説明

免疫調節性組成物およびその使用方法

本発明は免疫調節組成物を開示する。特に、本発明は、宿主免疫細胞応答の刺激および延長に有用な、免疫調節性物質およびレクチン相互作用物質を含む組成物を開示する。本発明の組成物は、病原性感染症、自己免疫疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、炎症性疾患、ならびに癌および腫瘍を含む一連の状態の治療および/または予防に特に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は免疫調節性組成物全般に関する。特に、本発明は、宿主免疫細胞応答の刺激および延長に有用な免疫調節物質およびレクチン相互作用物質を含む組成物を目的とする。本発明の組成物は、病原性感染症、自己免疫疾患、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、炎症性疾患、ならびに癌および腫瘍を含む一連の状態の治療および/または予防に特に有用である。
【0002】
本明細書において本発明者が引用する一部の刊行物の参考資料の詳細は説明の末尾に記載する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある理論によると、免疫応答またはホメオスタシスの生理学的低下の多くは生存シグナルの消失から生じるリンパ球のプログラムされた死に起因する。抗原が除去されると、抗原によって活性化されたリンパ球のクローンは本質的な生存刺激を失い、その結果、アポトーシスにより死滅する。リンパ球機能の生存刺激は主として抗アポトーシスタンパク質の発現によって誘導される。
【0004】
動物レクチンの例には、ガレクチン(Rabinovich et al., 2002, Trends Immunol. 23: 313-320; Rabinovich et al., J Leuk Biol 2002, 71: 741-752において総説)またはLGAS1(レクチン、ガラクトシド結合、可溶性、Blaser C. et al., Euro. J Immunol, 1998, 28: 2311-2319)が含まれる。ガレクチンはガラクトシド結合タンパク質のファミリーであり、強力な免疫調節活性を持つ(Rabinovich et al., J Leuk Biol., 2002, 71: 741-752において総説)。特に、ガラクチン-1はT細胞応答の負の調節物質であり、T細胞のアポトーシスを誘導する(Perillo, NL et al., Nature, 1995, 378 (6558): 736-739)。ガレクチン-1は活性化されたT細胞によっても分泌され、それによって抗原に誘導されるT細胞の増殖を阻害するT細胞活性化の自己調節物質として機能する(Blaser, C et al.、前記の通り)。
【0005】
本発明に至る研究において、本発明者は驚くべきことに、ラクツロースが特定の抗原に対する免疫応答の発生および延長の有効性を著しく向上させることを発見した。いずれかの一つの特定の理論または作用モードに拘束されることを希望するものではないが、これらの驚くべき結果は、少なくとも一部は、レクチンとの結合に関してT細胞表面の糖タンパク質レセプターと競合し、それによってレクチンに誘導される糖タンパク質レセプターのT細胞表面での集塊を阻害し、T細胞活性化の阻害を阻止または減弱するラクツロースのようなレクチン相互作用物質の能力に基づくと考えらる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
一つの局面において、本発明は標的抗原に対する免疫応答を調節するための組成物を提供する。一般に、これらの組成物は、レクチン相互作用物質、ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞から選択される免疫調節物質を含む。
【0007】
標的抗原は典型的には関心対象の疾患または状態と関連する。いくつかの態様において、標的抗原はレクチンを適切に発現する病原性生物体または癌によって産生される。これらの態様において、組成物は標的抗原に対する免疫応答の刺激またはその他の方法での増強のために特に有用である。
【0008】
その他の態様において、標的抗原は、例えば、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫病、炎症性疾患および自己免疫疾患を含む好ましくない免疫応答と関連する。これらの態様において、組成物は、標的抗原に対するアネルギー反応の誘導、および標的抗原に対する将来的または既存の免疫応答の抑制を含む免疫寛容原性反応を誘導するために特に有用である。
【0009】
標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原は可溶型であり得る(例えば、ペプチドもしくはポリペプチド、またはこれらの内の任意の一方が発現可能である構築物)。または、抗原は粒子もしくは細胞(例えば、ウイルス、細菌または全体細胞)であり得て、または抗原提示細胞によって発現され得る。(例えば、プロフェッショナルまたは通性抗原提示細胞)。
【0010】
一部の態様において、抗原提示細胞は免疫応答を刺激する。その他の態様において、それは免疫寛容原性反応を誘導する。さらにその他の態様において、抗原提示細胞は免疫応答を必要として(例えば、腫瘍細胞)、任意で抗原提示機能を増強するために修飾された細胞である。このタイプのいくつかの態様において、この細胞は一時的にII型インターフェロン(IFN)および任意で少なくとも一つのI型IFNが存在する条件下、ならびに細胞の抗原提示機能を増強するために十分な条件下で細胞を培養して、IFNを除去するために細胞を洗浄することによって修飾される。このタイプのその他の態様において、細胞はII型IFNおよびI型IFNから選択される一つまたは複数のIFNが発現可能である細胞に構築物を導入することによって修飾される。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、レシピエントに対して主要および/またはマイナー組織適合性抗原を共有する同種抗原提示細胞または細胞株である(本明細書においては「一般的(generic)」な抗原提示細胞または細胞株とも記載される)。
【0011】
レクチン相互作用抗原と協調して用いることのできる例示的な抗原特異的免疫エフェクター細胞には、細胞溶解性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球を含む抗原特異的Tリンパ球、T制御細胞ならびにBリンパ球が含まれる。
【0012】
免疫調節物質が抗原結合分子である態様において、このような分子は典型的には標的抗原と結合またはその他の方法で相互作用して、その量または機能活性を抑制する。
【0013】
適切には、物質が結合するレクチンはガレクチンであり、特にガレクチン-1、ガレクチン-3、およびガレクチン-9から選択される。いくつかの態様において、レクチン相互作用物質は、ラクトース、ラクツロース、乳果オリゴ糖、メチルβ-ラクトシド、D-ガラクトース、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-マンノピラノシド、3-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-アラビノース、2'-O-メチルラクトース、ラクト-N-ビオース、N-アセチルラクトサミンおよびチオジガラクトピラノシドを非限定的な例として含む二糖類;ポリラクトサミンを含む分子のようなより大きな糖類、ならびにチオジガラクトシドおよびグリコポリマーのような合成阻害物質を含む炭水化物または炭水化物含有分子であるが、これらに限定されるものではない。好都合なことに、炭水化物または炭水化物含有分子は本組成物が投与される宿主体内では代謝不能である。一部の態様において、レクチン相互作用物質は、N-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-β-Dガラクトピラノイル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドから選択される。
【0014】
いくつかの態様において、組成物は、共刺激分子(例えば、B7-1、B7-2、B7-3、ICAM-1およびICAM-2)、サイトカイン(インターフェロン、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-10、および腫瘍壊死因子α(TNF-α))、および共阻害分子(例えば、OX-2、プログラム死-1リガンド(PD-1L))から選択される一つまたは複数の免疫調節分子をさらに含む。このような分子は可溶型として提供され得る。または、本発明の細胞の態様において、それらは細胞内で適切な発現構築物またはベクターから産生することもできる。
【0015】
本発明のもう一つの局面は対象における免疫応答を調節するための方法を提供する。これらの方法は、一般に、上記に広く記載されるような組成物を対象に投与する工程を含む。組成物の活性成分は、連続的に、別々に、または同時に投与してよい。一部の態様において、免疫応答はT細胞介在性の応答である。好都合なことに、これらの方法は対象における標的抗原の存在または異常発現に関連する疾患または状態の治療または予防に有用である。一部の態様において、この疾患または状態は標的抗原に対する免疫応答を刺激またはその他の方法で増強する組成物を用いることによって治療または阻止される。これらの態様において、組成物は、標的抗原の少なくとも一部に対応する可溶性抗原、または標的抗原に対する免疫応答を刺激する免疫刺激細胞(例えば、抗原提示細胞、または抗原で初回刺激したTリンパ球もしくはBリンパ球のような免疫エフェクター細胞)を含んでもよい。適切には、疾患または状態は病原性感染症、免疫不全を特徴とする疾患、または癌から選択される。
【0016】
その他の態様において、疾患または状態は標的抗原に対する免疫寛容原性応答を引き起こす組成物を用いることによって治療または阻止される。これらの態様において、この組成物は免疫寛容を誘導またはその他の方法で標的抗原に対する免疫応答を減弱させる免疫弱毒化細胞(例えば、抗原提示細胞またはT制御リンパ球)を含み得る。適切には、疾患または状態は移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫病、炎症性疾患および自己免疫疾患から選択される。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、標的抗原に対する免疫応答を調節するための医薬の製造における、上記に広く規定されるレクチン相互作用物質および免疫調節物質の使用を意図する。
【0018】
さらにもう一つの局面において、本発明は、標的抗原の存在または異常発現に伴う疾患または状態を治療または予防するための医薬の製造における、上記に広く規定されるレクチン相互作用物質および免疫調節物質の使用に属する。
【0019】
もう一つの局面において、本発明は上記に広く述べられるようなレクチン相互作用物質を特定するための方法を提供する。これらの方法は、一般に、(a)レクチン発現細胞または病原体の最初の試料の存在下において免疫エフェクター細胞集団の最初の試料を培養する工程;(b)レクチン発現細胞または病原体の二番目の試料およびレクチン相互作用活性を持つと思われる候補物質の存在下において集団の二番目の試料を培養する工程、および(c)最初および二番目の試料における免疫エフェクター細胞をそれぞれ定量して、それによって、最初の試料と比較した二番目の試料中の免疫エフェクター細胞の数の増加がその候補物質がレクチン相互作用物質であることを示す工程を含む。
【0020】
さらにもう一つの局面において、本発明は上記に広く述べられるようなレクチン相互作用物質の活性をアッセイするための方法を提供する。これらの方法は、一般に、(a)レクチン発現細胞または病原体の最初の試料の存在下において免疫エフェクター細胞集団の最初の試料を培養する工程;(b)レクチン発現細胞または病原体の二番目の試料およびレクチン相互作用物質の存在下において集団の二番目の試料を培養する工程、および(c)最初のおよび二番目の試料における免疫エフェクター細胞をそれぞれ定量する工程を含む。典型的には、最初の試料に比べて二回目の試料中の免疫エフェクター細胞数が多ければ多いほど、レクチン相互作用活性(例えば、親和性)が高いであろう。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞の集団は同種性または異種性であることが可能な白血球の集団から選択されて、その例示的な例には、全血、新鮮血、または末梢血単核細胞、全血のバフィーコート画分、濃縮赤血球、放射線照射血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞のようなその画分が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、レクチン発現細胞は腫瘍細胞(例えば、黒色腫細胞または乳癌細胞)である。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞は細胞溶解性Tリンパ球アッセイ法を用いて定量される。
【0021】
発明の詳細な説明
1.定義
別途定義される場合を除いて、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を持つ。本明細書に述べられるものと同等または相当する任意の方法および材料が本発明の実践または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料について記載する。本発明のために、次の用語は以下のように定義する。
【0022】
「一つ(a)」および「一つ(an)」の冠詞は、本明細書においては、一つまたは一つよりも多い(即ち、少なくとも一つの)のその冠詞の文法上の対象物を指すために用いられる。例として、「エレメント」は一つのエレメントまたは一つよりも多いエレメントを意味する。
【0023】
「約」という用語は、本明細書において、明記される条件に対して30%ほど、好ましくは20%ほど、より好ましくは10%ほど変化する条件(例えば、量、濃度、時間など)を示すために用いられる。
【0024】
「類似体」という用語は、参照分子または生物学的に活性なその断片に対して機能面で実質的にほぼ等しい分子を意味する。
【0025】
本明細書において用いられるように「アネルギー」という用語は、免疫系によるある特定の抗原または抗原グループに対する抑制された応答または無応答の状態を意味する。例えば、Tリンパ球およびBリンパ球が刺激の至適条件下においてそれらの特異抗原に対して応答できない場合、それらはアネルギーである。
【0026】
「抗原」は、脊椎動物、特に哺乳動物において免疫応答を引き起こすことのできるタンパク質、ペプチドまたはその他の分子もしくは高分子のすべてまたは一部である。このような抗原は、そのタンパク質、ペプチド、またはその他の分子もしくは高分子で免疫された動物に由来する抗体に対しても反応性である。
【0027】
「抗原結合分子」は、標的抗原に対する結合親和性を持つ分子を意味する。この用語は免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、および非グロブリンから派生した抗原結合活性を示すタンパク質フレームワークに拡大することが理解される。
【0028】
「自己由来」は、同一生物体から派生したもの(例えば、細胞、組織など)を意味する。
【0029】
本明細書において用いられるように「同種性」という用語は、異なる遺伝的構築物である細胞、組織、生物体などを意味する。
【0030】
「生物学的に活性な断片」は、断片が親ペプチドの活性を保持している完全長の親ペプチドの断片を意味する。本明細書において用いられるように、「生物学的に活性な断片」という用語には、親ポリペプチドの活性を含む、例えば少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するアミノ酸の欠失変異型および小さなペプチドが含まれる。このタイプのペプチドは、標準的な組換え核酸技術を応用することによって得ることもできれば、または簡便な液体もしくは固相合成技術を用いて合成することもできる。例えば、Nicholsonにより編集、Blackwell Scientific Publicationsにより出版された表題「Synthetic Vaccines」の刊行物に含まれるAthertonおよびShephardによる第9章「Peptide Synthesis」に述べられるように液体合成または固相合成に参照を付すこともできる。または、ペプチドは、endoLys-C、endoArg-C、endoGlu-Cおよびブドウ球菌V8プロテアーゼのようなプロテイナーゼを用いて本発明のポリペプチドを消化することによって生成することができる。消化された断片は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術によって精製できる。
【0031】
本明細書において用いられるように「細胞性組成物」、「細胞性ワクチン」または「細胞性免疫原」という用語は、活性成分として、不活化されていてもよい少なくとも一つの細胞集団を含む組成物を指す。
【0032】
本明細書において用いられるように、「シス作用性配列」もしくは「シス調節領域」という用語または同様の用語は、遺伝子配列の発現が少なくとも一部はヌクレオチドの配列によって調節される発現可能な遺伝子配列から派生するヌクレオチドの任意の配列を意味すると理解されるべきである。当業者は、シス調節領域は任意の構造的遺伝子配列の発現量ならびに/または細胞タイプ特異性および/もしくは発生特異性を活性化、サイレンシング、増強、抑制またはその他の方法で変化させることができ得ることを認識する。
【0033】
本明細書を通して、文脈からそうでないことが要求される場合を除いて、「含む(comprise)」「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という語は、記載された工程もしくはエレメントまたは工程もしくはエレメントの群を含むことを意味するが、任意のその他の工程もしくはエレメントまたは工程もしくはエレメントの群を除外することは意味しないことが理解される。
【0034】
「対応する(corresponds to)」または「対応する(corresponding to)」は、(a)参照ポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と実質的に同一または相補的であるヌクレオチド配列を持つ、または(b)ペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味する。この表現は、その範囲内において、参照ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を持つペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0035】
本明細書において用いられるように「培養(culturing)」、「培養(culture)」などは、細胞集団(または単一の細胞)がインビトロにおいてその細胞の成長または維持を支持することが示されている条件下においてインキュベートされる際にインビトロにおいて用いられる一連の操作を意味する。当業者は、培地、温度範囲、気体濃度などの多くの様式が培養系において定義されるべきことを認識する。これらのパラメータは、選択される様式および本明細書において開示される方法を実践する個人の具体的な必要に基づいて変化する。但し、培養パラメータの決定は、本来、定型的であることが認識される。
【0036】
免疫応答の調節または疾患もしくは状態の治療もしくは予防の状況において、「有効量」とは、単回投与または一連の投与の一部として、それらを必要とする個人に対する組成物の量が調節、治療または予防において有効である量の投与を意味する。有効量は、治療されるべき個人の健康および身体状態、治療されるべき個人の分類学的グループ、組成物の調製物、医学的状況の評価、およびその他の関連する要因に応じて変化する。その量は、定型の試験を通じて決定することのできる比較的広い範囲に収まることが期待される。
【0037】
「発現ベクター」とは、ベクターによってコードされるタンパク質の合成を目的とすることのできる任意の自律的遺伝的エレメントを意味する。このような発現ベクターは当業者に公知である。
【0038】
「遺伝子」という用語は、非常に幅広い文脈において、遺伝子に対応するゲノムDNA領域、および産物の機能性型をコードするように遺伝子操作されたエクソンまたは組換え分子に対応するcDNA配列の双方を含むために用いられる。
【0039】
「誘導体」とは、例えば、その他の化学的分子との抱合もしくは複合体形成、または当技術分野において理解されるような翻訳後修飾技術のような修飾によって基本配列から派生したポリペプチドを意味する。「誘導体」という用語には、その範囲内において、機能的に相当する分子を提供する付加または欠失を含む、親配列に対して行われた変更も含まれる。
【0040】
当技術分野において周知であるように免疫応答を増強すること(「免疫増強」)は、外来性または疾患特異的な抗原(例えば、癌抗原)に対する動物の応答能力を高めることを意味し、即ち、このような抗原を攻撃するように初回刺激された細胞は数、活性、ならびにこれらの抗原を検出および破壊する能力が高められる。免疫応答の強度は、以下を含む標準的な試験によって測定される: 当技術分野において公知である方法による末梢血リンパ球の直接的測定;ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性アッセイ法(例えば、Provinciali M. et al (1992, J. Immunol. Meth. 155: 19-24を参照)、細胞増殖アッセイ法(例えば、Vollenweider, I. And Groseurth, P. J. (1992, J. Immunol. Meth. 149: 133-135を参照)、免疫細胞およびサブセットのイムノアッセイ(例えば、Loeffler, D. A., et al. (1992, Cytom. 13: 169-174); Rivoltini, L., et al. (1992, Can. Immunol. Immunother. 34: 241-251を参照);または細胞介在性免疫に関する皮膚試験(例えば、Chang, A. E. et al (1993, Cancer Res. 53: 1043-1050を参照)。前述の試験によって測定されるような免疫応答の強度における任意の統計学的に有意な増加は、本明細書において用いられるように「免疫応答の増強」、「免疫増強」、または「免疫強化」と考えられる。免疫応答の増強は、発熱および炎症のような身体症状、ならびに全身性および局所性の感染症の治癒、および疾患の症状の軽減、即ち、腫瘍サイズの減少、らい、結核、マラリア、ナフサウス(naphthous)潰瘍、ヘルペス性および乳頭腫性疣贅、歯肉炎、動脈硬化症、カポジ肉腫のようなエイズの随伴疾患、気管支感染症などを含むがこれらに限定されない疾患または状態の症状の緩和によっても示される。このような身体症状も、本明細書において用いられるように「免疫応答の増強(enhanced immune response)」、「免疫増強(immunoenhancement)」または「免疫強化(immunopotentiation)」を規定する。
【0041】
分子発現の状況において「著しく多量」または「多量」とは、参照量を10倍、より好ましくは50倍、より好ましくは100倍、さらに好ましくは200倍上回る量の分子の発現を意味する。例えば、本明細書において用いられるようにB16High細胞は表面にB7分子を著しく多量に発現して、その量は野生型B16細胞の10倍、より好ましくは50倍、より好ましくは100倍、さらに好ましくは200倍である。
【0042】
本明細書において「免疫不全」に対する言及は、液性および/または細胞性免疫の産生の欠損が見られる任意の状態に対する言及を含む。
【0043】
本明細書において「免疫相互作用性」という言及は、分子間、特に分子の一つが免疫系のコンポーネントである、またはこれを模擬する場合の任意の相互作用、反応または関連性のその他の型に対する言及を含む。
【0044】
本明細書において、細胞の「不活化」は、細胞が子孫を形成するための細胞分裂をできないようにされたことを示すために用いられる。それにも関わらず、細胞は、刺激、またはサイトカインのような細胞産物の生合成および/もしくは分泌に対して反応することができることもある。不活化の方法は当技術分野において公知である。不活化の好ましい方法は、マイトマイシンCのような毒素を用いた処理、または放射線照射である。固定または浸透化されて分割できない細胞も不活化された細胞の例である。
【0045】
「単離された」とは、その固有の状態において通常付随するコンポーネントを実質的または本質的に含まない材料を意味する。
【0046】
組成物は、次のいずれかが可能である場合、「免疫原性」である:a)未処置の個体において抗原(例えば、腫瘍抗原)に対して免疫応答を生じる、またはb)その化合物または組成物が投与されなかった場合に生じるであろう反応を超えて個体において免疫応答を再構築し、追加刺激し、または維持する。単回または反復投与として投与された際にこれらの基準のいずれかを達成することができる場合、組成物は免疫原性である。
【0047】
「調節」とは、標的分子の量および/または機能性活性を直接的または間接的に増加または減少させることを意味する。例えば、物質は標的分子以外の分子と相互作用することによって該量/活性を間接的に調節することがある。この点に関して、標的ポリペプチドをコードする遺伝子の間接的調節には、その範囲において第一の核酸分子の発現の調節を含み、第一の核酸分子の発現産物が標的ポリペプチドをコードする核酸分子の発現を調節する。一部の態様において、「調節(modulation)」または「調節(modulating)」は、所望の/選択された反応が、その抗原が単独で用いられた場合よりも、より効率的(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれよりも多い)、より速い(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれよりも多い)、より規模が大きい(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれよりも多い)、および/またはより容易に誘導される(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、またはそれよりも多い)ことを意味する。
