説明

全原油/コンデンセート供給原料を利用する留出物の生成が向上したオレフィンの製造

供給原料を蒸発工程にかけることによって蒸気生成物と液状生成物を形成することと、蒸気生成物を過酷な熱分解にかけることと、液状生成物を原油精製処理工程にかけることとを含む、液状原油および/または天然ガスコンデンセート供給原料を処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は、原油精製装置と統合された方式において、液状の全原油(whole crude oil)および/または天然ガスに由来するコンデンセート(condensate)を熱分解することによってオレフィンを形成することに関する。より詳細には、本発明は、熱分解炉で炭化水素熱分解を用いるオレフィン製造プラント用の原料として全原油および/または天然ガスコンデンセートを利用すること、ならびに熱分解機能部からの留出物(distillate)範囲の成分を保持する方式における原油精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
炭化水素の熱分解(パイロリシス)は、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン、ならびにベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族化合物を製造するのに広く使用されている非接触式石油化学プロセスである。
【0003】
基本的には、全原油の蒸留もしくはその他の分留によって製造されるナフサ、軽油、または全原油のその他の画分などの炭化水素原料は、水蒸気と混合され、その水蒸気が、炭化水素分子を分離した状態に保つための希釈剤として働く。水蒸気/炭化水素混合物は、華氏約900〜約1,000度(°FまたはF)(480〜540℃)まで予熱され、次いで反応ゾーンに入り、そこで約1,450〜約1,550F(788〜843℃)の範囲の過酷な(severe)炭化水素熱分解温度まで非常に速やかに加熱される。熱分解は、いかなる触媒の助けも受けることなく実現される。
【0004】
このプロセスは、熱分解炉(スチームクラッカー)で約10〜約30psig(約70〜約210kPaG)の範囲の反応ゾーンの圧力で実施される。熱分解炉は、その内部に、対流区画(section)と輻射区画とを有する。予熱は、対流区画で実現され、過酷な分解は、輻射区画で行われる。
【0005】
過酷な熱分解後に、熱分解炉からの排出物は、非常に多様な、例えば、分子当たり1〜35個の炭素原子のガス状炭化水素を含む。こうしたガス状炭化水素は、飽和でも、単不飽和でも、ポリ不飽和でもよく、脂肪族でも、脂環式でも、および/または芳香族でもよい。分解ガスはまた、多量の分子状水素(水素)を含む。
【0006】
したがって、商用オレフィン製造プラントで実施されているような従来の水蒸気(熱)分解は、全原油の一画分を用い、この画分を熱分解しつつ、その画分を全部蒸発させる。分解生成物は、例えば、約1重量%(wt.%)の水素、約10wt.%のメタン、約25wt.%のエチレン、および約17wt.%のプロピレンを含むことができ、すべてのwt.%は、前記生成物の全重量に対するものであり、残余は、大部分、分子当たり4〜35個の炭素原子を有するその他の炭化水素分子からなる。
【0007】
次いで、分解生成物はオレフィン製造プラントでさらに処理されることによって、プラントの生成物として、水素、エチレン、プロピレン、分子当たり4個の炭素原子を有する混合炭化水素、燃料油、および熱分解ガソリンなど高純度の多様な別個のストリームが生成する。前記の別個のストリームはそれぞれ、それ自体において貴重な商用生成物である。したがって、オレフィン製造プラントは、現在、全原油ストリームの一部分(画分)を取り込み、それから複数の別個の貴重な生成物を生成する。
【0008】
天然ガスおよび全原油(複数可)は、空隙率が広範囲に変わる多数の地下の地層(地層)で自然に形成された。こうした地層の多くは、岩石の不浸透層によって上部を覆われた。天然ガスおよび全原油(原油)はまた、地表面の下方の多様な層位(stratigraphic)トラップに堆積した。大量の天然ガスおよび/または原油の双方は、このようにして集積して、地表面の下方の多様な深さで炭化水素含有層を形成した。こうした天然ガスの多くは、原油と物理的に密接に接触しているので、原油から多数のより軽い分子を吸収した。
【0009】
坑井が地球内に掘削され、1つまたは複数のそうした炭化水素含有層に貫入すると、天然ガスおよび/または原油は、この坑井から地表に回収することができる。
【0010】
本明細書で使用される「全原油」および「原油」という用語は、原油精製装置および/またはそうした精製装置での従来の蒸留部に輸送される際に受け入れ可能になるためにそれが受ける場合がある処理を除き、存在する場合の天然ガスから分離して油井頭頂部から排出したままの状態にある、液状(地表における温度および圧力の通常支配的な条件で)原油を意味する。こうした処理には、脱塩などの工程が含まれるだろう。したがって、精製装置における蒸留またはその他の分留に適しているが、そうした蒸留または分留のいかなるものも受けていないものが原油である。それは、アスファルテンまたはタールなどの非沸騰物を含むことも可能であるが、これをいつも必ず含むものでもない。したがって、全原油に対する沸点範囲を提供することは不可能ではないとしても、困難である。したがって、全原油は、いかなる事前の分留もされていない、利便性によって決められる油田パイプラインおよび/または従来の原油貯蔵施設から直接にくる1つまたは複数の原油であり得るであろう。
【0011】
原油と同様に、天然ガスは、地表に産出したときの組成が広く変動し得るが、一般に、かなりの量の、最もしばしばは主たる量の、すなわち、約50重量%(wt.%)を超えるメタンを含む。天然ガスはまた、少量の(約50wt.%未満)、しばしば約20wt.%未満の、エタン、プロパン、ブタン、窒素、二酸化炭素、硫化水素などのうちの1つまたは複数を含む場合が多い。地球から産出したすべてではないが多くの天然ガスストリームは、地表の温度および圧力の一般に支配的な周囲雰囲気条件で通常はガス状ではなく、一旦地表に産出されると天然ガスから凝縮し得る分子当たり5〜12(5と12を含む)の炭素原子(C5〜C12)を有する炭化水素を少量(約50wt.%未満)、しばしば約20wt.%未満で含むことができる。すべてのwt.%は、問題にしている天然ガスストリームの全重量を基準とする。
【0012】
