説明

内燃機関の冷却装置

【課題】ピストン打音の発生を防止しつつ、暖機を好適に促進可能な内燃機関の冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置100は内燃機関2の冷却水を流通させる第1の循環経路C1に組み込まれ、流通する冷却水の流量が機関暖機時に機関暖機後よりも制限される機関通路部と、内燃機関2のシリンダボアB間に設けられ、第1の循環経路C1と異なる流通経路で内燃機関2の冷却水を流通させる第2の循環経路C2に組み込まれたボア間通路部Tと、循環経路C1、C2のうち、第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御可能な第2の制御弁22とを備える。第2の制御弁22は機関暖機時に内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度に応じて第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の冷却装置に関し、特に機関暖機時に冷却水の流通を制御する内燃機関の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の冷却装置に関し、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1で開示されている。特許文献1では、内燃機関の冷却水の温度が所定温度以下である場合に電動ウォータポンプを停止させる電動ウォータポンプの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−169750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関では冷却水の流通を制限することで暖機促進を図ることができる。ところが、機関暖機時に冷却水の流通を完全に停止すると、シリンダボア壁部のうち、隣り合うシリンダボア同士に挟まれたボア間壁部で特に温度が上昇し易いことに起因してシリンダボアが大きく熱変形する結果、ピストン打音が生じる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、ピストン打音の発生を防止しつつ、暖機を好適に促進可能な内燃機関の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は内燃機関の冷却水を流通させる第1の循環経路に組み込まれ、流通する冷却水の流量が機関暖機時に機関暖機後よりも制限される機関通路部と、前記内燃機関のシリンダボア間に設けられ、前記第1の循環経路と異なる流通経路で前記内燃機関の冷却水を流通させる第2の循環経路に組み込まれたボア間通路部と、前記第1および第2の循環経路のうち、前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制御可能な制御弁と、を備え、前記制御弁が機関暖機時に前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度に応じて前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制御する内燃機関の冷却装置である。
【0007】
本発明は前記制御弁が前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度が所定値よりも低い場合に前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制限し、前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度が前記所定値よりも高い場合に前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通制限を解除する構成とすることができる。
【0008】
本発明は前記機関通路部と前記ボア間通路部とが個別に冷却水を供給可能に設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピストン打音の発生を防止しつつ、暖機を好適に促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内燃機関の冷却装置の全体構成図である。
【図2】シリンダブロックの上面図である。
【図3】冷却水の第1の流通状態を示す図である。
【図4】冷却水の第2の流通状態を示す図である。
【図5】冷却水の第3の流通状態を示す図である。
【図6】ECUの制御動作をフローチャートで示す図である。
【図7】冷却水の第4の流通状態を示す図である。
【図8】ボア間通路部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1は内燃機関の冷却装置(以下、単に冷却装置と称す)100の全体構成図である。図2はシリンダブロック2aの上面図である。図1に示す各構成は図示しない車両に搭載されている。冷却装置100はウォータポンプ(以下、W/Pと称す)1と、内燃機関2と、オイルクーラ3と、EGRクーラ4と、ヒータ5と、ATF(Automatic Transmission Fluid)ウォーマ6と、ラジエータ7と、第1のサーモスタット11と、第2のサーモスタット12と、第1の制御弁21と、第2の制御弁22と、ECU30とを備えている。内燃機関2はシリンダブロック2aとシリンダヘッド2bとを備えている。
