説明

共結晶

本発明は、少なくとも1つの有機酸官能基を有する共結晶形成化合物とシプロジニル又はピリメタニルとを含んで成る共結晶に関する。特に、本発明は、シプロジニルと安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、ピラジンカルボン酸、グリコール酸、レブリン酸、(2−メチルフェノキシ)酢酸、ヘキサンジオン酸、4−(メチルアミノ)安息香酸、トリメチル酢酸、ピルビン酸又は4−ヒドロキシ−4′−ビフェニルカルボン酸とを含んで成る共結晶に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シプロジニルとピリメタニルの新規共結晶、及び殺真菌剤組成物、特に農薬組成物におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シプロジニルとピリメタニルは共にアニリノピリミジン殺真菌剤であり、メチオニンの生合成及び真菌の加水分解酵素の分泌を阻害することにより作用すると考えられる。シプロジニルは穀物、ブドウ、リンゴ果実、石果、イチゴ、野菜、農作物及び観葉植物における葉面殺真菌剤として及び広範囲の病原体、例えばタペギア・ヤルンデ(Tapesia yallundae)及びT.アキュフォルミス(T. acuformis)、エリシフェ(Erysiphe)種、ピレノフォラ・テレス(Pyrenophora teres)、リンコスポリウム・セカリス( Rhynchosporium secalis)、ボトリティス(Botrytis)種、アルテナリア(Alternaria)種、ベンチュリア(Venturia)種、及びモニリニア(Monilinia)種を防除するために大麦への種子粉衣として使用されている。ピリメタニルはブドウ、果実、野菜及び観葉植物における灰色カビ病(Botrytis cinerea)を防除しそしてリンゴ果実上の葉赤カビ病(Venturia inaequalis又はV. pirina)を防除するために使用されている。両方とも市販されており、The Pesticide Manual [The Pesticeide Manual - A World Compendium; 第13版;C.D.S. Tomlin編;The British Crop Protection Council]中に記載されている。
【0003】
シプロジニルの2つの多形が存在することが知られており、その両方が特徴的で異なる融解範囲を有する;A形は70〜72℃でありそしてB形は74〜76℃である。多形体AとBの熱力学的安定性は鏡像体に関連し、相転移温度を表す。それは別の条件に感受性であるが、典型的には15℃〜40℃である−農薬製剤の加工及び貯蔵の間に起こりうる温度ゆらぎ(fluctuation)の範囲内に確実にある(典型的には−10℃〜+50℃)。相転移温度の下ではA形は熱力学的に安定な形態であり、そしてその温度の上ではB形が熱力学的に安定な形態である。従って、貯蔵条件の下で、シプロジニルの固体状態は2つの多形間の再結晶による転換を受けて、大きく且つ望ましくない粒子の生成を引き起こす。これは、例えば、製品の適用の間にスプレーノズルを詰まらせることがある。加えて、そのような再結晶現象は、均質製剤として製品を維持するのが難しく、これは希釈タンクへの移動の際に及び希釈時に正確な濃度を保証する際に流出を引き起す。従って、この現象は現在、シプロジニルの製剤が現在のところ、シプロジニルを例えば濃縮乳剤に可溶化する際のフォーマットに限定する。同様な流出がピリメタニルにも存在し、通常の製剤及び貯蔵条件下で結晶化しうる。加えて、ピリメタニルはより揮発性の化合物である。それらの流出は例えば濃縮懸濁液としての製剤化を困難にし、且つ或る状態でのピリメタニルの使用を制限する。従って、そのままでは、それらの流出はピリメタニルの製剤化、貯蔵及び適用の際にシプロジニルに関して観察されるのと同様な問題を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯蔵温度ゆらぎ窓内で相転移を示さず、そして/又は製剤化及び貯蔵時に結晶化せず、そして/又は揮発性がより低い、シプロジニル及びピリメタニルの新規固相の形成は、望ましい毒性、徐放性又は化学的安定性を有するであろう固体分散液(例えば濃縮懸濁液、サスポ乳剤及び湿潤粒剤)としての製剤化を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、この殺真菌剤の市販の種類に比較して改善された性質を有するシプロジニル又はピリメタニルの新規共結晶形を提供する。
【0006】
特に、本発明は、少なくとも1つの有機酸官能基を有する共結晶形成化合物とのシプロジニル又はピリメタニルの共結晶を提供する。より適当には、本発明は、少なくとも1つの有機酸官能基を有する共結晶形成化合物とシプロジニルとの共結晶を提供する。適当には、有機酸は少なくとも1つのスルホン酸又はカルボン酸官能基を含有する。
【0007】
少なくとも1つのスルホン酸官能基を含む適当な共結晶形成化合物としては、非限定的に、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,2−ナフタレンジスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シクラミン酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0008】
少なくとも1つのカルボン酸官能基を含む適当な共結晶形成化合物としては非限定的に、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−アミノ安息香酸、酢酸、トリメチル酢酸、(2−メチルフェノキシ)酢酸、アジピン酸、アラニン、アルギニン、アスコルビン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、アゼライン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−メチルアミノ安息香酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、カンファー酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、システイン、ジメチルグリシン、蟻酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルカロン酸、グルタミン酸、グルタミン、グルタル酸、グリシン、グリコール酸、ヘキアンジオン酸、馬尿酸、ヒスチジン、イソロイシン、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル酸、ロイシン、レブリン酸、リジン、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メチオニン、ニコチン酸、オルト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、フェニルアラニン、ピメル酸、プロリン、ピロピオン酸、ピログルタミン酸、ピラジンカルボン酸、ピルビン酸、4−アミノサリチル酸、サリチル酸、セバシン酸、セリン、ステアリン酸、スベリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、スレオニン、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリプトファン、チロシン、バリン、ビフェニル−4−カルボン酸、ビフェニル−2−カルボン酸、4′−メチル−2−ビフェニルカルボン酸、4−ビフェニル酢酸、4′−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸及びフェンブフェンが挙げられる。