共鳴ラベル
【目的】 ラベルのサイズを大きくせずに、簡素な構造で信号強度を強めることのできる共鳴ラベル、及び信号強度等の性能低下を招くことなく、サイズの縮小化を図り得る共鳴ラベルを提供する。
【構成】 絶縁性の担体層１０の表面１０ａに、第１の誘導コイル３０Ａと第１及び第２のコンデンサープレート２１，２３を形成し、裏面１０ｂに、第２の誘導コイル３０Ｂと第２及び第４のコンデンサープレート２２，２４を形成する。第１及び第２の誘導コイル３０Ａ，３０Ｂは互いに正に誘導結合されている。第１のコンデンサー部Ｃ１は、第１及び第２のコンデンサープレート２１，２２で構成され、誘導コイル３０Ａ，３０Ｂの外側に配置される。第２のコンデンサー部Ｃ２は、第３及び第４のコンデンサープレート２３，２４で構成され、コイル窓部３１の中央で、且つ誘導コイル３０Ａ，３０Ｂから離間して配置される。
【構成】 絶縁性の担体層１０の表面１０ａに、第１の誘導コイル３０Ａと第１及び第２のコンデンサープレート２１，２３を形成し、裏面１０ｂに、第２の誘導コイル３０Ｂと第２及び第４のコンデンサープレート２２，２４を形成する。第１及び第２の誘導コイル３０Ａ，３０Ｂは互いに正に誘導結合されている。第１のコンデンサー部Ｃ１は、第１及び第２のコンデンサープレート２１，２２で構成され、誘導コイル３０Ａ，３０Ｂの外側に配置される。第２のコンデンサー部Ｃ２は、第３及び第４のコンデンサープレート２３，２４で構成され、コイル窓部３１の中央で、且つ誘導コイル３０Ａ，３０Ｂから離間して配置される。
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁波に対する共振回路を備えてなる共鳴ラベルに関し、例えば盗難防止を目的として商品等に貼着されて使用される共鳴ラベルに関する。
【０００２】
【従来の技術】従来より、小売店などから商品が不正に或は誤って持ち出されるのを防ぐことを目的として商品に貼着される盗難防止用の共鳴ラベルが公知である。そのような共鳴ラベルには、特定の周波数（共振周波数）の電磁波に共鳴する共振回路が形成されている。そして、この共鳴ラベルが取り付けられた商品を不正に店舗外に持ち出そうとすると、店舗等の出口で発せられている共振周波数に一致した周波数の電磁波に、共鳴ラベルの共振回路が共鳴して、共鳴ラベルの存在がセキュリティーシステム等の検出装置により検出される。
【０００３】図５乃至図７には、それぞれ従来の一般的な共鳴ラベルの上面図、下面図及び縦断面図が示されている。それらの図に示すように、従来の共鳴ラベル１００においては、絶縁性の担体層１１０を一対の導体よりなるコンデンサープレート１２１，１２３で挟んでコンデンサー部Ｃ101を形成している。そして、担体層１１０の表面（上面）１１０ａ側のコンデンサープレート１２３と、担体層１１０の裏面（下面）１１０ｂに形成した誘導コイル１３０とを、担体層１１０の隅部に設けられた貫通孔よりなる短絡部１５０において電気的に接続することにより共振回路を構成している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】上述した共鳴ラベル１００は、商品などの検出対象物に貼着されて使用される。そのため、商品等によってはその美的外観が損なわれてしまったり、商品等のパッケージに記された注意書き等が被い隠されてしまったりするなどの不都合が生じることがあり、それ故、共鳴ラベル１００はできるだけ小さいのが好ましい。また、多品種の商品等への適用や使い捨てという使用形態に鑑みて、共鳴ラベルの小型化、及びそれによりもたらされる共鳴ラベルの低価格化が望まれている。
【０００５】しかし、共鳴ラベル１００を単に小さくしただけでは、共鳴ラベル１００の有効面積（誘導コイル１３０の平均面積から、誘導コイル１３０で囲まれるコイル窓部１３１内に形成されたコンデンサー部Ｃ101の面積を差し引いた面積）が減少し、併せて回路の共振周波数特性の尖鋭度を表すＱ値も低下してしまい、信号強度が極端に弱くなってしまう。
【０００６】従って、サイズの縮小化を図る上では、共鳴ラベルの信号強度をより強める手段を講じる必要があり、その手段として、誘導コイル１３０の線幅を太くしたり、コイル窓部１３１の面積を大きくしたり、共鳴ラベル１００のサイズを大きくしたりするなどの方法がある。しかし、何れもの方法も、製造コストの著しい増大を招くだけでなく、サイズの縮小化に反するという欠点がある。
【０００７】また、上記短絡部１５０を形成するため、共鳴ラベル１００の製造工程が煩雑になり、製造コストが高くなってしまうだけでなく、短絡部１５０における誘導コイルとコンデンサープレートとの接触部分に抵抗（接触抵抗）が生じ、設計通りの共鳴特性が得られないという欠点もある。
【０００８】本発明は、上述した点に鑑みなされたもので、その目的は、ラベルのサイズを大きくせずに、簡素な構造で信号強度を強めることのできる共鳴ラベルを提供することにある。
【０００９】また、本発明の他の目的は、信号強度等の性能低下を招くことなく、サイズの縮小化を図り得る共鳴ラベルを提供することである。
【００１０】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項１に記載した共鳴ラベルは、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、それら第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルとともに共振回路の構成要素となる第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部を備え、該第２のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルで囲まれるコイル窓部の中央で、且つ前記誘導コイルから離間して配置し、一方、前記第１のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルの外側に配置したことを特徴とする。
