説明

共振電動歯ブラシのためのモータ及び偏心部を備えた機械駆動系

歯ブラシは、DCモータ12を有する駆動アセンブリを含み、DCモータは、その一端部から延在する回転駆動シャフト16でバッテリ15により駆動され、DCモータには、駆動シャフトで回転する偏心部材20が取り付けられる。スプリングアセンブリ24は、基端部でハブ部材26を含み、先端部で取付部材28を含み、これらに取り付けられてこれらの間に延在するV字スプリング部材41を含む。DCモータは、ハブ部材の背面に取り付けられ、モータ及びハブ部材は、電動歯ブラシの動作において自由に移動することができる。取付部材は、歯ブラシ内の或る位置に取り付けられる。ブラシヘッドシャフト38は、ハブ部材と取付部材との間に取り付けられて延在し、取付部材から遠位に延在する。ブラシヘッドシャフト部材は、モータ駆動シャフトの回転軸から横方向にずらされる。毛44のセットを含むブラシヘッドアセンブリ42は、ブラシヘッドシャフトに除去可能に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概して、共振駆動型電動歯ブラシに関し、より詳細には、斯様な電動歯ブラシのためのDCモータを含む駆動系に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの電動歯ブラシは、ユーザの歯の効果的なクリーニングをもたらす、振動するブラシヘッド動作を作り出すために、正弦波駆動されたスプリングアセンブリを用いる。しかしながら、斯様な駆動系は、スプリングアセンブリを駆動させる振動磁界を生成するために、正弦波信号に応答して動作するカスタム固定子を必要とする。また、比較的高価な電子回路が斯様なシステムにおいて必要である。
【0003】
共振電動歯ブラシを駆動させるためのDCモータの使用は、あまり高価ではない代替手段である。DCモータ駆動系は、より低いコストに加えてその単純さのため、有利である。典型的なDCモータは、円形動作を作り出す。DCモータ駆動型の電動歯ブラシの開発の代替ラインにおいて、スプリングアセンブリ装置が、円形動作の代わりに振動動作を与えるために用いられる。選択された範囲の周波数及び振幅での振動動作が効果的なクリーニングをもたらすことが知られている。
【0004】
一の特定の実装において、偏心部を備えたDCモータが、ねじれモードにおいてスプリングシステムを機械的に励起するために用いられ、所望の共振振動動作を作り出す。しかしながら、これらの特定のシステムは、スプリング部材により振動するフレックスカップリングを介して駆動される。フレックスカップリングは、信頼性の問題に悩み得る。加えて、これらのシステムにおいて、偏心部は、ブッシングにおいて回転するように取り付けられ、これは、偏心部/ブッシング接触面で摩耗をもたらし、不所望なノイズの原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、ブラシが失速したときに生じる、不十分なスタートアップトルク及びオーバーシュートのような、磁気カップリングに概ね関連付けられた問題を回避し、望んだものよりも高いrpmでモータが動くことをもたらしながら、最小限の部品により、共振モードにおいてスプリングアセンブリを機械的に励起するためのDCモータを用いた、信頼性のある簡素なシステムを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、電動歯ブラシは、バッテリ及びDCモータを含む駆動アセンブリを有し、前記DCモータは、その一端部から延在する回転駆動シャフトをもち、当該電動歯ブラシは、前記駆動シャフトに取り付けられるか又は前記駆動シャフトに他の要素により接続され、前記駆動シャフトとともに回転可能である偏心部材と、曲げ剛性からの回転系共振周波数よりも低い回転系共振周波数をもたらすねじれの剛性により特徴付けられたスプリング部材を含むスプリングアセンブリとを有し、前記モータは、前記スプリングアセンブリの基端部に取り付けられ、自由に動くことができ、前記スプリングアセンブリの他端部は、或る位置に固定され、当該電動歯ブラシは、前記スプリングアセンブリに取り付けられ、前記スプリングアセンブリから遠位に延在するブラシヘッドシャフトと、前記ブラシヘッドシャフトに取り付けられた、毛をもつブラシヘッドとを有し、動作において、選択された周波数での前記偏心部の回転は、前記スプリング部材に振動動作させ、前記ブラシシャフト及び前記ブラシヘッドがこれとともに振動することをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ここに開示された駆動系を組み込む完全な歯ブラシの分解図である。
