説明

内壁加工方法及びその装置

【課題】2つのクランク軸を用いることで、従来必要としたクランク軸の偏心量を徐々に可変させる複雑な構成の偏心量可変機構を不要として、コストダウンを図ることができる内壁加工方法と内壁加工装置とを提供するものである。
【解決手段】クランクアーム16の一端にカッタ72を着脱自在に取付け、そのクランクアーム16の他端に、第一クランク軸12によってクランク運動させられる第一クランクピン14を連結する。第二クランク軸20によってクランク運動させられる第二クランクピン22によってクランクアーム16の長さの途中を支持し、しかもそのクランクアーム16は第二クランクピン22に対して往復移動自在とする。加工時に第一クランクピン14の位相と第二クランクピン22の位相とを徐々に変化させることによって、カッタ72の移動軌跡である楕円形状の大きさを変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の穴等の内壁に加工を行うための内壁加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貫通穴や一端閉鎖穴を形成した部材において、穴の内壁に溝等を加工を施す場合がある。部材の穴の内壁を加工するものとして、特許文献1の溝加工装置が知られている。
【0003】
ここで、特許文献1の溝加工装置について、図5に基づいて説明する。ベッド40の上に加工物保持装置42が水平方向に移動可能に取付けられ、その加工物保持装置42に少なくとも一方が開放された空間即ち穴44を形成したワーク46を保持固定する。ベッド40の上には、偏心半径(偏心量)を可変できるクランク装置48が取付けられる。偏心半径を可変できるクランク装置48は、クランク軸50と、このクランク軸50に対して半径Rだけ偏心した位置に備えられるクランクピン52と、このクランクピン52に一端付近を連結したクランクアーム54と、クランクピン52の偏心半径を可変させるための偏心半径可変装置(図示せず)と、クランク軸50に取付けたプーリ兼はずみ車56と、このプーリ56を回転させるための電動機58と、プーリ56と電動機58との間に掛け渡されるベルト60等から成る。
【0004】
加工物保持装置42の設置位置とクランク装置48の設置位置との間のベッド40の上には、支柱62が固定されている。支柱62の上部には支軸64が固定され、その支軸64に筒状の摺動受部材66が揺動自在に支持されている。この筒状の摺動受部材66に、前記クランクアーム54が摺動自在に挿通支持されている。クランクアーム54には長溝68が形成されており、その長溝68に前記支軸64が挿通される。即ち、クランクアーム54は、支軸64を中心に揺動自在であると共に、支軸64に対してその長手方向に往復移動できるように設定されている。クランクアーム54の他端にはカッタ保持装置70が取付けられており、そのカッタ保持装置70に加工工具であるカッタ72が着脱自在に取付けられる。プーリ兼はずみ車56と電動機58とベルト60とで、クランク軸50のダイナミックバランスを補正する。
【0005】
図5に示した溝加工装置でワーク46の穴44の内壁を加工する場合には、ワーク46の穴44にカッタ72を挿入して、クランク装置48を作動させる。ここで、クランクピン52とクランクアーム54と支軸64とカッタ72との位置関係をスケルトンで図6に示す。図6(1)において、クランクピン52の偏心半径を例えば半径R1とする。クランクピン52の回転中心を中心点Oとすれば、クランクピン52は中心点Oを中心として偏心半径R1の円P1の上を移動するものとする。クランクアーム54は支軸64に沿って往復移動をするので、カッタ72は楕円Q1上を移動することになる。
【0006】
その後、クランク装置48の偏心半径可変装置(図示せず)を操作して、1サイクル毎にクランクピン52の偏心半径を徐々に大きくしてゆく。図6(2)に示すように、クランクピン52は中心点Oを中心として半径R2(R1<R2)の円P2の上を移動するようになる。これによって、カッタ72は、楕円Q2に沿って移動する。
【0007】
図7(1)に示すように、ワーク46の穴44にカッタ72を挿入し、クランクピン52は中心点Oを中心として偏心半径R1の円P1の上を移動させる。カッタ72の移動範囲が楕円Q1の位置では、カッタ72は、ワーク46の穴44の内壁74に接触しないものとする。その後、クランクピン52の偏心半径をR1から徐々に大きくする。これによって、ワーク46の穴44の内壁74にカッタ72が接触して、内壁74を徐々に切削する。クランクピン52の偏心半径を徐々に大きくして、最大の偏心半径Rを半径R2とすると、カッタ72が楕円Q2に沿って移動することで加工が完了し、ワーク46の穴44の内壁74に所望の加工が施される。なお、加工の際に加工物保持装置42を移動させることで、軸方向に沿って同じ深さの溝を形成することが可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−34714