【0048】
本明細書において「5'非翻訳領域」という用語は、発現可能遺伝子の上流領域から派生して、該遺伝子のポリペプチド産物を含むアミノ酸残基をコードする配列以外を含むために非常に幅広い状況において用いられて、5'非翻訳領域は遺伝子発現の少なくとも一部を付与する、または活性化もしくはその他の方法で促進する。
【0049】
「代謝不能」、「非代謝」などは、レクチン相互作用物質が生存生物体内において(例えば、異化または同化によって)レクチンと相互作用できないことを意味する。
【0050】
「から得られる」とは、例えば核酸抽出物またはポリペプチド抽出物のような試料が宿主の特定の供給源から単離または派生することを意味する。例えば、抽出物は宿主から直接単離される組織または生物学的液体から得ることができる。
【0051】
本明細書において用いられるように「オリゴヌクレオチド」という用語は、リン酸ジエステル結合によって結合した多くのヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、または関連する構造変異型もしくはその合成類似体)を含むポリマー(または関連する構造変異型もしくはその合成類似体)を示す。従って、「オリゴヌクレオチド」という用語は典型的にはヌクレオチドおよびヌクレオチド間の結合が自然に発生するヌクレオチドポリマーを指し、その用語はその範囲内においてペプチド核酸(PNA)、ホスホラミデート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2-O-メチルリボ核酸などを含むがこれらに限定されない様々な類似体をさらに含む。この分子の正確な大きさは、特定の適用に応じて変化し得る。オリゴヌクレオチドは、典型的にはかなり短く、一般に約10〜30ヌクレオチドであるが、この用語は任意の長さの分子を指すことができて、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は典型的には大きなオリゴヌクレオチドに対して用いられる。
【0052】
本明細書において用いられるように「機能的に結合(operably connected)」または「機能的に連結(operably linked)」という用語は、構造遺伝子をプロモーターの調節制御下に置いて、続いて遺伝子の転写および任意で翻訳を制御することを意味する。異種性プロモーター/構造遺伝子組み合わせの構築において、一般に、遺伝子配列またはプロモーターは、その遺伝子配列またはプローモーターおよび自然状況において制御する遺伝子、即ち、遺伝的配列またはプロモーターが派生する遺伝子とほぼ同一距離にある転写開始位置から離れた位置にあることが好ましい。当技術分野において公知であるように、この距離におけるいくつかの変更は機能の消失を伴うことなく受け入れることができる。同様に、制御下に置かれるべき異種性遺伝子に関して調節配列エレメントの好ましい位置はその自然状況、即ち、それが派生する遺伝子内でのそのエレメントの位置によって規定される。
【0053】
本明細書において互換的に用いられる「患者」、「対象」、「宿主」、または「個体」という用語は、療法または予防が所望される任意の対象、特に脊椎動物の対象、より具体的には哺乳動物の対象を示す。本発明の範囲に該当する適切な脊椎動物には、霊長類、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ目(例えば、ウサギ、野ウサギ)、ウシ亜科(例えば、ウシ)、ヒツジ(例えば、ヒツジ)、ヤギ(例えば、ヤキ)、ブタ(例えば、ブタ)、ウマ(例えば、ウマ)、イヌ(例えば、イヌ)、ネコ(例えば、ネコ)、トリ(例えば、ニワトリ、七面鳥、カモ、アヒル、ガン、セキセイインコのようなコンパニオンバード)、海洋哺乳類(例えば、イルカ、クジラ)、は虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、および魚類を含む脊索動物亜門の任意のメンバーが含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい対象は、関心対象の抗原の存在または異常発現に関連する、状態または疾患に関して治療または予防を必要とするヒトである。但し、前記の用語は症状が存在することを意味しないことが理解されるであろう。
【0054】
「薬学的に許容される担体」とは、局所性または全身性の投与において安全に用いられ得る固体または液体の充填剤、希釈剤または封入物質を意味する。
【0055】
本明細書において用いられるように「薬学的に適合する塩」という用語は、ヒトおよび動物への投与において毒性学的に安全な塩を指す。この塩は、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ナプシル酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、テレフタル酸塩、パモ酸塩およびペクチン酸塩を含む群から選択され得る。
【0056】
本明細書において用いられるように「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語はmRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを示す。この用語は、典型的には長さ30ヌクレオチドよりも長いオリゴヌクレオチドを示す。
【0057】
「ポリヌクレオチド変異型」および「変異型」という用語は、参照ポリヌクレオチド配列または以後に規定されるストリンジェントな条件下において参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドと実質的に配列同一性を示すポリヌクレオチドを示す。これらの用語は、一つまたは複数のヌクレオチドが付加もしくは欠失、または異なるヌクレオチドと置換したポリヌクレオチドも含む。この点に関して、当技術分野では、参照ポリヌクレオチドには突然変異、付加、欠失および置換を含む一部の変化が起こることができて、それによって変化したポリヌクレオチドは参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持するということが十分に理解される。「ポリヌクレオチド変異型」および「変異型」という用語は、自然に発生する対立遺伝子変異型も含む。
【0058】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマー、ならびに同一物の変異型および合成類似体を示すために互換的に用いられる。従って、これらの用語は、対応する天然アミノ酸および天然アミノ酸ポリマーの化学的類似物ように、一つまたは複数のアミノ酸残基が合成非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーに当てはまる。
【0059】
「ポリペプチド変異型」という用語は、少なくとも一つのアミノ酸の付加、欠失または置換によって参照ポリペプチドから変化するポリペプチドを示す。当技術分野では、いくつかのアミノ酸は大まかに言ってほぼ等しい特性を持つ別のアミノ酸に変化し得て、そのポリペプチドの活性の特徴は変化しないことが十分に理解される。従って、本明細書において用いられるようにポリペプチド変異型は、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、B7-1分子およびB7-2分子から選択される親ポリペプチドとほぼ等しい活性を持つポリペプチドを含む。好ましい変異型ポリペプチドは保存的なアミノ酸置換を含む。ポリペプチドにおける例示的な保存的置換は下表に従って行われ得る:
【0060】
(表A)

【0061】
機能における実質的な変化は、表Aに示されるものよりも保存性の低い置換を選択することによって行われる。その他の置き換えは非保存的置換であり、これらの比較的少数が免疫寛容性であり得る。一般に、ポリペプチドの特性の極めて大きな変化を起こす可能性が高い置換は、(a)親水性残基(例えば、SerまたはAsn)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、Phe、またはVal)のために置換される、または疎水性残基によって置換される;(b)システインまたはプロリンが任意のその他の残基のために、または任意のその他の残基によって置換される;(c)正に帯電した側鎖を持つ残基(例えば、Arg、HisまたはLys)が負に帯電した残基(例えばGluまたはAsp)のためにまたは負に帯電した残基によって置換される、または(d)比較的小さな側鎖を持つ残基(例えば、Ala、Ser)もしくは側鎖を持たない残基(例えば、Gly)が大きな側鎖を持つ残基(例えば、PheまたはTrp)のために置換またはこれによって置換される置換である。
【0062】
本明細書における「プロモーター」への言及は幅広い状況において捉えられるべきであり、発生および/もしくは環境の刺激に反応して、または組織特異的もしくは細胞特異的な方法で遺伝子発現を変化させるCCAATボックス配列および付加的な調節エレメント(即ち、上流活性化配列、エンハンサー、およびサイレンサー)を含むまたは含まない、正確な転写開始に必要なTATAボックスを含む古典的ゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。プロモーターは、必ずではないが通常は、そのプロモーターによって発現が調節される構造遺伝子の上流つまり5'に位置する。さらに、プロモーターを含む調節エレメントは通常はその遺伝子の転写開始位置の2kb以内に位置する。本発明の好ましいプロモーターは、細胞内での発現をさらに増強するために、および/または機能的に結合される構造遺伝子の発現時期を変化させるために、一つまたは複数の特異的調節エレメントのさらなるコピーを含んでもよい。
【0063】
本明細書において用いられるように「組換えポリヌクレオチド」という用語は、インビトロにおいて核酸の操作によって正常な状態では本来見出されない型へと形成されるポリヌクレオチドを示す。例えば、組換えポリヌクレオチドは発現ベクターの型でもあり得る。一般に、このような発現ベクターは、ヌクレオチド配列に機能的に連結された転写および翻訳調節核酸を含む。
【0064】
「組換えポリペプチド」とは、組換え技術を用いて、即ち、組換えポリヌクレオチドの発現を通して作成されるポリペプチドを意味する。
【0065】
本明細書において用いられるように免疫または免疫学的応答の「刺激」は、外来分子、同種細胞、または腫瘍細胞のような標的物質に対する宿主の免疫系の応答能力を、それ以外の場合に生じるよりも高いレベルで開始し、追加刺激し、または維持する組成物の投与を示す。本明細書において、「一次」免疫応答の刺激は、例えば、標的抗原に対する暴露の欠除、標的に対する不応性、または免疫抑制のために、これまでに反応が検出されなかった対象において特異的な免疫反応を引き起こすことを示す。「二次的」応答の刺激は、例えば、自然免疫、偶発的な免疫化、または一つもしくは複数の組成物または処置を用いた治療により、過去に反応性が検出された対象における反応を再開し、追加刺激し、または維持する。
【0066】
「治療(treatment)」、「治療(treat)」、「治療(treated)」などの用語は、治療的および予防的な処置を含むことを意味する。
【0067】
「ベクター」とは、核酸分子、好ましくは、例えば核酸配列が挿入またはクローニングされる可能性のあるプラスミド、バクテリファージまたは植物ウイルスから派生するDNA分子を意味する。ベクターは好ましくは一つまたは複数の固有の制限部位を含み、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む一定の宿主細胞における自律的複製ができ得て、またはクローニングされた配列が複製可能であるような一定の宿主のゲノムと統合可能であり得る。従って、ベクターは自律的複製ベクター、即ち、染色体外の存在として存在するベクターであり得て、その複製は、例えば、線状または閉環状プラスミド、染色体外エレメント、微小染色体、または人工染色体などの染色体の複製には依存しない。ベクターは自己複製を確実とするための何らかの方法を含む可能性がある。または、ベクターは、宿主細胞に導入された際にゲノムに統合されて、組み込まれた染色体と共に複製されるベクターであってもよい。ベクターの系は単一のベクターまたはプラスミド、二つまたはそれよりも多いベクターまたはプラスミドを含み得て、それらは全体として宿主細胞のゲノムまたはトランスポゾンに導入されるべきDNA全体を含む。ベクターの選択は、典型的にはベクターとベクターが導入される宿主細胞の適合性に依存する。ベクターは、適切な形質転換体の選択のために用いることができる抗生物質耐性遺伝子のような選択マーカーをさらに含んでよい。このような耐性遺伝子の例は、当業者には周知である。
【0068】
2.組成物
本発明は、少なくとも一部は、抗原に対する対象の免疫応答はレクチン相互作用物質の導入によって増強されるという発見に由来する。いずれかの一つの特定の理論または作用モードに拘束されることを希望するものではないが、レクチン相互作用物質はレクチンへの結合に関してT細胞表面にある糖タンパク質レセプターと競合することによってアジュバントとして機能し、それによってレクチン誘導性の糖タンパク質レセプターの集塊が阻害されてT細胞活性化の阻害が阻止または減弱されることが提唱される。この結果、T細胞活性化が延長されて、同時に関心対象の抗原に対する免疫または免疫寛容の期間が延長する。従って、本発明は一つの局面において標的抗原に対する免疫応答を調節するための組成物を提供し、その組成物は一般にレクチン相互作用物質ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞から選択される免疫調節物質を含む。
【0069】
2.1 レクチン相互作用物質
レクチン相互作用物質には、レクチンと直接もしくは間接的に結合する、または物理的に関連して、その機能または活性(例えば、白血球、特にリンパ球、およびより具体的にはTリンパ球に存在する一つまたは複数の表面分子との結合または相互作用)の少なくとも一つを適切に遮断、阻害またはその他の方法で拮抗する任意の分子または化合物が含まれる。結合または関連は、誘導磁場または常磁性磁場の形成、共有結合の形成、例えばイオン格子に生じるようなイオン相互作用、水素結合、または代わりに双極子-双極子相互作用、双極子-誘導双極子相互作用、誘導双極子-誘導双極子相互作用、もしくは反発性相互作用または上記吸引力の組み合わせのようなファンデルワールス相互作用を伴い得る。一部の態様において、レクチンはガレクチンであり、ガレクチン-1、ガレクチン-3およびガレクチン-9から適切に選択される。レクチンは生物体によって適切に発現されて、その例示的な例には細菌、エントアメーバ、原生動物(例えば、マラリア)、昆虫、腹足類、植物または動物が含まれる。一部の態様において、レクチンはM型レクチン、L-レクチン、P-レクチン、C-レクチン、ガラクトシド結合レクチン、I型レクチンまたはR-レクチンを含むがこれらに限定されない群から適切に選択される動物性レクチンである。望ましくは、レクチンはガレクチン-1、ガレクチン-3およびガレクチン-9から特に選択されるガレクチンである。
【0070】
レクチン相互作用物質は、典型的にはポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、脂質または炭水化物からなる群から選択される。一部の有利な態様において、レクチン相互作用物質は可溶型である。
【0071】
いくつかの態様において、レクチン相互作用物質は炭水化物または炭水化物含有分子(例えば、糖タンパク質)であり、その例示的な例を以下に示す: 単糖類、二糖類(例えば、ラクトース、ラクツロース、乳果オリゴ糖、メチルβ-ラクトシド、D-ガラクトース、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-マンノピラノシド、3-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-アラビノース、2'-O-メチルラクトース、ラクト-N-ビオース、N-アセチルラクトサミンおよびチオジガラクトピラノシド);より大きな糖類(例えば、ポリラクトサミン、ポリラクトサミン運搬糖ペプチド、修飾植物性ペクチン多糖類);ならびに合成阻害物質(例えば、チオジガラクトシド)、特にラクトースまたはガラクトースを含む糖ペプチド(Glinsky et al., 1996, Cancer Research 56: 5319-5324; Naidenko et al. 2000, Glycobiology 10: abstract 60)、国際公開公報第02/057284号に記載されるようなN-アセチルラクトサミン誘導体、米国特許出願公報2002/0107222号および同2003/0013681号に開示される修飾多糖類、星状デンドリマー(Andre et al. 1999, Glycobiology 11: 1253-1262)、およびグリコポリマー(Pohl et al., 1999, Synthesis 1515-1519)。一部の態様において、炭水化物または炭水化物含有分子は本組成物が投与される宿主体内で代謝されない。このタイプの例示的な例には、ラクツロース、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[3-カルボキシプロパン-アミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[{Z}-3-カルボキシ-プロペンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロ-ベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-メタン-スルホンアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-ニトロベンゼンスルホンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-フェニルアミノカルボニルアミノ-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド2-デオキシ-4-O-(2-アミノアセトアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド2-デオキシ-4-O-(3-[{2S}-2-アミノ-3-カルボキシ-プロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシドが含まれる。適切には、レクチン相互作用物質はラクツロースまたはその合成もしくは半合成類似体である。
【0072】
炭水化物のその他の例示的な例には、米国特許出願公報20040147730号に記載される炭水化物が含まれる。このタイプの典型的な炭水化物には、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[3-カルボキシプロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[{Z}-3-カルボキシプロペンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[2-カルボキシベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-(2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-メタン-スルホンアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[4-ニトロベンゼンスルホンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-フェニルアミノカルボニルアミノ-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(2-アミノアセトアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[{2S}-2-アミノ-3-カルボキシ-プロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシドが含まれるが、これらに限定されるものではない。このタイプのいくつかの態様において、炭水化物はメチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[2-カルボキシ-ベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、またはメチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-0-(3-[2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-D-グルコピラノシドである。
【0073】
レクチン相互作用物質は、通常、約10-3〜約10-9M、典型的には約10-5〜約10-8M、より典型的には約10-4〜約10-7Mの範囲のレクチンに対して結合親和性を持つ。
【0074】
一部の有利な態様において、上記の例に述べられるような多くの炭水化物レクチン相互作用物質が本発明の組成物において使用される(例えば、少なくとも2、3、4、5、および一部の場合には6、7、8またはそれよりも多いこのような物質)。このタイプの例示的な例において、炭水化物の一つは(例えば、免疫細胞に対してレクチンの負の作用からの長期間の保護を示すために)動物体内に容易に拡散することができる可溶性の二糖類であり、その他の炭水化物はある程度可溶性であり、それによって送達部位(例えば、腫瘍部位)からの拡散が限定される大きな糖類(例えば、シトラスペクチンのようなポリラクトサミン)である。
【0075】
望ましくは、レクチン相互作用物質は宿主に対して無毒であり、副作用は最小限または無視できるものである。
【0076】
2.2 免疫調節物質
2.2.1 抗原
本発明は、本発明の組成物における標的抗原に対する免疫応答を刺激するための関心対象の標的抗原の少なくとも一部に対応する任意の抗原の使用を意図する。このような物質は可溶型(例えば、そこからペプチドまたはポリペプチドが発現可能であるペプチド、ポリペプチドまたは核酸分子)または全体細胞もしくは弱毒化された病原体調製物(例えば、弱毒化されたウイルスまたは細菌)の型であり得て、または以下により詳細に述べられるように抗原提示細胞によって提示されてもよい。
【0077】
本発明で有用な標的抗原は、例えば、単純な中間代謝物、糖、脂質、およびホルモン、ならびに複雑な炭水化物、リン脂質、核酸、ポリペプチドおよびペプチドのような高分子を含む任意のタイプの生物学的分子であることができる。標的抗原は、宿主によって産生される内因性抗原または宿主にとって外来性の外因性抗原から選択され得る。適切な内因性抗原には、自己免疫応答の標的である自己抗原、および癌または腫瘍抗原が含まれるが、これらの限定されるものではない。自己免疫性疾患の治療または予防において有用な自己抗原の例示的な例には、糖尿病、関節炎(慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群の二次的所見である乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬刺反応に起因するアレルギー性反応,クローン病、潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、腟炎、直腸炎、薬疹、らい逆転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音性聴力損失、再生不良性貧血、赤血球貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎および間質性肺線維症が含まれるが、これらに限定されるものではない。その他の自己抗原には、全身性エリテマトーデスの治療のためのヌクレオソーム(例えば、GenBankアクセッション番号D28394;Bruggen et al., 1996, Ann. Med. Interne (Paris), 147: 485-489)、および回旋糸状虫(O. volvulus)抗原との眼組織交差反応性の44,000 Daのペプチドコンポーネント(McKeclmie et al., 1993, Ann Trop. Med. Parasitol. 87: 649-652)に由来する自己抗原が含まれる。従って、本発明の組成物および方法において用いることができる例示的な自己抗原には、ループス自己抗原、Smith、Ro、La、U1-RNP、フィブリン(強皮症)、膵β細胞抗原、GAD65(糖尿病関連)、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ヒストン、PLP、コラーゲン、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、シトルリン化したタンパク質およびペプチド、甲状腺抗原、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター、様々なtRNA合成酵素、アセチルコリンレセプター(AchR)のコンポーネント、MOG、プロテイナーゼ-3、ミエロペルオキシダーゼ、表皮カドヘリン、アセチルコリンレセプター、血小板抗原、核酸、核酸:タンパク質複合体、関節抗原、神経系の抗原、唾液腺タンパク質、皮膚抗原、腎抗原、心抗原、肺抗原、眼部抗原、赤血球抗原、肝抗原および胃抗原の少なくとも一部が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
