説明

共役ジエンをベースとするナノ構造化ポリマー

本発明は、ナノ構造化ジエンポリマー、それらの製造およびそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造化ジエンポリマーおよびそれらの製造ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ構成において用いられる特別な方法は、共役ジエンをベースとするかまたは共役ジエンをおよびビニル芳香族化合物をベースとする一部アルカリ金属で終端されたリビングポリマーを、この目的のために特に好適な有機もしくは無機化合物に連結し、こうして特に加工特性を、かつまた物理的および動的特性、特にタイヤの転がり抵抗に関連する特性を改善する。
【0003】
業界で言及されるゴム用に使用される連結/カップリング剤は、リビングポリマーに結合することができる適切な基、例えばエポキシ基(特許文献1)、イソシアネート基、アルデヒド基、ケト基、エステル基、およびハライド基を有する非常に多種多様な有機化合物のみならず、特にまたケイ素のまたはスズ((特許文献2)および(特許文献3))の適切な化合物、例えばそれらのハライド、硫化物またはアミンを含む。(特許文献4)は、その下層のゴムがスズ化合物、リン化合物、ガリウム化合物またはケイ素化合物とある程度結合させられた、高性能タイヤトレッド用のゴム組成物を記載している。
【0004】
ポリジエンの末端基官能化のための様々な公知方法もまた存在する。ネオジム含有系によって触媒されるポリブタジエンの場合、使用される化合物の例は、例として(特許文献5)に記載されているように、エポキシド;ケトン、アルデヒドもしくは酸誘導体の群からの置換ケト化合物;または置換イソシアネートである。末端基変性の別の公知方法は、二重官能化試薬を使用する。これらは、例として((特許文献6)または(特許文献7))に記載されているように、極性官能基を使用して、ポリジエンと反応し、分子中の第2極性官能基を使用してフィラーと相互作用する。
【0005】
これまでに使用された連結基の幾つかは、例えば、希土類によって、特にネオジム含有系によって触媒されるジエン重合反応で末端基変性につながる、かなりの欠点を有し、従ってカップリング剤として適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19857768号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0890580A号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0930318A号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19803039号明細書
【特許文献5】米国特許第4,906,706号明細書
【特許文献6】国際公開第01/34658号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,992,147号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、良好な加工性能を有し、かつ、それらのナノ構造化ポリマー画分のために、配合ゴム材料において改善された特性プロフィールを有するナノ構造化ジエンポリマーを提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、希土類の触媒での共役ジエンの重合およびその後のナノ−カップリング剤との反応によって得られる、共役ジエンをベースとするナノ構造化ポリマーであって、高分子量画分が2,000,000g/モルより大きい、好ましくは5,000,000g/モルより大きい、平均モル質量を有する二峰性モル質量分布を得られたポリマーが有し、全体ポリマーを基準として、高分子量画分の量が1%〜20%、好ましくは3〜15%の範囲にあり、ポリマーを基準として、全体ポリマーのゲル含有率が1%未満であり、1,2−ビニル単位の含有率が0.3〜1重量%であるナノ構造化ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、カップリング後の本発明の実施例2の、g/モル単位での分子量に対するポリマーの相対分率を示す図である。
【図2】図2は、カップリング後の本発明の実施例4の、g/モル単位での分子量に対するポリマーの相対分率を示す図である。