【図2】図1の歯ブラシの一部の分解図である。
【図3】図1の歯ブラシの構造の側面図である。
【図4】図3の歯ブラシの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概して、ここで開示された本発明は、ブラシヘッドアセンブリの軸の周りの振動動作によりブラシヘッドアセンブリを駆動させるための共振電動歯ブラシのための、DCモータが実装された駆動系アセンブリである。開示された駆動系アセンブリは、所望の共振モードにおいてスプリングアセンブリを励起させるのに十分な機械的力を生成し、これは、歯ブラシのブラシヘッドアセンブリ部分の所望の振動動作を作り出す。概して、振動の周波数は、100〜300Hzの範囲内にある一方で、振動の振幅は、6〜14°の範囲内にある。
【0009】
図面によれば、歯ブラシ10は、バッテリ15により給電されるDCモータ12を含む。示された実施形態において、DCモータは、高速(秒当たり約160〜320回転又は10K〜20Krpm)で低トルク(0.2mNmから1mNmの範囲内)であるが、これは変えられてもよい。
【0010】
モータ12は、ハンドル15の後端部の方向において、モータの後部17から外へ延在するスピニング出力シャフト16を含む。示された実施形態においてはディスクの形式である偏心部20が出力シャフト16に固定されるが、他の形式が用いられてもよい。偏心部20は、その質量及びその偏心度により規定される。偏心度は、偏心部の質量中心からモータ出力シャフト16の回転軸までの距離である。示された実施形態における偏心部の質量は、0.5〜5グラムの範囲内にある一方で、偏心度の範囲は、0.02〜5ミリメートルである。
【0011】
DCモータ12は、24で概ね示されたスプリングアセンブリの自由端に取り付けられる。スプリングアセンブリ24は、後方スプリングハブ部材26と、前方スプリング取付部材28と、スプリングハブ部材とスプリング取付部材との間に接続された2つのリーフスプリング30及び32とを含み、それ故、"V"字スプリング部材41を形成する。スプリングハブ部材26は、歯ブラシの動作において自由に動くことができる一方で、スプリング取付部材28は、歯ブラシのフレーム又はハンドルのようなグラウンドに或る位置において取り付けられる。スプリングハブ部材26及びスプリング取付部材28は、プラスチックであるが、ダイカスト合金であってもよい。スプリングハブ部材は、対称であるが、図3において最もはっきりと示されるように、不規則な形状をもつ。しかしながら、正確な形状は重要ではない。スプリングハブ部材はDCモータをV字スプリング41の基端部に接続する。スプリングハブ部材は、最も広いスポットで約15mmの幅であり、約15mmの長さ及び8mmの厚さである。前記で示されたように、DCモータ12は、スプリングハブ部材の背面36に取り付けられ、それ故にスプリングハブ部材とともに動く。DCモータ12、偏心部20及びスプリングハブ部材26を含む、振動する質量の質量慣性モーメントは、250〜500gmmである。
【0012】
示された前方スプリング取付部材は、下側部分において切欠き部分39をもつ、約25mmの直径の円形の形状である。スプリング取付部材は、示された実施形態において約3mmの厚さである。この場合も同様に、前方スプリング取付部材の特定の形状は、重要ではない。前方スプリング取付部材がハンドル又は内部のフレーム部材に対する堅い接続を与えることが重要である。
【0013】
V字スプリング部材41を有する2つのリーフスプリング30及び32は、同一のスプリング鋼であり、約10〜30mmの長さであり、2〜15mm、好ましくは約5mmの幅であり、0.2〜1.0mm、好ましくは約0.5mmの厚さである。示された実施形態において、2つのリーフスプリング30及び32間の角度は、45〜100°の範囲内にあり、好ましくは約70°である。示された2つのリーフスプリング30,32は、毛プレートから延在する毛の方向と同じ方向に開口するように設けられ、これらの下端部に沿って約5mmで分離される。2つのリーフスプリングのねじれバネ定数は、0.5〜2.0Nm/radiusである。駆動系のねじれモードの共振周波数は、質量慣性モーメント及びバネ定数の関数である。
【0014】
