kit(Promega Inc.)を使用して、DNAをゲルから回収し、そしてDNAプローブとして使用した。50から100ngのDNAを100℃の水中で3分間加熱し、そしてすぐに氷上で冷却して、DNAフラグメントに分離させ、次いで、32Pで標識した。DNA標識反応を、ランダムプライム法に従って行った。ここでは、10ngのランダムプライマー、4μgの緩衝溶液(50mMのTris−HCl、pH 8.0、5mMのMgCl2、2mMのDTT、0.5mMのHEPES、pH6.6)、25μMのdATP、25μMのdGTP、25μMのdTTP、60μCi[α−32P]dCTP、および5μlのKlenow酵素から構成される20μlの混合物を、37℃にて2時間反応させた。2μlの0.5MのEDTAを反応混合物に添加して反応を停止させ、そして次いで、同じ容量の3Mの酢酸ナトリウム、pH5.2および20μgのサケの精子のDNAを添加した。2倍の容量のエタノールを反応混合物に添加して、所望のDNAを沈殿させた。沈殿物をTE寛容液中に溶解させ、100℃に加熱し、そして氷上で迅速に冷却した。
【0051】
UV架橋したHybond+ナイロンメンブレンを、68℃に予め暖めた予備ハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、5×Denhardt’s溶液、0.05%のピロリン酸ナトリウム、0.5%のSDS、および100μg/mlのサケの精子のDNA)に添加し、そして68℃にて少なくとも1時間振盪した。標識したプローブ(ランダムプライミング法によって調製し、そして氷上で冷却した)を添加して、約12時間ハイブリダイズさせた。フィルターを、洗浄溶液I(2×SSC、0.1%のSDS)に移し、そして約10分間室温で洗浄した。次いで、フィルターを、68℃に予め暖めた洗浄溶液Iに移し、そして約25分間洗浄した。続いて、フィルターを洗浄溶液II(0.2×SSC、0.1%のSDS)に移し、そしてGeigerカウンターによってフィルター上の放射活性を測定しながら洗浄した。フィルターを、増感紙およびX線フィルムを取りつけたカセットに挿入した。−70℃で12から24時間後、フィルターを現像した。
【0052】
細菌のDNAまたはプラスミドDNAを、細胞培養の間に添加し、そして37℃にて1時間インキュベートした。細胞溶解物中に存在するDNAフラグメントを、1.8%のアガロースゲル上で電気泳動した。次いで、サザン転移による50−200bpの部位のゲルを、Gene Clean Kit(Promega Inc.)を使用して回収した。DNAフラグメントを、塩基配列を同定するために、図21に示すようにpGEM−Tベクター(Promega Inc.)中に導入した。得られたベクターを、E.coli中にクローン化し、そしてサンガージデオキシリボヌクレオチド鎖終結方法(Sanger,F.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74、5463−5467)に従って、SEQUENASE(登録商標)バージョン2.0 DNA配列決定キット(USB)によって分析した。以下の表1に記載するMB正方向/逆方向プライマーを、配列決定のためのプライマーとして使用した。クローン化したDNA配列を、BLAST(Basic Local Alinment Search Tools)プログラムによって、細菌のDNAフラグメントまたはプラスミドDNAフラグメントとして確認した。
【0053】
【表1】
【0054】
試験結果は、25μg/mlの細菌のDNAをIM9細胞とともにインキュベートした場合に、DNAは細胞培養物中で適切にプロセシングされ、そして細胞中に取りこまれることを示す。このことを、サザンハイブリダイゼーションによって確認した(図20)。100−200bpのDNAの存在が、細胞培養の30分後に見出された。細胞中の100−200bpのDNAの量は、培養時間の経過に伴って減少した。これらの結果は、適切にプロセシングされたDNAがIM9細胞株中に取りこまれ、そしてプロセシングが細胞中で継続されることを示唆する。
【0055】
エンドヌクレアーゼの酵素活性によって得られた生成物の特性を同定するために、細胞中に取りこまれた細菌のDNAを単離し、そしてそのDNA配列を、図21に示すように分析した。表2に示すように、エンドヌクレアーゼの反応生成物は、特徴的な塩基配列(すなわち、5’末端に2つのプリン塩基を有し、そして3’末端に2つのピリミジン塩基を有するCpGモチーフ)を有した。CpGモチーフが免疫システムにおいてB細胞またはマクロファージを活性化し、そしてシトシンおよびIgMの分泌を促進し、そして高い頻度で細菌のDNA中に存在することは、公知である。従って、エンドヌクレアーゼがIM9細胞培養溶液中に存在し、そして細胞中の酵素活性によるDNAのプロセシングがCpGモチーフ(これは、免疫細胞を活性化するように機能する)を生成することが、ここで見出された。
【0056】
【表2】
【0057】
3.3 細胞中に取りこまれたDNAのプロセシングの確認
どのようにして細胞中に取りこまれた50−200bpのクローン化されたDNAフラグメントが細胞内でさらにプロセシングされるか、およびDNAフラグメントの塩基配列が細胞に対してどのような影響を与えるか確認するために、PCR増幅を行った。PCR反応溶液は、0.2mMのdNTP、10pmolのプライマー、10mMのTris−HCl、pH8.3、50mMのKCl、1.5mMのMgCl2、および2.5ユニットのTaqポリメラーゼを含んだ。5’−CTCCCGGCCGCCATG−3’および5’−TTGGGAGCTCTCC−3’(表I)を合成し、そしてPCRプライマーとして使用した。PCR反応を、以下の条件下で35回繰り返した:変性(94℃で30秒間);プライマーのアニーリング(42℃で30秒間);プライマーの伸張(72℃で50秒間)。PCR生成物を、8%の未変性のPAGE上でTBE緩衝溶液中で泳動し、そしてエチジウムブロマイドで染色した。続いて、DNAを、PCR反応生成物のゲルから分離した。分離したDNAをエタノールで沈殿させ、そして細胞培養物についてはPBS中に溶解させるか、またはエンドヌクレアーゼの活性の検出のためにはTE緩衝液中に溶解させた。
【0058】
最終生成物の形態が、100−200bpの細菌のDNAをクローニングしているベクター(これは、エンドヌクレアーゼの活性によって切断された)中のPCR増幅によって得られた生成物が細胞に導入された後に存在することを確認するために、EC1、EC2、およびHC1のDNAフラグメントを、ランダムプライマーおよびKlenow酵素を使用するランダムプライミング方法によって32Pで標識した。32Pで標識した100ng/mlのDNAフラグメントが、IG9細胞株、U937細胞株、およびTPAで処理したU937細胞株中に取りこまれた。DNAが細胞に取りこまれたかどうかを、一定の間隔で確認した。エンドヌクレアーゼを、0.2mMのZnSO4(Sigma)で処理して、その酵素活性を停止させた。細胞中に取りこまれたDNAを細胞溶解物中で回収し、そしてTBE緩衝溶液中で20%の未変性のPAGE上で泳動させた。ゲルを乾燥させ、そして細胞内およびエンドヌクレアーゼ反応によって得られた最終生成物中のDNAのプロセシングを確認するためにオートラジオグラフした。
【0059】
32Pで標識したEC1のDNAフラグメントは、IM9細胞株中に取りこまれた。細胞中に取りこまれたDNAを細胞溶解物から抽出し、そして20%の未変性のPAGEを行った。32Pで標識されたプロセシングされたDNAをゲルから抽出し、そしてそれらの互いの塩基配列を比較するために、種々の合成したオリゴヌクレオチドとアニーリングさせた。予め決定した量の、32Pで標識した抽出したDNAおよび10ngの各オリゴヌクレオチドを、6×SSCと混合した。混合物を、100℃の温度で5分間沸騰させ、そして30秒間で1℃で温度を下げてアニーリングさせた。アニーリングさせた反応物を、20%の未変性のPAGE上で4℃にて泳動し、そして反応物についてのオートラジオグラフィーを行った。このようにして、細胞中に取りこまれたDNAに相補的に結合したオリゴヌクレオチドを確認した。標準として、アニーリングしていないDNAおよびオリゴヌクレオチドとの混合物、および変性させそして細胞中に取りこまれたDNAのみとアニーリングさせたDNAを使用した。合成したオリゴヌクレオチドの塩基配列は、オリゴAおよびB(これらは、EC1のDNAフラグメント中に存在する)、ならびにオリゴC、D、およびE(これらは、EC1のDNA中には存在しない)を使用した。
【0060】
外部のDNAがヒトのB−リンパ芽球IM9細胞株、U937細胞株、およびTPAでの処理によって分化させられたU937細胞株中に取りこまれること、ならびに細胞中でプロセシングされることが確認された。試験の結果として、プロセシングされた生成物を、PCR増幅した32Pで標識した細菌のDNAフラグメントとして同定した。IM9細胞株中での外部のDNAの取りこみおよびプロセシングを、図22に示すように確認した。157bp(EC1)のDNAフラグメントは、4℃では細胞中には取り込まれなかったが、細胞膜に結合した。37℃の温度では、DNAフラグメントは、培養時間の経過に伴って細胞中でプロセシングされた。24時間以内に、約10bpのDNAフラグメントが、20%の未変性のPAGEにおいて最終産物として生じた。続く試験においては、10bpのDNAフラグメントを、一本鎖のDNA構造として同定した。DNAフラグメントをまた、20%の未変性のPAGE(8.3Mの尿素)上で一本鎖のDNA構造として同定した。図23は、U937細胞株、およびTPAでの処理によって分化させられたU937細胞株中で観察された外部のDNAの取りこみ、ならびに細胞中でのプロセシングを示す。しかし、図23Bは、TPAでの処理によって分化させられたU937細胞株によるDNAの取りこみおよび細胞中でのプロセシングを示す。図23Bに示すように、細胞中でのDNAのプロセシングは、0.2mMのZn2+によって阻害された。
【0061】
試験結果は、免疫細胞が外部のDNAをプロセシングすることによって、10塩基の最終生成物を生じることを実証する。DNAフラグメントの塩基配列の特性をもまた確認した。PCRによって増幅したEC1のDNA産物を32Pで標識し、そして細胞中に取りこませた後、細胞性のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされた10塩基のDNAフラグメントを、オリゴヌクレオチドと相補的に結合した塩基配列を同定するために、EC1の部分的な配列と一致するいくつかのタイプの合資のオリゴヌクレオチドとアニーリングさせた(図24)。アニーリングの結果として、オリゴヌクレオチド(そのほとんどが、塩基配列と相補的に結合した)は、表1のオリゴAの配列(すなわち、AACGTTモチーフを有し、そしてEC1のDNA中に存在する塩基配列)であった。上記の結果から、細胞中のエンドヌクレアーゼの酵素的活性によって免疫細胞を活性化する細菌のDNAの塩基配列として公知のCpGモチーフが産生されたことを、明らかに確認した。
【0062】
3−4 細菌のDNAによるIM9細胞株のIgM分泌の確認
B細胞を活性化することによって、サイトカインおよびIgMを分泌することが公知のCpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドを合成した。エンドヌクレアーゼの作用によって産生されたDNAフラグメントの中でも、EC1中に存在するオリゴA、およびEC2に存在するオリゴB、およびCpGモチーフを有さないオリゴEを合成した(表1)。いくつかのCpGモチーフを含有するEC1またはEC2のPCR生成物、およびいくつかのタイプのDNAをもまた、この実験において使用した。CpGモチーフをメチル化するために、細菌のDNAをエンドヌクレアーゼによって消化し、それによって100−200bpを有するフラグメントを得た。メチル化を、30μgのDNAを、CpGメチラーゼおよび160μMのS−アデノシルメチオニンを含有する緩衝溶液(10mMのTris−HCl、pH7.9、10mMのMgCl2、50mMのNaCl、および1mMのDTT)と混合し、そして37℃にて3時間反応させることによって行った。CpGメチル化を、HpaIIで消化することによって確認した。
【0063】
IM9細胞株、ヒトBリンパ芽球細胞株を、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で、培養の開始時点で2×105の細胞数で培養した。培養物をいくつかのタイプの予め調製した25μg/mlのオリゴヌクレオチドおよびDNAで処理し、そして24時間培養した後、細胞培養物を得た。
【0064】
0.1Mの炭水化物緩衝溶液(pH9.6)中の抗−ヒト−μ−鎖特異的IgM(5μg/ml、Sigma)を、100μl/ウェルで平底プレート中に取りこみ、そして次いで、プレートを4℃にて16時間放置した。プレートをPBSで3回洗浄し、そして室温で2時間放置した。続いて、プレートを、TPBS(PBS中の0.05%のTween−20)で3回洗浄した。100μg/ウェルで、ざっと希釈した細胞培養物または精製したヒトIgM(Sigma)を導入した。室温で2時間放置した後、これをTPBSで3回洗浄した。1%のBSAを含有するPBS中で1/40,000中に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させ抗ヒトIgを導入し、そして室温にて1時間放置し、そして次いで、TPBSで3回洗浄した。続いてプレートを、0.05Mのリン酸緩衝溶液(pH5.0)中で30分間、O−フェニレンジアミンジヒドロクロライドで処理した。プレートを、0.67NのH2SO4で処理して反応を停止させ、そしてIgMをマイクロリーダーを使用して定量した。
【0065】
IM9細胞株を合成のオリゴヌクレオチドと反応させた後の48時間に分泌されたIgMの量を測定しながら、CpGモチーフを有するオリゴAおよびオリゴにおいては、IgMの2−3ng/mlが分泌されたが、CpGモチーフを有さないオリゴEにおいては、0.5ng/mlのIgMが合成されたことを確認した(図25)。さらに、2−3ng/mlのIgMがまた、細菌のDNAおよびいくつかのCpGモチーフを有する細菌のDNAのPCR生成物(表1、EC1、EC2のDNA)中で分泌されたことを観察した。しかし、細菌のDNAのIgMのCpGモチーフがメチル化されそして細胞株の培養物中で処理される場合は、これは分泌されなかった(図25)。細菌のDNAと比較して、IgMの分泌は、サケの精子のDNAによっては増大させられなかった。上記の結果から、細菌のDNAのCpGモチーフは、IM9細胞株を活性化することによってIgMの分泌を増大させることを確認した。そしてこのことは、上記のいく人かの研究者らによって合成されたCpGモチーフを使用することによって証明された研究の結果と一致した。
【0066】
3−5 外来DNAのプロセシングに関与するエンドヌクレアーゼの酵素活性の特性
PCRによって増幅したEC1、EC2、およびHC1のDNAを、ランダムプライマーおよびKlenow酵素を使用する32Pランダムプライミング方法で標識した。より短いDNAを得るために、EC2のDNAをAlu 1(Promega Inc.)で消化し、そしてその5’末端が32Pで標識されたフラグメントを、基質として使用した。エンドヌクレアーゼの酵素活性の特性を同定するために、EC1のDNAを5’−末端または3’−末端標識し、そして利用した。5’−末端標識を、10ngのEC1のDNA、[γ−32P]ATP 50μCi、キナーゼ緩衝溶液、および5ユニットのポリヌクレオチドキナーゼ(Promega Inc.)を混合し、そして37℃にて1時間反応させることによって行った。3’−末端標識を、10ngのEC1のDNA、[α−32P]CTP 50μCi、TdT緩衝溶液、および5ユニットの末端デオキシトランスフェラーゼ(Boehringer Mannheim)を混合すること、および37℃にて1時間反応させることによって行い、そして利用した。
【0067】
上記のように調製した5ngのEC1、EC2、およびHC1のDNAを、ランダムプライミング方法によって標識し、Alu Iで消化し、そして5’−標識したそしてEC2のDNAを、IM9細胞培養物(これは、FBSを含まず、そして一定の時間の間隔で反応させた)と混合した。酵素活性をまた、細胞培養物の量を増大させることによって測定した。反応混合物を、フェノール/クロロホルムで処理してタンパク質を除去し、冷却したエタノールで沈殿させ、そして20%の未変性のPAGEおよび20%の変性させたPAGE(8.3Mの尿素)を用いてTBE緩衝溶液中で電気泳動した。ゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフした。反応生成物を酵素活性について分析した。FBS中のDNaseIの酵素活性を比較するために、10%のFBSを含有する10mlのRPMI 1640培地をもまた、いくつかの基質と反応させた。さらに、エンドヌクレアーゼのインヒビターであるZn2+(1mM)およびキレート剤であるEDTA(10Mm)が与える影響が、酵素活性を有することを確認した。この時に、ブロモフェノールブルー(BPB)およびキシレンシアノ−ル(XC)を、分子量の標準として使用した。変性させたPAGEにおいては、BPBは、8塩基で配置され、そしてXCは28塩基であった。未変性のPAGEにおいては、BPBおよびXCは、それぞれ、12bpおよび45bpであった。
【0068】
エンドヌクレアーゼの酵素活性の特性、およびに得られる生成物の特性を同定するために、表2に列挙したEC1、EC2、およびHC1のDNAをランダムプライミング方法によって32Pで標識し、そして基質として利用した。FBSを含有しない培地中で培養したIM9細胞株とのこれらの基質の反応が、図26、27、および28に示すような、およそ10塩基を有するDNA反応生成物を生じることを、確認した。この結果は、エンドヌクレアーゼがDNAの塩基配列を特異的に認識するのではないことを示す。塩基の配列にはかかわらず、エンドヌクレアーゼは外来のDNAに対して作用し、それによっておよそ10塩基を有するDNAフラグメントを生じる。酵素活性が、エンドヌクレアーゼのインヒビターであるZn2+およびキレート剤であるEDTAによって阻害されることもまた、確認した(図26、27、28、および29)。インビトロでの実験によって、得られる生成物が、エンドヌクレアーゼの作用によって細胞中に取りこまれたDNAをプロセシングすることによって産生される反応産物と一致することを確認した。エンドヌクレアーゼの酵素活性の反応によって得られる生成物が、およそ10塩基を有するDNAフラグメントからなることを確認した。エンドヌクレアーゼの量を増大させ(図30)、そして反応時間を24時間まで維持した場合でもなお、およそ10塩基を有するDNAフラグメント(すなわち、酵素反応によって形成される反応によって得られる生成物)はさらには消化されなかった。言い換えれば、本発明によって証明されたエンドヌクレアーゼは、およそ10より短い塩基を有するDNAフラグメントに対しては活性を全く発揮しない。
【0069】
図32は、いくつかのDNAフラグメントを示す。すなわち、PCRによって増幅されたEC2のDNA生成物がAluIで消化されそしてDNAフラグメントが生じる前に形成されたエンドヌクレアーゼ反応生成物を、最終生成物を生じるようにエンドヌクレアーゼと反応させた。この実験において使用した基質を、AluIと反応させたDNAの5’−末端中で32Pで標識した。標識した酵素の反応によって得られた生成物は、およそ10塩基を有するDNAフラグメントであった。この事実から、一本鎖のDNAを産生する5’−エンドヌクレアーゼの酵素活性は存在しないことを確認した。
【0070】
IM9細胞株のエンドヌクレアーゼが、3’−エキソヌクレアーゼまたは5’−エキソヌクレアーゼ活性を有するかどうかを確認するために、5’−末端または3’−末端で32Pで標識したEC2のDNAを基質として使用し、そして37℃にて1時間、エンドヌクレアーゼと反応させた。反応によって得られる生成物を、上記に記載したものと同じ方法によってオートラジオグラフによって比較した。エンドヌクレアーゼの酵素活性が一本鎖のDNA中に出現するかどうかを確認するために、標識したDNAを100℃にて5分間沸騰させ、氷上で冷却し、そして上記のようにエンドヌクレアーゼと反応させた。
【0071】
図33は、およそ10塩基を有するDNAフラグメントが、5’−末端(5’−末端標識、レーン2)中で標識した基質に対するエンドヌクレアーゼの作用によって形成されることを示す。結果は、図32に示すものと同じである。すなわち、5’−エキソヌクレアーゼ活性はエンドヌクレアーゼ中には存在しなかった。しかし、およし10塩基を有するDNAフラグメント(すなわち、酵素反応によって得られた生成物)は、3’−末端中で32Pで標識した基質においては形成されなかった。32Pで標識した基質を100℃で10分間沸騰させ、氷上で冷却させて一本鎖のDNAに転換させ、そして次いでエンドヌクレアーゼと反応させた後、およそ10塩基を有する標識されたDNAフラグメントが、5’−末端および3’−末端の両方において標識されたDNA基質において酵素反応生成物として形成された。試験結果に基づくと、3’−エキソヌクレアーゼ活性は、一本鎖に対しては作用しない。
【0072】
