説明

共鳴ラベル

【目的】 ラベルのサイズを大きくせずに、簡素な構造で信号強度を強めることのできる共鳴ラベル、及び信号強度等の性能低下を招くことなく、サイズの縮小化を図り得る共鳴ラベルを提供する。
【構成】 誘導コイル30とコンデンサーC1とで構成された共振回路を有し、そのコンデンサーC1が、誘導コイル30で囲まれるコイル窓部31以外の領域に配置されている。コンデンサーC1は、絶縁性の担体層10の上面10a及び下面10bにそれぞれ形成された第1のコンデンサープレート21及び第2のコンデンサープレート22とで構成されている。第1のコンデンサープレート21は、誘導コイル30の外側端部に電気的に接続されている。第2のコンデンサープレート22は、コイル窓部31内に設けられた短絡部50にて、誘導コイル30の内側端部に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電磁波に対する共振回路を備えてなる共鳴ラベルに関し、例えば盗難防止を目的として商品等に貼着されて使用される共鳴ラベルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、小売店などから商品が不正に或は誤って持ち出されるのを防ぐことを目的として商品に貼着される盗難防止用の共鳴ラベルが公知である。そのような共鳴ラベルには、特定の周波数(共振周波数)の電磁波に共鳴する共振回路が形成されている。そして、この共鳴ラベルが取り付けられた商品を不正に店舗外に持ち出そうとすると、店舗等の出口で発せられている共振周波数に一致した周波数の電磁波に、共鳴ラベルの共振回路が共鳴して、共鳴ラベルの存在がセキュリティーシステム等の検出装置により検出される。
【0003】図5乃至図7には、従来の一般的な共鳴ラベルの上面図、下面図及び縦断面図が夫々示されている。それらの図に示すように、従来の共鳴ラベル100においては、誘導コイル130で囲まれるコイル窓部131内にて、絶縁性の担体層110を一対の導体よりなるコンデンサープレート121,123で挟んでコンデンサー部C101を形成している。そして、そのコンデンサー部C101に、担体層110の下面110bに形成してなる誘導コイル130を電気的に接続することにより共振回路を構成している。
【0004】担体層110の上面110a側のコンデンサープレート123と誘導コイル130との電気的な導通は、担体層110の隅部に設けられた貫通孔よりなる短絡部150において、コンデンサープレート123を形成するアルミニウム箔と、誘導コイル130を形成するアルミニウム箔とを直接接触させていることにより確保されている。一方、担体層110の下面110b側のコンデンサープレート121と誘導コイル130との電気的な導通は、コンデンサープレート121を形成するアルミニウム箔と、誘導コイル130を形成するアルミニウム箔とが一続きとなっていることにより確保されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した共鳴ラベル100は、商品などの検出対象物に貼着されて使用される。そのため、商品等によってはその美的外観が損なわれてしまったり、商品等のパッケージに記された注意書き等が被い隠されてしまったりするなどの不都合が生じることがあり、それ故、共鳴ラベル100はできるだけ小さいのが好ましい。また、多品種の商品等への適用や使い捨てという使用形態に鑑みて、共鳴ラベルの小型化、及びそれによりもたらされる共鳴ラベルの低価格化が望まれている。
【0006】しかし、共鳴ラベル100を単に小さくしただけでは、共鳴ラベル100の有効面積(誘導コイル130の平均面積から、誘導コイル130で囲まれるコイル窓部131内に形成されたコンデンサー部C101の面積を差し引いた面積)が減少し、併せて回路の共振周波数特性の尖鋭度を表すQ値も低下してしまい、信号強度が極端に弱くなってしまう。
【0007】従って、サイズの縮小化を図る上では、共鳴ラベルの信号強度をより強める手段を講じる必要があり、その手段として、誘導コイル130の線幅を太くしたり、コイル窓部131の面積を大きくしたり、共鳴ラベル100のサイズを大きくしたりするなどの方法がある。しかし、何れもの方法も、製造コストの著しい増大を招くだけでなく、サイズの縮小化に反するという欠点がある。
【0008】本発明は、上述した点に鑑みなされたもので、その目的は、ラベルのサイズを大きくせずに、簡素な構造で信号強度を強めることのできる共鳴ラベルを提供することにある。
【0009】また、本発明の他の目的は、信号強度等の性能低下を招くことなく、サイズの縮小化を図り得る共鳴ラベルを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る共鳴ラベルは、少なくとも1つの渦巻形状をなす誘導コイルと、少なくとも1つのコンデンサーとからなる共振回路を備えた共鳴ラベルにおいて、前記誘導コイルを、絶縁性の担体層の一方の面に形成し、また、前記コンデンサーを、前記担体層の一方の面に形成され、且つ前記誘導コイルの外側端部に電気的に接続された第1のコンデンサープレートと、前記担体層の他方の面に前記第1のコンデンサープレートに相対して形成された第2のコンデンサープレートとで構成し、該コンデンサーを前記誘導コイルで囲まれるコイル窓部を除く領域に配置するとともに、前記誘導コイルの内側端部と前記第2のコンデンサープレートとを、前記コイル窓部内にて電気的に接続したことを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明に係る共鳴ラベルによれば、コンデンサーを、誘導コイルで囲まれるコイル窓部を除く領域に配置する構成としたため、コイル窓部内にコンデンサーがなくなってコイル窓部の面積が大きくなるので、回路のQ値が大幅に増大し、共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【0012】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【0013】