適当な2つのカルボン酸官能基を含む共結晶形成化合物としては、非限定的に、アジピン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、カンファー酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、ピメル酸、セバシン酸、スベル酸、コハク酸及び酒石酸が挙げられる。
【0009】
より適当であるのは、共結晶形成化合物が安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、ピラジンカルボン酸、グリコール酸、レブリン酸、(2−メチルフェノキシ)酢酸、ヘキサンジオン酸、4−(メチルアミノ)安息香酸、トリメチル酢酸、ピルビン酸、グリコール酸又は4−ヒドロキシ−4′−ビフェニルカルボン酸である。より適当であるのは、共結晶形成化合物が安息香酸又はコハク酸であり、特にコハク酸である。
【0010】
シプロジニル又はピリメタニルと結晶形成化合物との共結晶形は、結晶形態学により又は2θ角の形で表される粉末X線回析パターンの特定のピークにより特徴づけることができる。
【0011】
本発明の一態様では、シプロジニルと安息香酸との共結晶形が提供され、それは2θ角の形で表される粉末X線回析パターンにより特徴づけられ、ここで粉末X線回析パターンは、第1表又は第2表に列挙された2θ角値を含んで成る。これらの表は、2θ値、d間隔、及び第一が白色針状態結晶の形であり、第二が菱面体結晶である2つのシプロジニル−安息香酸共結晶の粉末X線回析パターンの特定のピーク位置の相対強度を表す。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
驚くべきことに、シプロジニルと有機酸、特に安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸又はピラジンカルボン酸が、共結晶を形成することができ、生じた共結晶は遊離形のシプロジニルに比較してシプロジニルの改善された性質をもたらすことが発見された。特に、その共結晶は単独のシプロジニルが示す同時相転移を示さない。これは製造、製剤化及び貯蔵の際に有利であるので明らかに重要である。特に、シプロジニルのこの新規固体状態は、技術的品質の材料及び製剤材料の両方の製剤化又は貯蔵の間に再結晶現象を引き起こさない。従って技術的材料と製剤はそれらの均質性を保持している。加えて、シプロジニルのこの安定形態は、濃縮懸濁液、サスポ乳剤及び湿潤粒剤のような新規固体製剤を開発できるようにし、潜在的に純粋な利点(液体よりも固体状態を単離できるため)並びに改善された取扱特性(例えば減少した毒性)をもたらすであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−安息香酸結晶(白色針状結晶)、及び(d) 安息香酸の粉末X線回析パターンを示す。
【0016】
【図2】図2は、(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−安息香酸結晶(白色菱形結晶)及び(d) 安息香酸の粉末X線回析パターンを示す。
【0017】
【図3】図3は、(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−安息香酸結晶(白色針状結晶)及び(c) 安息香酸の示差走査熱量測定トレースを示す。
【0018】
【図4】図4は、(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−安息香酸結晶(白色菱形結晶)及び(c) 安息香酸の示差走査熱量測定トレースを示す。
【0019】
【図5】図5:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−リンゴ酸共結晶A形、(d) シプロジニル−リンゴ酸共結晶B形、及び(e) リンゴ酸の粉末X線回析パターン。
【0020】
【図6】図6:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−リンゴ酸共結晶A形、(c) シプロジニル−リンゴ酸共結晶B形、及び(d) リンゴ酸のDSCトレースを示す。
【0021】
【図7】図7:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−フマル酸共結晶A形、及び(d)フマル酸の粉末X線回析パターン。
【0022】
【図8】図8:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−フマル酸共結晶A形、(c) フマル酸のDSCトレース。
【0023】
【図9】図9:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−シュウ酸共結晶A形、及び(d) シュウ酸の粉末X線回析パターン。
【0024】
【図10】図10:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−シュウ酸共結晶A形、及び(c) シュウ酸のDSCトレース。
【0025】
【図11】図11:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−ピラジンカルボン酸共結晶A形、(d) ピラジンカルボン酸の粉末X線回析パターン。
【0026】
【図12】図12:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−ピラジンカルボン酸共結晶A形、(c) ピラジンカルボン酸のDSCトレース。
【0027】
【図13】図13:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−コハク酸共結晶A形、(d) シプロジニル−コハク酸共結晶B形、及び(e) コハク酸の粉末X線回析パターン。
【0028】
【図14】図14:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニル−ロイブリン酸共結晶B形、及び(c) ロイブリン酸の粉末X線回析パターン。
【0029】
【図15】図15:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−ロイブリン酸共結晶B形のDSCトレース。
【0030】