細胞培養物中に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性によって産生される反応によって得られる生成物を、細胞中でのプロセシングによって産生される生成物およびDNaseIの作用によって産生される反応の最終生成物と比較するために、5ユニットのウシすい臓のDNaseI(Boehringer Mannheim)およびランダムプライミング方法によって32Pで標識したEC1のDNAを、10mMのTris−HCl、pH7.6、10mMのMgCl2緩衝得溶液中で、37℃にて1時間反応させた。反応物を、20%の未変性のPAGEおよび20%の変性させたPAGE(8.3Mの尿素)上で泳動し、オートラジオグラフし、そしてエンドヌクレアーゼの酵素反応によって得られた生成物と比較した。また、エンドヌクレアーゼ活性の得られる生成物が一本鎖で存在することを確認するために、これをS1ヌクレアーゼで処理した。S1ヌクレアーゼの酵素活性を、S1ヌクレアーゼ反応緩衝溶液(7×緩衝溶液、0.3Mの酢酸カリウム、pH4.6、2.5MのNaCl、10mMのZnSO4、50%のグリセロール)中に含まれる3ユニットのS1ヌクレアーゼと、ランダムプライミング方法によって32Pで標識した基質に対する作用によるエンドヌクレアーゼの反応によって得られる生成物とを混合すること、そして37℃にて1時間、混合物を反応させることによってによって確認した。反応物を、上記と同じ方法によってオートラジオグラフによって確認した。
【0073】
エンドヌクレアーゼの酵素活性によって生じる得られる生成物と、DNaseIの作用によって生じる反応生成物との比較によって、図34に示すように、細胞培養物のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされたDNA反応生成物(レーン2)および細胞性のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされたDNA反応生成物(レーン3)は全て、およそ10塩基を有するDNAフラグメントである。しかし、DNaseIの作用によると(レーン4)、DNAフラグメントは、10塩基未満にまで分解された。フラグメントは、続いて、モノヌクレオチドにまで分解された。エンドヌクレアーゼ反応によって得られる生成物が一本鎖の形態で存在するかどうかを確認するために、生成物をS1ヌクレアーゼで処理し、そして酵素反応生成物を観察した。およそ10塩基を有する反応生成物(すなわち、エンドヌクレアーゼの生成物)をS1ヌクレアーゼと再び反応させた場合は、図35に示すように、完全にモノヌクレオチドにまで分解された。このことは、エンドヌクレアーゼの酵素活性によって産生されたおよそ10塩基を有するDNAフラグメントが、一本鎖の形態で存在することを提供する明らかな証拠である。
【0074】
実施例4
IM9細胞株から分泌されたエンドヌクレアーゼの精製および同定
IM9細胞株が合成され、そしてMg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(これは、これまでに既知であるヌクレアーゼとは異なる)を分泌することが、ここで見出された。エンドヌクレアーゼがIM9細胞株の核内に存在し、そしてアポトーシスのプロセスに関与することもまた、見出された。アポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼとして、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Anzai N.ら(1995)Blood 86、917−923;Kawabata H.ら(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.191,257−254;Sun X.M.,およびCohen G.M.(1994)J.Biol.Chem.269,14857−14860;ならびにKawabata,H.ら(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.233,133−138)、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling W.H.ら(1984)J.Biol.Chem.259,5893−5898;Pandey S.ら(1993)Biochemistry 32、9129−9136)、DNaseI(Peitech M.C.ら(1993)EMBO J.12,371−377)、NUC18(Kawabata,H.ら(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.233,133−138)などが挙げられる。しかし、上記の既知のエンドヌクレアーゼの精製、生化学的特徴、および生理学的な機能は、明らかには同定されていない。さらに、細菌のDNAを外来因子として認識し得、そしてそれらをプロセシングし得るエンドヌクレアーゼについての報告は全く存在しない。本発明によって、IG9細胞株によって合成されそして分泌されるエンドヌクレアーゼが精製され、そしてその特性が本明細書中で同定された。
【0075】
4−1 タンパク質の供給源およびエンドヌクレアーゼの酵素活性についてのアッセイ
エンドヌクレアーゼを分泌するIM9細胞株を、加熱した10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で大規模に培養し、そして得られた細胞培養物を、酵素の供給源として使用した。細胞培養物を1,500×gで5分間遠心分離した後、IM9細胞株を廃棄し、そして細胞培養溶液を回収した。10lの細胞培養溶液を、14,000×gで30分間、4℃にて遠心分離し,そして得られた上清を酵素の供給源として使用した。
【0076】
エンドヌクレアーゼの精製の間に、酵素活性を、基質として使用したスーパーコイルプラスミドDNAからの直鎖上のDNAの形成および消化の程度として測定した。100ngのプラスミドDNAを、10mMのMgCl2を含有する20mMのTris−HCl、pH7.0緩衝溶液に添加し、そして混合物を、37℃にて10分間のタンパク質の精製の間に得られた20μlのサンプルと反応させた。酵素反応を、DNAサンプル緩衝液を用いて停止させ、そして酵素活性を、1%のアガロースゲル上での電気泳動によってアッセイした。
【0077】
4.2 エンドヌクレアーゼの精製
細胞培養溶液を、NH4SO4をゆっくりと添加することによって80%の濃度まで飽和させ、そして次いで14,000×gで遠心分離した。得られる沈殿物を、20mMの酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH5.2)中で一晩透析した。酵素溶液の5mlのアリコートを、5mlの同じ緩衝溶液で予め平衡化したMono−Sカラム(0,5×5.0cm、Pharmacia LKB)上にロードした。タンパク質を、同じ緩衝溶液中の0−0.08MのNaCl(15ml)の直線状の濃度勾配によって最初に溶出し、そして次いで、0.08MのNaClを含有する15mlの同じ緩衝溶液を通過させた。続いて、タンパク質を、0.08−0.2MのNaCl(20ml)の直線状の濃度勾配を用いて再度溶出した。各画分の容量は1mlであり、そして流速は0.5ml/分であった。上記の手順を繰り返し、そしてエンドヌクレアーゼを含有する画分をプールし、そしてCentriconを使用して濃縮し、そして次いで、1.5Mの(NH4)2SO4を含有する50mMのリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.0)で平衡化した。この酵素供給源を、RESOURCE PHEカラム(0.64×30mm、1ml、Pharmacia LKB)上にロードし、そして疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。カラムを15μlの同じ緩衝溶液で洗浄し、そしてタンパク質を、1.5−0Mの(NH4)2SO4(25ml)の直線状の勾配を用いて溶出した。酵素活性を有する画分をCentricon中で濃縮し、そして20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)を用いて平衡化した。
【0078】
IM9細胞培養溶液を硫酸アンモニウム上で濃縮し、そして精製のために使用した。硫酸アンモニウム上でのディファレンシャルな沈殿を、濃度の差異に依存して行ったが、酵素の単離に対する有意な影響はなかった。従って、培養溶液を80%まで濃縮し、そしてタンパク質を精製のために沈殿させた。Mono Sカラム上を通過させたサンプル中の酵素活性を、0.08−0.2MのNaClの直線状の濃度勾配によって回収した(図36)。陽イオン交換樹脂上で活性を示す画分をプールし、そして疎水性相互作用クロマトグラフィー中においてRESOURCE PHEカラム上を通過させた。タンパク質を、1.5−0Mの(NH4)2SO4の直線状の濃度勾配を用いて溶出した場合は、エンドヌクレアーゼの活性は、上記の勾配の中で、0.7Mの(NH4)2SO4勾配から得られたタンパク質画分中で検出された(図37)。10μgのエンドヌクレアーゼを、およそ10gのタンパク質を含有する10lのIM9細胞培養溶液から精製した。
【0079】
4−3 未変性の有孔性の勾配PAGEおよびSDS−PAGEによる分子量の決定
陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー上で酵素活性を示す画分をプールし、そしてCentricon中で濃縮した。濃縮した溶液を、アクリルアミド勾配ゲルの4−15%の直線状の勾配上にロードし、そして電気泳動を、4℃にて18時間、4−5mAで行った。次いで、ゲルを、タンパク質バンドを検出するためにクマシーブリリアントブルーR−250で染色した。タンパク質バンドのゲルの部分を切り出して、染色の前に小さい断片を作成し、そして20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)を用いて4℃にて8時間溶出した。溶出したタンパク質画分の中の酵素活性を、スーパーコイルプラスミドDNAを基質として使用して検出した。酵素活性画分を濃縮し、そしてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。スタッキングゲルおよび泳動ゲルの濃度は、それぞれ、4%および7%であった。未変性の有孔性の勾配PAGE中の標準タンパク質は、フェリチン(440kD)、カタラーゼ(232kD)、ラクテートデヒドロゲナーゼ(140kD)、およびウシ血清アルブミン(87kD)の混合物であった。SDS−PAGEにおける標準タンパク質は、ミオシン(200kD)、β−ガラクトシダーゼ(116.3kD)、ホスホリラーゼB(97.4kD)、ウシ血清アルブミン(66.2kD)、およびオボアルブミン(45kD)の混合物であった。
【0080】
MonoSカラム上で溶出した酵素活性画分を濃縮し、そして4−15%の未変性の有孔性の勾配ゲル電気泳動を、酵素活性を示すタンパク質バンドを検出するために行った(図40)。酵素活性を示すタンパク質バンドは、明確な単一のバンドは示さず、そして標準タンパク質と比較して140kDの周辺に広がった。酵素活性を示すタンパク質バンドを溶出した。濃縮後、電気泳動を、SDS−PAG上で行った(図41)。精製したタンパク質バンドは、クロマトグラフィーによって精製したエンドヌクレアーゼト同じ部位で示され、そしてタンパク質の分子量を、およそ72.4kDと決定した(図39)。未変性の有孔性の勾配ゲル電気泳動とSDS−PAGEとの結果の比較は、エンドヌクレアーゼがホモダイマーの形態で酵素活性を示すことを明らかにした。
【0081】
4−4 精製した酵素の特徴付け
4時間の間全くエンドヌクレアーゼ酵素活性が検出されなかったU937細胞から核を単離し、基質として使用した。酵素活性の特異性を、1mMのCa2+、1mMのMg2+、およびEDTAを、単離した核を含有する20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)に添加すること、そして37℃で10分間反応させることによって確認した。
【0082】
U937細胞株から単離した核を基質として使用した場合には、精製した酵素の活性は、Mg2+の存在下で示され、そしてアポトーシスのインヒビターであるZn2+およびキレート剤であるEDTAによって完全に阻害された(図42)。特徴的な酵素活性は、上記の酵素活性のものと一致した。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のエンドヌクレアーゼは、外来の細菌のDNAを分解し、そして細胞中にDNAフラグメントを取りこむことが可能である。細胞中に取りこまれたDNAは、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを生成するように、細胞内のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされ、そして次いで免疫細胞が、抗体の分泌を促進するようにCpGモチーフによって活性化される。従って、本発明のエンドヌクレアーゼは、薬学的な免疫アジュバントとして産業的に価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1には、DNA−未変性−PAGEによって分析された、本発明のIM9細胞のエンドヌクレアーゼ活性を示す。IM9細胞溶解物(A)、培地(B)および無血清にて培養された培地(C)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、ゲル内システムで検出した。ウシDNアーゼI(レーン)および培養培地エンドヌクレアーゼ活性(レーン2)を比較した(D)。
【図2】図2には、DNA−未変性−PAGEによって分析された、DNアーゼI(A)およびIM9培養培地(B)のエンドヌクレアーゼ活性を示す。
【図3】図3には、抗−ウシDNアーゼI抗体による、エンドヌクレアーゼ活性の免疫沈降を示す。免疫沈降(IP)後の上清におけるエンドヌクレアーゼ活性を、「材料および方法」に記載したとおりDNA−未変性−PAGEによって、示した抗血清処理について評価した。A,10%FBS培地およびヒト血清;B,IM9細胞培養培地。
【図4】図4には、アクチノマイシンDでのIM9細胞の前処理と、エンドヌクレアーゼの分泌を示す。本発明の細胞溶解物(A)および培養培地(B)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、前処理後に、示した培養期間分析した。
【図5】図5には、本発明の免疫細胞系におけるエンドヌクレアーゼ活性の比較分析を示す。各細胞系の溶解物(A)および培養培地(B)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、DNA−未変性−PAGEによって分析した。レーン1,10% FBS含有培地;レーン2,IM9;レーン3,RPMI1788;レーン4,Molt-4;レーン5,Jurkat;レーン6,U937。
【図6】図6には、IFN−γまたはIFN−1βで処理された、本発明のIM9細胞培養培地および細胞溶解物の、DNA−未変性−PAGEによって分析されたエンドヌクレアーゼ活性を示す。IM9細胞は、10 単位/mlのIFN−γまたはIFN−1βで、示した培養時間処理された。対照,10% FBSを含有するRPM 16-40培地で12時間の、IM9培養培地。
【図7】図7には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する至適pHを示す。
【図8】図8には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する二価陽イオン要求性を示す。A,酵素は、20 mM Tris-HCl,pH 7.0 中、示した濃度のCa2+および/またはMg2+の存在下または非存在下に10分間、37にて、100 ngのプラスミドDNAと反応させられた、B,酵素活性は、10 mMのMg2+の存在下に180分間、許容した。
【図9】図9には、TPA、LPS、およびCHXで処理されたU937細胞の成長曲線を示す。U937細胞は、TPA(10 ng/ml)、LPS(1 ng/ml)、およびCHX(10 /ml)で、示した時間処理した。細胞数および生存度は、培養時間中に血球計数器で、トリパンブルー除去によって評価した。
【図10】図10には、U937細胞におけるエンドヌクレアーゼの、DNA−未変性−PAGEによって分析されたTPA濃度依存性の合成および分泌を示す。細胞溶解物(A)および培養培地(B)は、示したTPA濃度にて24時間インキュベートすることにより調製した。
【図11】図11には、TPAで処理されたU937細胞溶解物および培養培地の、ゲル内システムによって分析されたエンドヌクレアーゼ活性を示す。U937細胞は、示した培養時間、10 ng/ml TPAで処理した。
【図12】図12には、LPSで処理されたU937細胞溶解物および培養培地のエンドヌクレアーゼ活性を示す。細胞溶解物(A)および培地(B)におけるエンドヌクレアーゼは、DNA−未変性−PAGEにより、1 ng/mlのLPS処理後、示した培養時間に分析した。
【図13】図13には、刺激因子で処理されたU937細胞のエンドヌクレアーゼ活性を示す(レーン1,10% FBSを含有するRPMI1640 培地にて48時間のU937細胞培養物;レーン2,48時間TPA(10 ng/ml)処理;レーン3,24時間LPS(1 ng/ml)処理;およびレーン4,12時間CHX(10 /ml)処理)。
【図14】図14には、自己消化法による、IM9細胞から単離された核におけるエンドヌクレアーゼ活性を示す(A,示した濃度のCa2+および/またはMg2+の存在下または単独で37℃にて2時間、核をインキュベートした;B,ヌクレオソーム間DNA断片化の阻害;CおよびD,10 mM Mg2+(C)または10 mM Ca2+(D)の存在下に37℃にて示したとおり0〜240分間、核をインキュベートした;ならびにマーカー、1 kb ラダー)。
【図15】図15には、CHX処理によるIM9細胞のアポトーシス細胞死を示す(A,CHX(10 /ml)で処理されたIM9細胞からのDNAの1.8%アガロースゲル電気泳動;未処理(B)およびCHXで処理された(C)IM9細胞を24時間培養して遠心分離調製物をライト−ギムザで染色した)。
【図16】図16には、本発明の、DNA−未変性−PAGEによって分析されたIM9細胞溶解物および核のエンドヌクレアーゼ活性を示す。エンドヌクレアーゼ活性は、示した時間、10 ug/ml CHXで処理されたIM9細胞溶解物にて培養時間中(A)、細胞溶解物(B)および核(C)で検出した。
【図17】図17には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する二価陽イオンの要求性を示す。エンドヌクレアーゼは核から単離し、そして酵素活性は、反応産物を1%アガロースゲルで解析することにより定量した。
【図18】図18には、本発明のエンドヌクレアーゼによる、プラスミドDNAの分解の時間経過を示す。10% FBSを含有するRPMI培地(A)、無血清のIM9細胞培養培地(B)および10% FBSを含有するIM9細胞培養物(C)のエンドヌクレアーゼ活性は、反応産物を1%アガロースゲルで解析することにより評価した。
【図19】図19には、E. coli DNA、IM9細胞DNA、およびサケ精子DNAでの、本発明のエンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図20】図20には、IM9細胞内に取り込まれた外来性DNAのサザンブロット分析を示す。エンドヌクレアーゼ反応産物の100〜200塩基対の断片を、プローブとして使用した。ブロットは、ランダム−プライミング法によって調製されたプローブで、55℃にて6時間ハイブリダイズさせた。
【図21】図21には、本発明のエンドヌクレアーゼ反応によって得られるDNA断片のクローニングおよび配列決定のための構築スキームを示す。
【図22】図22には、本発明のIM9細胞における細菌DNAのプロセシングによって生産されたDNA断片を示す。
【図23】図23には、本発明のU937細胞における細菌DNAのプロセシングによって生産されたDNA断片を示す(A,10% FBSを含有するRPMI1640 培地にて48時間のU937細胞培養後のラベルされたDNAの取り込み;およびB,TPA(10 ng/ml)12時間処理後のラベルされたDNAの取り込み)。
【図24】図24には、本発明のエンドヌクレアーゼ反応産物配列の検出を示す。エンドヌクレアーゼ反応産物は、「材料および方法」に記載のとおり合成オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。
【図25】図25には、細菌DNAまたはオリゴヌクレオチドにおけるCpGモチーフによるIgM分泌の誘導を示す。IM9細胞は、オリゴヌクレオチド(25 /ml)または E. coli DNA(25 /ml)で、24時間刺激した。
【図26】図26には、本発明の基質としてEC1 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図27】図27には、本発明の基質としてEC2 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図28】図28には、本発明の基質としてHC1 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図29】図29には、Zn2+およびEDTAによるエンドヌクレアーゼ活性の阻害を示す。
【図30】図30には、本発明に従い、示されたIM9細胞培養培地量を用いて反応させた、EC1 PCR産物からのエンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図31】図31には、本発明に従い、示された時間、EC1 PCR産物と反応させた、エンドヌクレアーゼからの産物を示す。
【図32】図32には、EC2 PCR産物(157 bp)を、AluIによって切断された短いDNA断片と比較する、エンドヌクレアーゼ活性を示す(レーン1,32PでラベルされたPCR産物;レーン2,レーン1のエンドヌクレアーゼ消化産物;レーン3,32Pでラベルされた、AluIで切断された短いDNA断片;レーン4,レーン3の30分反応物;レーン5,レーン3の1時間反応物;レーン6,レーン3の2時間反応物)。