癌または腫瘍抗原の非限定的な例には、ABL1プロトオンコジーン、エイズ関連性の癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星細胞腫、毛細血管拡張運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成小細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼の癌、眼の黒色腫、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニー貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化器癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠期栄養膜疾患、神経膠腫、婦人科の癌、血液学的悪性腫瘍、毛様細胞白血病、頭部および頸部の癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳房癌、悪性腎臓杆状体腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌新生物、菌状息肉症、骨髄形成異常性症候群、ミエローマ、骨髄増殖性疾患、鼻性癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維腫症、ナイメーヘン切断症候群、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼部癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、小孔卵巣癌、膵癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌および関連疾患、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ロスムンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌(膀胱)、移行細胞癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン(uroplakins)、子宮肉腫、子宮癌、腟癌、外陰部癌、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から選択される癌または腫瘍からの抗原が含まれる。一部の態様において、癌または腫瘍は黒色腫に関連する。黒色腫に関連する抗原の例示的な例には、メラニン形成細胞分化抗原(例えば、gp100、MART、Melan-A/MART-1、TRP-1、Tyros、TRP2、MC1R、MUC1F、MUC1R、またはそれらの組み合わせ)および黒色腫特異抗原(例えば、BAGE、GAGE-1、gp100In4、MAGE-1(例えば、GenBankアクセッション番号X54156およびAA494311)、MAGE-3、MAGE4、PRAME、TRP2IN2、NYNSO1a、NYNSO1b、LAGE1、p97黒色腫抗原(例えば、GenBankアクセッション番号M12154)p5タンパク、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、cdc27、p21ras、gp100Pmel117、またはそれらの組み合わせが含まれる。その他の腫瘍特異的抗原には以下が含まれるが、これらの限定されるものではない:etv6、aml1、シクロフィリンb(急性リンパ芽球性白血病);Ig-イディオタイプ(B細胞性リンパ腫);E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn(神経膠腫);p21ras(膀胱癌);p21ras(胆管癌);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2(乳癌);p53、p21ras(子宮頚癌);p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー、クリプト-1タンパク質、Pim-1タンパク質(結腸癌);結腸直腸関連抗原(CRC)-CO17-1A/GA733、APC(結腸直腸癌);癌胎児性抗原(CEA)(結腸直腸癌;絨毛癌);シクロフィリンb(上皮細胞癌);HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(胃癌);α-フェトプロテイン(肝細胞癌);Imp-1、EBNA-1(ホジキンリンパ腫);CEA、MAGE-3、NY-ESO-1(肺癌);シクロフィリンb(リンパ系細胞由来白血病);MUCファミリー、p21ras(ミエローマ);HER2/neu、c-erbB-2(非小細胞肺癌);Imp-1、EBNA-1(鼻咽頭癌);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2、MAGE-A4、NY-ESO-1(卵巣癌);前立腺特異性抗原(PSA)、ならびにその抗原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(前立腺癌);HER2/neu、c-erbB-2(腎癌);ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質のようなウイルス産物(子宮頚部および食道の扁平上皮細胞癌);NY-ESO-1(精巣癌);およびHTLV-1エピトープ(T細胞白血病)。
【0079】
外来性抗原は、移植抗原、アレルゲン、および病原性生物体由来の抗原から適切に選択される。移植抗原は、例えば心、肺、肝、膵、腎、神経の移植コンポーネントに由来するドナーの細胞もしくは組織、または外因性抗原の不在下で自己抗原を付加されたMHCを持つドナーの抗原提示細胞から派生することができる。
【0080】
アレルゲンの非限定的な例には、Fel d 1(即ち、イエネコ(Felis domesticus)のネコ皮膚および唾液腺アレルゲン、そのアミノ酸配列は国際公開公報第91/06571号に開示されている)、Der p I、Der p II、Der fIまたはDer fII(即ち、ハウスダストダニであるヒョウヒダニの主なタンパク質アレルゲン、そのアミノ酸配列は国際公開公報第94/24281号に開示されている)が含まれる。その他のアレルゲンは、例えば、以下から派生し得る:草、樹木および雑草(ブタクサを含む)の花粉;真菌およびカビ;魚、貝類、カニ、ロブスター、ピーナッツ、木の実、小麦グルテン、卵および牛乳のような食物;ミツバチ、大型のハチ、ならびにスズメバチおよびユスリカ(chirnomidae)(非刺咬性ユスリカ)のような刺咬性昆虫;イエバエ、ショウジョウバエ、ヒツジクロバエ、アメリカオビキンバエ、コクゾウムシ、カイコ、ミツバチ、非刺咬性ユスリカの幼虫、ハチミツガの幼虫、ゴミムシダマシ(mealworm)、ゴキブリ、およびチャイロコメゴミムシダマシ(Tenibrio molitor beetle)の幼虫のようなその他の昆虫;クモおよびハウスダストダニを含むダニ;ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ラット、モルモット、マウスおよびジャービルのような哺乳動物のフケ、尿、唾液、血液またはその他の体液中に見出されるアレルゲン;一般的な空中浮遊粒子;ラテックス;およびタンパク質界面活性剤添加物。
【0081】
例示的な病原性生物体には、ウイルス、細菌、真菌寄生体、藻類、原生生物およびアメーバが含まれるが、これらに限定されるものではない。ウイルスの例示的な例には、麻疹、ムンプス、風疹、ポリオ、A型、B型肝炎(例えば、GenBankアクセッション番号E02707)およびC型肝炎(例えば、GenBankアクセッション番号E06890)、ならびにその他の肝炎ウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス(例えば、4型および7型)、狂犬病(例えば、GenBankアクセッション番号M34678)、黄熱、エプスタイン・バーウイルス、ならびに乳頭腫ウイルスのようなヘルペスウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎(例えば、GenBankアクセッション番号E07883)、デング熱(例えば、GenBankアクセッション番号M24444)、ハンタウイルス、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オルソミクソウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ビスナウイルス、サイトメガロウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、GenBankアクセッション番号U18552)が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の実践では、このようなウイルスから派生する任意の適切な抗原が有用である。例えば、HIVから派生する例示的なレトロウイルス抗原には、gag、polおよびenv遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素、ならびにその他のHIVコンポーネントのような抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。肝炎ウイルス抗原の例示的な例には、B型肝炎ウイルスのS、MおよびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原、ならびに例えばA型、B型およびC型肝炎のようなその他の肝炎、C型肝炎ウイルスRNAのようなウイルスコンポーネントのような抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。インフルエンザウイルス抗原の例示的な例には、血球凝集素およびノイラミニダーゼ、およびその他のインフルエンザウイルスコンポーネントのような抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。麻疹ウイルス抗原の例示的な例には、麻疹ウイルス融合タンパク質およびその他の麻疹ウイルスコンポーネントのような抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。風疹ウイルス抗原の例示的な例は、タンパク質であるElおよびE2ならびにその他の風疹ウイルスコンポーネントのような抗原;VP7scおよびその他のロタウイルスコンポーネントのようなロタウイルス抗原を含むが、これらに限定されるものではない。サイトメガロウイルス抗原の例示的な例は、エンベロープ糖タンパク質Bおよびその他のサイトメガロウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含むが、これらに限定されるものではない。呼吸器合胞体ウイルス抗原の非限定的な例は、RSV融合タンパク質、M2タンパク質およびその他の呼吸器合胞体ウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含むが、これらに限定されるものではない。単純ヘルペスウイルス抗原の例示的な例は、前初期タンパク質、糖タンパク質D、およびその他の単純ヘルペスウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含むが、これらに限定されるものではない。水痘帯状疱疹ウイルス抗原の非限定的な例は、9PI、gpII、およびその他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含む。日本脳炎ウイルス抗原の非限定的な例は、タンパク質E、M-E、M-E-NS 1、NS 1、NS 1-NS2A、80%E、およびその他の日本脳炎ウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含む。狂犬病ウイルス抗原の典型的な例は、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質およびその他の狂犬病ウイルス抗原コンポーネントのような抗原を含むが、これらに限定されるものではない。乳頭腫ウイルス抗原の例示的な例はLIおよびL2キャプシドタンパク質、ならびに子宮頚癌に関連するE6/E7抗原を含むが、これらに限定されるものではない。ウイルス抗原のさらなる例については、「Fundamental Virology」, 第二版、Fields, B. N.およびKnipe, D. M.編、1991, Raven Press, New Yorkを参照されたい。
【0082】
真菌の例示的な例には、アクレモニウム属(Acremonium spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、バシジオボルス属(Basidiobolus spp.)、ごま葉枯病菌(Bipolaris spp.)、ブラストミセスデルマチディス(Blastomyces dermatidis)、カンジダ属(Candida spp.)、クラドフィアロフォラカリオニイ(Cladophialophora carrionii)、コッコイディオデスイミティス(Coccoidiodes immitis)、コニディオボルス属(Conidiobolus spp.)、クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)、カーブラリア属(Curvularia spp.)、表皮菌属(Epidermophyton spp.)、エクソフィアラジャーンセルメイ(Exophiala jeanselmei)、エクセロフィラム属(Exserohilum spp.)、フォンセカエコンパクタ(Fonsecaea compacta)、フォンセカエペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フサリウムオキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウムソラニ(Fusarium solani)、チチカビ(ゲオトリクムカンディダム(Geotrichum candidum))、カプスラーツム型ヒストプラスマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum var. capsulatum)、ズボイジ型ヒストプラズマカプスラーツム(Histoplasnza capsulatum var. duboisii)、ホルターエヴェルネッキイ(Hortaea werneckii)、 ラカジアロボイ(Lacazia loboi)、ラジオディプロディアテオブロマーエ(Lasiodiplodia theobromae)、レプトスフェリアセナガレンシス(Leptosphaeria senegalensis)、マズレラグリセア(Madurella grisea)、マズレラマイセトマティス(Madurella mycetomatis)、マラセチアフルフル(Malassezia furfur)、小胞子菌属(Microsporum spp.)、ネオテスツジナロザティ(Neotestudina rosatii)、オニココーラカナデンシス(Onychocola canadensis)、 パラコクシジオイデスブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、フィアロフォラベルコーサ(Phialophora verrucosa)、ピエドライアホルターエ(Piedraia hortae)、ピエドライアホルターエ(Piedra iahortae)、ピチリアシスベルシコラー(Pityriasis versicolor)、シュードアレシェリアボイディイ(Pseudallesheria boydii)、ピレノカエタロメロイ(Pyrenochaeta romeroi)、リゾプスアリツス(Rhizopus arrhizus)、スコプラリオプシスブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、スキタリジウムジミジアツム(Scytalidium dimidiatum)、スポロトリクスセンキアイ(Sporothrix schenckii)、トリコフィトン属(Trichophyton spp.)、トリコスポロン属(Trichosporon spp.)、ジゴムセテ(Zygomcete)真菌、アブシディアコリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコルプシルス(Rhizomucor pusillus)、およびリゾプスアリツス(Rhizopus arrhizus)が含まれる。従って、本発明の組成物および方法において用いることができる例示的真菌抗原には、カンジダ真菌抗原コンポーネント;熱ショックタンパク質60(HSP60)およびその他のヒストプラズマ真菌抗原コンポーネントのようなヒストプラズマ真菌抗原;カプセル多糖類およびその他のクリプトコッカス真菌抗原コンポーネントのようなクリプトコッカス真菌抗原;小球抗原およびその他のコクシジオイデス真菌抗原コンポーネントのようなコクシジオイデス真菌抗原;ならびにトリコフィチンおよびその他のコクシジオイデス真菌抗原コンポーネントのような白癬真菌抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
細菌の例示的な例には、以下を含むがこれらに限定されない疾患の原因となる細菌が含まれる:ジフテリア(例えば、コリネバクテリウムジフテリア)、百日咳(例えば、百日咳菌(Bordetella pertussis)、GenBank アクセッション番号 M35274)、破傷風(例えば、破傷風菌(Clostridium tetani)、GenBank アクセッション番号 M64353)、結核(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis))、細菌性肺炎(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、コレラ(例えば、コレラ菌(Vibrio chorerae))、炭疽(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis))、腸チフス、ペスト、細菌性赤痢(例えば、赤痢菌(Shigella dysenteriae))、ボツリヌス中毒(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum))、サルモネラ症(例えば、GenBankアクセッション番号L03833)、消化性潰瘍(例えば、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori))、レジオネラ症、ライム病(例えば、GenBankアクセッション番号U59487。その他の病原性細菌には、大腸菌(Escherichia coli)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)が含まれる。従って、本発明の組成物および方法で用いることができる細菌抗原には以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:百日咳毒素、線維状血球凝集素、パータクチン、F M2、FIM3、アデニレートシクラーゼおよびその他の百日咳菌抗原コンポーネントのような百日咳菌抗原;ジフテリア毒素またはトキソイドおよびその他のジフテリア菌抗原コンポーネントのようなジフテリア菌抗原;破傷風毒素またはトキソイドおよびその他の破傷風菌抗原コンポーネントのような破傷風菌抗原;Mタンパク質およびその他の連鎖球菌抗原コンポーネントのような連鎖球菌抗原;リポ多糖類およびその他のグラム陰性細菌抗原コンポーネントのようなグラム陰性細菌抗原;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDaの主要分泌タンパク質、抗原85Aおよびその他のミコバクテリウム抗原コンポーネントのような結核菌抗原;ヘリコバクターピロリの細菌抗原コンポーネント、ニューモリシン、肺炎球菌カプセル多糖類およびその他の肺炎球菌抗原コンポーネントのような肺炎球菌抗原;カプセル多糖類およびその他のインフルエンザ菌抗原コンポーネントのようなインフルエンザ菌抗原;炭疽感染防御抗原およびその他の炭疽菌抗原コンポーネントのような炭疽菌抗原;rompAおよびその他のリケッチア菌抗原コンポーネントのようなリケッチア菌抗原。本明細書に記載される細菌抗原と共に、任意のその他の細菌、ミコバクテリウム、マイコプラズマ、リケッチアまたはクラミジアの抗原も含まれる。
【0084】
原生動物の例示的な例は、マラリア(例えば、GenBankアクセッション番号X53832)、鈎虫、オンコセルカ症(例えば、GenBankアクセッション番号M27807)、住血吸虫症(例えば、GenBankアクセッション番号LOS 198)、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ジアルジア症(GenBankアクセッション番号M33641)、アメーバ症、フィラリア(例えば、GenBankアクセッション番号J03266)、ボレリア症および旋毛虫症を含むがこれらに限定されない疾患の原因となる原生動物を含む。従って、本発明の組成物および方法において用いることができる原生動物抗原には以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液期抗原pf155/RESA、およびその他のマラリア原虫抗原コンポーネントのような熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)の抗原;SAG-1、p30およびその他のトキソプラズマ抗原コンポーネントのようなトキソプラズマ抗原;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、パラミオシンおよびその他の住血吸虫抗原コンポーネントのような住血吸虫抗原;gp63、リポホスホグリカンならびにその関連タンパク質およびその他のリーシュマニア抗原コンポーネントのようなリーシュマニア(leishmania major)およびその他のリーシュマニアの抗原;ならびに75kDa〜77kDaの抗原、56kDaの抗原およびその他のトリパノソーマ抗原コンポーネントのようなクルーズトリパノソーマ(trypanosoma cruzi)抗原。
【0085】
本発明は毒素コンポーネントも抗原として意図する。毒素の例示的な例には、ブドウ球菌エンテロトキシン、中毒性ショック症候群毒素;レトロウイルス抗原(例えば、HIVに由来する抗原)、連鎖球菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、ブドウ球菌エンテロトキシン1-3(SE1-3)、ブドウ球菌エンテロトキシンD(SED)、ブドウ球菌エンテロトキシンE(SEE)、ならびにマイコプラズマ、ミコバクテリウムおよびヘルペスウイルス由来の毒素が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原は天然の供給源から単離され得て、または当技術分野において公知の組換え技術によって調製することもできる。例えば、ペプチド抗原は修飾された免疫応答が所望される細胞集団または組織から得られる抗原提示細胞のMHCおよびその他の提示分子から溶出することができる。溶出されたペプチドは、当技術分野において公知の標準的なタンパク質精製技術を用いて精製できる(Rawson et al., 2000, Cancer Res 60 (16), 4493-4498)。所望ならば、精製されたペプチドをシーケンシングすることができ、ペプチドは、例えば下記に示すような標準的なタンパク質合成技術を用いて合成型として産生することができる。または、粗抗原調製物は修飾免疫応答が所望される細胞集団または組織の試料を単離して、試料を溶解またはアポトーシス細胞の形成を起こす条件(例えば、紫外線またはγ線の照射、ウイルス感染、サイトカイン、または細胞から細胞培養培地中の栄養素を枯渇させる、過酸化水素もしくはデキサメタゾン、セラミド化学療法剤およびルプロンもしくはタモキシフェンのような抗ホルモン剤と共にインキュベートする)に供することによって産生することができる。続いて、溶解物またはアポトーシス細胞は、以下に詳細に記載されるように可溶型として使用または抗原提示細胞との接触のための粗抗原の供給源として用いることができる。
【0087】
抗原が公知である場合、Sambrook, et al., 「MOLECULAR CLONING. A LABORATORY MANUAL」(Cold Spring Harbor Press, 1989)、特に第16節および第17節;Ausubel et al.,「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」(John Wiley & Sons, Inc. 1994-1998)、特に第10章および第16章;ならびにColigan et al., 「CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE」(John Wiley & Sons, Inc. 1995-1997)、特に第1章、第5章および第6章に記載されるような標準的プロトコールを用いて組換え型として簡便に調製し得る。典型的には、抗原は、(a)標的抗原もしくは類似体、またはそれらの模倣物を発現可能な発現ベクターを提供する工程;(b)ベクターを適切な宿主細胞に導入する工程;(c)ベクターから組換えポリペプチドを発現させるために宿主細胞を培養する工程;および(d)組換えポリペプチドを単離する工程を含む操作によって調製され得る。
【0088】
一般に、発現ベクターは調節ポリヌクレオチドに機能的に結合された抗原コードポリヌクレオチドを含む。抗原コードポリヌクレオチドは、関心対象の表記抗原に対応する抗原をコードする任意の適切な親ポリヌクレオチドから構築することができる。親ポリヌクレオチドは、適切には天然の遺伝子またはその一部である。但し、親ポリヌクレオチドは自然には発生しないが、遺伝子組み換え技術を用いて作成される可能性がある。調節ポリヌクレオチドは、適切には転写および/または翻訳制御配列を含み、それらは一般に抗原コードポリヌクレオチドの発現のために用いられる宿主細胞にとって適切である。典型的には、転写および翻訳調節制御配列には、5'非コード領域、転写調節タンパク質または翻訳調節タンパク質の機能性結合部位のようなシス-調節領域、上流オープンリーディングフレーム、転写開始点、翻訳開始点、および/またはリーダー配列、停止コドン、翻訳停止点、および3'非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列を含むが、これらに限定されるものではない。当技術分野において公知の構成的または誘導性プロモーターは本発明によって意図される。プロモーターは天然のプロモーター、または一つよりも多いプロモーターの要素を併せ持つハイブリッドプロモーターであり得る。本発明によって意図されるプロモーター配列は導入される宿主細胞由来でもよく、またはその領域が宿主細胞において機能性である代替供給源から派生してもよい。
【0089】