多様な天然ガスストリームが地表に産出されると、炭化水素組成物は、そのストリームが集められる地表の温度および圧力のそのときに支配的な条件下で、こうした産出した天然ガスストリームから自然に凝縮する場合が多い。したがって、同じ支配的な条件下で通常はガス状の天然ガスから分離した通常は液状の炭化水素性凝縮物が生成する。通常はガス状の天然ガスは、メタン、エタン、プロパン、およびブタンを含み得る。産出された天然ガスストリームから凝縮する通常は液状の炭化水素画分は、一般に、「コンデンセート」と呼ばれ、一般に、ブタンより重い分子(C5〜約C20またはそれよりわずかに大きい)を含む。産出された天然ガスから分離後、この液状コンデンセート画分は、通常、天然ガスと呼ばれる残りのガス状画分と別個に処理される。
【0013】
したがって、地表に最初に産出されたときの天然ガスストリームから回収されたコンデンセートは、組成的には、天然ガス(主として、メタン)と正確に同じ材料ではない。それは、組成的に、原油と同じ材料でもない。コンデンセートは、通常はガス状の天然ガスと通常は液状の全原油の間の間隙を占める。コンデンセートは、通常はガス状の天然ガスより重い炭化水素、および全原油の最軽量の端に位置する範囲の炭化水素を含む。
【0014】
原油とは異なり、コンデンセートは、その沸点範囲によって特徴づけることができる。コンデンセートは、通常、華氏約100〜約650度(F)(約38〜約340℃)の範囲で沸騰する。この沸点範囲で、コンデンセートは、広範な炭化水素性材料を含む。こうした材料として、ナフサ、ケロシン、ディーゼル燃料(複数可)、および軽油(燃料油、炉油、暖房用油など)として普通呼ばれる画分を構成する化合物を含むことができる。ナフサおよび随伴のより軽い沸点材料(ナフサ)は、C5〜C10(5と10を含む)の範囲であり、約100〜約400F(約38〜約200℃)の範囲で沸騰する、コンデンセートの最も軽い沸点範囲の画分である。石油の中間留出物(ケロシン、ディーゼル油、常圧軽油)は、一般に、C10〜約C20であり、またはわずかにそれより高い範囲で一般に、大部分が約350〜約650F(約180〜約340℃)の範囲で沸騰する。それらは、本明細書では、個別におよび集合的に「留出物」または「留出物(複数)」と呼ばれる。多様な留出物組成物は、350F(180℃)未満および/または650F(340℃)を超える沸点を有し得るが、かかる留出物は、前記の350〜650F(180〜340℃)の範囲に含まれ、本発明に含まれることを留意されたい。
【0015】
従来のオレフィン製造プラントに対する出発原料は、上述のように、通常、最初に多くの高価な処理にかけられた後にこのプラントに到着する。通常は、コンデンセートおよび全原油は、原油精製装置で蒸留またはその他の方法で分留されて、原油の場合は高沸点残渣を含めての、天然ガスの場合は高沸点残渣を含めない、ガソリン、ナフサ、ケロシン、軽油(真空または常圧)などの複数の画分になる。その後、残渣以外の任意のこうした画分は、通常、そのプラントに対する出発原料として、オレフィン製造プラントに回される。
【0016】
コンデンセートおよび/または原油を処理することによって、従来のオレフィン製造プラント用の出発原料として役に立つ炭化水素性画分を生成する精製蒸留ユニット(全原油処理ユニット)の資本および運転コストを前もって知る(forego)ことができることが望ましいであろう。しかし、最近までは、従来技術は、広すぎる沸点範囲分布を有する炭化水素カット(画分)さえも教示しなかった。例えば、Lengletの米国特許第5817226号を参照されたい。
【0017】
近年、米国特許第6743961号(以降、「USP‘961」)が、Donald H.Powersに発行された。本特許は、充填物を含む蒸発/穏やかな分解ゾーンを用いることによって全原油を分解することに関する。このゾーンは、より頑強な炭化水素液状成分の分解/蒸発が最大になるまで、未だ蒸発していない全原油の液相をそのゾーンに保持するような方式で運転される。これによって、充填物上の堆積物としてあとに残される固体残渣の形成を最小にすることができる。この残渣は、理想的には通常の炉デコーキングサイクルの間に従来の水蒸気空気デコーキングによってあとから充填物から燃焼により除去されるが、この特許のカラム7、50〜58行も参照されたい。したがって、この特許の第2のゾーン9は、炭化水素性材料を含めての、そのプロセスで用いられる条件下で分解または蒸発できない原油供給原料の成分用のトラップとして働くが、この特許のカラム8、60〜64行も参照されたい。
【0018】
さらにより最近、米国特許第7019187号が、Donald H.Powersに発行された。この特許は、USP‘961で開示のプロセスを対象としているが、穏やかな酸性の分解触媒を用いることによって、蒸発/穏やかな分解ユニットの機能全体を、蒸発(前もっての穏やかな分解はない)−穏やかな分解(蒸発がそれに続く)スペクトルの穏やかな分解端にさらに移動させている。
【0019】
Donald H.Powersの米国特許第6979757号は、USP‘961で開示された方法を対象としているが、この発明は、未だ蒸発または穏やかな分解を受けていない、蒸発/穏やかな分解ユニットに残る液状炭化水素の少なくとも一部分を除去する。原油供給原料のこうした液状炭化水素成分は、このユニットの底部の近傍から引き出され、キャビテーションが制御された別個の装置に回されることによって、それまで蒸発または穏やかな分解に抵抗してきたそれらの頑強な炭化水素成分に追加の分解エネルギーが供給される。したがって、その発明はまた、蒸発/穏やかな分解ユニットの全体のプロセスを、前記の蒸発−穏やかな分解スペクトルの穏やかな分解端にさらに移動させようとしている。
【0020】
前記特許の開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0021】
USP‘961と共通の発明者要件および譲受人を有する、2005年9月2日出願の米国特許出願第11/219,166号は、炭化水素蒸気と炭化水素液体の混合物を生成させるためのオレフィンプラント用の供給原料として全原油を使用する方法を対象としている。蒸気状炭化水素は、残りの液体から分離され、その蒸気は過酷な分解操作に回される。
【0022】
ガソリン需要が増加する期間中は、ガソリンの供給(貯蔵)は、留出物を含めての多様な原油画分を流動接触分解などの多様な精製用接触分解プロセスにかけることによって増加させることができる。したがって、原油1バレルから生成するガソリン/ナフサの量は、所望なら増加させることができる。上で定義された留出物ではそうはならない。原油1バレルから回収される留出物の量は、固定しており、ガソリンの場合のように増加させることができない。留出物の製造(供給)を増加させる唯一の方法は、原油の追加のバレルを精製することによる。
