説明

内視鏡クリッピングデバイス

止血クリッピングデバイスを提供している。該デバイスは第1及び第2の細長いアームを備え、各アームは遠位部分及び近位部分を有し、該アームは第1及び第2のアームの間での相対運動を可能にするように連結され、該第1及び第2のアームのそれぞれの遠位部分は、各アームの遠位端から各アームの近位部分に向かって延びて途中で終端するように形成されたトラックを備えている。クリップが第1及び第2のアームのそれぞれの対向する遠位部分の間に摺動可能に配置され、該クリップはそれぞれ遠位部分及び近位部分を有する第1及び第2のフィンガーを備え、前記第1及び第2のフィンガーの近位部分は、前記第1及び第2のフィンガーの遠位部分が互いに向かって付勢されるように接続され、第1及び第2のフィンガーはその遠位端部分から半径方向外側に伸張しているピンをそれぞれさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年4月29日に出願された米国特許仮出願第61/173、872号に基づく優先権を主張しており、該出願の全体は、これに言及することにより本明細書に参考として組み入れられている。
【0002】
本開示はクリップに、より具体的には、消化管に沿って血管の恒常性をもたらすために使用できるクリップ、及び消化管へクリップを取り付けるためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、止血、マーキング及び/又は結紮を目的として、クリップを体腔の生体組織を把持するために内視鏡を通して体腔内に導入することが可能とされている。さらに、クリップは現在、消化性潰瘍、マロリーワイス裂傷、デュラフォイ病変、血管腫、乳頭切開術後出血、及び活動性出血を伴う微小静脈瘤などの、消化管出血に関連する多数の用途に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消化管出血は、いくらか一般的になっており、放置すれば多くの場合に致命的となる深刻な症状である。この問題は、硬化剤の注入及び接触熱凝固技術などの止血を行なうための多くの内視鏡的治療法の開発を促している。そのような方法は多くの場合には有効であるが、多くの患者には出血が続き、その結果、修正手術が必要となる。手術は、高い罹患率及び他の多くの望ましくない副作用に繋がる侵襲的な手法であるため、極めて効果的で低侵襲な処置が必要とされている。
【0005】
機械的止血デバイスは、胃腸への応用を含む体のさまざまな部分で使用されている。このようなデバイスは、典型的には、血流を制限又は中断するために、血管に十分な締付け力を加えることができるクランプ、クリップ、ステープル、縫合糸、などの形態をしている。しかしながら、従来の止血デバイスに付随する問題の一つは、それらが切開又はトロカールのカニューレにより剛性軸の器具を使用してのみ送達できることである。さらに、従来の止血デバイスの多くは、永久的な止血をもたらすほど十分な強度を有していない。
【0006】
従来の止血デバイスでよく直面するもう一つの問題は、患者内で標的領域に到達し、その後、一旦クリップが標的部位に取り付けられると送達器具からクリップデバイスを迅速且つ容易に解放するのに先立って、該送達器具にクリップデバイスを固定することが困難であることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
クリッピングデバイスの第1の代表的な実施形態を提供している。該デバイスは、第1及び第2の細長いアームを備え、各アームは遠位部分及び近位部分を備えている。該アームは、第1及び第2のアームの間で相対運動を可能にするように連結されている。第1及び第2のアームのそれぞれの遠位部分は、各アームの遠位端から各アームの近位部分に向かって延びて途中で終端するように形成されたトラックを含んでいる。クリップが、第1及び第2のアームのそれぞれの対向する遠位部分の間に摺動可能に配置されており、該クリップは遠位部分及び近位部分をそれぞれ有する第1及び第2のフィンガー備えている。第1及び第2のフィンガーの近位部分は、前記第1及び第2のフィンガーの遠位部分が互いに向って付勢されるように接続されている。第1及び第2のフィンガーそれぞれは、その遠位端部分から半径方向外側に伸張するピンを備えている。第1のフィンガーからのピンは第1のアームのトラック内に摺動可能に受け入れられ、第2のフィンガーからのピンは第2のアームのトラック内で摺動可能に受け入れられている。
【0008】