発現ベクターは3'非翻訳配列も含み得て、これは通常はポリアデニル化シグナルおよびmRNAの加工または遺伝子発現を行うことができる任意のその他の調節シグナルを含むDNAセグメントを含む遺伝子の部分を示す。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆物質の3'末端へのポリアデニル酸経路の付加を行うことを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは、一般的には、5'AATAAA-3'限界構造に対する相同性の存在によって認識されるが、変異型がよく見られる。3'非翻訳制御DNA配列は、典型的には約50〜1,000のヌクレオチド塩基対を含み、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAの加工または遺伝子発現を行うことができる任意のその他の調節シグナルに加えて転写および翻訳終止配列を含み得る。
【0090】
一部の態様において、発現ベクターは形質転換した宿主細胞の選択を可能とする選択可能マーカー遺伝子をさらに含む。選択遺伝子は当技術分野において周知であり、用いる宿主細胞によって変更されるであろう。
【0091】
発現ベクターは、組換えポリペプチドが融合パートナーと共に融合ポリペプチドとして発現するように融合パートナー(典型的には発現ベクターにより提供される)も含み得る。融合パートナーの主な利点は、それらが該融合ポリペプチドの識別および/または精製に役立つことである。融合パートナーの周知の例には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MPB)およびヘキサヒスチジン(HIS6)が含まれるがこれらに限定されるものではなく、これらはアフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの単離に特に有用である。アフィニティークロマトグラフィーによる融合ポリペプチドの精製のため、アフィニティークロマトグラフィーのための関連するマトリクスは、それぞれ、グルタチオン-、アミロース-、およびニッケル-またはコバルト-抱合樹脂である。このような多くのマトリクスは、(HIS6)融合パートナーと用いて有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)およびPharmacia GST精製システムのような「キット」の形で入手可能である。好ましくは、融合パートナーは、Xa因子またはトロンビンのためのようなプロテアーゼ開裂部位も持ち、これにより、関連するプロテアーゼが本発明の融合ポリペプチドを一部消化し、それによってそこから本発明の組換えポリペプチドが遊離することを可能にする。続いて、遊離したポリペプチドは、その後のクロマトグラフィーによる分離によって融合パートナーから単離することができる。融合パートナーは、それらの範囲内に、通常、特異抗体が形成される短いペプチド配列である「エピトープタグ」も含む。モノクローナル特異抗体が容易に形成されるエピトーグタグの周知の例には、c-Myc、インフルエンザウイルス赤血球凝集素およびFLAGタグが含まれる。
【0092】
宿主細胞内に発現ベクターを導入する工程は、形質移入、アデノウイルス、修飾レンチウイルスおよびその他のレトロウイルスベクターを含むウイルスベクターの形質導入、および形質転換を含む任意の適切な方法によって達成され得て、それらの選択は用いられる宿主細胞に依存する。このような方法は当業者に周知である。
【0093】
組換え型ポリペプチドは、発現ベクターおよび宿主細胞の選択に応じて変化するタンパク質発現に適した条件下において、発現ベクターを用いて形質転換した宿主細胞を培養することによって作成され得る。当業者は、定型の実験を通して容易にこのことを確認する。発現のための適切な宿主細胞は原核生物または真核生物であってよい。本発明のポリペプチドの発現のための一つの好ましい宿主細胞は細菌である。用いられる細菌は大腸菌であってよい。または、宿主細胞は、例えば、バキュロウイルス発現系と共に用いることのできるSF9細胞のような昆虫細胞であってもよい。
【0094】
いくつかの態様において、本発明のレクチン相互作用物質と共に投与される抗原は抗原が発現可能な構築物またはベクターの形である。
【0095】
または、抗原は、例えばAthertonおよびSheppard(Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England,1989)またはRoberge et al.(1995, Science 269: 202)に記載される通り、溶液合成または固相合成を用いて合成することができる。合成抗原のアミノ酸は、非天然または天然のアミノ酸であることができる。ペプチド合成中の非天然アミノ酸および派生物の例には、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、t-ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD体が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明によって意図される非天然アミノ酸の一覧を表Bに示す。
【0096】
(表B)


【0097】
本発明は、タンパク分解性の分解に対する耐性を変化させるため、もしくは可溶性特性を至適化するため、またはそれらを免疫原物質としてより適切とするために、通常の分子生物学的技術を用いたペプチド抗原の修飾も意図する。
【0098】
ペプチド抗原は、関心対象の標的抗原に対する免疫応答を刺激または阻害するために用いることができる任意の適切な大きさであってよい。多くの要因がペプチドの大きさの選択に影響を及ぼすことができる。例えば、ペプチドの大きさは、T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープならびにそれらの加工要件を含むまたはそれらの大きさに対応するように選択することができる。当業者は、クラスI拘束性T細胞エピトープは典型的には8〜10アミノ酸残基の長さであり、人為的なフランキング残基に隣接して位置すると、このようなエピトープは一般に効率的に加工および提示されるために2〜3個の天然のフランキングアミノ酸残基を必要とすることがあることを認識するであろう。クラスII拘束性T細胞エピトープは、通常、長さ12〜25アミノ酸残基の範囲であり、効率的なタンパク分解性加工には天然のフランキング残基を必要としない可能性があるが、天然のフランキング残基は役割を担い得ると考えられている。クラスII拘束性エピトープのもう一つの重要な特徴は、一般に、それらが中央部にアミノ酸残基9〜10個のコアを持ち、クラスII MHC分子に特異的に結合し、このコアの両端のフランキング配列はクラスII MHC抗原の両端の保存構造と配列非依存性に関連することによって結合を安定化することである。従って、クラスII拘束性エピトープの機能性領域は典型的に長さ 約15アミノ酸残基よりも短い。線形B細胞エピトープおよびクラスII拘束性エピトープのようなそれらの加工に影響を及ぼす因子の大きさは実に様々であるが、このようなエピトープはしばしば15アミノ酸残基よりも小さいサイズである。前記より、ペプチドの大きさは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30アミノ酸残基であることが有利であるが、本質的ではない。適切には、ペプチドの大きさは約500、200、100、80、60、50、40アミノ酸残基を超えない。一部の有利な態様において、ペプチドの大きさは、ペプチド内に含まれるT細胞および/またはB細胞エピトープの抗原提示細胞による提示に十分である。
【0099】
有効な抗原性ペプチド(例えば、免疫応答を引き起こすことができる最小ペプチド配列)を同定および選択するための基準は当技術分野において見出することができる。例えば、Apostolopoulosら(2000, Curr. Opin. Mol. Ther. 2: 29-36)は、抗原提示分子の三次元構造ならびに抗原性ペプチドおよびT細胞レセプター双方との相互作用に関する理解に基づいて最小抗原性ペプチド配列を同定するための戦略について議論している。Shastri(1996, Curr. Opin. Immunol. 8: 271-277)は、MHC分子に通常結合する数千のペプチドからT細胞を活性化するために用いられる極めて少ないペプチドを識別する方法を開示している。
【0100】
2.2.2 免疫調節細胞の態様
抗原提示細胞
本発明は、本発明の組成物における、標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原を提示する抗原提示細胞の使用をさらに意図する。このような抗原提示細胞には、プロフェッショナルまたは通性抗原提示細胞が含まれる。プロフェッショナルな抗原提示細胞は物理的に機能して、Tリンパ球またはBリンパ球介在性の免疫応答を刺激またはアネルギー化するために抗原を特異的なT細胞レセプターによって認識される状態で提示する。プロフェッショナル抗原提示細胞は主要組織適合複合体(MHC)の状況において抗原を加工および提示するばかりでなく、T細胞活性化の実施または免疫寛容原性反応の誘導に必要なさらなる免疫調節分子も加工する。プロフェッショナル抗原提示細胞には、マクロファージ、単球、Bリンパ球、単球-顆粒球-DC前駆細胞を含む骨髄系譜の細胞、周辺帯のクッパー細胞、小膠細胞、T細胞、ランゲルハンス細胞、ならびに相互鉗合した樹状細胞および濾胞状樹状細胞を含む樹状細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。非プロフェッショナルまたは通性抗原提示細胞は、典型的には、Tリンパ球の活性化またはアネルギーを実施するために必要な一つまたは複数の免疫調節分子を欠く。非プロフェッショナルまたは通性抗原提示細胞の例には、活性化Tリンパ球、好酸球、ケラチノサイト、星状細胞、濾胞細胞、小膠細胞、胸腺皮質細胞、内皮細胞、シュワン細胞、網膜色素上皮細胞、筋芽細胞、血管平滑筋細胞、軟骨細胞、腸細胞、胸腺細胞、腎尿細管細胞および線維芽細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、単球、マクロファージ、Bリンパ球、骨髄系譜の細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。一部の有利な態様において、抗原提示細胞はCD11cを発現して、樹状細胞を含む。
【0101】
いくつかの態様において、抗原提示細胞は免疫応答を刺激する。その他の態様において、抗原提示細胞は免疫寛容原性反応を誘導する。
【0102】
抗原もしくは抗原の群に対する免疫応答を刺激するための、または抗原もしくは抗原の群に対するアネルギー反応の誘導または将来もしくは既存の免疫応答の抑制を含む免疫寛容原性反応を誘導するための抗原提示細胞は、当業者に公知である任意の適切な方法に従って作成してよい。抗原特異的免疫応答を刺激するための抗原提示細胞を作成するための例示的方法は、Albert et al.(国際公開公報第99/42564号)、Takamizawa et al.(1997,J Immunol, 158 (5): 2134-2142)、Thomas and Lipsky(1994, J Immunol, 153 (9): 4016-4028)、O'Doherty et al.(1994, Immunology, 82 (3): 487-93)、Fearnley et al.(1997, Blood, 89 (10): 3708-3716)、 Weissman et al.(1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92 (3): 826-830)、Freudenthal and Steinman(1990, Proc Natl Acad Sci USA, 87 (19): 7698-7702)、Romani et al.(1996, J Immunol Methods, 196 (2):137-151)、Reddy et al.(1997, Blood, 90 (9): 3640-3646)、Thurnher et al.(1997, Exp Hematol, 25 (3): 232-237)、Caux et al.(1996, J Exp Med, 184 (2): 695-706; 1996, Blood, 87 (6): 2376-85)、Luft et al.(1998, Exp Hematol, 26 (6): 489-500; 1998, J Immunol, 161 (4): 1947-1953)、Cella et al.(1999, J Exp Med, 189 (5): 821-829 ; 1997, Nature, 388 (644): 782-787; 1996, J Exp Med, 184 (2): 747-572)、Ahonen et al.(1999, Cell Immunol, 197(1): 62-72)およびPiemonti et al.(1999, J Immunol, 162 (11): 6473-6481)によって記載されている。免疫応答免疫応答を阻害するためまたは免疫寛容原性反応を誘導するための抗原提示細胞の作成の例示的方法は、FasLを用いたトランスフェクションによる「キラー樹状細胞(DC)」の作成、例えば国際公開公報第2004/014056号に記載されるようなNF-κBの阻害による未熟DCの作成、CLIP投与によるMHC阻害DCの作成、および転写後遺伝子スライシングまたはRNA干渉によるIL-12遺伝子スライシンングCDの作成のための方法を含めて、Ichim et al.(2003, Transplant Immunol 11: 295-306)によって記載されている。
【0103】
いくつかの態様において、抗原提示細胞は宿主から単離されて処理され、その後、宿主に再導入または再注入される。好都合なことに、抗原提示細胞は外科的除去、生検、採血、またはその他の適切な技術によって投与されるべき宿主から得ることができる。本明細書においてはこのような細胞を「自家」細胞と呼ぶ。その他の態様において、抗原提示細胞または細胞株は宿主以外の異なる供給源から調製および/または培養される。本明細書においてはこのような細胞を「同種」細胞と呼ぶ。望ましくは、同種抗原提示細胞または細胞株は、レシピエント候補に対して主要および/またはマイナー組織適合性抗原を共有する(同様に、本明細書においては、「同族」抗原提示細胞または細胞株と呼ぶ)。このタイプの一部の有利な態様において、同族の抗原提示細胞または細胞株は、特定の状況に対して感受性であるまたは素因のある集団の高い割合(即ち、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、92、94または98%)と適合する主要組織適合性(MHC)クラスI抗原を持つ。適切には、同族抗原提示細胞または細胞株は、自然の状態で、意図する宿主において免疫応答、望ましくはTリンパ球免疫応答(例えば、細胞傷害性Tリンパ球免疫応答)を引き起こすのに十分な量で本明細書に記載されるような免疫刺激分子、特に免疫刺激性膜分子を発現する。一部の態様において、抗原提示細胞または細胞株は、本明細書および国際公開公報第01/88097号に記載されるように少なくとも一つのIFNでの処理に対して高度に感受性である(即ち、クラスI HLAの多量の発現を意味する)。
【0104】
いくつかの態様において、抗原提示細胞は、抗原提示細胞による抗原の内部移行を可能とするための十分な条件下において抗原提示細胞を標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原に一時的に接触させる工程または「パルス標識」する工程;および抗原提示細胞を培養して抗原が抗原提示細胞によって提示のために加工されるための十分な条件下において一時的に接触させる工程を含むプロセスによって抗原特異的となる。続いて、パルス標識された細胞は、インビトロまたはインビボにおいて自己または同種T細胞を刺激するために用いることができる。当業者は、抗原提示細胞と接触させる抗原の量を経験的に決定することができる。典型的には、抗原提示細胞は37℃において約1時間〜6時間、抗原と共にインキュベートされる。通常、精製した抗原およびペプチドには、抗原特異的な抗原提示細胞の産生のために0.1μg/mL〜10μg/mLが適切である。抗原は、抗原提示細胞が抗原を内部移行し得る十分な期間、抗原提示細胞に暴露されなければならない。細胞が加工された抗原を内部移行して提示するために必要な時間および抗原の量はパルス-チェイスプロトコールを用いて決定することができ、この場合、抗原への暴露に続いて洗浄期間および読み出し系、例えば、抗原反応性T細胞への暴露が行われる。細胞が表面に加工された抗原を発現するために必要な最適な時間および量が決定されたら、プロトコールを用いて免疫寛容原性反応を誘導するために細胞および抗原を調製することができる。当業者は、この点に関して、抗原提示細胞が抗原を提示するために必要な時間の長さは抗原または用いられる抗原の型、その用量、および用いられる抗原提示細胞、ならびに抗原負荷が行われる条件に依存して変化し得ることを認識する。当業者は、定型の手順を用いてこれらのパラメータを決定することができる。
【0105】
抗原提示細胞への外因性抗原の送達は、当業者に公知の方法で増強することができる。例えば、抗原提示細胞、特に樹状細胞の内因性加工経路に対する外因性抗原の送達のために複数の異なる戦略が開発されている。これらの方法には、pH感受性リポソームへの抗原の挿入(Zhou and Huang, 1994, Immunomethods, 4: 229-235)、飲作用による可溶性抗原の取り込み後のリポソームの浸透圧性溶解(Moore et al., 1988, Cell, 54: 777-785)、抗原の強力アジュバントへの連結(Aichele et al., 1990, J. Exp. Med., 171: 1815-1820; Gao et al., 1991, J. Immunol., 147: 3268-3273; Schulz et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 991-993, Kuzu et al., 1993, Euro. J. Immunol., 23; 1397-1400;およびJondal et al., 1996, Immunity 5: 295-302)、および抗原のアポトーシス細胞送達(Albert et al. 1998, Nature 392: 86-89; Albert et al. 1998, Nature Med. 4:1321-1324;および国際公開公報第99/42564号および同01/85207号)が含まれる。組換え細菌(例えば、大腸菌)またはトランスフェクトした宿主哺乳動物細胞は、抗原送達のために(それぞれ、微粒子抗原またはアポトーシス体として)樹状細胞にパルス標識してもよい。組換えキメラウイルス様粒子(VLPs)は樹状細胞株のMHCクラスI加工経路への外因性異種抗原送達のための媒質としても用いられている(Backmann et al., 1996, Eur. J. Immunol., 26(11): 2595-2600)。
【0106】
または、あるいは加えて、MHCクラスI経路への送達のために本発明の抗原提示細胞のサイトゾルへの抗原の移動を増強するために、抗原を細胞溶解素と結合またはその他の方法で関連させてもよい。例示的な細胞溶解素には、サポニン含有免疫刺激複合体(ISCOM)のようなサポニン化合物(例えば、Cox and Coulter, 1997, Vaccine 15(3): 248-256、および米国特許第6,352,697号を参照されたい)、ホスホリパーゼ(Camilli et al., 1991, J. Exp. Med. 173: 751-754を参照されたい)、孔形成性毒素(例えば、α毒素)、リステリオライシンO(LLO、例えば、Mengaud et al., 1988, Infect. Immun. 56: 766-772、およびPortnoy et al., 1992, Infect. Immun. 60: 2710-2717)、ストレプトリシンO(SLO、例えば、Palmer et al., 1998, Biochemistry 37(8): 2378-2383)およびパーフリンゴリシンO(PFO、例えば、Rossjohn et al., Cell 89(5): 685-692)のようなグラム陽性細菌の天然細胞溶解素が含まれる。抗原提示細胞が食作用性である場合、酸活性化細胞溶解素を有利に用いることができる。例えば、リステリオリシンは軽度の酸性pH(ファゴソーム内のpH条件)においてより高い孔形成能を示して、それによって細胞質への空胞(ファゴソームおよびエンドソームを含む)内容の送達が促進される(例えば、Portnoy et al., Infect. Immun. 1992. 60: 2710-2717を参照されたい)。
【0107】
細胞溶解素は予め選択された抗原と共に単一の組成物の形で提供され得て、または抗原提示細胞と接触させるための別の組成物として提供され得る。一つの態様において、細胞溶解素は融解またはその他の方法で抗原と結合されて、融解または結合によって標的細胞のサイトゾルへの抗原の送達を可能とする。もう一つの態様において、細胞溶解素および抗原は、リポソームまたはウイルス、細菌もしくは酵母などから選択される微生物送達媒体のような送達媒体の形で提供されるが、これらに限定されるものではない。適切には、送達媒体が微生物送達媒体である場合、送達媒体は非病原性である。このタイプの好ましい態様において、送達媒体は、例えば、Portnoyらによって米国特許第6,287,556号に記載されるように非病原性細菌であり、細菌内において細胞溶解素を発現する調節ポリヌクレオチドに機能的に連結された非分泌型の機能性細胞溶解素をコードする第一のポリヌクレオチド、および一つまたは複数の予め選択された抗原をコードする第二のポリヌクレオチドを含む。非分泌型の細胞溶解素は、例えば、機能性シグナル配列の欠除、遺伝的異常(例えば、機能性シグナル配列突然変異)を持つ微生物のような分泌無能微生物、または有毒微生物など、様々なメカニズムによって提供され得る。様々な無毒性、非病原性の細菌が用いられ得る;好ましい微生物は比較的十分に性状が解明された系統であり、特にMC4100、MC1061、DH5αなどのような大腸菌の実験株である。本発明のために遺伝子組み換えできるその他の細菌には、リステリア菌(Listeria monocytogeaes)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、放線菌、サルモネラ、枯草菌(Bacillus subtilis)などの十分に性状が解明された無毒性の非病原性株が含まれる。特定の態様において、この細菌は非複製的、宿主細胞のゲノムに非組み込み性であり、および/または細胞間または細胞内で非運動性であるように弱毒化される。
【0108】
上記の送達媒体は、一つまたは複数の抗原を、食作用性および非食作用性の抗原提示細胞を含めて、対象媒体のエンドサイトーシスが可能な実際上任意の抗原提示細胞に送達するために用いることができる。送達媒体が微生物である態様において、対象の方法は、一般に、標的細胞による微生物の取り込み、および抗原提示細胞の空胞内(ファゴソームおよびエンドソームを含む)でのその後の溶解を必要とする。
【0109】
その他の態様において、抗原は例えば上記のような適切な発現ベクターの導入によって抗原提示細胞内で産生される。発現ベクターの抗原コード部分は天然の配列、または遺伝子組み換え技術を用いて組み換えられたその変異型を含み得る。変異型の一つの例において、抗原をコードするポリヌクレオチドのコドン組成物は、国際公開公報第99/02694号および同00/42215号に詳細に示される方法を用いて選択の標的細胞または組織において抗原の発現増強を可能とするように修飾される。つまり、これらの方法は、異なるコドンの翻訳効率は異なる細胞または組織の間で異なり、これらの差は遺伝子のコドン組成物と共に、特定の細胞または組織タイプにおけるタンパク質の発現を調節するために利用することができるという知見に基づく。従って、コドンに最適なポリヌクレオチドの構築物のために、親ポリヌクレオチドの少なくとも一つの既存のコドンが、標的細胞または組織内において、置換される既存のコドンよりも高い翻訳効率を持つ同義のコドンで置換される。親核酸分子のすべての既存のコドンを高い翻訳効率を持つ同義コドンで置換することが好ましいが、発現の亢進は部分的な置換でも達成可能であることから、これは必ずしも必要ではない。適切には、置換の工程は親ポリヌクレオチドの既存のコドンの5、10、15、20、25、30%、より好ましくは35、40、50、60、70%またはそれよりも多くに影響を及ぼす。
【0110】
抗原提示細胞への導入のための発現ベクターは、抗原をコードするポリヌクレオチドが細胞によって発現可能であるように適合性である。例えば、このタイプの発現ベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ならびにB型、C型およびD型レトロウイルスのようなレトロウイルスを含むウイルスDNA配列から派生することができるが、これらに限定されるものではない。動物細胞のトランスフェクションのための適切な発現ベクターは、例えば、WuおよびAtaai(2000, Curr. Opin. Biotechnol. 11 (2): 205-208)、VignaおよびNaldini(2000, J. Gene Med. 2 (5): 308-316)、Kay, et al.(2001, Nat. Med. 7(1) : 33-40)、Athanasopoulos, et al.(2000, Int. J. Mol. Med. 6 (4): 363-375)、ならびにWaltherおよびStein (2000, Drugs 60 (2): 249-271)によって述べられている。発現ベクターは、用いられる発現ベクターおよび抗原提示細胞の特定の選択に依存する任意の適切な方法によって抗原提示細胞に導入される。このような導入方法は当業者には周知である。例えば、導入は、接触法(ウイルスベクターの場合)、電気穿孔法、形質転換、形質導入、抱合または三親交配(トリパレンタルメーティング)、トランスフェクション、陽イオン性脂質との感染膜融合、DNAコーティングした微粒子を用いた高速照射、リン酸カルシウムを加えたインキュベーション-DNA沈降、単一細胞への直接マイクロインジェクションなどの使用によって達成することができる。その他の方法も有効であり、当業者には公知である。または、ベクターは、例えばリポソームの陽イオン性脂質を用いて導入される。このようなリポソームは市販されている(例えば、Life Technologies, Gibco BRL, Gaithersburg, Md.より供給されるリポフェクチン(登録商標)、リポフェクタミン(商標)など)。当業者は、本明細書に記載されるような、例えば、オリゴヌクレオチドの合成、核酸増幅技術、細胞の形質転換、ベクター、発現系などの構築、および形質導入、またはその他の方法での細胞への核酸分子の導入など、抗原提示核酸分子、免疫調節分子および/またはサイトカインを構築および発現するための技術は当技術分野において十分に確立されていることを理解し、大半の当業者は具体的な条件および操作に関して標準的な資源材料に精通している。