【0023】
したがって、さもなくば熱分解炉用供給原料からオレフィンを形成する熱分解炉のための供給原料(feed)になるような供給原料から留出物を回収することが非常に望ましい時が存在し、本発明は、まさにこうした方法を提供するものである。
【0024】
本発明を使用することによって、供給の足りない貴重な留出物は、分解用供給原料から別個に回収することができ、したがって、価値のより低い分解生成物に転換されることから守られることになる。本発明によって、高品質の留出物が、分解から守られるだけでなく、当業者には明白であると思われる手法よりも熱効率が大きく、資本支出が小さいにも拘らずそうされる。
【0025】
当業者なら、分解すべき供給原料を最初に従来の蒸留塔にかけることによって分解用供給原料から留出物を蒸留するであろう。この手法では、塔を建設し、こうした塔に伴う通常のリボイラーおよびオーバヘッド凝縮装置をこの装置に装備するのに多額の資本の必要があると思われる。本発明によって、蒸留塔より小さい資本コストでもはるかに大きいエネルギー効率が実現されるような方式でスプリッタが用いられる。本発明によって、その機能を排除することなく、リボイラー、オーバヘッド凝縮器、および関連の蒸留塔装置が除外されるので、かなりの資本コストが節約される。さらには、本発明は、蒸留塔よりも運転のエネルギー効率がはるかに大きい。というのは、蒸留塔で必要であると思われる余分なエネルギーが本発明では必要でないのは、本発明が、その代わりに、分解炉の運転で既に消費されるはずであるエネルギーをそのスプリッティング機能のために利用し(分解炉の上流にある独立の蒸留塔を運転するのに消費されるエネルギーではなく)、スプリッタの蒸気生成物が直接に炉の分解区画に向かうからである。
【0026】
最後に、低オクタン価の直留ナフサを分解し、少量の直留留出物成分を分離し、本方法と原油精製工程との統合を介して高オクタン価のガソリン製造を最大化することによって、本発明は、前記の方法を従来の精製工程と統合して原油/コンデンセート1バレルの利用効率を最大化するものである。
【0027】
発明の概要
本発明によれば、上に記載されたように、全原油および/または天然ガスコンデンセートをオレフィンプラント用の供給原料として利用するための方法が提供され、この方法によって、上に記載されたように、留出物の回収が最大化し、留出物より沸点が低い材料がオレフィンプラント用の供給原料として残り、本方法を原油精製工程と統合することによって留出物の回収が最大化する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の範囲内の一方法のための簡略化流れ図を示す。
【図2】本発明の範囲内の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される「炭化水素(単数)」、「炭化水素(複数)」、および「炭化水素性」という用語は、厳密に、つまり水素原子と炭素原子のみを含む材料を意味するものではない。かかる用語は、主としてまたは本質的に水素原子および炭素原子からなるという点で性質が炭化水素性であるが、酸素、硫黄、窒素、金属、無機塩などその他の元素を多量にさえ含むことができる材料を含む。
【0030】
本発明で使用される「ガス状の」という用語は、本質的に蒸気状態にある1つまたは複数のガス、例えば、単独の水蒸気、水蒸気と炭化水素蒸気の混合物などを意味する。
【0031】
本発明で使用される「コーク」という用語は、任意の高分子量炭素質固体を意味し、多核芳香族化合物の縮合で形成される化合物を含む。
【0032】
本発明において有用であるオレフィン製造プラントは、最初に供給原料を受け入れ、分解するために熱分解(pyrolysis)(熱分解(thermal cracking))炉を備えるだろう。炭化水素を水蒸気分解するための熱分解炉は、対流および輻射によって加熱され、炭化水素供給原料を予熱し、輸送し、および分解するために、一連の予熱、循環、および分解管(通常はそのような管の束である)を含む。分解用の高熱は、炉の輻射の区画(「輻射区画」と呼ばれる場合もある)内に配置されたバーナによって供給される。こうしたバーナからの排ガスは、炉の対流区画内を循環することによって入ってくる炭化水素供給原料を予熱するのに必要な熱が供給される。炉の対流および輻射区画は、「クロスオーバ(cross−over)」で結合され、上記で言及した管は、一方の区画の内部から次の区画の内部まで炭化水素供給原料を運ぶ。
【0033】
分解炉は、低温のために反応速度定数が小さい輻射管(コイル)入口から始まる輻射区画での加熱が速やかに行われるように設計される。伝達熱の大部分は、単純に、炭化水素を入口温度から反応温度まで上昇させる。コイルの中間部では、温度の上昇速度はより小さいが、分解速度はかなりのものである。コイル出口では、温度の上昇速度は幾分か増加するが、入口ほど速やかではない。反応物の消滅速度は、その反応速度定数とその局在濃度との積である。コイルの末端では、反応物の濃度は、小さく、プロセスガス温度を上昇させることによってさらに分解させることができる。
【0034】
炭化水素の供給原料を水蒸気で希釈すると、炭化水素の分圧が低下し、オレフィンの形成が向上し、輻射管内でコークが形成される傾向が減少する。
【0035】
分解炉は、典型的には、長方形の火室を備え、直立管が、輻射耐火物壁の間の中心に位置する。この管は、その頂部で支持されている。
【0036】
輻射区画の燃焼は、ガス状または混合ガス状/液状燃料を使用して壁または床に設置されたバーナまたはその両方の組合せを用いて実現される。火室は、典型的には、わずかな負圧下にあり、煙道ガスが上方に流れている場合が最も多い。対流区画内への煙道ガス流は、自然ドラフトまたは強制ドラフトファンのうちの少なくとも1つによって実現される。
【0037】
輻射コイルは、通常、火室の中心から下方に単一面内に吊されている。輻射コイルは、単一面内に入れ子になる(nested)ことも、または交互になった二重列の管配置で平行に位置させることもできる。バーナから輻射管への熱伝達は、大部分は輻射、したがって熱「輻射区画」によって行われ、そこでは、炭化水素は約1450°F〜約1550°F(約788〜約843℃)まで加熱され、それによって過酷な分解を受ける。
【0038】
