説明

全固体エレクトロクロミック素子及びその製造方法

【目的】 応答速度が速く、繰り返し寿命が長い、加工性、信頼性に優れた固体エレクトロクロミック素子。
【構成】 電気化学的に色変発色するエレクトロクロミック材料を両極もしくは片極に具備し、両極の間にイオン伝導性物質を配置した電気二重層コンデンサにおいて、イオン伝導性物質が2−(メタ)アクリロイルオキシカルバミド酸ω−アルキルオリゴオキシアルキルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルバミド酸2−(メタ)アクリロイルオキシカルバモイルオリゴオキシアルキルエステルの重合体からなる固体溶媒および電解質とを複合してなる高分子固体電解質とする固体エレクトロクロミック素子。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウレタン結合を有するオリゴオキシアルキル側鎖が導入された高分子固体溶媒を主成分とする固体イオン伝導性物質を用いた全固体エレクトロクロミック素子(以下ECDという。)及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電気化学的酸化還元により色変する材料を利用した素子であるECDは、駆動電圧が低く、消費電力が小さいこと、CRTやLEDのような自発光型ではないため目に優しく、材料により色の選択が多いこと、液晶素子に比べ視野角が広く、薄型、小型化、軽量化の可能性が高いこと、電圧印加をオフにしても継続表示のできるメモリー性のあること等の特徴があるため、表示素子やスマートガラス等への応用に活発に研究されており、一部実用化も行われている。
【0003】ECDは、透明電極/EC材料/イオン伝導性物質/(EC材料)/対向電極の構造で構成されるのが一般的であるが、イオン伝導性物質としては、素子組立て工程の便宜性及び液漏れがないこと等の理由から、無機及び高分子系の固体電解質層の適用が盛んに試みられている(「高分子、1989年、38号、p970」、「公開特許公報平3−231229号」)。特に、高分子を主成分とした固体電解質を使用したものは、無機物に比較して種々の形状に加工でき、封止も簡単というメリットがある。しかし、高分子固体電解質のイオン伝導性が低いことや数ミクロンから数十ミクロンの薄膜にしにくいこと、電極との接着性が悪いことなどの理由で素子全体の抵抗が高くなり、応答速度が遅く、繰り返し寿命が短いという問題があった。
【0004】一般的に検討されている高分子固体電解質のイオン伝導度は、室温における値で10-4〜10-5S/cm位まで改善されたものの、液体系イオン伝導性物質に比較するとなお二桁以上低いレベルである。また、0℃以下の低温になると、一層極端にイオン伝導度が低下する。更に、これら固体電解質をECDの素子に組み込む場合、電極との複合化や接着性確保等の加工技術が難しく製造法でも問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を解決するため、室温あるいはそれより低温であってもイオン伝導度が大きく、膜強度、加工性に優れた高分子固体電解質を利用することにより、応答速度が速く、繰り返し寿命が長い、加工性、信頼性に優れたECDを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気化学的に色変発色するエレクトロクロミック材料を両極もしくは片極に具備し、両極の間にイオン伝導性物質を配置したエレクトロクロミック素子において、イオン伝導性物質が、下記の一般式(1)で表されるN−メタクリロイル−オキシエチル−オリゴオキシアルキルカルバメート、N−アクリロイル−オキシエチル−オリゴオキシアルキルカルバメート(両者をAOACという。)、ビス(N−メタクリロイル−オキシエチルカルバミル)−オリゴオキシアルキレンまたはビス(N−アクリロイル−オキシエチルカルバミル)−オリゴオキシアルキレン(両者をBCOAという。)の重合体、共重合体またはそれら重合体の混合物である固体溶媒および電解質とを複合してなる高分子固体電解質であることを特徴とするECDおよびCH2 =C(R1 )COO(CH22 NHCOO(R2 O)n3 …(1)
