説明

共同住宅

【目的】居住者が、居住用の地上階とともに、多目的に利用可能な地下空間を占用する。
【構成】地上1階F1の住戸11,12…は、対応する地下階B1に内部階段11sで連絡されるとともに、独立して外部に面する独立居室11h,12hを有している。また、これらの独立居室11h,12h…を除く地下階B1には、吹き抜けVを通して地上階に連通された中庭Pに面して複数個の多目的室21h,22h,31h,32hが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アパートやマンションなどの共同住宅に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅において、空間の有効活用を図るため、地下空間を利用すること、すなわち、地下室を設置することが提案されている。具体的には、建物の建築に先立って敷地に穴を掘削し、予め工場にて製造された地下室ユニットをその穴に埋設し、住戸の台所などと出入りできるようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この住宅における地下室は、地下に小さな物置空間を形成する程度の容積を有しているにすぎず、その地下空間を生活の一部に活用すること、例えば、寝室やリビングなどに活用することは、その大きさからは困難である。また、仮に、大きな空間の地下室を構築した場合においても、地下室は、優れた防音性や断熱性などの利点を有しているものの、採光や通風などの居住環境が地上階に比べて劣る欠点があり、生活の一部に活用されることはなかった。
【0004】また、アパートやマンションなどの共同住宅において、同一棟内に店舗や事務所、倉庫などの業務施設が併存された併存住宅では、地下階を構築する場合もあるが、地下階は、前述したように、居住環境の点で難があり、居住以外の用途に使用されている。
【0005】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、地下室の有する特性に着目して居住者が地下空間を多目的に活用することのできる共同住宅を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、地下1階と地上2階以上の地上階を有し、各地上階を戸境壁を介して複数個の住戸に区画した共同住宅であって、地上1階の住戸は、対応する地下階に内部階段で連絡されるとともに、外部に面する独立居室を有し、さらに、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】地上1階と、その対応する地下階とは、内部階段で連絡されたメゾネットに形成され、その地下階の各居室は、独立しつつ外部に面している。また、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されている。
【0008】この結果、居住者は、居住空間としての地上階を有するとともに、地下階に多目的に使用可能な独立した空間を占用することが可能となり、多様な空間利用を図ることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0010】図1には、本発明の共同住宅1が示されている。この共同住宅1は、地下1階および地上3階で構成され、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…,は、各階において戸境壁を介して区画され、詳細には図示しないが、それぞれリビング、ダイニング、二つの寝室を有する2LDKに形成されている。また、地上1階F1の各住戸11,12…は、図2に詳細に示すように、同様に戸境壁を介して区画され、それぞれリビング、ダイニング、二つの寝室を有する2LDKに形成されているとともに、対応する地下1階B1に内部階段11s…を介して連絡された独立居室11h,12h…を備えており(図3参照)、いわゆる、メゾネットに形成されている。そして、この地下1階の独立居室11h,12h…は、擁壁Rで区画された前庭Yに面しており、ガラス戸を通して採光することができると同時に、外気を流通することができる。
【0011】なお、住戸12については、部屋の構造が省略されているが、戸境壁を中心に住戸11とほぼ左右対称に形成されているものである。
【0012】また、地下1階B1の、独立居室11h,12h…を除く空間には、図3に示すように、吹き抜けVを通して各地上階F1,F2…に連通された中庭Pが形成されるとともに、この中庭Pに臨んでその周囲には、4個の多目的室21h,22h,31h,32hが形成されている。これらの多目的室21h,22h,31h,32hは、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…に割り当てられるようになっている。したがって、地上2階F2以上の各住戸21,22…,31,32…についても、居住空間としての地上階を有するとともに、多目的に使用可能な独立した空間としての地下階とを占用することができ、地上2階2F以上の各住戸21,22…,31,32…についても、地上1階F1の各住戸11,12…とほぼ同一の床面積を有するようにしている。
【0013】なお、地上1階における各住戸11,12…の玄関へのエントランスEは、地下1階に形成された中庭P上に掛け渡されている。
【0014】このように、共同住宅1の各住戸は、必ず居住空間としての地上階を有するとともに、地下1階に多目的に使用可能な独立居室もしくは多目的室を有することから、これらの地下空間を、地下室のもつ優れた特性に着目して、より積極的に多様な目的に活用することができる。例えば、カラオケルームやマージャンルームといった防音室としての利用や、トレーニングルームや書斎、さらには、ストックルームとしての利用など、地上階とは内容の異なる利用が可能となる。
【0015】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、地下1階と地上2階以上の地上階を有し、各地上階を戸境壁を介して複数個の住戸に区画した共同住宅であって、地上1階の住戸は、対応する地下階に内部階段で連絡されるとともに、外部に面する独立居室を有し、さらに、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されていることにより、各居住者は、居住空間としての地上階を有するとともに、多目的に使用可能な独立した空間としての地下階とを占用することが可能となり、これまでにない多様な空間利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の共同住宅の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明の共同住宅の地上1階を一部省略して示す平面図である。
【図3】本発明の共同住宅の地下1階を一部省略して示す平面図である。
【図4】本発明の共同住宅の地上1階の概略を示す説明図である。
【図5】本発明の共同住宅の地下1階の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
11,12,21,22 住戸
11s 内部階段
11h,12h 独立居室
21h,22h,31h,32h 多目的室
B1 地下1階
F1 地上1階
P 中庭
V 吹き抜け
Y 前庭
R 擁壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地下1階と地上2階以上の地上階を有し、各地上階を戸境壁を介して複数個の住戸に区画した共同住宅であって、地上1階の住戸は、対応する地下階に内部階段で連絡されるとともに、外部に面する独立居室を有し、さらに、この独立居室を除く地下階には、吹き抜けを通して地上階に連通された中庭に面して複数個の多目的室が形成されていることを特徴とする共同住宅。
【請求項2】 前記地下階に形成された各多目的室は、それぞれ地上2階以上の各住戸に割り当てられている請求項1記載の共同住宅。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平8−326335
【公開日】平成8年(1996)12月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−134900
【出願日】平成7年(1995)6月1日
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)