【００１１】具体的には、請求項２に記載した共鳴ラベルのように、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルを、それぞれ絶縁性の担体層の表面及び裏面に形成するとともに、前記第１のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの一端に電気的に接続された第１のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第１のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの一端に電気的に接続された第２のコンデンサープレートとで構成し、一方、前記第２のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの他端に電気的に接続された第３のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第３のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの他端に電気的に接続された第４のコンデンサープレートとで構成してもよい。
【００１２】
【作用】請求項１記載の共鳴ラベルによれば、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部とで共振回路を構成したため、各誘導コイルの巻数は、誘導コイルが１つだけ設けられた従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数の２分の１以下で済む。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【００１３】また、第１の誘導コイルと第２の誘導コイルの各巻数を従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数と同じにすれば、共鳴ラベル全体のインダクタンスが従来の２倍以上になる。それ故、第１のコンデンサー部と第２のコンデンサー部の総和の大きさ（面積）を従来のコンデンサーよりも小さくすることができる。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またインダクタンスの増大により回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は著しく強くなる。
【００１４】さらに、第２のコンデンサー部を、コイル窓部の中央で、且つ第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルから離間して配置し、一方、第１のコンデンサー部を、第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルの外側に配置した構成としたため、共鳴時に誘導コイル内を流れる電流により発生する磁束は第２のコンデンサー部のコンデンサープレートによる阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベルの有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなる。それら有効面積の増大とＱ値の増大の相乗効果によって、共鳴ラベルの信号強度はより一層強くなる。
【００１５】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【００１６】請求項２記載の共鳴ラベルによれば、絶縁性の担体層の表面に、第１の誘導コイルと第１のコンデンサー部を構成する第１のコンデンサープレートと第２のコンデンサー部を構成する第３のコンデンサープレートを形成するとともに、担体層の裏面に、第２の誘導コイルと第１のコンデンサー部を構成する第２のコンデンサープレートと第２のコンデンサー部を構成する第４のコンデンサープレートを形成した構成としたため、従来のように担体層を挟んでその表裏にそれぞれ設けられた誘導コイルとコンデンサープレートとを直接接触させて電気的な導通を確保しなくても、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対して共振回路は有効に働く。
【００１７】従って、担体層の表裏にそれぞれ形成された誘導コイルとコンデンサープレートとを接触させるための短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベルの製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、従来問題とされていた短絡部における接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【００１８】
【実施例】本発明に係る共鳴ラベルの実施例を図１乃至図４に基いて以下に説明する。図１〜図３には、本発明に係る共鳴ラベルの一例が示されており、図１はその上面図であり、図２はその下面図であり、図３はその縦断面図である。図４には、共鳴ラベルの共鳴時の信号強度の周波数特性が示されている。
【００１９】この共鳴ラベル１は、図１乃至図３に示すように、絶縁性の担体層１０の表面１０ａ及び裏面１０ｂに、それぞれ第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂが形成され、それら第１の誘導コイル３０Ａと第２の誘導コイル３０Ｂとが互いに正に誘導結合されているものである。また、この共鳴ラベルでは、担体層１０の表面１０ａに、第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３が形成され、一方、担体層１０の裏面１０ｂに、第２のコンデンサープレート２２及び第４のコンデンサープレート２４が形成されている。
【００２０】共鳴ラベル１の共振回路は、上記第１の誘導コイル３０Ａと上記第２の誘導コイル３０Ｂと、担体層１０を挟んで相対する第１のコンデンサープレート２１及び第２のコンデンサープレート２２よりなる第１のコンデンサー部Ｃ１と、担体層１０を挟んで相対する第３のコンデンサープレート２３及び第４のコンデンサープレート２４よりなる第２のコンデンサー部Ｃ２とで構成されている。そして、それら第１のコンデンサー部Ｃ１と第２のコンデンサー部Ｃ２との合成容量は、この振動回路の共振周波数と第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの各インダクタンスにより決められる。
【００２１】第１の誘導コイル３０Ａは、その外側の第１のコンデンサープレート２１に電気的に接続されてその一端を発し、第３のコンデンサープレート２３の周りを例えば上から見て時計廻りの方向に４重に巡って第３のコンデンサープレート２３に達して電気的に接続されている。
【００２２】第２の誘導コイル３０Ｂは、その外側の第２のコンデンサープレート２２に電気的に接続されてその一端を発し、第４のコンデンサープレート２４の周りを例えば下から見て時計廻りの方向に４重に巡って第４のコンデンサープレート２４に達して電気的に接続されている。
