説明

共重合ポリエステルの製造法

【課題】安価なバイオマスを基本炭素源としてポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(P(3HB−co−3HP))を生産することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)生産能を有する微生物をマロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換し、炭素源を含有する培地で形質転換体を増殖させることにより、形質転換体内でポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)を製造する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖、植物油等のバイオマスを基本原料として、微生物により分解可能であり、生体適合性にも優れた共重合ポリエステルの1つであるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)を微生物により製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物が産生するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、バイオマスを原料として生産可能な環境低負荷型の生分解性プラスチックである。代表的なPHAであるポリ(3−ヒドロキシブタン酸)(本明細書中「P(3HB)」と略記する。)を生合成し、エネルギーの貯蔵物質として菌体内に蓄積する微生物が存在する。この菌体から抽出したP(3HB)は、優れた生分解性と生体適合性を有するが、固くて脆いという物性のため実用化が困難である。
【0003】
また、P(3HB)は、前述の微生物(菌体)を用いて糖や植物油等の炭素源から合成可能であるが、P(3HB)生産菌に与える炭素源を工夫することにより、第二のモノマーユニットを導入した共重合ポリエステルを合成することができる。一般に、共重合ポリエステルは、第二のモノマーユニットの構造や組成によって、生産される共重合ポリエステルの物性が変化することから、実用的な生分解性プラスチックとして利用できる共重合ポリエステルの微生物による合成が注目されている。
【0004】
例えば、水素細菌の1種であるラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に炭素源としてグルコースとプロピオン酸を与えることにより、3−ヒドロキシブタン酸(3HB)と3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とのランダム共重合ポリエステルであるP(3HB−co−3HV)が生合成される(米国特許第6,091,002号)。ポリヒドロキシブタン酸合成酵素遺伝子が破壊されたシュードモナス・エスピー61−3株をポリエステル重合酵素遺伝子、β−ケトチオラーゼ遺伝子及びNADPH−アセトアセチルCoA還元酵素遺伝子を含有する組換えベクターで形質転換させ、P(3HB)と3−ヒドロキシアルカン酸(3HA)との共重合ポリエステルであるP(3HB−co−3HA)を生合成できることも知られている(WO01/11014)。また、P(3HB)生産菌に3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)を含む混合炭素源を与えることにより、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(本明細書中「P(3HB−co−3HP)」と略記する場合がある。)が生合成される。この共重合体は、P(3HB)と比較して、低融点及び高柔軟性を有する優れたプラスチック素材である(Nakamura,S.ら,Macromol.Rep.,(1991)A28,15−24;Shimamura,E.ら,Macromolecules(1994)27,4429−4435;Wang,Y.及びInoue,Y.,(2001)28,235−243)。しかしながら、3HPは高価であるため、炭素源として使用することは実用化の観点から現実的ではない。
【0005】
なお、上述のラルストニア・ユートロファは、ラルストニア属に属する微生物であるが、本出願時において、該微生物は、クプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)と呼ばれることもある。このような微生物の属の分類に関しては、クプリアビダス属が正式な属名として一般的に使用されてきているが、今後、再分類により、属及び種の学術名が統一又は変更される場合がある。現時点において、微生物の分類学上、クプリアビダス属、ラルストニア属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ヒドロゲノモナス(Hydrogenomonas)属、及びワウテルシア(Wautersia)属は、同属又は近縁の属として知られている。しががって、これらの属のいずれかに属する菌体(種)であっても、異なる属・種名で呼ばれることは周知である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,091,002号公報
【0007】
【特許文献2】国際公開WO01/11014公報
【0008】
【非特許文献1】Nakamura,S.ら,Macromol.Rep.,(1991)A28,15−24
【0009】
【非特許文献2】Shimamura,E.ら,Macromolecules(1994)27,4429−4435
【0010】
【非特許文献3】Wang,Y.及びInoue,Y.,(2001)28,235−243
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものである。本発明の課題は、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の微生物合成では、細胞内代謝で生じた3−ヒドロキシアシル−CoAがポリエステル重合酵素の作用により重合されることを利用し、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)(P(3HB))生産菌の菌体内で3−ヒドロキシプロピオニル−CoA(3HP−CoA)を供給する人工代謝系を構築することにより、バイオマスを基本炭素源としたポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(P(3HB−co−3HP))の微生物合成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)(P(3HB))生産能を有する微生物にマロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を導入することにより、微生物内でポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(P(3HB−co−3HP))を生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
P(3HB)生産菌では、糖質や植物油を代謝して生成したアセチル−CoAを出発物質として、チオラーゼ、アセトアセチル−CoA還元酵素の作用により生成した3−ヒドロキシブチリル−CoA(3HB−CoA)をポリエステル重合酵素の作用によって重合することによりP(3HB)が生合成される。一方、前述の通り、水素細菌クプリアビダス・ネカトール、ラルストニア・ユートロファ等では、培地に3HPを添加すると菌体内に3HPを取り込んで、3HP−CoAに変換し、これをポリエステル重合酵素が3HB−CoAと共にランダムに高分子鎖に取り込んで共重合ポリエステルP(3HB−co−3HP)を合成することが知られている。
【0014】
