説明

内燃機関の制御装置

【課題】エンジンルーム内に配置し、かつ、小型化された場合でも十分な放熱が可能で、信頼性の向上した内燃機関の制御装置を提供することにある。
【解決手段】金属ケース10は、放熱フィン12と、第2の放熱部材14を備える。内燃機関の制御に用いられる電子部品40を搭載した基板30は、金属ケース10に固定される。第2の放熱部材14は、電子部品の中で、発熱量の大きい電子部品40に対して配置され、この発熱量の大きな電子部品に近接する側に対して遠ざかる側の断面積が大きくなる形状としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を制御する内燃機関の制御装置に係り、特に、高温環境に配置するに好適な内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の制御装置は、内蔵する電子部品の自己発熱を筐体に伝導し、放熱フィンから放熱するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。フィンは、薄板状の形状で並列に放熱効率を考慮して配置し表面積を拡大し放熱させる構造が一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2006−134120号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の制御装置は、従来、車室内に配置されるのが一般的であったが、最近、エンジンルーム内に配置するものが検討されつつある。エンジンルーム内は、車室内に比べて高温な環境であるため、内燃機関の制御装置からの放熱が重要となる。さらに、エンジンルーム内に配置するものにあって、最近では、小型化の要求も高まり、小型になると、放熱フィンの設置面積も限られるため、十分な放熱ができなくなる恐れも出てきている。
【0005】
本発明の目的は、エンジンルーム内に配置し、かつ、小型化された場合でも十分な放熱が可能で、信頼性の向上した内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、内燃機関の制御に用いられる電子部品を搭載した基板と、放熱フィンを有するとともに前記基板が固定される金属ケースとを有する内燃機関の制御装置であって、前記金属ケースは、一体的に成形された第2の放熱部材を備え、前記第2の放熱部材は、前記電子部品の中で、発熱量の大きい電子部品に対して配置され、この発熱量の大きな電子部品に近接する側に対して遠ざかる側の断面積が大きくなる形状としたものである。
かかる構成により、エンジンルーム内に配置し、かつ、小型化された場合でも十分な放熱が可能で、信頼性を向上し得るものとなる。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第2の放熱部材は、前記基板に平行な方向における形状が台形状であり、その短辺側が前記発熱量の大きい電子部品に近接し、その長辺側が前記発熱量の大きい電子部品から遠ざかる側に配置されるものである。
【0008】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記第2の放熱部材は、前記基板に垂直な方向における形状が台形状であり、その短辺側が前記発熱量の大きい電子部品に近接し、その長辺側が前記発熱量の大きい電子部品から遠ざかる側に配置されるものである。
【0009】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記電子部品の中で、発熱量の大きい電子部品が取り付けられた位置における前記基板と、前記第2の放熱部材とに接触し、両者の間で、熱伝導する熱伝導部材を備えるようにしたものである。
【0010】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記熱伝導部材は、前記金属ケースと一体的に成形され、前記基板方向に突出したボスと、前記基板と前記ボスを熱的に接触する放熱剤とからなるものである。
【0011】
(6)上記(1)において、好ましくは、前記第2の放熱部材は、1個の前記発熱量の大きい電子部品に対して複数個設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンルーム内に配置し、かつ、小型化された場合でも十分な放熱が可能で、信頼性を向上し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜図3を用いて、本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す底面図である。図2は、本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A矢視断面図である。図3は、本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部断面図である。図3は、図1のB−B矢視断面図である。なお、各図において、同一符号は、同一部分を示している。
【0014】
図1の底面図に示すように、金属ケース10の底面側には、フィン形状の第1の放熱部材12A,…,12Gと、ブロック状の第2の放熱部材14A,14Bが、一体的に形成されている。金属ケース10は、例えば、アルミ製であり、第1の放熱部材12及び第2の放熱部材14は、ダイキャスト製法等により金属ケース10に一体的に形成されている。金属ケース10には、コネクタ20が取り付けられている。
