説明

内容物放出機構およびそれを備えたエアゾール式製品

【要約書】
【課題】ステムが自らの弾性片部の復帰作用に基づいて噴射モードから静止モードへ移動するときの最終段階で、ステム弾性片部をその原状態へとさらに復元させることにより、静止モードにおけるステムラバーとステムとの間のシール性の十全化を図る。
【解決手段】利用者が噴射操作をやめると、ステム1は、その下方部分に形成された長弾性片部14とハウジング2の下方テーパ面21との当接・復元作用に基づく図示上方向の力を受けて、静止モードへと自動復帰する。そして、この復帰動作の最終局面ではステム1の短弾性片部15(山状突部15a)が上方テーパ面22に案内されながら原状態へ復元するので、ステム1は、当該テーパ面からの上方向の力も受けて静止モード位置へとさらに移動してステムラバー6に密接する。短弾性片部15を設けずに、長弾性片部14の上下方向の中間部分に山状突部15aを形成したステム構造も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品を対象としたステムおよびハウジングからなる内容物放出機構などに関する。
【0002】
特にエアゾール容器に用いられて噴射モードから静止モードへの自動復帰用の弾性片部を下方部分に備えたステムと、静止モードから噴射モードへと移行するときの当該弾性片部をその弾性力に抗する形で変位させながら案内する強制変位部を備えたハウジングと、を少なくとも有する内容物放出機構を対象にしている。
【0003】
すなわち、ハウジング内のステムを静止モードの位置に付勢する弾性部材として金属製のスプリングを別途設けるのではなく、ステム自体の下方部分に弾性片部を形成し、この弾性片部とハウジング内部のテーパ面などとの相互作用により、ステムを(これが押下げられた)噴射モードから静止モードへ自動復帰させることを前提にする。
【0004】
そして本発明は、静止モードにおけるステムと、その連通用孔部のステムガスケットとの間のシール性をより確実にしたいという要請に応えるものである。
【背景技術】
【0005】
ステム自体の下方部分に複数の弾性片部(弾性突出爪部)を形成し、この弾性片部とハウジング内部のテーパ面などとの相互作用により、ステムを(これが押下げられた)噴射モードから静止モードへ自動復帰させるエアゾール噴射装置は、下記の文献などで開示されている。
【0006】
このテーパ面はハウジング内の上流側部分に下方にいくほど一様に狭まっていく態様で形成されており、ステムは、その弾性突出爪部の先端部分が当該テーパ面に当接しながら全体として内側方向に弾性に抗する形で変位させられながら下動して噴射モードに移行する。
【0007】
そして、利用者が噴射モードへの押圧操作を終えると、ステムの弾性突出爪部は自らの弾性力で元の状態に戻ろうとしてテーパ面から上向きの力を受け、ステムはこれにより静止モードへと復帰する。
【0008】
この静止モードへの復帰後は、ステムの内容物通過用の孔部がステムガスケットによって閉状態となる。
【特許文献1】実用新案登録第2517775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のエアゾール噴射装置の場合、静止モードのステムに対し上方向の力を付与して当該ステム(内容物通過用孔部)およびステムガスケット間のシール性を確保するための手段と、ステムをその噴射モードから静止モードへ自動復帰させるためのテーパ面とをいわば兼用している。
【0010】
すなわちハウジング内部の一様な傾斜からなる(静止モードから噴射モードへの)ステム自動復帰用の連続テーパ面の上端側部分で、静止モードにおける上記シール作用を奏している。
【0011】
そのため、静止モードにおいて利用者が不意に(ステムと一体の)操作ボタンを軽く押圧した場合などにステムがその噴射位置のほうへと移動しやすく、また、静止モードへの復帰最終段階でステムがハウジングのテーパ面から受ける上方向のステムガスケット保持用の力が、それまでの復帰途中で同様にテーパ面から受ける上方向付勢力よりも強くなるといったこともなく、結果としてステムラバーとステム(内容物通過用孔部)とのシール作用が不十分なものとなりやすいという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、静止モードへのステム移動の終り段階で当該ステムの弾性片部をその原状態へとさらに復元させて、当該ステムを静止モードの位置へと積極的に引き込むための手段をハウジングなどに設けることにより、静止モードにおけるステムラバーとステム(内容物通過用孔部)との間のシール性の十全化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器に用いられて噴射モードから静止モードへの自動復帰用の弾性片部(例えば後述の長弾性片部14,34や短弾性片部15)を下方部分に備えたステム(例えば後述のステム1,3)と、静止モードから噴射モードの位置まで移動していく当該弾性片部をその弾性力に抗する形で変位させながら案内する強制変位部(例えば後述の下方テーパ面21,41)を備えたハウジング(例えば後述のハウジング2,4)と、を少なくとも有する内容物放出機構に、