【図3】図3は、SiClとの反応後の比較例7での、ナノ−カップリング剤なしの比較ポリマーについての曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
使用することができる共役ジエンは、相当するポリマーアニオンの製造のために慣例の公知ジエンのいずれかである。次のものが例として挙げられ得る:1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンおよび/または2−フェニル−1,3−ブタジエン、好ましくは1,3−ブタジエンおよびイソプレン、ならびにそれらの混合物。
【0011】
ここで使用される触媒は、例として欧州特許第011184B号明細書または欧州特許出願公開第1245600A号明細書にさらに詳細に記載されているように、好ましくは希土類金属の化合物である。重合プロセス用に公知のチーグラー・ナッタ触媒のいずれもまた使用することができ、例は、チタン化合物を、コバルト化合物を、バナジウム化合物をまたはニッケル化合物をベースとするもの、およびまた希土類金属の化合物をベースとするものである。言及されるチーグラー・ナッタ触媒は、個別にまたは互いに混合物としてのいずれかで使用することができる。
【0012】
希土類金属の化合物をベースとするチーグラー・ナッタ触媒が使用されることが好ましく、例は、炭化水素に可溶である、セリウム化合物、ランタン化合物、プラセオジム化合物,ガドリウム化合物またはネオジム化合物である。希土類金属の相当する塩がチーグラー・ナッタ触媒として特に好ましくは使用され、例は、カルボン酸ネオジム、特にネオデカン酸ネオジム、オクタン酸ネオジム、ナフテン酸ネオジム、2,2−ジエチルヘキサン酸ネオジム、または2,2−ジエチルヘプタン酸ネオジム、およびランタンのまたはプラセオジムの相当する塩である。使用することができるチーグラー・ナッタ触媒はまた、例えば次の参考文献に記載されている、メタロセンをベースとする触媒系を包含する:欧州特許出願公開第919 574A号明細書、同第1025136A号明細書および同第1078939A号明細書。
【0013】
使用されるナノ−カップリング剤は、ポリマーと反応し、ポリマー上へある程度カップリングする、かつ、前記ナノ−粒子の平均モル質量が少なくとも5倍だけ、好ましくは7倍だけ増加した状態になる、下流反応でナノ−構造物を形成する化合物を含む。
【0014】
好ましいナノ−カップリング剤は、式
−Si−(O−SiX−X
[式中、
Xは式OR(ここで、Rは、1〜30個の炭素原子を有する飽和のもしくはある程度不飽和の脂肪族炭化水素基、5〜30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基である)のアルコラートであり、
nは0より大きい、好ましくは1より大きい、特に好ましくは2より大きい数である]
のオリゴマーシリケートである。
【0015】
言及されたタイプの好ましいナノ−カップリング剤の例は、
(RO)Si−O−Si(OR)
(RO)Si−O−Si(OR)−O−Si(OR)
(RO)Si−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)
(RO)Si−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)
(RO)Si−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)または
(RO)Si−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)−O−Si(OR)
(式中、Rはメチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルまたはそれらの異性体である)
である。これらのオリゴマーシリケートは商業的に入手可能であり、ケイ素テトラアルコラートの縮合によって好ましくは形成され、異なる縮合度を有する化合物または化合物の混合物と定義することができる。
オリゴマーシリケートは、例としてDegussaから商標Dynasil(登録商標)40で得られる。
【0016】
あまり好適でない化合物は、酸性水素、例えばNH基に、OH基にまたはCOOH基に存在する水素を有する基を含有するものである。
【0017】
使用されるナノ−カップリング剤の量は、変性の望ましい程度に依存する。ナノ−カップリング剤対ポリマーの比は、好ましくは0.001〜10g:100g、特に0.01〜6g:100gの範囲にある。
【0018】