(但し、R1 は水素もしくはメチル基、R2 は(CH22 、CH(CH3 )CH2 、R3 は炭素数が1〜10のアルキル基またはCONH(CH22 OCOC(R1 )=CH2 、nは1以上の数を表す。)少なくとも一方の極に電気化学的に発色材料を具備した電極及び電解質、場合によって可塑剤を含むAOACまたはAOAC/BCOAからなる重合性モノマー混合液を、エレクトロクロミック素子内に組み込んだ後に重合し、固体化することを特徴とするECDの製造方法を開発することにより上記の目的を達成した。
【0007】本発明に用いる固体溶媒に用いる本固体高分子のモノマーである一般式(1)で表されるAOACの合成法としては、それぞれが対応するメタクリロイルオキシエチレンイソシアナートまたはアクリロイルオキシエチレンイソシアナート(以下両者をAOIと略す。)とモノアルキルオリゴアルキレングリコールとを加熱反応させることにより、容易に得られる。
【0008】また、BCOAはAOACと同様にそれぞれが対応するAOIとオリゴアルキレングリコールとを2:1のモル比で反応させることにより容易に得られる。
【0009】本発明のECDに用いる固体溶媒は、前記AOACまたはAOACおよびBCOAを重合することによって得られる。
【0010】重合は、AOAC及びBCOAのメタクリロイルもしくはアクリロイル基の重合性を利用した一般的な方法を採用することができる。即ち、溶媒中でラジカル、カチオン、アニオン重合を行うことができる。また、重合性モノマー溶液を成形後に加熱や電磁波エネルギーによる重合も可能である。重合体を本発明のようなイオン伝導性物質の固体溶媒として用いる場合には特にこのようなモノマー溶液を成膜後の重合が有効である。即ち、AOAC単独もしくはBCOAとAOACとの混合物をアルカリ金属塩のような塩と混合し、成型ないし成膜後に光照射または加熱によって重合させることで加工面での自由度は拡がり、応用上の大きなメリットとなる。この場合の重合温度としてはAOACまたはBCOAのオリゴオキシアルキレン基の種類によって異なるが、通常は0℃から200℃の範囲で充分である。また、電磁波エネルギー照射で重合する場合もAOACまたはBCOAのオリゴオキシアルキレン基の種類によって異なるが、例えばジメチルケタール等の触媒を使用して数MW以上の紫外線またはγ−線などで重合させることが可能である。
【0011】本発明の固体溶媒に用いるAOACの重合体またはAOACとBCOAの共重合体の分子量は1000以上100万以下が好ましく、5000以上5万以下が特に好ましい。重合体の分子量が高くなると加工後の膜強度等、膜特性が良好となる反面、キャリアーイオン移動に重要な熱運動が起こりにくくなって、イオン伝導性を阻害する。また溶剤にも溶けにくくなり、加工面で不利になる。逆に分子量が低過ぎると、成膜性、膜強度等が悪化し、基本物性が低下する。本発明において固体溶媒として用いられる重合体は、膜強度が高いため、厚さを10μm程度の薄膜にしても、ECDなどの操作中に破れることがないので安全に使用できる。
【0012】本発明の固体溶媒の原料として用いられるAOAC、BCOAは、それぞれが一つ及び二つの重合性官能基を有しているため、AOACからは櫛型高分子を、BCOAからは網目状高分子が得られる。従って、これらを適当に混合することにより熱運動性が大きく膜強度が良好な重合体が得られる。重合体の側鎖もしくは架橋基となるオリゴオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン鎖数nは1〜1000の範囲が好ましく、5〜50が特に好ましい。
【0013】本発明のECDに用いる固体溶媒中に、好ましくは可塑剤として有機溶媒を添加することにより、イオン伝導度が更に向上する。可塑剤として添加する有機溶媒としては、固体溶媒であるAOAC重合体またはAOAC/BCOA共重合体と相溶性が良好で、誘電率が大きく、沸点が100℃以上で、電気化学的安定範囲が広いものが適している。
【0014】そのような溶媒としてはトリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のオリゴエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、炭酸ビニレン等のカーボネート類、ベンゾニトリル、トリニトリル等の芳香族ニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン等の極性溶媒が挙げられる。この中でオリゴエーテル類及びカーボネート類が好ましく、カーボネート類が特に好ましい。