本発明では、このようなP(3HB)生産微生物の細胞内でアセチル−CoAを出発物質として3HP−CoAを生産させ、糖質や植物油のような安価なバイオマスからP(3HB−co−3HP)共重合体を微生物により生合成させることとした。より具体的には、緑色非硫黄細菌クロロフレクサス・アウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)の非カルビン型炭酸固定経路である3−ヒドロキシプロピオン酸サイクル(Alber,B.E.及びFuchs,G.,(2002)J.Biol.Chem.,277,12137−1213に記載の図1を引用)を利用した(図1参照)。この経路では、アセチル−CoAを出発物質として、アセチル−CoAカルボキシラーゼ、マロニル−CoA還元酵素、及びプロピオニル−CoA合成酵素中の3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素ドメイン(本明細書中「3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素」と記載する。)の3つの酵素により3HP−CoAが生成する。アセチル−CoAカルボキシラーゼは、微生物一般に存在する酵素であることから、マロニル−CoA還元酵素及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素の両遺伝子を導入したP(3HB)生産菌では、菌体内で3HP−CoAを生成し、P(3HB−co−3HP)共重合体が合成可能となる(図2参照)。なお、本発明の製造方法で使用する3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、プロピオニル−CoA合成酵素遺伝子(配列番号3)の1ドメインを構成する(Alber,B.E.及びFuchs,G.、上述)が、具体的には、配列番号3においてヌクレオチド1−2643で表される塩基配列からなる。
【0015】
すなわち、本発明は、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)(P(3HB))生産能を有するクプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ヒドロゲノモナス(Hydrogenomonas)属、又はワウテルシア(Wautersia)属に属する微生物をマロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換し、炭素源を含有する培地で形質転換体を増殖させることにより、形質転換体内でポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(P(3HB−co−3HP))を製造する方法を提供する。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、本発明の製造方法に使用することができる微生物は、限定されないが、クプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、ヒドロゲノモナス・ユートロファ(Hydrogenomonas eutropha)、ワウテルシア・ユートロファ(Wautersia eutropha)を含む。さらに好ましい態様として、クプリアビダス・ネカトールは、限定されないが、JMP134株(DSM4058)、H16株(DSM428)、及びこれらに由来する株を含む。
【0017】
本発明によれば、本発明の製造方法に使用されるマロニル−CoA還元酵素遺伝子は、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸であることができる。また、本発明の製造方法に使用されるマロニル−CoA還元酵素遺伝子は、(a)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸;又は(b)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸であることができる。
【0018】
本発明によれば、本発明の製造方法に使用される3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、(a)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は(b)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸であることができる。また、本発明の製造方法に使用される3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、(a)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸;又は(b)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する活性を有するタンパク質をコードする核酸であることができる。
【0019】
本発明によれば、製造されるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)共重合体における3−ヒドロキシプロピオン酸分率が0.01〜20モル%であることを特徴とする前記共重合体を製造する方法が提供される。好ましい態様として、重量平均分子量1×105〜3×106の前記共重合体を製造する方法が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)の製造方法において使用される、マロニル−CoA還元酵素遺伝子及びプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換した形質転換体が提供される。
【発明の効果】
【0021】
従来より問題とされていた高価な3HPを含む混合炭素源を使用せずに、微生物内に人工代謝系を構築することによって、より安価なバイオマスを基本炭素源としてP(3HB−co−3HP)を生産することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の説明のために、好ましい実施形態に関して詳述する。
前述の通り、本発明は、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)生産能を有するクプリアビダス属、ラルストニア属、アルカリゲネス属、ヒドロゲノモナス属、又はワウテルシア属に属する微生物をマロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換し、炭素源を含有する培地で形質転換体を増殖させることにより、形質転換体内でポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)を製造する方法に関する。
【0023】
(1)マロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子のクローニング
本発明の製造方法に使用されるマロニル−CoA還元酵素をコードする核酸及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素をコードする核酸は、一本鎖又は二本鎖型DNA、及びそのRNA相補体も含む。DNAには、例えば、天然由来のDNA、組換えDNA、化学合成したDNA、PCRによって増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせが含まれる。本発明で使用される核酸としてはDNAが好ましい。なお、周知の通り、コドンには縮重があり、1つのアミノ酸をコードする塩基配列が複数存在するアミノ酸もあるが、各々のマロニル−CoA還元酵素をコードする核酸の塩基配列及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素をコードする核酸の塩基配列であれば、いずれの塩基配列を有する核酸も本発明の範囲に含まれる。
【0024】
(i)マロニル−CoA還元酵素遺伝子のクローニング