【0111】
いくつかの態様において、抗原提示細胞は、免疫応答の変更が所望される細胞集団または組織から抗原提示細胞またはそれらの前駆細胞を単離することによって得られる。典型的には、単離される抗原提示細胞または前駆細胞のいくつかは抗原を構造的に提示するか、または、インビボにおいて、免疫応答の刺激または阻害が所望される免疫応答の標的または潜在的標的であるこのような抗原を取り込む。この例において、外因性抗原の送達は本質的でない。または、細胞は健常または疾患組織の生検から派生し、融解またはアポトーシスの状態とされて、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)上にパルス標識され得る。このタイプの一部の態様において、抗原提示細胞は、抗原特異的な免疫応答が必要な癌または腫瘍細胞である。癌または腫瘍細胞の例示的な例には、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫の肉腫および癌;骨髄単球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球(顆粒球)白血病および慢性リンパ性白血病);ならびに真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストローム・マクログロブリン血症および重鎖病の細胞が含まれる。一部の態様において、癌または腫瘍の細胞は黒色腫細胞および乳癌細胞の群から選択される。
【0112】
上記のいくつかの態様において、癌または腫瘍細胞は通性または非プロフェッショナル抗原提示細胞を構築して、場合によっては、それらの抗原提示機能を増強するためにさらなる修飾が必要である可能性がある。これらの場合、抗原提示細胞は、動物体内で自然に生じて免疫応答を調節または免疫応答に直接影響を及ぼすことができる任意の分子を含む一つまたは複数の免疫調節分子を発現するためにさらに修飾され、これらの分子には以下が含まれる:TAP1/TAP2トランスポータータンパク質のような抗原の加工および提示に関与するタンパク質、LMP2およびLMP7のようなプロテオソーム分子、gp96、HSP70およびHSP90のような熱ショックタンパク質、ならびに主要組織適合複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)分子;B7およびCD40のようなT細胞活性化のための共刺激シグナルを発する因子;OX-2、プログラム死-1リガンド(PD-1L)のような、T細胞の直接的死滅またはTリンパ球もしくはBリンパ球のアネルギーを誘導またはT制御細胞(Treg)産生の刺激のための共阻害シグナルを発する因子;CD83のようなアクセサリー分子;インターフェロンα、βおよびγ、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-22など)のようなリンホカインおよびサイトカイン、細胞増殖を刺激する因子(例えば、GM-SCF)、およびその他の因子(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、DC-SIGN、MIP1α、MIP1β、および腫瘍増殖因子β(TGF-β)。一部の有利な態様において、免疫調節分子はB7分子(例えば、B7-1、B7-2またはB7-3)およびICAM分子(例えば、ICAM-1およびICAM-2)から選択される。
【0113】
組換え技術によって発現する免疫調節分子の代わりに、所望の免疫刺激分子を発現する抗原提示細胞を異種細胞集団から単離または選択してもよい。単離/選択の任意の方法は本発明によって意図されて、それらの例は当業者に公知である。例えば、当業者は、異種性の集団から細胞を特異的に単離するために細胞の一つまたは複数の特定の性状を利用することができる。このような性状には、細胞の解剖学的位置、細胞密度、細胞の大きさ、細胞の形態、細胞代謝活性、Ca2+、K+およびH+イオンなどのイオンの細胞の取り込み、スタチンのような化合物の細胞の取り込み、細胞表面に発現するマーカー、タンパク質の蛍光、および膜電位が含まれるが、これらに限定されるものではない。この観点において用いることのできる適切な方法には、組織の外科的除去、蛍光標示式細胞分取法(FACS)のようなフローサイトメトリー技術、免疫親和性による分離(例えば、Dynabead(商標)分離のような磁気ビーズを用いた分離)、密度分離(例えば、メトリザマイド、Percoll(商標)、またはFicoll(商標)濃度勾配遠心分離法)、および細胞タイプ特異的な密度分離が含まれる。望ましくは、細胞はフローサイトメトリーによって、または免疫調節分子と免疫相互作用する抗原結合分子を用いた免疫親和性分離によって単離される。
【0114】
または、免疫調節分子は可溶性の形で抗原提示細胞に提供することができる。このタイプのいくつかの態様において、免疫調節分子は機能性膜貫通型ドメインを持たないB7分子であり(例えば、B7細胞外ドメインを含む)、この非限定的な例についてはMcHughら(1998, Clin. Immunol. Immunopathol. 87 (1) : 50-59)、Faasら(2000, J. Immunol. 164 (12): 6340-6348)およびJeanninら(2000, Immunity 13 (3): 303-312)によって記載されている。このタイプのその他の態様において、免疫刺激タンパク質は、免疫グロブリン分子または生物学的に活性なその断片のような抗原結合分子と共に結合されたB7分子もしくは生物学的に活性なその断片、またはこれらの変異型もしくは誘導体を含むキメラまたは融合タンパク質を含むB7誘導体であるが、これらに限定されるものではない。例えば、1位前後から215位前後までのアミノ酸を含むB7-1分子の細胞外ドメインに対応するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、B7Ig融合タンパク質として発現する構築物を形成するために、PCRを用いてヒトIgCγ1のヒンジ、CH2およびCH3領域に対応するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに結合される。B7Ig融合タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードするDNAは、1991年5月31日にブダペスト条約に基づいてRockville, Md.のAmerican Type culture Collection(ATCC)に寄託され、アクセッション番号68627とされている。このようなB7誘導体の作成および組み立てのための技術は、例えば、Linsleyら(米国特許第5,580,756号)により開示される。参照は、IgG2aのFc部分にフレームとして融合したB7-1またはB7-2の細胞外領域を含む融合タンパク質を開示するSturmhoefelら(1999, Cancer Res. 59: 4964-4972)にも行われ得る。
【0115】
可溶性免疫調節分子の半減期は、所望ならば、任意の適切な方法で延長することができる。好ましくは、このような分子は、例えば、Chapmanら(1999, Nature Biotechnology 17: 780-783)によって開示されるようなモノメトキシ-ポリエチレングリコールを含むポリエチレングリコール(PEG)で化学的に修飾される。
【0116】
または、あるいは加えて、抗原提示細胞は、細胞の抗原提示機能を増強するために十分な条件下において少なくとも一つのインターフェロンの存在下で一時的に培養して、インターフェロンを除去するために細胞を洗浄する。このタイプの一部の有利な態様において、培養する工程は細胞を少なくとも1つのI型インターフェロンおよび/またはII型インターフェロンと接触させる工程を含む。少なくとも一つのI型インターフェロンは、IFN-α、IFN-β、IFN-αの生物学的に活性な断片、IFN-βの生物学的に活性な断片、IFN-αの変異型、IFN-βの変異型、生物学的に活性な該断片の誘導体、該変異型の誘導体、IFN-αの類似体、およびIFN-βの類似体からなる群から適切に選択される。典型的には、II型インターフェロンは、IFN-γ、IFN-γの生物学的に活性な断片、IFN-γの変異型、生物学的に活性な該断片の変異型、IFN-γの誘導体、生物学的に活性な該断片の誘導体、該変異型の誘導体、およびIFN-γの類似体からなる群から選択される。インターフェロン処理を用いた抗原提示細胞の抗原提示機能を増強するための例示的な方法および条件は国際公開公報第01/88097号に記載されている。
【0117】
いくつかの態様において、抗原提示細胞(例えば、癌細胞)または細胞株は、対象に投与された後のさらなる増殖を防ぐために適切に不活化される。放射線照射(一般に少なくとも約5,000cGy、通常な少なくとも約10,000cGy、典型的には少なくとも約20,000cGy);またはマイトマイシンCでの処理(一般に少なくとも10μg/mL;より一般的には少なくとも約50μg/mL)を含むがこれらに限定されない任意の物理的、化学的または生物学的な不活化方法が用いられ得る。
【0118】
抗原提示細胞は、抗原またはその加工された型がTリンパ球およびBリンパ球を含むその他の免疫細胞の潜在的修飾のために、特に特定の抗原または抗原の群に対して反応するように初回刺激されたTリンパ球およびBリンパ球を産生するためにそれらの細胞によって提示されるように、任意の数の方法によって一つまたは複数の抗原を含むおよび/または発現するように得るまたは作成してよい。
【0119】
免疫エフェクター細胞
いくつかの態様において、上記の抗原提示細胞は抗原または抗原の群に対して初回刺激されたTリンパ球の産生に有用である。その他の態様において、抗原特異的抗原提示細胞は、抗原または抗原の群に対して免疫寛容/アネルギーを示すTリンパ球を産生するために有用である。特定の抗原に対して免疫応答または免疫寛容/アネルギーを示すためにリンパ球、特にTリンパ球を誘導する有効性は、例えば、抗原特異的細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の標的である抗原特異的抗原提示細胞を用いたインビトロにおけるTリンパ球細胞溶解活性のアッセイ;抗原特異的Tリンパ球増殖アッセイ法(例えば、Vollenweider and Grosheurth, 1992, J. Immunol. Meth. 149: 133-135を参照)、例えばELISPOTアッセイ法およびELISAアッセイ法を用いた抗原に対するB細胞応答の測定;サイトカインプロフィールの解明;または特定の抗原に対する皮膚反応性の試験による遅発性過敏症(DTH)反応の測定(例えば、Chang et al. (1993, Cancer Res. 53: 1043-1050))を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によって調べることができる。当業者に公知である、抗原への暴露後に抗原提示細胞の表面における抗原の存在を検出することができるその他の方法も本発明によって意図される。
【0120】
従って、本発明は、抗原の提示に対して抗原特異的に反応する抗原特異的なBまたはTリンパ球、特にTリンパ球も提供する。いくつかの態様において、抗原特異的Tリンパ球は、上記のような抗原提示細胞をTリンパ球の集団と接触させることによって産生されて、Tリンパ球集団は脾臓または扁桃/リンパ節のような任意の適切な供給源から得ることができるが、好ましくは末梢血から得られる。Tリンパ球は、粗調製物として、または部分的に精製された、もしくは実質的に精製された調製物として用いることができて、これらの調製物は例えば「Immunochemical Techniques, Part G: Separation and Characterization of Lymphoid Cells」(Meth. in Enzymol. 108, Edited by Di Sabato et al., 1984, Academic Press)に記載されるような標準的な技術を用いて適切に得られる。これには、ヒツジ赤血球との叢生、接着細胞を枯渇させるためのナイロンウールまたはプラスチック吸着物のカラムへの通過、適切なモノクローナル抗体を用いた免疫磁気的またはフローサイトメトリーによる選別が含まれ、当技術分野において公知である。
【0121】
Tリンパ球の調製物を、本明細書に記載されるように抗原特異的抗原提示細胞と、これらの抗原提示細胞によって提示される抗原(antigen)または抗原(antigens)に対してTリンパ球を初回刺激またはアネルギー化するために十分な時間、接触させる。この期間は、通常、少なくても約1日、および約5日までである。
【0122】
免疫寛容またはアネルギー誘導性の抗原特異的抗原提示細胞を用いる態様において、このような細胞によって誘導される抗原特異的アネルギーは一つまたは複数のタイプの抗原特異的調節リンパ球、特に調節Tリンパ球の誘導を伴う。調節Tリンパ球の複数の集団が、抗原特異的な方法で、例えばTr1リンパ球、Th3リンパ球、Th2リンパ球、CD8+CD28調節Tリンパ球、CD4+CD25+調節Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)Tリンパ球およびγδTリンパ球を含むその他の(エフェクター)リンパ球の反応を阻害することは公知である。
【0123】
Tr1リンパ球は、IL-10の存在下でヒト血液T細胞を同種単球で複数回刺激した後に出現することができる。この亜集団は多量のIL-10および適度な量のTGFβを分泌するが、IL-4またはINFγはほとんど分泌しない(Groux et al., 1997, Nature 389:737-742)。
【0124】
Th3調節亜集団は、経口(またはその他の粘膜)経路を介した抗原送達後に誘導される特異的サブセットを指す。これらは主としてTGFβを産生して、IL-10、IL-4またはIFNγの量はごく少量であり、IgAの産生には特に役立つ(Weiner et al., 2001, Microbes Infect 3:947-954)。これらはTh1およびTh2の双方の型のエフェクターT細胞を抑制することができる。
【0125】
Th2リンパ球は多量のIL-4、IL-5およびIL-10を産生するが、IFNγおよびTGFβの産生は少量である。Th2リンパ球は、同属のペプチドリガンドが提示されると環境中の比較的豊富なIL-4およびIL-12の欠除に反応して産生される(O'Garra and Arai, 2000, Trends Cell Biol 10:542-550)。CD86によるTリンパ球シグナル伝達はTh2細胞の産生にとっても重要であり得る(Lenschow et al., 1996, Immunity 5:285-293; Xu et al., 1997, J Immunol 159: 4217-4226)。
【0126】
Tリンパ球の異なるCD8+CD28-調節または「サプレッサー」サブセットは、インビトロにおける反復抗原刺激によって誘導することができる。それらはMHCクラスI拘束性であり、CD4+ T細胞の反応を抑制する。
【0127】
Tリンパ球のCD4+CD25+ 調節または「サプレッサー」サブセットは様々な自己免疫および炎症性疾患を阻害して、同種抗原反応の抑制にも有効である。特に、これらのリンパ球はT細胞の反応、抗体産生、サイトカイン分泌および抗原提示細胞に影響することによって、免疫応答をダウンレギュレートすることができる(例えば、Suvas et al., 2003, J Exp Med. 198(6): 889-901; Taams et al., 2003, Transpl Immunol. 11(3-4): 277-85; Jonuleit et al., 2003, Transpl Immunol. 11(3-4): 267-76; Green et al. 2003, Proc Natl Acad Sci U S A. 100(19): 10878-10883を参照されたい)。CD4+CD25+調節T細胞はインビトロにおける反復抗原刺激によって産生される(Feunou et al., 2003, J Immunol. 171(7):3475-84)。
【0128】
NK細胞マーカーであるCD161を発現して、そのTCRがヒトにおいてはVα24JαQでありマウスにおいてはVα14Jα281であるNK Tリンパ球は、糖脂質抗原の提示を介して非多型CD1d分子によって特異的に活性化される(Kawano et al., 1997, Science 278: 1626-1629)。それらは、多くの実験系において免疫調節性であることが示されている。それらは疾患発症前の複数の自己免疫モデルにおいて数が減少して、非肥満性糖尿病(NOD)マウスに受動輸送されると疾患の発生率を下げることができる。CD1dによって提示される糖脂質のα-ガラクトシルセラミド(α-gal cer)を投与した場合も、これらのマウスにおいてNKTリンパ球の蓄積および糖尿病の緩解が見られる(Naumov et al., 2001, Proc Natl Acad Sci U S A 98: 13838-13843)。
【0129】
γδ Tリンパ球は、様々な炎症性疾患において免疫応答のダウンレギュレートに、または粘膜免疫寛容の誘導に関連する炎症の抑制に関連付けられている。粘膜抗原によって誘導される免疫寛容は、少数のγδ T細胞によって無処理のレシピエントマウスに移行可能である(McMenamin et al., 1995, J Immunol 154:4390-4394; McMenamin et al., 1994, Science 265:1869-1871)。さらに、粘膜免疫寛容誘導は、γδ T細胞機能を遮断するGL3抗体の投与によって遮断された(Ke et al., 1997, J Immunol 158: 3610-3618)。
【0130】
インビトロまたはインビボにおいて抗原特異的Tリンパ球が抗原提示細胞と接触して産生されるかどうかにかかわらず、抗原提示細胞によって誘導される抗原特異的アネルギーはその後の特異抗原での再刺激に対する抗原特異的リンパ球の反応不能性を反映する。これらの抗原特異的リンパ球は、抗原特異的な方法でIL-10の産生によって適切に特徴付けられる。IL-10は強力な免疫抑制脳を持つサイトカインである。IL-10は異なるレベルで抗原特異的Tリンパ球の増殖を阻害する。IL-10は、MHCクラスII分子、ならびに接着分子および共刺激分子であるICAM-1ならびにB7.1およびB7.2の発現をダウンレギュレートすることによって、単球、樹状細胞およびランゲルハンス細胞のようなプロフェッショナル抗原提示細胞の抗原提示およびアクセサリー細胞機能を阻害する(インターロイキン10、de Vries and de Waal Malefyt, eds., Landes Co, Austin Tex., 1995において総説)。IL-10はこれらの細胞によるIL-12の産生も阻害する。IL-12はTリンパ球の活性化およびTh1リンパ球の分化を促進する(D'Andrea, et al. 1993, J. Exp. Med. 178: 1041-1048; Hsieh et al., 1993, Science 260: 547-549)。さらに、IL-10は、これらの細胞によるIL-2遺伝子転写およびIL-2産生を阻害することによってTリンパ球の増殖を直接阻害し(インターロイキン10、de Vries and de Waal Malefyt, eds., Landes Co, Austin Tex., 1995において総説)、それ自体が調節T細胞を誘導する抗原提示細胞を促進する(米国特許第6,277,635号)。従って、いくつかの態様において、アネルギー性Tリンパ球の存在は、例えばELISAによって、細胞上清中のIL-10産生をアッセイすることによって、または細胞内染色のフローサイトメトリー分析によって測定することができる。
【0131】
2.2.3 抗原結合分子
本発明は、免疫調節物質である特定の標的抗原と特異的に免疫相互作用性である抗原結合分子の使用も意図する。いくつかの態様において、この標的抗原は増強された免疫応答が必要とされる疾患もしくは状態において、または特異的な病原体によって発現される。その他の態様において、標的抗原は、典型的には正常な状態、つまり疾患もしくは状態がない場合の状態に比べて疾患または状態において多量にて、異常に発現する。抗原結合分子は、第2.2.1節において例として示すように、標的抗原と適切に相互作用性である。当技術分野では、本発明において有用な多くの抗原結合分子が公知である。結腸癌が治療の対象である例示的な例において、抗原結合分子は、Cripto-1タンパク質、Pim-1タンパク質、または、例えば米国特許出願公報20040176576号に開示されるような結腸癌細胞溶解物中に含まれる抗原と免疫相互作用性である。
【0132】
いくつかの態様において、抗原結合分子はホールポリクローナル抗体である。このような抗体は、例えば、ポリクローナル抗血清を得るために、標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原を、マウスまたはウサギを含み得る産生動物種に注入することによって作成することができる。ポリクローナル抗体を作成する方法は当業者には周知である。用いられ得る例示的プロトコールは、例えば、Coliganら「CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY」、(John Wiley & Sons, Inc, 1991)、およびAusubelら(1994-1998、前記)、特に第11章第III節に記載されている。
【0133】
産生動物種において得られたポリクローナル抗血清の代わりに、例えば、KohlerおよびMilstein(1975, Nature 256, 495-497)によって記載されるような標準的方法を用いて、または例えばColiganら(1991年、前記)に記載された上記のような一つまたは複数の抗原を接種しておいた産生動物種から派生した脾臓またはその他の抗体産生細胞を不死化することによるそれらのより最近の変法によって、産生することができる。
【0134】
本発明は、抗原結合分子としてFv、Fab、Fab'およびF(ab')2の免疫グロブリン断片も意図する。または、抗原結合分子は合成安定化Fv断片を含んでもよい。このタイプの例示的断片には、VHドメインのN末端またはC末端をそれぞれ、VLドメインのC末端またはN末端と結合するためにペプチド結合剤が用いられる単鎖Fv断片(sFv、しばしばscFvと呼ばれる)が含まれる。ScFvはホール抗体のすべての定常領域を欠き、補体を活性化することができない。ScFvsは、例えば、Kreberら(Kreber et al. 1997, J. Immunol. Methods; 201(1): 35-55)に概述される方法に従って作成することができる。または、それらは、米国特許第5,091,513号、欧州特許第239,400号、またはWinterおよびMilstein(1991, Nature 349:293)ならびにPluckthunら(1996, In Antibody engineering: A practical approach. 203-252)に記載された方法によって作成してもよい。もう一つの態様において、合成安定化Fv断片は、完全に折りたたまれたFv分子において2つの残基がそれらの間にジスルフィド結合を形成するようにシステイン残基がVHおよびVLドメインに導入されるジスルフィド安定化Fv(dsFv)を含む。dsFvを作成する適切な方法は、例えば、(Glockscuther et al. Biochem. 29: 1363-1367; Reiter et al. 1994, J. Biol. Chem. 269: 18327-18331; Reiter et al. 1994, Biochem. 33: 5451-5459; Reiter et al. 1994. Cancer Res. 54: 2714-2718; Webber et al. 1995, Mol. Immunol. 32: 249-258)に記載されている。
【0135】
2.3 補助的コンポーネント
いくつかの態様において、組成物は、

、またはそれらの機能性、組換えもしくは化学的同等品もしくは同族体から適切に選択される一つまたは複数のサイトカインをさらに含む。好ましくは、サイトカインはIL-12、IL-3、IL-5、TNF、GMCSF、およびIFN-γからなる群から選択される。
【0136】
3.細胞に基づく療法または予防
本発明に従って、第2.1節に記載されるレクチン相互作用物質は、例えば免疫応答を初回刺激するため、または一つもしくは複数の同族抗原に対する免疫寛容原性の免疫応答を誘導するなど免疫応答を調節するために、第2.2.2節に記載される抗原提示細胞および/または免疫エフェクター細胞と共に患者に投与することができる。従って、これらの細胞に基づく組成物は、標的抗原の存在または異常発現に関連する疾患または状態を治療または予防するために有用である。本発明の細胞は任意の方法(例えば、注入)で患者に導入することができて、これによって抗原または抗原の群に対して所望の免疫応答を生じる。細胞は、患者(即ち、自己細胞)、またはMHCが患者と適合する個体もしくは適合しない個体(individual)もしくは個体(individuals)(即ち、同種)から派生し得る。典型的には、自己細胞は、元細胞が採取された患者当人に再び注入される。注入部位は、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内または静脈内であってよい。細胞は、既に疾患または状態に苦しんでいる患者、または疾患もしくは状態に対して素因のある患者に対して、その疾患または状態の症状を治療もしくは阻止または軽減するために十分な数で投与し得る。治療または予防を必要とする患者に注入される細胞の数は、とりわけ、抗原(antigen)または抗原(antigens)、および個体の大きさによって変更してよい。この数は、例えば約103〜1011個、通常は約105〜107個の細胞の範囲であってよい(例えば、樹状細胞またはTリンパ球)。細胞の単回または反復投与が実施可能であり、細胞の数およびパターンは治療を行う医師によって選択される。細胞は、細胞および個体に対して無毒である薬学的に許容可能な担体を用いて投与されなければならない。このような担体は、細胞が培養された培養培地、またはリン酸緩衝生理食塩液のような任意の適切な緩衝媒質であってよい。細胞は、単独、または例えば糖コルチコイド、メトトレキセート、D-ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、金塩、スルファサラジン、TNFαもしくはインターロイキン1阻害物質、および/またはその他の特異的免疫療法の型などの好ましくない免疫応答の治療または予防のために当技術分野で公知のその他の治療と併用した補助療法として投与してもよい。