【0015】可塑剤はその添加量が多いほど、高分子固体電解質のイオン伝導度は高くなるが、多すぎると材料の機械的強度が低下する。好ましい添加量としては、AOAC重合体またはAOAC/BCOA共重合体の重量の5倍以下である。また、可塑剤として炭酸ビニレン、ビニルピロリドンのような重合性のものを適度に併用(グラフト重合)することにより、機械的強度を低下させずに、添加量を増加させることもできる。
【0016】本発明のECDに用いる高分子固体イオン伝導性物質中の固体溶媒と電解質の配合比は、側鎖もしくは架橋基のエーテル酸素原子2〜100個に対し、電解質分子1個を加えた割合が好ましい。電解質分子がエーテル酸素原子の1/2以上の比率で存在すると、イオンの移動が阻害され、逆に1/100以下の比率ではイオンの絶対量が不足となってイオン伝導度が小さくなると考えられ、好ましくない。
【0017】電解質として用いる化合物の種類は特に限定されるものではなく、ECDで電荷キャリアーとしたいイオンを含んだ化合物を用いれば良いが、固体溶媒中での解離定数が大きいイオンを含むことが望ましい。このような化合物としては、(CH34 NBF4 、(CH3 CH24 ClO4 等の4級アンモニウム塩、AgClO4 等の遷移金属塩、LiCF3 SO3 、LiPF6 、LiClO4 、Lil、LiBF4 、LiSCN、LiAsF6 、NaCF3 SO3 、NaPF6、NaClO4 、Nal、NaBF4 、NaAsF6 、KCF3 SO3 、KPF6 、Klなどのアルカリ金属塩、パラトルエンスルホン酸等の有機酸及びその塩、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。
【0018】本発明のECDの一例として、面積1.5×1.5cmの薄型ECDの断面図を図1に示す。2は透明伝導性電極で、その上にエレクトロクロミック(EC)層3が成膜されており、更にその上に高分子固体電解質膜4が配置されている。5は対向電極であり、6は固体電解質層のスペーサーとして用いた絶縁性フィルムである。7は絶縁性樹脂封止剤、8はリード線である。
【0019】EC層としては、酸化還元による色変化が可逆的に行われるものであれば良く、代表例としては、酸化タングステン等の金属酸化物、金属硫化物、ビオロゲン誘導体及びそのポリマー、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン等の導電性高分子等が挙げられる。
【0020】透明伝導性電極2は電子伝導性が高く、かつ電気化学的に耐食性があり、できれば柔軟性のあるものが好ましく、金等の金属、酸化インジウム等の電子伝導性酸化物、ポリアニリンやポリイソチアナフテン等の電子伝導性高分子をポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等の透明性の優れた高分子もしくはガラス板上に薄膜化もしくは複合したものが用いられる。
【0021】対向電極としては、EC層のイオンの動きにともない、イオンを可逆的に出し入れできるもので、EC層の色変化が明瞭となるように淡色のものが好ましい。そのような材料は、EC層との組み合わせもあり、特に限定されるものではないが、例えば金属酸化物、金属硫化物等のインターカレーション化合物、伝導性高分子、水素吸蔵合金、アルカリ金属及びその合金等である。
【0022】次に、本発明のECDの製造例について説明する。前述したように固体溶媒をモノマー状態で塩と混合、成形ないし成膜後に重合する複合方法が、固体電気化学素子を製造する場合に特に有用である。
【0023】AOAC、BCOA、可塑剤、電解質を適当な混合比で混合し、重合性モノマー溶液を調製する。この溶液をEC層と対向電極を接触しないように電極の端に適当な厚みのスペーサーを介して貼りあわせた間に流し込んだ後、重合することにより、電極と電解質が良好に複合及び接着した薄膜ECDが得られる。
【0024】
【作用】本発明の固体電気化学発色素子は、重合性モノマー溶液として、容易に成膜、複合できるウレタン結合を有するオリゴオキシエチル基を側鎖に導入した櫛型架橋高分子となるモノマー溶液に電解質を溶解させたものであり、重合の結果、高イオン伝導性で膜強度の良好な固体電解質となるもので、これを用いることによって応答速度が速く繰り返し寿命の長い、加工も容易で、信頼性の高いECDが得られるものである。