【0015】
第1の放熱部材12A,…,12Gは、従来から用いられている放熱フィンである。放熱フィンは、薄板状の形状で並列に配置されている。
【0016】
第2の放熱部材14A,14Bは、後述する発熱量の大きな電子部品40からの放熱のために、設けられている。第2の放熱部材14A,14Bの平面方向(図2で後述する電子部品40が搭載される基板30の面と平行な方向)の形状は、台形となっている。第2の放熱部材14A,14Bの短辺側が、破線で示す電子部品40の投影面内で、電子部品40に熱的に接触し、電子部品40から離れる側に、長辺側が位置している。第2の放熱部材14Aと、第2の放熱部材14Bの間には、空間が設けられている。
【0017】
次に、図2により、本実施形態の制御装置の全体構成について説明する。
【0018】
基板30は、内燃機関を電気的に制御するために電子部品や、パターンにより構成された回路を有する。基板30に搭載された電子部品40は、発熱量が他の電子部品等に比べて大きな部品である。電子部品40は、例えば、電源ICや駆動用ICであり、その内部に半導体スイッチング素子を内蔵するものである。半導体スイッチング素子により電流をスイッチングする動作を繰り返すため、その発熱量が他の電子部品に比べて大きくなっている。
【0019】
基板30は、外部との電気的な接続をするためのコネクタ20とはんだにより接続されている。また、コネクタ20及び基板30は、金属ケース10にネジ52により固定されている。また、基板30を覆うように、金属ケース10にカバー60がネジ54により固定されている。ケース10とカバー60の間には、取り付け環境により異なるが、通常防水性、防塵性及び防錆能力を確保するための防水用接着剤62が設けられている。
【0020】
電子部品40の底面(基板30と接触する面)には、放熱のための金属板が埋め込まれている。また、基板30の、電子部品40が搭載される位置には、複数の金属柱32が埋め込まれている。金属柱32は、いわゆるビアホールなどにより形成される。また、図示は省略しているが、基板30の両面であって、金属柱32の両端部と接触する位置には金属板が形成されている。基板30の上面側の金属板は、電子部品40の底面側の金属板と接触している。電子部品40の発熱は、電子部品40の底面側の金属板から、基板30の上面側の金属板,金属柱32を介して、基板30の下面側の金属板に伝達される。
【0021】
また、金属ケース10の内面側であって、電子部品40の搭載位置に対応する位置には、電子部品40の方向に突出するようにして、一体的にボス16が形成されている。ボス16の上面は、放熱剤70を介して、基板30の下面側の金属板に接触している。放熱剤70としては、熱伝導シートや、熱伝導接着剤を用いている。したがって、基板30の下面側の金属板に伝達された電子部品40の熱は、放熱剤70およびボス16を介して、第2の放熱部材14Aに伝達される。
【0022】
次に、図3により、第2の放熱部材14A,14Bの断面形状について説明する。図3は、図1のB−B矢視断面,すなわち、基板30と垂直方向の断面図である。
【0023】
図3に示すように、第2の放熱部材14Aは、電子部品40に近接する側の高さが、電子部品40から遠ざかる方向の厚さよりも薄くなっている。すなわち、第2の放熱部材14Aは、電子部品40から遠ざかるほど厚くなっている。第2の放熱部材14Bも、第2の放熱部材14Aと同一の形状となっている。
【0024】
図1にて説明したように、第2の放熱部材14A,14Bの平面方向(図2で後述する電子部品40が搭載される基板30の面と平行な方向)の形状は、台形であり、第2の放熱部材14A,14Bの短辺側が、破線で示す電子部品40の投影面内で、電子部品40に熱的に接触し、電子部品40から離れる側に、長辺側が位置している。そして、図3にて説明したように、第2の放熱部材14A,14Bは、電子部品40から遠ざかるほど厚くなる台形状である。
【0025】
したがって、第2の放熱部材14A,14Bは、電子部品40に近接する側の断面積が、電子部品から遠ざかる位置における断面積よりも小さい。熱容量についてみると、電子部品40に近接する側の熱容量が、電子部品40から遠ざかる側の熱容量よりも小さく、電子部品40から遠ざかるほど、熱容量が大きくなっている。このため、第2の放熱部材14A,14Bは、電子部品40に近い側よりも、電子部品40から遠ざかった方が温度が低くなる。したがって、第2の放熱部材14A,14Bの中では、電子部品40に近い側から、遠ざかる方向に熱勾配が生じ、電子部品40の発熱は、第2の放熱部材14A,14Bによって効果的に放熱され、電子部品40の発熱量が大きくても、効果的に放熱・冷却することができる。
【0026】
なお、以上の説明では、第2の放熱部材14Aと、第2の放熱部材14Bの間には、空間が設けられているが、空間を設けずに、第2の放熱部材14Aと、第2の放熱部材14Bとを連結した形状とすることもできる。第2の放熱部材14Aと、第2の放熱部材14Bの間には、空間が設けられている場合には、この間を冷却風が流れ、冷却効率が向上するが、両者を一体化した場合でも、内部の温度勾配により、従来の放熱フィンよりは冷却効率を向上できるものである。
【0027】