【0013】
W/P1は内燃機関2の冷却水を循環させる。W/P1は内燃機関2の出力で駆動する機械式のポンプとなっている。W/P1は電気駆動式のポンプであってもよい。W/P1が吐出する冷却水は第1のサーモスタット11とオイルクーラ3とに供給される。第1のサーモスタット11は冷却水の温度に応じて冷却水の流通先を切り替える。オイルクーラ3は内燃機関2の潤滑オイルと冷却水との間で熱交換を行い、潤滑オイルを冷却する。
【0014】
内燃機関2は通路部Wを備えている。通路部Wはシリンダブロック2aおよびシリンダヘッド2bに冷却水を流通させる第1の流通経路P1と、シリンダヘッド2bに冷却水を流通させる第2の流通経路P2とを形成している。そして、第1のサーモスタット11は具体的には冷却水の温度が所定値αよりも低い場合に冷却水の流通先を第2の流通経路P2とするとともに、冷却水の温度が所定値αよりも高い場合(具体的にはここでは所定値α以上である場合)に冷却水の流通先を流通経路P1、P2とすることで、冷却水の温度に応じて冷却水の流通先を切り替える。
【0015】
第1の流通経路P1は具体的にはシリンダブロック2aから冷却水を流入させるとともに、流入させた冷却水をシリンダブロック2a、シリンダヘッド2bの順で流通させ、その後シリンダヘッド2bから流出させる流通経路となっており、シリンダヘッド2bで第2の流通経路P2と合流している。この点、第1の流通経路P1は第2の流通経路P2と上流側の部分で合流している。
【0016】
第1のサーモスタット11からシリンダヘッド2bには具体的には第1の制御弁21を介して冷却水が供給される。第1の制御弁21は第2の流通経路P2を流通する冷却水の流量を変更可能な流量調節弁となっている。第1の制御弁21は冷却水の温度が所定値αより低い場合に冷却水の流量をゼロにすることで、第1のサーモスタット11とともに内燃機関2における冷却水の流通を停止させることができる。
【0017】
内燃機関2を流通した冷却水はEGRクーラ4、ヒータ5およびATFウォーマ6に向かって分流する。そして、残りの冷却水がラジエータ7を流通する。EGRクーラ4、ヒータ5およびATFウォーマ6に向かって分流した冷却水はオイルクーラ3を流通した冷却水と合流し、その後、EGRクーラ4、ヒータ5およびATFウォーマ6を流通する。
【0018】
EGRクーラ4は内燃機関2に還流される排気(EGRガス)との間で熱交換を行い、EGRガスを冷却する。ヒータ5は空気と冷却水との間で熱交換を行い、空気を加熱する。加熱された空気は車室内の暖房に利用される。ATFウォーマ6はATFと冷却水との間で熱交換を行い、ATFを加熱する。ラジエータ7は空気と冷却水との間で熱交換を行い、冷却水を冷却する。
【0019】
EGRクーラ4、ヒータ5およびATFウォーマ6を流通した冷却水はそのままW/P1に戻る。ラジエータ7を流通した冷却水は第2のサーモスタット12を介してW/P1に戻る。第2のサーモスタット12は冷却水の温度に応じて冷却水の流通制限、流通制限の解除を行う。具体的には、第2のサーモスタット12は冷却水の温度が所定値βよりも低い場合に、冷却水の流通を制限(具体的にはここでは禁止)するとともに、冷却水の温度が所定値βよりも高い場合(具体的にはここでは所定値β以上である場合)に、冷却水の流通制限の解除(具体的にはここでは流通の許可)を行う。そしてこれにより、機関暖機時に冷却水の流通を制限するとともに、機関暖機後に冷却水の流通制限を解除する。所定値βは所定値αよりも低く設定されている。
【0020】
冷却装置100にはさらに第3の流通経路P3が設けられている。第3の流通経路P3は第1のサーモスタット11からシリンダヘッド2bに流通させる冷却水を第1の流通経路P1に分流させる流通経路となっている。具体的には、第3の流通経路P3は第1のサーモスタット11から第1の制御弁21に冷却水を流通させる流通経路から分岐し、第1のサーモスタット11からシリンダブロック2aに冷却水を流通させる流通経路に合流する流通経路となっている。
【0021】
第3の流通経路P3には第2の制御弁22が設けられている。第2の制御弁22は第3の流通経路P3を流通する冷却水の流通を制御可能な制御弁であり、具体的には第3の流通経路P3を流通する冷却水の流量を変更可能な流量調節弁となっている。第2の制御弁22は冷却水の温度が所定値αよりも低い場合に冷却水の流通を許可することで、第1のサーモスタット11が第2の流通経路P2を流通先としている場合でも第1の流通経路P1に冷却水を流通させることができる。
【0022】
このように構成された冷却装置100では、例えば次に示す循環経路C1、C2が形成されている。第1の循環経路C1は内燃機関2に冷却水を流通させるにあたり、W/P1、第1のサーモスタット11、シリンダブロック2a、シリンダヘッド2bの順に冷却水を流通させる循環経路となっている。第2の循環経路C2は内燃機関2に冷却水を流通させるにあたり、W/P1、第1のサーモスタット11、第2の制御弁22、シリンダブロック2a、シリンダヘッド2bの順に冷却水を流通させる循環経路となっている。このため、第2の制御弁22は循環経路C1、C2のうち、第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御可能な制御弁に相当している。