【図16】図16:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸共結晶B形、(d) 4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸の粉末X線回析パターン。
【0031】
【図17】図17:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸共結晶B形、及び(c) 4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸のDSCトレース。
【0032】
【図18】図18:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−(2−メチルフェノキシ)酢酸共結晶B形、(d) (2−メチルフェノキシ)酢酸の粉末X線回析パターン。
【0033】
【図19】図19:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−ヘキサデカン酸共結晶B形、及び(d) ヘキサデカン酸の粉末X線回析パターン。
【0034】
【図20】図20:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) 4−(メチルアミノ)安息香酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0035】
【図21】図21:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−トリメチル酢酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0036】
【図22】図22:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−ピルビン酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0037】
【図23】図23:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−グリコール酸共結晶B形、及び(d) グリコール酸の粉末X線回析パターン。
【0038】
【図24】図24:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−グリコール酸共結晶B形、(d) グリコール酸(D8で実施)及び(e) グリコール酸の粉末X線回析パターン。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書中で使用するとき、「共結晶」とは、各々が特徴的な物理特性、例えば構造、融点及び融合熱を有する立体化学的比率で2以上のユニークな成分を含んで成る結晶物質を意味する。共結晶は、水素結合、II(π)−スタッキング、ゲスト−ホスト錯生成、及びファンデルワールス相互作用をはじめとする幾つかの分子認識の方法を通して構成することができる。上述した相互作用のうち、水素結合が共結晶の形成において優勢な相互作用であり、それにより成分の水素結合供与体と他方の水素結合受容体の間に非共有結合が形成される。好ましい共結晶は、共結晶形成化合物とシプロジニル又はピリメタニルとの間に水素結合が起こるものである。
【0040】
水素結合は幾つかの異なる分子間集合体をもたらし、そして本発明の共結晶は1又は複数の多形で存在することができる−例えば、上記及び実施例において詳述したようなシプロジニル−安息香酸結晶の場合。多形の共結晶は、シプロジニル又はピリメタニル対共結晶形成化合物のモル比を含んでもよいが、典型的には5:1〜1:5の比であろう。シプロジニル、ピリメタニル又は共結晶形成化合物が異性を示す系では、多形は異なる異性体比を含んでもよい。各多形は1又は複数の固相分析技術、例えば単一結晶X線回析、DSC、ラマン又は赤外分光法により定義することができる。
【0041】
適当には、共結晶中のシプロジニル又はピリメタニル対共結晶形成化合物のモル比は5:1〜1:5範囲内である。より適当であるのは、共結晶中のシプロジニル又はピリメタニル対共結晶形成化合物の比は3:1〜1:3の範囲内である。更により適当であるのは、シプロジニル又はピリメタニル対共結晶形成化合物比は2:1〜1:1である。最も適当であるのは、共結晶中のシプロジニル又はピリメタニル対共結晶形成化合物の比は約1:1である。
【0042】
本発明の共結晶は、シプロジニル又はピリメタニルを共結晶形成化合物と接触せしめることにより形成される。これは(i) 2つの固体を一緒に粉砕し、(ii)1又は2つの成分を融解させ、そしてそれらを再結晶させ、(iii)シプロジニル又はピリメタニルを可溶化し、そして共結晶形成化合物を添加し、又は(iv) 共結晶形成化合物を可溶化しそしてシプロジニル又はピリメタニルを添加することにより達成される。シプロジニル又はピリメタニルを共結晶形成化合物中に溶解することも可能であり、その逆も可能である。次いで適当な条件下で結晶化を行う。例えば結晶化は溶液の性質、例えばpH又は温度の変更を必要とすることがあり、そして通常は溶媒の除去によりそして典型的には溶液の乾燥により溶質の濃縮を必要とすることがある。溶媒の除去が、結晶化を促進するために一定期間に渡り増加するシプロジニル又はピリメタニルの濃縮を引き起こす。結晶を含んで成る固相が形成されれば、これは本明細書に記載のように試験することができる。
【0043】
従って、本発明は、本発明の共結晶の製造方法であって、
(a) 固相を形成させるような結晶化条件下で、シプロジニル又はピリメタニルを溶液状態で共結晶形成化合物と共に粉砕し、加熱し、又は接触せしめ、
(b) シクロジニル又はピリメタニルと共結晶形成化合物とを含んで成る共結晶を単離する
ことを含んで成る。
【0044】
シプロジニル又はピリメタニル及び共結晶形成化合物の存在についての固相の分析は、当業界で既知の常法により実施することができる。例えば、粉末X線回析技術を使用して、共結晶の存在を評価することが通常であり日常的に行われる。これは、真の共結晶が形成されたかどうかを確立するために、シプロジニル又はピリメタニル、共結晶形成化合物及び推定共結晶のスペクトルを比較することにより行われる。同様な方式で使用される別の技術としては、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定析(TGA)及びラマン分光法が挙げられる。単一結晶X線回析が共結晶を同定するのに特に使用される。
【0045】
本発明の共結晶は、常用の手法により殺真菌剤組成物(農薬組成物を含む)中に容易に組み込むことができる。従って、本発明は、上述したような本発明の共結晶を含んで成る殺真菌剤組成物も提供する。一態様では、殺真菌組成物が農薬組成物である。
【0046】
本発明の共結晶を含んで成る農薬組成物は、多数の植物種上の植物病原性真菌の防除に使用することができる。従って、本発明は、植物又は植物繁殖材料上の真菌感染を予防/防除する方法であって、植物又は植物繁殖材料を殺真菌上有効な量の本発明の農薬組成物で処理することを含んで成る方法を提供する。「植物繁殖材料」とは、全ての種の種子(果実、塊茎、球根、穀粒など)、接木、切り根などを意味する。
【0047】
