説明

内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム及び方法

【課題】内圧防爆構造を有する多関節ロボットにおける保護気体の圧力低下に伴うインターロック動作の際にロボットアームの重力方向の降下を防止する。
【解決手段】本発明の多関節ロボットの制御システムは、多関節ロボット筐体内の保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する圧力検出部(102)と、圧力検出部により保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低いことが検出されたとき、サーボモータ(M1〜M6)及びブレーキ(Br1〜Br6)への給電を停止する第1のインターロック機構(250)と、第1のインターロック機構が動作した後に、サーボモータ、ブレーキ及び位置検出器(E1〜E6)への給電を一斉に停止するとともに、位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断する第2のインターロック機構(260)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内圧防爆構造を有する多関節ロボットは、ロボット筐体を大気圧よりも高い保護気体を充填させる内圧容器としており、該内圧容器内にアームの各関節を駆動するサーボモータなどの電気機器を収納することにより、該内圧容器外部の爆発性雰囲気と該内圧容器に収納された電気機器とを分離するように構成されている。
【0003】
ところで、アームの姿勢や手首位置が静止しており多関節ロボットに動力が供給されてないように見えても、実際に多関節ロボットは動作を停止しておらず、サーボ制御によってアームの重力方向の降下を防ぐように補正しているので、多関節ロボットに動力が供給されている状態である。例えば、特許文献1には、ティーチペンダントによるオンラインティーチング時の小休止や、スタンバイのための待ち時間の間にモータ動力スイッチを遮断してブレーキが効いた後、再度、モータ動力を供給してブレーキが外れたときには、自重トルク等によってアームは重力方向に降下するので、このような降下を防止すべく、ロボット位置指令値に降下補償量を加えることが開示されている。
【0004】
このように多関節ロボットに動力が供給されている状態で、ロボット筐体(内圧容器)内の保護気体の圧力が低下すれば、内圧防爆構造の保護が得られなくなるので、多関節ロボットへのすべての給電を直ちに停止するという指針(工場電気設備防爆指針)が定められている。例えば、特許文献2には、内圧容器内の保護気体の圧力を検出する圧力検出器が設けられ、この圧力検出器により検出された保護気体の圧力が所定の閾値圧力以下に低下した場合には、多関節ロボットへの給電を停止することが開示されている。なお、特許文献3には、このような仕組みの一例として、防爆構造を有する装置内の圧力の上限値及び下限値を検出する圧力検出器が設けられ、装置内の圧力が下限値まで低下したこと及び上限値まで上昇したことが検出されたときには、装置の運転を完全に停止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−138583号公報
【特許文献2】特開平4−217489号公報
【特許文献3】特開平4−298230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、多関節ロボットへのすべての給電を停止するとき、アームの重力方向の降下を防止するためにブレーキが効くことになるが、ブレーキは機械部品であるがゆえに、ブレーキへの給電を停止してから実際にブレーキが効くまでには約10msecの遅れ時間が発生する。このため、サーボ制御によってアームの姿勢や手首位置が維持されている状態で、ロボット筐体内の保護気体の圧力が低下すると、上記のようなブレーキが効くまでの遅れ時間の間にアームが重力方向に降下してしまい、アームやロボット先端に取り付けたガン等がワークや基台に接触するおそれが生じる。なお、特許文献1の場合、モータ動力スイッチを遮断してブレーキが効いた後のアームの重力方向の降下を防止するための技術であり、モータ動力スイッチを遮断してブレーキが効き始めるまでの間のアームの重力方向の降下を防止することができない。特許文献2、3においても、ブレーキが効くまでの遅れ時間の間に、アームが重力方向に降下する問題について開示も示唆もない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内圧防爆構造を有する多関節ロボットにおける保護気体の圧力低下に伴うインターロック動作の際にロボットアームの重力方向の降下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある形態(aspect)に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムは、大気圧よりも高圧の保護気体が充填される多関節ロボット筐体内に、多関節ロボットの各関節を構成するサーボモータと、当該サーボモータの回転位置を検出する位置検出器と、当該サーボモータの回転を制動するブレーキと、を具備した内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムであって、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する圧力検出部と、前記圧力検出部により前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことが検出されたとき、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止する第1のインターロック機構と、前記第1のインターロック機構が動作した後に、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止することに加えて、前記位置検出器への給電を停止するとともに前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断する第2のインターロック機構と、を備えるものである。