前記弾性片部および前記強制変位部の相互作用に基づく噴射モードから静止モードへの自動復帰の終り段階で、前記弾性片部(例えば後述の短弾性片部15や長弾性片部34)がその弾性力に基づいてさらに復元して前記ステムを静止モード位置へ引き込むことにより、当該ステムおよびステムガスケット(例えば後述のステムガスケット6)の間のシール作用を確実なものにするためのガイド部(例えば後述の上方テーパ面22,42)と、これに対応した被ガイド部(例えば後述の山状突部15a,34b)とを設ける。
(2)上記(1)において、
前記ガイド部を、前記ハウジングの内周面に形成されたテーパ部分(例えば後述の上方テーパ面22,42)とし、
前記被ガイド部を、前記弾性片部(例えば後述の短弾性片部15や長弾性片部34)の、その弾性変位の基部からみて前記強制変位部(例えば後述の下方テーパ面21,41)との作用部分(例えば後述の下端外側部分14a,34a)よりも近い部分(例えば後述の山状突部15a,34b)とする。
(3)上記(1),(2)において、
前記被ガイド部(例えば後述の山状突部15a)を、前記強制変位部(例えば後述の下方テーパ面21)と作用する第1の弾性片部(例えば後述の長弾性片部14)とは別の第2の弾性片部(例えば後述の短弾性片部15)に形成する。
【0014】
本発明は、このような構成からなる内容物放出機構を対象とし、また、この内容物放出機構を備えて容器内部に放出用ガスおよび内容物を収容したエアゾール式製品も対象としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、このように、ステムがその下方部分の弾性片部の復元力により噴射モードから静止モードへ自動的に復帰するときの終り段階で、弾性片部がその原状態へとさらに復元して当該ステムを静止モードの位置へと積極的に引き込むようにしているので、静止モードにおけるステムラバーとステム(内容物通過用孔部)との間のシール性の十全化を図ることができる。
【0016】
また、ステムを静止モードの位置へと積極的に引き込むための被ガイド部(弾性片部の一部)の弾性変位におけるいわば腕の長さを、当該引込みの前段階である噴射モードから静止への自動復帰用の作用部分(弾性片部の一部)のそれよりも短くしているので、静止モードにおけるシール作用力をより強いものにすることができる。
【0017】
また、静止モード位置への引込み用の被ガイド部を形成した弾性片部と、噴射モードから静止への自動復帰用の作用部分を形成した弾性片部とを別部材にしているので、この被ガイド部や作用部分のいわばガイド部となるハウジング内周面の形状(テーパ部分とこれに続く部分など)をそれぞれの動作に合致させることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図7を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は第1のステムを用いた場合の静止モードを示し、
図2は図1のステム(第1のステムの斜視図)を示し、
図3は第1のステムを用いた場合の噴射モードを示し、
図4は第2のステムを用いた場合の静止モードを示し、
図5は図4のステム(第2のステムの斜視図)を示し、
図6は第2のステムを用いた場合の静止モードから噴射モードへの移行途中を示し、
図7は第2のステムを用いた場合の噴射モードを示している。
【0019】
これらの図において、
1は押釦(図示省略)の押圧操作により下動して図1の静止モードから図3の噴射モードへと移行し、当該押圧操作の解除にともない後述の長弾性片部14の弾性力などにより上方向に自動復帰してもとの静止モードへと移行するステム(図1〜図3),
11は押釦側の噴射口(図示省略)へと通じる内容物通路,
12は内容物通路11へと通じる内容物通過用の孔部,
13は孔部12の入口側へと続く部分で、静止モードにおいて後述のステムガスケット6の内側底面と密接するシール作用面,
