説明

内装材及びその製造方法

【課題】エネルギー線硬化性樹脂に混入する無機質充填材の均一な分散性を改良するとともに当該無機質充填材の混入量の自由度を大幅に向上させることを可能とすることにより、内装材の表面層の耐摩耗性、防汚性等の機能性の向上と当該機能性の付与の自由度を向上させた内装材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有する内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線硬化性樹脂に混入する無機質充填材の均一な分散性を改良するとともに当該無機質充填材の混入量の自由度を大幅に向上させることを可能とすることにより、内装材の表面層の耐摩耗性、防汚性等の機能性の向上と当該機能性の付与の自由度を向上させた内装材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内装材の表面の保護、又は防汚性、耐傷付性、耐摩耗性といった機能性を付与することを目的として、エネルギー線硬化性樹脂が汎用されてきた。特にポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる床材については、人が当該床材上を歩行することに加え、外部より砂等が持ち込まれることから、床材の表面層には強靭な耐傷付性、耐摩耗性、及び防汚性が要求されている。そこで、上記耐摩耗性等の機能性を付与するために、床材の表面にもエネルギー線硬化性樹脂層を設けることが行われている。
【0003】
しかしながら、昨今の床材の貼替え期間の長期化やメンテナンス費用の低減等の市場ニーズの観点から、エネルギー線硬化性樹脂層を床材の表面に設けるのみでは、床材としての耐摩耗性等の機能性面で十分でない場合も生じていた。
【0004】
そこで、耐摩耗性を強化すること等を目的として、エネルギー線硬化性モノマー又はオリゴマー、光重合開始剤およびモース硬度8以上の無機質充填材を含有することを特徴とする合成樹脂製床材用のエネルギー線硬化性樹脂組成物からなる皮膜を有することを特徴とする合成樹脂製床材が提供されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−213296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂に添加することにより耐摩耗性等の表面強度は向上するものの、前記無機質充填材とエネルギー線硬化性樹脂との比重が異なることから均一に分散させるためには、塗布直前まで前記無機質充填材とエネルギー線硬化性樹脂との混合物を攪拌することが必要であるなど作業性面で煩雑であった。
【0006】
また、一般にエネルギー線硬化性樹脂を塗布する際には、コーターで塗布されるが、エネルギー硬化性樹脂より比重の大きい無機質充填材を添加した場合には、無機質充填材がコーターの両側に逃げていく傾向にあるため、コーターによる塗布の際に無機質充填材の均一な分散性が損なわれ、上述した攪拌による無機質充填材の均一分散の方法では限界があった。
【0007】
また、エネルギー線硬化性樹脂への無機質充填材の添加量が多いほど耐摩耗性や耐傷付き性は向上するが、当該無機質充填材の添加量が多いほど攪拌による均一分散が困難となり、加えて、コーターによる塗布時に上述したような無機質充填材のコーター両側への局在傾向がより顕著に現出してしまうため、エネルギー線硬化性樹脂に対する無機質充填材の添加量は最大でも30重量部程度しか添加できなかった。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の発明では、エネルギー線硬化性樹脂への無機質充填材の添加量を多くすると、耐摩耗性は向上するが防汚性は低下し、一方、エネルギー線硬化性樹脂への無機質充填材の添加量を少なくすると、防汚性は向上するが耐摩耗性は低下していた。
【0009】
かかる現象の理由としては、添加された無機質充填材のうち、表面付近に存在する無機質充填材の一部分が塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面から突出しているためと考えられている。即ち、無機質充填材の添加量が多くなると前記突出部が多くなり、当該突出部間に汚れが溜まりやすくなる一方で、前記無機質充填材はエネルギー線硬化性樹脂より硬度が大きいため、耐摩耗性が向上し、無機質充填材の添加量が少なくなると、前記突出部も少なくなり、当該突出部間に汚れが溜まりにくくなる一方で、耐摩耗性は低下する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を解決したものであり、請求項1記載の発明は、エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材を提供するものである。
【0011】
本発明内装材により、エネルギー線硬化性樹脂に添加された無機質充填材を均一に分散した表面層を有するため、安定した耐摩耗性等の機能性を奏することができる。また、本発明内装材により、従来は非常に困難であった耐摩耗性と防汚性とを同時に奏することができる。尚、本明細書において、内装材とは床タイル、床シート等の床材の他、壁紙、壁パネル等の壁装材、及び机等の家具類をいい、当該内装材を構成する素材はエネルギー硬化性樹脂と密着性がよければ特に限定はされず、熱可塑性樹脂のみならず、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、木材、石材、金属を含む。