【0025】特に、透明電極/EC層と対向電極間に固体溶媒を、固体溶媒が液状の状態にある間に電気化学発色素子として組み込み、これを重合固化して複合することによりこの接触状態を完全にすることができた。
【0026】
【実施例】以下に本発明について代表的な例を示し、更に具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらになんら制限されるものではないことは言うまでもない。
【0027】(実施例1)
《N−メタクリロイルオキシエチル−オリゴオキシエチル(MW550)カルバメート(MOEC(550))の合成》メタクリロイルオキシエチレンイソシアナート(MOI)0.1mol(15.5g)、平均分子量550のモノメチルオリゴエチレングリコール0.1mol(55g)を窒素雰囲気中で良く精製したTHF100mlに溶解した後、0.66gのジブチルチンジラウレートを添加する。
【0028】その後30℃以下で約3時間反応させることにより、無色の粘稠液体としてMOEC(550)を得た。その 1H−NMR、IR及び元素分析の結果から、MOIとモノメチルオリゴエチレングリコールは1対1で反応し、更にMOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成していることを確認した。
【0029】《ビス(N−アクリロイルオキシエチルカルバミル)−オリゴオキシエチレン(MW600)(BCOE(600))の合成》アクリロイルオキシエチレンイソシアナート(AOI)0.2mol(28.2g)、平均分子量600のオリゴエチレングリコール0.1mol(60g)を窒素雰囲気中で良く精製したTHF100mlに溶解した後、0.66gのジブチルチンジラウレートを添加する。その後、30℃以下で約6時間反応させることにより無色のゲル状固体としてBCOE(600)を得た。その 1H−NMR、IR及び元素分析から、AOIとオリゴエチレングリコールは2対1で反応し、更にAOIのイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成していることを確認した。
【0030】《重合性モノマー溶液の調製》上記により合成したMOEC(550)2.10g、BCOE(600)0.51gとプロピレンカーボネート(PC)1.3g、ジエチルカーボネート(DEC)1.3g及びリチウムテトラフルオロボレート(LiBF4 )0.5gをアルゴン雰囲気中で良く混合し、MOEC(550)/BCOE(600)/PC/DEC/LiBF4 混合物である重合性モノマー混合液を粘稠液体として得た。
【0031】この重合性モノマー混合液をアルゴン雰囲気下、ガラス板上に塗布後、100℃で1時間加熱したところ、MOEC(550)/BCOE(600)共重合体/PC/DEC/LiBF4 複合体が約300μmの透明な自立フィルムとして得られた。このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ2.0×10-3、0.8×10-3S/cmであった。
【0032】《三酸化タングステン(WO3 )EC層の作製》松崎真空(株)製のITOガラスを1.2×1.2cmに切断したものの端部を被覆し、ITO露出部が1×1cmになった電極の上に、タンタルをボート材として抵抗加熱法、10-5〜10-6TorrWO3 の真空蒸着を行った。得られた膜の厚みは約1000オングストローム、密度は約5g/cm3 であった。
【0033】《電解重合ポリアニリン膜の作製》松崎真空(株)製のITOガラスを1.2×1.2cmに切断した電極上に、0.5Mアニリンを含む1M塩酸水溶液を電解液とし、2×2cmのITOガラスを対極として、−0.2から0.8Vvs.SCEの範囲で、走査速度0.2V/secで電位走査を繰り返すことにより、約5000オングストロームの緑色のドープ状態の電解重合ポリアニリン電極膜を作製した。次に、アンモニア水と蒸留水で充分に洗浄後、ヒドラジンで還元することにより、無色のアンドープ状態の膜となった。この膜を100℃で約3時間減圧乾燥した。