【図33】図33には、エンドヌクレアーゼが分泌されたIM9細胞における3'-エキソヌクレアーゼ活性の同定を示す(レーン1,ラベルされたPCR産物;レーン2,ラベルされた二本鎖DNAでのエンドヌクレアーゼ反応の産物;レーン3,ラベルされた一本鎖DNAでのエンドヌクレアーゼ反応の産物)。
【図34】図34には、エンドヌクレアーゼ反応産物と、DNアーゼI反応産物を用いたIM9細胞によるプロセシング産物との間の比較を示す(レーン1,ラベルされたPCR産物;レーン2,IM9細胞培養培地の反応産物;レーン3,IM9細胞におけるプロセシング産物;レーン4,DNアーゼI反応産物;パネルA,TBE緩衝液における、20%未変性−PAGE;パネルB,TBE緩衝液における、変性−尿素(8.3 M)−PAGE)。
【図35】図35には、S1ヌクレアーゼ反応によるエンドヌクレアーゼ反応に由来する一本鎖断片の同定を示す(A,TBE緩衝液における、20%未変性−PAGE;B,TBE緩衝液における、20% 変性−尿素(8.3 M)−PAGE)。
【図36】図36には、Mono S HR5/5イオン交換クロマトグラフィーによる、IM9細胞培養培地のクロマトグラフィー分画を示す(A,IM9培養培地のイオン交換プロファイル;B,1%アガロースゲルにて反応産物を解析することにより、示された保持時間に酵素活性を定量した)。
【図37】図37には、RESOURCE PHE 疎水性相互作用クロマトグラフィーによるエンドヌクレアーゼの精製を示す(A,イオン交換クロマトグラフィーから得られた活性画分の疎水性相互作用プロファイル;B,1%アガロースゲルにて反応産物を解析することにより、ピーク画分にて酵素活性を定量した)。
【図38】図38には、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製されたエンドヌクレアーゼのSDS−PAGEを示す。
【図39】図39には、精製されたエンドヌクレアーゼの、SDS−PAGEによる分子量定量を示す(マーカータンパク質は、ミオシン(200 kD)、β−ガラクトシダーゼ(116.3 kD)、ホスホリラーゼB(97.4 kD)、ウシ血清アルブミン(62.2 kD)およびオボアルブミン(45 kD))。
【図40】図40には、活性を含む、Mono Sクロマトグラフィー画分の未変性−ポア勾配ゲル電気泳動(4〜15%)(B)およびアガロースゲル電気泳動(A)でパネルBのゲルバンドから溶出されたタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性を示す。
【図41】図41には、イオン交換クロマトグラフィーによる精製エンドヌクレアーゼのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および活性バンドの未変性勾配PAGEゲル溶出を示す。
【図42】図42には、単離されたU937細胞中の、精製されたエンドヌクレアーゼ活性に対する陽イオンの効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫細胞から分泌され、外来性物質として細菌DNAを認識し、そしてそれをプロセシングして、免疫応答に関わることが知られているCpGモチーフを含むおよそ10塩基の一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する、新規エンドヌクレアーゼ酵素に関する。加えて本発明は、前記エンドヌクレアーゼ酵素によって産生される前記のおよそ10塩基の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバントに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物は、外来性物質に対して防御をするための免疫系を有している。その免疫系は、自然の(非特異的)免疫または後天性の(抗原特異的)免疫に分類される。生得的な、あるいは非特異的な免疫は、一つの種によって引き起こされる疾病に対する第一次の抵抗であり、構造的、生理的、エンドサイトーシス、およびファゴサイトーシス、ならびに炎症性応答などの4つのタイプとしての防御バリアを創出する。代表的な構造的防御バリアの例としては、皮膚および粘膜が挙げられる。生理的防御バリアには、例えば、温度、pH、酸素圧、および様々な水溶性因子が包含される。エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシスの防御バリアとは、外来性の巨大分子が特定の細胞の中に取り込まれてその後分解される、エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシスの分解システムのことをいう。炎症の防御バリアは、細菌の侵入とそれに続く皮膚の損傷によって産生される様々な血管作用性および化学走性物質によって導かれる炎症性応答である。その後、凝固、キニン、線維素溶解性などの酵素系または補体が活性化される。後天的免疫は、生得的な免疫と、前者が特異性、多様性、記憶ならびに自己および/または非自己認識を備えているという点で相違している。後天的免疫の特性は、Bリンパ球、Tリンパ球、抗体、サイトカイン等により応答する、体液性および細胞性の免疫に由来する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
微生物の侵入による免疫応答は、侵入の初期段階で微生物の特定の分子を速やかに認識する生得的な機構によって発生する。微生物に存在するタンパク質および脂質は、抗原に特異的に応答する免疫系を誘導する物質としてよく知られている。LPS、ホルミルメチオニン、リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン等は、補体系を直接的に活性化する物質としてよく知られている(Marrack, P., および Kapple, J. W. (1994) Cell 76, 323-332)。近年、哺乳動物において体液性および細胞性免疫が、それらの内因性DNAを細菌DNAから識別し、そしてその細菌DNAを異物として認識することにより活性化されること、そしてかかる細菌DNAが生得的免疫に関わることが、多くの研究者によって明らかにされてきている。
【0004】
全身性狼蒼エリテマトーデス(SLE)、自己免疫疾患の際に、大量の抗−DNA抗体が産生されるという事実から、抗原または自己抗原の観点でDNAが研究されてきている。抗−DNA抗体は、SLEに関連して血清学的に最も重要であると考えられ、それは腎損傷、皮膚の発疹、関節炎等に関わる主要なメディエーターとして機能する。(Tan, E. M. (1989) A Textbook in Rheumatology, 11版, D. J. McCarty, 編, Led および Febiger, Philadelphoa, PA, 1049;Isenberg, D. A. ら (1997) 1996年5月、ロンドンで開催されたDNA抗体に関する国際ワークショップでの、全身性狼蒼エリテマトーデス−AにおけるDNAに対する抗体の役割の、概説および序論、Lupus 6, 290-304;Swaak, A. J. G. ら (1979) Arthritis Rheum. 22, 226-235;ならびにIsenberg, D. A. ら (1994) Arthritis Rheum. 37, 169-180)。これらの抗体は、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAに存在する構造決定因子に結合することが示された(Isenberg, D. A. ら (1994) Arthritis Rheum. 37, 169-180;Pisetskyi, D. S. (1992) Rheum. Dis. Clin. North. Am. 18, 437-454;ならびに Shoenfield, Y., および Isenberg, D. A., (1989) Immunol. Today 10, 123-126)。SLEの原因は正確には解明していないが、最近の研究により、DNA抗原がその疾病に顕著に関係していることが明示されている(Shlomechik, M. J. ら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 9150-9154;Shlomechik, M. J. ら (1990) J. Exp. Med. 171, 265-292;および Tillman, D. M. ら (1992) J. Exp. Med. 176, 761-779)。研究者らは、細菌DNAに対する免疫応答を調べるために、正常マウスおよび自己免疫疾患マウスを使用した(Gilkeson, G. S. ら (1989) Clin. Immunol. Immunopathol. 51, 1482-1486;Gilkeson, G. S. ら (1993) J. Immunol. 151, 1353-1364;および Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402)。哺乳動物DNAとは異なり、細菌DNAはポリクローナルB細胞を活性化し、そしてマウスでの特異性を有する抗体を生産するという、強力な免疫特性を保有している(Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402;および Gilkeson, G. S. ら (1991) Clin. Immunol. Immunopathol. 59, 288-300)。活性の程度は、細菌DNAに存在する塩基配列モチーフが哺乳動物DNAの塩基配列モチーフと相違し、そして異物、すなわち非自己として認識し得るという事実に起因している(Messina, J. P. ら (1993) Cell. Immunol. 147, 148-157;Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;および Halpern, M. D. ら (1996) Cell Immunol. 167, 72-78)。正常マウスに細菌DNAで免疫誘発処理されると、マウスは細菌の二本鎖DNAだけでなく哺乳動物および細菌の一本鎖DNAにも結合することができる抗体を生産する(Gilkeson, G. S. ら (1991) Clin. Immunol. Immunopathol. 59, 288-300)。しかしながら、哺乳動物の二本鎖DNAと交差反応性を有する自己抗体はまったく生産されなかった。正常マウスと異なり、二本鎖DNAによって免疫誘発処理された前自己免疫(NZB X NZW) F1 (NZB/W)マウスは、哺乳動物の二本鎖DNAと結合する交差反応性抗体を生産した(Gilkeson, G. S. ら (1995) J. Clin. Invest. 95, 1398-1402)。このように、自己免疫疾患マウスは、細菌DNAで免疫付与されると、その動物は哺乳動物DNAと交差反応性を有する抗−二本鎖DNA抗体を生産する能力を有する。それは、NZB/W マウスでの免疫レギュレーターの欠如において、細菌DNAによって生産される自己応答性の抗−二本鎖DNA B細胞がそれらの内因性DNAに応答する誤寛容が起こることに起因しており、かくして細菌DNAのみならずそれら自体のDNAにも応答する病原性自己抗体が増加したのである(Whock, M. K. ら (1997) J. Immunol. 158, 4500-4506)。
【0005】
タンパク質抗原でB細胞を刺激および活性化することによる抗体の生産は、タンパク質抗原が抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされ、そして主要組織適合性複合体(MHC)に結合して、MHCによって限定されるT細胞が活性化されてその活性化されたT細胞がサイトカインを分泌してB細胞を活性化するように抗原の提示を誘導するプロセスとしてよく知られている(Parker, D. C. (1993) Annu. Rev. Immunol. 11, 331-360;ならびに Clark, E. A. および Ledbetter, J. A. (1994) Nature 367, 425-428)。タンパク質抗原と異なるミコバクテリアの細胞壁の構成要素の加工体であるリポアラビノマンナンリポグリカン(LAM)、ミコール酸脂質が、hCD1b(Beckman, E. M. ら (1994) Nature 372, 691-694;Bendelac, A. (1995) Science 269, 185-186;Sieling, P. A. ら (1995) Science 269, 227-230;およびPrigozy, T. I. ら (1997) Immunity 6, 187)およびhCD1c (Beckman, E. M. ら (1996) J. Immunol. 157, 2795-2803)によって提示され得ることもよく知られている。CD1ファミリーは、MHC分子と異なる部位にてコードされる非多形細胞表面糖タンパク質である。CD1−T細胞の結合は明瞭には特定されていないが、mCD1d1はCD8+およびCD4+ T細胞によって認識され(Castano, A. R. ら (1995) Science 269, 223-226;Cardell, S. ら (1995) J. Exp. Med. 182, 993-1004)そしてhCD1bはCD4-およびCD8- T細胞によって認識される(Bendelac, A. (1995) Science 269, 185-186)らしいことが示唆された。このように、CD1は病原性微生物に認められるタンパク質以外の様々な抗原の提示に関わることが推定される。多くの研究で、DNAは抗−DNA−特異的なB細胞刺激に関わっていることが報告された。Krishnan および Marionは、DNAおよびペプチドの組み合わせでのマウスの免疫付与によって抗−DNA抗体を誘発できることを示した(Krishnaa, M. R. および Marion, T. N. (1993) J. Immunol. 150, 4948-4957)。従って、抗−DNA抗体が様々な自己免疫疾患の際に産生されるという事実に鑑みて、抗−DNA抗体の生産のためのB細胞の活性化が、MHCで限定されるT細胞刺激に依存しているか否かを確かめることが重要である。Waisman は、DNAによるT細胞の特異的活性化がMHCクラスII分子によるDNA提示に関わることを示唆した(Waisman, A. ら (1996) Cell. Immunol. 173, 7-14)。すなわち、彼はAPC表面上のMHCクラスII分子にDNAが結合し、そしてその結果、T細胞はDNAによって特異的に増殖されることができるという事実を示し、その事実に基づいて、DNAが自己免疫疾患で重大な役割を果たしていると提唱した。しかしながら、DNA抗原のプロセシングおよび提示機構に関するさらなる研究および知見はまったくない。例えば、細菌DNAがAPCによってプロセシングされ、タンパク質抗原におけるようにMHC分子により提示されるか否か、または他の分子がこのような提示に関わっているのかどうかは、未だ解明されていない。
【0006】
脊椎動物は、細菌DNA由来とそれらの内因性DNAを識別し、それにより免疫細胞が細菌DNAによって活性化されることを、多くの研究者が示した。脊椎動物によって非自己として認識される細菌DNAは、高レベルで非メチル化CpGジヌクレオチドを産生していることにより特徴付けられる。細菌DNAと脊椎動物DNAとの間の甚だしい相違は、以下のように要約され得る。第1に、細菌DNAは最多レベルで16ジヌクレオチドのCpGジヌクレオチドを産生しているが、脊椎動物DNAでは、細菌DNAの 1/4 を産生している。このことは、CpG抑制が脊椎動物DNAに存在することを意味している。第2に、細菌DNAに存在するCpGジヌクレオチドのメチル化頻度は低い。脊椎動物DNAは80%のメチル化を示すが、微生物のシトシンのメチル化はほとんど認められない(Bird, A. P. (1995) Trends Genet. 11, 94-100)。第3に、細菌DNAは、CpGジヌクレオチドの両側端部で2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンの側方に位置する頻度が、脊椎動物DNAよりも高い(Razin A., および Friedman, J. (1981) Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 25, 33-52)。「CpGモチーフ」と称される細菌DNAのその特異的な構造は、免疫応答を活性化することが報告された。すなわち、2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンがCpGジヌクレオチドの両側端部で側方に位置する場合(マイトジェン性CpG)、他の塩基がCpGジヌクレオチドの両側端部で側方に位置する場合(非刺激性CpG)に比較して、免疫細胞の活性化は随分高い。
【0007】
多くの研究者は、細菌DNAの特異的塩基配列による免疫細胞の活性化および作用を解明するために、化学的に合成されたオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)を使用した。Yamamoto および他の研究者は、細菌DNAがNK細胞の溶解性活性化を増加させ、またインターフェロンγ(IFN−γ)の生産を誘導することを示した(Yamamoto, S. ら (1992) J. Immunol. 148, 4072-4076;Cowdery, J. S. ら (1996) J. Immunol. 156, 4570-4575;および Ballas, Z. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 1840-1845)。Kuramoto は、このような効果が、細菌DNAに含まれるCpGモチーフのパリンドロームの塩基配列に関連することを報告した(Kuramoto, E. ら (1992) J. Cancer Res. 83, 1128-1131;およびKimura, Y. ら (1994) J. Biochem. 116, 991-994)。加うるに、細菌DNAはDNA結合性タンパク質に結合して、B細胞の活性化を誘導することが報告された(Gilkeson, G. S. ら (1989) J. Immunol. 142, 1398-1402;Yamamoto, S. ら (1992) J. Immunol. 148, 4072-4076;Gilkeson, G. S. ら (1989) J. Immunol. 142, 1482-1486;Messina, J. P. ら (1991) J. Immunol. 147, 1759-1764;Field, A. K. ら (1967) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 58, 1004-1010;ならびにOehler, J. R. および Herverman, R. B. (1978) Int. J. Cancer 21, 221-220)。すなわち、B細胞の活性化は、細菌の6塩基からなるCpGモチーフによって促進されることが理解される。細菌感染による、B細胞の活性化を包含した免疫応答は、免疫調節性サイトカインを生産することによって特徴付けられる(Van Damme, J. ら (1989) Eur. J. Immunol. 19, 163-168;およびPaul, W. E. ら Adv. Immunol. 53, 1-29)。さらにまた、CpGモチーフは、細胞性免疫に関わるIL−12および体液性免疫に関わるIL−6の分泌に関与することも報告された(Halpern, M. D. ら (1996) Cell, Immunol. 167, 72-78;Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 5394-5402;およびKlinman, D. M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 2879-2883)。それより生じるサイトカインとして、T細胞およびB細胞を活性化するうえで役割を果たすIL−6(Uyttenhove, C. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 1417-1427;Muraguchi, A. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 332-344;Le, J. M., および Vilcek, J. (1989) Lab. Invest. 61, 588-602;ならびに Hirano, T. ら (1990) Immunol. Today 11, 443-449)、細胞内および細胞外病原性細菌を排除するマクロファージの機能を促進するIFN−γ(Murray, H. W. (1990) Diagn. Microbial. Infect. Dis. 13, 411-421)およびIFN−γの生産を調節しNK細胞を活性化するIL−12(Trinchieri, G. (1994) Blood 84, 4008-4027;Zhan, Y., および Cheers, C. (1995) Infect. Immun. 63, 1387-1390;ならびに Bohn, E. ら (1994) Infect. Immun. 62, 3027-3032)が挙げられる。IL−12およびIFN−γは、1型サイトカインを増加することによりヒト病原性細菌を排除する、重要な役割を果たしている(Klinman, D. M. ら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 2879-2883;Zhan, Y., および Cheers, C. (1995) Infect. Immun. 63, 1387-1390;Bohn, E. ら (1994) Infect. Immun. 62, 3027-3032;ならびにHeinzel, F. P. ら (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 7011-7015)。IL−6は、2型サイトカインによってT細胞およびB細胞の成長および分化を促進することにより抗体の生産を刺激する(Uyttenhove, C. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 1417-1427;Muraguchi, A. ら (1988) J. Exp. Med. 167, 332-344;Le, J. M., および Vilcek, J. (1989) Lab. Invest. 61, 588-602;ならびに Hirano, T. ら (1990) Immunol. Today 11, 443-449)。実際、ノックアウトIL−6遺伝子を有するマウスは、容易に感染されることが観察された(Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 157, 5394-5402;および Libert, C. ら (1994) Eur. J. Immunol. 24, 2237-2242)。このように、細菌DNAは、細胞性および体液性免疫に関わるサイトカインの生産を誘導することが理解される。近年、B細胞の増殖および発生は、細菌DNAによってもたらされることが、さらに報告されている(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;Liang, H., (1996) J. Clin. Invest. 98, 1119-1129;および Yi, A. K. ら (1996) J. Immunol. 156, 558-564)。Krieg の研究は、ODNに存在するCpGモチーフが、B細胞の活性化および増殖を行ないつつIgMの分泌を誘導するのに必須であること、ならびにB細胞が活性化された場合に起こる典型的な現象であるクラスII MHC分子の発現が増大し、そしてG0からG1まで細胞周期が開始することを示した。Sato の報告(Sato, Y. ら (1996) Science 273, 352-354)によると、免疫刺激性DNA配列(ISS)を短いCpGモチーフと共に含むプラスミドDNAが単球にトランスフェクトされた場合に、IFN−α、IFN−βおよびIL−12の量が増加することが見られた。この結果は、ISSを含むプラスミドが骨髄幹細胞へトランスフェクトされると、その後周囲のマクロファージおよびT細胞が活性化されて、その幹細胞のイン・ビボの再配置が誤って起こり得ることを示唆するものである。かくして、体細胞または幹細胞置換療法のためのベクターは、ISSを含まないように設計されるべきなのである。対照として、ワクチンの効能を改善するための一つのアプローチは、多くの反復ISSを含むようにプラスミドDNAを設計することである。