【実施例】本発明に係る共鳴ラベルの実施例を図1乃至図4に基いて以下に説明する。図1〜図3には、本発明に係る共鳴ラベルの一例が示されており、図1はその上面図であり、図2はその下面図であり、図3はその縦断面図である。図4には、共鳴ラベルの共鳴時の信号強度の周波数特性が示されている。
【0014】この共鳴ラベル1は、図1乃至図3に示すように、少なくとも1つ(本例では1つ)の誘導コイル30と、少なくとも1つ(本例では1つ)のコンデンサーC1とで構成された共振回路を有し、そのコンデンサーC1が、誘導コイル30で囲まれるコイル窓部31以外の領域、具体的には誘導コイル30の外側の側方に配置されているものである。
【0015】誘導コイル30は、絶縁性の担体層10の上面10aに、渦巻形状をなして形成されている。そして、誘導コイル30の内側端部は、後述する第2のコンデンサープレート22との短絡のためにコイル窓部31内に設けられたパッド40に電気的に接続されている。
【0016】コンデンサーC1は、担体層10の上面10aに形成された第1のコンデンサープレート21と、担体層10の下面10bに形成された第2のコンデンサープレート22とで、担体層10を挟むことにより構成されている。
【0017】第1のコンデンサープレート21は、誘導コイル30の外側端部に電気的に接続されている。
【0018】第2のコンデンサープレート22は、担体層10を介して第1のコンデンサープレート21に相対して配置されている。そして、第2のコンデンサープレート22は、誘導コイル30の内側端部の前記パッド40に相対して担体層10の下面10bに形成されたパッド41に、導体部42を介して電気的に接続されている。
【0019】誘導コイル30の内側端部と第2のコンデンサープレート22とは、パッド40,41に設けられた短絡部50を介して、相互に電気的に接続されている。その短絡部50は、例えば、パッド40,41に挟まれた領域内の担体層10に設けられた貫通孔において、それらパッド40,41が、直接接触させられているか、或は導電性を有する接着剤(導電性ペーストなど)を介して相互に電気的に接続されていることにより形成されている。
【0020】これらパッド40,41は、コイル窓部31の大きさに比べて十分に小さく、回路のQ値に悪影響を及ぼさない程度の大きさであるのはいうまでもない。
【0021】なお、前記各コンデンサープレート21,22、前記誘導コイル30、パッド40,41及び導体部42は、いずれも導電性を有しており、特に限定しないが、例えばアルミニウム箔により形成されている。
【0022】ところで、上述した構成の共鳴ラベル1は、商品等に貼着された共鳴ラベル1の共振回路がその共振周波数に一致した周波数の電磁波に共鳴することによって、共鳴ラベル1の存在がセキュリティーシステムにより検出されるものであるが、コンデンサーC1に、絶縁破壊し易い絶縁破壊部(図示せず)を形成しておいてもよい。このようにすれば、キャッシャーを通過した際に、キャッシャーで発生する高エネルギーの電磁波により、絶縁破壊部で絶縁破壊が起こり、共鳴ラベル1の共振回路を無効にすることができる。従って、キャッシャーを通らずに店舗外に不正に持ち出される商品についてのみ、店舗の出口等で発生する電磁波に共鳴ラベル1の共振回路が共鳴して、セキュリティーシステムの警報が鳴るようにすることができる。
【0023】以上のように構成された共鳴ラベル1は例えば以下のようにして製造される。先ず、担体層10の短絡部50を形成する箇所に、パンチなどにより貫通孔を開口させる。続いて、担体層10の上面10a及び下面10bにそれぞれ接着剤を介してパターンの形成されていないアルミニウム箔を貼着する。その際、開口させた貫通孔において、貼着した上下のアルミニウム箔を直接接触させて相互に電気的に接続する。或は、貫通孔に導電性ペースト等を詰めて、それら上下のアルミニウム箔を相互に電気的に接続する。なお、アルミニウム箔の貼着に使用する接着剤が絶縁性を有する場合には、その接着剤が短絡部50の貫通孔内に充填されないように注意する。
【0024】次いで、貼着した上層のアルミニウム箔にさらにフォトレジスト(感光性樹脂)を塗布し、フォトリソグラフィ技術により第1のコンデンサープレート21と誘導コイル30とパッド40のパターンを転写し、エッチングしてアルミニウム箔にそのパターンを形成する。一方、同様にしてフォトリソグラフィ技術及びエッチングにより、下層のアルミニウム箔に第2のコンデンサープレート22と導体部42とパッド41のパターンを形成する。以上の手順によって、共鳴ラベル1が完成する。
