説明

内視鏡の湾曲操作ノブ

【課題】製造時に指掛け部に歪みが発生せず、しかも重量が重くならず良好な操作性を得ることができる内視鏡の湾曲操作ノブを提供すること。
【解決手段】挿入部1の基端に連結された操作部4に回転操作できるように配置されて、プラスチック成形により環状部52の周囲に複数の指掛け部51が放射状に突出形成され、各指掛け部51が、外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部54と、その外皮部54に包まれる状態にプラスチック成形された中子部55とを有するものにおいて、中子部55を外皮部54より低密度の材料により形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の湾曲操作ノブに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡には一般に、挿入部の先端付近に設けられた湾曲部を遠隔操作により屈曲させるための湾曲操作ノブが回転操作できるように操作部に配置されており、そのような内視鏡の湾曲操作ノブは一般に、プラスチック成形により環状部の周囲に複数の指掛け部が放射状に突出形成された形状に形成されている。
【0003】
そして、そのような内視鏡の湾曲操作ノブの各指掛け部を中空に形成すると、防水上の問題が生じないようにするために製造工程やメンテナンス等が著しく煩雑になり、かと言って、一度のプラスチック成形で中実に形成しようとすると厚肉部にヒケが生じて形状に歪みが発生してしまう。
【0004】
そこで、全部の指掛け部の外面部分を覆う外皮部のプラスチック成形工程と、各指掛け部において外皮部に包まれる中子部のプラスチック成形工程とを分けて、先にプラスチック成形した中子部に外皮部を後から被せる状態にプラスチック成形していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−135384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、指掛け部を中子部と外皮部とに分けてプラスチック成形する場合でも、指掛け部が中実に構成されていると中空の場合に比べて操作部が著しく重くなって操作性を阻害してしまう問題があり、かと言って中空の構成にすると前述のようが問題が発生してしまう。
【0006】
そこで本発明は、製造時に指掛け部に歪みが発生せず、しかも重量が重くならず良好な操作性を得ることができる内視鏡の湾曲操作ノブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の湾曲操作ノブは、内視鏡の挿入部の先端付近に設けられた湾曲部を遠隔操作により屈曲させるための内視鏡の湾曲操作ノブであって、挿入部の基端に連結された操作部に回転操作できるように配置されて、プラスチック成形により環状部の周囲に複数の指掛け部が放射状に突出形成され、各指掛け部が、外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部と、その外皮部に包まれる状態にプラスチック成形された中子部とを有するものにおいて、中子部を外皮部より低密度の材料により形成したものである。
【0008】
なお、複数の指掛け部の各々に形成された中子部が環状部に沿って一つながりにつながって形成されていてもよく、中子部が発泡プラスチック材により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内視鏡の湾曲操作ノブによれば、各指掛け部を、外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部とその外皮部に包まれる状態にプラスチック成形された中子部とで構成したことにより、指掛け部が一度の成形で中実に形成されないので製造時にヒケ等の歪みが発生せず、しかも、中子部が外皮部より低密度の材料で形成されていることにより、重量が重くならないので良好な操作性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
挿入部の基端に連結された操作部に回転操作できるように配置されて、プラスチック成形により環状部の周囲に複数の指掛け部が放射状に突出形成され、各指掛け部が、外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部と、その外皮部に包まれる状態にプラスチック成形された中子部とを有するものにおいて、中子部を外皮部より低密度の材料により形成する。
【実施例】
【0011】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図5は内視鏡の全体構成を示しており、フレキシブルな可撓管状の挿入部1の先端付近には遠隔操作により屈曲する湾曲部2が形成されて、対物光学系等を内蔵する先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。
【0012】
挿入部1の基端に連結された操作部4には、湾曲部2を屈曲操作するための湾曲操作ノブ5,6が中心軸周りに回転自在に配置されていて、湾曲操作ノブ5,6を回転操作することにより、挿入部1内に挿通配置された複数の操作ワイヤ7が選択的に牽引されて、二点鎖線で示されるように湾曲部2を任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる。