ブラシシャフト38は、スプリング取付部材28及びスプリング取付部材の約75mm前方を介してスプリングハブ部材26から延在している。ブラシシャフト38は、スプリングハブ部材及びスプリング取付部材の双方に取り付けられ、出力シャフト16の回転軸から離れて配置される。モーメントアームと呼ばれるこの距離は、示された実施形態においては約6mmであるが、1〜15mmの範囲にあってもよい。モーメントアームが大きくなると、スピニング偏心質量から生成されたトルクが大きくなる。先端部に毛のセットをもつ一般的なブラシヘッドアセンブリ42は、ブラシシャフト38に除去可能なように取り付けられる。
【0015】
V字スプリング部材41の重要な特徴は、これがねじれ動作よりも曲げ動作において大幅に堅くなることである。曲げにおけるより大きな剛性は、少なくとも50Hzによる所望の動作周波数よりも高い曲げに関連した共振周波数を駆動する。それ故、歯ブラシの動作の間に、(ブラシヘッドアセンブリの振動動作をもたらす)ねじれモードが励起される一方で、曲げモード(左右又は上/下動作)は励起されないだろう。これは、動作の間においてスプリングハブ部材26及びモータ12の揺れを阻止する一方で、モータの振動を可能にし、前記で記載された周波数及び振幅で、歯のクリーニングのための所望の態様で、ブラシヘッドアセンブリ及び毛の振動をもたらす。所望のねじれモード周波数より高い曲げモード周波数を駆動するためにV字スプリングを用いることに加えて、サポートブッシング及び/又はベアリングが、所望の方向に剛性を加えるために用いられてもよい。
【0016】
バッテリ15からの導線50及び52は、これらがスプリング取付部材28において取り付けられているポイントで、リーフスプリング30及び32に接続される。このポイントでは、スプリング取付部材が取り付けられるので、リーフスプリングの先端部も取り付けられる。リーフスプリングは、DCモータの正及び負の端子に接続し、電気回路をもたらす。リーフスプリングは、疲労に耐えるように設計され、それ故、通常動作の周波数及び振幅に耐えることができる。導線をリーフスプリングの固定端部に取り付け、リーフスプリングを介してモータへの電気接続をもたらすことにより、前記で示された周波数及び振幅での通常動作の間におけるリーフスプリングの運動によりワイヤ又はフライングリードが壊れるという問題が除去される。
【0017】
図3は、ブラシヘッド上の毛とは反対の歯ブラシの基端部からの端面図を示している。これは、特に、モータ軸シャフト16、ブラシシャフト38、及び、モータシャフト16の回転方向を示している。前記で示されたモーメントアーム43は、ブラシシャフト38とモータの出力シャフト14との間の距離である。動作において、偏心部20の回転により生成された力が存在する。スプリングハブ部材が抑えられないので、モータ12は、スプリング41により振動し、それ故に、V字スプリング、スプリングハブ部材、モータ及び偏心部を有する、移動する、即ち回転に関する系の慣性の部分である。回転系の共振周波数に近い正しい周波数では、回転する偏心部により生成された力が、ブラシヘッドの所望の振動動作を作り出す共振ねじれモードにおいてV字スプリング41を励起する。示された実施形態において、周波数及び振幅は、前記で記載された範囲内にあるが、好ましくは、それぞれ約260Hz及び10°である。
【0018】
動作において、V字スプリング部材41は、本構成において3つの目的を達成する。これは、2つのリーフスプリングが曲げよりもねじれにおいて柔らかいので、所望の振動動作に対するブラシシャフト38の動作を抑制、即ち制限するのに役立つ。これは、力学(回転)系の共振周波数を確立するのを支援する。これは、バッテリからモータへの確実な電気接続を与える。
【0019】
従って、系の共振周波数又はその近くでスプリングアセンブリを励起するためにDCモータ及び偏心部を用いる、電動歯ブラシのための機械駆動系が開示された。毛の効果的な動作は、比較的少ない個々の部品を含む、比較的簡素で安価な駆動系によりもたらされる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態が例示の目的で開示されたが、種々の変更、修正及び置換は、特許請求の範囲により規定された本発明の精神から逸脱することなく、本実施形態に組み込まれ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動歯ブラシであって、