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより、前記無機質充填材を固定し、前記固定された無機質充填材とエネルギー硬化性樹脂とにより形成された層の表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、エネルギー線を照射して前記表面に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材を提供するものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1、又は2の発明の特徴に加え、無機質充填材が、酸化アルミニウム、シリカ、金剛砂の何れか一、又は二以上であることを特徴とする内装材を提供するものである。本発明内装材により、無機質充填材が床材にかかる負荷に適切かつ確実に耐摩耗性、及び耐傷付き性を付与することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一の発明の特徴に加え、表面層が、20〜300μmであることを特徴とする内装材を提供するものである。本発明内装材により、優れた耐摩耗性を奏することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一の発明の特徴に加え、無機質充填材の平均粒子径が、表面層の厚みの50〜120%であることを特徴とする内装材を提供するものである。
【0016】
請求項6記載の発明は、エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材の製造方法を提供するものである。本発明内装材の製造方法により、均一分散の観点からも無機質充填材を添加量に制限されることなく任意の添加量で無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂に添加することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより、前記無機質充填材を固定し、前記固定された無機質充填材とエネルギー硬化性樹脂とにより形成された層の表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、エネルギー線を照射して前記表面に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明内装材により、エネルギー線硬化性樹脂に添加された無機質充填材を均一に分散した表面層を有するため、安定した耐摩耗性等の機能性を奏することができる。また、本発明内装材により、従来は非常に困難であった耐摩耗性と防汚性とを同時に奏することができる。
【0019】
本発明内装材の製造方法により、均一分散の観点からも無機質充填材を添加量に制限されることなく任意の添加量で無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂に添加することができる。
【0020】
本発明内装材の製造方法により、無機質充填材を表面近傍に局在させることも可能であるため、少ない無機質充填材量で優れた耐摩耗性を奏する内装材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明内装材の実施するための最良の形態を、図面を参照しつつ詳述する。
図1は本発明内装材の一例の部分断面図を示す。本発明内装材は内装材本体F1の表面にエネルギー線硬化性樹脂第1層3、及びエネルギー線硬化性樹脂第2層2が設けられており、前記エネルギー線硬化性樹脂第1層3、及びエネルギー線硬化性樹脂第2層2には無機質充填材P1、P2が含有されている。
【0022】
本発明内装材に使用されるエネルギー線硬化性樹脂は、分子中に重合性不飽和結合、又は、エポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマーを適宜混合した、エネルギー線によって硬化可能なものを用いられる。ここで、エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、又は架橋可能なエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線または電子線等を意味する。
【0023】
本発明内装材にエネルギー線硬化性樹脂として用いられるプレポリマー、又はオリゴマーとして、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0024】
また、本内装材にエネルギー線硬化性樹脂として用いられるモノマーとしては、スチレン、αメチルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メメタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和置酸の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等が挙げられる。
【0025】
また、エネルギー線硬化性樹脂層は第1層3、及び第2層2から構成されており、本発明内装材の使用の際、エネルギー線硬化性樹脂第2層2が第1層3から剥離しなければ前記エネルギー線硬化性樹脂第1層3、及び第2層2を構成するエネルギー線硬化性樹脂は同一であっても異なっていてもよい。また、エネルギー線硬化性樹脂層の厚みはエネルギー線硬化性樹脂の安定的な硬化という観点から20μm〜300μmが好ましい。
【0026】
また、本発明内装材1の表面近傍には無機質充填材P1、P2が存在しており、エネルギー線硬化性樹脂第1層3、及び第2層によって固着されている。本発明内装材では、後述するように、内装材本体F1表面に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂上に無機質充填材を均一散布しているため、無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂表面近傍に局在させることができる。
【0027】