【００２３】なお、本例においては、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの巻パターンは、いずれも上述の如く、時計廻りの方向であるとしたが、第１の誘導コイル３０Ａと第２の誘導コイル３０Ｂとが正に誘導結合されれば、いずれも反時計廻りの方向にコイルが巻いていてもよい。
【００２４】第２のコンデンサー部Ｃ２は、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの内側のコイル窓部３１の中央で、且つそれら誘導コイル３０Ａ，３０Ｂから離間して配置されている。なお、特に限定しないが、図１及び図２では、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂはいずれも略矩形状の渦巻きパターンに成形されており、略矩形状の第３のコンデンサープレート２３及び略矩形状の第４のコンデンサープレート２４の各中心点（図示せず）が、略矩形状をなすコイル窓部３１の対角線の交点（図示せず）にそれぞれ一致するようになっている。
【００２５】一方、第１のコンデンサー部Ｃ１は、担体層１０の一側寄りに配置された第１の誘導コイル３０Ａ（第２の誘導コイル３０Ｂ）の外側、即ち誘導コイル３０Ａ（第２の誘導コイル３０Ｂ）と担体層１０の他側縁との間に配置されている。
【００２６】なお、前記各誘導コイル３０Ａ，３０Ｂ及び前記各コンデンサープレート２１，２２，２３，２４は何れも導電性を有しており、特に限定しないが、例えばアルミニウム箔により形成されている。
【００２７】ところで、上述した構成の共鳴ラベル１は、その共振回路がその共振周波数に一致した周波数の電磁波に共鳴することによって、共鳴ラベル１の存在がセキュリティーシステムにより検出されるものであるが、第１のコンデンサー部Ｃ１又は第２のコンデンサー部Ｃ２に、絶縁破壊し易い絶縁破壊部（図示せず）を形成しておいてもよい。このようにすれば、キャッシャーを通過した際に、キャッシャーで発生する高エネルギーの電磁波により絶縁破壊が起こり、共鳴ラベル１の共振回路を無効にすることができる。つまり、キャッシャーを通らずに店舗外に不正に持ち出される商品についてのみ、店舗の出口等で発生する電磁波に共鳴ラベル１の共振回路が共鳴して、セキュリティーシステムの警報が鳴るようにすることができる。
【００２８】以上のように構成された共鳴ラベル１は例えば以下のようにして製造される。
【００２９】先ず、担体層１０の表面１０ａ及び裏面１０ｂにそれぞれ接着剤を介してパターンの形成されていないアルミニウム箔を貼着する。そして、貼着した表側のアルミニウム箔にさらにフォトレジスト（感光性樹脂）を塗布し、フォトリソグラフィ技術により第１の誘導コイル３０Ａと第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３のパターンを転写し、エッチングしてアルミニウム箔にそのパターンを形成する。一方、同様にしてフォトリソグラフィ技術及びエッチングにより、裏側のアルミニウム箔に第２の誘導コイル３０Ｂと第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４のパターンを形成する。以上の手順によって、共鳴ラベル１が完成する。
【００３０】なお、上述した絶縁破壊部を設ける場合には、例えば、予め担体層１０に小さな貫通孔をあけておき、その貫通孔において担体層１０の上下のアルミニウム箔同士を絶縁性の接着剤で貼り合わせるようにすればよい。
【００３１】上記実施例によれば、共鳴ラベル１の表面１０ａ及び裏面１０ｂに、それぞれ、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂが形成されているため、それら誘導コイル３０Ａ，３０Ｂの各巻数を従来よりも少なくしたり、共鳴ラベル１全体のインダクタンスを大きくしたりすることができるので、共鳴ラベル１の有効面積が増大することとなり、また回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベル１の信号強度が著しく強くなる。また、第２のコンデンサー部Ｃ２が、コイル窓部３１の中央で、且つ第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂから離間して配置されているため、共鳴時に第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂ内を流れる電流により発生する磁束は第３のコンデンサープレート２３及び第４のコンデンサープレート２４による阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベル１の有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなる。
【００３２】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベル１が得られる。また、従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベル１を得ることもできる。
【００３３】ここで、本発明に係る共鳴ラベルの信号強度が強くなることについて、本発明者らの行った検証の結果を説明する。
【００３４】図４には、その検証結果として、両面に誘導コイル３０Ａ，３０Ｂを形成した共鳴ラベル１（実施例）と片面にのみ誘導コイルを設けた共鳴ラベル（比較例）について、共鳴時の信号強度の周波数特性を調べた結果が示されている。
【００３５】同図より、実施例の方が比較例よりも信号強度が著しく強いのがわかる。そして、実施例の方が信号強度が強いことから、Ｑ値も比較例に較べて大きくなったものと考えられる。なお、比較例の共鳴ラベルは、図示しないが、実施例の共鳴ラベル１において第２の誘導コイル３０Ｂの代わりに、第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４とを架橋導体により電気的に接続したものである。