【0009】
この構成によれば、多関節ロボットの姿勢及び手首位置を維持するようにサーボ制御が実行されている場合に、多関節ロボット筐体内の保護気体の圧力が規定の圧力から低下していき第1の閾値圧力まで低下したときには、まず、第1のインターロック機構が作動してサーボモータ及びブレーキへの給電を停止する。ただし、ブレーキは機械部品であるがゆえに、ブレーキへの給電を停止してから実際にブレーキが効くまでには遅れ時間がある。しかしながら、多関節ロボットの制御装置から位置検出器への給電及び位置検出器から該多関節ロボットの制御装置への位置検出信号の供給は継続しているので、該多関節ロボットの制御装置は、位置検出器からの位置検出信号に基づいて、多関節ロボットの姿勢及び手首位置を維持するようにサーボ制御を継続することができる。さらに、このようにサーボ制御を継続している最中に、ブレーキが漸く効き始めてサーボモータの回転が制動されるので、第2のインターロック機構によって多関節ロボットの制御装置から位置検出器への給電を停止するともに位置検出器から該多関節ロボットの制御装置への位置検出信号の供給を遮断することができる。これにより、多関節ロボットの制御装置から多関節ロボットへのすべての給電が停止されるので、多関節ロボット筐体内に配設された点火源となり得るサーボモータ、ブレーキ及び位置検出器のすべては受電されない状態となり、内圧防爆構造の指針として要請されるインターロック動作が完結することとなる。
【0010】
前記内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムであって、交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記整流器により変換された直流電力を平滑化する平滑用キャパシタと、前記平滑用キャパシタにより平滑化された直流電力により前記サーボモータを駆動する駆動部と、前記位置検出器から供給された位置検出信号に基づいて前記サーボモータをサーボ制御する制御部と、前記整流器の交流側に設けられ、前記サーボモータへの給電を停止するか否かを切り替える第1のスイッチと、前記ブレーキへの給電を停止するか否かを切り替える第2のスイッチと、前記位置検出器への給電を停止するか否かを切り替える第3のスイッチと、前記位置検出器から前記制御部への位置検出信号の供給を遮断するか否かを切り替える第4のスイッチと、を備え、前記第1のインターロック機構は、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのみを制御するように構成され、前記第2のインターロック機構は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、及び前記第4のスイッチのすべてを制御するように構成される、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1のインターロック機構が作動してサーボモータ及びブレーキへの給電を停止してからブレーキが実際に効くまでの遅れ時間の間に、サーボモータを駆動する際に平滑用キャパシタに充電された電圧をサーボモータの動力源として、位置検出器から供給された位置検出信号に基づいて、多関節ロボットの姿勢及び手首位置を維持するサーボ制御を継続することができる。
【0012】
前記内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムであって、前記圧力検出部は、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第1の圧力検出器であり、前記第1のインターロック機構は、前記第1の圧力検出器から前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出した検出信号を受けると、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止するよう構成され、前記第2のインターロック機構は、前記第1の圧力検知器からの前記検出信号を遅延する遅延回路を備え、且つ前記第1の圧力検知器から出力されて前記遅延回路で遅延された前記検出信号を受けると、前記サーボモータ、前記ブレーキ及び前記位置検出器への給電を一斉に停止するとともに、前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断するよう構成されている、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、1つの圧力検出器でシステム構成を簡素化することができる。
【0014】