【0008】
細胞を活性化するために、細菌DNAは細胞内に取り込まれるべきである。細胞培養容器上に吸着されたODNは、B細胞を活性化しないこと(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549)そしてオリゴヌクレオチドがリポフェクトされた場合に、NK細胞の活性化が大幅に増大するに伴って、その取り込みが増大すること(Yamamoto, T. ら (1994) Microbiol. Immunol. 38, 831-836)が見出された。また、CpGモチーフを含んでいるか否かに関わらず、オリゴヌクレオチドが細胞表面に結合する能力の間に有意な差異はないことも見出された(Krieg, A. M. ら (1995) Nature 374, 546-549;および Yamamoto, T. ら (1994) Microbiol. Immunol. 38, 831-836)。Bennett は、単核細胞内に取り込まれたDNAがエンドソーム画分にて分解されることを示した(Bennett, R. M. ら (1985) J. Clin. Invest. 76, 2182-2190)。Stacey は、細菌DNAがマクロファージ中の転写因子核因子−kBに結合し、そしてTNF−α、IL1−βおよびプラスミノーゲン活性化インヒビター−2 mRNAの発現が大幅に増大することを示した(Stacey, K. J. ら (1996) J. Immunol. 157, 2116-2122)。細胞表面上のレセプターの媒介を伴う、オリゴヌクレオチドの細胞内への取り込みは、エンドサイトーシスによって引き起こされるであろうことが予期された(Bennett, R. M. ら (1985) J. Clin. Invest. 76, 2182-2190)。また、蛍光でラベルされたホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドを末梢血、骨髄細胞および白血球細胞系で使用することによっても、研究が実施された(Loke, S. L. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 3474-3478;Yakubov, L. A. ら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 6454-6458;Zhao, Q. ら (1996) Blood 88, 1788-1795;Ribeiro J. M., および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)が、その特性および機構は未だまったく明確にされていない。
【0009】
細菌DNAはこれまでに、免疫系において重大な役割を果たすことが理解されている。自己免疫疾患であるSLEは、細菌DNAによって抗−DNA抗体が産生されることによって発症すること、そして細菌DNAのCpGモチーフは免疫細胞内へ取り込まれて細胞を活性化し、それによりサイトカインおよびIgMの分泌を促進することが知られている。しかしながら、どのような機構によって、このように重大な細菌DNAが抗体を生産することが可能ならしめられるのか、そしてCpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドがどのように細胞内で作られるのかについての報告はまったくない。
【0010】
本発明者らにより、DNA−未変性−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(DNA−未変性−PAGE)を使用して、ヒトB−リンパ芽球IM9細胞、および12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセテートで処理された分化型骨髄性U937ならびにその培養培地から、新規エンドヌクレアーゼが同定された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一側面において、本発明は、免疫細胞から分泌され、そして外来性物質として細菌DNAを認識し、またそれをプロセシングして免疫応答に関わるCpGモチーフを有する約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを生産する新規エンドヌクレアーゼに関する。
【0012】
別の側面において、本発明は、本発明のエンドヌクレアーゼを製造するための方法であって、ヒトB−リンパ芽球IM9またはTPAで処理された骨髄性U937細胞系を適切な培地にて培養して当該エンドヌクレアーゼを生産する工程、および細胞溶解物または培養培地から当該エンドヌクレアーゼを単離する工程を含む方法を提供する。
【0013】
さらなる側面において、本発明は、本発明のエンドヌクレアーゼを用いて細菌DNAを処理することによって生産されるCpGモチーフを有する、約10塩基対の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む免疫アジュバントを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
新規エンドヌクレアーゼは、DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼアッセイシステムを使用して、IM9細胞溶解物および培養培地から同定された。そのエンドヌクレアーゼの分子量は、SDS−PAGEにより72.4 kDと測定された。本発明のエンドヌクレアーゼ活性は、培養時間の間にはIM9細胞核に検出され、そして酵素活性の蓄積が、アポトーシス細胞のIM9細胞核タンパク質抽出物中に示された。骨髄性U937細胞の増殖および分化に対するシグナルは、リポ多糖(LPS)および12-O-テトラデカノイルホルビル 13-アセテート(TPA)などの細胞外刺激により提供される。実験結果から、TPAがエンドヌクレアーゼ分泌の程度に対して有意な効果を有することが示唆された。その酵素活性はLPS処理によりU937細胞において誘導されたが、一方酵素の分泌は培養培地では検出されなかった。多重高次コイルプラスミドDNAを基質として用いて、細胞培養培地から単離された酵素についてエンドヌクレアーゼ活性を定量した。エンドヌクレアーゼは、Mg2+のみと共に、プラスミドDNAの直鎖状体への変換を触媒し、続いてさらに分解することができた。触媒活性に必要とされるpH至適値は、pH 6.6〜7.4の範囲に決定された。DNA−未変性−PAGEアッセイシステムで、免疫細胞系のエンドヌクレアーゼ活性は、DNアーゼ(デオキシリボヌクレアーゼ)Iのものと異なることが、実験結果から明らかに立証された。抗−DNアーゼI抗体を使用した免疫沈降分析で、分泌されたエンドヌクレアーゼはその抗体によって認識されないことが示された。本発明によって特徴付けられたMg2+−依存性エンドヌクレアーゼは、酵素活性に対する陽イオン依存性、未変性−PAGEにおける電気泳動移動度、および触媒作用に必要とされる至適pHを含めたいくつかの側面で、これまでに報告されたヌクレアーゼと異なると考えられる。エンドヌクレアーゼ活性によってプロセシングされるDNA断片は、免疫細胞系でのサザンブロット分析によって検出した。細胞培養培地にて部分的にプロセシングされた外来性DNA抗原は、細胞表面に結合し、その後細胞内へと取り込まれるようである。放射ラベルされたDNA断片を外来性抗原として用い、オートラジオグラフィーによって、免疫細胞系でのDNA抗原のさらなるプロセシングを立証した。エンドヌクレアーゼによって産生されたおよそ10塩基の一本鎖DNA断片は、S1ヌクレアーゼ反応によって分解されることが、実験結果によって示された。短い一本鎖DNA配列は、2つの5'-プリンおよび2つの3'-ピリミジンが側方に位置する非メチル化CpGジヌクレオチドを有するCpGモチーフを含む、相補的合成オリゴヌクレオチドに、首尾良くハイブリダイズした。本発明は、ヒト免疫細胞系およびそれらの培養培地の双方に存在する新規エンドヌクレアーゼの存在および特徴を示すものである。また本発明は、免疫細胞由来のエンドヌクレアーゼが、異物として細菌DNAを認識し、そしてCpGモチーフを含むDNA断片を産生することにより免疫学的プロセスを遂行することも示している。
【0015】
本発明は、以下の実施例によって例証されよう。
【0016】
実施例1:
免疫細胞由来のエンドヌクレアーゼの生合成および分泌
DNアーゼIの酵素活性がヒトの組織および体液に広く分布しているという事実から、その酵素は消化機能に加えて、特定の生理的なイン・ビボの機構を保有していることが推定された(Nadano D. ら (1993) Clin. Chem. 39, 448-452;および Yasuda T. ら (1993) Clin. Chim. Acta 218, 5-16)。DNアーゼIは、アポトーシスの際にヌクレオソーム間DNAを切断することが知られている(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)。ヒト血清中にDNアーゼIが存在すること、およびその生化学的特性が報告された(Love J. D., および Hewitt R. R. (1979) J. Biol. Chem. 254, 12588-12594;ならびに Kishi K. ら(1990) Am. J. Hum. Genet. 47, 121-126)。血清DNアーゼIは、膵臓から分泌されることが教示された(Love J. D., および Hewitt R. R. (1979) J. Biol. Chem. 254, 12588-12594;ならびに Ito K. ら (1984) J. Biochem. 95, 1399-1406)が、他の組織からの分泌についての研究がなお必要である。Messina の研究では、DNアーゼIが細菌DNAを完全に分解するので、B細胞およびマクロファージを活性化するCpGモチーフを生産しないことが示された(Messina, J. P. ら (1991) J. Immunol. 147, 1759-1764)。加えて、Messinaの研究から、DNアーゼIによって処理されていない細菌DNAは、免疫細胞を活性化し、サイトカインおよびIgMの分泌を促進することが明らかにされた。これらのことは、CpGモチーフを有するODNで細胞が処理された場合に得られた結果に一致するものである。従って、外来性DNAを認識し、プロセシングによってCpGモチーフを生産することができる、1つの新しいタイプのエンドヌクレアーゼが免疫細胞に存在しているとの推定のもとに、本発明者らは、このようなエンドヌクレアーゼの活性の存在を確認すべく、様々な免疫細胞系を使用して実験を行なった。
【0017】
1−1 細胞培養および前処理
ヒトB−リンパ芽球(IM9およびRPMI1788)細胞系、Tリンパ芽球(Molt-4 および Jurkat)細胞系ならびに骨髄性(U937)細胞系は、American Type Culture Collection から購入した。細胞は、加熱した胎児ウシ血清(FBS、Gibco BRL)10%を含有するRPMI1640 で、4〜5 x 105 細胞/mlに維持して培養した。細胞培養は、37℃にて、5% CO2を含むインキュベーター(Forma)で行なった。培養中の細胞数および細胞の生存度は、血球計数器を使用して、トリパンブルー除去法によって定期的に測定した。細胞の生存度は、実験全体にわたって95%以上に保った。IM9細胞系は、細胞におけるエンドヌクレアーゼの生合成を確認するべく、アクチノマイシンD(ACD、Sigma)0.33 ug/mlで前処理した(Cooper H. L., および Braverman R. (1977) Nature 269, 527-529)。IM9細胞系は、ACDで処理して、30分間培養し、洗浄した。その後、細胞を10% FBSを含有するRPMI1640 にて48時間培養しながら、エンドヌクレアーゼの酵素活性を定期的な間隔で測定した。
【0018】
DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼ活性アッセイを実施して、細胞培養溶液および細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ酵素活性を検出した。試験した細胞培養物に分泌されたエンドヌクレアーゼの活性は、IM9細胞系のみで観察された(図5B、レーン2)。しかしながら、そのエンドヌクレアーゼ活性は常に、ヒトTリンパ芽球 Molt-4 細胞系の細胞溶解物中に常に検出された(図5A、レーン4)が、細胞培養溶液中には検出されなかった。骨髄性U937細胞系、Bリンパ芽球RPMI1788細胞系およびTリンパ芽球Jurkat細胞系については、エンドヌクレアーゼ活性は細胞溶解物または細胞培養溶液のいずれにも検出されなかった。図4に示すように、細胞におけるエンドヌクレアーゼの生合成(図4A)および細胞培養溶液中へのエンドヌクレアーゼの分泌(図4B)は、ACD前処理の後、初期に顕著に減少した。これらの結果から、IM9細胞系におけるエンドヌクレアーゼの生合成と分泌に、密接な相関関係があることが示唆される。
【0019】
エンドヌクレアーゼのサイトカインおよび分泌に対するサイトカインの効果を確認するべく、サイトカインが関与する免疫応答を、インターフェロン−γ(IFN−γ、10 単位/ml、Genetech Inc.)およびインターロイキン−1β(IL−1β、10 単位/ml、Genetech Inc.)で処理した。DNA−未変性−PAGEアッセイは、インターロイキンを含有する培地にて24時間細胞を培養しながら行なった。図6に示すように、このようなサイトカインはエンドヌクレアーゼの分泌に有意に影響を及ぼさなかった。また、リポ多糖(LPS)またはテトラデカノイルホルボール 13-アセテート(TPA、Sigma)のいずれも、エンドヌクレアーゼの分泌に影響を及ぼさないことも観察された。
【0020】
示された時間にわたり、異なる濃度にてTPAでU937細胞を処理しながら、生合成および分泌を観察した。シクロヘキシミド(CHX、10 ug/ml、Sigma)およびLPS(1 ng/ml、Sigma)によって処理されたU937細胞を、TPAによって処理されたU937細胞と比較した。細胞はリン酸緩衝性生理食塩水(PBS、137 mM NaCl、2.7 mM KCl、10 mM Na2HPO4、1.8 mM KH2PO4、pH 7.4)で洗浄し、そして様々な薬剤による処理の後の細胞形状を観察するために、細胞遠心分離スライド上でライト−ギムザ(Sigma)によって染色した。その結果、TPA刺激で分化したヒト骨髄性白血病細胞系の細胞形状は、成熟するようになって成長が停止するが、LPSの刺激後の細胞には増殖が起こった。このようなマイトジェンによって刺激される細胞の成長曲線を、図9に示す。図9から、U937細胞系はTPAによって分化されて細胞形状を変化させ、そして最終的に成長が終了することと、そしてその細胞はLPSによって増殖したことが認められる。加えて、アポトーシスを引き起こす薬剤であるCHXの処理によって、細胞は死滅することが観察された。さらなる実験を行ない、このような培養条件下でエンドヌクレアーゼが生産および分泌されるか否かを確認した。図10Aは、漸増TPA濃度で処理した細胞系で、細胞内のエンドヌクレアーゼの生合成が、増加したことを示す。図10Bは、細胞内でのエンドヌクレアーゼの生合成が増加すると同時にエンドヌクレアーゼ酵素が細胞から分泌されたことを示している。また図10Aは、10 ng/ml以上のTPAでエンドヌクレアーゼの生合成が速やかに増加したことを示している。図11には、10 ng/mlのTPAによる、U937細胞培養溶液の処置後に、定期的な間隔でエンドヌクレアーゼ活性を観察して得られた結果を示している。エンドヌクレアーゼ酵素の生合成および分泌はTPAの処理6時間後に開始され、そしてTPAの処理後24時間にそのピークに達することが認められる。図12には、1 ng/mlのLPSによる処理後、定期的な間隔でエンドヌクレアーゼ活性を定量して得られた結果を示す。その結果、LPSの処理後12時間で細胞溶解物にエンドヌクレアーゼ活性が検出され、そして24時間にわたり細胞培養溶液中にはまったくエンドヌクレアーゼ活性は検出されなかったことが示唆されている。U937細胞系は、アポトーシスを誘導する薬剤であるCHXによる処理に際して死滅し、そしてこのような処理はエンドヌクレアーゼの生合成に影響しないことが、顕微鏡的に観察された(図13、レーン4)。TPA、LPSおよびCHXによる、U937細胞系の処理後のエンドヌクレアーゼ活性を、図13に示す。
【0021】
1−2 細胞溶解物の調製およびDNA−未変性−PAGEでのエンドヌクレアーゼ活性の定量
細胞培養物は、1,500 rpmで5分間遠心分離し、そして上清を取り出した。遠心分離された細胞を冷PBSで2回洗浄し、そして150 mM NaCl、10 mM Tris−HCl、pH 7.5、1 mM EDTAおよび1 mM PMSFを含有する 0.5% Nonidet P-40 (NP−40)緩衝溶液(溶解緩衝溶液)中に、1 x 107細胞/mlとなるように再懸濁した。その溶液を4℃にて15分間静置した後、それを12,000 rpm、4℃にて15分間遠心分離し、そして上清を細胞溶解物として使用した。
【0022】
修正された未変性ポリアクリルアミドゲルアッセイシステムを使用して、エンドヌクレアーゼ活性を定量し、その特徴を同定した。Hoefer Tall Mighty Small(0.75 mm x 8 cm x 11 cm)垂直電気泳動装置を使用することにより、150 /mlの最終濃度となるように多重高次コイルプラスミドDNA(PGEM−Tベクター、3.0 kb、Promega)を含む 7%ポリアクリルアミドゲルを重合した。細胞培養溶液または細胞溶解物のタンパク質試料ウェル当たり10 ug を付し、次いで4℃にて電気泳動を行なった。電気泳動後、ゲルを蒸留水で3回洗浄し、そして20 mM Tris−HCl、pH 7.0、1 mM CaCl2および10 mM MgCl2を含有する反応緩衝溶液(TCM緩衝液)中で、37℃にて4時間、攪拌しながら反応させた。エンドヌクレアーゼ酵素の酵素活性を、反応時間を変えながら観察して、DNA−未変性−PAGEでその酵素の反応特異性を同定した。反応したゲルは、1/ml エチジウムブロミドを含むTCM緩衝溶液で37℃にて30分間染色し、そして302 nmトランスイルミネーターで撮影した。ゲル上でヌクレアーゼ活性を呈している部位は、オレンジの背景上で黒いバンドとして観察された。エンドヌクレアーゼ活性に対する標準は、ウシ膵臓DNアーゼI(RNアーゼ不含 10〜50 x 103単位/ml、Boehringer Mannheim)であった。
【0023】