【００３６】また、上記実施例においては、担体層１０の表面１０ａに、第１の誘導コイル３０Ａと第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３とが形成されているとともに、担体層１０の裏面１０ｂに、第２の誘導コイル３０Ｂと第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４とが形成されているため、担体層１０を挟む上下の導体同士を直接接触させて電気的な導通を確保するという短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベル１の製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、上下の導体の接触に起因して生じ得る接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【００３７】なお、上記実施例においては、共鳴ラベル１の共振回路は２つの誘導コイル３０Ａ，３０Ｂと２つのコンデンサー部Ｃ１，Ｃ２とから構成されているとしたが、担体層１０の両面に少なくとも１つずつ誘導コイルが形成され、少なくとも一対の誘導コイルが互いに正に誘導結合されているとともに、コンデンサー部が少なくとも２つ設けられていれば、共振回路の構成は問わない。
【００３８】また、第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３と第１の誘導コイル３０Ａとを一体として形成してもよいし、別々に形成して一体化してもよい。第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４と第２の誘導コイル３０Ｂに付いても同様に、予め一体となっていてもよいし、それらを後から一体化してもよい。さらに、共鳴ラベル１は上記製造手順以外の方法によって製造されてもよいのはいうまでもない。
【００３９】
【発明の効果】請求項１記載の共鳴ラベルによれば、第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルの各巻数は、誘導コイルが１つだけ設けられた従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数の２分の１以下で済む。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【００４０】また、第１の誘導コイルと第２の誘導コイルの各巻数を従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数と同じにすれば、共鳴ラベル全体のインダクタンスが従来の２倍以上になり、第１のコンデンサー部と第２のコンデンサー部の総和の大きさ（面積）を従来のコンデンサーよりも小さくすることができる。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またインダクタンスの増大により回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は著しく強くなる。
【００４１】さらに、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対する共鳴時に誘導コイル内を流れる電流により発生する磁束は第２のコンデンサー部のコンデンサープレートによる阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベルの有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなり、それら有効面積の増大とＱ値の増大の相乗効果によって、共鳴ラベルの信号強度はより一層強くなる。
【００４２】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【００４３】請求項２記載の共鳴ラベルによれば、従来のように担体層を挟んでその表裏にそれぞれ設けられた誘導コイルとコンデンサープレートとを直接接触させて電気的な導通を確保しなくても、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対して共振回路は有効に働く。
【００４４】従って、担体層の表裏にそれぞれ形成された誘導コイルとコンデンサープレートとを接触させるための短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベルの製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、従来問題とされていた短絡部における接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る共鳴ラベルの一例の上面図である。
【図２】本発明に係る共鳴ラベルの一例の下面図である。
【図３】本発明に係る共鳴ラベルの一例の図１及び図２のIII−IIIにおける縦断面図である。
【図４】本発明に係る共鳴ラベルと誘導コイルを片面にのみ形成した共鳴ラベルについて、共鳴時の信号強度の周波数特性を表す特性図である。
【図５】従来の共鳴ラベルの上面図である。
【図６】従来の共鳴ラベルの下面図である。
【図７】従来の共鳴ラベルの図５及び図６のVII−VIIにおける縦断面図である。
【符号の説明】
Ｃ１ 第１のコンデンサー部
Ｃ２ 第２のコンデンサー部
１ 共鳴ラベル
１０ 担体層
１０ａ 表面
１０ｂ 裏面
２１ 第１のコンデンサープレート
２２ 第２のコンデンサープレート
２３ 第３のコンデンサープレート
２４ 第４のコンデンサープレート
３０Ａ 第１の誘導コイル
３０Ｂ 第２の誘導コイル
３１ コイル窓部
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁波に対する共振回路を備えてなる共鳴ラベルに関し、例えば盗難防止を目的として商品等に貼着されて使用される共鳴ラベルに関する。
【０００２】
【従来の技術】従来より、小売店などから商品が不正に或は誤って持ち出されるのを防ぐことを目的として商品に貼着される盗難防止用の共鳴ラベルが公知である。そのような共鳴ラベルには、特定の周波数（共振周波数）の電磁波に共鳴する共振回路が形成されている。そして、この共鳴ラベルが取り付けられた商品を不正に店舗外に持ち出そうとすると、店舗等の出口で発せられている共振周波数に一致した周波数の電磁波に、共鳴ラベルの共振回路が共鳴して、共鳴ラベルの存在がセキュリティーシステム等の検出装置により検出される。