14はステム1の下方部分に形成された自動復帰動作用の一対の長弾性片部,14aは下端外側部分,
15はステム1の下方部分に形成されたシール動作用の一対の短弾性片部,15aは外周面下端側に形成された山状突部,
2はその内部空間にステム1を上下動可能な形で保持して後述のマウンティングカップに取り付けられるハウジング(図1〜図3),
21はハウジング内部の(長弾性片部14の外側下端部分に対応した)上広がり態様の下方テーパ面,
22はハウジング内部の(短弾性片部15の山状突部15aに対応した)上広がり態様の上方テーパ面,
23はこれらテーパ面間の垂下面,
24は後述のステムガスケット6を後述のマウンティングカップ5との間に挟み込むための環状凸部,
3は押釦(図示省略)の押圧操作により下動して図4の静止モードから図7の噴射モードへと移行し、当該押圧操作の解除にともない後述の長弾性片部34の弾性力などにより上方向に自動復帰してもとの静止モードへと移行するステム(図4〜図7),
31は押釦側の噴射口(図示省略)へと通じる内容物通路,
32は内容物通路31へと通じる内容物通過用の孔部,
33は孔部32の入口側へと続く部分で、静止モードにおいて後述のステムガスケット6の内側底面と密接するシール作用面,
34はステム1の下方部分に形成された自動復帰動作・シール動作用の一対の長弾性片部,34aは下端外側部分,34bは外周面の略中央の横方向部分に形成されたシール動作用の山状突部,
4はその内部空間にステム3を上下動可能な形で保持して後述のマウンティングカップ5に取り付けられるハウジング(図4〜図7),
41はハウジング内部の(長弾性片部34の外側下端部分に対応した)上広がり態様の下方テーパ面,
42はハウジング内部の(長弾性片部34の山状突部34aに対応した)上広がり態様の上方テーパ面,
43は下方テーパ面41の上端から続く環状の段部,
44は上方テーパ面42と段部43との間の垂下面,
45は後述のステムガスケット6を後述のマウンティングカップ5との間に挟み込むための環状凸部,
5は容器本体(図示省略)に取り付けられてハウジング2,4をクリンチ処理部分で保持する周知のマウンティングカップ,
6はその外側部分をハウジング2,4とマウンティングカップ5とに挟持され、静止モードではその内側部分がステム1,3の孔部12,32を閉塞するとともにシール作用面13,33に密接し(図1,図4参照)、噴射モードではこの閉塞・密接状態を解除する(図3,図7参照)周知のステムガスケット,
7はハウジング2,4の上流側開口部に取り付けられた周知の内容物通過用のパイプ,
をそれぞれ示している。
【0020】
図示の内容物放出機構の特徴は、
(a) ステム1,3の下方部分に、長弾性片部14,短弾性片部15や長弾性片部34を形成し、
(b) ハウジング2,4の内面部分に、ステム1,3を噴射モードから静止モードへ自動復帰させるための下方テーパ面21,41および、静止モードにおける当該ステムとステムガスケット6とのシール作用を確実にための上方テーパ面22,42を形成し、
(c) 当該ハウジングの下方テーパ面21,41で当該ステムの下端外側部分14a,34aを規制・案内し、また、当該ハウジングの上方テーパ面22,42で当該ステムの山状突部15a,34bを規制・案内するようにした、
ことである。
【0021】
図1の静止モードの場合、ステム1はその短弾性片部15の山状突部15aがハウジング2の上方テーパ面22に当接し、またその長弾性片部14の下端外側部分14aがハウジング2の下方テーパ面21に当接している。
【0022】
このとき、少なくとも短弾性片部15の山状突部15aが自らの弾性力に抗する形で上方テーパ面22に当接しているので、ステム1(短弾性片部15)は当該テーパ面からの反作用として上方向の力(分力)を受ける。
【0023】
この上方向の力により、ステム1のシール作用面13とステムガスケット6の内側底面との間の密接状態は十分なものとなる。
【0024】
そして、利用者が作動モードに設定するため押釦(図示省略)を押圧するとステム1がハウジング2に対して下動する。
【0025】
このステム1の下動にともない、
(1) 短弾性片部15は、その山状突部15aの当接対象部分がハウジング2のそれまでの上方テーパ面22からこれに続く垂下面23へと変化し(=当該片部の弾性力に抗する形で内側に変位し)、
(2) 長弾性片部14は、その下端外側部分14aがハウジング2の下方テーパ面21に案内されながら、自らの弾性力に抗する形で内側に変位していき、