前記内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムであって、前記圧力検出部は、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第1の圧力検出器と、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低い第2の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第2の圧力検出器と、を備え、前記第1のインターロック機構は、前記第1の圧力検出器から前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出した検出信号を受けると、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止するよう構成され、前記第2のインターロック機構は、前記第2の圧力検知器からの前記検出信号を受けると、前記サーボモータ、前記ブレーキ及び前記位置検出器への給電を一斉に停止するとともに、前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断するよう構成されているとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、2つの圧力検出器を用いて高精度なシステムを構築することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明のほかの形態(aspect)に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御方法は、大気圧よりも高圧の保護気体を充填させる多関節ロボット筐体内に、多関節ロボットの各関節を構成するサーボモータと、当該サーボモータの回転位置を検出する位置検出器と、当該サーボモータの回転を停止させるブレーキと、を具備した内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御方法であって、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出し、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出したとき、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止し、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止した後に、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止することに加えて、前記位置検出器への給電を停止するとともに前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断する、ものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内圧防爆構造を有する多関節ロボットにおける保護気体の圧力低下に伴うインターロック動作の際にロボットアームの重力方向の降下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムの構成例を示したブロック図である。
【図2】図2は図1に示す制御システムの詳細な構成例を示したブロック図である。
【図3】図3は内圧防爆構造を有する多関節ロボットの断面構造例を示した断面図である。
【図4】図4は本発明におけるインターロック動作例を説明するための主要変数の波形図である。
【図5】図5は比較形態のインターロック動作例を説明するための主要変数の波形図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムの構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、特に言及しない場合にはその重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[システム構成例]
図1は、本発明の実施の形態1に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムの構成例を示したブロック図である。図2は、図1に示す制御システムの詳細な構成例を示したブロック図である。図3は、内圧防爆構造を有する多関節ロボットの断面構造例を示した断面図である。
【0020】
図1に示す制御システムでは、爆発性雰囲気が存在する危険場所に内圧防爆構造を有する多関節ロボット100(以下では、単に多関節ロボット100という)が設置され、非危険場所に制御装置200が設置され、危険場所と非危険場所とが相互に連通しないように仕切壁が設置されている。
【0021】
多関節ロボット100は、ロボット筐体101を大気圧よりも高い保護気体を充填させる内圧容器として構成され、且つ該内圧容器の外部の爆発性雰囲気と該内圧容器に収納した電気機器とを分離するように構成されている。多関節ロボット100は、このように構成されていればよく、これ以外は特に限定されない。以下では、多関節ロボット100として6軸の関節ロボットを例示する。この場合、内圧容器に収納する電気機器は、多関節ロボット100の各関節JT1〜JT6を構成するサーボモータM1〜M6と、サーボモータM1〜M6の回転位置を検出する位置検出器E1〜E6と、サーボモータM1〜M6の回転を制動するブレーキBr1〜Br6と、圧力検出器102とである。なお、位置検出器E1〜E6と制御装置200との間は位置検出器ケーブルL0を介して接続され、サーボモータM1〜M6と制御装置200との間はモータケーブルL1を介して接続され、ブレーキBr1〜Br6と制御装置200との間はブレーキケーブルL2を介して接続される。位置検出器ケーブルL0は、制御装置200から位置検出器E1〜E6に給電するとともに、位置検出器E1〜E6から制御装置200に位置検出信号を供給するためのケーブルである。モータケーブルL1は、制御装置200からサーボモータM1〜M6に給電するためのケーブルである。ブレーキケーブルL2は、制御装置200からブレーキBr1〜Br6に給電するためのケーブルである。
【0022】