【０００３】図５乃至図７には、それぞれ従来の一般的な共鳴ラベルの上面図、下面図及び縦断面図が示されている。それらの図に示すように、従来の共鳴ラベル１００においては、絶縁性の担体層１１０を一対の導体よりなるコンデンサープレート１２１，１２３で挟んでコンデンサー部Ｃ101を形成している。そして、担体層１１０の表面（上面）１１０ａ側のコンデンサープレート１２３と、担体層１１０の裏面（下面）１１０ｂに形成した誘導コイル１３０とを、担体層１１０の隅部に設けられた貫通孔よりなる短絡部１５０において電気的に接続することにより共振回路を構成している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】上述した共鳴ラベル１００は、商品などの検出対象物に貼着されて使用される。そのため、商品等によってはその美的外観が損なわれてしまったり、商品等のパッケージに記された注意書き等が被い隠されてしまったりするなどの不都合が生じることがあり、それ故、共鳴ラベル１００はできるだけ小さいのが好ましい。また、多品種の商品等への適用や使い捨てという使用形態に鑑みて、共鳴ラベルの小型化、及びそれによりもたらされる共鳴ラベルの低価格化が望まれている。
【０００５】しかし、共鳴ラベル１００を単に小さくしただけでは、共鳴ラベル１００の有効面積（誘導コイル１３０の平均面積から、誘導コイル１３０で囲まれるコイル窓部１３１内に形成されたコンデンサー部Ｃ101の面積を差し引いた面積）が減少し、併せて回路の共振周波数特性の尖鋭度を表すＱ値も低下してしまい、信号強度が極端に弱くなってしまう。
【０００６】従って、サイズの縮小化を図る上では、共鳴ラベルの信号強度をより強める手段を講じる必要があり、その手段として、誘導コイル１３０の線幅を太くしたり、コイル窓部１３１の面積を大きくしたり、共鳴ラベル１００のサイズを大きくしたりするなどの方法がある。しかし、何れもの方法も、製造コストの著しい増大を招くだけでなく、サイズの縮小化に反するという欠点がある。
【０００７】また、上記短絡部１５０を形成するため、共鳴ラベル１００の製造工程が煩雑になり、製造コストが高くなってしまうだけでなく、短絡部１５０における誘導コイルとコンデンサープレートとの接触部分に抵抗（接触抵抗）が生じ、設計通りの共鳴特性が得られないという欠点もある。
【０００８】本発明は、上述した点に鑑みなされたもので、その目的は、ラベルのサイズを大きくせずに、簡素な構造で信号強度を強めることのできる共鳴ラベルを提供することにある。
【０００９】また、本発明の他の目的は、信号強度等の性能低下を招くことなく、サイズの縮小化を図り得る共鳴ラベルを提供することである。
【００１０】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項１に記載した共鳴ラベルは、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、それら第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルとともに共振回路の構成要素となる第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部を備え、該第２のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルで囲まれるコイル窓部の中央で、且つ前記誘導コイルから離間して配置し、一方、前記第１のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルの外側に配置したことを特徴とする。
【００１１】具体的には、請求項２に記載した共鳴ラベルのように、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルを、それぞれ絶縁性の担体層の表面及び裏面に形成するとともに、前記第１のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの一端に電気的に接続された第１のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第１のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの一端に電気的に接続された第２のコンデンサープレートとで構成し、一方、前記第２のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの他端に電気的に接続された第３のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第３のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの他端に電気的に接続された第４のコンデンサープレートとで構成してもよい。
【００１２】
【作用】請求項１記載の共鳴ラベルによれば、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部とで共振回路を構成したため、各誘導コイルの巻数は、誘導コイルが１つだけ設けられた従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数の２分の１以下で済む。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【００１３】また、第１の誘導コイルと第２の誘導コイルの各巻数を従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数と同じにすれば、共鳴ラベル全体のインダクタンスが従来の２倍以上になる。それ故、第１のコンデンサー部と第２のコンデンサー部の総和の大きさ（面積）を従来のコンデンサーよりも小さくすることができる。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またインダクタンスの増大により回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は著しく強くなる。
【００１４】さらに、第２のコンデンサー部を、コイル窓部の中央で、且つ第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルから離間して配置し、一方、第１のコンデンサー部を、第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルの外側に配置した構成としたため、共鳴時に誘導コイル内を流れる電流により発生する磁束は第２のコンデンサー部のコンデンサープレートによる阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベルの有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなる。それら有効面積の増大とＱ値の増大の相乗効果によって、共鳴ラベルの信号強度はより一層強くなる。