マロニル−CoA還元酵素は、NADPHの存在下でマロニル−CoAを還元して3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する酵素である(図1、2を参照)。本発明の製造方法においては、マロニル−CoA還元酵素遺伝子として、例えば、公知のマロニル−CoA還元酵素遺伝子の塩基配列(GenBank Accession No.AY530019)を利用することができる。該酵素をコードする遺伝子は、AY530019に示されるヌクレオチド1−3898のうちヌクレオチド79−3741である。本明細書では、該遺伝子の塩基配列(AY530019のヌクレオチド79−3741に相当)及びそれがコードする推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2として配列表に記載する。
【0025】
本発明の一態様として、マロニル−CoA還元酵素遺伝子は、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸からなる。
【0026】
本発明の好ましい態様として、マロニル−CoA還元酵素遺伝子は、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列から成るタンパク質;又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列から成り、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸からなる。
【0027】
本発明の別の態様として、マロニル−CoA還元酵素遺伝子は、
(a)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸;又は
(b)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる。
【0028】
本発明の別の好ましい態様として、マロニル−CoA還元酵素遺伝子は、
(a)配列番号1で表される塩基配列から成る核酸;又は
(b)配列番号1で表される塩基配列から成る核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる。
【0029】
マロニル−CoA還元酵素遺伝子(本明細書中「mcr」と称することがある。)は、例えば、後述する実施例1に記載するように、配列番号1の塩基配列に基づいてプライマーとして合成ヌクレオチド(配列番号5及び6)を設計し、クロロフレクサス・アウランティアカスDSM636株の染色体DNAを鋳型として増幅することができる。
【0030】
(ii)3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子のクローニング
3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、プロピオニル−CoA合成酵素遺伝子(配列番号3)の1ドメインを構成することが知られている(Alber,B.E.及びFuchs,G.、上述)。典型的には、該酵素の遺伝子は、配列番号3においてヌクレオチド1−2643に相当する塩基配列からなる。この合成酵素は、3−ヒドロキシプロピオン酸サイクルのうちCoA及びATPの存在下で3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを合成する酵素である(図1、2を参照)。本発明の製造方法においては、プロピオニル−CoA合成酵素を使用することもできるが、該遺伝子の1ドメインである3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素を使用することが好ましい。
【0031】
本発明の製造方法においては、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素として、例えば、公知のプロピオニル−CoA合成酵素の塩基配列(GenBank Accession No.AF445079)を利用することができる。該酵素をコードする遺伝子は、AF445079に示されるヌクレオチド1−5469の塩基配列を有する。本明細書では、該遺伝子の塩基配列及びそれがコードする推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び4として配列表に記載する。
【0032】
本発明の一態様として、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、
(a)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ配列で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(b)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸からなる。
【0033】
本発明の好ましい態様として、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、
(a)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ配列で表されるアミノ酸配列から成るタンパク質;又は
(b)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列から成り、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸からなる。
【0034】
本発明の別の態様として、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、
(a)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸;又は
(b)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる。
【0035】
本発明の別の好ましい態様として、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子は、
(a)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列から成る核酸;又は
(b)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列から成る核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる。
【0036】
3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子(本明細書中「acs」と称することがある。)は、例えば、後述する実施例1に記載するように、配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列に基づいてプライマーとして合成ヌクレオチド(配列番号7及び8)を設計し、クロロフレクサス・アウランティアカスDSM636株の染色体DNAを鋳型として増幅することができる。
【0037】
なお、実施例1に示すように、マロニル−CoA還元酵素遺伝子については、配列番号5及び6のプライマー、そして、3−ヒドロキシプロピオニル合成酵素遺伝子については、配列番号7及び8のプライマーを使用した場合、PCR産物としてそれぞれ約3.7kbp及び約2.6kbpのDNA断片が得られるので、例えば、これらをアガロースゲル電気泳動等の分子量によりDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って核酸を単離することができる。
【0038】