したがって、最初は空の輻射コイルは、加熱された(fired)管式化学反応器である。炉への炭化水素供給原料は、輻射区画からの煙道ガス、対流区画の供給原料の水蒸気希釈などで対流加熱されることによって、対流区画で約900°F〜約1,000°F(約480〜約540℃)まで予熱される。予熱した後、従来の商用炉では、供給原料は、輻射区画内にすぐに入る状態にある。
【0039】
典型的な炉では、対流区画は、複数のゾーンを含んでよい。例えば、供給原料は、初めに第1の上部ゾーンで予熱し、ボイラー供給水は、第2のゾーンで加熱し、供給原料と水蒸気の混合物は、第3のゾーンで加熱し、水蒸気は、第4のゾーンで過熱し、最後の供給原料/水蒸気混合物は、底部の第5のゾーンで完了まで予熱することができる。ゾーンの数およびその機能は、大幅に変化することができる。したがって、熱分解炉は、複雑で可変の構造であり得る。
【0040】
輻射区画を去るガス状分解炭化水素は、分解パターン(cracking pattern)の破壊を防止するために、速やかに降温される。分解ガスを下流のオレフィン製造プラントでさらに処理する前の分解ガスの冷却によって、炉および/またはオレフィンプラントでの再使用のために高圧水蒸気として大量のエネルギーが回収される。これは、当技術分野でよく知られている伝達用ライン熱交換器(transfer−line exchangers)を使用して実現されることが多い。
【0041】
輻射コイルの設計者は、滞留時間の短縮、高温、および炭化水素の低分圧を求めて努力している。コイルの長さおよび直径は、コイル当たりの供給原料速度、温度能力に関するコイルの冶金性、およびコイルのコーク堆積速度によって決まる。コイルは、低供給原料速度および炉当たりの多数の管状コイルの場合の単一の小直径管から、高供給原料速度および炉当たりのより少ないコイルの場合の長尺の大直径管までおよぶ。より長いコイルは、u字型ベンドで連結された往復の管配置(lengths of tubing)からなる。多様な組合せの管を用いることができる。例えば、4本の細い平行な管は、2本のより大きい直径のやはり平行な管に供給することができ、次いで、これは、直列に連結されたさらに大きい一つの管に供給することができる。このように、コイルの長さ、直径、ならびに直列および/または並列流の配列は、炉間で広範囲に変更することができる。炉は、その設計が工業所有権上の特徴を有するために、その製造者で呼ばれる場合が多い。本発明は、限定されないが、Lummus,M.W.Kellog&Co.、Mitsubishi,Stone&Webster Engineering Corp.、KTI Corp.、Linde−Selasなどによって製造されたものを含めての任意の熱分解炉に適用可能である。
【0042】
炉から発生する分解炭化水素の下流での処理は、大きく変化し、特に、最初の炭化水素供給原料がガスまたは液体のいずれであるかに基づいて大きく変化する。本発明は、供給原料として全原油および/または液状天然ガスコンデンセートを使用するので、本明細書では、下流の処理は、液が供給されるオレフィンプラントについて説明することにする。液状原料、従来技術でのナフサから軽油まで、ならびに本発明での原油および/またはコンデンセートから得られるガス状分解炭化水素の下流処理は、液状供給原料中に存在するより重質の炭化水素成分のために、ガス状供給原料の場合より複雑である。
【0043】
液状炭化水素原料においては、下流の処理では、プラント間で変化し得るが、典型的には、炉排出物が、例えば、前記の伝達用ライン熱交換器での熱交換の後、油で急冷される。その後、分解炭化水素ストリームは、重質液体を取り除くために一次分留にかけられた後、凝縮しなかった炭化水素が圧縮され、酸ガスおよび水がそこから除去される。次いで、多様な所望の生成物、例えば、エチレン、プロピレン、分子当たり4個の炭素原子を有する炭化水素の混合物、燃料油、熱分解ガソリン、および高純度水素ストリームが、個別に分離される。
【0044】
本発明によれば、オレフィンプラント熱分解炉用の全部分または大部分の一次(最初の)原料として、分留、蒸留などにかけていない原油および/またはコンデンセート液体を利用するプロセスが提供される。そうすることによって、本発明では、最初に上記で説明した従来技術で行われているように、炉用の一次原料として働かせるために、コンデンセートをコストの高い蒸留にかけて、例えば、ナフサ、ケロシン、軽油などから多様な画分にする必要性がなくなる。
【0045】
本発明によって、一次供給原料として原油および/またはコンデンセートを使用しつつ、前記の利点(高いエネルギー効率および資本コストの低減)が実現される。そうすることによって、分解されるべきより軽質で蒸気状の炭化水素から留出物画分が容易に分離されるために、液状コンデンセート供給原料中に最初に存在する留出物画分を本質的に液体状態に維持しつつ、炉の輻射区域に回された炭化水素ストリームの完全な蒸発が実現される。
【0046】
本発明は、例えば、USP‘961に開示の装置を使用して実施することができる。したがって、本発明は、対流および輻射区画と別個に、およびそれらから独立に運転される内蔵式(self−contained)蒸発設備を使用して実施することができ、(1)炉の一体(integral)区画、例えば、対流区画の中または近傍であるが、輻射区画の上流である炉内部および/または(2)炉自体の外部であるが炉と流体連通(fluid communincation)している部分として用いることができる。炉の外部で用いられる場合は、原油および/またはコンデンセート一次供給原料は、炉の対流区画で予熱され、対流区画および炉から出て独立の蒸発設備に回される。次いで、この独立設備の蒸気状炭化水素生成物は、炉の輻射区画に入るために炉内に戻される。予熱は、所望なら炉の対流区画以外で、または炉の内部および/または外部の任意の組合せで実施することができ、それでも本発明の範囲内である。
【0047】
本発明の蒸発ユニット(例えば、USP‘961の区画3)は、例えば、約周囲温度から約350F(約180℃)まで、好ましくは、約200から約350Fまで(約93〜約180℃)予熱されてもよく、予熱されなくてもよいコンデンセート供給原料を受け入れる。これは、供給原料の完全蒸発に必要であるより低い温度範囲である。任意の予熱は、必ずではないが、好ましくは、このようなコンデンセートが一次供給原料である同じ炉の対流区画で行われる。
【0048】