ロボット筐体101には給気管302及び排気管303が連結されている。ロボット筐体101内には非危険場所に設置された空気供給ポンプ300から給気管302を介して保護気体が供給される。また、ロボット筐体101内に保護気体供給前に浸入していた爆発性気体が排気管303及び掃気用自動開閉弁104を介して危険場所へ排気される。ロボット筐体101内の排気管303にはロボット筐体101内の保護気体の圧力を検出するための圧力検出器102が設けられている。本実施の形態では、圧力検出器102は検出圧力が第1の閾値圧力Th1以下となるときにオフ出力からオン出力に切り替わるように構成されている。また、第1の閾値圧力Th1は、内圧防爆構造の指針として要請される保護気体の下限圧力よりも若干高い圧力とする。
【0023】
多関節ロボット100は、先端に設けられた手首と所定の基端から当該手首に向かって順に設けられた6つの関節JT1〜JT6とを具備し、且つ6つの関節JT1〜JT6が第1乃至第6回転軸A1〜A6をそれぞれ有する6軸ロボットとして構成されている。基台2には、旋回台3、アーム部材4〜7及びアタッチメント9がこの順に連設されている。なお、アタッチメント9のフランジ面にはツール部材11が着脱可能に取り付けられている。基台2からアタッチメント9までの連設された部材2〜7,9は互いに相対回転可能となるよう連結されている。以下では、このように6つの関節JT1〜JT6によって互いに連設された部材群2〜7,9を、ロボットアームと定義する。
【0024】
第1乃至第6関節JT1〜JT6それぞれに対応づけられるように、サーボモータM1〜M6、位置検出器E1〜E6、及びブレーキBr1〜Br6がそれぞれ設けられる。サーボモータM1〜M6としては、例えばDCサーボモータが採用される。位置検出器E1〜E6としては、例えばエンコーダ(encoder)やレゾルバ(resolver)が採用される。ブレーキBr1〜Br6としては、例えば給電により励磁されるとブレーキが外れ、逆に励磁されないとブレーキが効く励磁作動電磁ブレーキが採用される。各サーボモータM1〜M6を駆動することにより、第1乃至第6関節JT1〜JT6においてそれぞれ許容される第1乃至第6回転軸A1〜A6周りの回転が行われる。なお、各サーボモータM1〜M6は互いに独立して駆動することが可能である。また、各サーボモータM1〜M6が駆動されると、各位置検出器E1〜E6によって各サーボモータM1〜M6の第1乃至第6回転軸A1〜A6周りの回転位置の検出が行われる。
【0025】
制御装置200は、電力変換部210、駆動部230及び制御部240を備え、第1乃至第6関節JT1〜JT6に具備されるサーボモータM1〜M6それぞれに対し、ツール部材11を任意の位置及び姿勢に任意の経路に沿って移動させるサーボ制御を行う。電力変換部210は、交流電力を直流電力に変換する整流器211と、整流器211により変換された直流電力を平滑化する平滑用コンデンサ212と、を備える交流−直流変換器である。例えば、サイリスタ整流器などによって構成されている。駆動部230は、多関節ロボット100のサーボモータM1〜M6を駆動する直流−交流変換器である。例えば、フルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路から成るインバータで構成されている。制御部240は、制御装置200全体の制御を司るものである。例えば、マイクロコントローラ、CPU、MPU、PLC、DSP、ASIC又はFPGAなどで構成されている。なお、制御部240は、互いに協働して分散制御する複数の制御器によって構成されていてもよい。
【0026】
制御装置200は、第1のインターロック機構250と、第2のインターロック機構260と、整流器211の交流側に設けられ、モータ電源ACMからサーボモータM1〜M6への給電を停止するか否かを切り替える第1のスイッチSWA1と、ブレーキ電源DCBからブレーキBr1〜Br6への給電を停止するか否かを切り替える第2のスイッチSWA2と、位置検出器電源DCEから位置検出器E1〜E6への給電給電を停止するか否かを切り替える第3のスイッチSWA3と、位置検出器E1〜E6から制御部240への位置検出信号の供給を遮断するか否かを切り替える第4のスイッチSWBと、を備える。
【0027】
第1のインターロック機構250は、圧力検出器102により検出された保護気体の圧力が第1の閾値圧力Th1(例えば、4(kPa))よりも低いことが検出されたとき、サーボモータM1〜M6及びブレーキBr1〜Br6への給電を停止するように構成されている。なお、ブレーキBr1〜Br6への給電が停止すると、サーボモータM1〜M6の回転軸に制動がかかる(ブレーキが効く)ようになる。具体的には、第1のインターロック機構250は、圧力検出器102からの圧力検出信号が入力されるインタフェースであって第1のインターロック機構250を本質安全防爆構造とさせるバリア251と、圧力検出器102からバリア251を介して入力された圧力検出信号がオフ出力からオン出力に切り替わる旨(つまり、ロボット筐体101内の保護気体の検出圧力が第1の閾値圧力Th1以下となるとき)を検出する検出回路252と、検出回路252により圧力検出信号がオン出力になったことを検出したときに第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2をオンからオフに切り替えるように制御するインターロック回路253とを備えている。
【0028】