【００１５】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【００１６】請求項２記載の共鳴ラベルによれば、絶縁性の担体層の表面に、第１の誘導コイルと第１のコンデンサー部を構成する第１のコンデンサープレートと第２のコンデンサー部を構成する第３のコンデンサープレートを形成するとともに、担体層の裏面に、第２の誘導コイルと第１のコンデンサー部を構成する第２のコンデンサープレートと第２のコンデンサー部を構成する第４のコンデンサープレートを形成した構成としたため、従来のように担体層を挟んでその表裏にそれぞれ設けられた誘導コイルとコンデンサープレートとを直接接触させて電気的な導通を確保しなくても、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対して共振回路は有効に働く。
【００１７】従って、担体層の表裏にそれぞれ形成された誘導コイルとコンデンサープレートとを接触させるための短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベルの製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、従来問題とされていた短絡部における接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【００１８】
【実施例】本発明に係る共鳴ラベルの実施例を図１乃至図４に基いて以下に説明する。図１〜図３には、本発明に係る共鳴ラベルの一例が示されており、図１はその上面図であり、図２はその下面図であり、図３はその縦断面図である。図４には、共鳴ラベルの共鳴時の信号強度の周波数特性が示されている。
【００１９】この共鳴ラベル１は、図１乃至図３に示すように、絶縁性の担体層１０の表面１０ａ及び裏面１０ｂに、それぞれ第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂが形成され、それら第１の誘導コイル３０Ａと第２の誘導コイル３０Ｂとが互いに正に誘導結合されているものである。また、この共鳴ラベルでは、担体層１０の表面１０ａに、第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３が形成され、一方、担体層１０の裏面１０ｂに、第２のコンデンサープレート２２及び第４のコンデンサープレート２４が形成されている。
【００２０】共鳴ラベル１の共振回路は、上記第１の誘導コイル３０Ａと上記第２の誘導コイル３０Ｂと、担体層１０を挟んで相対する第１のコンデンサープレート２１及び第２のコンデンサープレート２２よりなる第１のコンデンサー部Ｃ１と、担体層１０を挟んで相対する第３のコンデンサープレート２３及び第４のコンデンサープレート２４よりなる第２のコンデンサー部Ｃ２とで構成されている。そして、それら第１のコンデンサー部Ｃ１と第２のコンデンサー部Ｃ２との合成容量は、この振動回路の共振周波数と第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの各インダクタンスにより決められる。
【００２１】第１の誘導コイル３０Ａは、その外側の第１のコンデンサープレート２１に電気的に接続されてその一端を発し、第３のコンデンサープレート２３の周りを例えば上から見て時計廻りの方向に４重に巡って第３のコンデンサープレート２３に達して電気的に接続されている。
【００２２】第２の誘導コイル３０Ｂは、その外側の第２のコンデンサープレート２２に電気的に接続されてその一端を発し、第４のコンデンサープレート２４の周りを例えば下から見て時計廻りの方向に４重に巡って第４のコンデンサープレート２４に達して電気的に接続されている。
【００２３】なお、本例においては、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの巻パターンは、いずれも上述の如く、時計廻りの方向であるとしたが、第１の誘導コイル３０Ａと第２の誘導コイル３０Ｂとが正に誘導結合されれば、いずれも反時計廻りの方向にコイルが巻いていてもよい。
【００２４】第２のコンデンサー部Ｃ２は、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂの内側のコイル窓部３１の中央で、且つそれら誘導コイル３０Ａ，３０Ｂから離間して配置されている。なお、特に限定しないが、図１及び図２では、第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂはいずれも略矩形状の渦巻きパターンに成形されており、略矩形状の第３のコンデンサープレート２３及び略矩形状の第４のコンデンサープレート２４の各中心点（図示せず）が、略矩形状をなすコイル窓部３１の対角線の交点（図示せず）にそれぞれ一致するようになっている。
【００２５】一方、第１のコンデンサー部Ｃ１は、担体層１０の一側寄りに配置された第１の誘導コイル３０Ａ（第２の誘導コイル３０Ｂ）の外側、即ち誘導コイル３０Ａ（第２の誘導コイル３０Ｂ）と担体層１０の他側縁との間に配置されている。
【００２６】なお、前記各誘導コイル３０Ａ，３０Ｂ及び前記各コンデンサープレート２１，２２，２３，２４は何れも導電性を有しており、特に限定しないが、例えばアルミニウム箔により形成されている。
【００２７】ところで、上述した構成の共鳴ラベル１は、その共振回路がその共振周波数に一致した周波数の電磁波に共鳴することによって、共鳴ラベル１の存在がセキュリティーシステムにより検出されるものであるが、第１のコンデンサー部Ｃ１又は第２のコンデンサー部Ｃ２に、絶縁破壊し易い絶縁破壊部（図示せず）を形成しておいてもよい。このようにすれば、キャッシャーを通過した際に、キャッシャーで発生する高エネルギーの電磁波により絶縁破壊が起こり、共鳴ラベル１の共振回路を無効にすることができる。つまり、キャッシャーを通らずに店舗外に不正に持ち出される商品についてのみ、店舗の出口等で発生する電磁波に共鳴ラベル１の共振回路が共鳴して、セキュリティーシステムの警報が鳴るようにすることができる。
【００２８】以上のように構成された共鳴ラベル１は例えば以下のようにして製造される。