細胞培養物および細胞溶解物における酵素活性は、感度と共に、本発明のために設計されたDNA−未変性−PAGEヌクレアーゼアッセイシステムによって定量することができる(図1)。10 ugのタンパク質を含む細胞培養溶液および細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ活性を呈する部位で、強い反応バンドが観察された。IM9細胞の、示した時間の間でのエンドヌクレアーゼの生合成および分泌の分析結果を、図1に示す。細胞溶解物中のエンドヌクレアーゼ活性は、48時間培養している間、絶えず検出された(図1A)が、同じ反応条件下に、細胞培養溶液中のエンドヌクレアーゼ活性はかなり蓄積した(図1B)。IM9細胞培養物をPBSで数回洗浄し、その後無血清培地に移すと、図1Bに示すエンドヌクレアーゼ活性に対する主要バンドが実際に検出されたが、DNアーゼI酵素活性はまったく検出されなかった(図1C)。この結果は、IM9細胞培養物および細胞溶解物で検出されたエンドヌクレアーゼは、細胞が培養された培地組成物の成分であるFBSに由来するものでなく、細胞で合成されて培地へと分泌されたものであることを示唆している。図1Bの細胞培養物での電気泳動上で速やかに移動したヌクレアーゼ活性の弱いバンドは、Boehringer Mannheimから入手したウシDNアーゼIと比較することによって、DNアーゼIとして同定された。
【0024】
図2は、異なる反応溶液の条件下にDNA−未変性−PAGEによって検出された1時間および4時間の酵素活性を示す。10 mM Mg2+を含有する 20 mM Tris−HCl、pH 7.0の緩衝溶液で1時間反応が実施されると、活性は、図2Aに示すように、IM9細胞によって分泌されたエンドヌクレアーゼのみに検出された。しかしながら、4時間というさらに長い時間にわたり同じ条件下に反応を行なった場合、購入したDNアーゼIのみならずFBS中に存在するDNアーゼIも、同じ部位に酵素活性を示した。この結果は、IM9細胞によって合成および分泌されたエンドヌクレアーゼの未変性−PAGE上の移動距離は、DNアーゼの移動距離と異なっており、そして所定反応条件下では酵素反応性もまた、互いに異なっていることを示している。
【0025】
1−3 DNアーゼIに対する抗体の生産および免疫沈降
免疫前の血清を得るために、Sprague Dawley(SD、150〜250 g)の尾から血液を採取した。ウシ膵臓DNアーゼI(Sigma)は、免疫付与のために滅菌PBS中で小断片へと消化した。SDラットは、標準法に従って、100 ugのタンパク質で免疫付与した(Harlow, E., および Lane, D. (1988) Antibodies, 実験マニュアル、Cold Spring Harbor, New York)。ラットを4回免疫誘発処理して10日後に血液を採取し、そして抗体価および特異性をアッセイした。DNアーゼIを含む血清中の抗−DNアーゼI抗体は、Immunopure plus protein A/G IgG 精製キット(Pierce)およびウシDNアーゼIを結合させたSepharose−CL 4Bを使用することによって精製した。PBSで10倍に希釈した、50 mlの細胞培養液または50 mlのヒト血清を、精製抗−DNアーゼI抗体およびProtein A-Sepharose−CL 4Bを結合させたビーズによって免疫沈降させた。免疫沈降は、攪拌しながら4℃にて6時間実施した。免疫沈降された上清を集めて、エンドヌクレアーゼの酵素活性をDNA−未変性−PAGEで検出した。
【0026】
図3Aは、調製された抗体が、FBSに由来するDNアーゼIを認識し、そしてヒト血清に存在するDNアーゼIと交差反応性を有することを示している。免疫前血清は、FBSおよびヒト血清DNアーゼIを認識しなかった。それより調製されたDNアーゼIを使用することによって、分泌されたエンドヌクレアーゼの各DNアーゼIとの交差反応性を検出した。抗−DNアーゼI抗体によりIM9細胞培養溶液から免疫沈降された上清は、速やかに移動するDNアーゼI酵素活性を示したが、分泌されたエンドヌクレアーゼの酵素活性は、免疫沈降されず、実際に回収されなかった。この結果は、IM9細胞系から分泌されるエンドヌクレアーゼが、免疫学的にDNアーゼIと異なることを立証するものである。
【0027】
1−4 エンドヌクレアーゼ活性の部分精製および特徴付け
IM9細胞の培養溶液からエンドヌクレアーゼを部分的に精製するために、前記実施例1―2による電気泳動によって酵素活性を呈するタンパク質バンドを溶出した。ヌクレアーゼ活性を呈するタンパク質バンドを切り出し、小片に断片化してエッペンドルフミクロチューブに移した。その後、20 mM Tris−HCl、pH 7.0 緩衝溶液を使用することにより、攪拌しながら4℃にて10時間、溶出を行なった。試料は、4℃、14,000 rpmにて10分間遠心分離し、そして上清を20 ulに分けた。溶出されたタンパク質試料の20 ngを、20 mM Tris−HCl緩衝溶液(pH 7.0)中で、高次構造コイルプラスミドDNAと37℃にて10時間反応させた。酵素活性に対するpHの効果を調べるために、各々異なるpHを有する、1 mM CaCl2および10 mM MgCl2を含有する20 mM MOPS緩衝溶液中で酵素活性を定量した。示した反応時間のエンドヌクレアーゼの酵素活性を分析するために、10 mM MgCl2を含有する20 mM Tris−HCl緩衝溶液(pH 7.0)中において、37℃にて180分間の間における定期的な間隔で、酵素反応を観察した。DNA試料緩衝溶液(30% グリセロール、0.5% ブロモフェノールブルーおよび0.5% キシレンシノール)を含有するTE(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、1 mM EDTA)緩衝溶液を添加した後、氷を添加することによって反応を停止した。エチジウムブロミド(0.5 ng/ml)を含有する1% アガロースゲルで電気泳動を行なうことによって、反応産物を同定した。単離された酵素は、pH 7に至適活性を有していることが調べられた。しかしながら、触媒活性は比較的広い範囲のpHで検出された(図7)。20 mM Tris−HCl(pH 7.0)緩衝溶液中でのエンドヌクレアーゼの酵素活性は、Mg2+に依存しており、Ca2+によっては影響を受けなかった(図8A)。酵素は、1から10 mMのCa2+の範囲で活性化されなかったが、Mg2+の濃度に依存した酵素活性によりプラスミドから直鎖状DNAが形成され、示した反応時間での、エンドヌクレアーゼによる直鎖状DNAの形成が観察された。高次構造コイルプラスミドDNAの直鎖状DNAへの変換反応は、10分間反応後に始まり、そして60分の反応まで徐々に増加した。ヌクレアーゼ活性は、同じ実験条件下に180分間持続した(図8B)。このように、本酵素は高次構造コイルプラスミドDNAを直鎖状DNAに変換し、続いてそのDNAを消化することが確認された。この結果は、IM9免疫細胞によって分泌されるエンドヌクレアーゼ活性は、Mg2+−依存性であることを立証している。
【0028】
本発明は、Mg2+−依存性のエンドヌクレアーゼ活性が一定量生産され、そして細胞培養物に定常的に分泌されていることを示した。また、そのエンドヌクレアーゼは、FBSおよびヒト血清中に存在するDNアーゼIと異なるという事実が、未変性−PAGEでの移動距離の差異と、抗−DNアーゼI抗体を使用することにより得られた免疫沈降の結果によって確認された。これらは、本発明のエンドヌクレアーゼが、酵素活性に対する陽イオン−依存性、未変性−PAGEでの移動度、活性に必要とされる至適pH等といった様々な生化学的特性の側面において、これまでに報告されていた、アポトーシスのプロセスでDNAを消化するエンドヌクレアーゼと異なることを示唆するものである。また、エンドヌクレアーゼが、U937細胞系が分化した際に生産および分泌されるという事実は、そのエンドヌクレアーゼが、免疫反応において外来性DNAを認識して好適なサイズへと消化することができる、非常に重要な生物学的機能を有することを確証するものである。本発明のエンドヌクレアーゼの機能は、細菌DNAが細胞内に取り込まれるとマクロファージが活性化されるという Staceyの報告、および単核細胞/マクロファージによって媒介される細胞毒性がヌクレアーゼによって引き起こされ得るというHigashiの報告を裏付けるものである(Stacey, K. J. ら (1986) J. Immunol. 157, 2116-2122;および Higashi, N. ら (1993) Cell. Immunol. 150, 333-342)。
【0029】
実施例2:
ヌクレオソーム間DNA断片化を誘導する、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼの同定
アポトーシスは、クロマチン凝縮、膜小疱形成、またはエンドヌクレアーゼ活性による様々なヌクレオソームサイズとしてのクロマチン断片化などといった「細胞死」の特定のタイプとして定義される(Wyllie, A. H. ら (1984) J. Pathol. 142, 67-77;Wyllie, A. H. (1980) Nature 284, 555-556;および Kerr, J. F. R. ら (1972) Cancer. 26, 239-257)。エンドヌクレアーゼ活性化は、アポトーシスのプロセスの重大な原因を担っている(Arends, M. J., およびWyllie, A. H. (1990) J. Pathol. 136, 593-608)。多くの研究者が、ヌクレオソーム断片化に関わる様々な酵素があることを示した。ヌクレオソーム間DNA断片化に関わる酵素の例としては、DNアーゼI(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)、DNアーゼII(Torriglia A., (1995) J. Biol. Chem. 270, 28579-28585;ならびに Barry M. A., および Eastman A. (1993) Arch. Biochem. Biophys. 300, 440-450)およびNUC−18(Wawabata, H. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)が挙げられる。また、様々なタイプの組織および細胞内のヌクレオソーム間DNAは、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling, W. H. ら (1984) J. Biol. Chem. 259, 5893-5898;Pandey S. ら (1997) Biochemistry 36, 711-720;ならびに Ribeiro J. M. および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)またはMg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Anzai N. ら (1995) Blood 86, 917-923;Kawabata, H. ら (1993) Biochem. Biophys. Res. Comun. 191, 247-254;Sun X. M. および Cohen G. M. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14857-14860;ならびに Wawabata, H., Anzai, N. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)によって断片化され得ることを提唱する多くの報告がある。しかしながら、多くのエンドヌクレアーゼの各々が、異なる複合的な細胞システムに関与していること、あるいは、細胞死があらゆるタイプの細胞で活発に起こった場合に、クロマチン断片化のために働くなんらかの未知酵素が存在することは、未だ立証されていない。従って、アポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼを特徴付けし、そしてその機構を明らかにすることが必要とされている。
【0030】
ヒトBリンパ芽球IM9細胞系によるエンドヌクレアーゼ酵素の生合成、およびDNA−未変性−PAGEによる当該エンドヌクレアーゼの単離を、前記実施例1に例証した。単離されたエンドヌクレアーゼ酵素は、未変性−PAGEでの電気泳動の移動度、触媒のために必要とされる至適pHおよび酵素活性への二価陽イオン依存性の側面において、これまでに知られているエンドヌクレアーゼのいずれのものとも判別されることが今回見出された。
【0031】
また、本発明者らにより、前記実施例によって調製された細胞溶媒溶液および細胞溶解物中に存在するエンドヌクレアーゼと同一と考えられる酵素の活性が、細胞核に検出され、その酵素はアポトーシスのプロセスの間は核に沈着することも見出された。このようなエンドヌクレアーゼが、核におけるヌクレオソームの断片化を誘導するという事実は、殺される標的とされる細胞が、このような作用によって排除されるという点において、防御作用として解釈され得る。アガロースゲル電気泳動によって、IM9細胞系がCHXによって処理されると、DNAのオリゴヌクレオソーム断片が生産されることが立証された。かかる断片の産生は、アポトーシスに際した生化学的現象のアペックスとして知られている。加えて、典型的なDNAの断片化が、IM9細胞系から単離された核をMg2+の存在下に反応させた場合に見出された。自己消化によるDNA断片化は、Mg2+−依存性かつCa2+−非依存性であることが同定された。核に存在するエンドヌクレアーゼ酵素の活性は、DNA−未変性−PAGEアッセイシステムによっても観察された。その酵素に対する至適pHは、6.5と7.5の間であった。これらの結果は、前記実施例1にて記載したIM9細胞系によって合成および分泌されたエンドヌクレアーゼが、IM9細胞系の核に存在する酵素と同じであることを立証するものである。そのエンドヌクレアーゼは、様々な組織および細胞に存在すると多くの研究者によって報告された、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼに密接に関連すると推定される(Anzai N. ら (1995) Blood 86, 917-923;Kawabata, H. ら (1993) Biochem. Biophys. Res. Comun. 191, 247-254;Sun X. M. および Cohen G. M. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14857-14860;ならびに Wawabata, H., Anzai, N. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)。しかしながら、これまでに公表されたアポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼについての報告のいずれも、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼが、タンパク質バンドまたは酵素活性バンドとして同定されたことは教示していない。
【0032】
カルシウム依存性、未変性−PAGEでの移動距離および至適pHの側面において、本発明者らによって同定されたエンドヌクレアーゼは、例えば、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling, W. H. ら (1984) J. Biol. Chem. 259, 5893-5898;Pandey S. ら (1997) Biochemistry 36, 711-720;ならびに Ribeiro J. M. および Carson D. A. (1993) Biochemistry 32, 9129-9136)、DNアーゼI(Peitsch M. C. ら (1993) EMBO J. 12, 371-377)、DNアーゼII(Torriglia A., ら (1995) J. Biol. Chem. 270, 28579-28585;ならびに Barry M. A., および Eastman A. (1993) Arch. Biochem. Biophys. 300, 440-450)およびNUC−18(Kawabata, H. ら (1997) Biochem. Biophys. Res. Comun. 233, 133-138)などといった、これまでに報告されたDNAのヌクレオソーム間断片化に関与する酵素と異なっている。本発明のエンドヌクレアーゼは、アポトーシスのプロセス中に細胞核内に観察されるので、そのエンドヌクレアーゼはアポトーシスのプロセスにおいて重要な役割を果たすものと考えられる。
【0033】
2−1 アポトーシスの誘導
ヒトB−リンパ芽球(IM9)細胞を培養し、次いでその細胞を、10 ug/ml CHX(Sigma)で処理し、その後それらを24時間培養することによって、アポトーシスを誘導した(Chow, S. C. ら (1995) Exp. Cell. Res. 216, 149-159)。CHXによって誘導されたアポトーシス細胞の形状の変化は、遠心分離スライド上でライト−ギムザ(Sigma)によって染色することによって同定した。
【0034】
図15Aには、IM9細胞のCHX(10 /ml)での24時間の処理によって、ヌクレオソーム間DNA消化の特徴的な形態としてのDNA断片が提供されることが示されている。24時間後にCHXの効果が呈され、そしてさらに24時間後に大量のDNA断片が形成された。アポトーシスによって起こされる、細胞死の際の細胞形状を観察するべく、細胞をライト−ギムザ染料で染色した。その結果を図15Cに示す。多くのアポトーシス細胞がCHX処理によって産生され、そして歪曲、染色体凝集および核断片化によって特徴付けられる細胞形状が、正常に成長している細胞のものと異なっていた。
【0035】
2−2 CHXで処理されたIM9細胞のエンドヌクレアーゼによるDNA断片化の同定
IM9細胞系は、5 x 105細胞/ml にまで培養し、そして 10 ug/mlのCHX(Sigma)で処理した。24時間培養を行ないながら、定期的な間隔で1 x 106 細胞を集め、その後 Blin および Stafford(Blin, N., および Stafford, D. W. (1976) Nucleic Acid Res. 3, 2303-2308)の変法に従ってDNAを抽出した。1 x 106 細胞をPBSで2回洗浄し、そしてTE緩衝溶液中に再懸濁した。1 mlのDNA抽出緩衝溶液(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、10 mM EDTA、100 mM NaCl、0.2% SDSおよび100 ug/ml プロテイナーゼK)を添加した後、反応混合液を50℃にて8時間反応させ、そしてタンパク質を除去するべくフェノール/クロロホルムで2回処理した。0.3 M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)を添加した後、反応混合液を冷エタノールで沈殿させた。沈殿をTE(10 mM Tris−HCl、pH 7.6、10 mM EDTA)緩衝溶液に再溶解して、RNアーゼ(リボヌクレアーゼ)Aで処理した。次いで、1.8%アガロースゲルにて電気泳動を行なった。電気泳動ゲルは、0.5 ug/ml エチジウムブロミドを含有する溶液中に 30分間入れ、そしてUV下に撮影した。
【0036】
CHXで処理したIM9細胞を定期的な間隔で集め、そして細胞溶解物および核を調製した。細胞溶解物および核を可溶化した後、DNA−未変性−PAGEヌクレアーゼ活性のゲルアッセイを実施して、核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を同定した。図16Aには、IM9細胞を24時間培養すると、エンドヌクレアーゼの酵素活性が、その期間中にわたって絶えず細胞溶解物中に検出されたことが示されている。しかしながら、CHXで処理された細胞溶解物中の酵素活性は、6から12時間に減少し(図16B)、一方核内の酵素活性は蓄積された(図16C)。
【0037】
2−3 細胞核の単離および自己溶解
1 x 107 細胞を冷PBSで3回洗浄し、そして 50 ml Tris-HCl、pH 8.0、0.5 mM MgCl2および 0.9 M スクロースを含む 0.5 mlの冷緩衝溶液中に40℃にて20分間可溶化し、細胞の核を単離した。調製された細胞溶解物を、0.5 mlの1.2 M スクロース溶液中に入れ、そして800 gにて 40分間遠心分離した。この結果得られた沈殿を20 mM Tris-HCl、pH 7.0の緩衝溶液中に懸濁して、核を得た。
【0038】
単離された核の自己溶解を、Mg2+およびCa2+の濃度を変化させることによって、37℃にて定期的な間隔で行なった。10 mM Tris−HCl、pH 7.5、100 ml NaCl、1 mM EDTA、1% SDS プロテイナーゼKを含む、0.5 mlのDNA抽出緩衝溶液を添加することによって、反応を停止した。混合液は、50℃にて30分間反応させ、タンパク質を除去するべくフェノール/クロロホルムで2回処理した。0.3 M 酢酸ナトリウム、pH 5.2を添加した後、混合液を冷エタノールで沈殿させた。沈殿をTE緩衝溶液に溶解した後、その溶液をRNアーゼAで処理した。次いで、1.8%アガロースゲルにて電気泳動を行なった。電気泳動ゲルは、0.5 /ml エチジウムブロミドを含有する溶液中に入れ、そしてUV下に撮影した。
【0039】
単離された細胞核の自己溶解法を使用することによって、IM9細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を定量して、DNA断片がMg2+濃度に依存して生産される現象を観察した。しかしながら、同じ実験条件下にMg2+をCa2+に置き換えたところ、このようなDNA断片は観察されなかった。Ca2+およびMg2+の双方の存在下では、Mg2+のみが存在する場合と同じタイプのDNA断片が生産された。その結果から、Mg2+の濃度に依存して、DNAがエンドヌクレアーゼによって消化されることが示唆される。1 mM Zn2+および5 mM EDTAの存在下では、DNA断片は核内に生産されなかった(図14B)。DNA断片化は、Mg2+(10 mM)およびCa2+(10 mM)の一定濃度で、0〜4 時間行なった。その結果、Mg2+のみの存在下で反応が開始された後30分で、DNA断片が生産され、そして60から240分に、DNA断片は蓄積された(図14C)。しかし、Ca2+の存在下では、DNA断片の形成は4時間にわたって観察されることがなかった(図14D)。これらの結果は、IM9細胞の核に活性を有して存在するエンドヌクレアーゼがDNA断片を形成するには、Mg2+が必要とされることを示唆するものである。