特に、本発明の農薬組成物は、例えばコチリオボラス・サチブス(Cochliobolus sativus)、エリシフェ(Erysiphe)種、例えばE.グラミニス)、レプトスフェリア・ノドラム(Leptosphaeria nodorum)、プッチニア(Puccinia)種、ピレノフォラ・テレス(Pyrenophora teres)、ピレノフォラ・トリチシレペンティス(Pyrenophora triticirepentis)、リンコスフォリウム・セカリス(Rhynchosphorium secalis)、セウトリア(Septoria)種、ミコシャエレラ・ムシコラ(Mycoshaerella musicola)、ミコシャエレラ・フィジエンシス(Mycosphaerella fijiensis)変種ジフォルミス(difformis)、スクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、プッチニア(Puccinia)種、ヘルミントスポリウム・オリゼ(Helminthosporium oryzae)、イネイモチ病菌(dirty panicle complex)、ヘミレイア・バスタトリクス(Hemileia vastatrix)、セロスポラ(Cercospora)種、モニリニア(Monilinia)種、ポドスフェラ(Podosphaera)種、セファロテカ(Sphaerotheca)種、トランズスケリア(Tranzschelia)種、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)種、タペシア・ヤルンダエ(Tapesia yallundae)並びにT.アクフォルミス(T. acuformis)、ボトリチス(Botrytis種)、アルテナリア(Alternaria)種及びベンンチュリア(Venturia)種を防除するのに使用することができる。
【0048】
本発明の農薬組成物は、非限定的に次の標的作物をはじめとする多数の植物及びそれらの繁殖材料上のそのような病気を防除するのに適当である:穀物〔小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦、トウモロコシ(野生トウモロコシ、ポップコーン及びスイートコーンを含む)、米、モロコシ及び関連作物〕;ビート(サトウキビ及び飼料用ビートを含む);マメ科植物(豆、レンズ豆、エンドウ豆、大豆);油料植物(アブラナ、カラシ、ヒマワリ);キュウリ科植物(マロー、キュウリ、メロン);繊維植物(綿、亜麻、麻、ジュート);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、ナス、タマネギ、コショウ、トマト、ジャガイモ、パプリカ、オクラ);プランテーション作物(バナナ、フルーツツリー、ゴムの木、苗床);観葉植物(花、低木、広葉樹、常緑樹、例えば針葉樹);並びに別の植物、例えばブドウ、ブッシュベリー(例えばブルーベリー)、カンベリー、クランベリー、ペパーミント、ダイオウ、スペアミント、サトウキビ及び芝草、例えば非限定的に、寒地型芝草(例えばイチゴツナギ(PoaL)、例えばケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis L.)、オオスズメノカタビラ(Poa trivialis L.)、カナダブルーグラス(Poa compressa L.)、及び一年生ブルーグラス(Poa annua L.));ベントグラス(Agrostis L.)、例えばコヌカグサ(Agrostis palustris Hugs.)、コロニアルベントグラス(Agrostis tenius Silbth.)、ベルベットベントグラス(Agrostis canina L.)、及びコヌカグサ(Agrostis alba L.);フェスク(Festuca L.)、例えばトールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、ヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior L.)及びファインフェスク、例えばオオウシノケグサ(Festuca rubra L.)、チューイングフェスク(Festuca rubra var. commutata Gaud.)、ウシノケグサ(Festuca ovina L.)、ハードフェスク (Festuca longifolia)及びライグラス(Lolium L.)、例えばペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)、一年生(イタリア)ライグラス(Lolium multiflorum Lam.))、暖地型芝草(例えば、バミュータグラス(Cynodon L.C. Rich.)、例えば雑種及び一般バミュータグラス);ゾイシアグラス(Zoysia Willd.)、聖アウグスティヌスグラス(Stenotaphrum secundatum (Walt.) Kuntze);及びムカデグラス(Eremochloa ophiuroides (Munro.) Hack.)。
【0049】
加えて、「作物」は、常用の育種法又は遺伝子操作法の結果として、害虫及び殺虫剤、例えば除草剤又は除草剤のクラスに対して耐性にされている作物も包含すると解釈すべきである。例えば除草剤に対する耐性とは、常用の作物育種に比較して特定の除草剤により引き起こされる損傷に対して減少した感受性を意味する。作物は例えばHPPD阻害剤、例えばメソトリオン又はEPSPS阻害剤、例えばグリフォセートに対して耐性になるように変更又は育種することができる。
【0050】
本発明の農薬組成物を適用する量は、防除すべき真菌の種類、必要とされる防除の程度並びに適用の時期及び方法に依存するだろうし、それは当業者により容易に決定することができる。一般に、本発明の組成物は、組成物中の活性殺真菌剤の合計量に基づいて、0.005キログラム/ヘクタール(kg/ha)〜約5.0 kg/haの適用量で適用することができる。約0.1 kg.ha〜約1.5 kg/haの適用量が好ましく、約0.3 kg/ha〜0.8 kg/haの適用量が特に好ましい。
【0051】
実際には、本発明の共結晶を含んで成る農薬組成物は、当業界で既知であるか又は使用されている様々なアジュバント及び担体を含有する製剤として適用される。それらは粒剤として、水和剤として、濃縮乳剤として、濃縮懸濁液(油型分散剤を含む)として、粉末又は微粉末として、流動性体として、溶液として、懸濁液又は乳液として、サスポ乳液として、又は徐放性形態、例えばマイクロカプセルとして製剤化することができる。適切には、本発明の農薬組成物は濃縮懸濁液、サスポ乳液又は湿式造粒として製剤される。それらの製剤は下記に詳述されるが、共結晶の形で活性成分の重量で約0.5%ほどの少量から約95%の大量以上まで含有することができる。最適量は製剤、適用装置、及び防除すべき植物病原性真菌の性質に依存するだろう。
【0052】
水和剤は、水又は別の液体担体中に容易に分散する微細に分散された分子の形である。粒子は固体マトリックス中に保持された活性成分を含有する。典型的な固体マトリックスとしては、フラー土、カオリン粘土、シリカ及び別の容易に湿潤できる有機又は無機固体である。水和剤は通常約5%〜約95%の活性成分に加えて湿潤剤、分散剤又は乳化剤を含有する。