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の溝加工装置では、クランク軸50の偏心半径を可変させるために偏心半径可変装置(図示せず)を備えているが、その偏心半径可変装置(図示せず)の機構が複雑であり、しかもその偏心半径可変装置(図示せず)は高価なものであるため、溝加工装置全体の製造コストが高くなっていた。また、クランク軸50の偏心半径の変化量が大きいため、ダイナミックバランスを補正しにくいという欠点があった。更に、クランクピン52の偏心半径の最大値を半径R2とした場合、それ以上に偏心半径を大きくすることができないので、溝の深さをより大きく形成することができないという欠点があった。
【0010】
本発明は、2つのクランク軸を用いることで、従来必要としたクランク軸の偏心量を徐々に可変させる複雑な構成の偏心量可変機構を不要として、コストダウンを図ることができる内壁加工方法と内壁加工装置とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る内壁加工方法は、ワークの内部空間の内壁を加工工具で加工する方法において、クランクアームの一端に加工工具を取付け、前記クランクアームの他端付近に第一クランク軸によって回転させられる第一クランクピンを連結し、前記クランクアームの長さの途中位置を第二クランク軸によって回転させられる第二クランクピンまたはその第二クランクピンの動きに応じてクランク運動する支持部材のいずれかによって摺動自在に支持し、前記加工工具でワークの内壁を加工する際に、前記第一クランクピンの位相と前記第二クランクピンの位相とを徐々に変化させることを特徴とすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る内壁加工装置は、ワークの内部空間の内壁を加工工具で加工する装置において、第一クランク軸と、前記第一クランク軸によってクランク運動させられる第一クランクピンと、第二クランク軸と、前記第二クランク軸によってクランク運動させられる第二クランクピンと、一端に加工工具を着脱自在に取付けられると共に他端付近に前記第一クランクピンを連結されるものであって、前記第二クランクピンまたはその第二クランクピンに揺動自在に支持される支持部材でその長さの途中を往復移動自在に支持されるクランクアームと、加工時に前記第一クランクピンの位相と前記第二クランクピンの位相とを徐々に変化させる制御手段とを有することを特徴とするものである。本発明は、前記第一クランクピンのクランク運動の半径をRとし、前記第二クランクピンのクランク運動の半径をrとし、前記クランクアームの一端に取付けた前記加工工具の位置と前記第一クランクピンの回転中心点との間の距離をAとし、前記クランクアームの一端に取付けた前記加工工具の位置と前記第二クランクピン22の回転中心点との間の距離をaとすれば、R:rの比率をほぼA:aの比率としたことを特徴とするものである。本発明は、カウンタバランス用軸と、そのカウンタバランス用軸と前記第一クランク軸とによって三角形になる位置に配置されるアイドラ軸と、前記カウンタバランス用軸と前記第一クランク軸と前記アイドラ軸とに掛け渡されるタイミングベルトとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第一クランクピンと第二クランクピンとの相対的な位相を徐々にずらしながら第一クランク軸と第二クランク軸とを回転させることで、ワークの内壁を加工することができるものである。即ち、本発明は、第一クランクピンと第二クランクピンとの相対的な位相を徐々にずらしながら加工を行うもので、第一クランクピンの偏心半径Rと第二クランクピンの偏心半径rとを一定に保ちながら加工を行うものである。よって、本発明では従来の溝加工装置のような加工時にクランクピンの偏心半径を徐々に可変させるための偏心半径可変装置を設ける必要が無くなり、装置の製造コストを大幅に低減することができる。また、本発明では、加工時に第一クランクピンの偏心半径が変化しないため、ダイナミックバランスを補正しにくいという従来の欠点を無くすことができる。本発明では、更に、第一クランクピンの偏心半径Rと第二クランクピンの偏心半径rとの少なくとも一つを変更するだけで、溝の深さを大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る内壁加工装置の一実施例を示す正面図、図2は図1の主な構成要素をスケルトンで示した構成図である。