【0040】
2−4 細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの部分精製および特徴付け
細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼを、核を可溶化し、そして前記実施例1−4に記載したようにエンドヌクレアーゼ活性を呈するタンパク質バンドを溶出させることによって部分精製した。酵素活性は、基質として高次構造コイルプラスミドDNAを使用することによって測定し、そして二価陽イオン依存性を、前記実施例1−4に従って観察した。また、アポトーシス阻害物質であるZnCl2、およびキレート剤であるEDTAの処理による、酵素活性の変化も観察した。
【0041】
酵素は、DNA−未変性−PAGEによって同定されたIM9細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性を特徴付けするべく、未変性−PAGEによって単離および溶出した。観察によって、そのエンドヌクレアーゼがMg2+−依存性であることが明らかになった(図17)。そのエンドヌクレアーゼ活性は、アポトーシス阻害物質であるZn2+、およびキレート剤であるEDTAによって完全に阻害された。その結果は、高次構造コイルプラスミドDNAを直鎖状DNAへと変換するのに、Mg2+が必要とされることを示唆するもので、これは図8に示された結果に一致するものである。
【0042】
実施例3
免疫細胞中の外来DNAに対するエンドヌクレアーゼの作用および反応生成物の特徴付け
細菌のDNAが、哺乳動物のDNA中には存在しない種々の構造を決定する因子を含む外来因子としてこれまでのところ認識されており、そしてこのような因子が免疫細胞の作用に関係することは、公知である(Gilkeson,G.S.ら(1995)J.Glin.Invest.95,1398−1402;Gilkeson,G.S.ら(1991)Clin.Immunol.Immunopathol.59,288−300;Messina,J.P.ら(1993)Cell.Immunol.147,148−157;Kreig,A.M.ら(1995)Nature、374、546−549;およびHalperm,M.D.ら(1996)Cell.Immunol.、167,72−78)。細菌のDNAとの哺乳動物のDNAの差異の1つは、哺乳動物のDNAが、多量のCpG制限を受け、そしてCpGジヌクレオチドのシトシンに対して選択的にメチル化されることである(Bird,A.P.(1995)Trends Genet.11、94−100;Razin,A.,およびFriedman,J.(1981)Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.25,33−52;ならびにHan,J.ら(1994)Antisense Res.Dev.4,53−65)。最近の報告は、細菌のDNA中に存在するCpGモチーフが、IgMの分泌を促進するようにポリクローナルB細胞を活性化することを示し(Kreig,A.M.ら(1995)Nature、374、546−549;Liang,H.ら(1996)J.Clin.Invest.98,1119−1129;およびYi,A.−K.ら(1996)J.Immunol.156、558−564)、そして細胞周期が、抗IgM抗体によって停止させられ、そして細菌性のCpGモチーフがB細胞のc−mycの発現を阻害するが、一方、アポトーシスからの細胞の保護のために、myn、blc、およびbcl−X1 mRNAの発現を増大させることを示唆する(Y.A.K.ら(1996)J.Immunol.157、4918−4925)。Halpenは、CpGモチーフが、IL−6およびIL−12の短期間での分泌を促進するようにB細胞を直接活性化することを報告した(Halpem,M.D.ら(1996)Cell Immunol.167,72−78;Yi.A.−K.ら(1996)J.Immunol.157、5394−5402;およびKlinman,D.M.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93、2879−2883)。Birdは、CpGモチーフが、NK細胞に対してCD4+からIFN−γを誘導するように弱く作用することを示した(Bird,A.P.(1995)Trends Genet,11、94−100;ald Yamamoto,S.ら(1992)Microbiol.Immunol.36、983−997)。従って、CpG DNAによる免疫細胞の活性化は、IL−6による体液性の免疫を増大させ、そしてIFN−γの分泌による細胞性免疫を増大させる。細菌のDNAがマクロファージによって消化され、そして次いでマクロファージがTNF−α、IL−1β、およびプラスミノーゲン活性化因子インヒビター−2 mRNAを産生するように活性化されることが知られている(Stacey,K.J.ら(1996)J.Immunol.157、2116−2122)。
【0043】
3−1 エンドヌクレアーゼによる細菌のDNAのプロセシング
IM9細胞の培養溶液を、エンドヌクレアーゼの酵素活性の特異性、および最終反応生成物の特性を分析するために、酵素供給源として使用した。IM9細胞を、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で、5%のCO2インキュベーター中で37℃にて48時間培養し、そして次いで、培養溶液を、酵素供給源として使用した。36時間のFBSを含有しない培地中で細胞を培養することによって得た培養溶液を、DNaseIを含まないIN9細胞によって分泌されたエンドヌクレアーゼのみを含む酵素供給源として使用した。
【0044】
酵素の基質として使用したプラスミド(pGEM−Tベクター、3.0Kb)を、アルカリ溶解法(Birboim,H.C.,およびDoly,J.(1979)Nucleic Acids Res.7、1513−1523)によってE.coliを破壊させ、続いてフェノール/クロロホルムで2回抽出し、そしてエタノールで沈殿させることによって得た。E.coliのゲノムDNAおよびIM9細胞のDNAを、BlimおよびStaffordの改変された方法によって抽出した。細胞を、PBSで2回洗浄し、そしてTE緩衝溶液に浮かべた。DNA抽出緩衝溶液(10mMのTris−HCl、pH7.6、10mMのEDTA、50mMのNaCl、0.2%のSDS,20μg/mlのRNase A)を添加し、そして溶液を、37℃にて10分間放置した。プロテイナーゼKを100μg/mlまで添加し、そして混合溶液を50℃にて8時間反応させた。反応溶液を、タンパク質を除去するためにフェノール/クロロホルムで3回抽出し、そしてエタノール沈殿反応を、ゲノムDNAに対して行った。サケの精子DNAをもまた抽出し、そして上記のように使用した。DNA中に存在するLPSの量を、Limulus変形細胞溶解物アッセイ(Sullivan,J.D.ら(1976)、Mechanisms in Bacterial Toxicity,A.W.Bernheimer編、Wiley,New York、217頁)によって測定し、そして2.5ng/mlまたはそれ未満であった。
【0045】
10%のFBSを含有する培地上で培養されたIM9細胞中とFBSを含有しない培地上で培養されたIM9細胞中との酵素活性を比較するために、100ngのプラスミドDNAを、20μlの各培養物と混合し、そして37℃にて一定の間隔で反応させた。細胞培養物を使用することによるエンドヌクレアーゼの酵素活性のアッセイにおいては、FBSを含有しない培地上での細胞培養物を、FBS中に存在するDNaseIの影響を排除するために使用した。また、E.coli、IM9細胞、およびサケの精子の、100ngの各ゲノムDNAを、上記のような同じ条件下で反応させ、そして従って、酵素活性を、1%のアガロースゲル電気泳動において決定した。
【0046】
10%のFBSを含有するRPMI 1640培地およびIM9細胞培養物を、インビトロでの細菌のDNAの消化の程度を観察するために、細菌のDNAと直接反応させた。図18Aは、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中のプラスミドDNAの消化の程度を示す。図1Dに示す結果とは異なり、この結果は、DNaseIが培地中に存在するにもかかわらず、弱い酵素活性が検出されることを示した。このことは、培地が、DNaseI活性に対して影響を与え得るイオンまたはインヒビターを含むことを示す。しかし、プラスミドDNAは、FBSを含有しない細胞培養溶液または10%のFBSを含有する細胞培養溶液によって消化された(図18Bおよび18C)。このことは、プラスミドDNAが、IM9細胞株によって分泌されたエンドヌクレアーゼによって消化されたことを示す。図18Bと図18Cとの比較は、10%のFBSを含有する細胞培養溶液中での酵素活性がより高いことを示す。細胞培養が、2×105細胞/mlで開始された場合には、FBSの存在下での細胞の増殖が活性に生じ、そして大量のエンドヌクレアーゼが分泌された。図19は、E.coli、IM9細胞のDNA、およびサケの精子のDNAの全てが、エンドヌクレアーゼによって消化されたことを示す。
【0047】
3.2 細胞中への細菌のDNAの取りこみおよびDNA塩基配列の分析
IM9細胞株を、加熱した10%のFBSを含有するRPMI 1640培地とIM9細胞培養溶液(48時間培養した)との1:1で混合した培地上で培養した。細菌のDNA(25μg/ml)を、培養溶液に添加した。IM9細胞株を1×106細胞/mlの細胞密度で培養しながら、細胞を一定の間隔で回収し、そして細胞中に取りこまれたDNAを抽出するために使用した。
【0048】
IM9細胞株を細菌のDNAで処理した後、細胞を一定の間隔で回収し、そしてPBSで3回洗浄した。細胞を、冷却した溶解緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.5、1mMのEDTA、150mMのNaCl、1mMのPMSF、および0.5%のNP−40)中に再懸濁し、細胞溶解物を、上記の実施例1−2に記載した方法によって得た。同じ容量のDNA抽出緩衝液を細胞溶解物に添加し、そして42℃にて3時間放置し、そして次いで、タンパク質を除去するためにフェノール/クロロホルムで2回処理した。次いで、細胞溶解物中に存在するDNAを、エタノール沈殿によって抽出した。沈殿物を、TE緩衝液中に溶解させ、そしてRNaseAで処理し、そしてサザンブロッティングのサンプルに使用した。
【0049】
細胞溶解物から抽出したDNAを、1.8%のアガロースゲル上での電気移動によって分離し、そしてサザン転移を行った。電気泳動後、アガロースゲルを、およそ200mlのアルカリ溶液(1.5MのNaClおよび0.5MのNaOH)中で20分間振盪させ、滅菌水で洗浄し、そしておよそ200mlの中和溶液(1.5MのNaCl、0.5MのTris−HCl、pH 7.5)中に20分間放置した。続いて、アガロースゲルを、新しい中和溶液中で振盪した。175.3gのNaCl、88.2gのクエン酸ナトリウム溶液、および2mlの0.5MのEDTAを滅菌水に添加して、1lの溶液を作成し、そして得られた溶液を、SSC溶液を得るために121℃でオートクレーブした。容器1の底が容器B中に含まれる容器の表面に配置され得るように、1つの長方形の容器Aを、20×SSCを含有する別の容器B上に逆向きに置いた。20×SSCで飽和させた2mmの幅のWhatman No.3ペーパーを、両方の20×SSCがくっつき得るように、気泡を含まずに容器Aの底に置いた。アガロースゲルをペーパー上に逆向きにお気、そしてHybond+ナイロンメンブレンを、気泡が生じることを防ぐためにアガロースゲル上に置いた。アガロースゲルよりも小さい3枚のWhatman No.3ペーパーを、それぞれを2mmで4面に置き、気泡を含まないようにHybond+ナイロンメンブレン上に置いた。次いで、ペーパータオルを、10から20cmまでの高さになるように、積み上げ、そして約500gの錘を置いた。ゲルの底の周辺は、パラフィルムで囲み、そして毛細管転移を、8時間行った。DNAが載っているメンブレンを、120,000μl/cmのUV照射に2分間曝して、UVによって架橋した。
【0050】
細菌のDNAを、37℃にて30分間、エンドヌクレアーゼと反応させ、そして得られた100から200bpの生成物を、1%のアガロースゲル上で電気泳動した。Gene Clean Kit(Promega Inc.)を使用して、DNAをゲルから回収し、そしてDNAプローブとして使用した。50から100ngのDNAを100℃の水中で3分間加熱し、そしてすぐに氷上で冷却して、DNAフラグメントに分離させ、次いで、32Pで標識した。DNA標識反応を、ランダムプライム法に従って行った。ここでは、10ngのランダムプライマー、4μgの緩衝溶液(50mMのTris−HCl、pH 8.0、5mMのMgCl2、2mMのDTT、0.5mMのHEPES、pH6.6)、25μMのdATP、25μMのdGTP、25μMのdTTP、60μCi[α−32P]dCTP、および5μlのKlenow酵素から構成される20μlの混合物を、37℃にて2時間反応させた。2μlの0.5MのEDTAを反応混合物に添加して反応を停止させ、そして次いで、同じ容量の3Mの酢酸ナトリウム、pH5.2および20μgのサケの精子のDNAを添加した。2倍の容量のエタノールを反応混合物に添加して、所望のDNAを沈殿させた。沈殿物をTE寛容液中に溶解させ、100℃に加熱し、そして氷上で迅速に冷却した。
【0051】
UV架橋したHybond+ナイロンメンブレンを、68℃に予め暖めた予備ハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、5×Denhardt’s溶液、0.05%のピロリン酸ナトリウム、0.5%のSDS、および100μg/mlのサケの精子のDNA)に添加し、そして68℃にて少なくとも1時間振盪した。標識したプローブ(ランダムプライミング法によって調製し、そして氷上で冷却した)を添加して、約12時間ハイブリダイズさせた。フィルターを、洗浄溶液I(2×SSC、0.1%のSDS)に移し、そして約10分間室温で洗浄した。次いで、フィルターを、68℃に予め暖めた洗浄溶液Iに移し、そして約25分間洗浄した。続いて、フィルターを洗浄溶液II(0.2×SSC、0.1%のSDS)に移し、そしてGeigerカウンターによってフィルター上の放射活性を測定しながら洗浄した。フィルターを、増感紙およびX線フィルムを取りつけたカセットに挿入した。−70℃で12から24時間後、フィルターを現像した。
【0052】
細菌のDNAまたはプラスミドDNAを、細胞培養の間に添加し、そして37℃にて1時間インキュベートした。細胞溶解物中に存在するDNAフラグメントを、1.8%のアガロースゲル上で電気泳動した。次いで、サザン転移による50−200bpの部位のゲルを、Gene Clean Kit(Promega Inc.)を使用して回収した。DNAフラグメントを、塩基配列を同定するために、図21に示すようにpGEM−Tベクター(Promega Inc.)中に導入した。得られたベクターを、E.coli中にクローン化し、そしてサンガージデオキシリボヌクレオチド鎖終結方法(Sanger,F.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74、5463−5467)に従って、SEQUENASE(登録商標)バージョン2.0 DNA配列決定キット(USB)によって分析した。以下の表1に記載するMB正方向/逆方向プライマーを、配列決定のためのプライマーとして使用した。クローン化したDNA配列を、BLAST(Basic Local Alinment Search Tools)プログラムによって、細菌のDNAフラグメントまたはプラスミドDNAフラグメントとして確認した。
【0053】
【表1】
【0054】
試験結果は、25μg/mlの細菌のDNAをIM9細胞とともにインキュベートした場合に、DNAは細胞培養物中で適切にプロセシングされ、そして細胞中に取りこまれることを示す。このことを、サザンハイブリダイゼーションによって確認した(図20)。100−200bpのDNAの存在が、細胞培養の30分後に見出された。細胞中の100−200bpのDNAの量は、培養時間の経過に伴って減少した。これらの結果は、適切にプロセシングされたDNAがIM9細胞株中に取りこまれ、そしてプロセシングが細胞中で継続されることを示唆する。
【0055】
エンドヌクレアーゼの酵素活性によって得られた生成物の特性を同定するために、細胞中に取りこまれた細菌のDNAを単離し、そしてそのDNA配列を、図21に示すように分析した。表2に示すように、エンドヌクレアーゼの反応生成物は、特徴的な塩基配列(すなわち、5’末端に2つのプリン塩基を有し、そして3’末端に2つのピリミジン塩基を有するCpGモチーフ)を有した。CpGモチーフが免疫システムにおいてB細胞またはマクロファージを活性化し、そしてシトシンおよびIgMの分泌を促進し、そして高い頻度で細菌のDNA中に存在することは、公知である。従って、エンドヌクレアーゼがIM9細胞培養溶液中に存在し、そして細胞中の酵素活性によるDNAのプロセシングがCpGモチーフ(これは、免疫細胞を活性化するように機能する)を生成することが、ここで見出された。
【0056】
【表2】
【0057】
3.3 細胞中に取りこまれたDNAのプロセシングの確認
どのようにして細胞中に取りこまれた50−200bpのクローン化されたDNAフラグメントが細胞内でさらにプロセシングされるか、およびDNAフラグメントの塩基配列が細胞に対してどのような影響を与えるか確認するために、PCR増幅を行った。PCR反応溶液は、0.2mMのdNTP、10pmolのプライマー、10mMのTris−HCl、pH8.3、50mMのKCl、1.5mMのMgCl2、および2.5ユニットのTaqポリメラーゼを含んだ。5’−CTCCCGGCCGCCATG−3’および5’−TTGGGAGCTCTCC−3’(表I)を合成し、そしてPCRプライマーとして使用した。PCR反応を、以下の条件下で35回繰り返した:変性(94℃で30秒間);プライマーのアニーリング(42℃で30秒間);プライマーの伸張(72℃で50秒間)。PCR生成物を、8%の未変性のPAGE上でTBE緩衝溶液中で泳動し、そしてエチジウムブロマイドで染色した。続いて、DNAを、PCR反応生成物のゲルから分離した。分離したDNAをエタノールで沈殿させ、そして細胞培養物についてはPBS中に溶解させるか、またはエンドヌクレアーゼの活性の検出のためにはTE緩衝液中に溶解させた。
【0058】
最終生成物の形態が、100−200bpの細菌のDNAをクローニングしているベクター(これは、エンドヌクレアーゼの活性によって切断された)中のPCR増幅によって得られた生成物が細胞に導入された後に存在することを確認するために、EC1、EC2、およびHC1のDNAフラグメントを、ランダムプライマーおよびKlenow酵素を使用するランダムプライミング方法によって32Pで標識した。32Pで標識した100ng/mlのDNAフラグメントが、IG9細胞株、U937細胞株、およびTPAで処理したU937細胞株中に取りこまれた。DNAが細胞に取りこまれたかどうかを、一定の間隔で確認した。エンドヌクレアーゼを、0.2mMのZnSO4(Sigma)で処理して、その酵素活性を停止させた。細胞中に取りこまれたDNAを細胞溶解物中で回収し、そしてTBE緩衝溶液中で20%の未変性のPAGE上で泳動させた。ゲルを乾燥させ、そして細胞内およびエンドヌクレアーゼ反応によって得られた最終生成物中のDNAのプロセシングを確認するためにオートラジオグラフした。
【0059】
32Pで標識したEC1のDNAフラグメントは、IM9細胞株中に取りこまれた。細胞中に取りこまれたDNAを細胞溶解物から抽出し、そして20%の未変性のPAGEを行った。32Pで標識されたプロセシングされたDNAをゲルから抽出し、そしてそれらの互いの塩基配列を比較するために、種々の合成したオリゴヌクレオチドとアニーリングさせた。予め決定した量の、32Pで標識した抽出したDNAおよび10ngの各オリゴヌクレオチドを、6×SSCと混合した。混合物を、100℃の温度で5分間沸騰させ、そして30秒間で1℃で温度を下げてアニーリングさせた。アニーリングさせた反応物を、20%の未変性のPAGE上で4℃にて泳動し、そして反応物についてのオートラジオグラフィーを行った。このようにして、細胞中に取りこまれたDNAに相補的に結合したオリゴヌクレオチドを確認した。標準として、アニーリングしていないDNAおよびオリゴヌクレオチドとの混合物、および変性させそして細胞中に取りこまれたDNAのみとアニーリングさせたDNAを使用した。合成したオリゴヌクレオチドの塩基配列は、オリゴAおよびB(これらは、EC1のDNAフラグメント中に存在する)、ならびにオリゴC、D、およびE(これらは、EC1のDNA中には存在しない)を使用した。
【0060】