(3) ステムガスケット6は、その内側部分がステム1で押し下げられて孔部12に対する開放状態へと移行する。すなわち、ステム1の状態が図1の静止モードから図3の噴射モードへと変化する。
【0026】
このように図3の噴射モードでは、長弾性片部14,短弾性片部15およびステムガスケット6のいずれもが静止モードの状態から変位(変形)している。
【0027】
そして、内容物通路11および孔部12などを介して容器本体(図示省略)の内部と外部空間とが連通する。
【0028】
このとき容器内容物は「パイプ7−ハウジング2の内部空間−長弾性片部14と短弾性片部15との間の空隙域−孔部12−内容物通路11」を経て操作部の噴口(図示省略)から外部空間に噴射される。
【0029】
利用者が押圧操作を止めると、図3で示すようにそれまで自らの弾性力に抗する形で内側に変位していた長弾性片部14(下端外側部分14a)が、ハウジング2の下方テーパ面21に案内されながら上方向の力を受け、これによりステム1は上動していく。
【0030】
これにともないステムガスケット6の変位(変形)の程度も元の静止モードの状態へと戻っていき、図1の静止モードへと略移行した段階では、それまで垂下面23によって静止モードの状態への復帰を阻止されていた短弾性片部15の山状突部15aがハウジング2の上方テーパ面22に当接する位置となる。
【0031】
この位置になると、短弾性片部15の山状突部15aが上方テーパ面22に案内されて当該片部はその弾性復帰力により当該テーパ面を押し付ける。
【0032】
そして、短弾性片部15の山状突部15aはこの押し付けによる反作用を上方テーパ面22から受けることになる。
【0033】
この上方向の分力によりステム1はそのシール作用面13がステムガスケット6の内側底面部分に強く密接し、当該部分や孔部12とのシール作用は十全なものとなる。
【0034】
図4〜図7の内容物放出機構における図1〜図3のそれとの基本的な違いは、シール動作用(噴射モード)の山状突部34bをステム3の長弾性片部34の外周面略中央の横方向部分に形成したことである(図5参照)。
【0035】
すなわち、図4〜図7の場合、図1〜図3の内容物放出機構のように噴射モードから静止モードへの自動復帰用の長弾性片部14とは別に噴射モードのシール動作用の短弾性片部15を設ける、態様にはなっていない。
【0036】
図4の静止モードにおけるステム3は、
(11) 長弾性片部34の弾性復帰力に基づいて上動した位置にあり、
(12) 当該長弾性片部の山状突部34bがハウジング4の上方テーパ面42に当接し、
(13) 当該長弾性片部の下端外側部分34aがハウジング4の段部43に対向した、
状態で安定している。
【0037】
このとき、図1の静止モードと同様に、山状突部34bに対する上方テーパ面42の押上げ力によりステム3(孔部32,シール作用面33)とステムガスケット6との間の十全なシール作用が確保されていることは勿論である。
【0038】
図6の、利用者の押圧操作に基づいて静止モードから噴射モードへの移行途中のステム3は、
(21) 長弾性片部34の山状突部34bがハウジング4の上方テーパ面42からその下方の垂下面44にいわば乗り上げて、当該長弾性片部の全体が内側に変位(変形)し、
(22) 長弾性片部34の下端外側部分34aがハウジング4の下方テーパ面41まで移動してそこに当接した、
状態になる。
【0039】
このとき、ステム3の孔部32はまだステムガスケット6によって閉塞されたままである。
【0040】
図7の噴射モードまで移動したステム3は、
(31) 長弾性片部34の下端外側部分34aがハウジング4の下方テーパ面41に案内される形で、当該長弾性片部の全体がさらに内側に変位(変形)し、
(32) 長弾性片部34の山状突部34bがハウジング4の垂下面44から離間した、
状態に設定される。
【0041】
このとき、図3の噴射モードと同様に、ステム3の孔部32およびシール作用面33に対するステムガスケット6のシール動作は解除されており、容器内容物は「パイプ7−ハウジング4の内部空間−長弾性片部34同士間の空隙域−孔部32−内容物通路31」を経て操作部の噴口(図示省略)から外部空間に噴射される。
【0042】
利用者が押圧操作を止めると、図7で示すようにそれまで自らの弾性力に抗する形で内側に変位していた長弾性片部34(下端外側部分34a)が、ハウジング4の下方テーパ面41に案内されながら上方向の力を受け、これによりステム3は上動していく。
【0043】
これにともない長弾性片部34およびステムガスケット6の変位(変形)の程度が元の静止モードの状態へと戻っていき、図6の状態まで移行した段階では、ステム3の孔部32は当該ステムガスケットで閉塞され、長弾性片部34の山状突部34bがハウジング4の垂下面44の上端部分に当接する。