前記ナノ構造物を形成するための反応は、1つ以上の段階で行うことができる。ナノ−カップリング剤が第1反応においてリビングポリマー基に結合したものになること、そして、他の変性ポリマー基と組み合わせて使用される第2段階で、それが凝集して記載のナノ構造物を生じることが特に好ましい。
【0019】
凝集プロセスは好ましくは、ポリマーの精製(work−up)中に、例えばストリッピング工程中に、ポリマーが例として水と接触するときに起こる。好ましい一実施形態では、ナノ−カップリング剤はこの時点で互いに反応することができる。そのようなことは、例として、ポリマー基と全く結合しなかった、ナノ−カップリング剤の遊離基が互いに反応し、こうして2つ以上のナノ−カップリング剤を互いに結合し、ここで、これらのそれぞれが1つ以上のポリマー基を有し得ることから起こり得る。
【0020】
本発明はまた、共役ジエンが先ず、不活性の有機非プロトン性溶媒の存在下におよび希土類の触媒の存在下に重合させられ、言及されたモノマーをベースとする、重合反応後に得られたポリマーが式
−Si−(O−SiX−X
[式中、
Xは式OR(ここで、Rは、1〜30個の炭素原子を有する飽和のもしくはある程度不飽和の脂肪族炭化水素基、5〜30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、または6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基である)のアルコラートであり、
nは0より大きい、好ましくは1より大きい、特に好ましくは2より大きい数である]
のナノ−カップリング剤と反応させられ、
使用されるナノ−カップリング剤の量が、ポリマーに対して0.001〜10g:100gの範囲にあることを特徴とする、共役ジエンをベースとするナノ構造化ポリマーの製造方法を提供する。
【0021】
本発明の方法では、ナノ−カップリング剤は、ナノ−カップリング剤が先ずリビングポリマーの末端基を変性し、次に、その後の段階で、ナノ−カップリング剤が縮合して比較的高い分子量構造物を生じることから、ポリマーと反応する。
【0022】
本発明のナノ構造化ポリマーは逐次的段階で製造される。先ず、ポリジエンが製造され、これが次に、上に定義されたナノ−カップリング剤の1つ以上と反応させられ、それが次にナノ構造化ポリマーを生じるために例として縮合で反応することができる。これらのナノ−カップリング剤は、製造されるポリマーに望まれる特性に応じて、重合反応の任意の所望の時点で加えることができる。
【0023】
共役ジエンの重合は一般に、ジエンポリマーを形成するために触媒系がそれぞれのジエンと反応するように実施される。
【0024】
共役ジエンの重合は好ましくは、一般的な方法に従って、上述のチーグラー・ナッタ触媒の存在下に実施される(欧州特許011184B号明細書または欧州特許出願公開第1245600A号明細書を参照されたい)。
【0025】
本発明の方法は好ましくは、不活性の非プロトン性溶媒の存在下に実施される。これらの不活性の非プロトン性溶媒は、パラフィン系炭化水素、例えば、異性体ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、2,4−トリメチルペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンもしくは1,4−ジメチルシクロヘキサン、またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼンもしくはプロピルベンゼンなどの、芳香族炭化水素であることができる。これらの溶媒は、個別にまたは組み合わせて使用することができる。シクロヘキサンおよびn−ヘキサンが好ましい。
【0026】
溶媒の量は広く変わることができる。それは通常、モノマー全100重量部当たり約300〜1500重量部である。
【0027】
重合温度は広く変わることができ、一般に0℃〜200℃、好ましくは40℃〜130℃の範囲にある。反応時間も同様に2、3分〜2、3時間に広く変わる。重合反応は一般に、約30分〜8時間、好ましくは1〜4時間の期間内で実施される。それは、大気圧または昇圧(1〜10バール)のいずれかで実施することができる。
【0028】
本発明のポリマーは、回分式または連続的に製造することができる。直列の複数の、好ましくは少なくとも2つの、特に2〜5つの反応器からなる反応器カスケードでの連続手順が好ましい。
【0029】
重合は好ましくは、使用されたジエンの完全な転化まで続行される。ポリマーの所望の特性に応じて時期を早めて、例えば、モノマーの約80%転化率でジエン重合反応を中断することもまた、当然ながら、可能である。ジエン重合反応の後に、未転化ジエンは例として、脱圧および蒸留(フラッシュ段階)によって単離することができる。
