説明

具材入りホワイトソース

【課題】 具材の充填量のばらつきが小さく、かつ口当たりのよい具材入りホワイトソースを提供する。
【解決手段】 本発明に係る具材入りホワイトソースは、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する。上記具材入りホワイトソースにおいて、前記微粉砕化卵殻の含有量は、0.01〜5%であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材が均一に充填された具材入りホワイトソースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手間をかけずにすぐ喫食できるような食品、例えば、温めるだけで喫食できるような食品が多く見られる。このような製品として、例えば、容器詰めのグラタン、ドリア、ホワイトシチュー等のホワイトソースを用いた製品がある。これらの製品は、ホワイトソースを大量に製し、小分けに充填されるが、具材の入ったホワイトソースを製し充填する場合は、充填前のタンク内で具材が沈降してしまうため、充填した際、具材の量に大きなばらつきが生じるという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1は、所定のガムを含む増粘剤を添加することでスープなどの内容成分の凝集・沈澱・浮上などを有意に抑制できることを開示している。
【0004】
しかしながら、ガム等の増粘剤を添加した具材入りホワイトソースは、増粘剤特有のべたつきが感じられ、風味のよいものではなかった。
【特許文献1】特開2006−109739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、具材の充填量のばらつきが小さく、かつ口当たりのよい具材入りホワイトソースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る具材入りホワイトソースは、
平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する。
【0007】
上記具材入りホワイトソースにおいて、前記微粉砕化卵殻の含有量は、0.01〜5%であることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、具材の充填量のばらつきが小さく、かつ口当たりのよい具材入りホワイトソースを得ることができる。これにより、卵殻の有効利用ならびに具材入りホワイトソースの需要の拡大が期待される。
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る具材入りホワイトソースについて説明する。なお、本実施形態において、「%」は「質量%」を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.具材入りホワイトソース
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースは、ホワイトソースと、具材とを含有する。ホワイトソースは、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する。本発明に係る具材入りホワイトソースは、ホワイトソースそのものの他に、ホワイトソースを用いた食品、たとえばシチュー、グラタン等も含む。
【0011】
以下、本実施の形態に係る具材入りホワイトソースの構成要素について説明する。
【0012】
1.1.ホワイトソース
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースに用いられるホワイトソースは、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻の他に、たとえば、小麦粉、牛乳や生クリーム等の乳原料、バターや固形油脂等の油脂類、食塩、チキンブイヨン、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、砂糖等の糖類、ビタミンE等の酸化防止剤、香辛料、着色料OLE_LINK2、OLE_LINK2香料、保存料等を含んでいることができる。
【0013】
1.2.具材
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースに用いられる具材としては、特に限定されないが、例えば、エビ、ホタテ、カニ等の魚介類、たまねぎ、マッシュルーム、人参、ジャガイモ等の野菜やきのこ類、マカロニ等が挙げられる。
【0014】
具材の含有量は、具材入りホワイトソース全体に対して好ましくは1〜70%、より好ましくは5〜50%である。1%より少ない含有量であると、具材の充填量のばらつきが見られ難く、70%より多い含有量であるとホワイトソースとのバランスが悪いためである。