また、本発明内装材に使用される無機質充填材としては、酸化アルミニウム、シリカ、金剛砂、の何れか一、又は二以上を使用することが好ましい。また、本発明内装材に使用する無機質充填材は、必ずしも図1に示すような球形である必要はなく、針形状も含み不定形の形状であってもよい。また、前記無機質充填材の粒径については、エネルギー線硬化性樹脂層によって固着されれば特に限定はされないが、平均粒子径(累積高さ50%点の粒子径)が、エネルギー線硬化性樹脂第1層3、及び第2層2を合わせた厚みの50%〜120%が耐摩耗性、及び防汚性、メンテナンス性の観点から好ましい。
【0028】
また、無機質充填材のエネルギー線硬化性樹脂に対し、20%重量部〜80%重量部が耐摩耗性、及び防汚性の観点から好ましい。
【0029】
本発明内装材は、内装材の表面にエネルギー線硬化性樹脂を塗布する。塗布方法としては、公知の任意の塗布方法を使用することができるが、ロールコーター、ナイフコーターによる塗布が好ましい。
【0030】
前記塗布したエネルギー線硬化性樹脂の表面上に無機質充填材を均一に散布する。散布方法としては、均一に散布できる方法であれば特に限定はされないが静電散布という散布方法が好ましい。
【0031】
前記無機質充填材の散布後、エネルギー線を照射し、エネルギー線硬化性樹脂を硬化させることにより、エネルギー線硬化性樹脂層を形成するとともに、前記散布された無機質充填材を当該エネルギー硬化性樹脂層に固着する。図2に本発明内装材の他の一例の部分断面図を示す。図2で示すように、無機質充填材P31、P32がエネルギー線硬化性樹脂層33に固着されている。
【0032】
前記無機質充填材P31、P32の層での位置、即ちエネルギー線硬化性樹脂層33の表面付近に位置させるか、内装材本体F3付近に位置させるかは前記無機質充填材P31、P32の散布後、エネルギー線硬化樹脂第1層の硬化させるまでの時間を調整することにより、制御することができる。即ちエネルギー線硬化性樹脂層33の表面付近に位置させる場合には、前記無機質充填材P31、P32の散布後、エネルギー線硬化樹脂第1層の硬化させるまでの時間を短かくすることにより、一方、内装材本体F3付近に位置させる場合には、前記無機質充填材P31、P32の散布後、エネルギー線硬化樹脂第1層の硬化させるまでの時間を長くすることにより可能となる。
【0033】
また、エネルギー線硬化性樹脂の塗布、次いで無機質充填材の散布、さらに、エネルギー線照射による前記エネルギー線硬化性樹脂の硬化、及び無機質充填材の固着、といういわゆるエネルギー線硬化性樹脂の2回塗布方式で行ってもよく、当該2回塗布方式においても、上記エネルギー線硬化性樹脂の1回塗布方式と同様、無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂層33の表面部に効率的に局在させることができる。
【0034】
本発明内装材において、上述したエネルギー硬化性樹脂の1回塗布方式の場合と同様、エネルギー硬化性樹脂の2回塗布方式の場合も無機質充填材のエネルギー線硬化性樹脂層の表面への局在の程度は、無機質充填材の散布後、エネルギー線硬化性樹脂の硬化させる速度を調節することにより調節することができる。エネルギー線硬化性樹脂の硬化させる速度を調節する方法としては、例えば、照射するエネルギー線の強度の調節、又はエネルギー線照射までの時間の延長等の方法を使用することができる。従って、図1に示すように、無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂層の表面付近に局在することも可能であるし、エネルギー線硬化性樹脂層の内部にも含有させることも可能である。
【0035】
エネルギー線硬化性樹脂層の内部に無機質充填材を沈降させる際には、ほとんどの場合、無機質充填材は粒子径において、平均粒子径より、大きい粒子径を有するもの、及び小さい粒子径を有するものが混在しており、大きい粒子径を有するものは沈降速度が速くなる傾向にあり、一方、小さい粒子径を有するものは沈降速度が遅くなる傾向にある。従って、当該沈降速度の差を利用し、エネルギー線硬化性樹脂層の硬化速度を遅くすることにより、前記小さい粒子径を有する無機質充填材は表面に残存させ、前記大きい粒子径を有する無機質充填材をエネルギー線硬化性樹脂層の内部に沈降させることも可能である。
【0036】
また、比重の異なる無機質充填材を使用した場合も同様であり、比重の大きい無機質充填材がエネルギー硬化性樹脂層の内部に沈降し、比重の小さい無機質充填材をエネルギー硬化性樹脂層の表面に残存させることも可能である。
【0037】
図3に従来のエネルギー線硬化性樹脂層に無機質充填材を含有する一例の内装材の断面図を示す。図3に示すように、予めエネルギー線硬化性樹脂、及び無機質充填材を混合、攪拌後、塗布機によって内装材F2表面に塗布されるため、無機質充填材P21、P22、P23、P24がエネルギー線硬化性樹脂層23の表面、及び内部に存在している。従来のエネルギー線硬化性樹脂層23の表面近傍に存在する無機質充填材P21、P22はエネルギー線硬化性樹脂層23の表面から大きく突出している。当該無機質充填材P21、P22による表面の突出部の間に汚れが溜まりやすくなる一方、前記無機質充填材P21、P22による表面の突出部の間に溜まった汚れを除去することは非常に困難であり、防汚性、及びメンテナンス性の面で問題となる。
【0038】
また、従来のエネルギー線硬化性樹脂層に無機質充填材を含有する内装材において、エネルギー線硬化性樹脂層23に含有する無機質充填材量を少なくすれば、エネルギー線硬化性樹脂層23の表面からの無機質充填材P21、P22の突出部が少なくなるため、防汚性、及びメンテナンス性は改善されるがエネルギー線硬化性樹脂層23表面を保護する無機質充填材P21、P22も少なくなるため、耐摩耗性が劣化する。
【0039】
一方、本発明内装材は、図1に示すように、エネルギー線硬化性樹脂層からの無機質充填材P1、P2による突出が少ないため、汚れが溜まりにくく、除去もしやすい。さらに、エネルギー線硬化性樹脂層の表面に無機質充填材P1、P2を局在させることができるため、少ない無機質充填材の添加量でも耐摩耗性も劣化させることはない