【0023】
第1の循環経路C1には通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分が組み込まれている。この部分はシリンダブロック2a、シリンダヘッド2bの順に冷却水を流通させる部分となっている。また、冷却水の温度が所定値αよりも低い場合に、冷却水の流通先を第2の流通経路P2とするとともに、冷却水の温度が所定値αよりも高い場合に、冷却水の流通先を流通経路P1、P2とする第1のサーモスタット11の動作に応じて、流通する冷却水の流量が機関暖機時に機関暖機後よりも制限される部分となっている。通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分は機関通路部に相当している。
【0024】
第2の循環経路C2にも第1の循環経路C1と同様に通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分が組み込まれている。この点、図2に示すように内燃機関2ではボア間通路部Tが通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分の一部としてシリンダボアB間に設けられている。
【0025】
このため、ボア間通路部Tは第2の循環経路C2が通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分を丸ごと組み込むことで、第1の循環経路C1とは異なる流通経路で内燃機関2の冷却水を流通させる第2の循環経路C2に組み込まれたかたちになっている。この点、本発明はボア間通路部が機関通路部の一部として設けられており、機関通路部が第1および第2の循環経路に組み込まれている場合も含むものとする。
【0026】
次に冷却水の流通状態について図3から図5を用いて説明する。図3は冷却水の第1の流通状態を示す図であり、図4は冷却水の第2の流通状態を示す図であり、図5は冷却水の第3の流通状態を示す図である。第1の流通状態は内燃機関2における冷却水の流通を停止している状態であり、第2の流通状態はシリンダブロック2a、シリンダヘッド2bのうち、シリンダヘッド2bに冷却水を流通させている状態であり、第3の流通態様はシリンダブロック2aおよびシリンダヘッド2bに冷却水を流通させている状態となっている。図3から図5では、冷却水が流通している流通経路を実線で示し、冷却水の流通が停止している流通経路を破線で示している。図3から図5では、第2の制御弁22については閉弁している場合を示している。
【0027】
図3に示す第1の流通状態は機関暖機時に対応している。このとき、第1のサーモスタット11が感知する冷却水温は所定値αよりも低くなっており、第1のサーモスタット11は冷却水の流通先を第2の流通経路P2としている。また、第1の制御弁21はECU30の制御のもと、閉弁されるようになっている。このため、第1の流通状態では、内燃機関2における冷却水の流通が停止している。また、機関暖機時には第2のサーモスタット12が感知する冷却水温が所定値βよりも低くなっており、第2のサーモスタット12が冷却水の流通を禁止している。このため、第1の流通状態ではラジエータ7を介した冷却水の流通も停止している。
【0028】
図4に示す第2の流通状態は機関暖機後の低温時(例えば内燃機関2の負荷が低負荷である場合)に対応している。このとき、第1のサーモスタット11が感知する冷却水温は所定値αよりも低くなっており、第1のサーモスタット11は冷却水の流通先を第2の流通経路P2としている。また、第1の制御弁21はECU30の制御のもと、開弁されるようになっている。このため、第2の流通状態ではシリンダブロック2a、シリンダヘッド2bのうち、シリンダヘッド2bに冷却水が流通している。また、機関暖機後の低温時には第2のサーモスタット12が感知する冷却水温が所定値βよりも高くなり、第2のサーモスタット12が冷却水の流通を許可する。このため、第2の流通状態ではラジエータ7を介した冷却水の流通も許可されている。
【0029】
図5に示す第3の流通状態は機関暖機後の高温時(例えば内燃機関2の負荷が高負荷である場合)に対応している。このとき、第1のサーモスタット11が感知する冷却水温は所定値αよりも高くなり、第1のサーモスタット11は冷却水の流通先を流通経路P1、P2とする。また、第1の制御弁21はECU30の制御のもと、開弁されるようになっている。このため、第3の流通状態ではシリンダブロック2aおよびシリンダヘッド2bに冷却水が流通している。また、第2の流通状態と同様にラジエータ7を介した冷却水の流通も許可されている。
【0030】
冷却装置100では、このように冷却水の流通状態を切り替えることで、内燃機関2の冷却を適切に行いつつ、機関暖機を促進するようにしている。この点、通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分はさらに具体的には、第1の流通経路P1(すなわち、換言すれば機関通路部)を流通先に含む第1のサーモスタット11の動作に応じて、流通する冷却水の流量が機関暖機時に機関暖機後の高温時よりも制限される部分となっている。
【0031】