【0015】
1.3.微粉砕化卵殻
本発明における「微粉砕化卵殻」の「卵殻」とは、鳥類の卵の殻、特に鶏卵の殻をいう。卵殻はその主成分が炭酸カルシウムであり、2%程度のタンパク質を含む。
【0016】
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースに用いられる卵殻(「微粉砕化卵殻」ともいう。)は、原料卵殻そのものあるいは原料卵殻を粗く粉砕した卵殻粉末を、微粉砕化したものである。
【0017】
微粉砕化卵殻の平均粒径は、1μm以下であり、好ましくは0.01μm〜0.6μmである。微粉砕化卵殻の平均粒径が1μm以下であることにより、微粉砕化卵殻に含まれるタンパク質等の成分が露出して、効率よく機能することができる。特に、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.6μm以下であることにより、さらに効果を高めることができる。また、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.01μm未満であると、凝集しやすく、分散性に劣るため、ホワイトソースの全体に分散させることが困難となる場合がある。
【0018】
微粉砕化卵殻は、例えば、振動ミル、ボールミル、シェイカーやハンマーミル、ターボミル、ファインミル、ジェットミル、バンタムミル、グラインダーミル、カッターミル、ビーズミルなどの粉砕機を使用する機械的粉砕により得ることができ、これらの粉砕機を単独もしくは2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
平均粒径が1μm以下であり、かつ、粒度分布が狭い微粉砕化卵殻を得ることができる点で、微粉砕化卵殻は特に、ビーズミルによる湿式粉砕にて粉砕されたものであることが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、スターミルLMZ(アシザワ・ファインテック株式会社製)、OBミル(ターボ工業株式会社製)、スーパーアペックスミル(寿工業株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
ビーズミルを使用して卵殻を平均粒径1μm以下(好ましくは0.01μm〜0.6μm)に湿式粉砕することにより、クリーム状の微粉砕化卵殻含有スラリーが得られる。上記スラリーをそのままホワイトソースに添加することができる。
【0021】
また、上記スラリーを乾燥させて得られた微粉砕化卵殻を使用してもよい。乾燥方法としては特に限定されるものではなく、噴霧乾燥や凍結乾燥など、一般的に行われる方法で実施することができる。また、デキストリン等の賦形剤や、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を、上記スラリーに適宜添加してから乾燥を行ってもよい。
【0022】
微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であることが好ましく、効果により優れている点で、さらに、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、微粉砕化卵殻の粒度の分布状態を示す変動係数は0.1〜0.8であるのが好ましく、0.1〜0.7であるのがより好ましい。微粉砕化卵殻の変動係数が0.1〜0.8であることにより、凝集を抑制することができる。
【0024】
微粉砕化卵殻の含有量は、具材入りホワイトソースに対して0.01%〜5%であることが好ましく、0.05%〜3%であることがより好ましい。上記範囲より少ない含有量とすると、十分な効果が得られず、上記範囲より多い含有量とすると、微粉砕化卵殻の臭い等が具材入りホワイトソースの風味に影響を及ぼす場合があるからである。
【0025】
1.4.具材入りホワイトソースの製造方法
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースは、たとえば以下の製造方法により得られる。
【0026】
まず、ホワイトソースを作製する。ホワイトソースは、たとえば釜にバターを入れ溶かし、小麦粉を加えて炒めてルーを作り、ルーに牛乳、食塩、ホワイトペッパー、チキンブイヨン、ナツメグ、微粉砕化卵殻、清水等を投入し加熱攪拌して作製することができる。
【0027】
次に、具材を調理し、ホワイトソースと混ぜ合わせる。たとえば、撹拌機付き二重釜にバターを入れ溶かし、オニオンスライスを加えソテーした後、白ワイン、マッシュルームスライスを加え加熱攪拌する。その後、撹拌機付き二重釜に前記ホワイトソースを投入し攪拌混合して90℃に達温後、生クリーム、ボイル済のマカロニを加えさらに加熱攪拌することにより、具材入りホワイトソースを得ることができる。得られた具材入りホワイトソースは、包装容器(紙容器、トレー、パウチ等)に小分けされる。また、必要に応じて70℃〜130℃で加熱殺菌を施してもよく、冷凍をしてもよい。なお、すべての具材を充填前のホワイトソースにあらかじめ混合していなくてもよく、例えば具材の個数を包装容器毎に同一にしたい場合には、一部の具材を充填後に混合することができる。