図1及び図2において、図5乃至図7と同一参照番号は同一部材を示す。ベッド40の上に加工物保持装置42が移動可能に取付けられ、その加工物保持装置42に穴44を有するワーク46を保持固定する。ベッド40の上の加工物保持装置42と反対側の位置には、第一クランク装置10が取付けられる。第一クランク装置10は、第一クランク軸12と、この第一クランク軸12に対して半径Rだけ偏心した位置に備えられる第一クランクピン14と、この第一クランクピン14に一端を支持されたクランクアーム16等から成る。ここで、第一クランク軸12の回転中心を図1及び図2で中心点O1とすると、第一クランク軸12の回転により、第一クランクピン14は中心点O1を中心としてクランク運動する。即ち、第一クランクピン14は中心点O1を中心として偏心半径Rの円P1の上を遊星回転する。
【0015】
本発明では、加工物保持装置42と第一クランク装置10との間のベッド40の上に、第二クランク装置18を備える。第二クランク装置18は、第二クランク軸20と、この第二クランク軸20に対して半径rだけ偏心した位置に備えられる第二クランクピン22と、この第二クランクピン22に揺動自在に取付けられるものであって前記クランクアーム16を摺動自在に挿通支持する支持部材24とからなる。ここで、第二クランク軸20の回転中心を図1及び図2で中心点O2とすると、第二クランク軸20の回転により、第二クランクピン22は中心点O2を中心としてクランク運動する。即ち、第二クランクピン22は中心点O2を中心として偏心半径rの円P2の上を遊星回転する。
【0016】
本発明では、第一クランク装置10の第一クランク軸12の位相と第二クランク装置18の第二クランク軸20の位相とを相対的に変化させるためのコンピュータ等の制御手段26を備える。
【0017】
図1に示すように、第一クランク装置10の付近に、カウンタバランス用軸28と、アイドラ軸30とを備える。第一クランク装置10の第一クランク軸12はモータ(図示せず)によって駆動させられる。第一クランク装置10の第一クランク軸12と、カウンタバランス用軸28と、アイドラ軸30とを、それぞれ平行でしかも三角形位置に配置し、第一クランク軸12とカウンタバランス用軸28とアイドラ軸30とにタイミングベルト34を掛け渡す。本発明では、カウンタバランス用軸28と、アイドラ軸30と、タイミングベルト34とで、第一クランク軸12のダイナミックバランスの補正を行う。
【0018】
次に、第一クランクピン14と第二クランクピン22とクランクアーム16とカッタ72との位置関係の移動状態をスケルトンで図2に示す。本発明では、第一クランク装置10による第一クランクピン14の円P1における回転角速度(回転時間)と、第二クランク装置18による第二クランクピン22の円P2における回転角速度(回転時間)とを同一とし、しかも第一クランクピン14の円P1における位相と第二クランクピン22の円P2における位相とを同一とする。図2において、円P1の中心点O1と、円P2の中心点O2とを同一直線(この直線を「直線L」とする)上に配置し、直線Lと円P1や円P2の右側との交点を角度0度(360度)とし、直線Lと円P1や円P2の左側との交点を角度180度とする。図2(1)の状態は、第一クランクピン14の位置は円P1の0度の位置にあり、第二クランクピン22の位置も円P2の0度の位置にあるよう設定する。この図2(1)の状態では、クランクアーム16もカッタ72も直線L上に位置する。
【0019】
図2(1)の状態から第一クランクピン14も第二クランクピン22も、同位相で90度反時計方向に回転した状態を図2(2)とし、同位相で180度反時計方向に回転した状態を図2(3)とし、同位相で270度反時計方向に回転した状態を図2(4)とする。360度反時計方向に回転した状態は図2(1)に戻る。ここで、第一クランクピン14偏心半径Rと第二クランクピン22の偏心半径rとの関係は、図1に示すように、クランクアーム16の自由端に取付けられたカッタ72と中心点O1までの距離をAとし、クランクアーム16の自由端に取付けられたカッタ72と中心点O2までの距離をaとすると、R:rの比率はほぼA:aの比率とすることが望ましい。図2(1)の状態において、カッタ72を直線L上に配置し、R:r≒A:aに設定することにより、第一クランクピン14と第二クランクピン22とが360度の回転角度のどの位置においても、カッタ72は扁平な∞形状(ほぼ直線Lに近い形状)の上を往復移動する。このカッタ72の往復移動距離は、図2(1)と図2(3)とのカッタ72の位置の間隔であり、この間隔は第一クランクピン14の円P1の直径(2R)である。このように、第一クランクピン14も第二クランクピン22が同位相で回転した時に、R:rの比率はほぼA:aの比率とすることで、カッタ72が直線に近い動きを行い、ワーク46の空間44内にカッタ72を挿入することができる。