【0053】
濃縮乳剤は、水又は別の液体中に分散できる均質の液体成分であり、活性化合物の全量と液体又は固体乳化剤から成ることができ、又は液体担体、例えばキシレン、重芳香族ナフタ、イソホロン及び別の非揮発性有機溶媒を含んでもよい。使用時には、それらの濃縮物を水又は別の液体中に分散させ、通常は処置すべき領域にスプレーとして適用される。活性成分の量は濃縮物の約0.5%〜約95%範囲内である。
【0054】
濃縮懸濁液は、活性化合物の微細に分散された固体粒子が安定に分散されている製剤である。固体粒子は水性溶液又は油(油分散液として)中に懸濁させることができる。そのような製剤は抗沈降剤及び分散剤を含んで成り、そして活性を増強するために湿潤剤、並びに消泡剤及び結晶成長阻害剤を更に含んでもよい。使用時には、それらの濃縮液は水中に希釈され、そして処置すべき領域にスプレーとして適用される。活性成分の量は濃縮液の約0.5%〜約95%の範囲内である。
【0055】
粒剤は押し出し物と比較的粗い粒子の両方を包含し、そして植物病原性真菌の防除が必要である領域に希釈せずに適用するか又は適用前に例えばスプレータンク中に分散させることができる。粒剤に典型的な担体としては、砂、フラー土、アタパルジャイト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、バーミキュライト、パーライト、炭酸カルシウム、煉瓦、軽石、ピロフィライト、カオリン、ドロマイト、パーライト、木屑、粉砕焼トウモロコシ、落花生殻、砂糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、石こう、珪藻土、硫酸カルシウム及び活性化合物を吸着する又はコーティングすることができる他の有機又は無機材料が挙げられる。粒剤は、希釈せずに使用され、そして通常約5%〜約25%の活性成分を含有し、界面活性剤、例えば重芳香性ナフト、ケロセン及び別の石油留分、又は植物油;及び/又は増粘剤、例えばデキストリン、接着剤又は合成樹脂を含んでもよい。粒剤を使用前にスプレータンク中に分散させる場合、活性成分は80%まで増加させることができる。
【0056】
粉剤は、微細に分散された固体、例えばタルク、粘土、粉並びに分散剤及び担体として働く別の有機及び無機固体と活性成分との流通混合物である。
【0057】
マイクロカプセルは、典型的には、封入材料を制御された速度で周囲に放出できるようにする無機多孔質外殻中に封入された活性成分の液滴又は顆粒である。カプセル封入された液滴は、典型的には直径約1〜50ミクロンである。封入された液体は、典型的にはカプセル重量の約50から95%を構成し、そして活性化合物に加えて溶媒を含んで成ることができる。カプセル封入された粒子は一般に、顆粒の開口部を封止する多孔質膜を有する多孔質顆粒であり、液体形態の活性成分を顆粒孔の内側に保持する。顆粒は典型的には直径1ミリメートルから1センチメートルであり、好ましくは1〜2ミリメートルである。顆粒は、押し出し、凝集又は造粒により形成されるか、又は自然に起こる。そのような材料の例は、バーミキュライト、焼結土、カオリン、アタパルジャイト粘土、おがくず及び顆粒状炭素である。外殻又は膜材料としては天然及び合成ゴム、セルロース材料、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン及びデンプンキサンテートが挙げられる。
【0058】
農薬用途に有用な別の製剤としては、所望の濃度で完全に可溶性である溶媒中の活性成分の単純な溶液、例えばアセトン、アルキル化ナフタレン、キシレン及び他の有機溶媒が挙げられる。活性成分が低沸点分散剤溶媒担体の蒸発の結果として微細に分散された形で分散されている加圧スプレーを使用してもよい。
【0059】
上述した製剤の多くは、湿潤剤、分散剤又は乳化剤を含有する。その例は、アルキル及びアルキルアリールスルホネート及びスルフェート並びにそれらの塩、多価アルコール、ポリエトキシ化アルコール、エステル並びに脂肪アミドが挙げられる。それらの剤は、使用する場合、通常は製剤の重量の0.1〜40重量%を含んで成る。
【0060】
上述した製剤タイプの本発明の組成物を製剤化するのに有用な適当な農薬補助剤及び担体は、当業者に周知である。様々なクラスの適当な例が下記の非限定例に見つかる。
【0061】
使用することができる液体担体としては、水、トルエン、キシレン、石油ナフサ、油料作物、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、無水酢酸、アセトニトリル、アセトフェノン、酢酸アミル、2−ブタノン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、酢酸アルキル、ジアセトンアルコール、1,2−ジクロロプロパン、ジエタノールアミン、p−ジエチルベンゼン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールアビエテート、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジプロキシトール、アルキルピロリジノン、酢酸エチル、2−エチルヘキサノール、エチレンカーボネート、1,1,1−トリクロロエタン、2−ヘプタノン、α−ピネン、d−リモネン、エチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、グリセロール、グリセロールジアセテート、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、ヘキサデカン、ヘキシレングリコール、酢酸イソアミル、酢酸イソボルニル、イソオクタン、イソホロン、イソプロピルベンゼン、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸、ラウリルアミン、メシチルオキシド、メトキシプロパノール、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、ラウリル酸メチル、オクタン酸メチル、オレイン酸メチル、塩化メチレン、m−キシレン、n−ヘキサン、n−オクチルアミン、オクタデカン酸、酢酸オクチルアミン、オレイン酸、オレイルアミン、o−キシレン、フェノール、ポリエチレングリコール(PEG400)、プロピオン酸、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、p−キシレン、トルエン、トリエチルホスフェート、トリエチレングリコール、キシレンスルホン酸、パラフィン、鉱油、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び高分子量アルコール、例えばアミルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ヘキサノール、オクタノール等、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリジノン等が挙げられる。水が一般に濃縮物の希釈用に選択される担体である。