【0028】
2.実施例
次に、本発明を以下の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
2.1.微粉砕化卵殻の調製
本実施例においては、以下の条件にて所定の平均粒径および粒度分布を有するように微粉砕された微粉砕化卵殻を調製した。より具体的には、精製水に卵殻(以下、微粉砕化卵殻と区別するために、「原料卵殻」と表記する。)を分散させた原料卵殻分散液(スラリー)について、以下の条件で湿式ビーズミルを使用して、原料卵殻を湿式粉砕した。
【0030】
2.1.1.原料
(1)原料卵殻(平均粒径:11.0μm((株)全農・キユーピー・エツグステーシヨン製))
(2)精製水
2.1.2.粉砕(湿式粉砕)条件
湿式ビーズミル:スターミルLMZ2(アシザワ・ファインテック(株)製)
ビーズ:ジルコニア製,Φ0.3mm
ビーズ充填率:85%(粉砕室容量に対し);空間率49%
ローター周速:12m/s
【0031】
2.1.3.微粉砕化卵殻の調製方法
精製水8kgをビーズミルに連結したミキシングタンクに仕込み、原料卵殻2kgを投入して、湿式ビーズミルの循環運転(ミルで粉砕されたスラリーをタンクにリターン)を行うことにより、微粉砕化卵殻含有スラリーを調製した。
【0032】
湿式ビーズミルによる粉砕処理を所定時間(5,15,60分)行うことにより、粒径の異なる微粉砕化卵殻含有スラリー(微粉砕化卵殻1〜3)を得た。
【0033】
2.1.4.平均粒径および粒度分布測定
試料(微粉砕化卵殻含有スラリー)0.3gを精製水10gに分散させて1分間超音波を照射した後、粒径分析計に供した。分散剤を添加する際は超音波照射前に2滴滴下した。
【0034】
また、原料卵殻の粒度分布を測定する場合、まず、原料卵殻0.1gを精製水10gに分散させ、この分散液4gを精製水20gに分散させた後、超音波を照射して供試検体とした。
【0035】
粒度分布測定は、装置内蔵の超音波照射機(3分間、40W)を使用して行った。なお、平均粒径はメジアン径とした。粒度分布測定における測定装置および測定条件は以下の通りである。
【0036】
粒度分布計:マイクロトラックMT3300EXII(日機装(株));レーザ回折式
屈折率:1.68(重炭酸カルシウムの文献値);水(分散媒)1.33
分散剤:アロンA−6330(ポリカルボン酸系重合体、東亜合成(株)製)
微粉砕化卵殻1〜3の平均粒径はそれぞれ、0.12μm(粒径の実測範囲:0.03〜0.58μm)、0.59μm(粒径の実測範囲:0.19〜7.78μm)、0.94μm(粒径の実測範囲:0.45〜7.78μm)であり、これらの変動係数(CV)はそれぞれ0.70、0.67、0.57であった。
【0037】
また、これら微粉砕化卵殻の粒度分布はいずれも、粒径1μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径10μm以上の割合が5%以下であった。なかでも、微粉砕化卵殻の平均粒径が0.12μmである微粉砕化卵殻の粒度分布は、粒径0.5μm以下の割合が50%以上であり、かつ、粒径2μm以上の割合が5%以下であった。
【0038】
以下、平均粒径が0.12μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻1とし、平均粒径が0.59μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻2とし、平均粒径が0.94μmの微粉砕化卵殻を微粉砕化卵殻3として、実験を行った。
【0039】
2.2.具材入りホワイトソースの製造
2.2.1.実施例1〜3
以下の工程により、実施例1〜3に係る具材入りホワイトソースを製造した。
【0040】
まず、釜にバターを入れ溶かし、小麦粉を加えて炒めてルーを作りそこに牛乳、食塩、ホワイトペッパー、チキンブイヨン、ナツメグ、微粉砕化卵殻、清水を投入し加熱攪拌してホワイトソースを製した。
【0041】
次に、撹拌機付き二重釜にバターを入れ溶かし、オニオンスライスを加えソテーした後、白ワイン、マッシュルームスライスを加え加熱攪拌した。ここで前記ホワイトソースを投入し攪拌混合して90℃に達温後、生クリーム、ボイル済のマカロニを加えさらに加熱攪拌し、具材入りホワイトソース100kgを得た。得られた具材入りホワイトソースを250gずつ紙容器に充填した。
【0042】
各材料の配合割合は、以下のとおりである。
【0043】
(1)ホワイトソース
ホワイトソースは、全体の58%とした。ホワイトソース58%中の配合割合は以下のとおりである。