【0020】
次に、クランクアーム16の他の移動状態を図3に基づいて説明する。この図3では、第一クランクピン14の円P1における回転角速度(回転時間)と、第二クランク装置18による第二クランクピン22の円P2における回転角速度(回転時間)とを同一とするが、第一クランクピン14の位相と第二クランクピン22の位相とを異なるものとする。図3(1)の状態は、第一クランクピン14の位置を円P1の0度の位置(直線Lと円P1の右側との交点に位置する)とし、第二クランクピン22の位置を円P2の180度の位置(直線Lと円P2の左側との交点に位置する)とする。即ち、第一クランクピン14と第二クランクピン22との位相を180度異なるものとする。この図3(1)の状態では、クランクアーム16もカッタ72も直線L上に位置する。
【0021】
図3(1)の状態から第一クランクピン14も第二クランクピン22も90度反時計方向に回転した状態を図3(2)に示す。この図3(2)の状態では、第一クランクピン14は90度の位置にあり、第二クランクピン22は270度の位置にある。図3(2)では、第一クランクピン14は直線Lより上方にあり、第二クランクピン22は直線Lより下方にあるため、クランクアーム16は直線Lに対して反時計方向に角度θだけ傾斜した状態となる。この結果、カッタ72は直線Lから直角方向に距離Sだけ下方に離れた所に位置する。
【0022】
図3(2)の状態から第一クランクピン14も第二クランクピン22も更に90度反時計方向に回転した状態を図3(3)に示す。この図3(3)の状態では、第一クランクピン14は180度の位置にあり、第二クランクピン22は0度の位置にある。第一クランクピン14も第二クランクピン22も直線L上にあるため、クランクアーム16もカッタ72も直線L上に位置する。この図3(3)におけるカッタ72の位置は、図3(1)のカッタ72の位置よりも円P1の直径の距離(2R)だけ図3で右側に位置する。
【0023】
図3(3)の状態から第一クランクピン14も第二クランクピン22も更に90度反時計方向に回転した状態を図3(4)に示す。この図3(4)の状態では、第一クランクピン14は270度の位置にあり、第二クランクピン22は90度の位置にある。図3(4)では、第一クランクピン14は直線Lより下方にあり、第二クランクピン22は直線Lより上方にあるため、クランクアーム16は直線Lに対して時計方向に角度θだけ傾斜した状態となる。この結果、カッタ72は直線Lから直角方向に距離Sだけ上方に離れた所に位置する。
【0024】
図3(1)、図3(2)、図3(3)、図3(4)、図3(1)、……の順に第一クランクピン14と第二クランクピン22を回転させることにより、カッタ72は2Rと2Sとの一方を長軸とし、他方を短軸とする楕円Q(図3(1))の上を移動することになる。
【0025】
カッタ72が直線Lに対して直角方向に離れる距離Sは、第一クランクピン14に対する第二クランクピン22の位相をずらすことによって、変化させることができる。図2のように、第一クランクピン14と第二クランクピン22との位相のずれを0度とすると、距離Sはほぼゼロである。第一クランクピン14の位相に対する第二クランクピン22の位相差を0度(図2)から徐々に変化させることで、距離S(縦方向の楕円の長さ)を徐々に大きくすることができる。第一クランクピン14に対する第二クランクピン22の位相差が徐々に変化して最大180度(図3の(2)及び(4))になった時に、距離Sは最大となる。第一クランクピン14と第二クランクピン22との位相差の変化は、制御手段26によって制御する。
【0026】
ワーク46の穴44にカッタ72を挿入し(図7)、カッタ72がワーク46の穴44の内壁74にほぼ接触する位置まで、第一クランクピン14に対する第二クランクピン22の位相をずらして距離S(図3)を大きくする。その後、更に第一クランクピン14に対する第二クランクピン22の位相差を徐々に大きくすると、カッタ72はワーク46の穴44の内壁74に食い込む楕円の位置に沿って移動する。カッタ72が移動する楕円の大きさを徐々に大きくすることで、ワーク46の穴44の内壁74をカッタ72で加工することができる。その上、ワーク46を保持する加工物保持装置42をベッド40に対して移動させることで、ワーク46の軸方向の加工長さを調節することができる。
【0027】
図1においては、第二クランクピン22はクランクアーム16を貫通する状態とした。しかし、図4に示すように、第二クランクピン22は、クランクアーム16を貫通しない位置、即ちクランクアーム16より下位に配置し、第二クランクピン22に揺動自在に取付けた支持部材36でクランクアーム16の長さの途中を支持するようにする。この図4においても、クランクアーム16は図2や図3の動きと同一の動きを行うことができる。