また、第2の放熱部材14A,14Bは、図1に示す状態及び図3に示す状態の2方向において台形状としているが、いずれか一方のみで台形状としてもよいものである。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、発熱量の大きな電子部品に対しては、従来の放熱フィンとは別の放熱部材を設け、この放熱部材を台形状として、内部に熱勾配を生じさせることで、効果的に放熱できる。したがって、内燃機関の制御装置を、エンジンルーム内に配置し、しかも、小型化された場合も、十分な放熱が可能で、内燃機関の制御装置の信頼性を向上することができる。
【0029】
次に、図4を用いて、本発明の他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成について説明する。
図4は、本発明の他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部底面図である。なお、図3において、図1〜図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0030】
本実施形態では、金属ベース10Aに設ける第2の放熱部材として、図1に示した第2の放熱部材14A,14Bに加えて、さらに、第2の放熱部材14C,14Dを設け、4個の放熱部材としたことにある。このように、第2の放熱部材の個数を増加することで、さらに、放熱効率を向上することができる。
【0031】
次に、図5を用いて、本発明のその他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成について説明する。
図5は、本発明のその他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部底面図である。なお、図5において、図1〜図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0032】
本実施形態では、金属ベース10Bに設ける第2の放熱部材として、図4に示したように、4個の放熱部材14A’,14B’,14C’,14D’を設けると共に、それぞれの放熱部材には、スリットSA,SB,SC,SDを設けている。スリットSA,SB,SC,SDを設けることで、放熱部材14A’,14B’,14C’,14D’の表面積を大きくでき、さらに、さらに、放熱効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す底面図である。
【図2】本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部底面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を示す要部底面図である。
【符号の説明】
【0034】
10…金属ケース
12…放熱フィン
14…第2の放熱部材
20…コネクタ
30…基板
40…電子部品
60…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御に用いられる電子部品を搭載した基板と、放熱フィンを有するとともに前記基板が固定される金属ケースとを有する内燃機関の制御装置であって、
前記金属ケースは、一体的に成形された第2の放熱部材を備え、
前記第2の放熱部材は、前記電子部品の中で、発熱量の大きい電子部品に対して配置され、この発熱量の大きな電子部品に近接する側に対して遠ざかる側の断面積が大きくなる形状であることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記第2の放熱部材は、前記基板に平行な方向における形状が台形状であり、その短辺側が前記発熱量の大きい電子部品に近接し、その長辺側が前記発熱量の大きい電子部品から遠ざかる側に配置されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記第2の放熱部材は、前記基板に垂直な方向における形状が台形状であり、その短辺側が前記発熱量の大きい電子部品に近接し、その長辺側が前記発熱量の大きい電子部品から遠ざかる側に配置されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記電子部品の中で、発熱量の大きい電子部品が取り付けられた位置における前記基板と、前記第2の放熱部材とに接触し、両者の間で、熱伝導する熱伝導部材を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の内燃機関の制御装置において、
前記熱伝導部材は、前記金属ケースと一体的に成形され、前記基板方向に突出したボスと、前記基板と前記ボスを熱的に接触する放熱剤とからなることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の内燃機関の制御装置において、
前記第2の放熱部材は、1個の前記発熱量の大きい電子部品に対して複数個設けられることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47033(P2009−47033A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212392(P2007−212392)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】