【0025】上述した絶縁破壊部を設ける場合には、例えば、予め担体層10のコンデンサーC1に該当する箇所に小さな貫通孔をあけておき、その貫通孔において担体層10の上下のアルミニウム箔同士を絶縁性の接着剤で貼り合わせるようにすればよい。
【0026】なお、上記実施例の説明においては、担体層10について、便宜上、誘導コイル30を設けた面を上面10aとし、その裏側の面を下面10bとしたが、その上下を厳密に区別する必要はない。
【0027】上記実施例によれば、コンデンサーC1を、コイル窓部31を除く領域に配置する構成としたため、コイル窓部31内にコンデンサーがなくなってコイル窓部31の面積が大きくなるので、回路のQ値が大幅に増大し、共鳴ラベル1の信号強度は強くなる。
【0028】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベル1を得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベル1を得ることもできる。
【0029】信号強度が強くなったことは、本発明者らが行った検証の結果からも確認された。図4には、その検証結果として、本実施例の共鳴ラベル1(大きさ:4cm×4cm)と図5乃至図7に示した従来の共鳴ラベル100(大きさ:4cm×4cm)について、共鳴時の信号強度の周波数特性を調べた結果が示されているが、従来例の共振周波数における信号強度を100とすると、本実施例の共鳴ラベル1では共振周波数における信号強度は33%増大して133であった。また、Q値についても、従来例の51.3に対して、本実施例では70.8となり、38%の増大が確認された。つまり、本実施例によれば、Q値が38%増大し、それに対応して信号強度が33%増大したことがわかった。
【0030】ここで、図4に示すように、本実施例と従来例とでは、共振周波数にずれが生じているが、そのずれの原因は、誘導コイル(30,130)とコンデンサー(C1,C101)の設計によるばらつきであり、特に問題の生じない程度のずれ量であると考えられる。
【0031】なお、上記実施例においては、共鳴ラベル1の共振回路は誘導コイル30とコンデンサーC1とから構成されているとしたが、少なくとも1つの誘導コイルと少なくとも1つのコンデンサーが設けられており、コンデンサーがコイル窓部内に配置されていなければ、誘導コイルが2つ以上設けられていてもよいし、コンデンサーも2つ以上設けられていてもよい。
【0032】また、第1のコンデンサープレート21と誘導コイル30とパッド40を一体として形成してもよいし、別々に形成して一体化してもよい。第2のコンデンサープレート22と導体部42とパッド41に付いても同様に、予め一体となっていてもよいし、それらを後から一体化してもよい。さらに、共鳴ラベル1は上記製造手順以外の方法によって製造されてもよいのはいうまでもない。
【0033】
【発明の効果】本発明に係る共鳴ラベルによれば、コンデンサーを、誘導コイルで囲まれるコイル窓部を除く領域に配置する構成としたため、コイル窓部内にコンデンサーがなくなってコイル窓部の面積が大きくなるので、回路のQ値が大幅に増大し、共鳴ラベルの信号強度は強くなる。
【0034】従って、従来と同等の大きさでもって、従来よりも信号強度の強い共鳴ラベルを得ることができ、また従来と同等或は従来よりも強い信号強度を有し、且つ従来よりも小さい共鳴ラベルを得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る共鳴ラベルの一例の上面図である。
【図2】本発明に係る共鳴ラベルの一例の下面図である。
【図3】本発明に係る共鳴ラベルの図1及び図2のIII−IIIにおける縦断面図である。
【図4】本発明に係る共鳴ラベルと従来の共鳴ラベルについて、共鳴時の信号強度の周波数特性を表す特性図である。
【図5】従来の共鳴ラベルの上面図である。
【図6】従来の共鳴ラベルの下面図である。
【図7】従来の共鳴ラベルの図5及び図6のVII−VIIにおける縦断面図である。
【符号の説明】
C1 コンデンサー
1 共鳴ラベル
10 担体層
10a 上面(一方の面)
10b 下面(他方の面)
21 第1のコンデンサープレート
22 第2のコンデンサープレート
30 誘導コイル
31 コイル窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1つの渦巻形状をなす誘導コイルと、少なくとも1つのコンデンサーとからなる共振回路を備えた共鳴ラベルにおいて、前記誘導コイルを、絶縁性の担体層の一方の面に形成し、また、前記コンデンサーを、前記担体層の一方の面に形成され、且つ前記誘導コイルの外側端部に電気的に接続された第1のコンデンサープレートと、前記担体層の他方の面に前記第1のコンデンサープレートに相対して形成された第2のコンデンサープレートとで構成し、該コンデンサーを前記誘導コイルで囲まれるコイル窓部を除く領域に配置するとともに、前記誘導コイルの内側端部と前記第2のコンデンサープレートとを、前記コイル窓部内にて電気的に接続したことを特徴とする共鳴ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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