【0028】
距離Sの大きさを更に大きくしたい場合には、第一クランクピン14の偏心半径Rをより大きなものにするように第一クランク装置10の部品を交換するか、第二クランクピン22の偏心半径rをより小さなものにするように第二クランク装置18の部品を交換するかの少なくとも一方を変更すれば良い。これによって、カッタ72が移動する楕円の大きさを大きくすることができ、深い溝の加工を行うことができる。
【0029】
本発明では、第一クランクピン14の位相と第二クランクピン22の位相とを相対的に変化させるだけでカッタ72の移動軌跡である楕円の大きさを変化させることができる。即ち、本発明は、従来の溝加工装置に必要としたクランクピンの偏心半径を加工時に可変させるための機構を省略することができるため、装置の製造コストを大幅に低減することができる。本発明では、加工時にクランク軸の偏心量を変える必要が無いため、従来のようなダイナミックバランスが補正しにくいという欠点を無くすことができる。更に、溝の深さを大きく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る内壁加工装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の主な構成要素の動きをスケルトンで示した構成図である。
【図3】図2の状態から2つのクランクピンの位相を変化させた状態を示すスケルトンで示した構成図である。
【図4】第二クランクピンとそれに揺動自在に支持される支持部材とを示す部分正面図である。
【図5】従来の溝加工装置を示す正面図である。
【図6】図5の主な構成要素の動きをスケルトンで示した構成図である。
【図7】従来の溝加工装置でワークの内壁を加工している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
12 第一クランク軸
14 第一クランクぴん
16 クランクアーム
20 第二クランク軸
22 第二クランクぴん
24 支持部材
26 制御手段
28 カウンタバランス用軸
30 アイドラ軸
34 タイミングベルト
36 支持部材
46 ワーク
72 カッタ
74 内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの内部空間の内壁を加工工具で加工する方法において、クランクアームの一端に加工工具を取付け、前記クランクアームの他端付近に第一クランク軸によって回転させられる第一クランクピンを連結し、前記クランクアームの長さの途中位置を第二クランク軸によって回転させられる第二クランクピンまたはその第二クランクピンの動きに応じてクランク運動する支持部材のいずれかによって摺動自在に支持し、前記加工工具でワークの内壁を加工する際に、前記第一クランクピンの位相と前記第二クランクピンの位相とを徐々に変化させることを特徴とする内壁加工方法。
【請求項2】
ワークの内部空間の内壁を加工工具で加工する装置において、第一クランク軸と、前記第一クランク軸によってクランク運動させられる第一クランクピンと、第二クランク軸と、前記第二クランク軸によってクランク運動させられる第二クランクピンと、一端に加工工具を着脱自在に取付けられると共に他端付近に前記第一クランクピンを連結されるものであって、前記第二クランクピンまたはその第二クランクピンに揺動自在に支持される支持部材でその長さの途中を往復移動自在に支持されるクランクアームと、加工時に前記第一クランクピンの位相と前記第二クランクピンの位相とを徐々に変化させる制御手段とを有することを特徴とする内壁加工装置。
【請求項3】
前記第一クランクピンのクランク運動の半径をRとし、前記第二クランクピンのクランク運動の半径をrとし、前記クランクアームの一端に取付けた前記加工工具の位置と前記第一クランクピンの回転中心点との間の距離をAとし、前記クランクアームの一端に取付けた前記加工工具の位置と前記第二クランクピン22の回転中心点との間の距離をaとすれば、R:rの比率をほぼA:aの比率としたことを特徴とする請求項2記載の内壁加工装置。
【請求項4】
カウンタバランス用軸と、そのカウンタバランス用軸と前記第一クランク軸とによって三角形になる位置に配置されるアイドラ軸と、前記カウンタバランス用軸と前記第一クランク軸と前記アイドラ軸とに掛け渡されるタイミングベルトとを有することを特徴とする請求項2または3記載の内壁加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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