第2のインターロック機構260は、第1のインターロック機構250が動作した後に、制御装置200からサーボモータM1〜M6、ブレーキBr1〜Br6への給電を停止することに加えて、制御装置200から位置検出器E1〜E6への給電を停止するとともに位置検出器E1〜E6から制御装置200への位置検出信号の供給を遮断するように構成されている。つまり、第2のインターロック機構260は、内圧防爆構造の指針の要請によって備えられたものである。具体的には、第2のインターロック機構260は、第1のインターロック機構250によるインターロック動作(第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2をオフ)が実行された後に所定の遅れ時間Δtを計数して第1のインターロック機構250によるインターロック動作が実行された旨を表す信号を出力する遅延回路264と、遅延回路264から信号が出力されたときに、第1のスイッチSWA1、第2のスイッチSWA2、第3のスイッチSWA3、及び第4のスイッチSWBを一斉にオンからオフに切り替えるように制御するインターロック回路263とを備えている。遅延回路264は、例えばオンディレイ/オフディレイの遅れ時間を持つ遅延リレーにより構成される。また、遅れ時間は、ブレーキBr1〜Br6への給電を停止してから実際にブレーキBr1〜Br6が効くまでの時間よりも長く、且つサーボモータM1〜M6への給電を停止してから平滑用コンデンサ212の平滑化の際の充電電圧(以下、残チャージ電圧という)によるサーボモータM1〜M6の動力が消失されるまでの時間よりも短くなるように設計されている。なお、ロボット筐体101内の保護気体の圧力が低下局面にあるとき、第1のインターロック機構250によって第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2は既にオンからオフに切り替わっているので、第2のインターロック機構260による第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2のオフ指令は無効となる(無視される)。
【0029】
[インターロック動作例]
図4及び図5を用いて図1乃至図3に示した制御装置200によるインターロック動作例を説明する。図4は、本発明におけるインターロック動作例を説明するための主要変数の波形図である。図5は、本発明の比較形態のインターロック動作例を説明するための主要変数の波形図である。
【0030】
まず、図5に示す比較形態のインターロック動作例を説明する。前提として、第1のスイッチSWA1、第2のスイッチSWA2、第3のスイッチSWA3及び第4のスイッチSWBはすべてオンしており、ロボットアームの姿勢及び手首位置が維持されるようにサーボ制御が継続されている場合とする。さらに、ロボット筐体101内の保護気体の圧力が内圧防爆構造上の規定圧力(例えば、大気圧(101.325kPa)+50Pa)から低下局面にあるものとする。
【0031】
以上のような前提が成立する場合において、ロボット筐体内の保護気体の圧力が本発明における第1の閾値圧力Th1(例えば4kPa)よりもさらに低い第2の閾値圧力Th2(例えば3kPa)にまで低下したことが検出されたとき、ロボット筐体内の全ての電気機器への給電が停止する。このとき、サーボモータの回転軸を制動するブレーキが効くことになるが、ブレーキは機械部品であるがゆえに、ブレーキへの給電を停止してから実際にブレーキが効くまでには遅れ時間Δtが発生する。また、ロボット筐体内の全ての電気機器への給電が停止したとき、位置検出器によるサーボモータの回転位置の検出ができなくなるので、ロボットアームの姿勢及び手首位置が維持されるようにサーボ制御が継続できなくなる。このため、ブレーキへの給電を停止してからブレーキが効くまでの遅れ時間Δtの間に、ロボットアームの手首位置が重力方向に降下することになる。そして、ブレーキが漸く効き始めたときには、ロボットアームの手首位置はすでに重力方向に偏位Δp降下する。
【0032】
つぎに、図4に示す本発明に係るインターロック動作例を説明する。ここで、第1のスイッチSWA1、第2のスイッチSWA2、第3のスイッチSWA3及び第4のスイッチSWBはすべてオンしており、ロボットアームの姿勢及び手首位置が維持されるようにサーボ制御が継続されている場合とする。さらに、ロボット筐体101内の保護気体の圧力が内圧防爆構造上の規定圧力から低下局面にあるものとする。
【0033】
以上のような前提が成立する場合において、圧力検出器102によって保護気体の圧力が第1の閾値圧力Th1にまで低下したことが検出されたとき、第1のインターロック機構250によって第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2をオンからオフに切り替えるインターロック動作が実行される。つまり、サーボモータM1〜M6及びブレーキBr1〜Br6への給電が停止された結果、ブレーキBr1〜Br6によってサーボモータM1〜M6の回転軸には制動がかかる(ブレーキが効く)ようになる。但し、ブレーキBr1〜Br6は機械部品であるがゆえに、ブレーキBr1〜Br6への給電を停止してから実際にブレーキが効くまでには約10msecの遅れ時間が発生する。このため、制御装置200は、つぎのような平滑用コンデンサ212の充電電圧を利用したサーボ制御を継続する。
【0034】
具体的には、第3のスイッチSWA3及び第4のスイッチSWBはオンしているので、制御装置200と位置検出器E1〜E6との間で位置検出器ケーブルL0を介した給電及び位置検出信号の送受信が継続している。さらに、整流器211の平滑用コンデンサ212は平滑化の際に充電されているので、第1のスイッチSWA1をオフにしたときに平滑用コンデンサ212の残チャージ電圧によってサーボモータM1〜M6への給電が直ちに停止しない。したがって、位置検出器E1〜E6から供給される位置検出信号と平滑用コンデンサ212の残チャージ電圧とを利用することで、ロボットアームの姿勢及び手首位置を維持するようにサーボ制御を継続することができる。これにより、自重トルクやツール部材11の重力トルク等によりロボットアームの手首位置が重力方向に降下することを防止できる。
【0035】