【0137】
4.薬学的製剤
本発明は、第2.1節に記載されるようなレクチン結合物質、例えば第2.2.1節に記載されるような抗原、第2.2.2節に記載されるような免疫エフェクター細胞、もしくは第2.2.3節に記載されるような抗原結合分子である免疫調節物質、またはそれらの組み合わせ(治療/予防用物質)を標的抗原の存在または異常発現に関連する様々な疾患または状態の治療または予防のための活性成分として含む、ワクチンを含む免疫調節性製剤も意図する。これらの治療/予防用物質は単独で、または薬学的に許容される適切な担体および/もしくは希釈剤、またはアジュバントと混合した製剤として患者に投与できる。
【0138】
このような製剤の調製には、当業者に公知である定型の方法を用いる。典型的には、このような製剤およびワクチンは、溶液または懸濁液のいずれかの注射可能剤として調製される;注入前に液体への溶解または懸濁に適した固形剤を調製してもよい。調製物は乳化剤であってもよい。活性な免疫原性成分は、しばしば、薬学的に許容可能および活性成分と適合可能な賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、リン酸緩衝生理食塩液、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望ならば、ワクチンに、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントのような少量の補助物質を加えてもよい。有効であり得るアジュバントの例は、ヘキサデシラミン、オクタデシラミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リソレクチン、ジメチルジオクタデシル臭化アンモニウム、N,N-ジオクタデシル-N',N'ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニック(pluronic)ポリオールのような表面活性物質;ピラン、硫酸デキストラン、ポリICカルボポールのようなポリアミン;リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはミョウバンのような鉱物ゲル;ムラミルジペプチドのようなペプチドならびにN-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thur-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、ノル-MDPと記載される)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP1983A、MTP-PEと記載される)、および細菌から抽出された三成分であるモノホスホリル脂質A、ジメチルグリシン、ツフシンを含むRIBIのような誘導体;油乳濁液;2%スクアレン/Tween 80乳濁液中トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS);リンホカイン;QuilAおよび免疫刺激複合体(ISOCOMS)を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、アジュバントの有効性は、ワクチンの投与された細胞によって提示される一つまたは複数の抗原に方向付けられた、ワクチン投与に起因する抗体の量を測定することによって決定することができる。
【0139】
活性成分は、投与される細胞および個体に対して無毒である薬学的に許容される担体に混合して投与されなければならない。このような担体は、細胞が培養された培養培地であり得る。適合可能な賦形剤には、リン酸またはHepesのような生理学的に適合可能な緩衝液、生理学的に適合可能なイオン、またはアミノ酸を含むまたは含まない等張生理食塩液、および細胞集団、特にその他の免疫原性コンポーネントを持たない細胞集団との使用に適した様々な培養培地が含まれる。アルブミンおよび血漿の画分ならびに非活性増粘剤のような運搬試薬も使用できる。ワクチンに加えられる限り、非活性の生物学的コンポーネントは、好ましくは投与を受ける動物またはヒトと同系から派生し、より好ましくは予めその対象から得られる。注入部位は、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内または静脈内であってよい。
【0140】
可溶性の活性成分を用いる場合、その可溶性活性成分は中性または塩の形でワクチンに製剤化することができる。薬学的に許容される塩は酸性付加塩(ペプチドのフリーアミノ基と共に形成される)を含み、例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸などのような有機酸を用いて産生される。フリーのカルボキシル基を用いて産生される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から派生させることもできる。
【0141】
所望ならば、装置または薬学的組成物、または持続性もしくは間欠性の放出に適したワクチンを含む組成物は、事実上、このような物質が体内に比較的ゆっくりと放出されるように身体に埋め込み、または局所に適用することができる。
【0142】
製剤化および投与のための技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co., Easton, Pa.の最新版で見ることができる。例えば、適切な経路には、経口、経直腸、経粘膜、または経腸投与;筋肉内、皮下および髄内注入、ならびに気管内、直接的心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注入を含む非経口送達が含まれ得る。
【0143】
投与される用量は、年齢、性別、体重およびそれらの全般的健康状態を含めて投与される対象に依存し得る。用量には、レクチン相互作用物質のレクチンへの結合親和性、その生物学的利用能、ならびにそのインビボおよびファーマコキネティクス上の特性も考慮に入れる。この点に関して、投与のための物質の正確な量は実践者の判断に委ねることもできる。疾患または状態の治療において投与される物質の有効量の決定に際して、医師または獣医師は疾患または状態の時間を通しての進行を評価してよい。いずれの場合も、当業者は必要以上の経験がなくても本発明の物質の適切な用量を容易に決定することができる。細胞を含む組成物およびワクチンは、投与当たり約104〜1010個、より好ましくは約106〜108個の投与細胞の範囲で適切に患者に投与される。患者に投与される活性成分の用量は、癌または腫瘍に関連する症状の抑制のように、期間を通して、患者において有益な反応をもたらすために十分でなければならない。例えば、炭水化物レクチン相互作用物質の全身投与のための通常の患者の用量は、0.1g/日〜200g/日の範囲であり、典型的には1g/日〜160g/日、より典型的には10g/日〜70g/日である。患者の体重に換算して記載すると、通常の用量は1.5〜3000mg/kg/日、典型的には15〜2500mg/kg/日、より典型的には150〜1000mg/kg/日の範囲である。
【0144】
5.免疫応答を調節するための方法
本発明の組成物は、対象における免疫応答を調節するために用いられ得る。従って、一つの態様において、本発明の組成物またはワクチンを対象に投与することによって、対象の免疫応答を増強するための方法を提供する。好都合なことに、この免疫応答は細胞介在性の免疫応答である(例えば、望ましくはCD4+および/またはCD8+ T細胞を含むT細胞介在性反応)。
【0145】
組成物の活性成分は連続的、同時または別々に投与してよい。
【0146】
疾患または状態の治療および/または予防のための方法であって、このような治療を必要とする患者に上記に幅広く記載されるような組成物の有効量を投与する工程を含む方法も本発明に含まれる。一部の態様において、組成物は標的抗原に対する免疫応答を刺激または増幅するために設計される。これらの態様において、標的抗原は典型的には、癌、感染性疾患、および免疫不全症を特徴とする疾患から適切に選択される疾患または状態に関連するまたは原因となる。癌の例には、ABL1プロトオンコジーン、エイズ関連性の癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星細胞腫、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成小細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼の癌、眼:黒色腫、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニー貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化器癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠期栄養膜疾患、神経膠腫、婦人科の癌、血液学的悪性腫瘍、毛様細胞白血病、頭部および頸部の癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳房癌、悪性腎臓杆状体腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌新生物、菌状息肉症、骨髄形成異常性症候群、ミエローマ、骨髄増殖性疾患、鼻性癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維腫症、ナイメーヘン切断症候群、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼部癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、小孔卵巣癌、膵癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌および関連疾患、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ロスムンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌(膀胱)、移行細胞癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、腟癌、外陰部癌、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
その他の態様において、本発明の組成物は、正常な免疫応答を示すことのできない免疫不全の個体に養子移入するための大量のCD8+またはCD4+ CTLを作成するために使用することもできる。例えば、抗原特異的CD8+ CTLは、HIV感染症(Koup et al., 1991, J. Exp. Med. 174: 1593-1600; Carmichael et al., 1993, J. Exp. Med. 177: 249-256; and Johnson et al., 1992, J. Exp. Med 175: 961-971)、マラリア(Hill et al., 1992, Nature 360: 434-439)、および黒色腫のような悪性腫瘍(Van der Brogen et al., 1991, Science 254: 1643-1647; and Young and Steinman 1990, J. Exp. Med., 171: 1315-1332)の患者において治療目的に養子移入することができる。
【0148】
その他の態様において、組成物はウイルス性、細菌性または寄生虫性感染症の治療または予防に適している。本発明によって意図されるウイルス性感染症には、HIV、肝炎、インフルエンザ、日本脳炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスによって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。細菌感染症には、ナイセリア属、髄膜炎菌属、ヘモフィルス属、サルモネラ属、連鎖球菌属、レジオネラ属およびマイコバクテリウム属によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明に含まれる寄生虫感染症には、プラスモディウム属、住血吸虫属、リーシュマニア属、トリパノソーマ属、トキソプラズマ属およびジアルジア属によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
さらにその他の態様において、組成物は免疫寛容を誘導するまたはその他の方法で標的抗原に対する免疫応答を減弱させるように設計される。これらの態様において、標的抗原は典型的には、移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫病、炎症性疾患および自己免疫疾患から適切に選択される疾患または状態と関連するまたは原因となる。本発明に従って治療または予防することができる移植拒絶反応の例には、骨髄、および心、肝、膵、腎、肺、眼、皮膚などのような臓器の移植に関連する拒絶反応含まれる。アレルギーの例には、喘息、枯草熱、食物アレルギー、動物アレルギー、アトピー性皮膚炎、鼻炎、昆虫、魚に対するアレルギー、ラテックスアレルギーなどが含まれる。本発明によって治療または予防することができる自己免疫疾患の例には、例えば、乾癬、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、スティッフマン症候群、甲状腺炎、シデナム舞踏病、慢性関節リウマチ、糖尿病および多発性硬化症が含まれる。炎症性疾患の例には、クローン病、大腸炎、慢性炎症性眼部疾患、慢性炎症性肺疾患および慢性炎症性肝疾患が含まれる。
【0150】
免疫化または免疫寛容の有効性は任意の適切な技術を用いて評価することができる。例えば、51CrまたはAlamar Blue(商標)で標識した標的細胞を用いたペプチドコーティングまたは組換えウイルス感染細胞に対して、刺激した脾細胞または末梢血単核細胞(PBMC)を用いてCTL溶解アッセイを行うことができる。このようなアッセイは、例えば霊長類、マウスまたはヒトの細胞を用いて実施できる(Allen et al., 2000, J. Immunol. 164 (9): 4968-4978、同じくWoodberry et al.、下記)。または、免疫化の有効性は、新鮮または刺激したPBMC双方のHLAクラスI四量体染色(例えば、Allenら、前記を参照)、増殖アッセイ法(Allenら、前記)、ELISPOTアッセイ法および細胞内IFN-γ染色(Allenら、前記)、ELISAアッセイ−線形B細胞反応に対する;および合成ポリヌクレオチドを発現する細胞試料のウェスタンブロットを含むがこれらに限定されない一つまたは複数の技術を用いてモニターされ得る。
【0151】
本発明を容易に理解して実際的な効果をもたらし得るために、特に好ましい態様が以下の非限定的な実施例によって説明されるであろう。
【0152】
実施例
実施例1
マウスモデルにおける抗癌ワクチンの有効性を高めるためのラクツロースの使用
C57bl/6jマウスの齢期および性別を対応させた。最初の群(群3)に、国際公開公報第01/88097号に記載されるようにIFN-γおよびIFN-βで処理したB16F10-B7.1 highを含むワクチンを投与して、この細胞は5×107細胞/mLにて1.5時間、放射線を照射した。ワクチン細胞単独または20mg/mLラクツロース溶液を1:1の割合で細胞懸濁液に加えたワクチン細胞のいずれかをマウスに投与した。ワクチンは十分に混合して、マウス1匹当たり400μLの最終液量で腹腔内に注入した。これにより、ワクチンの用量は、ワクチンおよびラクツロースを投与するマウスのコホート(n=4)において、ワクチン接種当たり、最終的に10mg/mLラクツロースを含む1×107細胞/注入となった。各マウスに対して、週1回、6週間にわたって上記の細胞混合物をワクチン接種した。7週目に、マウスに対して5×105個のB16F10-B7.1 med生細胞(ラクツロースを含まない)を用いて背部皮下を刺激した。
【0153】
この実験実施期間中、二番目の群(ラクツロースなし;群2)に週1回、5週間にわたってワクチン接種し、放射線照射(1.5時間)したB16F10B7.1 highおよびIFNγβを、マウス当たり200μL中 合計1×107個の細胞を腹腔内に注入した。6週目に、二番目の群にB16F10-B7.med(ラクツロースなし)の5×105個の生細胞を用いて皮下を刺激した。三番目のマウスの群(対照;群1)には刺激前にワクチンを投与せず、通常通り、すべてのマウスに5×105個のB16F10-B7.1 medの生細胞を用いて皮下刺激を行った。図1は、MedCalcソフトウェア バージョン7.4.4.1を用いた分析の結果を示す。Kaplan-Meierの生存曲線から、黒色腫の生細胞で刺激した際にワクチンおよびラクツロース群は優れた生存性を示して、生存率はワクチン単独群の〜25%に対して>60%であったことが明らかである。
【0154】
以上により、3つの生存曲線から得られる結果は互いに著しく異なる。ワクチン接種を受けなかったすべてのマウス(群1)はDay 33までに死亡して、生存期間中央値はわずかに24日であったが、ワクチン接種したマウス(群2)の生存期間中央値は38日であり、ワクチンおよびラクツロースの群(群3)は、大半のマウスが引き続き生存しているために生存期間中央値を示す可能性は低い。
【0155】
実施例2
レクチン阻害物質のための高速スクリーニングアッセイ
本発明者は、様々なレクチン相互作用物質の免疫増強活性を分析するための高速スクリーニングアッセイ法を確立している。アッセイ法は、ワクチン接種したマウスの脾臓から派生したリンパ球の、該物質の添加時または無添加時の混合リンパ球培養(MLC)での生育能に基づく。このアプローチの背景にある理論は、腫瘍細胞はガレクチンを分泌し、このガレクチンがTリンパ球を死滅させるということである。従って、腫瘍細胞が典型的にTリンパ球の増殖および生存を促進するためにMLC中にて刺激物質として用いられ、培養中に分泌されるガレクチンの作用が適切なガレクチン阻害物質を用いて遮断されるとすると、培養中のTリンパ球の数は阻害物質を含まないそれぞれの培養に比較して増加するはずである。
【0156】
プロトコール:
NeuD12 FVB/N 202乳癌細胞またはC57bl6J由来のB16F10黒色腫細胞のいずれかの腫瘍細胞をアッセイの刺激物質および標的細胞として用いた。MLC中の刺激物質として用いた腫瘍細胞については、多量のB7抗原を発現するように国際公開公報第01/88097号に概述される通りに調製して、インターフェロンβ(1000IU/mL)をさらに24時間〜48時間加える前に、インターフェロンγ(1000IU/mL)で24時間処理した。腫瘍細胞を直径35mmの6穴細胞培養トレーでウェル当たり細胞 約1.5×106個にて生育させた。INF処理後、6穴培養トレーにおいてインサイチューにて腫瘍細胞に生育停止剤であるマイトマイシンCを加えて20分〜25分間インキュベートして、その後、PBSまたは新鮮培地で3回洗浄することによってマイトマイシンCを除去し、新鮮な完全RPMI培地/10%FCSの4mLに再懸濁した。
【0157】
ワクチン接種したマウスの脾臓からリンパ球を抽出して、ステンレススチール製の100μm〜200μmメッシュの篩に通して5mL〜10mLの完全RPMI培地中に回収した。リンパ球調製物を遠心分離して赤血球を除去し、培養培地層とフィコール/ハイパーク層の境界面の白血球層を回収して、フィコール/ハイパークは洗浄により除去した。続いて、脾臓由来の細胞を、培養トレーの表面に付着した単層腫瘍細胞叢に播種した。1mL完全培地中約2×106個の脾臓リンパ球を、各ウェルの生育を停止した腫瘍細胞を含む培地4mLに加えた。従って、ウェル当たりの総細胞数は、培養培地1mL当たり1×106個細胞を超えなかった。細胞は5%CO2において37℃のインキュベーター内で培養した。細胞数は、連続する培養日を通して各培養ウェル内の生細胞/死細胞数の割合に生じる変化を調べるためにトリパンブルー(商標)排除色素を用いて測定した。細胞数の測定は、各試料の2個〜6個のウェルおよび各ウェルの3反復計測値をアッセイして調べた。結果は、平均値の±標準誤差(SEM)で示す。2日〜3日後、または必要に応じて(培地pH指示薬の色の変化によって評価)、各ウェルから培地の半分を慎重に吸引して、レクチン相互作用物質を加えたまたは加えていない新鮮な完全培地と交換した(例えば、本明細書において例として開示されているように炭水化物は一般に約0.1mMないし約10mM、典型的には約1mMの最終濃度)。3日〜5日の間にMLCトレーからリンパ球を回収して、改めて調製したリンパ球調製物について生細胞を死細胞から分離した。その後、国際公開公報第01/88097号に記載されるように、新たに調製した標的細胞に対する死滅活性のレベルを測定するために細胞をCTLアッセイに用いた。
【0158】
実施例3
ワクチン接種マウスに由来する脾臓リンパ球集団の培養中での生育に対する、異なるラクトース関連二糖類の影響
N-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノイル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドのそれぞれを、NeuD12 FVB/N 202乳癌細胞をアッセイのための刺激物質および標的細胞として用いて、実施例2に記載されるアッセイにそれぞれ加えた。2つの異なる実験の結果を図2および3に示す。特定のラクトース関連糖の1mM濃度の添加は、3日〜5日間の培養を通じて、マイトマイシンCで不活化した刺激物質である腫瘍細胞の表面での乳癌細胞特異的MLC中でのリンパ球の生育および数の増幅の促進に関して糖無添加よりも優れていることを明確に示している。また、示差的な影響はDay 4ないし5までの培養の後期段階においてより顕著となると思われる(図2を参照)。
【0159】
別の実験において、アッセイのための刺激物質および標的細胞としてC57bl6J由来B16F10黒色腫細胞を用いて、D-ラクチトール一水和物、ラクツロースおよびベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを、各々、実施例2に記載されるアッセイに加えた。3日目にMLCトレーからリンパ球を回収して、続いて前記のように死滅活性のレベルを調べるためにCTLアッセイに使用した。図4に示す結果は、3日間の生育期間を通して黒色腫特異的MLC中でのリンパ球の増殖の促進における糖の影響と一致する。
【0160】
実施例4
ヒト癌細胞におけるインビボでの可能性
本発明は、治療用物質としての使用の可能性を持つ。ヌードマウスのような免疫欠損動物に異所性または同所性に移植されたヒト腫瘍細胞の腫瘍増殖および転移に関するインビボ試験、または十分に認識した動物モデルを用いたインビボ試験が実施される。免疫欠損マウスに移植されたヒト腫瘍細胞の増殖阻害からは、臨床試験のための前臨床データが提供される。インビボ試験には、2つのヒト腫瘍細胞モデルである転移性非エストロゲン反応性MDA-MB-435乳癌モデルおよびアンドロゲン非反応性PC-3前立腺癌モデルが含まれる。
【0161】
MDA-MB-435乳癌モデル:
マーカータンパク質(蛍光緑色タンパク質)を安定的にトランスフェクトした病原体フリーのMDA-MB-435ヒト乳癌細胞は、免疫欠損ヌードマウスまたはSCIDマウスにおいて固形腫瘍として増殖させる。腫瘍を摘出して、大きさの等しい1mm組織片を雌ヌードマウスの乳腺脂肪パッドに同所性に移植、または後方腹側部に異所性に移植する。腫瘍の増殖、転移、および動物の死亡を調べる。腫瘍の増殖は、カリパーで腫瘍サイズを測定して調べる。屠殺時に腫瘍を摘出して大きさを測定し、組織学的検査に使用する。脾臓、リンパ節、肺および骨髄のような臓器は、マーカー蛍光緑色タンパク質の発現に関して組織切片を組織化学的に染色することによって転移性のMDA-MB-435細胞を調べる。
【0162】
PC-3前立腺癌モデル:
マーカータンパク質(蛍光緑色タンパク質)を安定的にトランスフェクトした病原体フリーのPC-3ヒト前立腺癌細胞をヌードマウスにおいて固形腫瘍として増殖させる。腫瘍を摘出して、大きさの等しい1mm組織片を雄ヌードマウスの後方腹側部に異所性に移植する。腫瘍の増殖、転移、および動物の死亡を調べる。屠殺時に腫瘍を摘出して大きさを測定し、組織学的検査に使用する。脾臓、リンパ節、肺および骨髄のような臓器は、マーカー蛍光緑色タンパク質の発現に関して組織切片を組織化学的に染色することによって転移性のPC-3細胞を調べる。
【0163】
皮膚癌動物モデル:
皮膚癌は、SENCARおよびSKH-1無毛マウスにおいて紫外線照射および化学的(DMBA)処理によって誘導する。さらに、皮膚基底細胞に癌遺伝子であるHer-2/neuを特異的に発現して自然発生的に皮膚癌を発症するマウスを用いる。本明細書において開示される化合物を特定の抗原、抗原結合分子または免疫調節細胞と共に、皮膚癌発症の前後に毎日、全身性または皮膚に局所性(任意で、当技術分野において公知である浸透増強剤を添加)に投与して、皮膚乳頭腫形成の発生を評価する。対照マウスには、賦形剤を同様に投与する以外、同様に投与する。これらの化合物の乳頭腫の治療における有効性、および前癌性進行前に投与された場合の悪性転換に影響を及ぼす能力をモニターする。
【0164】
肝の転移性癌モデル:
このモデルでは、CT-26癌細胞の脾内注入によりマウスに肝腫瘍結節が形成される。本明細書において開示される化合物を特定の抗原、抗原結合分子または免疫調節細胞と共に、細胞注入24時間後に投与する。マウスをモニターして、期間を通しての生存性を評価する。瀕死動物は適切に屠殺する。
