説明

免震装置台座施工方法及び免震構造物

【課題】プレートを再利用できる免震装置台座の施工方法を提供する。
【解決手段】構造物の基礎部34にコンクリート打設用の型枠24を組み立て、連結部材となる袋ナット26を型枠24の内部に設置する。そして、袋ナット26にプレート28を取り付ける(図2(A))。プレート28は鋼板でリング状に形成され、袋ナット26の位置に貫通孔38が設けられている。プレート28は、免震装置40が設置される免震装置台座10の頂面に水平に設置され、上面が免震装置40の設置高さとされている。次に、型枠24の内部へ、プレート28の上面と面一となる高さまでコンクリート30を打設する(図2(B))。次に、コンクリート30の硬化後、コンクリート30からプレート28を取り外す(図2(C))。最後に、プレート28を取り外した後の環状の凹部42にモルタル32を充填し、上面を平坦に仕上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置台座施工方法及び免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置は、現場打ちコンクリートで構築された台座に設置されるのが一般的である。台座の頂面には、レベル調整された鋼板製のプレートが埋め込まれ、免震装置をプレートにボルト接合している。
【0003】
しかし、現場で台座を構築する場合、先に、プレートを位置決めしておき、プレートの周囲から型枠内にコンクリートを打設する手順となる。このとき、コンクリート打設時に、プレートの中央部の底面に空気の巻き込みが発生し、プレートの底面とコンクリートの間に気泡による空隙が生じる場合がある。空隙が大きい場合には、免震装置の軸力を台座に伝達する際に、軸力の伝達が不確実になるという問題がある。
【0004】
このため、プレートの底面とコンクリートの間に、気泡による空隙を生じさせない台座の施工方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1によれば、図10に示すように、プレート80は、鋼板でリング状に形成され、中央部にはコンクリート充填孔86が設けられている。プレート80の環状部には一定間隔でボルト取付け孔84が設けられ、プレート80の下面には、一定間隔でアンカーナット82が接合されている(図10(A))。プレート80は、コンクリート基礎94に固定されたレベル調整装置88で位置決めされる(図10(B))。プレート80の位置決め後、レベル調整装置88の周囲を型枠(図示せず)で囲み、コンクリート充填孔86からコンクリート90を充填して台座98を構築する。コンクリート90はプレート80の下面まで打設され、モルタル91をプレート80と面一まで塗布して仕上げられる。コンクリート90、及びモルタル91の硬化後に、免震装置92をプレート80に載せ、免震装置92とプレート80をボルト96で固定する(図10(C))。
【0006】
このように、プレート80をリング状とし、中央部のコンクリート充填孔86からコンクリート90を充填することにより、プレート80の底面のコンクリート90の流動性が確保され、プレート80の底面とコンクリート90の間の気泡による空隙の発生が抑制される。
【0007】
しかし、引用文献1のプレート80は、コンクリート90及びモルタル91の中に埋め込まれ、再利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−270443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事実に鑑み、プレートを再利用できる免震装置台座の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明に係る免震装置台座施工方法は、構造物の基礎部に、免震装置を設置する台座の型枠を組み立てる工程と、前記型枠内に、前記免震装置の連結部材を設置する工程と、前記連結部材にリング状のプレートを取り付けて位置決めする工程と、前記型枠内へ、前記プレートの表面と面一となるようにコンクリートを打設する工程と、前記コンクリートの硬化後、該コンクリートから前記プレートを取り外す工程と、前記プレートを取り外した後の環状の凹部をモルタルで平面に仕上げる工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように、リング状とされたプレートを採用することで、プレートの中央部からコンクリートを充填することが可能となり、プレートの中央部もプレート表面に合わせて平滑に仕上げることができる。また、コンクリートの硬化後、台座からプレートを取り外すことでプレートの再利用が可能となる。
【0012】
プレートを取り外した後の、台座に生じた環状の凹部の表面積は小さく、モルタルで平坦に仕上げるのが容易となる。また、凹部の表面に気泡による凹凸があっても、モルタルの上面は平坦に仕上げることができる。平坦に仕上げられたモルタルの上面に免震装置が設置される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の免震装置台座施工方法において、前記連結部材は、前記台座に埋め込まれる袋ナットであり、前記プレートは前記袋ナットにボルトで固定され位置決めされることを特徴としている。
【0014】
これにより、袋ナットにプレートをボルト接合した状態でコンクリートを打設して台座を構築し、コンクリートが硬化した後、台座からプレートを取り外すことが可能となる。また、袋ナットを利用して、プレートを取り外した台座に免震装置をボルト接合できる。
【0015】
請求項3に記載の免震構造物に係る発明は、請求項1又は請求項2の免震装置台座施工方法で施工された台座の、前記モルタルの上面に前記免震装置を設置し、前記連結部材と連結したことを特徴としている。
【0016】
これにより、モルタルで平坦に仕上げられた台座に免震装置が設置された免震構造物を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成としてあるので、プレートの再利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の施工工程を示すフロー図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の工程別の施工内容を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の工程別の施工内容を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の施工工程の途中を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の施工工程の途中を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の施工工程の途中を示した図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法の施工工程の途中を示した図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る免震構造物における免震装置の設置方法を示した図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る免震構造物の基本構成を示した図である。