したがって、本発明の蒸発操作工程の第1のゾーン(USP‘961のゾーン4)では、蒸気/液体分離が行われ、予熱された供給原料ストリームの蒸気状炭化水素およびあるとしたらその他のガスが、予熱後も依然として液体のままである留出物成分から分離される。前記のガスは、蒸気/液体分離区画から取り除かれ、炉の輻射区画に回される。
【0049】
この第一の、例えば、上部のゾーンにおける蒸気/液体分離では、任意の従来の方式、すなわち、当技術分野でよく知られ、明らかである多数の方法および手段で留出物液体がノックアウト(knock out)される。液体の蒸気/液体分離用の適切な装置として、蒸気の接線入口(tangential vapor entry)を備えた液体ノックアウト槽、遠心セパレータ、従来のサイクロンセパレータ、シェーペンテータ(schoepentoeters)、羽根式液滴セパレータなどが挙げられる。
【0050】
前記の蒸気からこうして分離された液体は、第2の、例えば、下部のゾーン(USP‘961のゾーン9)内に移動する。これは、外部の管によって実施することができる。あるいは、これは、蒸発ユニットの内部で実施することもできる。この第2のゾーンの長さに沿って入り、移動する液体は、到来する、例えば、上昇する水蒸気にぶつかる。除去されたガスを含まないこの液体は、到来する水蒸気の熱エネルギーおよび希釈効果の影響をフルに受ける。
【0051】
この第2のゾーンは、穴あき板(複数可)、トラフ(trough)分散板、二重流トレー(複数可)、チムニートレー(複数可)、スプレーノズル(複数可)などの少なくとも1つの液体分散装置を備えることができる。
【0052】
この第2のゾーンはまた、この第2のゾーンでの液体と蒸気の十分な混合を促進するために、その一部分に、1つまたは複数の従来の塔充填材料および/またはトレーを備えることもできる。
【0053】
残りの液状炭化水素は、この第2のゾーン内を移動(降下)するので、存在する場合があるガソリンまたはナフサなどのより軽質な材料は、それと接触する高エネルギーの水蒸気によって大部分が蒸発することができる。このために、蒸発するのがより困難である炭化水素成分が、降下し続け、水蒸気の液状炭化水素に対する比がますます高くなり、ますます高い温度にさらされることが可能になることによって、水蒸気のエネルギーと水蒸気分圧の上昇に伴う液状炭化水素分圧の低下の両方により炭化水素成分が蒸発することが可能になる。
【0054】
図1は、本発明のプロセスの一実施形態を示す。上で議論したように現実の炉は複雑な構造であるので、ここでの図1および図2は、簡単および簡潔のために非常に図式的である。図1は、従来の分解炉1を示し、原油一次供給原料2が、炉1の対流区画の予熱区画3に回される。この予熱区画3はまた、従来のエコノマイザーを備えることができ、ボイラー供給水(BFW)4および5も加熱される。水蒸気6も本発明の方法で使用するために炉のこの区画で過熱される。
【0055】
次いで、予熱された原油分解供給原料は、管(ライン)10を経由して前記蒸発ユニット11に回され、そのユニットは、上方蒸発ゾーン12と下方ゾーン13に分離されている。このユニット11は、主として(支配的に)、予熱工程後に依然として液体状態にある、少なくとも大部分のナフサおよびガソリン沸点範囲、ならびにより軽質な材料の蒸発を実現する。ユニット11で受け入れる予熱供給原料に随伴するガス状材料、およびゾーン12で形成される追加のガス状材料は、ライン14を経由してゾーン12から除去される。したがって、ライン14は、ゾーン12に存在する本質的にすべてのより軽質な炭化水素蒸気、例えば、ナフサおよびガソリン沸点範囲およびそれらより軽質なものを運び去る。多少の液状ガソリンおよび/またはナフサを含み、または含まないゾーン12に存在する液状留出物は、ライン15を介してそこから除去され、低部ゾーン13の内部上方に回される。本実施形態では、ゾーン12および13は、固体トレーであってもよい不浸透(impermeable)壁16によって相互の流体連通から分離されている。ライン15は、ゾーン12と13の間の外部流体下降流連通を表す。その代わりに、またはそれに加えて、ゾーン12および13は、液体がゾーン13の内部に下降し、蒸気がゾーン12の内部に上昇することを可能にするように設計された1つまたは複数のトレーを使用して、壁16が少なくとも部分的に液体浸透性(permeable)になるように改変することによってその間に内部流体連通を備えることができる。例えば、不浸透性壁16の代わりに、チムニートレーを使用することもでき、その場合は、ライン17によって運ばれる蒸気は、ライン15を介してユニット11の外部からではなく、ユニット11の内部で区画13内に下降するであろう。この内部下降流の場合では、分散器18は、任意選択である。
【0056】
いずれの経路によってでもよいが、液体は、ゾーン12からゾーン13に除去され、その液体は、下方に移動しゾーン13内に入り、したがって、少なくとも1つの液体分散装置18に遭遇することができる。装置18は、ユニット11の横断面全体に液体を均一に分散するので、その液体は塔の幅全体に均一に流れ、充填物9と接触することになる。
【0057】
希釈水蒸気6は、過熱ゾーン20内を通過し、次いで、ライン21を介して、充填物19の下方にあるゾーン13の低部の部分22に入る。充填物19では、ライン21からの水蒸気および液体は、相互に密に混合され、したがって、液体15の一部が蒸発する。この新たに形成された蒸気は、希釈水蒸気21とともに、ライン17を介してゾーン13から除去され、ライン14の蒸気に加えられることによってライン25の組合された炭化水素蒸気生成物を形成する。ストリーム25は、供給原料2からの本質的に炭化水素の蒸気、例えば、ガソリンおよびナフサ、ならびに水蒸気を含むことができる。
【0058】
したがって、ストリーム17は、供給原料ストリーム2の一部分に希釈水蒸気21を加えて、ボトムストリーム26に存在する供給原料2からの液体留出物(複数可)およびより重質な成分を差し引いたものを表す。ストリーム25は、炉1の対流ゾーンのより熱い(より低い)区画にある混合供給原料予熱ゾーン27を通過することによって、存在する材料すべての温度をさらに上昇させ、次いで、クロスオーバライン28を介して、炉1の輻射火室の輻射コイル(管)29に入る。ライン28は、炉の導管(conduit)30の内部でも外部でもよい。
【0059】
ストリーム6は、ゾーン13で全体を用いてもよく、またはその一部は、ライン14および/またはライン25のいずれかで用いることによってライン14または25での液体の形成を防止する助けになる。
【0060】
炉1の輻射火室区画では、多数で多様な炭化水素成分を含むライン28からの供給原料は、前記の過酷な熱分解条件にかけられる。