ここで、核酸を増幅するための手法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saiki R.K.ら,Science,230,1350−1354(1985))、ライゲース連鎖反応(LCR)(Wu D.Y.ら,Genomics,4,560−569(1989))、及び転写に基づく増幅(Kwoh D.Y.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,1173−1177(1989))等の温度循環を必要とする反応、並びに鎖置換反応(SDA)(Walker G.T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,392−396(1992); Walker G.T.ら,Nuc.Acids Res.,20,1691−1696(1992))、自己保持配列複製(3SR)(Guatelli J.C.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,1874−1878(1990))、及びQβレプリカーゼシステム(Lizardi,P.M.ら、BioTechnology,6,1197−1202(1988))等の恒温反応を利用することができるが、これらに限定されない。本発明の製造法においては、PCR法を使用することが好ましい。
【0039】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、中程度又は高程度なストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrook,J.ら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,7.42−7.45(2001)に示されるが、ニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40〜50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC〜6×SSC(又は約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般的に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度及び/又は低い塩濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、及び約68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。当業者は、温度及び洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さ等の要因に従って、必要に応じて調整可能であることを認識するであろう。
【0040】
上記のような核酸増幅反応又はハイブリダイゼーション等を使用してクローニングされる相同な核酸は、配列表の配列番号1又は3に記載の塩基配列に対して少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する。
【0041】
なお、同一性パーセントは、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。あるいは、2つの核酸配列の同一性パーセントは、Devereuxら,Nucl.Acids Res.,12,387(1984)に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラム(GCG Wisconsin Package、バージョン10.3)を用いて、配列情報を比較することによって、決定可能である。
【0042】
タンパク質に関して、一般に、酵素のような生理活性を有するタンパク質において、そのアミノ酸配列のうち、1若しくは数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ酸配列に1若しくは数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加された場合であっても、該生理活性が維持されることがあることは周知である。また、天然産のタンパク質の中には、それを生産する生物種の品種の違いや、生態型(ecotype)の違いによる遺伝子の変異、あるいはよく似たアイソザイムの存在等に起因して、1から数個のアミノ酸変異を有する変異タンパク質が存在することは知られている。
【0043】
したがって、上記の通り、本発明の製造方法において使用されるマロニル−CoA還元酵素及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素は、典型的には、それぞれ配列番号2及び4に記載のアミノ酸配列を有するが、各酵素がそれぞれの活性を有する限り、当該アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加等の変異が生じてもよい。ここで、用語「数個」とは、本明細書中で使用するとき、好ましくは2〜100個、より好ましくは2〜50個、さらにより好ましくは2〜20個、最も好ましくは2〜10個である。一般的には、部位特異的な変異によってアミノ酸が置換された場合に、元々のタンパク質が有する活性を保持する程度に置換が可能なアミノ酸の個数は、好ましくは1〜10個である。
【0044】
本発明の最も好ましい態様として、マロニル−CoA還元酵素遺伝子は、配列番号2で表されるアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする核酸、又は配列番号1で表される塩基配列から成る核酸である。
【0045】
本発明の最も好ましい態様として、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子が配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする核酸、又は配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列から成る核酸である。
【0046】
(2)組換えベクターの構築及び形質転換体の作製
本発明によれば、単離したマロニル−CoA還元酵素をコードする遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素をコードする遺伝子を含む組換えベクターが提供される。各遺伝子は、同一のベクター又は別個のベクターに組み込むことができる。別個のベクターに各遺伝子を組み込む場合、各ベクターの種類は同一であるか又は異なっていてもよい。なお、上述の通り、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素は、プロピオニル−CoA合成酵素遺伝子の1ドメインを構成するため、本発明の製造方法においては、プロピオニル−CoA合成酵素遺伝子(配列番号3)を組み込んだベクターを使用することもできる。
【0047】
プラスミド等のベクターに遺伝子を組み込む方法としては、例えば、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.1(2001)に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、タカラバイオ製等)を用いることもできる。
【0048】
ベクターは、簡単には当業界において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNA等)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、グラム陰性菌で自律複製することが知られている広宿主域ベクターpBBR1−MCS2(GenBank Accession No.U23751)、pJRD215(M16198)(Davision,J.ら、(1987)Gene,51,275−80を参照)、pJB861(U82000)、pHRP311(Parales,R.E.及びHarwood,C.S.(1993)Gene,133,23−30を参照)が例示されるが、これらに限定されない。また、大腸菌用のプラスミドとして、例えば、pBAD24(GenBank Accession No.X81837)、pDONR201、pBluescript、pUC118、pUC18、pUC19、pBR322等を使用することができる。