さらに、第1のインターロック機構250のインターロック動作によって第1のスイッチSWA1及び第2のスイッチSWA2がオンからオフに切り替わってから遅延回路264によって遅れ時間Δtが計数されたときに、第2のインターロック機構260のインターロック動作によって残りの第3のスイッチSWA3及び第4のスイッチSWBがオンからオフに切り替わる。この結果、制御装置200から多関節ロボット100へのすべての給電給電が停止されるので、ロボット筐体101内に配設された点火源となり得るサーボモータM1〜M6、ブレーキBr1〜Br6及び位置検出器E1〜E6のすべては受電されない状態となり、内圧防爆構造の指針として要請されるインターロック動作が完結する。
【0036】
また、第2のインターロック機構260のインターロック動作によって第3のスイッチSWA3及び第4のスイッチSWBがオフになったとき、制御装置200と位置検出器E1〜E6との間で位置検出器ケーブルL0を介した給電給電及び位置検出信号の送受信が停止するので、ロボットアームの姿勢及び手首位置を維持するようにサーボ制御を継続することができなくなる。なお、上記のとおり、遅れ時間Δtは、ブレーキBr1〜Br6への給電を停止してから実際にブレーキBr1〜Br6が効くまでの時間よりも長く、且つサーボモータM1〜M6への給電を停止してから平滑用コンデンサ212の残チャージ電圧によるサーボモータM1〜M6の動力が消失されるまでの時間よりも短くなるように設計される。このため、平滑用コンデンサ212の残チャージ電圧によるサーボ制御が継続できなくなっても、ブレーキBr1〜Br6によるサーボモータM1〜M6の回転軸の制動が漸くかかることになるので、ロボットアームの手首位置が重力方向に降下することを防止できる。
【0037】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2に係る内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムの構成例を示したブロック図である。
【0038】
図2に示す実施の形態1のシステム構成例と相違する点は、第1の閾値圧力Th1を持ち、ロボット筐体101内の保護気体の圧力が第1の閾値圧力Th1よりも低下したか否かを検出する第1の圧力検出器102の他に、第1の閾値圧力Th1よりも低い第2の閾値圧力Th2を持ち、ロボット筐体101内の保護気体の圧力が第2の閾値圧力Th2よりも低下したか否かを検出する圧力検出器103をロボット筐体101内に備えたことと、第2のインターロック機構260を第1のインターロック機構250と同じ構成にしたこととである。
【0039】
圧力検出器103が持つ第2の閾値圧力Th2は、内圧防爆構造の指針として要請されるロボット筐体101内の保護気体の下限圧力である。第2のインターロック機構260は、圧力検出器103からの圧力検出信号が入力されるインタフェースであって第2のインターロック機構250を本質安全防爆構造とさせるバリア261と、圧力検出器103からバリア261を介して入力された圧力検出信号がオフ出力からオン出力に切り替わる旨(つまり、ロボット筐体101内の保護気体の検出圧力が第2の閾値圧力Th2以下となるとき)を検出する検出回路262と、検出回路262により圧力検出信号がオン出力になったことを検出したときに第1のスイッチSWA1、第2のスイッチSWA2、第3のスイッチSWA3、及び第4のスイッチSWBを一斉にオンからオフに切り替えるように制御するインターロック回路263とを備えている。
【0040】
なお、図6に示すシステム構成例では、2つの圧力検出器102及び103を具備した構成を採用しているが、2つの閾値圧力を持つことが可能な1つの圧力検出器を具備して構成してもよい。このような構成であっても実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、内圧防爆構造を有する多関節ロボットにおける保護気体の圧力低下に伴うインターロック動作の際にロボットアームの重力方向の降下を防止する点で有用である。
【符号の説明】
【0043】
JT1〜JT6…関節
M1〜M6…サーボモータ
Br1〜Br6…ブレーキ
E1〜E6…位置検出器
ACM…モータ電源
DCB…ブレーキ電源
DCE…位置検出器電源
L0…位置検出器ケーブル
L1…モータケーブル
L2…ブレーキケーブル
SWA1…第1のスイッチ
SWA2…第2のスイッチ
SWA3…第3のスイッチ
SWB…第4のスイッチ
Th1…第1の閾値圧力
Th2…第2の閾値圧力
100…多関節ロボット
101…ロボット筐体
102…圧力検出器(第1の圧力検出器)
103…圧力検出器(第2の圧力検出器)
2…基台
3…旋回台
4〜7…アーム部材
9…アタッチメント
11…ツール部材
200…制御装置
210…電力変換部
211…整流器
212…平滑用コンデンサ
230…駆動部
240…制御部
250…第1のインターロック機構
251…バリア
252…検出回路
253…インターロック回路
260…第2のインターロック機構
261…バリア
262…検出回路
263…インターロック回路
264…遅延回路
300…空気供給ポンプ
302…給気管
303…排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも高圧の保護気体が充填される多関節ロボット筐体内に、多関節ロボットの各関節を構成するサーボモータと、当該サーボモータの回転位置を検出する位置検出器と、当該サーボモータの回転を制動するブレーキと、を具備した内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システムであって、
前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部により前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことが検出されたとき、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止する第1のインターロック機構と、