【００２９】先ず、担体層１０の表面１０ａ及び裏面１０ｂにそれぞれ接着剤を介してパターンの形成されていないアルミニウム箔を貼着する。そして、貼着した表側のアルミニウム箔にさらにフォトレジスト（感光性樹脂）を塗布し、フォトリソグラフィ技術により第１の誘導コイル３０Ａと第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３のパターンを転写し、エッチングしてアルミニウム箔にそのパターンを形成する。一方、同様にしてフォトリソグラフィ技術及びエッチングにより、裏側のアルミニウム箔に第２の誘導コイル３０Ｂと第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４のパターンを形成する。以上の手順によって、共鳴ラベル１が完成する。
【００３０】なお、上述した絶縁破壊部を設ける場合には、例えば、予め担体層１０に小さな貫通孔をあけておき、その貫通孔において担体層１０の上下のアルミニウム箔同士を絶縁性の接着剤で貼り合わせるようにすればよい。
【００３１】上記実施例によれば、共鳴ラベル１の表面１０ａ及び裏面１０ｂに、それぞれ、互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂが形成されているため、それら誘導コイル３０Ａ，３０Ｂの各巻数を従来よりも少なくしたり、共鳴ラベル１全体のインダクタンスを大きくしたりすることができるので、共鳴ラベル１の有効面積が増大することとなり、また回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベル１の信号強度が著しく強くなる。また、第２のコンデンサー部Ｃ２が、コイル窓部３１の中央で、且つ第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂから離間して配置されているため、共鳴時に第１の誘導コイル３０Ａ及び第２の誘導コイル３０Ｂ内を流れる電流により発生する磁束は第３のコンデンサープレート２３及び第４のコンデンサープレート２４による阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベル１の有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなる。
【００３２】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベル１が得られる。また、従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベル１を得ることもできる。
【００３３】ここで、本発明に係る共鳴ラベルの信号強度が強くなることについて、本発明者らの行った検証の結果を説明する。
【００３４】図４には、その検証結果として、両面に誘導コイル３０Ａ，３０Ｂを形成した共鳴ラベル１（実施例）と片面にのみ誘導コイルを設けた共鳴ラベル（比較例）について、共鳴時の信号強度の周波数特性を調べた結果が示されている。
【００３５】同図より、実施例の方が比較例よりも信号強度が著しく強いのがわかる。そして、実施例の方が信号強度が強いことから、Ｑ値も比較例に較べて大きくなったものと考えられる。なお、比較例の共鳴ラベルは、図示しないが、実施例の共鳴ラベル１において第２の誘導コイル３０Ｂの代わりに、第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４とを架橋導体により電気的に接続したものである。
【００３６】また、上記実施例においては、担体層１０の表面１０ａに、第１の誘導コイル３０Ａと第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３とが形成されているとともに、担体層１０の裏面１０ｂに、第２の誘導コイル３０Ｂと第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４とが形成されているため、担体層１０を挟む上下の導体同士を直接接触させて電気的な導通を確保するという短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベル１の製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、上下の導体の接触に起因して生じ得る接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【００３７】なお、上記実施例においては、共鳴ラベル１の共振回路は２つの誘導コイル３０Ａ，３０Ｂと２つのコンデンサー部Ｃ１，Ｃ２とから構成されているとしたが、担体層１０の両面に少なくとも１つずつ誘導コイルが形成され、少なくとも一対の誘導コイルが互いに正に誘導結合されているとともに、コンデンサー部が少なくとも２つ設けられていれば、共振回路の構成は問わない。
【００３８】また、第１のコンデンサープレート２１と第３のコンデンサープレート２３と第１の誘導コイル３０Ａとを一体として形成してもよいし、別々に形成して一体化してもよい。第２のコンデンサープレート２２と第４のコンデンサープレート２４と第２の誘導コイル３０Ｂに付いても同様に、予め一体となっていてもよいし、それらを後から一体化してもよい。さらに、共鳴ラベル１は上記製造手順以外の方法によって製造されてもよいのはいうまでもない。
【００３９】
【発明の効果】請求項１記載の共鳴ラベルによれば、第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルの各巻数は、誘導コイルが１つだけ設けられた従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数の２分の１以下で済む。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【００４０】また、第１の誘導コイルと第２の誘導コイルの各巻数を従来の共鳴ラベルにおけるコイル巻数と同じにすれば、共鳴ラベル全体のインダクタンスが従来の２倍以上になり、第１のコンデンサー部と第２のコンデンサー部の総和の大きさ（面積）を従来のコンデンサーよりも小さくすることができる。それによって、共鳴ラベルの有効面積が増大することとなり、またインダクタンスの増大により回路のＱ値も大きくなり、それらの相乗効果によって共鳴ラベルの信号強度は著しく強くなる。
【００４１】さらに、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対する共鳴時に誘導コイル内を流れる電流により発生する磁束は第２のコンデンサー部のコンデンサープレートによる阻害の影響を受け難くなって、共鳴ラベルの有効面積が増大するとともに、回路のＱ値も大きくなり、それら有効面積の増大とＱ値の増大の相乗効果によって、共鳴ラベルの信号強度はより一層強くなる。