【0049】
当業者であれば、発現ベクターに適合するように制限末端を適宜選択することが可能である。また、当業者であれば、所望のタンパク質を発現させるために、宿主細胞に適した発現ベクターを適宜選択することができる。このようにベクターは、本発明で使用する遺伝子が目的の宿主細胞中で発現し得るように遺伝子発現に関与する領域(必要に応じて、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー(カナマイシン耐性遺伝子など)、リボゾーム結合配列(SD配列))が適切に配列されており又は導入することにより、該核酸が適切に発現するように構築されている又は構築することが好ましい。後述する実施例2に示すように、大腸菌においてアラビノースの添加で発現を誘導できるBADプロモーターを有するプラスミドpBAD24(上述)から転写因子araC、BADプロモーター領域、マルチクローニングサイト、rrnBターミネーター領域を含むDNA断片を切り出し、これらDNA断片、mcr及びacs(上述)を広宿主域ベクターpBBR−MCS2に連結することにより、目的とする発現ベクター(pBBR−BAD−mcracs)を構築することができる。なお、本発明の製造方法においては、既存のベクターを使用することもでき、その種類は、原核細胞及び/又は真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能を有するものであれば特に限定されない。
【0050】
一般的に、形質転換体は、発現ベクターを宿主細胞に組み込むことによって作製することができる。この場合、宿主細胞として原核細胞(例えば、大腸菌(S17−1株等)、枯草菌)であっても真核細胞(哺乳類細胞、酵母、昆虫細胞等)であっても使用することができる。発現ベクターの宿主細胞への導入(形質転換)は公知の方法を用いて行うことができる。例えば、細菌(大腸菌、Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972))、プロトプラスト法(Mol.Gen.Genet.,168,111(1979))やコンピテント法(J.Mol.Biol.,56,209(1971))、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、ラルストニア属、アルカリゲネス属、シュードモナス属等に属する菌体への発現ベクターの導入では、接合伝達法を使用することができる(J.Bacteriol.,147,198(1981))。
【0051】
この接合伝達法は、簡単には、細胞同士の接触によって染色体ゲノム又はプラスミドを一方の細胞から他方の細胞に移行させる細胞の性質を利用したものであり、例えば、目的のDNAを担持する自己伝達性プラスミドが導入された供与菌と該プラスミドを有しない受容菌との接合に始まり、両菌体における橋の形成、該プラスミドの複製と移行、並びにDNA合成の完了と共に菌体の分離といった一連の工程によって遺伝子導入を可能にする手段である。
【0052】
本発明の製造方法に使用される宿主細胞は、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)(P(3HB)生産能を有する機能を有する微生物であれば、特に限定されない。本発明によれば、このような機能を有する天然に存在する細胞(細菌)を使用してもよく、又は、遺伝子工学的手法により作製したこのような機能を発現する形質転換体(細胞株、菌株など)を使用してもよい。
【0053】
本発明に使用されるP(3HB)生産能を有する微生物は、限定されないが、クプリアビダス属、ラルストニア属、アルカリゲネス属、ヒドロゲノモナス属、又はワウテルシア属に属する微生物を含む。好ましい態様として、本発明の製造方法に使用される微生物は、限定されないが、クプリアビダス・ネカトール、ラルストニア・ユートロファ、アルカリゲネス・ユートロファス、ヒドロゲノモナス・ユートロファ、又はワウテルシア・ユートロファである。さらに、クプリアビダス・ネカトールに属する菌体は、JMP134株(DSM4058)、H16株(DSM428)、DSM531株、これらに由来する株、より好ましくはJMP134株、H16株、最も好ましくはJMP134株である。本発明の製造方法に使用されるこれらの株は、例えば、DSMZ(Deutshe Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)又はATCC(American Type Culture Collection)から容易に入手可能である。なお、後述する実施例3では、作製した発現ベクター(pBBR−BAD−mcracs)を大腸菌に塩化カルシウム法によって遺伝子導入した後に、接合伝達法を用いて、この大腸菌からP(3HB)合成能を有するクプリアビダス・ネカトールJMP134株に発現ベクターを移入させ、これを形質転換体として使用した。
【0054】
(3)共重合ポリエステルの合成
ポリエステル合成は、上述した形質転換体を所定の培地で培養し、培養細胞(例えば、菌体)内又は培養物(例えば、培地)中に共重合ポリエステルを生成及び蓄積させ、培養細胞又は培養物から目的とする共重合ポリエステルを採取することにより行われる。なお、本発明の製造方法に使用される形質転換体の培養法は、通常、宿主細胞の培養に使用される方法に従って行われる。
【0055】
クプリアビダス属、ラルストニア属、アルカリゲネス属、ヒドロゲノモナス属、ワウテルシア属、シュードモナス属等に属する菌体を宿主とした場合の培地として、微生物が資化し得る炭素源を添加し、窒素源、無機塩類、その他の有機栄養源のいずれかを制限した培地が挙げられる。典型的には、培地温度を25℃〜37℃の範囲にし、好気的に1〜10日培養することにより、共重合ポリエステルを菌体内に生成し蓄積させ、その後、回収・精製することによって所望の共重合ポリエステルを調製することができる。
【0056】
本発明の製造方法で使用される菌体は、水素細菌であり、分子状水素と酸素の反応(爆鳴気反応)によって得られるエネルギーを利用し、炭酸を唯一の炭素源として成長し得る細菌として知られている。ここで、炭素源として、限定されないが、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース等が挙げられる。また、その他の炭素源として、グルコン酸、オクタン酸、大豆油、コーン油、オリーブ油、ヤシ油、ドデカン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸等の脂肪酸、又はこれらの脂肪酸エステル、アルコール類を使用してもよい。また、当業者であれば、使用する炭素源の濃度、種類等を適宜選択することができる。
【0057】
また、必要であれば、培地中に窒素源や無機物を添加してもよい。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニア、ペプトン、酵母エキス等が列挙される。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、塩化ナトリウム等が列挙される。
【0058】
培養は、通常、振とう培養が用いられ、好気的条件下で、25℃〜37℃で遺伝子発現誘導後少なくとも1日以上行うことが好ましい。抗生物質として、カナマイシン、アンピシリン等を培地に添加してもよい。また、遺伝子発現誘導剤として、アラビノース、インドールアクリル酸(IAA)、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を使用することができる。当業者であれば、所望の遺伝子発現のために可能な培養条件、遺伝子発現の誘導条件等を適宜選択できる。
【0059】
(4)共重合ポリエステルの精製と構造解析
本発明において、共重合ポリエステルは、下記の通り精製することができる:培地から遠心分離によって形質転換体を回収し、蒸留水で洗浄後、乾燥又は凍結乾燥させる。その後、クロロホルムに乾燥した形質転換体を懸濁させ、室温で所定時間撹拌し、共重合ポリエステルを抽出する。抽出の段階で、必要であれば加熱してもよい。濾過によって残渣を除去し、上清にメタノールを加えて共重合ポリエステルを沈殿させ、沈殿物を濾過又は遠心分離によって、上清を除去し、乾燥させて精製した共重合ポリエステルを得ることができる。