【0165】
実施例5
レクチン阻害物質の補充
インビボにおける実験を開始する前に、副作用を示さずに安全に投与できる化合物の最大量を求めるために、可溶性または細胞性抗原の存在下で最大の腫瘍細胞死滅量を示すレクチン阻害物質を様々な用量段階でヌード、SCID、トランスジーンおよびその他のマウスに投与する。化合物は、特定の抗原、抗原結合分子、または免疫調節細胞と共にモデルに適した方法、例えば、経口、標的臓器への直接注入を含む注入または適用により、投与する。耐用可能な化合物の最大量および有効な投与経路の確立後、新規の化合物を毎日、マウスに投与して、腫瘍の増殖および進行を上記の通り調べる。
【0166】
実施例6
多価黒色腫ワクチン
多価黒色腫細胞ワクチン(PMCV)は、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドもしくは修飾シトラスペクチン(MCP)またはこれらの炭水化物の組み合わせを接種物に加えること、およびBCGがアジュバントとして投与されないことを除いて、本質的にChanおよびMorton(1998, Sem Oncol. 25 (6): 611-622;商標Canvaxin, www.cancervax.com)に従って調製する。要約すると、このワクチンは、異なる親から派生する3つの細胞株の等量混合物を含む同種全体細胞を基剤とするワクチンを含む。細胞は、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、5% DMSOを加えて、単回用量として1mLの液量中細胞 2.4×107個にて凍結保存する前に、複製を停止させるために放射線を照射する。ワクチンの各用量を融解して、胴部周辺の8箇所に皮内注入する。ワクチンは2週間毎に3回投与する。次に、細胞ワクチン単独を月1回の注入として11カ月間、続いて、2年目には3カ月毎に1回ずつ4回、その後は6カ月毎に6回の合計5年間、投与する。
【0167】
上記のプロトコールの修正において、上記細胞株の抗原提示機能はIFNγの初回刺激、IFNβ刺激、および任意で国際公開公報第01/88097号に記載されるように免疫刺激分子であるB7の多量の発現によって増強する。
【0168】
実施例7
前立腺癌ワクチン
前立腺癌ワクチンは、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドもしくは修飾シトラスペクチン(MCP)またはこれらの炭水化物の組み合わせを接種物に添加することを除いて、本質的に米国特許第6,699,483号に従って調製する。要約すると、原発の前立腺組織、つまり、NIH1542-CP3TXから派生した不死化細胞株を、液体窒素のストックから取り出した後、25μg/mLウシ下垂体抽出物、5ng/Mlleの上皮増殖因子、2mM L-グルタミン、10mM HEPES緩衝液、および5%ウシ胎児血清(FCS)を加えたKSFM培地(以後、「改変KSFM」とする)中で、ローラーボトル培養にて増殖させる。T175静置フラスコにて増殖後、細胞をローラーボトルに接種して、生育表面積は1,700cm2、細胞はローラーボトル当たり2〜5×107個とする。
【0169】
2つの転移由来細胞株も使用して、つまり、LnCapおよびDu145はいずれもATCCから入手できる。LnCapは、容器当たり1〜10×106個細胞で播種した後、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを加えたRPMI培地を用いて表面積の大きな静置フラスコを用いて生育させて、その後、集密直前まで生育させる。Du145は静置フラスコ中で凍結したストックから増殖させて、続いて850cm2のローラーボトルにボトル当たり1〜20×107個の細胞を接種して、10%FCSおよび2mM L-グルタミンを含むDMEM培地中で集密まで生育させる。
【0170】
すべての細胞株は1×通常濃度のトリプシンを用いて回収する。DMEMで徹底して洗浄した後、細胞を10〜40×106個/mLの濃度で再懸濁して、Co60線源を用いて50Gy〜300Gyにて放射線を照射する。放射線照射後、細胞は、10%DMSO、リン酸緩衝生理食塩液中8%ヒト血清アルブミン、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを含む凍結保存液を用いて製剤化して、15〜50×106個細胞/mLの細胞濃度で毎分1℃の割合で冷却して凍結し、使用のために必要となるまで液体窒素凍結装置に移した。
【0171】
ワクチン接種のため、前立腺癌患者は、血清PSA値 30ng/mLのホルモン療法に対して不応性であることに基づいて選択する。ワクチン接種スケジュールは以下の通りである。

【0172】
細胞を37℃の恒温水槽に入れて穏やかに加温し、任意で患者への注入前にミコバクテリウムのアジュバントと混合する。注入は、流入リンパ節領域内の4箇所の注入部位にて皮内に注入する。投与間の最小間隔は2週間として、投与の大半は4週間の間隔で行う。初回投与前、およびその後の何回かの投与前に、患者について上記のワクチン接種スケジュールに列記される3つの細胞株に対する遅発性過敏症(DTH)の検査を行い、PNT2(ECACCから供給された不死化した正常前立腺上皮細胞株)に対しても検査を行う(すべての検査は0.8×106個の細胞を使用して、アジュバントは用いない)。
【0173】
ワクチン接種によってワクチン細胞株に由来する抗原を認識するT細胞集団が特異的に増殖するかどうかを調べるために、前立腺細胞株の溶解物を用いて刺激した後にT細胞に対する増殖アッセイ法を実施することができる。各診察時に医療機関において全血を採取して、米国特許第6,699,483号に記載されるようにBrdU(ブロモデオキシウリジン)を用いた増殖アッセイ法に使用する。
【0174】
実施例8
ペプチドワクチン
癌ワクチンに加えるための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープの選択
この実施例は、国際公開公報第01/41787号に開示されるワクチン組成物のためのぺプチドエピトープ選択の操作を例証し、レクチン相互作用物質の投与を含むように修正する。組成物中のペプチドは、ペプチドをコードする単一または一つもしくは複数の配列(即ち、ミニ遺伝子)のいずれかの核酸配列の形とすることができ、または単一および/もしくはポリエピトープペプチドであってもよい。
【0175】
以下の原理は、ワクチン組成物に含めるためのエピトープのアレイを選択する際に用いられる。選択を行うために、以下の各原理は平衡化される。
【0176】
投与時に、腫瘍排除と相関することが観察されている免疫応答を模擬するエピトープが選択される。例えば、ワクチンは、少なくとも一つの腫瘍関連抗原(TAA)から生じる3〜4つのエピトープを含むことができる。一つのTAA由来のエピトープは、例えば実施例15の国際公開公報第01/41787号に記載されるように頻繁に発現するTAAの異なる発現パターンを持つ腫瘍をターゲットとするワクチンを作成するために、一つまたは複数のさらなるTAAに由来するエピトープと組み合わせて用いることができる。
【0177】
HLAクラスI分子に対する結合親和性(IC50)が500nMもしくはそれよりも低い、しばしば200nMもしくはそれよりも低いエピトープ、またはクラスII分子に対して1000nMもしくはそれよりも低いエピトープが適切に選択される。
【0178】
幅広い集団カバー度を与えるために、十分なスーパーモチーフ(即ち、2つまたはそれよりも多いHLA対立遺伝子によってコードされるHLA分子に共通のペプチド結合特異性)を持つペプチド、または対立遺伝子特異的モチーフの十分なアレイを持つペプチドが選択される。例えば、少なくとも80%の集団カバー度を提供するためのエピトープが選択される。集団カバー度の幅または重複性の評価には、当技術分野において公知の統計学的評価であるモンテカルロ解析を用いることができる。
【0179】
癌関連抗原からエピトープを選択する場合、患者が固有のエピトープに対して免疫寛容を発現していた可能性があるので、しばしば類似体を選択することが望ましい。
【0180】
例えば、ミニ遺伝子のようなポリエピトープ組成物を作成する場合、典型的には関心対象のエピトープを含む可能性のある最も小さいペプチドを作成することが望ましいが、スペーサーまたはその他のフランキング配列を組み込むこともできる。用いられる原理は入れ子状態のエピトープを含むペプチドを選択する際に用いられる原理としばしば類似する。しかしながら、ミニ遺伝子として提供される核酸配列が決定されると、何らかの「接合エピトープ」が作成されたかどうかを調べるために、それによってコードされるペプチド配列が分析される。接合部エピトープは、例えばモチーフ分析によって予測されるように、潜在的なHLA結合エピトープである。レシピエントはHLA分子に結合し得て、生来のタンパク質配列には含まれないエピトープに対して免疫応答を生じる可能性があることから、接合エピトープは一般に回避されなければならない。
【0181】
ワクチン組成物に加えるためのCTLエピトープは、例えば、国際公開公報第01/41787号の表XXVIIおよびXXIII〜XXVIにおいて示されるエピトープから選択される。ワクチン組成物に加えることができるHTLエピトープの例は国際公開公報第01/41787号の表XXXIに示される。特定のペプチドを含むワクチン組成物は、投与された際に、安全で有効であり、腫瘍細胞の死滅および腫瘍サイズまたは腫瘤の抑制を起こす免疫応答を惹起する。
【0182】
予防的使用のためのペプチド組成物:
ペプチドワクチン組成物は、腫瘍発現のリスクのあるヒトにおいて癌を阻止するために使用することができる。例えば、望ましくは集団の80%よりも多くをターゲットとするように選択される多くのCTLおよび/またはHTLエピトープを含むポリエピトープ性ペプチドエピトープ組成物(または発現可能な核酸)は、癌、例えば乳癌のリスクのある個体に投与される。この組成物は多くのエピトープを含む単一のポリペプチドとして提供される。ワクチンは、フロイントの不完全アジュバント、0.05%〜10% w/v(典型的には、1%)MCP、および/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)ラクツロースを含む水性担体と混合して投与される。初回免疫化のためのペプチドの用量は、70kgの患者の場合、約1〜約50,000μg、一般的には100〜5,000μgである。ワクチンの初回投与に続いて、4週目に追加投与を行い、末梢血単核細胞(PBMC)試料中のエピトープ特異的CTL集団の存在を調べる技術によって、患者における免疫応答の規模を評価する。必要に応じて、さらなる追加用量が投与される。
【0183】
または、ポリエピトープ性ペプチド組成物は、当技術分野において公知の方法に従って核酸として投与することができる。
【0184】
多くの腫瘍を目的とするポリエピトープ性ワクチン組成物:
例示的実施例において、例えば国際公開公報第01/41787号で開示されるようなHER2/neuペプチドエピトープは、様々なタイプの腫瘍の治療に有用であるワクチン組成物を作成するために、その他の標的腫瘍抗原に由来するペプチドエピトープと併用して使用される。例えば、最も一般的な上皮腫瘍のターゲティングを可能とするTAAエピトープのセットを選択することができる(例えば、Kawashima et al., 1998, Hum. Immunol. 59: 1-14を参照されたい)。このような組成物は、CEA 、HER-2/neuおよびMAGE2/3由来のエピトープを含み、これらはすべて肺、乳房および消化器の腫瘍のような頻繁に見られる腫瘍においてかなりの程度(20%〜60%)で発現する。この組成物は、N-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノイル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドの少なくとも一つを0.05%〜10% w/v(典型的には、0.5%〜1%)でさらに含む。
【0185】
組成物は様々なTAAに由来する多くのエピトープを組み込む単一のポリペプチドとして提供することができ、または一つもしくは複数の別々のエピトープを含む組成物として投与することができる。または、ワクチンはミニ遺伝子構築物として、またはインビトロにおいてペプチドエピトープが付加された樹状細胞として投与することができる。
【0186】
多くの腫瘍抗原のターゲティングは、いずれかの特定のタイプの腫瘍の大きな分画をカバーするためにも重要である。稀に単一のTAAが所与のタイプの大部分の腫瘍で発現する。例えば、乳房腫瘍の約50%はCEAを発現して、20%がMAGE3を発現し、30%はHER-2/neuを発現する。従って、免疫療法における単一抗原の使用はごく限られた患者カバー度を提供することになる。しかし、3つのTAAを組み合わせると、乳房腫瘍の約70%が対象となる。多くの腫瘍抗原由来のエピトープを含むワクチン組成物は、個々の腫瘍抗原の発現が減少するために、逸脱変異の可能性も低下する。
【0187】
癌患者での治療的使用:
癌患者でのCTLおよび/またはHTLペプチド組成物の有効性を確認するために、ワクチン組成物の評価を実施する。試験の主な目的は、癌患者においてCTLを誘導するための有効な用量および投与計画を決定すること、これらの患者におけるCTLおよび/またはHTL反応誘導の安全性を確立すること、ならびにCTLの活性化が腫瘍細胞数の減少によって示される癌患者の臨床像をどの程度改善するかを示すことである。このような試験は、例えば以下のように設計される:
【0188】
試験は多施設試験として実施される。試験設計はオープンラベル、無対照、用量漸増プロトコールであり、ペプチド組成物は単回投与として投与され、6週後に同一用量の単回追加投与が行われる。投与量は、注入当たり50、500および5,000マイクログラムである。薬剤関連性の副作用(程度および回復性)を記録する。
【0189】
患者群は3群である。最初の群にはペプチド組成物の50マイクログラムを注入して、二番目および三番目の群には、それぞれ、ペプチド組成物の500および5,000マイクログラムを注入する。各群の患者は21歳〜65歳の範囲であり、男性および女性の双方を含み(腫瘍が、例えば乳癌または前立腺癌のように性特異的でない場合)、多様な民族的背景を反映する。
【0190】
主な追加投与プロトコールを用いたCTL反応の誘導:
ヒトに対するワクチンの投与にも、主な追加投与プロトコールを用いることができる。このようなワクチン投与計画は、例えば、N-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクトチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドから選択される少なくとも一つの炭水化物の0.05%〜10% w/v(典型的には0.5%〜1%)での存在下において裸のDNAの初回投与、および該炭水化物の存在下において該ワクチンをコードする組換えウイルス、または該炭水化物および任意でアジュバントの存在下において投与される組換えタンパク質/ポリペプチドもしくはペプチド混合物を用いた追加投与を含んでよい。
【0191】
例えば、最初の免疫化は、発現ベクターを用いて上記の一つまたは複数の炭水化物の存在下で多くの位置に0.5mg〜5mgの量で裸の核酸として筋肉内(または皮下もしくは皮内)に投与して、実施することができる。核酸(0.1μg〜1000μg)は遺伝子銃を用いて投与することもできる。3週〜4週間のインキュベート期間後、続いて、追加用量を投与する。この追加投与は、上記の一つまたは複数の炭水化物の存在下で5×107〜5×109pfuの用量で投与される組換え鶏痘ウイルスとすることができる。MVA、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、またはアデノ関連ウイルスのような代替の組換えウイルスも追加投与のために使用することができ、またはポリエピトープタンパク質もしくはペプチドの混合物を上記の一つまたは複数の炭水化物の存在下で投与することもできる。ワクチンの有効性の評価のため、患者の血液試料を免疫化の前、ならびに初回ワクチン投与およびワクチン追加投与後に定期的に採取する。末梢血単核細胞はフィコール−ハイパーク密度勾配遠心によりヘパリン加新鮮血液から単離して、小分けして凍結用媒質と混合し、凍結保存する。試料について、CTLおよびHTL活性を測定する。
【0192】
結果の分析は、癌に対する保護的免疫が十分に達成される反応の規模が得られることを示す。
【0193】
実施例9
樹状細胞を用いたワクチン組成物の投与
ポリペプチドまたはペプチドを含むワクチンは、抗原提示細胞、または樹状細胞のような「プロフェッショナル」APCを用いて投与することができる。この実施例では、抗原でパルス標識したDC(例えば、粗もしくは精製したポリペプチドもしくはペプチド、またはウイルスもしくは細菌のような粒子物質を用いたパルス標識)が、少なくとも本発明のレクチン相互作用物質の存在下にてインビボにおいてCTL反応を刺激するために患者に投与される。例示的な方法において、樹状細胞は単離されて、増殖され、一つまたは複数の標的抗原に対応するペプチドCTLおよび/またはHTLエピトープを含むワクチンを用いてパルス標識される。樹状細胞は、インビボにおいてCTLおよびHTL反応を惹起するために、N-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドから選択される少なくとも炭水化物の0.05%〜10% w/v(典型的には0.5%〜1%)の存在下で改めて患者に注入される。続いて、誘導されるリンパ球が、ワクチンのエピトープが由来するタンパク質を持つ特異抗原腫瘍細胞を破壊する、または破壊を促進する。
【0194】
例えば、エピトープ含有ペプチドのカクテルは、患者の血液に由来するPBMCまたは単離されたDCにエクスビボにて投与される。Progenipoietin(商標)(Monsanto, St. Louis, Mo.)またはGM-CSF/IL4のようなDCの回収を促進するための医薬が使用できる。DCをペプチドでパルス標識した後、患者への再注入前に、非結合のペプチドを除去するためにDCを洗浄する。
【0195】
臨床的に認められて、臨床的結果に基づいて当業者により容易に調べられるように、患者に再注入される樹状細胞の数は変化することができる(例えば、Nature Med. 4:328, 1998;Nature Med. 2: 52, 1996、およびProstate 32: 272,1997を参照されたい)。典型的には患者当たり2〜50×106個の樹状細胞が投与され、107または108のようなより多くの樹状細胞を投与することもできる。このような細胞集団は、典型的には50%〜90%の樹状細胞を含む。
【0196】
一部の態様において、ペプチド付加PBMCはDCの精製を行わずに患者に注入される。例えば、Progenipoietin(商標)のような物質で処理した後に作成されるDCを含むPBMCは炭水化物と共に患者に注入されて、DCの精製は行われない。投与されるPBMCの総数は、しばしば、108個〜1010個の範囲である。一般に、患者に注入される細胞用量は、例えば特異的抗DC抗体を用いた免疫蛍光分析によって求められるような各患者の血液中のDCのパーセントに基づく。従って、例えば、Progenipoietin(商標)が所与の患者の末梢血中の2%DCを動員して、その患者が5×106個のDCを投与されるとすると、患者には合計2.5×108個のペプチド付加PBMCが注入されることになる。Progenipoietin(商標)のような物質によって動員されるDCパーセントは典型的には2%〜10%と推定されるが、当業者が認識する通り、変化することができる。
【0197】
実施例10
エクスビボにおけるCTL/HTL反応の活性化
または、特定の腫瘍関連抗原に対するエクスビボにおけるCTLまたはHTLの反応は、組織培養中で患者または遺伝的に適合するCTLまたはHTL前駆細胞を樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)の供給源および適切な免疫原性抗原(例えば、ペプチドもしくはポリペプチド、または特定の抗原)と共にインキュベートすることによって誘導することができる。前駆細胞が活性化されてエフェクター細胞へと成長する適切なインキュベート時間(典型的には、約7日〜28日)後に、細胞は0.05%〜10% w/v(典型的には0.5%〜1%)のN-アセチル-ラクトサミン、β-ラクトシル-チオ-アルブミン、シトラスペクチン、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノイル-β-D-グルコピラノシド、カルボキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ4-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド-BSA抱合体、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドから選択される少なくとも炭水化物の存在下にて患者に戻し注入され、そこで特異的標的細胞、即ち、腫瘍細胞を破壊(CTL)し、または破壊を促進する(HTL)。
【0198】
実施例11
肺炎双球菌ワクチン
例えば、Merck and Company, Inc.(Pneumovax 23)およびLederle Laboratories(Pnu-Immune 23)によって製造されて、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)の23種類の精製カプセル多糖類抗原(血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33F)を含む現在有効な肺炎双球菌ワクチンは、本発明の少なくとも一つのレクチン相互作用物質を含むように修飾される。例示的な例において、23価のワクチンの一回用量(0.5mL)は、等張生理食塩液に溶解された各カプセル多糖類の抗原25μg、ならびに保存剤として加えられるフェノール(0.25%)またはチメロサール(0.01%)、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCP、および/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)D-ラクチトール一水和物を含む。
【0199】
肺炎双球菌ワクチンは0.5mLの一回用量として、筋肉内または皮下に投与される。所望ならば、このワクチンは、(他方の腕に別に注入することによって)インフルエンザワクチンと同時に投与することもできる。肺炎双球菌ワクチンは、その他のワクチンと同時に投与してもよい。当技術分野において公知のように、通常の肺炎双球菌ワクチンをジフテリア、破傷風および百日咳(DTP)混合ワクチン;ポリオウイルスワクチン;またはその他のワクチンと共に投与しても、反応の程度は増大せず、抗体反応も低下しない。
【0200】
実施例12
B型ヘモフィルスワクチン
通常のB型インフルエンザ菌(H. influenzae)ワクチン(例えば、Comvax、HibTITER、ActHIB)はこの病原体によって引き起こされる侵襲性疾患に対する小児の免疫化のために典型的に用いられ、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)Dベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを含むように修飾される。小児の投与計画は用いられるワクチンによって変化する。例示的な例として、このように修飾されるHibTITERは以下のように投与される:

【0201】
実施例12
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)によって引き起こされる髄膜炎菌性疾患
髄膜炎菌性多糖類ワクチン(0.5mLの一回投与量のワクチンに、髄膜炎菌の4種類の各血清型から多糖類50mcgが含まれる(Rx)[Menomune(チメロサール1:10,000)(ラクトース 2.5mg〜5mg)])は、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05〜5% w/v(典型的には0.5%)メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドと共に小児および成人とも0.5mL単回用量として皮下に投与される。
【0202】
このワクチンは、異なる身体位置、異なるシリンジを用いて、各免疫化物質に該当する注意事項に従って、その他のワクチンと同時に投与してもよい。
【0203】
感染のリスクの高いヒト、特に4歳前に一回目の免疫化を受けた高いリスクの小児に対してはワクチンの再接種が指示されることがある;このような小児は、依然、高リスクであるならば、2または3年後にワクチン再接種について検討されなければならない。
【0204】
髄膜炎、髄膜炎菌(予防)−髄膜炎菌多糖類ワクチンは、髄膜炎菌のA群、C群、Y群またはW-135群によって引き起こされる髄膜炎菌性疾患に対する免疫化のために指示される。
【0205】
実施例13
インフルエンザワクチン
深部皮下または筋肉内注入による投与のための通常のインフルエンザワクチン(Fluvax、CSLワクチン;Fluad, Delpharm Consultants; Flaurix, GlaxoSmithKline; Fluvirin, Medeva/Ebos Health and Science; Influvac, Solvay Pharmaceuticals;およびVaxigrip, Aventis Pasteur)は、本発明の少なくとも一つのレクチン相互作用物質を含むように修飾される。例示的な例において、インフルエンザワクチンの一回用量(0.5mL)は、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCP および/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)ラクツロースを含むように修飾される。
【0206】
修飾されたワクチンのための投与要件は個体の齢期に依存し、従来のワクチンの製造業者からの製品情報に概述される通りである。
【0207】
実施例14
A型肝炎ワクチン