【0030】
ナノ−カップリング剤との反応のために、重合反応中に得られた重合混合物は、言及されたナノ−カップリング剤と混合される。
【0031】
このために使用される溶媒または溶媒混合物は好ましくは、ジエンポリマーの製造のためにも使用された同じ非プロトン性有機溶媒または溶媒混合物である。溶媒を変えることまたは別の溶媒中のナノ−カップリング剤を加えることもまた、当然ながら、可能である。使用することができる非プロトン性有機溶媒の例は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、好ましくはヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、非常に特に好ましくはヘキサンである。例としてナノ−カップリング剤用の溶媒としての機能を果たすことができる極性有機化合物を加えることもさらに可能である。
【0032】
反応の間、ポリマーへのナノ−カップリング剤のカップリングを損ない得る破壊的化合物が好ましくは排除されるように注意しなければならない。かかる破壊的化合物の例は、二酸化炭素、酸素、水、アルコール、有機および無機酸である。
【0033】
ジエンポリマーとナノ−カップリング剤との反応は好ましくは、ポリマーの中間単離なしにその場で実施され、ジエンポリマーはここでは、さらなる中間処理なしに、必要に応じて脱圧および蒸留工程(フラッシュ段階)を経て、重合反応後にナノ−カップリング剤と反応させられる。
【0034】
使用されるナノ−カップリング剤の量は、変性のそれらの所望の程度に依存する。ナノ−カップリング剤対ポリマーの比は好ましくは、0.001〜10g:100g、特に0.01〜6g:100gの範囲にある。
【0035】
ナノ−カップリング剤との反応は通常、重合反応のための温度におおよそ相当する温度で実施される。これは、反応が約0℃〜200℃、好ましくは40℃〜130℃の温度で実施されることを意味する。反応は同様に、大気圧であるいは昇圧(1〜10バール)で実施することができる。
【0036】
反応時間は好ましくは比較的短い。それは、約1分〜約1時間の範囲にある。
【0037】
ナノ−カップリング剤との反応後に、末端基変性されたばかりのポリマーは、反応混合物が好ましくは水と接触させられるから、結合してナノ−構造物を生じる。これは、ポリマー溶液への水の別個添加によってか、またはストリッピング工程中の水蒸気の導入によって行うことができる。さらに、例がアルコールまたはカルボン酸である、他のプロトン性試薬を水の添加と共にまたはその前に加えることもまた可能である。ナノ−構造化ポリマーが単離される前に酸化防止剤を反応混合物に添加することはさらに有利である。
【0038】
チーグラー・ナッタ触媒の存在下に得られ、ナノ−カップリング剤と反応させられたポリマーの単離、精製、その上精製のために公知の方法を用いることはさらに可能である。
【0039】
本発明のポリマーは、公知の方法で、例えば水蒸気蒸留または、アルコールなどの、好適な凝集剤を使用する凝集によって単離することができる。凝集ポリマーは次に、例として遠心分離または押出によって生じた流体から取り出される。残留溶媒および他の揮発性成分は、適切な場合減圧でまたはブロワーからの空気の流れ中で加熱することによって単離ポリマーから除去することができる。
【0040】
本発明のナノ構造化ポリマーの分子量は広く変わることができる。本発明のポリマーの通常用途向けには、全体ポリマーの数平均モル質量(Mn)は、約100,000〜約500,000g/モルの範囲にあり、ここで、分子量は二峰性分布を有し、かつここで、高モル質量画分は、少なくとも5倍だけ、好ましくは8倍だけ、特に好ましくは10倍だけ平均モル質量で低モル質量画分より大きく、高モル質量画分は、GPC分析で、2,000,000g/モルより大きい、好ましくは5,000,000g/モルより大きい平均モル質量を有する。全体ポリマーを基準とする、高分子量画分の量は、1%〜20%、好ましくは3%〜15%の範囲にある。
【0041】