【0060】
得られた共重合ポリエステルが所望のものであることを確認するための手段は、限定されないが、NMR(核磁気共鳴)、ガスクロマトグラフィーを用いる方法を含む。本発明によれば、共重合ポリエステルのモノマーユニットの比、即ち、3−ヒドロキシブタン酸(3HB)と3−ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の比を遺伝子発現条件、培養条件等を変えることにより適宜調節することができる。本発明の製造方法によって得られる共重合ポリエステルの3HP分率は、好ましくは0.01〜20モル%、より好ましくは0.05〜20モル%、さらにより好ましくは0.1〜10モル%、さらになおより好ましくは0.1〜5.0モル%、最も好ましくは0.1〜2.0モル%である。用語「モル%」は、本明細書中で使用するとき、多成分系における各成分のモル数の和で、ある成分のモル数を割ったものをいう。例えば、本発明の製造方法により得られる共重合体の一般式を3HB及び3HPのモノマーユニットの数として、それぞれ「x」及び「y」を用いて表記した場合(図6を参照)、3HP分率は、式:y×100/(x+y)により求めることができる。なお、後述する実施例5で示すように、本発明の製造方法により、3HP分率が異なる共重合ポリエステルを得ることができた(表1等)。また、NMRによって、共重合体であることを確認した(図6)。
【0061】
また、本発明の製造方法によって得られる共重合ポリエステルの平均分子量(例えば、重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M))は、当業者に周知な方法、例えば、クロマトグラフィー(GPC)法、粘度法、末端基定量法、浸透圧法、光散乱法、沈降速度法により測定することができる。本明細書中で使用するとき、用語「重量平均分子量(M)」は、多分散系高分子化合物の分子量を意味する。具体的には、分子量Mの分子がn個(i=1、2、・・・)ある多分散系における重量平均分子量は、下式:
【化1】

で表される。本発明の製造方法によって得られる共重合ポリエステルの重量平均分子量(M)は、好ましくは1×105〜3×106、より好ましくは5×105〜2×106、さらにより好ましくは1×106〜1.5×106である。また、用語「数平均分子量(M)」は、2個以上の原子より分子が構成されているときの平均分子量でi番目の原子量をM、その数をN個とすると、下式:
【化2】

で表される。本発明の共重合ポリエステルの数平均分子量(M)は、好ましくは5×104〜1.5×106、より好ましくは1×105〜1×106、さらにより好ましくは1×105〜5×105である。なお、後述する実施例6において共重合ポリエステルの分子量測定を行った結果、M=約1.16×106、M=約3.36×105であったことから、本発明の共重合ポリエステルは、従来技術によって得られる一般的な共重合ポリエステル(重量平均分子量:約1×103〜5×104)と比較して、非常に大きな分子量を有すると言える。
【0062】
本発明の共重合ポリエステルの分子量分布は、M/M(分散比)によって表すことができる。分散比は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。分散比が2以上の場合、共重合ポリエステルの網目が良好であることが予測される。
【0063】
また、本発明の製造方法によって製造された共重合ポリエステルは、乾燥菌体重量当り1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらにより好ましくは30重量%以上、最も好ましくは50重量%以上の割合で菌体に蓄積される。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1 マロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子のクローニング
緑色非硫黄細菌クロロフレクサス・アウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)DSM636株(DSMZより入手)の凍結乾燥菌体を3mlの滅菌生理食塩水に懸濁した後、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム法(Current Protocols in Molecular Biology,1巻、2.4.3頁、1994年;John Wiley&Sons出版)により染色体DNAを得た。
【0065】
また、公知のクロロフレクサス・アウランティアカス由来のマロニル−CoA還元酵素の遺伝子配列(GenBank Accession No.AY530019)(配列番号1を参照)に基づいて、マロニル−CoA還元酵素遺伝子(mcr)を増幅するために、該遺伝子配列に相同な下記のプライマー:
配列1:GGGGAATTCATGAGCGGAACAGGACGACTGG(配列番号5)
(下線部:配列番号1のヌクレオチド1−22に対応)
配列2:GTAGAATTTACACGGTAATCGC(配列番号6)
(下線部:配列番号1のヌクレオチド3663−3649に対応)
を設計した。
【0066】
公知のクロロフレクサス・アウランティアカス由来のプロピオニル−CoA合成酵素の遺伝子配列(GenBank Accession No.AF445079)(配列番号3を参照)に基づいて、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子(acs)を増幅するために、該遺伝子配列中の3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子に相当する部分に相同な下記のプライマー:
配列3:GCAGGAGGAATTACCATGATCGACACTGCGCCCCTTG(配列番号7)
(下線部:配列番号2のヌクレオチド1−22に対応)
配列4:GGGGAATTCTTATGTCACCGTCACTACCGCG(配列番号8)
(下線部:配列番号2のヌクレオチド2643−2625に対応)
を設計した。なお、配列番号8の塩基12−10(ATT)は、終始コドン(TAA)の相補配列に対応し、3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素が、配列番号3のヌクレオチド1−2643のみから翻訳されるよう付加した。
【0067】
抽出した染色体DNAを鋳型とし、配列1及び配列2のオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCR法によってmcrを増幅した。PCRは、KODプラス(トーヨーボー社製)を用い、98℃で30秒、70℃で4分の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。また、acsは配列3及び配列4のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR法によって同様に増幅した。PCR反応条件は、98℃で30秒、62℃で30秒、68℃で4分の反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。
【0068】
増幅したmcrをT4キナーゼ(トーヨーボー社製)を用いて5’−末端をリン酸化した。また、ベクタープラスミドpUC118(タカラバイオ社製)を制限酵素HincIIで切断し、脱リン酸化した状態で市販されているもの(タカラバイオ社製)と、リン酸化したmcr断片とLigation High(トーヨーボー社製)を用いて連結した。次いで、得られた組換えプラスミドを制限酵素SmaIで切断し、アルカリホスファターゼ(ロシュ社製)で脱リン酸化した。これと5’−リン酸化したacs断片を連結した。この際、mcr−acsの順で同方向に連結された組換えプラスミドpUC−mcracsを選抜した。