【００４２】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【００４３】請求項２記載の共鳴ラベルによれば、従来のように担体層を挟んでその表裏にそれぞれ設けられた誘導コイルとコンデンサープレートとを直接接触させて電気的な導通を確保しなくても、共振周波数と同じ周波数の電磁波に対して共振回路は有効に働く。
【００４４】従って、担体層の表裏にそれぞれ形成された誘導コイルとコンデンサープレートとを接触させるための短絡処理を行わずに済み、共鳴ラベルの製造工程が簡素化されるとともに、製造コストの著しい削減を図ることができる。加えて、従来問題とされていた短絡部における接触抵抗がなくなり、設計通りの共鳴特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る共鳴ラベルの一例の上面図である。
【図２】本発明に係る共鳴ラベルの一例の下面図である。
【図３】本発明に係る共鳴ラベルの一例の図１及び図２のIII−IIIにおける縦断面図である。
【図４】本発明に係る共鳴ラベルと誘導コイルを片面にのみ形成した共鳴ラベルについて、共鳴時の信号強度の周波数特性を表す特性図である。
【図５】従来の共鳴ラベルの上面図である。
【図６】従来の共鳴ラベルの下面図である。
【図７】従来の共鳴ラベルの図５及び図６のVII−VIIにおける縦断面図である。
【符号の説明】
Ｃ１ 第１のコンデンサー部
Ｃ２ 第２のコンデンサー部
１ 共鳴ラベル
１０ 担体層
１０ａ 表面
１０ｂ 裏面
２１ 第１のコンデンサープレート
２２ 第２のコンデンサープレート
２３ 第３のコンデンサープレート
２４ 第４のコンデンサープレート
３０Ａ 第１の誘導コイル
３０Ｂ 第２の誘導コイル
３１ コイル窓部
【特許請求の範囲】
【請求項１】 互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、それら第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルとともに共振回路の構成要素となる第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部を備え、該第２のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルで囲まれるコイル窓部の中央で、且つ前記誘導コイルから離間して配置し、一方、前記第１のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルの外側に配置したことを特徴とする共鳴ラベル。
【請求項２】 前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルを、それぞれ絶縁性の担体層の表面及び裏面に形成するとともに、前記第１のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの一端に電気的に接続された第１のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第１のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの一端に電気的に接続された第２のコンデンサープレートとで構成し、一方、前記第２のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの他端に電気的に接続された第３のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第３のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの他端に電気的に接続された第４のコンデンサープレートとで構成したことを特徴とする請求項１記載の共鳴ラベル。
【請求項１】 互いに正に誘導結合された第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルと、それら第１の誘導コイル及び第２の誘導コイルとともに共振回路の構成要素となる第１のコンデンサー部及び第２のコンデンサー部を備え、該第２のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルで囲まれるコイル窓部の中央で、且つ前記誘導コイルから離間して配置し、一方、前記第１のコンデンサー部を、前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルの外側に配置したことを特徴とする共鳴ラベル。
【請求項２】 前記第１の誘導コイル及び前記第２の誘導コイルを、それぞれ絶縁性の担体層の表面及び裏面に形成するとともに、前記第１のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの一端に電気的に接続された第１のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第１のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの一端に電気的に接続された第２のコンデンサープレートとで構成し、一方、前記第２のコンデンサー部を、前記担体層の表面に形成され、且つ前記第１の誘導コイルの他端に電気的に接続された第３のコンデンサープレートと、前記担体層の裏面に前記第３のコンデンサープレートに相対して形成され、且つ前記第２の誘導コイルの他端に電気的に接続された第４のコンデンサープレートとで構成したことを特徴とする請求項１記載の共鳴ラベル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開平７−２７２１３４
【公開日】平成７年（１９９５）１０月２０日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平６−５６３８３
【出願日】平成６年（１９９４）３月２５日
【出願人】（０００２２２０９３）東洋アルミニウム株式会社 (2)
【公開日】平成７年（１９９５）１０月２０日
【国際特許分類】
【出願日】平成６年（１９９４）３月２５日
【出願人】（０００２２２０９３）東洋アルミニウム株式会社 (2)
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