【0044】
バター 2%
小麦粉 3.5%
牛乳 40%
食塩 0.5%
ホワイトペッパー 0.1%
チキンブイヨン 1%
ナツメグ 0.1%
微粉砕化卵殻 1%
清水 残 余
(2)全体
以下の材料の合計が100%となった。
【0045】
ホワイトソース 58%
バター 3%
オニオンスライス 7%
白ワイン 2%
マッシュルームスライス 7%
生クリーム 13%
マカロニ 10%
なお、実施例1〜3において用いた微粉砕化卵殻は表1に示すとおりである。
【0046】
2.2.2.比較例1〜4
実施例1〜3において用いた微粉砕化卵殻にかえて、比較例1では、原料卵殻(平均粒径:11.0μm((株)全農・キユーピー・エツグステーシヨン製))を用い、比較例2では、炭酸カルシウム(平均粒径:13.4μm(関東化学(株)製、特級))を用い、比較例3では、キサンタンガム(商品名「エコーガム」(大日本製薬(株)製))を用いて、実施例1〜3と同様な方法で具材入りホワイトソースを製した。なお、実施例1〜3の具材入りホワイトソースの粘度とほぼ同じにするため、比較例3のキサンタンガムの配合量は、0.1%とし、得られたソースの粘度は8.5Pa・s(BH型粘度計、ローターNo.3×10rpm,55℃)であった。
【0047】
また、比較例4では、実施例1〜3において用いた微粉砕化卵殻を含有させないで、それ以外は実施例1〜3と同様に具材入りホワイトソースを製した。
【0048】
2.3.試験例1
実施例1〜3および比較例1〜4に係る具材入りホワイトソースの具材の充填量のばらつきの程度および風味の違いについて評価した。具材入りホワイトソースの具材の充填量のばらつきの程度については、以下の4段階で評価した。
【0049】
<評価>
◎:ばらつきが大変小さい。
【0050】
○:ばらつきが小さい。
【0051】
△:ばらつきがやや大きいが問題のない程度である。
【0052】
×:ばらつきが大変大きい。
【0053】
試験例1の評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1によれば、具材入りホワイトソースが平均粒径が1μm以下の微粉砕化卵殻を含有することによって、具材の充填量のばらつきが小さく、かつ口当たりの大変よい具材入りホワイトソースを得ることができることが確認された。特に、平均粒径が0.6μm以下の微粉砕化卵殻を用いることによって、具材の充填量のばらつきが大変小さく、風味の大変良い具材入りホワイトソースを得ることができることが確認された。
【0056】
2.4.試験例2
試験例2では、表2に示すように、微粉砕化卵殻1の含有量の異なる実施例1,4〜8および比較例4に係る具材入りホワイトソースの具材の充填量のばらつきの程度および風味について評価した。具材入りホワイトソースの具材の充填量のばらつきの程度については、上記4段階で評価した。
【0057】
具体的には、実施例1における微粉砕化卵殻1の含有量1%にかえて、実施例4〜9では、微粉砕化卵殻1の含有量をそれぞれ5%、3%、0.1%、0.05%、0.01%とした。
【0058】
【表2】

【0059】
表2によれば、微粉砕化卵殻の含有量を具材入りホワイトソースに対して0.01%以上5%以下とすることによって、具材の充填量のばらつきに問題のない程度の具材入りホワイトソースを得ることができることが確認された。特に、微粉砕化卵殻の含有量を具材入りホワイトソースに対して0.1%以上とすることによって、具材の充填量のばらつきが大変小さく、かつ口当たりの大変良い具材入りホワイトソースを得ることができることが確認された。
【0060】
ただし、実施例4に係る具材入りホワイトソースについては、卵殻特有の臭いがやや感じられた。
【0061】
3.作用効果
本実施の形態に係る具材入りホワイトソースは、平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻とを含有する。これにより、具材の充填量のばらつきが大変小さく、かつ口当たりの大変良い具材入りホワイトソースを得ることができるため、需要の拡大を図ることができる。また、卵殻の有効利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1μm以下の微粉砕化卵殻を含有する、具材入りホワイトソース。
【請求項2】
前記微粉砕化卵殻の含有量は、当該具材入りホワイトソースの全体に対して0.01〜5%である、請求項1に記載の具材入りホワイトソース。

【公開番号】特開2009−124949(P2009−124949A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300280(P2007−300280)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】