【0034】《ECDの製造》アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例3で製造したポリアニリン電極1.2×1.2cmの端部約1mm四方を10μmのポリイミドフィルムで、スペーサーとして被覆した。次に、実施例1で調整した重合性モノマー溶液をポリアニリン電極上に塗布し、更に実施例2で製造したWO3 電極を貼りあわせ、100℃、1時間加熱した。次に電気化学素子をエポキシ樹脂で封印し、図1に示すようなECDを得た。この電気化学素子を注入電気量6mC/cm2 、作動電圧−2〜2Vで駆動を行ったところ、濃青色/淡青色のエレクトロクロミズムを示した。応答速度は約500msecであった。またこの条件で駆動を100回繰り返しても色調、応答速度に変化は見られなかった。
【0035】
【発明の効果】本発明のECDは、イオン伝導性物質が固体であるため、液漏れの危険はなく長期間安定して使用できる。
【0036】また、従来のECDと比較しても固体溶媒として低温においてもイオン伝導性の優れたウレタン結合を有するオリゴオキシアルキル側鎖を有するAOACあるいはAOAC/BOACに電解質、可塑剤を配合したモノマー溶液を用い、これはECDに組み込んだ後で重合、固化する形式の採用が容易であり、ECDでありながら、EC層及び対向電極と接触状態を極めて緊密に複合することが容易である。このため成型、加工性も良好で任意の形状の発色素子を製作することができるだけでなく、できた発色素子は応答速度が速く、繰り返し寿命が長いという特徴がある。
【0037】このため、表示素子やスマートガラス等への応用が可能であり、従来の電気化学発色素子の用途以外の用途にも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の薄型ECDの断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス
2 透明導電膜
3 EC層
4 高分子固体電解質膜
5 対向電極
6 絶縁性フィルムスペーサー
7 絶縁性樹脂封止剤
8 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気化学的に色変発色するエレクトロクロミック材料を両極もしくは片極に具備し、両極の間にイオン伝導性物質を配置したエレクトロクロミック素子において、イオン伝導性物質が、下記の一般式(1)で表されるN−メタクリロイル−オキシエチル−オリゴオキシアルキルカルバメート、N−アクリロイル−オキシエチル−オリゴオキシアルキルカルバメート(両者をAOACという。)、ビス(N−メタクリロイル−オキシエチルカルバミル)−オリゴオキシアルキレンまたはビス(N−アクリロイル−オキシエチルカルバミル)−オリゴオキシアルキレン(両者をBCOAという。)の重合体、共重合体またはそれら重合体の混合物である固体溶媒及び電解質とを複合してなる高分子固体電解質であることを特徴とする全固体エレクトロクロミック素子。
CH2 =C(R1 )COO(CH22 NHCOO(R2 O)n3 …(1)
(但し、R1 は水素もしくはメチル基、R2 は(CH22 、CH(CH3 )CH2 、R3 は炭素数が1〜10のアルキル基またはCONH(CH22 OCOC(R1 )=CH2 、nは1以上の数を表す。)
【請求項2】 高分子固体電解質として、可塑剤を添加した固体溶媒及び電解質とを複合してなる高分子固体電解質である請求項1記載の全固体エレクトロクロミック素子。
【請求項3】 イオン伝導性物質が、固体溶媒中での解離定数が大きく、分極性電極と電気二重層を形成し易い4級アンモニウム塩、遷移金属塩、アルカリ金属塩、遊離の無機または有機酸からなる電解質及び可塑剤を含む請求項1〜2記載の全固体エレクトロクロミック素子。
【請求項4】 少なくとも一方の極に電気化学的に発色の材料を具備した電極及び電解質、場合によっては可塑剤を含むAOACまたはAOAC/BCOAからなる重合性モノマー混合液を、エレクトロクロミック素子内に組み込んだ後に重合し、固体化することを特徴とする全固体エレクトロクロミック素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開平7−152050
【公開日】平成7年(1995)6月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−323194
【出願日】平成5年(1993)11月29日
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)