【0062】
適当な固体担体としては、タルク、二酢酸チタン、ピロフィライト粘土、シリカ、アタパルジャイト粘土、チョーク、珪藻土、石灰、炭酸カルシウム、ベントナイト粘土、フラー土、綿実殻、小麦粉、大豆粉、軽石、木屑、クルミ殻粉、リグニン等が挙げられる。
【0063】
広範な界面活性剤が前記液体及び固体組成物、特に適用前に担体で希釈されるようにデザインされた組成物において有利に使用される。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性であることができ、そして乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤として又は他の目的で使用することができる。典型的な界面活性剤としては、アルキルスルフェートの塩、例えばジエタノールアンモニウムラウリルスルフェート;アルキルアリールスルホネート塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム;アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばノニルフェノール−C置換18エトキシレート;アルコール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばトリデシルアルコール−C置換16エトキシレート;石鹸、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸塩、例えばジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;ソルビトールエステル、例えばオレイン酸ソルビトール;第四級アミン、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、例えばポリエチレングリコールステアレート;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー;並びにモノ及びジアルキルホスフェートエステルの塩が挙げられる。
【0064】
農学組成物中で一般に使用される別のアジュバントとしては、結晶化阻害剤、粘度調節剤、懸濁化剤、噴霧液滴改良剤、顔料、抗酸化剤、発泡剤、遮光剤、相溶化剤、消泡剤、封鎖剤、中和剤、緩衝剤、腐食阻害剤、色素、着臭剤、展着剤、浸透助剤、微量栄養素、皮膚軟化剤、光沢剤、固着剤等が挙げられる。
【0065】
加えて、更に、別の生物学的に活性な成分又は組成物を本発明の農薬組成物と組み合わせてもよい。例えば、活性スペクトルを拡大するために、組成物が別の殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺生物剤、ダニ駆除剤、抗線虫剤及び/又は植物成長調節剤を含んでもよい。
【0066】
上記製剤の各々は、製剤の別の成分(希釈剤、乳化剤、界面活性剤等)と一緒に殺真菌剤を含有するパッケージとして調製することができる。製剤は、成分が別々に得られそして成長部位で混合されるというタンク混合法により調製することもできる。
【0067】
それらの製剤は、常法により防除が望ましい領域に適用することができる。粉塵及び液体組成物は、例えば、動力散粉機、掃除用具、手動噴霧機及び噴霧散粉機の使用により適用することができる。製剤は、粉塵又は水滴として飛行機から適用することができ、又はロープ芯適用により適用することもできる。固体と液体の両方の製剤は、処置すべき植物の局部のある土壌に適用して、根を通して活性成分を植物に浸透させることができる。本発明の製剤は、植物繁殖材料上への散布適用(dressing)に使用して、植物繁殖材料上の真菌感染に対する並びに土壌中に存在する植物病原性真菌に対する保護を提供することができる。適当であるのは、活性成分を植物繁殖材料に適用して、植物繁殖材料、特に種子に殺真菌剤の液体製剤を浸透させることによるか、又は固体製剤でそれをコーティングすることにより保護することができる。特定の場合では、適当の別の種類が可能であり、例えば植物挿し木又は小枝供給繁殖の特別処置が可能である。
【0068】
適当であるのは、本発明の農薬組成物及び製剤は、発病より前に適用される。製剤の使用の量及び頻度は、当業者に常用されるものであり、そしてそれは真菌病原による感染の危険性に依存するだろう。
本発明は下記の非限定例により更に説明される。
【0069】
実施例
1.シプロジニルと安息香酸の共結晶の調製
4 gのシプロジニル(B形)と2.4 gの安息香酸を60℃にて丸底フラスコ中の200 mlのイソヘキサンに添加し、それらを素早く溶解し、そして60℃で30分間攪拌しておいた。溶液を10℃/時間で25℃に冷却し、次いで25℃で一晩維持した。生成物(白色針状結晶)を濾過により単離した。
【0070】
4 gのシプロジニル(B形)と2.4 gの安息香酸を丸底フラスコ中の250 mlのイソヘキサンに60℃で添加し、それらを素早く溶解させ、そして60℃で30分間攪拌しながら維持した。熱源を取り除き、そして丸底フラスコの入っている水浴に氷水を添加することにより溶液を冷却した。生成物(白色菱形結晶)を濾過により単離した。
【0071】
図1は、(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−安息香酸結晶(白色針状結晶)、及び(d) 安息香酸の粉末X線回析パターンを示す。
【0072】
図2は、(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−安息香酸結晶(白色菱形結晶)及び(d) 安息香酸の粉末X線回析パターンを示す。
【0073】
図3は、(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−安息香酸結晶(白色針状結晶)及び(c) 安息香酸の示差走査熱量測定トレースを示す。
【0074】
図4は、(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−安息香酸結晶(白色菱形結晶)及び(c) 安息香酸の示差走査熱量測定トレースを示す。
【0075】
粉末X線回析分析は、いずれの構成要素相に対しても生成物バーが全く類似していないことを示し、このことは新規固相が形成されたことを示唆する。
【0076】
2つの生成物の示差走査熱量分析トレースは、白色針状結晶が104℃に単一の融解吸熱を示し、そして白色菱形結晶が109℃に同吸熱を示すことを表す。構成要素相は、シプロジニルB形については79℃で安息香酸については126℃で融解する。
【0077】
2.シプロジニル−マレイン酸共結晶
図5:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−マレイン酸共結晶A形、(d) シプロジニル−マレイン酸共結晶B形、及び(e) マレイン酸の粉末X線回析パターン。
【0078】
図6:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−マレイン酸共結晶A形、(c) シプロジニル−マレイン酸共結晶B形、及び(d) マレイン酸のDSCトレースを示す。
【0079】
【表3】