外部のDNAがヒトのB−リンパ芽球IM9細胞株、U937細胞株、およびTPAでの処理によって分化させられたU937細胞株中に取りこまれること、ならびに細胞中でプロセシングされることが確認された。試験の結果として、プロセシングされた生成物を、PCR増幅した32Pで標識した細菌のDNAフラグメントとして同定した。IM9細胞株中での外部のDNAの取りこみおよびプロセシングを、図22に示すように確認した。157bp(EC1)のDNAフラグメントは、4℃では細胞中には取り込まれなかったが、細胞膜に結合した。37℃の温度では、DNAフラグメントは、培養時間の経過に伴って細胞中でプロセシングされた。24時間以内に、約10bpのDNAフラグメントが、20%の未変性のPAGEにおいて最終産物として生じた。続く試験においては、10bpのDNAフラグメントを、一本鎖のDNA構造として同定した。DNAフラグメントをまた、20%の未変性のPAGE(8.3Mの尿素)上で一本鎖のDNA構造として同定した。図23は、U937細胞株、およびTPAでの処理によって分化させられたU937細胞株中で観察された外部のDNAの取りこみ、ならびに細胞中でのプロセシングを示す。しかし、図23Bは、TPAでの処理によって分化させられたU937細胞株によるDNAの取りこみおよび細胞中でのプロセシングを示す。図23Bに示すように、細胞中でのDNAのプロセシングは、0.2mMのZn2+によって阻害された。
【0061】
試験結果は、免疫細胞が外部のDNAをプロセシングすることによって、10塩基の最終生成物を生じることを実証する。DNAフラグメントの塩基配列の特性をもまた確認した。PCRによって増幅したEC1のDNA産物を32Pで標識し、そして細胞中に取りこませた後、細胞性のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされた10塩基のDNAフラグメントを、オリゴヌクレオチドと相補的に結合した塩基配列を同定するために、EC1の部分的な配列と一致するいくつかのタイプの合資のオリゴヌクレオチドとアニーリングさせた(図24)。アニーリングの結果として、オリゴヌクレオチド(そのほとんどが、塩基配列と相補的に結合した)は、表1のオリゴAの配列(すなわち、AACGTTモチーフを有し、そしてEC1のDNA中に存在する塩基配列)であった。上記の結果から、細胞中のエンドヌクレアーゼの酵素的活性によって免疫細胞を活性化する細菌のDNAの塩基配列として公知のCpGモチーフが産生されたことを、明らかに確認した。
【0062】
3−4 細菌のDNAによるIM9細胞株のIgM分泌の確認
B細胞を活性化することによって、サイトカインおよびIgMを分泌することが公知のCpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドを合成した。エンドヌクレアーゼの作用によって産生されたDNAフラグメントの中でも、EC1中に存在するオリゴA、およびEC2に存在するオリゴB、およびCpGモチーフを有さないオリゴEを合成した(表1)。いくつかのCpGモチーフを含有するEC1またはEC2のPCR生成物、およびいくつかのタイプのDNAをもまた、この実験において使用した。CpGモチーフをメチル化するために、細菌のDNAをエンドヌクレアーゼによって消化し、それによって100−200bpを有するフラグメントを得た。メチル化を、30μgのDNAを、CpGメチラーゼおよび160μMのS−アデノシルメチオニンを含有する緩衝溶液(10mMのTris−HCl、pH7.9、10mMのMgCl2、50mMのNaCl、および1mMのDTT)と混合し、そして37℃にて3時間反応させることによって行った。CpGメチル化を、HpaIIで消化することによって確認した。
【0063】
IM9細胞株、ヒトBリンパ芽球細胞株を、10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で、培養の開始時点で2×105の細胞数で培養した。培養物をいくつかのタイプの予め調製した25μg/mlのオリゴヌクレオチドおよびDNAで処理し、そして24時間培養した後、細胞培養物を得た。
【0064】
0.1Mの炭水化物緩衝溶液(pH9.6)中の抗−ヒト−μ−鎖特異的IgM(5μg/ml、Sigma)を、100μl/ウェルで平底プレート中に取りこみ、そして次いで、プレートを4℃にて16時間放置した。プレートをPBSで3回洗浄し、そして室温で2時間放置した。続いて、プレートを、TPBS(PBS中の0.05%のTween−20)で3回洗浄した。100μg/ウェルで、ざっと希釈した細胞培養物または精製したヒトIgM(Sigma)を導入した。室温で2時間放置した後、これをTPBSで3回洗浄した。1%のBSAを含有するPBS中で1/40,000中に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させ抗ヒトIgを導入し、そして室温にて1時間放置し、そして次いで、TPBSで3回洗浄した。続いてプレートを、0.05Mのリン酸緩衝溶液(pH5.0)中で30分間、O−フェニレンジアミンジヒドロクロライドで処理した。プレートを、0.67NのH2SO4で処理して反応を停止させ、そしてIgMをマイクロリーダーを使用して定量した。
【0065】
IM9細胞株を合成のオリゴヌクレオチドと反応させた後の48時間に分泌されたIgMの量を測定しながら、CpGモチーフを有するオリゴAおよびオリゴにおいては、IgMの2−3ng/mlが分泌されたが、CpGモチーフを有さないオリゴEにおいては、0.5ng/mlのIgMが合成されたことを確認した(図25)。さらに、2−3ng/mlのIgMがまた、細菌のDNAおよびいくつかのCpGモチーフを有する細菌のDNAのPCR生成物(表1、EC1、EC2のDNA)中で分泌されたことを観察した。しかし、細菌のDNAのIgMのCpGモチーフがメチル化されそして細胞株の培養物中で処理される場合は、これは分泌されなかった(図25)。細菌のDNAと比較して、IgMの分泌は、サケの精子のDNAによっては増大させられなかった。上記の結果から、細菌のDNAのCpGモチーフは、IM9細胞株を活性化することによってIgMの分泌を増大させることを確認した。そしてこのことは、上記のいく人かの研究者らによって合成されたCpGモチーフを使用することによって証明された研究の結果と一致した。
【0066】
3−5 外来DNAのプロセシングに関与するエンドヌクレアーゼの酵素活性の特性
PCRによって増幅したEC1、EC2、およびHC1のDNAを、ランダムプライマーおよびKlenow酵素を使用する32Pランダムプライミング方法で標識した。より短いDNAを得るために、EC2のDNAをAlu 1(Promega Inc.)で消化し、そしてその5’末端が32Pで標識されたフラグメントを、基質として使用した。エンドヌクレアーゼの酵素活性の特性を同定するために、EC1のDNAを5’−末端または3’−末端標識し、そして利用した。5’−末端標識を、10ngのEC1のDNA、[γ−32P]ATP 50μCi、キナーゼ緩衝溶液、および5ユニットのポリヌクレオチドキナーゼ(Promega Inc.)を混合し、そして37℃にて1時間反応させることによって行った。3’−末端標識を、10ngのEC1のDNA、[α−32P]CTP 50μCi、TdT緩衝溶液、および5ユニットの末端デオキシトランスフェラーゼ(Boehringer Mannheim)を混合すること、および37℃にて1時間反応させることによって行い、そして利用した。
【0067】
上記のように調製した5ngのEC1、EC2、およびHC1のDNAを、ランダムプライミング方法によって標識し、Alu Iで消化し、そして5’−標識したそしてEC2のDNAを、IM9細胞培養物(これは、FBSを含まず、そして一定の時間の間隔で反応させた)と混合した。酵素活性をまた、細胞培養物の量を増大させることによって測定した。反応混合物を、フェノール/クロロホルムで処理してタンパク質を除去し、冷却したエタノールで沈殿させ、そして20%の未変性のPAGEおよび20%の変性させたPAGE(8.3Mの尿素)を用いてTBE緩衝溶液中で電気泳動した。ゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフした。反応生成物を酵素活性について分析した。FBS中のDNaseIの酵素活性を比較するために、10%のFBSを含有する10mlのRPMI 1640培地をもまた、いくつかの基質と反応させた。さらに、エンドヌクレアーゼのインヒビターであるZn2+(1mM)およびキレート剤であるEDTA(10Mm)が与える影響が、酵素活性を有することを確認した。この時に、ブロモフェノールブルー(BPB)およびキシレンシアノ−ル(XC)を、分子量の標準として使用した。変性させたPAGEにおいては、BPBは、8塩基で配置され、そしてXCは28塩基であった。未変性のPAGEにおいては、BPBおよびXCは、それぞれ、12bpおよび45bpであった。
【0068】
エンドヌクレアーゼの酵素活性の特性、およびに得られる生成物の特性を同定するために、表2に列挙したEC1、EC2、およびHC1のDNAをランダムプライミング方法によって32Pで標識し、そして基質として利用した。FBSを含有しない培地中で培養したIM9細胞株とのこれらの基質の反応が、図26、27、および28に示すような、およそ10塩基を有するDNA反応生成物を生じることを、確認した。この結果は、エンドヌクレアーゼがDNAの塩基配列を特異的に認識するのではないことを示す。塩基の配列にはかかわらず、エンドヌクレアーゼは外来のDNAに対して作用し、それによっておよそ10塩基を有するDNAフラグメントを生じる。酵素活性が、エンドヌクレアーゼのインヒビターであるZn2+およびキレート剤であるEDTAによって阻害されることもまた、確認した(図26、27、28、および29)。インビトロでの実験によって、得られる生成物が、エンドヌクレアーゼの作用によって細胞中に取りこまれたDNAをプロセシングすることによって産生される反応産物と一致することを確認した。エンドヌクレアーゼの酵素活性の反応によって得られる生成物が、およそ10塩基を有するDNAフラグメントからなることを確認した。エンドヌクレアーゼの量を増大させ(図30)、そして反応時間を24時間まで維持した場合でもなお、およそ10塩基を有するDNAフラグメント(すなわち、酵素反応によって形成される反応によって得られる生成物)はさらには消化されなかった。言い換えれば、本発明によって証明されたエンドヌクレアーゼは、およそ10より短い塩基を有するDNAフラグメントに対しては活性を全く発揮しない。
【0069】
図32は、いくつかのDNAフラグメントを示す。すなわち、PCRによって増幅されたEC2のDNA生成物がAluIで消化されそしてDNAフラグメントが生じる前に形成されたエンドヌクレアーゼ反応生成物を、最終生成物を生じるようにエンドヌクレアーゼと反応させた。この実験において使用した基質を、AluIと反応させたDNAの5’−末端中で32Pで標識した。標識した酵素の反応によって得られた生成物は、およそ10塩基を有するDNAフラグメントであった。この事実から、一本鎖のDNAを産生する5’−エンドヌクレアーゼの酵素活性は存在しないことを確認した。
【0070】
IM9細胞株のエンドヌクレアーゼが、3’−エキソヌクレアーゼまたは5’−エキソヌクレアーゼ活性を有するかどうかを確認するために、5’−末端または3’−末端で32Pで標識したEC2のDNAを基質として使用し、そして37℃にて1時間、エンドヌクレアーゼと反応させた。反応によって得られる生成物を、上記に記載したものと同じ方法によってオートラジオグラフによって比較した。エンドヌクレアーゼの酵素活性が一本鎖のDNA中に出現するかどうかを確認するために、標識したDNAを100℃にて5分間沸騰させ、氷上で冷却し、そして上記のようにエンドヌクレアーゼと反応させた。
【0071】
図33は、およそ10塩基を有するDNAフラグメントが、5’−末端(5’−末端標識、レーン2)中で標識した基質に対するエンドヌクレアーゼの作用によって形成されることを示す。結果は、図32に示すものと同じである。すなわち、5’−エキソヌクレアーゼ活性はエンドヌクレアーゼ中には存在しなかった。しかし、およし10塩基を有するDNAフラグメント(すなわち、酵素反応によって得られた生成物)は、3’−末端中で32Pで標識した基質においては形成されなかった。32Pで標識した基質を100℃で10分間沸騰させ、氷上で冷却させて一本鎖のDNAに転換させ、そして次いでエンドヌクレアーゼと反応させた後、およそ10塩基を有する標識されたDNAフラグメントが、5’−末端および3’−末端の両方において標識されたDNA基質において酵素反応生成物として形成された。試験結果に基づくと、3’−エキソヌクレアーゼ活性は、一本鎖に対しては作用しない。
【0072】
細胞培養物中に存在するエンドヌクレアーゼの酵素活性によって産生される反応によって得られる生成物を、細胞中でのプロセシングによって産生される生成物およびDNaseIの作用によって産生される反応の最終生成物と比較するために、5ユニットのウシすい臓のDNaseI(Boehringer Mannheim)およびランダムプライミング方法によって32Pで標識したEC1のDNAを、10mMのTris−HCl、pH7.6、10mMのMgCl2緩衝得溶液中で、37℃にて1時間反応させた。反応物を、20%の未変性のPAGEおよび20%の変性させたPAGE(8.3Mの尿素)上で泳動し、オートラジオグラフし、そしてエンドヌクレアーゼの酵素反応によって得られた生成物と比較した。また、エンドヌクレアーゼ活性の得られる生成物が一本鎖で存在することを確認するために、これをS1ヌクレアーゼで処理した。S1ヌクレアーゼの酵素活性を、S1ヌクレアーゼ反応緩衝溶液(7×緩衝溶液、0.3Mの酢酸カリウム、pH4.6、2.5MのNaCl、10mMのZnSO4、50%のグリセロール)中に含まれる3ユニットのS1ヌクレアーゼと、ランダムプライミング方法によって32Pで標識した基質に対する作用によるエンドヌクレアーゼの反応によって得られる生成物とを混合すること、そして37℃にて1時間、混合物を反応させることによってによって確認した。反応物を、上記と同じ方法によってオートラジオグラフによって確認した。
【0073】
エンドヌクレアーゼの酵素活性によって生じる得られる生成物と、DNaseIの作用によって生じる反応生成物との比較によって、図34に示すように、細胞培養物のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされたDNA反応生成物(レーン2)および細胞性のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされたDNA反応生成物(レーン3)は全て、およそ10塩基を有するDNAフラグメントである。しかし、DNaseIの作用によると(レーン4)、DNAフラグメントは、10塩基未満にまで分解された。フラグメントは、続いて、モノヌクレオチドにまで分解された。エンドヌクレアーゼ反応によって得られる生成物が一本鎖の形態で存在するかどうかを確認するために、生成物をS1ヌクレアーゼで処理し、そして酵素反応生成物を観察した。およそ10塩基を有する反応生成物(すなわち、エンドヌクレアーゼの生成物)をS1ヌクレアーゼと再び反応させた場合は、図35に示すように、完全にモノヌクレオチドにまで分解された。このことは、エンドヌクレアーゼの酵素活性によって産生されたおよそ10塩基を有するDNAフラグメントが、一本鎖の形態で存在することを提供する明らかな証拠である。
【0074】
実施例4
IM9細胞株から分泌されたエンドヌクレアーゼの精製および同定
IM9細胞株が合成され、そしてMg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(これは、これまでに既知であるヌクレアーゼとは異なる)を分泌することが、ここで見出された。エンドヌクレアーゼがIM9細胞株の核内に存在し、そしてアポトーシスのプロセスに関与することもまた、見出された。アポトーシスに関与するエンドヌクレアーゼとして、Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Anzai N.ら(1995)Blood 86、917−923;Kawabata H.ら(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.191,257−254;Sun X.M.,およびCohen G.M.(1994)J.Biol.Chem.269,14857−14860;ならびにKawabata,H.ら(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.233,133−138)、Ca2+/Mg2+−依存性エンドヌクレアーゼ(Stratling W.H.ら(1984)J.Biol.Chem.259,5893−5898;Pandey S.ら(1993)Biochemistry 32、9129−9136)、DNaseI(Peitech M.C.ら(1993)EMBO J.12,371−377)、NUC18(Kawabata,H.ら(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.233,133−138)などが挙げられる。しかし、上記の既知のエンドヌクレアーゼの精製、生化学的特徴、および生理学的な機能は、明らかには同定されていない。さらに、細菌のDNAを外来因子として認識し得、そしてそれらをプロセシングし得るエンドヌクレアーゼについての報告は全く存在しない。本発明によって、IG9細胞株によって合成されそして分泌されるエンドヌクレアーゼが精製され、そしてその特性が本明細書中で同定された。
【0075】
4−1 タンパク質の供給源およびエンドヌクレアーゼの酵素活性についてのアッセイ
エンドヌクレアーゼを分泌するIM9細胞株を、加熱した10%のFBSを含有するRPMI 1640培地中で大規模に培養し、そして得られた細胞培養物を、酵素の供給源として使用した。細胞培養物を1,500×gで5分間遠心分離した後、IM9細胞株を廃棄し、そして細胞培養溶液を回収した。10lの細胞培養溶液を、14,000×gで30分間、4℃にて遠心分離し,そして得られた上清を酵素の供給源として使用した。
【0076】
エンドヌクレアーゼの精製の間に、酵素活性を、基質として使用したスーパーコイルプラスミドDNAからの直鎖上のDNAの形成および消化の程度として測定した。100ngのプラスミドDNAを、10mMのMgCl2を含有する20mMのTris−HCl、pH7.0緩衝溶液に添加し、そして混合物を、37℃にて10分間のタンパク質の精製の間に得られた20μlのサンプルと反応させた。酵素反応を、DNAサンプル緩衝液を用いて停止させ、そして酵素活性を、1%のアガロースゲル上での電気泳動によってアッセイした。
【0077】
4.2 エンドヌクレアーゼの精製
細胞培養溶液を、NH4SO4をゆっくりと添加することによって80%の濃度まで飽和させ、そして次いで14,000×gで遠心分離した。得られる沈殿物を、20mMの酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH5.2)中で一晩透析した。酵素溶液の5mlのアリコートを、5mlの同じ緩衝溶液で予め平衡化したMono−Sカラム(0,5×5.0cm、Pharmacia LKB)上にロードした。タンパク質を、同じ緩衝溶液中の0−0.08MのNaCl(15ml)の直線状の濃度勾配によって最初に溶出し、そして次いで、0.08MのNaClを含有する15mlの同じ緩衝溶液を通過させた。続いて、タンパク質を、0.08−0.2MのNaCl(20ml)の直線状の濃度勾配を用いて再度溶出した。各画分の容量は1mlであり、そして流速は0.5ml/分であった。上記の手順を繰り返し、そしてエンドヌクレアーゼを含有する画分をプールし、そしてCentriconを使用して濃縮し、そして次いで、1.5Mの(NH4)2SO4を含有する50mMのリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.0)で平衡化した。この酵素供給源を、RESOURCE PHEカラム(0.64×30mm、1ml、Pharmacia LKB)上にロードし、そして疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。カラムを15μlの同じ緩衝溶液で洗浄し、そしてタンパク質を、1.5−0Mの(NH4)2SO4(25ml)の直線状の勾配を用いて溶出した。酵素活性を有する画分をCentricon中で濃縮し、そして20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)を用いて平衡化した。
【0078】
IM9細胞培養溶液を硫酸アンモニウム上で濃縮し、そして精製のために使用した。硫酸アンモニウム上でのディファレンシャルな沈殿を、濃度の差異に依存して行ったが、酵素の単離に対する有意な影響はなかった。従って、培養溶液を80%まで濃縮し、そしてタンパク質を精製のために沈殿させた。Mono Sカラム上を通過させたサンプル中の酵素活性を、0.08−0.2MのNaClの直線状の濃度勾配によって回収した(図36)。陽イオン交換樹脂上で活性を示す画分をプールし、そして疎水性相互作用クロマトグラフィー中においてRESOURCE PHEカラム上を通過させた。タンパク質を、1.5−0Mの(NH4)2SO4の直線状の濃度勾配を用いて溶出した場合は、エンドヌクレアーゼの活性は、上記の勾配の中で、0.7Mの(NH4)2SO4勾配から得られたタンパク質画分中で検出された(図37)。10μgのエンドヌクレアーゼを、およそ10gのタンパク質を含有する10lのIM9細胞培養溶液から精製した。
【0079】
4−3 未変性の有孔性の勾配PAGEおよびSDS−PAGEによる分子量の決定
陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー上で酵素活性を示す画分をプールし、そしてCentricon中で濃縮した。濃縮した溶液を、アクリルアミド勾配ゲルの4−15%の直線状の勾配上にロードし、そして電気泳動を、4℃にて18時間、4−5mAで行った。次いで、ゲルを、タンパク質バンドを検出するためにクマシーブリリアントブルーR−250で染色した。タンパク質バンドのゲルの部分を切り出して、染色の前に小さい断片を作成し、そして20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)を用いて4℃にて8時間溶出した。溶出したタンパク質画分の中の酵素活性を、スーパーコイルプラスミドDNAを基質として使用して検出した。酵素活性画分を濃縮し、そしてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。スタッキングゲルおよび泳動ゲルの濃度は、それぞれ、4%および7%であった。未変性の有孔性の勾配PAGE中の標準タンパク質は、フェリチン(440kD)、カタラーゼ(232kD)、ラクテートデヒドロゲナーゼ(140kD)、およびウシ血清アルブミン(87kD)の混合物であった。SDS−PAGEにおける標準タンパク質は、ミオシン(200kD)、β−ガラクトシダーゼ(116.3kD)、ホスホリラーゼB(97.4kD)、ウシ血清アルブミン(66.2kD)、およびオボアルブミン(45kD)の混合物であった。
【0080】
MonoSカラム上で溶出した酵素活性画分を濃縮し、そして4−15%の未変性の有孔性の勾配ゲル電気泳動を、酵素活性を示すタンパク質バンドを検出するために行った(図40)。酵素活性を示すタンパク質バンドは、明確な単一のバンドは示さず、そして標準タンパク質と比較して140kDの周辺に広がった。酵素活性を示すタンパク質バンドを溶出した。濃縮後、電気泳動を、SDS−PAG上で行った(図41)。精製したタンパク質バンドは、クロマトグラフィーによって精製したエンドヌクレアーゼト同じ部位で示され、そしてタンパク質の分子量を、およそ72.4kDと決定した(図39)。未変性の有孔性の勾配ゲル電気泳動とSDS−PAGEとの結果の比較は、エンドヌクレアーゼがホモダイマーの形態で酵素活性を示すことを明らかにした。
【0081】
4−4 精製した酵素の特徴付け
4時間の間全くエンドヌクレアーゼ酵素活性が検出されなかったU937細胞から核を単離し、基質として使用した。酵素活性の特異性を、1mMのCa2+、1mMのMg2+、およびEDTAを、単離した核を含有する20mMのTris−HCl緩衝溶液(pH7.0)に添加すること、そして37℃で10分間反応させることによって確認した。
【0082】
U937細胞株から単離した核を基質として使用した場合には、精製した酵素の活性は、Mg2+の存在下で示され、そしてアポトーシスのインヒビターであるZn2+およびキレート剤であるEDTAによって完全に阻害された(図42)。特徴的な酵素活性は、上記の酵素活性のものと一致した。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のエンドヌクレアーゼは、外来の細菌のDNAを分解し、そして細胞中にDNAフラグメントを取りこむことが可能である。細胞中に取りこまれたDNAは、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを生成するように、細胞内のエンドヌクレアーゼによってプロセシングされ、そして次いで免疫細胞が、抗体の分泌を促進するようにCpGモチーフによって活性化される。従って、本発明のエンドヌクレアーゼは、薬学的な免疫アジュバントとして産業的に価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1には、DNA−未変性−PAGEによって分析された、本発明のIM9細胞のエンドヌクレアーゼ活性を示す。IM9細胞溶解物(A)、培地(B)および無血清にて培養された培地(C)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、ゲル内システムで検出した。ウシDNアーゼI(レーン)および培養培地エンドヌクレアーゼ活性(レーン2)を比較した(D)。
【図2】図2には、DNA−未変性−PAGEによって分析された、DNアーゼI(A)およびIM9培養培地(B)のエンドヌクレアーゼ活性を示す。
【図3】図3には、抗−ウシDNアーゼI抗体による、エンドヌクレアーゼ活性の免疫沈降を示す。免疫沈降(IP)後の上清におけるエンドヌクレアーゼ活性を、「材料および方法」に記載したとおりDNA−未変性−PAGEによって、示した抗血清処理について評価した。A,10%FBS培地およびヒト血清;B,IM9細胞培養培地。
【図4】図4には、アクチノマイシンDでのIM9細胞の前処理と、エンドヌクレアーゼの分泌を示す。本発明の細胞溶解物(A)および培養培地(B)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、前処理後に、示した培養期間分析した。
【図5】図5には、本発明の免疫細胞系におけるエンドヌクレアーゼ活性の比較分析を示す。各細胞系の溶解物(A)および培養培地(B)におけるエンドヌクレアーゼ活性を、DNA−未変性−PAGEによって分析した。レーン1,10% FBS含有培地;レーン2,IM9;レーン3,RPMI1788;レーン4,Molt-4;レーン5,Jurkat;レーン6,U937。
【図6】図6には、IFN−γまたはIFN−1βで処理された、本発明のIM9細胞培養培地および細胞溶解物の、DNA−未変性−PAGEによって分析されたエンドヌクレアーゼ活性を示す。IM9細胞は、10 単位/mlのIFN−γまたはIFN−1βで、示した培養時間処理された。対照,10% FBSを含有するRPM 16-40培地で12時間の、IM9培養培地。
【図7】図7には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する至適pHを示す。
【図8】図8には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する二価陽イオン要求性を示す。A,酵素は、20 mM Tris-HCl,pH 7.0 中、示した濃度のCa2+および/またはMg2+の存在下または非存在下に10分間、37にて、100 ngのプラスミドDNAと反応させられた、B,酵素活性は、10 mMのMg2+の存在下に180分間、許容した。
【図9】図9には、TPA、LPS、およびCHXで処理されたU937細胞の成長曲線を示す。U937細胞は、TPA(10 ng/ml)、LPS(1 ng/ml)、およびCHX(10 /ml)で、示した時間処理した。細胞数および生存度は、培養時間中に血球計数器で、トリパンブルー除去によって評価した。
【図10】図10には、U937細胞におけるエンドヌクレアーゼの、DNA−未変性−PAGEによって分析されたTPA濃度依存性の合成および分泌を示す。細胞溶解物(A)および培養培地(B)は、示したTPA濃度にて24時間インキュベートすることにより調製した。
【図11】図11には、TPAで処理されたU937細胞溶解物および培養培地の、ゲル内システムによって分析されたエンドヌクレアーゼ活性を示す。U937細胞は、示した培養時間、10 ng/ml TPAで処理した。
【図12】図12には、LPSで処理されたU937細胞溶解物および培養培地のエンドヌクレアーゼ活性を示す。細胞溶解物(A)および培地(B)におけるエンドヌクレアーゼは、DNA−未変性−PAGEにより、1 ng/mlのLPS処理後、示した培養時間に分析した。
【図13】図13には、刺激因子で処理されたU937細胞のエンドヌクレアーゼ活性を示す(レーン1,10% FBSを含有するRPMI1640 培地にて48時間のU937細胞培養物;レーン2,48時間TPA(10 ng/ml)処理;レーン3,24時間LPS(1 ng/ml)処理;およびレーン4,12時間CHX(10 /ml)処理)。
【図14】図14には、自己消化法による、IM9細胞から単離された核におけるエンドヌクレアーゼ活性を示す(A,示した濃度のCa2+および/またはMg2+の存在下または単独で37℃にて2時間、核をインキュベートした;B,ヌクレオソーム間DNA断片化の阻害;CおよびD,10 mM Mg2+(C)または10 mM Ca2+(D)の存在下に37℃にて示したとおり0〜240分間、核をインキュベートした;ならびにマーカー、1 kb ラダー)。
【図15】図15には、CHX処理によるIM9細胞のアポトーシス細胞死を示す(A,CHX(10 /ml)で処理されたIM9細胞からのDNAの1.8%アガロースゲル電気泳動;未処理(B)およびCHXで処理された(C)IM9細胞を24時間培養して遠心分離調製物をライト−ギムザで染色した)。
【図16】図16には、本発明の、DNA−未変性−PAGEによって分析されたIM9細胞溶解物および核のエンドヌクレアーゼ活性を示す。エンドヌクレアーゼ活性は、示した時間、10 ug/ml CHXで処理されたIM9細胞溶解物にて培養時間中(A)、細胞溶解物(B)および核(C)で検出した。
【図17】図17には、本発明のエンドヌクレアーゼ活性に対する二価陽イオンの要求性を示す。エンドヌクレアーゼは核から単離し、そして酵素活性は、反応産物を1%アガロースゲルで解析することにより定量した。
【図18】図18には、本発明のエンドヌクレアーゼによる、プラスミドDNAの分解の時間経過を示す。10% FBSを含有するRPMI培地(A)、無血清のIM9細胞培養培地(B)および10% FBSを含有するIM9細胞培養物(C)のエンドヌクレアーゼ活性は、反応産物を1%アガロースゲルで解析することにより評価した。
【図19】図19には、E. coli DNA、IM9細胞DNA、およびサケ精子DNAでの、本発明のエンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図20】図20には、IM9細胞内に取り込まれた外来性DNAのサザンブロット分析を示す。エンドヌクレアーゼ反応産物の100〜200塩基対の断片を、プローブとして使用した。ブロットは、ランダム−プライミング法によって調製されたプローブで、55℃にて6時間ハイブリダイズさせた。
【図21】図21には、本発明のエンドヌクレアーゼ反応によって得られるDNA断片のクローニングおよび配列決定のための構築スキームを示す。
【図22】図22には、本発明のIM9細胞における細菌DNAのプロセシングによって生産されたDNA断片を示す。
【図23】図23には、本発明のU937細胞における細菌DNAのプロセシングによって生産されたDNA断片を示す(A,10% FBSを含有するRPMI1640 培地にて48時間のU937細胞培養後のラベルされたDNAの取り込み;およびB,TPA(10 ng/ml)12時間処理後のラベルされたDNAの取り込み)。
【図24】図24には、本発明のエンドヌクレアーゼ反応産物配列の検出を示す。エンドヌクレアーゼ反応産物は、「材料および方法」に記載のとおり合成オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた。
【図25】図25には、細菌DNAまたはオリゴヌクレオチドにおけるCpGモチーフによるIgM分泌の誘導を示す。IM9細胞は、オリゴヌクレオチド(25 /ml)または E. coli DNA(25 /ml)で、24時間刺激した。
【図26】図26には、本発明の基質としてEC1 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図27】図27には、本発明の基質としてEC2 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図28】図28には、本発明の基質としてHC1 PCR産物を使用した、エンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図29】図29には、Zn2+およびEDTAによるエンドヌクレアーゼ活性の阻害を示す。
【図30】図30には、本発明に従い、示されたIM9細胞培養培地量を用いて反応させた、EC1 PCR産物からのエンドヌクレアーゼ反応の産物を示す。
【図31】図31には、本発明に従い、示された時間、EC1 PCR産物と反応させた、エンドヌクレアーゼからの産物を示す。
【図32】図32には、EC2 PCR産物(157 bp)を、AluIによって切断された短いDNA断片と比較する、エンドヌクレアーゼ活性を示す(レーン1,32PでラベルされたPCR産物;レーン2,レーン1のエンドヌクレアーゼ消化産物;レーン3,32Pでラベルされた、AluIで切断された短いDNA断片;レーン4,レーン3の30分反応物;レーン5,レーン3の1時間反応物;レーン6,レーン3の2時間反応物)。
【図33】図33には、エンドヌクレアーゼが分泌されたIM9細胞における3'-エキソヌクレアーゼ活性の同定を示す(レーン1,ラベルされたPCR産物;レーン2,ラベルされた二本鎖DNAでのエンドヌクレアーゼ反応の産物;レーン3,ラベルされた一本鎖DNAでのエンドヌクレアーゼ反応の産物)。
【図34】図34には、エンドヌクレアーゼ反応産物と、DNアーゼI反応産物を用いたIM9細胞によるプロセシング産物との間の比較を示す(レーン1,ラベルされたPCR産物;レーン2,IM9細胞培養培地の反応産物;レーン3,IM9細胞におけるプロセシング産物;レーン4,DNアーゼI反応産物;パネルA,TBE緩衝液における、20%未変性−PAGE;パネルB,TBE緩衝液における、変性−尿素(8.3 M)−PAGE)。
【図35】図35には、S1ヌクレアーゼ反応によるエンドヌクレアーゼ反応に由来する一本鎖断片の同定を示す(A,TBE緩衝液における、20%未変性−PAGE;B,TBE緩衝液における、20% 変性−尿素(8.3 M)−PAGE)。
【図36】図36には、Mono S HR5/5イオン交換クロマトグラフィーによる、IM9細胞培養培地のクロマトグラフィー分画を示す(A,IM9培養培地のイオン交換プロファイル;B,1%アガロースゲルにて反応産物を解析することにより、示された保持時間に酵素活性を定量した)。
【図37】図37には、RESOURCE PHE 疎水性相互作用クロマトグラフィーによるエンドヌクレアーゼの精製を示す(A,イオン交換クロマトグラフィーから得られた活性画分の疎水性相互作用プロファイル;B,1%アガロースゲルにて反応産物を解析することにより、ピーク画分にて酵素活性を定量した)。
【図38】図38には、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製されたエンドヌクレアーゼのSDS−PAGEを示す。
【図39】図39には、精製されたエンドヌクレアーゼの、SDS−PAGEによる分子量定量を示す(マーカータンパク質は、ミオシン(200 kD)、β−ガラクトシダーゼ(116.3 kD)、ホスホリラーゼB(97.4 kD)、ウシ血清アルブミン(62.2 kD)およびオボアルブミン(45 kD))。
【図40】図40には、活性を含む、Mono Sクロマトグラフィー画分の未変性−ポア勾配ゲル電気泳動(4〜15%)(B)およびアガロースゲル電気泳動(A)でパネルBのゲルバンドから溶出されたタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性を示す。
【図41】図41には、イオン交換クロマトグラフィーによる精製エンドヌクレアーゼのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および活性バンドの未変性勾配PAGEゲル溶出を示す。
【図42】図42には、単離されたU937細胞中の、精製されたエンドヌクレアーゼ活性に対する陽イオンの効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトBリンパ芽球IM9細胞株からなる免疫細胞から分泌され、そして外来因子として細菌のDNAを認識し、そしてそれを免疫応答に関与するCpGモチーフを含む約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを生じるようにプロセシングする酵素活性を備えている、エンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項2】
12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセテートで処理したU937細胞株からなる免疫細胞から分泌され、そして外来因子として細菌のDNAを認識し、そしてそれを免疫応答に関与するCpGモチーフを含む約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを生じるようにプロセシングする酵素活性を備えている、エンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項3】
SDS−PAGEによって72.4kDの分子量を有する、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項4】
Mg2+−依存性の酵素活性を示す、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項5】
6.6から7.6の最適なpHを有する、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項6】
未変性のPAGEによる酵素活性の移動度の距離が、DNaseIのものとは明らかに異なる、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項7】
ヒトのB−リンパ芽球IM9細胞株またはTPAで処理した骨髄性U937細胞株を、エンドヌクレアーゼを産生するための適切な培地上で培養する工程、および細胞溶解物または該培養培地から該エンドヌクレアーゼを単離する工程を包含する、請求項1または請求項2に記載のエンドヌクレアーゼを産生するための、プロセス。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のエンドヌクレアーゼ酵素による細菌のDNAの処理によって産生されるCpGモチーフを有する、約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを含有する、免疫アジュバント。
【請求項1】
ヒトBリンパ芽球IM9細胞株からなる免疫細胞から分泌され、そして外来因子として細菌のDNAを認識し、そしてそれを免疫応答に関与するCpGモチーフを含む約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを生じるようにプロセシングする酵素活性を備えている、エンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項2】
12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセテートで処理したU937細胞株からなる免疫細胞から分泌され、そして外来因子として細菌のDNAを認識し、そしてそれを免疫応答に関与するCpGモチーフを含む約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを生じるようにプロセシングする酵素活性を備えている、エンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項3】
SDS−PAGEによって72.4kDの分子量を有する、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項4】
Mg2+−依存性の酵素活性を示す、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項5】
6.6から7.6の最適なpHを有する、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項6】
未変性のPAGEによる酵素活性の移動度の距離が、DNaseIのものとは明らかに異なる、請求項1または2に記載のエンドヌクレアーゼ酵素。
【請求項7】
ヒトのB−リンパ芽球IM9細胞株またはTPAで処理した骨髄性U937細胞株を、エンドヌクレアーゼを産生するための適切な培地上で培養する工程、および細胞溶解物または該培養培地から該エンドヌクレアーゼを単離する工程を包含する、請求項1または請求項2に記載のエンドヌクレアーゼを産生するための、プロセス。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のエンドヌクレアーゼ酵素による細菌のDNAの処理によって産生されるCpGモチーフを有する、約10bpの一本鎖のオリゴヌクレオチドを含有する、免疫アジュバント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2009−60909(P2009−60909A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244255(P2008−244255)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2000−550977(P2000−550977)の分割
【原出願日】平成10年5月30日(1998.5.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1997年12月31日 「免疫細胞の新たなエンドニュークレアゼ(Endonuclease)に対する生物科学的特性と機能の研究」に文書をもって発表
【出願人】(508156502)シージェイ第一製糖株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2000−550977(P2000−550977)の分割
【原出願日】平成10年5月30日(1998.5.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1997年12月31日 「免疫細胞の新たなエンドニュークレアゼ(Endonuclease)に対する生物科学的特性と機能の研究」に文書をもって発表
【出願人】(508156502)シージェイ第一製糖株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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