【0013】
湾曲操作ノブ5,6としては、湾曲部2を観察視野の上下方向に屈曲させる操作を行うための上下方向用湾曲操作ノブ5と、観察視野の左右方向に屈曲させる操作を行うための左右方向用湾曲操作ノブ6とが、各々独立して回転操作できるように重ね合わせて同軸位置に配置されている。そのような湾曲操作機構は公知なので、機構についての詳細な説明は省略する。
【0014】
図3と図4は上下方向用湾曲操作ノブ5の単体の正面図と背面図であり、上下方向用湾曲操作ノブ5は、プラスチック成形により環状部52の周囲に5個の指掛け部51が放射状に突出形成されて、ほぼ星型の形状に形成されている。図3に示される53は、図示されていない金属製の角板を嵌め込むための角型の凹部であり、後述する外皮部54側に形成されている。
【0015】
各指掛け部51は、図3におけるI−I断面を図示する図1、及び図1におけるII−II断面を図示する図2に示されるように、上下方向用湾曲操作ノブ5全体の外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部54と、その外皮部54に包まれる状態にプラスチック成形された中子部55とにより形成されている。
【0016】
そのような外皮部54と中子部55は、まず中子部55が単独でプラスチック成形された後に、中子部55を囲む状態に外皮部54が全体的にほぼ一様な肉厚でプラスチック成形される。その結果、上下方向用湾曲操作ノブ5(特に外皮部54)を歪みなくプラスチック成形することができる。
【0017】
各指掛け部51内に位置する中子部55は、環状部52に沿って形成されたつながり部55aにより全体として一つながりの形状に形成されて、外皮部54より一回り小さな星型に形成され、その内周面部分には、位置決め用凹部56が各指掛け部51の位置に対応して形成されている。
【0018】
そのように構成された上下方向用湾曲操作ノブ5の外皮部54は例えば変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等のような機械的強度の大きなプラスチック材により形成されているが、中子部55は、例えばPE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロプレン)等のように外皮部54に比較して低密度(即ち、低比重)のプラスチック材により形成されている。
【0019】
したがって、各指掛け部51の内部が中実になっていても上下方向用湾曲操作ノブ5の重量がさほど重くならないので、操作部4を保持する術者に負担を与えず、良好な操作性を得ることができる。
【0020】
なお、中子部55の材料としては発泡プラスチック材を用いるのが非常に効果的であるが、発泡プラスチック材以外であっても、外皮部54と同種又は異種の材料であって外皮部54より低密度のプラスチック材であればよい。
【0021】
また、指掛け部51の数は5個以外(例えば4個又は6個等)であってもよく、本発明を左右方向用湾曲操作ノブ6に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の上下方向用湾曲操作ノブの側面断面図(図3におけるI−I断面図)である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の上下方向用湾曲操作ノブの正面断面図(図1におけるII−II断面図)である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の上下方向用湾曲操作ノブの単体の正面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の上下方向用湾曲操作ノブの単体の背面図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 挿入部
2 湾曲部
4 操作部
5 上下方向用湾曲操作ノブ
51 指掛け部
52 環状部
54 外皮部
55 中子部
55a つながり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端付近に設けられた湾曲部を遠隔操作により屈曲させるための内視鏡の湾曲操作ノブであって、上記挿入部の基端に連結された操作部に回転操作できるように配置されて、プラスチック成形により環状部の周囲に複数の指掛け部が放射状に突出形成され、上記各指掛け部が、外面部分を覆う状態にプラスチック成形された外皮部と、その外皮部に包まれる状態にプラスチック成形された中子部とを有するものにおいて、
上記中子部を上記外皮部より低密度の材料により形成したことを特徴とする内視鏡の湾曲操作ノブ。
【請求項2】
上記複数の指掛け部の各々に形成された中子部が上記環状部に沿って一つながりにつながって形成されている請求項1記載の内視鏡の湾曲操作ノブ。
【請求項3】
上記中子部が発泡プラスチック材により形成されている請求項1又は2記載の内視鏡の湾曲操作ノブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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