【0061】
分解生成物は、USP‘961に示されるような炉1の下流のオレフィンプラントの残りの部分でさらに処理するためにライン31を経由して炉1の輻射火室区画を去る。
【0062】
ユニット11の区画13は、液体15を熱ガスまたは複数の熱ガス、例えば水蒸気21と接触させるための表面積を提供する。区画13内の液体とガスの向流によって、最重質(最高沸点)液体が、熱ガスの炭化水素に対する最大の比と同時に最高温度のガスで接触することが可能になる。
【0063】
本発明の精製装置統合態様に従って、供給原料2中の留出物(複数可)の大部分または全部ではないが、多くの量を含むユニット11のボトムストリーム26は、ライン26経由で、原油精製装置の常圧蒸留ゾーン(塔)32に回され、そこで、従来の仕方で、供給原料26は、1つまたは複数のケロシン画分33および34、常圧軽油35、および常圧残渣36などその多様な画分に分離される。ボトム36は、そのプロセスの製品として販売し、または接触分解ユニット用の原料として使用し、または重質燃料油の製造で用い、あるいはそれらの任意の組合せとすることができる。
【0064】
従来のオレフィン製造プラントでは、予熱された供給原料10は、希釈水蒸気21と混合され、次いでこの混合物が、予熱ゾーン3から直接に炉1の輻射区画29内に直接に回され、過酷な熱分解条件にかけられるだろう。対照的に、本発明は、代わりに、例えば、約200〜約350F(約93〜約180℃)の温度の予熱された供給原料を、図1の実施形態で示された独立ユニット11内に回す。図1に示すように、このユニットは、物理的に、炉1の外側に位置する。
【0065】
図1の実施形態では、ユニット11は、ライン10を介して炉1からの予熱供給原料を受け入れる。本発明のその他の実施形態では、予熱区画3は、使用する必要がなく、供給原料2は、直接ユニット11に供給される。
【0066】
明瞭性と理解のために、図1の実施形態は、本発明の直線的な前進図である。実際には、区画13の運転を既存の原油精製と統合したものは、より複雑になり得ると思われる。例えば、ストリーム26は、精製ユニット32に直接供給される代わりに、本発明の前にはユニット32に通常導入される原油供給原料と最初に混合することができる。したがって、図1の実施形態では、ストリーム26は、ストリーム26を利用できない場合に通常ユニット32に供給される新鮮な原油供給原料37と混合することができる。次いで、原油供給原料と区画13の底部生成物26の混合物は、単一供給原料混合物としてユニット32に回されることになるであろう。こうした場合では、図1のユニット32は、原油供給原料37から誘導された軽質ガソリン/ナフサを含む少なくとも1つの追加のストリーム38を生成するであろう。
【0067】
従来の原油供給原料37にストリーム26を加えることは、ユニット32から回収される留出物33〜35の量が、ユニット32における原油供給原料37のみの処理から回収されるはずの量より非常に顕著に増加するという点で非常に明確な利点を有する。原油精製装置の通常の操作を区画13と統合するその他の利点は、当業者には明らかであろうし、本発明の範囲内である。
【0068】
図2は、本発明内の方法のさらなる別の実施形態を示す。図2では、本発明に従ったさらなる原油精製の統合が示される。図2では、図1の常圧底部生成物36は、従来の真空蒸留ユニット37へ供給原料として移送され、そのユニットでは、少なくとも供給原料36は、分離されて、少なくとも真空軽油画分38になり、それによって、真空底部画分39が残される。真空軽油画分(複数可)38は、従来の接触分解ユニット用の供給原料として使用することができる。残渣39は、従来のディレードコーキングユニット(delayed coking unit)用の原料として使用することができる。
【0069】
図1および2の例示的な実施形態では、分離された液状炭化水素15は、供給原料2の留出物含量の全部ではないにしても大部分を含む。区画12の運転温度に応じて、液体15は、本質的に、前記の1つまたは複数の留出物材料のみを含み、またはかかる材料と、限定(finite)量のナフサなどのより軽質な材料を合わせたものを含むことができる。留出物生成物中に限定量のナフサを含むことが望ましくある場合もあり、本発明は、本質的に留出物画分のみから、または留出物画分と、供給原料ストリーム2を構成するより軽質な画分の限定量を合わせたものから構成される生成物ストリーム26を形成する柔軟性を提供する。
【0070】
したがって、原料2が、約100〜約1350F(約38〜約732℃)の範囲で沸騰し、ナフサ(約100〜約350F(約38〜約180℃)の範囲で沸騰)に少なくとも1つの留出物画分(例えば、大部分が約350〜約650F(約180〜約340℃)の範囲で沸騰する)を加えたものを含む場合、その供給原料は、本発明に従って、ユニット3で予熱し、さらにユニット11で加熱することによって、ライン14および17経由で除去するために存在するナフサの本質的にすべてを蒸発させることができる。それによって、これは、ライン26経由で回収される液状留出物のみを本質的に残すことができよう。この結果を実現するためのユニット3および11の運転温度は、供給原料2の組成に応じて広く変更することができるが、一般には、約150〜約500F(約66〜約260℃)の範囲になることになる。
【0071】
代替としては、ライン26経由で回収された状態で、留出物とともに液体状態の一部のナフサを残すことが望ましい場合、仮に使用された場合のユニット3およびユニット11の運転温度は、こうした結果を実現するために変更することができる。ストリーム26中に本質的に留出物のみを含むことが望ましくない場合、ストリーム26に対して液体状態で残されるナフサの量は、本発明では、広く変更することができるが、一般に、ストリーム26中の留出物とナフサの合計重量に対して最大約30wt.%になろう。この結果を実現するための仮に使用された場合のユニット3およびユニット11の運転温度は、供給原料2の組成、水蒸気の量、および使用される圧力に応じて広く変更することができるが、一般には、約150〜約450F(約66〜約230℃)の範囲になることになる。
【0072】
ストリーム15は、ゾーン12から低部の、第2ゾーン13内に下降し、ゾーン13中に当初存在する望ましくない液状ナフサ画分が任意の量になるまで蒸発することができる。こうしたガス状炭化水素は、ゾーン13の低部の部分(区画22)、例えば、底部の半分または1/4にライン21経由で導入された後にゾーン13を通って上昇する熱ガス21、例えば、水蒸気の影響のためにライン17経由でユニット11から出る。