【0080】
実験
2:1共結晶については、1 gのシプロジニルと5 mlのアセトニトリルを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。全てのシプロジニルが溶解したら、1.03 gのマレイン酸を攪拌しながら50℃でバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0081】
1:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのイソヘキサンを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。全てのシプロジニルが溶解したら、1.03 gのマレイン酸を攪拌しながら50℃でバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0082】
3.シプロジニル−フマル酸共結晶
図7:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−フマル酸共結晶A形、及び(d)フマル酸の粉末X線回析パターン。
【0083】
図8:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−フマル酸共結晶A形、(c) フマル酸のDSCトレース。
【0084】
【表4】

【0085】
実験
2:1共結晶については、1 gのシプロジニルと5 mlのキシレンを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、1.03 gのフマル酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0086】
1:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのキシレンを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、1.03 gのフマル酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0087】
4.シプロジニル−シュウ酸共結晶
図9:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−シュウ酸共結晶A形、及び(d) シュウ酸の粉末X線回析パターン。
【0088】
図10:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−シュウ酸共結晶A形、及び(c) シュウ酸のDSCトレース。
【0089】
【表5】

【0090】
実験
2:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのTHFを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、0.4 gのシュウ酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0091】
1:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのTHFを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、0.8 gのシュウ酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0092】
5.シプロジニル−ピラジンカルボン酸共結晶
図11:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−ピラジンカルボン酸共結晶A形、(d) ピラジンカルボン酸の粉末X線回析パターン。
【0093】
図12:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−ピラジンカルボン酸共結晶A形、(c) ピラジンカルボン酸のDSCトレース。
【0094】
【表6】

【0095】
実験
1:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのエタノールを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、1.10 gのピラジンカルボン酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0096】
2:1共結晶については、1 gのシプロジニルと5 mlのアセトニトリルを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、0.55 gのピラジンカルボン酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0097】
6.シプロジニル−コハク酸共結晶
図13:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−コハク酸共結晶A形、(d) シプロジニル−コハク酸共結晶B形、及び(e) コハク酸の粉末X線回析パターン。
【0098】
【表7】

【0099】
実験
1:1共結晶については、2 gのシプロジニルと5 mlのメタノールを磁気攪拌器を使って30 mlのバイアルに装填し、50℃に加熱した。シプロジニルが溶解したら、2.0 gのコハク酸を攪拌しながら50℃にてバイアルに添加した。反応混合物を冷却し、室温で48時間攪拌しておいた。全ての生成物をブフナー濾過により単離した。
【0100】
7.シプロジニル−レブリン酸共結晶
図14:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−レブリン酸共結晶B形、及び(d) ロイブリン酸の粉末X線回析パターン。
【0101】
【表8】

【0102】
図15:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−レブリン酸共結晶B形のDSCトレース。
【0103】
実験
蒸発結晶化による2:1共結晶
2.0 gのCYPを5 mlのアセトンと共に40 mlのバイアルに添加した。5 mlの酢酸エチル中の1.9 gのレブリン酸をこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで冷却し、蒸発させた後、ブフナー上で濾過した。
【0104】
8.シプロジニル−4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸共結晶
図16:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸共結晶B形、(d) 4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸の粉末X線回析パターン。
【0105】
【表9】