【図10】従来例の免震装置台座施工方法の施工方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る免震装置台座施工方法は、図1に示す施工工程に従って免震装置台座10が構築される。
【0020】
先ず、台座用型枠組立工程12を実行する。図2(A)に示すように、台座用型枠組立工程12は、構造物の基礎部34の免震装置台座10が構築される場所に、コンクリート打設用の型枠24を組み立てる工程である。
【0021】
型枠24は、図4に示すように、免震装置台座10が構築される周囲を、鋼板製若しくは木板製の型枠24で囲む構成とされ、完成後、型枠24の内部に上方からコンンクリート30が打設される。
【0022】
次に、連結部材設置工程14を実行する。図2(A)に示すように、連結部材設置工程14は、連結部材となる袋ナット26を、型枠24の内部に設置する工程である。
袋ナット26は、免震装置40を免震装置台座10に固定するために設けられ、上方から挿入される免震装置40接合用のボルト36と螺合される位置に固定される。
【0023】
なお、施工段階において、リング状のプレート28も仮設的に袋ナット26に取付けられる。
次に、プレート位置決め工程16を実行する。図2(A)に示すように、プレート位置決め工程16は、プレート28の位置決めをし、袋ナット26に取り付ける工程である。
【0024】
プレート28は、図4に示すように、鋼板でリング状に形成され、袋ナット26の位置に対応させて貫通孔38が設けられている。プレート28は、免震装置40が設置される免震装置台座10の頂面に水平に設置され、上面が免震装置40の設置高さに調整された後、貫通孔38を利用して、袋ナット26にボルト36で接合される。
【0025】
次に、コンクリート打設工程18を実行する。図2(B)に示すように、コンクリート打設工程18は、型枠24の内部へ、プレート28の表面と面一となる高さまでコンクリート30を打設する。このとき、プレート28はリング状とされており、プレート28の中央部の底面に気泡による空隙が生じることはない。また、プレート28の中央部からコンクリート30を打設することが可能となり、プレート28の中央部もプレート28の表面に合わせて平滑に仕上げることができる。袋ナット26は、位置決めされた状態でコンクリート30に埋設される。
【0026】
次に、プレート取り外し工程20を実行する。図2(C)に示すように、プレート取り外し工程20は、コンクリート30の硬化後、コンクリート30からプレート28を取り外す工程である。
【0027】
なお、図5に示すように、コンクリート30からプレート28を取り外す前に、構築された免震装置台座10の周囲から型枠24を取り外す。続いて、図6に示すように、袋ナット26からボルト36を外し、コンクリート30からプレート28を取り外す。これにより、プレート28の再利用が可能となり、施工コストの低減が図れる。
【0028】
次いで、モルタル仕上げ工程22を実行する。図3(D)に示すように、モルタル仕上げ工程22は、プレート28を取り外した後の環状の凹部42にモルタル32を充填し、モルタル32の上面を平坦に仕上げる工程である。モルタル32の硬化により、免震装置台座10が完成する。
【0029】
図7に示すように、モルタル32の充填にあたり、袋ナット26の上には凹部42の深さ分の延長部材44を追加し、ボルト36で固定しておく。このとき、プレート28を取り外した後の、免震装置台座10に生じた環状の凹部42の表面積は小さく、モルタル32の上面をコテで平坦に仕上げるのが容易となる。また、凹部42の表面に気泡による凹凸が生じたとしても、モルタル32の上面を平坦に仕上げるのに支障はない。
【0030】
最後に、図3(E)に示すように、モルタル32の硬化後、台免震装置台座10のモルタル32の上面に、免震装置40を設置する。免震装置40は、袋ナット26を利用して、ボルト36で接合される。
【0031】
これにより、モルタル32は平坦に仕上げられ、免震装置40の設置精度が向上する。また、モルタル32は免震装置台座10として十分な強度を備えており、免震構造物の品質向上が図れる。
【0032】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る免震構造物50は、図8に示すように、コンクリート製の免震装置台座10に免震装置40が設置されている。
【0033】
免震装置台座10は、第1の実施の形態で説明した免震装置台座施工方法で施工されている。即ち、位置決めに使用されたプレート28は再利用が可能とされ、免震装置台座10の頂面は、モルタル32で平坦に仕上げられている。
【0034】
これにより、図9に示すように、基礎部34の上に、設置精度が高められると共にコスト低減が図られた免震装置台座10が構築され、免震装置台座10に免震装置40が設置された免震構造物50を提供できる。
【符号の説明】
【0035】
10 免震装置台座
12 台座用型枠組立工程(台座の型枠を組み立てる工程)
14 連結部材設置工程(連結部材を設置する工程)
16 プレート位置決め工程(プレートを取り付けて位置決めする工程)
18 コンクリート打設工程(コンクリートを打設する工程)
20 プレート取外し工程(プレートを取り外す工程)
22 モルタル仕上げ工程(モルタルで仕上げる工程)
24 コンクリート型枠
26 袋ナット(連結部材)
28 プレート
30 コンクリート
32 モルタル
34 基礎部
36 ボルト
40 免震装置
50 免震構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の基礎部に、免震装置を設置する台座の型枠を組み立てる工程と、
前記型枠内に、前記免震装置の連結部材を設置する工程と、
前記連結部材にリング状のプレートを取り付けて位置決めする工程と、
前記型枠内へ、前記プレートの表面と面一となるようにコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートの硬化後、該コンクリートから前記プレートを取り外す工程と、
前記プレートを取り外した後の環状の凹部をモルタルで平面に仕上げる工程と、
を有する免震装置台座施工方法。
【請求項2】
前記連結部材は、前記台座に埋め込まれる袋ナットであり、前記プレートは前記袋ナットにボルトで固定され位置決めされる請求項1に記載の免震装置台座施工方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の免震装置台座施工方法で施工された台座の前記モルタルの上面に、前記免震装置を設置し、前記連結部材と連結した免震構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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