【0073】
もちろん、ユニット3および11はまた、所望であれば、蒸気状のストリーム14および/または17中に多少の留出物を残すように運転することもできる。
【0074】
供給原料2は、約周囲温度〜最高約300F(約150℃)の温度、常圧よりわずかに高い圧力〜最高約100psig(約690kPaG)(以後、「常圧〜100psig」という)の圧力で炉1に入ることができる。供給原料2は、約周囲温度〜約500F(約260℃)の温度、常圧〜100psigの圧力でライン10経由でゾーン12に入ることができる。
【0075】
ストリーム14は、本質的にすべて、供給原料2から形成される炭化水素蒸気であり得、約周囲温度〜約400F(約200℃)の温度、常圧〜100psigの圧力である。
【0076】
ストリーム15は、本質的に、供給原料2からの残りの液体のすべてから予熱器3で蒸発したものを差し引いたものであり、約周囲温度〜約500F(約260℃)の温度、常圧よりわずかに高い圧力〜最高約100psig(約690kPaG)(以後、「常圧〜100psig」という)の圧力でありうる。
【0077】
ストリーム25で表されるストリーム14および17を合わせたものは、約170〜約400F(約77〜約200℃)の温度、常圧〜100psigの圧力であり得、例えば、約0.1〜2、好ましくは、約0.1〜約1の、オーバーオールの水蒸気/炭化水素比(炭化水素のポンド数あたりの水蒸気のポンド数)を含む。
【0078】
ストリーム28は、約900〜約1,100F(約480〜約590℃)の温度、常圧〜100psigの圧力であり得る。
【0079】
液状留出物26は、本質的に、中間留出物沸点範囲およびそれより重質な成分のみを含むことができ、または、そうした成分とストリーム14および/または17で見られるより軽質な成分の混合物であり得る。留出物ストリーム26は、約550F(約290℃)未満の温度、常圧〜100psigの圧力であり得る。
【0080】
ゾーン13では、希釈比(熱ガス/液滴)は、コンデンセートの組成が広く変化するので、広く変化することになる。一般には、ゾーン13の頂部における熱ガス21、例えば、水蒸気の炭化水素に対する比は、約0.1/1〜約5/1、好ましくは、約0.1/1〜約1.2/1、より好ましくは、約0.1/1〜約1/1であり得る。
【0081】
水蒸気は、ライン21経由で導入される適切な熱ガスの例である。その他の材料が、用いられる水蒸気中に存在してもよい。ストリーム6は、従来の分解プラントで通常使用される類の水蒸気であり得る。かかるガスは、好ましくは、ゾーン13に入る液状炭化水素15の多くの画分を蒸発させるのに十分な温度である。一般には、導管21からゾーン13に入るガスは、少なくとも約350F(約180℃)、好ましくは、約650〜約1,000F(約340〜約540℃)の温度、常圧〜100psigであろう。かかるガスは、簡単のために、以後水蒸気という用語単独で呼ぶことにする。
【0082】
ストリーム17は、約350F(約180℃)未満の沸点を有する、水蒸気と炭化水素蒸気の混合物であってよい。運転者が、一部の留出物をストリーム17に入れることを望む状況が存在する場合があり、かかる状況は本発明の範囲内であることに留意されたい。ストリーム17は、約170〜約450F(約77〜約230℃)の温度、常圧〜100psigの圧力であり得る。
【0083】
充填物および/またはトレー19は、ライン21から入る水蒸気のための表面積を提供する。したがって、区画19は、下降流の液体を、ライン21から入る上昇流の水蒸気と接触させるための表面積を提供する。区画13内の向流によって、最重質(最高沸点)の液体が、水蒸気の油に対する比が最大で、同時に最高温度の水蒸気と接触することが可能になる。
【0084】
ライン21からの水蒸気は、例えば、導管2内に導入されてもよい希釈水蒸気(図示せず)が行うように、分圧のための希釈剤としてただ働くのではないことを知ることができる。それよりも、ライン21からの水蒸気は、希釈機能を行うのみでなく、液体状態に依然としてある炭化水素のための追加の蒸発エネルギーをも提供する。これは、より重質の炭化水素成分の蒸発を実現するのに十分なエネルギーを用い、エネルギー入力を制御することによって実現される。例えば、ライン21の水蒸気を使用することによって、供給原料2の液体のかなりの蒸発が実現される。それによって、炭化水素の液滴が、ゾーン13で徐々に下方に移動する際に、非常に高い水蒸気希釈比および最高温度の水蒸気が、最も必要な場所で提供される。
【0085】
ユニット11は、炉1の外側の独立ユニットである代わりに、ゾーン13が全体として炉1の内部に存在するように、この炉の対流ゾーンの内部に物理的に含まれ得る。炉内にユニット11を全部含有することは、多様な炉設計上の検討事項にとって望ましい場合があるが、これは、本発明の利益を実現するために必要ではない。ユニット11はまた、炉の外側でその全体または一部分を用いることもでき、それでも依然として本発明の趣旨内であり得る。炉1内にユニット11の全体を置くこと、および炉1外にユニット11の全体を置くことは、当業者には明らかであろうし、また本発明の範囲内である。
【0086】
実施例
ナイジェリアからのオソ(Oso)コンデンセートとして特徴づけられる天然ガスコンデンセートストリーム5を貯蔵タンクから取り出し、温度および圧力の周囲条件で熱分解炉1の対流区画に直接供給する。この対流区画では、このコンデンセートの最初の供給原料を約350F(約180℃)、約60psig(約410kPaG)に予熱し、次いで、蒸発ユニット11に回し、そこで、350F(180℃)、約60psig(約410kPaG)でガソリンガスとナフサガスの混合物をそのユニットのゾーン12で留出物液体から分離する。輻射コイル29の出口で1,450°F〜1,550°F(788〜843℃)の温度範囲で過酷な分解を行わせるために同じ炉の輻射区画に移送する目的で分離されたガスをゾーン12から除去する。
【0087】
前記の随伴する炭化水素ガスから分離された後の、供給原料2から残留する炭化水素液体を低部区画13に移送し、その区画でその底部まで降下させる。約1,000F(約540℃)の予熱水蒸気21をゾーン13の底部近傍に導入することによって区画22における水蒸気の炭化水素に対する比約0.5が得られる。降下する液滴は、ゾーン13の底部からその頂部に向かって上昇する水蒸気との向流である。ゾーン13で下降する液体では、水蒸気の液体炭化水素に対する比は、区画19の頂部から底部に向かって増加する。
