説明

内燃機関の吸入通路

【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案は気化器を用いる内燃機関における吸入通路に関する。
〔従来の技術〕
機関の高負荷運転時の出力低下をきたすことなく、無負荷運転時のダイリユーシヨンを防止しながら、始動および加速性能の向上を計る従来技術として、実願昭56-29735号が出願されている。
本技術を第4図、第5図について説明する。
第5図において、14はベンチユリー部、15はメーンノズル13より噴出する燃料、16は液状燃料、17は混合気、18はベンチユリ拡大部14aの内周壁11の全周を囲む溝、19はベンチユリ拡大部14aの内周壁11の全周を囲み一様の高さの内周縁を有する堰、20は溝18と同様な溝である。
なお、ベンチユリ拡大部14aの拡大側の周縁は下流側の同一径に形成された吸入通路10の内周縁に接続されていて、同接続部は吸入通路径起点部となる。
上記構成の場合の作用について述べる。
第4図においてエアクリーナ1を通過した空気は、吸気弁5の開放と共に、気化器2で燃料と適切な比に混合されて霧化状態の混合気を形成し吸入通路10を流れる。次に気化器間座3及び吸気ポート4を経て燃焼室7内に入る。混合気17中の燃料15は完全には気化することができず、液状の燃料粒子が浮遊している。この燃料粒子が気化器2のベンチユリ部14ないし吸入通路10の内壁11に付着し膜状を形成し、この内壁に沿って流れるいわゆる液状燃料となる。
気化器2のベンチユリ部14の拡大側に向って溝18、堰19さらに溝20を構成することにより、内壁に付着した液状燃料16は、ベンチユリ拡大側に向って流れ、溝18から堰19部を乗越える時、霧吹き作用及びベンチユリ拡大部発生する渦流により分散、攪拌されるので、大部分は霧化される。さらに次の溝19を飛越える時にも再度霧吹き作用により一段と霧化が促進される。
上記技術によれば、燃料の液膜流の溝18および堰19による霧吹き作用、およびベンチユリー拡大部14aの渦流による分散、攪拌効果は、吸入通路10内の吸気の流速が大きい時は有効であるものの、低負荷運転や始動時のように、吸気管内流速が小さい時は、その効果が不十分である。
〔考案が解決しようとする課題〕
前述のような従来技術によると、始動時は、エンジンの回転数が低く、吸入通路内の空気流速が小さいので、吸入通路10の内壁底部に付着した燃料液膜を、せん断力で微粒化させることはほとんどできず、始動性の向上には役立たない等の問題点がある。
本考案は、吸入空気の流速が小さい始動時にも、吸入通路内の燃料液膜の気化率を上げ、始動および加速性能を向上させる吸入通路を提供することを目的とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
液体の気化量は気相と接する液膜表面の平衡蒸気層の移動速度で決まり、次式で示される。
■(=M/Δt)=hD・ρ・WW・A ……■ M:蒸発量〔kg〕
D=D/lSh ……■:蒸発速度〔kg/s〕
ここでρ:平衡蒸気層の密度〔kg/m3
D:物質伝達率〔m/s〕
W:平衡蒸気層の燃料の質量分率〔−〕
A:液膜表面積〔m2
Δt:蒸発時間〔S〕
h:シヤーウツド数〔−〕
D:拡散係数〔m2/S〕
l:液膜代表長さ〔m〕
これより燃料液膜表面積Aが大きいほど気化量が増加することがわかる。内燃機関の吸入通路内で液膜表面積を大きくすると同時に蒸発液体の補給手段として、吸入通路内壁面全周に、深さ0.1mm、ピッチ0.4mm程度の微細な溝またはクラックを設ける。
〔作用〕
燃料液体が表面張力により螺旋溝ないしクラツクを上昇する高さは、例えば螺旋溝に対して、燃料の質量と表面張力の平衡条件から、次式で表わすことができる。
L・σ=ρ・S・H ここでL:燃料が螺旋溝に接する水平面上の長さ〔m〕
σ:表面張力〔kg/m〕
ρ:燃料密度〔kg/m3
S:螺旋溝の燃料面積〔m2
H:燃料上昇高さ〔m〕
吸入管直径が20mmの場合、溝深さ0.1m程度、溝ピツチが0.4mmであれば、充分に吸入管上部まで液膜が表面張力で上昇していく。
〔実施例〕
第1図ないし第3図に本考案の実施例を示す。第1図は吸入通路に沿った断面図、第2図は第1実施例の通路に直交する断面図、第3図は第2実施例における吸入通路壁の部分拡大図である。図に於て、従来と同一機能を果す部材には同一の番号を付して、詳細説明を省略する。
第1図に於て、気化器2のベンチユリー部14の出口と内燃機関8の吸気ポート4の入口とを吸気管100が連結し、吸気通路10を構成する。前記吸入通路10の内壁11に、螺線条の溝101を多条に形成する。
第2図は第1図に示す吸入通路10の軸直角拡大断面図である。内壁11の底部に溜るはずの液状燃料16は、溝101との間に作用する表面張力による毛細管現象により、吸入通路内壁11の全周に渡って浸透し、気相との接触面積を増大する。従って、蒸発能力は気液の平衡条件と毛細管現象には左右されるが、吸入管100内の空気流速にはほとんど左右されないので、始動時の吸気流速の小さい運転条件でも燃料の蒸発を促進し、空燃比過大による始動不良と加速不良を防止し得る。即ち始動性能を向上する。
第3図は吸入通路10の内壁面11の全周に渡って網状の連続した微細クラツク102を設けた第2実施例を示す。毛細管現象による液状燃料の内壁11上への拡散、それによる蒸発面の増大とそれ等の効果は上記第1実施例と同様である。
〔考案の効果〕
本考案による内燃機関の吸込通路は、気化器のベンチユリー部出口から吸気ポートの入口に至る吸気通路の内壁に連続した深さ0.1mm、ピッチ0.4mm程度の微細な溝またはクラツクを設け、液状燃料が表面張力により前記内壁に沿って拡散するように構成したことにより、次の効果を有する。
吸入管内壁の微細な溝またはクラツクにより、燃料液膜が表面張力で吸入管の上部まで、あるいは全周に形成されるので、始動時などの吸入空気の流速が低い時でも気化量が増加して内燃機関の早期始動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の第1実施例の吸入通路に沿った断面図、第2図は第1図のA〜A断面図、第3図は本考案の第2実施例に係る第1図B部の拡大図、第4図は従来の吸入通路と前後の部材を示す断面図、第5図は一般的な気化器を示す要部断面図である。
4……吸気ポート、10……吸気通路
11……内壁、14……ベンチユリー部
101……微細な溝

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】気化器のベンチュリー部出口から吸気ポートの入口に至る吸気通路の内壁に連続した深さ0.1mm、ピッチ0.4mm程度の微細な溝または、クラックを設け、液状燃料が表面張力により前記内壁に沿って拡散するように構成したことを特徴とする内燃機関の吸入通路。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【登録番号】第2501310号
【登録日】平成8年(1996)3月28日
【発行日】平成8年(1996)6月19日
【考案の名称】内燃機関の吸入通路
【国際特許分類】
【出願番号】実願平2−13062
【出願日】平成2年(1990)2月15日
【公開番号】実開平3−104158
【公開日】平成3年(1991)10月29日
【出願人】(999999999)三菱重工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭63−25719(JP,A)