本発明は、図1および2を使用してさらに詳細に説明される。これらは、g/モル単位での分子量に関してポリマーの相対分率を示す。実線は、分子量に対してプロットされた分子量分布を表す。破線は関連積分である。実施例2(図1)および4(図2)を使用する2つのグラフは、カップリング反応後の本発明のポリマーの二峰性を非常に明確に示す。二峰性は、最小値によって互いに分離された、2つの別個のピークによる分子量分布で明らかである。積分は、曲線における変曲によって、分子量分布に対応する形で2つのピークを分離している。これは、ナノ−カップリング剤なしの比較ポリマーについての曲線を示す図3と比べると特に明らかになる。この例では、分子量分布はたった1つのピークを示し、積分は連続的に上昇し、二峰性はそれ故全く存在しない。
【0042】
カップリング反応後に、高モル質量ピークが、5,000,000g/モルより上のモル質量で、2,000,000g/モルの閾値より明らかに上にあることをまた理解することができる。
【0043】
本発明のナノ構造化ポリマーの溶解性挙動は、未変性ポリマーのそれと同じものである。ポリマーのゲル含有率は1%未満である。本発明のポリマー中の1,2結合の含有率(ビニル含有率)は、好ましくは0.3〜1重量%、好ましくは0.4〜0.8重量%である。
【0044】
通常の配合成分は、当然ながら、本発明のポリマーに添加することができ、例は、フィラー、染料、顔料、軟化剤および強化剤である。公知のゴム助剤および架橋剤もまた添加することができる。
【0045】
本発明のナノ構造化ポリマーは、任意のタイプの加硫品のまたはゴム成形品の製造のために、公知の方法で使用することができる。
【0046】
本発明のナノ構造化ポリマーがタイヤ混合物に使用されるとき、配合材料の動的特性の著しい改善を得ることが可能であった。
【0047】
本発明は、タイヤおよびタイヤ部品の、ゴルフボールおよび工業ゴム製品の、ならびにまたゴム強化プラスチック、例えばABSプラスチックおよびHIPSプラスチックの製造のための、本発明のナノ構造化ポリマーの使用をさらに提供する。
【0048】
下記の実施例および図は、限定する効果を何ら生じることなく、本発明を例示するのに役立つ。
【実施例】
【0049】
重合反応は、窒素下に、空気および水分を排除して実施した。使用する溶媒は、乾燥した、酸素を含まない工業銘柄ヘキサンからなった。重合反応は、回分のサイズに対応して、2L〜20Lの容積のオートクレーブ中で実施した。
【0050】
転化率は、重量測定法で測定した;検体(依然として溶媒およびモノマーあり)を採取した後および(真空乾燥キャビネット中65℃で)乾燥させた後、ポリマー溶液をここで秤量した。
【0051】
ムーニーML 1+4(100)測定は、100℃で4分にわたって、1分の予熱後に、大きい回転子を使用するAlpha製の機器で行った。
【0052】
本発明の実施例1〜5
ネオジムバーサテートに関して等モル量のヘキサン中の水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH;Al(CH)の溶液およびヘキサン中のエチルアルミニウムセスキクロライド(EASC,Al(CCl)の溶液と、ヘキサン中のネオジムバーサテート(NdV、Nd(O1019)の溶液とを、撹拌しながら、窒素下の乾燥20Lスチール反応器中の、工業銘柄ヘキサン中13重量%の1,3−ブタジエンの溶液に加えた。混合物を次に、73℃の初期供給温度に加熱する。反応開始の60分後に反応を終了させ、ポリマー検体を採取する。100mLのヘキサンと共に変性試薬を次に、撹拌しながら、ビューレットを用いて加える。
【0053】
表1は、使用量、使用されるナノ−カップリング剤およびカップリング前後の個別のポリマー検体のムーニー値を提示する。
【0054】
1時間の反応時間後に、20mLの水を加えることによって反応を停止し、100mLのヘキサンに溶解させた2.6gのIrganox 1520Lで混合物を安定化させる。
【0055】
本発明の実施例1では、ポリマーを次に約10Lの水性エタノールで沈澱させ、真空乾燥キャビネット中60℃で乾燥させる。
【0056】
本発明の実施例2〜5では、ポリマーを実験室ストリッパーで精製し、真空乾燥キャビネット中60℃で乾燥させる。
【0057】
【表1】

【0058】
本発明のポリマーは、カップリング後のムーニー粘度の鋭い上昇を特色とし、これは、本発明の実施例2および4について図1および2に例として示される分子量の上昇を明らかに裏付ける。
【0059】
図1および2は、g/モル単位でのモル質量に関してポリマーの相対分率を示す。
【0060】
図1は、カップリング後の本発明の実施例2の分子量分布を示し、図2は、カップリング後の本発明の実施例4の分子量分布を示す。
【0061】
2つのグラフは、二峰性(実線)を非常に明らかに示す。高モル質量ピークは3,000,000g/モルより上のモル質量で始まり、5,000,000g/モルより上の平均モル質量で、2,000,000g/モルの閾値(破線)より明らかに上にあることをまた理解することができる。