【0088】
約340F(約170℃)の水蒸気とナフサ蒸気17の混合物17をゾーン13の頂部近傍から引き出し、ライン14を介してゾーン12から先に取り出されたガスと混合することによって、存在する炭化水素1ポンド(0.45kg)当たり約0.5ポンド(0.23kg)の水蒸気を含む複合水蒸気/炭化水素蒸気ストリーム25を形成する。この複合ストリームを約50psig(約350kPaG)未満で約1,000F(約540℃)までゾーン27で予熱し、炉1の輻射火室区画内に導入する。
【0089】
ユニット11の底部生成物26を約460F(約240℃)の温度および約60psig(約410kPaG)の圧力で取り出し、常圧蒸留ユニット32に回し、そのユニットを約3psig(約21kPaG)で約250F(約120℃)のオーバヘッド温度で運転することによって、約330〜約450F(約170〜約230℃)の範囲で沸騰する軽質ケロシン、約450〜約540F(約230〜約280℃)の範囲で沸騰する重質ケロシン、および約540〜約650F(約280〜約340℃)の範囲で沸騰する常圧軽油を含む別個のストリームをユニット32から取り除くことができる。底部ストリーム36を、約650F(約340℃)の温度、および約5psig(約30kPaG)の圧力でユニット32から取り除く。
【0090】
本発明は、ナフサおよびより軽質な材料の分離を熱分解プロセス内に直接統合することによってエネルギーおよび資本コストが効率的な方式でオレフィンを生成しつつ、かつ、直接原油精製プロセス内に統合するためにより重質な材料を保持することによって中間留出物沸点範囲成分を生成しつつ、全原油、天然ガスコンデンセート、およびその混合物から直留ナフサ沸点範囲およびより軽質な材料の効率的な分離を提供することが前記から理解することができる。本発明の精製統合の特徴の1つの結果は、ジェット燃料およびディーゼル燃料製造で直接最も良好に使用される軽質および重質ケロシン画分を精製常圧蒸留ユニットから製造することである。本発明の精製統合の特徴のさらなる結果は、最大のアップグレーディングを得るために真空蒸留ユニット用の供給原料として常圧蒸留ユニットのボトムを使用することである。真空蒸留ユニットからの真空軽油は、ガソリンを製造するために流動接触分解ユニットに送ることができる。このために、熱分解炉で低オクタン価直留ナフサを分解し、より少量の直留中間留出物成分を分離し、かつ、接触分解ユニットへの供給原料としての真空軽油の使用を介して、高オクタン価のガソリン製造を最大化することによって、例えば、原油供給原料の効率的な利用が最大化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全原油(whole crude oil)、天然ガスコンデンセートおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つからなり、少なくとも1つの留出物(distillate)を含む液状供給原料を少なくとも1つの分解炉で部分的に熱分解にかける熱分解プロセスであって、前記液状供給原料を最初に蒸発工程にかけ、前記蒸発工程からの蒸気産物を前記少なくとも1つの分解炉に供給する熱分解プロセスにおける、
液状画分が前記蒸発工程から回収され、前記液状画分が前記液状供給原料に当初存在していた前記少なくとも1つの留出物のうちのかなりの(substantial)量を含むような条件下で前記蒸発工程を実施することと、前記液状画分を常圧蒸留および真空蒸留のうちの少なくとも1つにかけることによって少なくとも1つの留出生成物を生成させることとを含む改良。
【請求項2】
前記蒸発工程が、約330F(約170℃)以下の温度で沸騰し、前記少なくとも1つの分解炉への供給原料として使用されるオーバヘッドストリームと、約330F(約170℃)以上の温度で沸騰し、常圧蒸留ユニットに供給される別個の液状ボトム画分とを生成させるように実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸発工程が、自生(autogenous)圧力下で約150〜約500F(約66〜約260℃)の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記常圧蒸留ユニットが、少なくとも一つのケロシン画分、常圧軽油、および常圧ボトムストリームを含む別個の生成物を生成する条件下で運転される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記常圧蒸留ユニットが運転されて軽質ケロシン画分、別個の重質ケロシン画分が生成し、前記常圧ボトムストリームは、重質燃料油の生成、および接触分解操作用の供給のうちの少なくとも1つにおいて用いられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発工程が、約330F(約170℃)以下の温度で沸騰し、前記少なくとも1つの分解炉に供給するために使用されるオーバヘッドストリームと、約330F(約170℃)以上の温度で沸騰し、常圧蒸留ユニットに供給される別個の液状ボトム画分とを生成させるように実施され、前記蒸留ユニットが、少なくとも1つのケロシン画分、常圧軽油、および常圧ボトム画分を含む別個の生成物を生成する条件下で運転され、前記常圧ボトム画分が真空軽油および真空残渣を生成するために真空蒸留ユニットに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸発ユニットが、自生圧力下で約150〜約500F(約66〜約260℃)の温度で運転される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記真空蒸留ユニットが運転されて真空軽油画分および別個の真空残渣画分が生成し、前記真空残渣は、ディレードコーキングユニット用の供給原料として用いられる、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−506996(P2010−506996A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533298(P2009−533298)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/019791
【国際公開番号】WO2008/051334
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】