【0069】
実施例2 組換えベクターの構築
多くのグラム陰性菌で自律複製することが知られている広宿主域ベクターpBBR1−MCS2(GenBank Accession No.U23751)を制限酵素SspIで切断し、複製起点等を含むDNA断片を単離して脱リン酸化処理を行った。また、大腸菌においてアラビノースの添加で発現を誘導できるBADプロモーターを有するプロモーターを有するプラスミドpBAD24(GenBank Accession No.X81837)を制限酵素BanIIIとAlw44Iで切断し、転写因子araC、BADプロモーター領域、マルチクローニングサイト、rrnBターミネーター領域を含むDNA断片を単離した。このDNA断片をBlunting High(トーヨーボー社製)を用いて末端平滑化し、次いで、上述のpBBR1−MCS2 SspI断片と連結した。得られたpBBR−BAD(図3)を制限酵素EcoRIで切断して脱リン酸化処理し、pUC−mcracsから制限酵素EcoRIで切り出したmcr−acs断片と連結することで発現ベクターpBBR−BAD−mcracs(図4)を構築した。また、このpBBR−BAD−mcracsを制限酵素XbaIで切断した後に、セルフライゲーションした。この処理によって、acs領域を除去し、mcr領域のみを含むpBBR−BAD−mcr(図5)を得た。
【0070】
実施例3 形質転換体の作製
得られた組換えプラスミドを用いて、P(3HB)生産菌であるクプリアビダス・ネカトールJMP134株(DSM4058)又はH16株(DSM428)(DSMZより入手)を接合伝達法によって形質転換した。まず、塩化カルシウム法によって、pBBR−BAD−mcracsを大腸菌S17−1株に導入した。次に、この組換え大腸菌をLB培地(1%イーストエキス、0.5%トリプトン、0.5%塩化ナトリウム、pH7.5)1.5ml中で、37℃で終夜培養した。これと並行して、クプリアビダス・ネカトールJMP134株又はH16株をNR培地(1%魚肉エキス、1%ポリペプトン、2%酵母エキス)1.5ml中で、30℃で終夜培養した。その後、それぞれの培養液0.1mlを混合して30℃で4時間培養した。この菌体混合液を0.3mg/mlカナマイシンを添加したSimmons Citrate寒天培地(ディフコ社製)に塗布し、30℃で5日間培養した。組換え大腸菌中のプラスミドが、クプリアビダス・ネカトールに伝達された場合、該菌体はカナマイシン耐性を示し、一方、組換え大腸菌はSimmons Citrate寒天培地では増殖不能であるため、上記培地上で増殖したコロニーは、組換え大腸菌からpBBR−BAD−mcracsが伝達したクプリアビダス・ネカトール形質転換体である。pBBR−BAD−mcracsをJMP134株に接合伝達した株を「JMA64株」、pBBR−BAD−mcrを伝達した株を「JM37株」、pBBR−BADを伝達した株を「JBAD株」と命名した。また、H16株にpBBR−BAD−mcracsを接合伝達した株を「HMA64株」と命名した。
【0071】
実施例4 クプリアビダス・ネカトール形質転換体による共重合ポリエステル合成
クプリアビダス・ネカトール形質転換体による共重合ポリエステル合成は、下記に示すように一段培養及び二段培養で行った。
(a)一段培養
NR培地(前述)で前培養したクプリアビダス・ネカトール形質転換体を100mlのMB−Frc培地(0.9% リン酸二ナトリウム、0.15% リン酸一カリウム、0.05% 塩化アンモニウム、1% 微量金属溶液、0.5%又は2% フルクトース)に植菌し、坂口フラスコ中、30℃で72時間振とう培養した。培養開始後8〜24時間で遺伝子発現誘導剤であるアラビノースを所定量(0〜0.1%、表1等を参照)で添加した。
【0072】
(b)二段培養
0.1mg/mlのカナマイシンを添加したNR培地でクプリアビダス・ネカトール形質転換体を30℃、24時間培養した。その後、遠心分離及び洗浄した菌体を0.1mg/mlのカナマイシン及び所定量(0〜0.1%、表1等を参照)のアラビノースを添加した100ml MB−Frc培地(塩化アンモニウム不含)に移し、30℃で48時間培養した。
【0073】
いずれの場合も培養終了後に遠心分離によって菌体を回収し、蒸留水で洗浄して凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
乾燥菌体10〜30mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することにより、菌体内ポリエステル分解物のメチルエステルを得た。これに1mlの蒸留水を添加して激しく撹拌した。静置して二層に分離させた後、下層の有機層を取り出した。有機層0.1mlに0.1%のオクタン酸メチル・クロロホルム溶液を0.1ml、ジメチルホルムアミドを0.3mlとビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドを0.1mlを添加し、70℃で30分加熱して水酸基をトリメチルシリル化した。室温まで冷却し、1mLのヘキサン及び1mLのH2Oを添加して激しく撹拌し、静置後、上層の有機層をキャピラリーガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所製GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製InertCap−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。温度条件は、初発温度100℃から8℃/分の速度で昇温した。
【0074】
一段培養では、親株であるJMP134株は、P(3HB)ホモポリマーのみが蓄積するが、これに対して、JMA64株は、アラビノースを0.01%以上添加した場合に、3HP分率が0.7〜1.0モル%であるP(3HB−co−3HP)共重合体を乾燥菌体重量当り53〜56重量%蓄積した。この際、アラビノースを添加しない、又は低濃度0.001%の場合では、3HPユニットの導入が見られなかったことから、導入したmcr−acs遺伝子がアラビノースによって発現誘導され機能することがP(3HB−co−3HP)共重合体の合成において必要であることがわかる(表1)。
【0075】
二段培養の場合でも、JMP64株はアラビノース0.01%以上の添加で3HP分率0.9〜1.9モル%のP(3HB−co−3HP)共重合体を乾燥菌体重量当り25〜29重量%蓄積した。フルクトース濃度の違いによる影響は見られなかった(表1)。
【0076】
【表1】

【0077】
炭素源を脂肪酸(ドデカン酸)としても、3HP分率0.8モル%のP(3HB−co−3HP)共重合体を乾燥菌体重量当り49.1重量%蓄積した(表2)。
【0078】
【表2】

【0079】
また、acsを有しないpBBR−BAD−mcrを伝達したJM37株、及びmcr、acsを両方とも有しないpBBR−BADを伝達したJBAD株では、P(3HB)ホモポリマーのみが蓄積したことからも、mcr、acs両遺伝子が発現し機能することがP(3HB−co−3HP)共重合体の合成において必要であることがわかる(表3)。さらに、H16株を宿主としたHMA64株においてもP(3HB−co−3HP)共重合体の合成が確認できた。H16株由来のHMA64株では、糖質や脂肪酸に加え、植物油を炭素源とすることができる(表4)。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
実施例5 共重合ポリエステルの精製と構造解析
0.5%フルクトースで二段培養したクプリアビダス・ネカトールJMP64株(P(3HB−co−1.9mol%3HP)を24.5重量%で蓄積)の凍結乾燥菌体150mgをクロロホルムに懸濁し、室温で48時間撹拌した。フィルターで濾過し、上清の5倍量のメタノールを加え、沈殿したポリエステルを濾過により回収した。真空乾燥後の秤量により、29.3mgのポリエステルを得た。全量を重クロロホルムに溶解し、1H−NMRにより構造解析した(図6)。3−ヒドロキシプロピオニル基中の3位の炭素に結合したメチレン基に由来する水素のシグナルが4.35ppm付近に観察されたことから、このポリエステルがP(3HB−co−3HP)共重合体であることが確認できた。ピーク面積積分値から3HP分率1.6モル%と産出された。これはガスクロマトグラフィーによる結果(1.9モル%)とほぼ一致している。