当該電動歯ブラシは、バッテリ及びDCモータを含む駆動アセンブリを有し、前記DCモータは、その一端部から延在する回転駆動シャフトをもち、
当該電動歯ブラシは、前記駆動シャフトに取り付けられるか又は前記駆動シャフトに他の要素により接続され、前記駆動シャフトとともに回転可能である偏心部材と、曲げ剛性からの回転系共振周波数よりも低い回転系共振周波数をもたらすねじれの剛性により特徴付けられたスプリング部材を含むスプリングアセンブリとを有し、
前記モータは、前記スプリングアセンブリの基端部に取り付けられ、自由に動くことができ、前記スプリングアセンブリの他端部は、或る位置に固定され、
当該電動歯ブラシは、前記スプリングアセンブリに取り付けられ、前記スプリングアセンブリから遠位に延在するブラシヘッドシャフトと、前記ブラシヘッドシャフトに取り付けられた、毛をもつブラシヘッドとを有し、
動作において、選択された周波数での前記偏心部の回転は、前記スプリング部材に振動動作させ、前記ブラシシャフト及び前記ブラシヘッドがこれとともに振動することをもたらす、電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記スプリング部材及び前記ブラシシャフトの振動動作は、前記回転系の共振周波数又はその近くの周波数をもつ、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記スプリングアセンブリは、基端部でスプリングハブ部材を含み、先端部でスプリング取付部材を含み、前記スプリング部材は、前記スプリングハブ部材と前記スプリング取付部材との間に取り付けられ、これらの間に延在するV字スプリングの形状をもつ、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
当該歯ブラシは、回転する慣性をもち、前記DCモータは、前記スプリングハブ部材の背面に固定され、前記モータが当該歯ブラシの回転慣性の部分になるように、前記スプリングハブ部材及び前記V字スプリングとともに移動する、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記の駆動するアセンブリは、当該歯ブラシの動作及び前記スプリング部材の運動において導線が前記モータの運動とともに移動しないように、前記スプリング取付部材に取り付けられた場所で前記スプリング部材に前記バッテリを接続する前記導線を含む、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記毛は、100〜300Hzの範囲内の周波数で、及び、6〜14°の範囲内の振幅を介して振動する、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
前記スプリング部材は、一対のリーフスプリングを有し、双方のリーフスプリングは、曲げについての前記リーフスプリングの剛性により生成された共振周波数よりも低い、前記回転系の共振周波数を与える、ねじれについての剛性をもつ、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項8】
曲げについての前記リーフスプリングの剛性は、当該歯ブラシの通常動作の間において曲げモードが励起されるのを阻止するように、所望のねじれモード共振周波数よりも高い、少なくとも50Hzである回転系の共振周波数をもたらす、請求項7に記載の電動歯ブラシ。
【請求項9】
前記偏心部は、0.5〜5グラムの範囲内の質量及び0.2〜5mmの偏心度をもつディスクである、請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項10】
前記ブラシヘッドシャフトは、1〜15mmの範囲内の距離により前記モータ駆動シャフトから横方向にずらされる、請求項1に記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515542(P2013−515542A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545485(P2012−545485)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055344
【国際公開番号】WO2011/077287
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】