【0106】
図17:(a) シプロジニルB形、(b) シプロジニル−4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸共結晶B形、及び(c) 4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸のDSCトレース。
【0107】
実験
冷却結晶化による1:1共結晶
1 gのCYPを5 mlのアセトンと共に40 mlのバイアルに添加した。5 mlのメタノール中の1.1 gの4−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸をこの混合物に添加した。
【0108】
試料を50℃で2時間維持し、次いで40℃で1時間維持し、次いで30℃で1時間維持し、最後に20℃で1時間維持した後、フリッジ中に一晩放置した。次いで生成物をブフナー漏斗上で単離した。
【0109】
9.シプロジニル−(2−メチルフェノキシ)酢酸共結晶
図18:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−(2−メチルフェノキシ)酢酸共結晶B形、(d) (2−メチルフェノキシ)酢酸の粉末X線回析パターン。
【0110】
【表10】

【0111】
実験
冷却結晶化による1:2共結晶
アセトン中の27.5%CYP溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。メタノール中の10%(2−メチルフェノキシ)酢酸溶液101μlを、追加の75μlのキシレンと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで10℃に一晩冷却し、残った液体を除去した。
【0112】
10.シプロジニル−ヘキサデカン酸共結晶
図19:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−ヘキサデカン酸共結晶B形、及び(d) ヘキサデカン酸の粉末X線回析パターン。
【0113】
【表11】

【0114】
実験
冷却結晶化による2:1共結晶
アセトン中の27.5%シプロジニル溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。メタノール中の5%ヘキサデカン酸溶液311μlを追加の75μlのメタノールと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで10℃に一晩冷却し、残った液体を除去した。
【0115】
11.シプロジニル−4−(メチルアミノ)安息香酸共結晶
図20:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−4−(メチルアミノ)安息香酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0116】
【表12】

【0117】
実験
冷却結晶化による1:1共結晶
アセトン中の27.5%シプロジニル溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。メタノール中の5%4−(メチルアミノ)安息香酸溶液366μlを、追加の75μlのキシレンと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで10℃に一晩冷却した。
【0118】
12.シプロジニル−トリメチル酢酸共結晶
図21:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−トリメチル酢酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0119】
【表13】

【0120】
実験
蒸発結晶化による1:1共結晶
アセトン中の27.5%シプロジニル溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。メタノール中の10%トリメチル酢酸溶液124μlを、追加の500μlのアセトンと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで冷却し、蒸発させた。
【0121】
13.シプロジニル−ピルビン酸共結晶
図22:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−ピルビン酸共結晶B形の粉末X線回析パターン。
【0122】
【表14】

【0123】
実験
蒸発結晶化による1:2共結晶
アセトン中27.5%CYP溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。エタノール中の10%トリメチル酢酸溶液195μlを、追加の500μlのキシレンと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで冷却して蒸発させた。
【0124】
14.シプロジニル−グリコール酸共結晶
図23:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、及び(c) シプロジニル−グリコール酸共結晶B形、及び(d) グリコール酸の粉末X線回析パターン。
【0125】
【表15】

【0126】
実験
冷却結晶化による1:2共結晶
アセトン中27.5%CYP溶液100μlを96ウエルプレートに添加した。メタノール中10%グリコール酸溶液168μlを、追加の50μlの酢酸エチルと共にこの混合物に添加した。試料を50℃で2時間維持し、次いで10℃に一晩冷却し、残った液体を除去した。
【0127】
図24:(a) シプロジニルA形、(b) シプロジニルB形、(c) シプロジニル−グリコール酸共結晶B形、(d) グリコール酸(D8で実施)及び(e) グリコール酸の粉末X線回析パターン。
【0128】
本発明を好ましい態様及びその例に関して記載してきたが、本発明の範囲は記載された態様に限定されない。当業者に明らかなように、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく上記発明に変更及び改良を行うことができ、本発明の範囲は添付の請求の範囲により定義されそして限定される。本明細書中に引用した全ての刊行物は、あたかも各々の各刊行物が具体的に且つ個別に参考として組み込まれると指摘されたかのように、その全内容が参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機酸官能基を有する共結晶形成化合物とシプロジニル又はピリメタニルとを含んで成る共結晶。
【請求項2】
シプロジニルを含んで成る、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
前記共結晶形成化合物がカルボン酸である、請求項1又は請求項2に記載の共結晶。
【請求項4】
前記共結晶形成化合物がジカルボン酸である、請求項3に記載の共結晶。
【請求項5】
前記カルボン酸が安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、ピラジンカルボン酸、グリコール酸、レブリン酸、(2−メチルフェノキシ)酢酸、ヘキサンジオン酸、4−(メチルアミノ)安息香酸、トリメチル酢酸、ピルビン酸又は4−ヒドロキシ−4′−ビフェニルカルボン酸である、請求項3に記載の共結晶。
【請求項6】
前記カルボン酸がコハク酸である、請求項5に記載の共結晶。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の共結晶の調製方法であって、
a) 固相を形成するような結晶化条件下で、シプロジニル又はピリメタニルを溶液中で共結晶形成化合物と共に粉砕し、加熱し、又は接触させ;
b) シプロジニル又はピリメタニル及び共結晶形成化合物を含んで成る共結晶を単離する
ことを含んで成る方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の共結晶を含んで成る殺真菌剤組成物。
【請求項9】
農薬組成物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
植物において真菌感染を予防/防除する方法であって、殺真菌的に有効な量の請求項9の農薬組成物で植物を処理することを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−522734(P2010−522734A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500355(P2010−500355)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001066
【国際公開番号】WO2008/117060
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】