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(表)

(*1)エネルギー線硬化性樹脂:商品名FS2386(三菱レーヨン株式会社製)
(*2)無機質充填材:酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製)
【0041】
実施例については、マチコV(東リ株式会社製)の表面にエネルギー線硬化性樹脂をロールコーターで塗布し、静電散布機によって、酸化アルミニウム粒を前記塗布したエネルギー線硬化性樹脂の表面に所定の添加量になるように均一に散布し、当該酸化アルミニウム粒の散布から20秒以内に紫外線を照射して硬化させた。次に前記と同種のエネルギー線硬化性樹脂をロールコーターで塗布し、紫外線を照射して硬化させた。
【0042】
一方、比較例については、マチコV(東リ株式会社製)の表面に酸化アルミニウム粒とエネルギー線硬化性樹脂を十分に攪拌・混合した後、ロールコーターで塗布し、20秒以内に紫外線を照射して硬化させた。
【0043】
1.摩耗量試験
JISA1453( 建築材料及び建築構成部分の摩耗試験方法)に準じた。摩耗輪と錘とによって試験片に加えられる荷重は500g/片輪とした。また、研磨紙はS−42を使用し、3回の測定結果の平均値を示した。
【0044】
2.耐ヒールマーク試験
ブラックヒールマーク試験機の6角形の箱の内面に試験片を両面テープで貼り付け、ゴム片6個を入れ30分(15分反転)回転さす。取り外し後かるく乾拭きし目視判定する。
但し、ブラックヒールマーク試験機の6角形の箱の回転速度は63rpm/分、ゴム片は50mm角の直方体でゴム片の材質はNBR90とした。
(判定方法)
○ : 汚れが残らない。
△ : 汚れがやや残る。
× : 汚れが著しい。
により判定した。
【0045】
上記表より、実施例1、2、及び比較例1、2とを対比すると実施例1、2の摩耗量が遥かに優れていることがわかる。また、実施例1、6、7、及び比較例1、2とを対比すると、本発明による実施例1、7ではエネルギー線硬化性樹脂に含有されている無機質充填材量が比較例1、2より少ないか、或いは同等であったものも優れた摩耗性を有している。
【0046】
また、同表における実施例1〜7より、耐ヒールマーク性も比較例1、2と同程度有することがわかる。従って、本発明により耐摩耗性、及び耐汚性を兼備した内装材が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明内装材の一例の部分断面図を示す。
【図2】本発明内装材の他の一例の部分断面図を示す。
【図3】従来のエネルギー線硬化性樹脂層に無機質充填材を含有する一例の内装材の断面図を示す。
【符号の説明】
【0048】
1、31:本発明内装材
21:従来の無機質充填材を含有するエネルギー線硬化性樹脂層を表面に設けた内装材
2:エネルギー線硬化性樹脂第2層
3:エネルギー線硬化性樹脂第1層
23、33:エネルギー線硬化性樹脂層
F1、F2、F3:内装材本体
P1、P2、P21、P22、P23、P24、P31、P32:無機質充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材。
【請求項2】
エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより、前記無機質充填材を固定し、前記固定された無機質充填材とエネルギー硬化性樹脂とにより形成された層の表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、エネルギー線を照射して前記表面に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材。
【請求項3】
無機質充填材が、酸化アルミニウム、シリカ、金剛砂の何れか一、又は二以上であることを特徴とする請求項1、又は2記載の内装材。
【請求項4】
表面層が、20〜300μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の内装材。
【請求項5】
無機質充填材の平均粒子径が、表面層の厚みの50〜120%であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の内装材。
【請求項6】
エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材の製造方法。
【請求項7】
エネルギー線硬化性樹脂からなる表面層と、一以上の層からなる下層とから形成された内装材であって、前記表面層が、前記下層表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、前記塗布されたエネルギー線硬化性樹脂の表面に無機質充填材を均一に散布後、エネルギー線を照射して前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させることにより、前記無機質充填材を固定し、前記固定された無機質充填材とエネルギー硬化性樹脂とにより形成された層の表面にエネルギー硬化性樹脂を塗布し、エネルギー線を照射して前記表面に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂を硬化させることにより形成された表面層を有することを特徴とする内装材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−277439(P2007−277439A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107043(P2006−107043)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】