図1に戻り、ECU30は電子制御装置であり、ECU30には制御弁21、22が制御対象として電気的に接続されている。また、ECU30には冷却水温を検出するための水温センサ41が電気的に接続されている。この点、水温センサ41は第2の流通経路P2のうち、下流側の部分に設けられており、水温センサ41が検知する冷却水温にはシリンダボアB壁部からの受熱が反映される。
【0032】
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納するための構成である。CPUがROMに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、ECU30では各種の機能部が実現される。この点、ECU30では例えば以下に示す制御部が機能的に実現される。
【0033】
制御部は機関暖機時に内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度に応じて第2の制御弁22を制御することで、第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御する。具体的には、制御部は内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも低い場合に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制限(具体的にはここでは禁止)するように第2の制御弁22を制御する。また、内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも高い場合(具体的にはここでは所定値γ以上である場合)に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通制限の解除(具体的にはここでは流通の許可)を行うように第2の制御弁22を制御する。
【0034】
このため、第2の制御弁22は制御部の制御のもと、機関暖機時に内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度に応じて第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御することになる。具体的には内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも低い場合に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制限し、内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも高い場合に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通制限を解除することになる。所定値γはシリンダボアBが熱変形する結果、ピストン打音が発生し得る温度に設定されている。
【0035】
シリンダボアB壁部の温度に応じて第2の制御弁22を制御するにあたり、制御部は具体的にはシリンダボアB壁部からの受熱が反映される冷却水温に基づき第2の制御弁22を制御する。但しこれに限られず、シリンダボアB壁部の温度は例えば直接的に検出されてもよい。シリンダボアB壁部の温度は具体的にはシリンダボアB壁部の各部のうち、最も温度が上昇し易い部分の温度(例えばいずれかのボア間壁部の温度)であることが好ましい。
【0036】
次にECU30の制御動作について図6に示すフローチャートを用いて説明する。ECU30は機関暖機時であるか否かを判定する(ステップS1)。機関暖機時であるか否かは例えば水温センサ41の出力に基づく冷却水温が所定値よりも低いか否かで判定できる。肯定判定であれば、ECU30は冷却水温が所定値γ´よりも低いか否かを判定する(ステップS2)。所定値γ´はシリンダボアB壁部の温度に対して設定される所定値γに対応する冷却水温である。この点、冷却水温が所定値γ´よりも低い場合はシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも低い場合に対応している。
【0037】
ステップS2で肯定判定であれば、ECU30は第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を禁止するように第2の制御弁22を制御する(ステップS3)。ステップS2で否定判定であれば、ECU30は第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を許可するように第2の制御弁22を制御する(ステップS4)。ステップS3、S4の後にはステップS1に戻る。そして、ステップS1で否定判定された場合に本フローチャートを終了する。
【0038】
次に冷却装置100の主な作用効果について説明する。図7は冷却水の第4の流通状態を示す図である。第4の流通状態は機関暖機時に対応する流通状態であり、且つ第2の制御弁22が開弁している場合の流通状態となっている。冷却装置100では、第2の制御弁22が機関暖機時に内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度に応じて第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制御する。
【0039】