【0062】
比較例6および7
比較例6および7は、本発明の実施例2に記載された通り実施した。ナノ−カップリング剤の代わりに、SiClを変性剤として使用した。このポリマーは、変性後にムーニー上昇を全く示さなかった。両比較例において、変性後に、30秒後ムーニー緩和値は、5%未満の、非結合ポリマーの範囲にあった。分子量は、SiClとの反応後に二峰性を全く示さない。図3は、SiClとの反応後の比較例7での分子量分布を示す。SiClは、ナノ−カップリング剤としての活性を全く示さなかった。
【0063】
【表2】

【0064】
比較例8、本発明の実施例9〜10
比較例8については、Lanxess Deutschland GmbH製のBunaTMCB24を使用した。本発明の実施例9および10については、実施例2および5のポリマーを使用した。配合材料の比較ムーニー粘度について、比較例8と比べると本発明の実施例9および10において耐引裂−伝搬性を著しく改善することが可能であった。
【0065】
混合物試験には以下の物質を使用した:
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類の触媒での共役ジエンの重合およびその後のナノ−カップリング剤との反応によって得られる、共役ジエンをベースとするナノ構造化ポリマーであって、高分子量画分が2,000,000g/モルより大きい平均モル質量を有する二峰性モル質量分布を得られたポリマーが有し、全体ポリマーを基準として、高分子量画分の量が1%〜20%の範囲にあり、ポリマーを基準として、全体ポリマーのゲル含有率が1%未満であり、1,2−ビニル単位の含有率が0.3〜1重量%である、ナノ構造化ポリマー。
【請求項2】
共役ジエンとして、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンおよび/または2−フェニル−1,3−ブタジエンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ構造化ポリマー。
【請求項3】
式:
−Si−(O−SiX−X
[式中、
Xは式OR(ここで、Rは、1〜30個の炭素原子を有する飽和のもしくはある程度不飽和の脂肪族炭化水素基、5〜30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基である)のアルコラートであり、
nは0より大きい数である]
のオリゴマーシリケートがナノ−カップリング剤として存在することを特徴とする、請求項2に記載のナノ構造化ポリマー。
【請求項4】
共役ジエンを、先ず、不活性の有機非プロトン性溶媒の存在下におよび希土類の触媒の存在下に重合させ、前記モノマーをベースとする、重合反応後に得られたポリマーを、式:
−Si−(O−SiX−X
[式中、
Xは式OR(ここで、Rは、1〜30個の炭素原子を有する飽和のもしくはある程度不飽和の脂肪族炭化水素基、5〜30個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、または6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基である)のアルコラートであり、
nは0より大きい数である]
のナノ−カップリング剤と反応させ、
使用される前記ナノ−カップリング剤の量が、ポリマーに対して0.001〜10g:100gの範囲にあることを特徴とする、共役ジエンをベースとするナノ構造化ポリマーの製造方法。
【請求項5】
タイヤおよびタイヤ部品の、ゴルフボールおよび工業ゴム製品ならびにABSプラスチックおよびHIPSプラスチックなどの、ゴム強化プラスチックの製造のための請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ構造化ポリマーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−536945(P2010−536945A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520538(P2010−520538)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060416
【国際公開番号】WO2009/021906
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】