【0044】
さらにステム3が(ハウジング4の下方テーパ面41からの上方向の力により)上動すると、長弾性片部34の山状突部34bがハウジング4の上方テーパ面42に案内されて当該片部はその弾性復帰力により当該テーパ面を押し付ける。
【0045】
そして、山状突部34bはこの押し付けによる反作用を上方テーパ面42から受けることになる。
【0046】
この上方向の分力によりステム3はそのシール作用面33がステムガスケット6の内側底面部分に強く密接し、当該部分や孔部12とのシール作用は十全なものとなる。
【0047】
以上の内容物放出機構において、ハウジング2,4の上方テーパ面22,42に案内される山状突部15a,34bは、下方テーパ面21,41に案内される静止モードへの自動復帰用の下端外側部分14a,34aよりも、各弾性片部(長弾性片部14,34および短弾性片部15)のいわば基部(固定側端部)に近い部分に形成されているので、当該山状突部が当該上方テーパ面を押し付ける力は当該下端外側部分が当該下方テーパ面を押し付ける力に比べて大きくなる。
【0048】
すなわち、ステム1,3とステムガスケット6との間のシール作用力は、ハウジング2,4の上方テーパ面22,42やステム1,3の山状突部15a,34bを形成しない場合(=下方テーパ面21,41と長弾性片部14,34との間の変位・復帰作用のみを用いる場合)よりも強くなる。
【0049】
また、下方テーパ面21,41の図面横方向に対する傾斜を上方テーパ面22,42のそれよりも大きくし、当該下方テーパ面でステム1,3のいわば復帰ストロークをかせぎ、当該上方テーパ面でステムガスケット6に対するシール動作の安定化を図っている。
【0050】
すなわち、ハウジング2,4の上方テーパ面22,42をステム1,3の山状突部15a,34bにとってのいわば急坂形状にし、静止モードの当該ステムが例えば不意に下方向への力を少し受けた場合などにもその先の垂下面23,44に移動しにくく、また、これとは逆に噴射モードから静止モードへの復帰動作の最終段階でステム1,3がこの上方テーパ面に確実に入り込み、そこで安定的に保持されるようにしている。
【0051】
本発明の特徴は、ステム1,3およびハウジング2,4における噴射モードから静止モードへの自動復帰動作用部分(図示の場合は下端外側部分14a,34aおよび下方テーパ面21,41)と、静止モードでのシール動作用部分(図示の場合は山状突部15a,34bおよび上方テーパ面22,42)とを、この自動復帰動作の最終段階でシール動作に移行するように、区分けしたことである。
【0052】
なお、上述のステム1,3およびハウジング2,4はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどのプラスチック製のものである。
【0053】
なお、以上の内容に各種変更をほどこした場合についても本発明の対象となることは勿論である。
例えば、
(41) ステム1の短弾性片部15の山状突部15aを省略して、長弾性片部14と同様に当該短弾性片部の下端外側部分をハウジング2の上方テーパ面22に作用させる、
(42) ステム1,3の山状突部15a,34bとハウジング2,4の上方テーパ面22,42とを入れ替える(例えばステム1の山状突部15aおよびその上方部分を上方テーパ面22とその上方部分と同様にして、かつハウジング2の上方テーパ面22の部分に山状突部を形成するなど)、
(43) ステム1,3の長弾性片部14,34の外周面下端部分にハウジング2,4の下方テーパ面21,41と同様のテーパ面を形成し、当該下方テーパ面の上側部分に山状突部を形成する、
(44) ステム1,3の山状突部15a,34bおよびハウジング2,4の上方テーパ面22,42を省略して、当該ハウジングの下方テーパ面21,41の上端部分の上記傾斜を緩くする(上方テーパ面22,42と同様にする)、
(45) ステム1,3の各弾性片部の案内部として、ハウジング内周面(テーパ面)の代わりにハウジング底面の山状部(例えば実用新案登録第2507484号公報の図1で示されるテーパ面)を用いる、
などのように変更してもよい。
【0054】
容器内容物の対象としては、液状,発泡性(泡状),ペースト状,ジェル状,粉状などの各種性状のものがある。