前記第1のインターロック機構が動作した後に、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止することに加えて、前記位置検出器への給電を停止するとともに前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断する第2のインターロック機構と、
を備える内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム。
【請求項2】
交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器により変換された直流電力を平滑化する平滑用キャパシタと、
前記平滑用キャパシタにより平滑化された直流電力により前記サーボモータを駆動する駆動部と、
前記位置検出器から供給された位置検出信号に基づいて前記サーボモータをサーボ制御する制御部と、
前記整流器の交流側に設けられ、前記サーボモータへの給電を停止するか否かを切り替える第1のスイッチと、
前記ブレーキへの給電を停止するか否かを切り替える第2のスイッチと、
前記位置検出器への給電を停止するか否かを切り替える第3のスイッチと、
前記位置検出器から前記制御部への位置検出信号の供給を遮断するか否かを切り替える第4のスイッチと、を備え、
前記第1のインターロック機構は、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチのみを制御するように構成され、
前記第2のインターロック機構は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、及び前記第4のスイッチのすべてを制御するように構成される、請求項1に記載の内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム。
【請求項3】
前記圧力検出部は、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第1の圧力検出器であり、
前記第1のインターロック機構は、前記第1の圧力検出器から前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出した検出信号を受けると、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止するよう構成され、
前記第2のインターロック機構は、前記第1の圧力検知器からの前記検出信号を遅延する遅延回路を備え、且つ前記第1の圧力検知器から出力されて前記遅延回路で遅延された前記検出信号を受けると、前記サーボモータ、前記ブレーキ及び前記位置検出器への給電を一斉に停止するとともに、前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断するよう構成されている、請求項1又は2に記載の内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム。
【請求項4】
前記圧力検出部は、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第1の圧力検出器と、前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低い第2の閾値圧力よりも低下したか否かを検出する第2の圧力検出器と、を備え、
前記第1のインターロック機構は、前記第1の圧力検出器から前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出した検出信号を受けると、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止するよう構成され、
前記第2のインターロック機構は、前記第2の圧力検知器からの前記検出信号を受けると、前記サーボモータ、前記ブレーキ及び前記位置検出器への給電を一斉に停止するとともに、前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断するよう構成されている、請求項1又は2に記載の内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御システム。
【請求項5】
大気圧よりも高圧の保護気体を充填させる多関節ロボット筐体内に、多関節ロボットの各関節を構成するサーボモータと、当該サーボモータの回転位置を検出する位置検出器と、当該サーボモータの回転を停止させるブレーキと、を具備した内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御方法であって、
前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が第1の閾値圧力よりも低下したか否かを検出し、
前記多関節ロボット筐体内の前記保護気体の圧力が前記第1の閾値圧力よりも低いことを検出したとき、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止し、
前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止した後に、前記サーボモータ及び前記ブレーキへの給電を停止することに加えて、前記位置検出器への給電を停止するとともに前記位置検出器からの位置検出信号の供給を遮断する、
内圧防爆構造を有する多関節ロボットの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111697(P2013−111697A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259927(P2011−259927)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】