従来のA型肝炎ワクチン(例えば、Havrix)は、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを含むように修飾される。成人における初回免疫化は、1mL中1440 EL単位の単回用量からなる。小児および青年(2歳〜18歳)における初回免疫化は、1カ月の間隔をあけて360 EL単位/0.5mLの2回投与を含む(例えば、0カ月目および1カ月目)。360 EL単位/0.5mLの追加投与を6カ月〜12カ月の間に行う。
【0208】
実施例15
B型肝炎ワクチン
従来のB型肝炎ワクチン(例えば、Recombivax HBおよびEngerix-B)は、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを含むように修飾される。成人における筋肉内注入のための好ましい位置は三角筋である。乳児および幼児における筋肉内注入のための推奨される位置は前外側大腿部である。乳児、小児および青年におけるB型肝炎表面抗原の適切な投与量は投与当たり5mcg(0.5mL)(一回投与)であり、成人では0、1および6カ月に投与当たり10mcg(1.0mL)(3回投与)である。
【0209】
実施例16
ヒト乳頭腫ウイルスワクチン
HPV-16のL1キャプシドの高度に精製されたウイルス様ワクチンを含む従来のHPV-16 L1ウイルス様粒子ワクチン(例えば、Merck Research Laboratories)は、少なくとも一つのレクチン相互作用物質を含むように修飾される。HPV-16 L1は酵母(Saccharomyces cerevisiae)において発現させる。ウイルス様粒子は97パーセントよりも高い純度を達成するための標準的な技術を用いて単離されて、保存剤を含まない無定形ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩アジュバントに吸着させる。例示的な例において、修飾HPV-16ワクチンは、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびアルミニウムアジュバント225μgを用いて担体総液量 0.5mLにて製剤化されたHPV-16 L1ウイルス様粒子40μgを含む。女性に対して、0日目、2カ月目および6カ月目にHPV-16ワクチンまたはプラセボのいずれかを3回、筋肉内注入する。
【0210】
実施例17
ジフテリア、百日咳および破傷風ワクチン
ジフテリア、百日咳(百日咳)、および破傷風(開口障害)から保護する従来のDTaPワクチンは、0.05%〜10% w/v(典型的には1%)MCPおよび/または0.05%〜5% w/v(典型的には0.5%)メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドを含むように修飾される。修飾されたDTaPワクチンは小児期を通して特定の年齢で合計6回の注入として投与される。通常、DtaP免疫化は、2カ月齢、4カ月齢、6カ月齢、15〜18カ月齢、4歳〜6歳、および11歳〜12歳の時期に投与される。
【0211】
本明細書において引用されるそれぞれの特許の開示、特許出願および刊行物は、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0212】
本明細書における任意の参照の引用は、これらの参照が本出願に対する「先行技術」として有効であることの承認として解釈されるべきではない。
【0213】
本明細書を通して、目的は本発明の好ましい態様を説明することであり、本発明をいずれか一つの態様または具体的な特徴の収集に限定するものではない。従って、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例証される特定の態様において様々な修正および変更を行うことができることを認識する。このようなすべての修正および変更は、添付される特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】グラフは、5×105個のB16F10-B7.1 med生細胞で刺激したマウスの生存率に対する(i)細胞懸濁液に対して1:1の割合で20mg/mLラクツロース溶液を加えてIFNγおよびIFNβで処理したB16F10-B7.1 highを含むワクチン(群3)、もしくは(ii)IFNγおよびIFNβのみで処理したB16F10-B7.1 highを含むワクチン(群2)、または(iii)ワクチンなし(群1)の週1回・6回注入の影響を示す。
【図2】グラフは、IFNγ24時間/β48時間処理したneuD12B7H4細胞(マイトマイシンC処理により不活化)を用いてワクチン接種したFVB/N 202 c-neuトランスジェニックマウスに由来する脾臓リンパ球集団の培養(それぞれ、約1×106個の脾細胞を含む)における、同一トランスジェニックマウス由来の腫瘍細胞の存在下での生育に対する様々なラクトース関連二糖類の影響を示す。試験した二糖類は、ラクツロース(1×および2×)、ラクトビオン酸(ラクトビオニック)、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド(ベンジル4OβD)、N-プロピル-β-ラクトシド(N-プロピル4OβD)、N-アセチル-ラクトサミン(N-アセチルD)、およびメチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド(メチル4OβD)であった。
【図3】グラフは、IFNγ24時間/β48時間処理したneuD12B7H4細胞(マイトマイシンC処理により不活化)を用いてワクチン接種したFVB/N 202 c-neuトランスジェニックマウスに由来する脾臓リンパ球集団の培養(それぞれ、約2×106個の脾細胞を含む)における、同一トランスジェニックマウス由来の腫瘍細胞の存在下での生育に対する様々なラクトース関連二糖類の影響を示す。試験した二糖類は、N-アセチル-ラクトサミン(N-アセチルD)、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド(ベンジル4OβD)、ラクツロース、D-ラクチトール一水和物(ラクチトール)およびラクトビオン酸(ラクトビオン)であった。
【図4】グラフは、IFNγ24時間/β48時間処理したB16F10B7Hi細胞(マイトマイシンC処理により不活化)を用いてワクチン接種したC57B16Jマウス(黒色腫マウス)に由来する脾臓リンパ球集団の培養(それぞれ、約2×106個の脾細胞を含む)における、同一トランスジェニックマウス由来の腫瘍細胞の存在下での生育に対する様々なラクトース関連二糖類の影響を示す。試験した二糖類は、D-ラクチトール一水和物(ラクチトール)、ラクツロース、およびベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド(ベンジル4OβD)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的抗原に対する免疫応答を調節するための組成物であって、レクチン相互作用物質ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞からなる群より選択される免疫調節物質を含む組成物。
【請求項2】
レクチンが生物体によって発現される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
生物体が細菌、エントアメーバ、原生動物、昆虫、腹足類、植物および動物からなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
生物体が動物であり、レクチンがカルネキシン、M型レクチン、L-レクチン、P-レクチン、C-レクチン、ガラクトシド結合レクチン、I型レクチンまたはR-レクチンからなる群より選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
レクチンが癌または腫瘍によって発現される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
レクチンがガレクチンである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ガレクチンがガレクチン-1、ガレクチン-3、およびガレクチン-9からなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
レクチン相互作用物質が単糖類、二糖類、より大きな糖類、合成炭水化物、糖ペプチド、N-アセチルラクトサミン誘導体、修飾多糖類、星状デンドリマーおよびグリコポリマーからなる群より選択される炭水化物または炭水化物含有分子である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
二糖類がラクトース、ラクツロース、乳果オリゴ糖、メチルβ-ラクトシド、D-ガラクトース、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-マンノピラノシド、3-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-アラビノース、2'-O-メチルラクトース、ラクト-N-ビオース、N-アセチルラクトサミン、チオジガラクトピラノシド、D-ラクチトール一水和物、ラクトビオン酸、ベンジル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルクロピラノシド、メチル4-O-β-D-ガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、2-メチル-β-D-ガラクトース(1→4)D-グルコース、カルボメトキシエチルチオエチル2アセトアミド-2-デオキシ-4-O-βDガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシド、4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-β-Dガラクトピラノシル-β-D-グルコピラノシドおよびN-プロピル-β-ラクトシドからなる群より選択される炭水化物または炭水化物含有分子である、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
より大きな糖類がポリラクトサミン、ポリラクトサミン運搬糖ペプチドおよび修飾植物性ペクチン多糖類からなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
合成炭水化物チオジガラクトシドである、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
糖ペプチドがラクトースまたはガラクトースを含む、請求項8記載の組成物。
【請求項13】
投与される宿主体内で炭水化物または炭水化物含有分子が代謝されない、請求項8記載の組成物であり、炭水化物または炭水化物含有分子がラクツロース、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[3-カルボキシプロパン-アミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[{Z}-3-カルボキシ-プロペンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロ-ベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-メタン-スルホンアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-ニトロベンゼンスルホンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-フェニルアミノカルボニルアミノ-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド2-デオキシ-4-O-(2-アミノアセトアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド2-デオキシ-4-O-(3-[{2S}-2-アミノ-3-カルボキシ-プロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシドからなる群より選択される、請求項7記載の組成物。
【請求項14】
炭水化物または炭水化物含有分子がラクツロースまたはその合成もしくは半合成類似体である、請求項8記載の組成物。
【請求項15】
炭水化物または炭水化物含有分子がメチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[3-カルボキシプロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[{Z}-3-カルボキシプロペンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-(2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-メタン-スルホンアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-ニトロベンゼンスルホンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-フェニルアミノカルボニルアミノ-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(2-アミノアセトアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[{2S}-2-アミノ-3-カルボキシ-プロパンアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシドからなる群より選択される、請求項8記載の組成物であり、このタイプの一部の態様において、炭水化物はメチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-ベンズアミド-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシ-ベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、メチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[4-メトキシ-2,3,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド、またはメチル2-アセトアミド-2-デオキシ-4-O-(3-[2-カルボキシ-3,4,5,6-テトラフルオロベンズアミド]-3-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシル)-D-グルコピラノシドである。
【請求項16】
レクチン相互作用物質が約10-3〜約10-9Mの範囲のレクチンに対して結合親和性を持つ、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも2つのレクチン-相互作用物質を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも2つのレクチン-炭水化物または炭水化物含有分子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
炭水化物または炭水化物含有分子の一つは可溶性で動物体内に容易に拡散でき、その他は部分的に可溶性の大きな糖類であり、送達部位から動物体への拡散が限定的である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
抗原がペプチド、ポリペプチド、これらの内の任意が発現可能である核酸分子、全体細胞、病原体、および抗原提示細胞によって提示される抗原からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
標的抗原が単純な中間代謝産物、糖、脂質、ホルモン、高分子、リン脂質、核酸、ポリペプチドおよびペプチドからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
標的抗原が宿主によって産生される内因性抗原および宿主に対して外来性の外因性抗原からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
内因性抗原が自己免疫応答の標的である自己抗原、および癌または腫瘍抗原からなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
標的抗原が癌または病原性生物体によって発現される、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
標的抗原に対して免疫応答を刺激またはその他の方法で増強するように適合された、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
標的抗原が望ましくない免疫応答に関連する、請求項1記載の組成物。
【請求項27】
望ましくない免疫応答が移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫病、炎症性疾患および自己免疫疾患からなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
標的抗原に対する免疫寛容原性反応を誘導するように適合されて、該反応がアネルギー反応および将来または既存の免疫応答の抑制からなる群より選択される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
免疫調節細胞が免疫応答を刺激する抗原提示細胞である、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
免疫調節細胞が免疫寛容原性反応を誘導する抗原提示細胞である、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
抗原提示細胞が免疫応答を必要とする細胞であって、抗原提示機能を増強するように修飾されていてもよい、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
抗原提示細胞が一時的にII型インターフェロン(IFN)および少なくとも一つのI型IFNの存在下および細胞の抗原提示機能を増強するために十分な条件下で細胞を培養する工程、ならびにIFNを除去するために細胞を洗浄する工程によって修飾される、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
抗原提示細胞がII型IFNおよびI型IFNから選択される一つまたは複数のIFNが発現可能である細胞に構築物を導入する工程によって修飾される、請求項29記載の組成物。
【請求項34】
抗原提示細胞が組成物のレシピエントに対して主要および/またはマイナー組織適合性抗原を共有する同種抗原提示細胞または細胞株である、請求項29記載の組成物。
【請求項35】
免疫調節細胞がTリンパ球およびBリンパ球からなる群より選択される免疫エフェクター細胞である、請求項1記載の組成物。
【請求項36】
Tリンパ球が細胞溶解性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球およびT制御細胞からなる群より選択される、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
抗原結合分子が標的抗原の量または機能活性を低下させるために標的抗原と結合またはその他の方法で相互作用する、請求項1記載の組成物。
【請求項38】
共刺激分子、サイトカインおよび共阻害分子からなる群より選択される一つまたは複数の免疫調節分子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項39】
共刺激分子がB7-1、B7-2、B7-3、ICAM-1およびICAM-2からなる群より選択される、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
サイトカインがインターフェロン、顆粒球/マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン10および腫瘍壊死因子α(TNF-α)からなる群より選択される、請求項38記載の組成物。
【請求項41】
共阻害分子がOX-2およびプログラム死-1リガンド(PD-1L)からなる群より選択される、請求項38記載の組成物。
【請求項42】
免疫調節分子が可溶型で提供される、請求項38記載の組成物。
【請求項43】
免疫調節分子が細胞内で発現構築物またはベクターから産生される、請求項38記載の組成物。
【請求項44】
アジュバントをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項45】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項46】
対象における標的抗原に対する免疫応答を調節するための方法であって、レクチン相互作用物質ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞からなる群より選択される免疫調節物質を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法。
【請求項47】
レクチン相互作用物質および免疫調節物質が連続的に、別々に、または同時に投与される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
対象における標的抗原の存在または異常発現に関連する疾患または状態の治療または予防に有用である、請求項46記載の方法。
【請求項49】
疾患または状態が標的抗原に対する免疫応答を刺激またはその他の方法で増強する組成物を用いることによって治療または阻止される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
疾患または状態が病原性感染症、免疫不全を特徴とする疾患、および癌または腫瘍から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項51】
疾患または状態が標的抗原に対する免疫寛容原性反応を引き起こす組成物を用いることによって治療または阻止される、請求項48記載の方法。
【請求項52】
疾患または状態が移植拒絶反応、移植片対宿主病、アレルギー、寄生虫病、炎症性疾患および自己免疫疾患から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項53】
レクチン相互作用物質、ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞からなる群より選択される免疫調節物質の、標的抗原に対する免疫応答を調節するための医薬の製造における使用。
【請求項54】
レクチン相互作用物質、ならびに標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原、標的抗原と免疫相互作用性である抗原結合分子、および標的抗原に対する免疫応答を調節する免疫調節細胞からなる群より選択される免疫調節物質の、標的抗原の存在または異常発現に関連する疾患または状態を治療または予防するための医薬の製造における使用。
【請求項55】
レクチン相互作用物質を同定するための方法であって、(a)レクチン発現細胞または病原体の最初の試料の存在下において免疫エフェクター細胞集団の最初の試料を培養する工程;(b)レクチン発現細胞または病原体の二番目の試料およびレクチン相互作用活性を持つと思われる候補物質の存在下において該集団の二番目の試料を培養する工程、および(c)最初および二番目の試料におけるそれぞれの免疫エフェクター細胞を定量する工程を含み、最初の試料と比較した二番目の試料中の免疫エフェクター細胞数の増加が該候補物質がレクチン相互作用物質であることを示す工程を含む方法。
【請求項56】
免疫エフェクター細胞の集団が白血球の集団から選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
免疫エフェクター細胞の集団が同種または異種性である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
免疫エフェクター細胞の集団が全血、新鮮血、およびこれらの任意の一つの画分からなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項59】
画分が末梢血単核細胞、全血のバフィーコート画分、濃縮赤血球、放射線照射血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラーT細胞からなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
レクチン発現細胞が腫瘍細胞である、請求項55記載の方法。
【請求項61】
腫瘍細胞が黒色腫細胞および乳癌細胞からなる群より選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
レクチン相互作用物質の活性を測定するための方法であって、(a)レクチン発現細胞または病原体の最初の試料の存在下において免疫エフェクター細胞集団の最初の試料を培養する工程;(b)レクチン発現細胞または病原体の二番目の試料およびレクチン相互作用物質の存在下において該集団の二番目の試料を培養する工程、および(c)最初および二番目の試料中のそれぞれの免疫エフェクター細胞を定量する工程を含む方法。
【請求項63】
二番目の試料と最初の試料の免疫エフェクター細胞の数の差がレクチン相互作用活性の指標である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
免疫エフェクター細胞が細胞溶解性Tリンパ球アッセイ法を用いて定量される、請求項62記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−508328(P2007−508328A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534547(P2006−534547)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001429
【国際公開番号】WO2005/037293
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506130078)
【Fターム(参考)】