【0083】
実施例6 共重合ポリエステルの分子量測定
実施例5により得られた共重合ポリエステルP(3HB−co−1.9mol%3HPの分子量測定は、クロマトグラフィー(GPC)法により行った。高速液体クロマトグラフィーは、島津製作所製LC−10A GPCを用い、カラムはショーデックス社製K806MカラムとK802カラムを連結して用いた。移動相は、クロロホルム0.8ml/分とし、乾燥菌体より精製した共重合体のクロロホルム溶液(濃度1mg/ml)を分析サンプルとした。分子量計算のための検量線はポリスチレン標準品により作製した。これにより、重量平均分子量(M)=約1.16×106、数平均分子量(M)=3.36×105が得られた。また、この共重合体の分散比(M/M)は、約3.45となる。したがって、本発明の製造方法によって、高分子量であり、かつ分子量分布のやや広い共重合ポリエステルが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の製造方法によって、安価なバイオマスを基本炭素源としてポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)(P(3HB−co−3HP))を生産することができ、さらに、3HP分率の高い共重合体を得ることができる。このような共重合ポリエステルは、熱安定や成形性に優れており、P(3HB)と比べて耐衝撃性に優れた生分解性プラスチックとなる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、緑色非硫黄細菌クロロフレクサス・アウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)で提唱されている3−ヒドロキシプロピオン酸サイクルの概略図を示す。各酵素は、(1)アセチル−CoAカルボキシラーゼ、(2)マロニル−CoAレダクターゼ、(3)プロピオニル−CoA合成酵素、(4)プロピオニル−CoAカルボキシラーゼ、(5)メチルマロニル−CoAエピメラーゼ、(6)メチルマロニル−CoAムターゼ、(7)スクシニル−CoA:L−リンゴ酸CoAトランスフェラーゼ、(8)スクシニル−CoAデヒドロゲナーゼ、(9)フマラーゼ、(10)L−マリル−CoAリアーゼである。この概略図は、B.E.Alber及びG.Fuchs,J.Biol.Chem.277:12137−12143(2002)より転載した。
【図2】図2は、人工代謝経路によるP(3HB−co−3HP)共重合体の生合成のスキームを示す。
【図3】図3は、構築した組換えベクターpBBR−BADを示す。
【図4】図4は、構築した組換えベクターpBBR−BAD−mcracsを示す。
【図5】図5は、構築した組換えベクターpBB−BAD−mcrを示す。
【図6】図6は、ラルストニア・ユートロファJMP64株でフラクトースより合成したP(3HB−co−1.6mol%3HP)の1H−NMRによる解析結果を示す。式中の各番号は、NMRデータ中の各ピークの番号に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)生産能を有するクプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ヒドロゲノモナス(Hydrogenomonas)属、又はワウテルシア(Wautersia)属に属する微生物をマロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換し、炭素源を含有する培地で形質転換体を増殖させることにより、形質転換体内でポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)を製造する方法。
【請求項2】
微生物が、クプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ラルストニア・ユートロファス(Ralstonia eutropha)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、ヒドロゲノモナス・ユートロファ(Hydrogenomonas eutropha)、又はワウテルシア・ユートロファ(Wautersia eutropha)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
クプリアビダス・ネカトールが、JMP134株(DSM4058)又はH16株(DSM428)である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
マロニル−CoA還元酵素遺伝子が、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸から成る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
マロニル−CoA還元酵素遺伝子が、
(a)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸;又は
(b)配列番号1で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつマロニル−CoAから3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子が、
(a)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質;又は
(b)配列番号4のアミノ酸残基1−881で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸を含み、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質
をコードする核酸からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子が、
(a)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸;又は
(b)配列番号3のヌクレオチド1−2643で表される塩基配列を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシプロピオン酸から3−ヒドロキシプロピオニル−CoAを生成する触媒活性を有するタンパク質をコードする核酸
からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
製造されるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)に含有する3−ヒドロキシプロピオン酸分率が0.01〜20モル%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
製造されるポリ(3−ヒドロキシブタン酸−co−3−ヒドロキシプロピオン酸)が重量平均分子量1×105〜3×106を有することを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法において使用される、マロニル−CoA還元酵素遺伝子及び3−ヒドロキシプロピオニル−CoA合成酵素遺伝子を含有する組換えベクターを用いて形質転換した形質転換体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212114(P2008−212114A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57269(P2007−57269)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】