このため、冷却装置100は機関暖機時に通路部Wのうち、第1の流通経路P1に沿った部分を流通する冷却水の流量を機関暖機後より制限しても、シリンダボアBの熱変形に起因するピストン打音が発生し得る状況である場合にはボア間通路部Tに冷却水を流通させることができる。そしてこれにより、ピストン打音が発生することを防止できる。また、ピストン打音が発生しない状況である場合にはボア間通路部Tに冷却水を流通させないようにすることで暖機も促進できる。このため、冷却装置100はピストン打音の発生を防止しつつ、暖機を好適に促進できる。
【0040】
冷却装置100では具体的には第2の制御弁22が内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも低い場合に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通を制限し、内燃機関2のシリンダボアB壁部の温度が所定値γよりも高い場合に第2の循環経路C2を流通する冷却水の流通制限を解除することで、ピストン打音の発生を防止しつつ、好適に暖機を促進できるようにボア間通路部Tに冷却水を流通させることができる。
【0041】
冷却装置100は第2の制御弁22を流通する冷却水の流量を変更可能な流量調節弁とすることで、ピストン打音の発生を防止するにあたって、ボア間通路部Tに適量の冷却水を供給できる。そしてこれにより、必要以上に暖機促進が阻害されることを防止しつつ、ピストン打音の発生を防止できる点で、さらに好適に暖機を促進できる。
【0042】
ボア間通路部Tは以下に示すように設けられていてもよい。図8はボア間通路部Tの変形例であるボア間通路部T´を示す図である。図8(a)ではシリンダブロック2a´の上面図でボア間通路部T´を示し、図8(b)では図(a)に示すA−A断面でボア間通路部T´を示す。シリンダブロック2a´は通路部Wの代わりに通路部W´を備えるとともに、ボア間通路部T´を備える点以外、シリンダブロック2aと実質的に同一である。通路部W´はボア間通路部Tを一部として備えていない点以外、通路部Wと実質的に同一である。
【0043】
ボア間通路部T´は図示しないシリンダヘッドとの間で冷却水を流入出させるように設けられている。この場合、例えば第2の制御弁22からシリンダヘッドを介して各ボア間通路部T´の入口に冷却水を供給するとともに、各ボア間通路部T´の出口を通路部W´とシリンダヘッドで合流させることで、ボア間通路部T´を組み込んだ第2の循環経路C2を形成することができる。この場合には、ボア間通路部T´と通路部W´(具体的には機関通路部に相当する部分)とが個別に冷却水を供給可能に設けられることから、ピストン打音の発生を防止するにあたり、通路部W´に供給する冷却水の流量を制限しながら、ボア間通路部T´に冷却水を流通させることができる。このためこの場合には、通路部W´に供給する冷却水の流量を制限できる分、さらに好適に暖機を促進できる。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
W/P 1
内燃機関 2
第1のサーモスタット 11
第2のサーモスタット 12
第1の制御弁 21
第2の制御弁 22
ECU 30
冷却装置 100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却水を流通させる第1の循環経路に組み込まれ、流通する冷却水の流量が機関暖機時に機関暖機後よりも制限される機関通路部と、
前記内燃機関のシリンダボア間に設けられ、前記第1の循環経路と異なる流通経路で前記内燃機関の冷却水を流通させる第2の循環経路に組み込まれたボア間通路部と、
前記第1および第2の循環経路のうち、前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制御可能な制御弁と、
を備え、
前記制御弁が機関暖機時に前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度に応じて前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制御する内燃機関の冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の冷却装置であって、
前記制御弁が前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度が所定値よりも低い場合に前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通を制限し、前記内燃機関のシリンダボア壁部の温度が前記所定値よりも高い場合に前記第2の循環経路を流通する冷却水の流通制限を解除する内燃機関の冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内燃機関の冷却装置であって、
前記機関通路部と前記ボア間通路部とが個別に冷却水を供給可能に設けられている内燃機関の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68175(P2013−68175A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207896(P2011−207896)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)