【0055】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0056】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0057】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0058】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0059】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0060】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0061】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0062】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0063】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0064】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の、第1のステムを用いた場合の静止モードを示す説明図である。
【図2】本発明の、図1のステム(第1のステムの斜視図)を示す説明図である。
【図3】本発明の、第1のステムを用いた場合の噴射モードを示す説明図である。
【図4】本発明の、第2のステムを用いた場合の静止モードを示す説明図である。
【図5】本発明の、図4のステム(第2のステムの斜視図)を示す説明図である。
【図6】本発明の、第2のステムを用いた場合の静止モードから噴射モードへの移行途中を示す説明図である。
【図7】本発明の、第2のステムを用いた場合の噴射モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1:ステム(図1〜図3)
11:内容物通路
12:内容物通過用の孔部
13:シール作用面
14:自動復帰動作用の一対の長弾性片部
14a:下端外側部分
15:シール動作用の一対の短弾性片部
15a:シール動作用の山状突部
2:ハウジング(図1〜図3)
21:下方テーパ面
22:上方テーパ面
23:垂下面
24:環状凸部
3:ステム(図4〜図7)
31:内容物通路
32:内容物通過用の孔部
33:シール作用面
34:自動復帰動作・シール動作用の一対の長弾性片部
34a:下端外側部分
34b:シール動作用の山状突部
4:ハウジング(図4〜図7)
41:下方テーパ面
42:上方テーパ面
43:環状の段部
44:垂下面
45:環状凸部
5:マウンティングカップ
6:ステムガスケット
7:内容物通過用のパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に用いられて噴射モードから静止モードへの自動復帰用の弾性片部を下方部分に備えたステムと、静止モードから噴射モードの位置まで移動していく当該弾性片部をその弾性力に抗する形で変位させながら案内する強制変位部を備えたハウジングと、を少なくとも有する内容物放出機構であって、
前記弾性片部および前記強制変位部の相互作用に基づく噴射モードから静止モードへの自動復帰の終り段階で、前記弾性片部がその弾性力に基づいてさらに復元して前記ステムを静止モード位置へ引き込むことにより、当該ステムおよびステムガスケットの間のシール作用を確実なものにするためのガイド部と、これに対応した被ガイド部とを設けた、
ことを特徴とする内容物放出機構。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記ハウジングの内周面に形成されたテーパ部分であり、
前記被ガイド部は、前記弾性片部の、その弾性変位の基部からみて前記強制変位部との作用部分よりも近い部分である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出機構。
【請求項3】
前記被ガイド部は、前記強制変位部と作用する第1の前記弾性片部とは別の第2の前記弾性片部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物放出機構。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の内容物放出機構を備えて容器内部に放出用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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