クリッピングデバイスの第2の代表的な実施形態を提供している。該デバイスは、細長い第1及び第2のアームを備え、各アームは遠位部分及び近位部分を備えている。該アームは第1及び第2のアームが実質的に互いに平行に配置される第1の閉じた位置と第1及び第2のアームが互いに対して斜角に配置される第2の開いた位置の間で選択的な枢動運動を可能にするように枢動可能に連結されている。第1及び第2のアームのそれぞれの遠位部分は各アームの遠位端から各アームの近位部分に向かって延びて途中で終端するように形成されたトラックをさらに備えている。クリップが、第1及び第2のアームのそれぞれの対向する遠位部分の間に摺動可能に配置され、且つそれぞれ遠位部分及び近位部分を有する第1及び第2のフィンガーを備え、第1及び第2のフィンガーそれぞれはその遠位端部分から半径方向外側に伸張しているピンをさらに備えている。第1のフィンガーからのピンは第1のアームのトラック内に摺動可能に受け入れられ、第2のフィンガーからのピンは第2のアームのトラック内に摺動可能に受け入れられている。前記第1及び第2のフィンガーの前記遠位部分を付勢するように前記第1及び第2のフィンガーの近位部分が連結されて、各フィンガーから伸張する前記ピンが各アームの前記トラックと係合されているときに、前記第1及び第2のアームが前記閉じた位置に付勢されるようになされている。
【0009】
クリッピングデバイスの別の代表的な実施形態は、該デバイスに取り付けられた2つの枢動可能なアームを有する細長い柔軟性のあるカニューレを含んでいる。該アームは、そこに係合される1つ以上の伝達部材を用いて遠隔的に枢動可能である。該アームは、その遠位部分を貫通して延びて途中で終端するように形成されたスロットを含み、該スロットは、クリップの対向するフィンガーから外側に伸張しているピンを受け入れている。該クリップは、アームがそこに力を加えられるとき開かれ、該クリップの内側への付勢力によって該力が取り除かれるとき閉じられるように、内側に付勢されている。
【0010】
クリッピングデバイスのさらに別の代表的な実施形態では、第1及び第2の対向するフィンガーを有する柔軟性のあるクリップを含み、各フィンガーは、その遠位端に配置された顎部分と、該クリップの外側表面から半径方向外側に伸張するピンを備えている。第1及び第2のフィンガーは接続されて、第1及び第2の顎部が互いに極めて近接した状態で閉じた位置に付勢されるように構成されている。
【0011】
本開示のもう一つの代表的な実施形態は、細長い第1のフィンガーと細長い第2のフィンガーを含み、前記第1及び第2のフィンガーのそれぞれは、各フィンガーの対向する遠位端を互いに向かって動かすように互いに一体となっている近位端を備えている。各フィンガーの前記遠位端に隣接した各フィンガーの外側表面から半径方向外側に伸張しているピンが伸張している。第1及び第2のフィンガーの対向する側の顎部に向かってそれぞれ延在する第1及び第2のフィンガーの遠位端に、顎部が画定されている
【0012】
本開示の利点は、例示として示され説明されている本開示の好ましい実施形態の以下の記述から、当業者に更に明らかになるであろう。理解されるように、開示された主題は、他の及び異なる実施形態が可能であり、その詳細は様々な観点で変更が可能である。従って、図面と説明は、事実上例示的なものとして見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の止血クリッピングデバイスであって、その内部に配置された2つのクリップにより、閉じた位置にあるデバイスの斜視図である。
【0014】
【図2】開いた位置にある、図1のクリッピングデバイスである。
【0015】
【図3】閉じた位置にある、図1のクリッピングデバイスの斜視図である。
【0016】
【図4】図3のクリッピングデバイスが、開いた位置にある状態の図である。
【0017】
【図5】閉じた位置にある、止血クリップピングデバイスの斜視図である。
【0018】
【図6】開いた位置にある、図5のデバイスである。
【0019】
【図7】図1のデバイスで使用可能な、閉じた位置にあるクリップの側面図である。
【0020】
【図8】クリップで閉じられる組織に隣接して模式的に示されている開いた位置にある、図7のクリップである。
【0021】
【図9】図8のクリップが閉じた位置にあり、組織を閉じている状態の図である。
【0022】
【図10】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【図11】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【図12】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【図13】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【図14】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【図15】第1及び第2のアームの遠位端及び第1及び第2のフィンガーの遠位端の様々な構成を示す、図1の細部Aの前面図である。
【0023】
【図16】閉じた位置にある、別の止血クリッピングデバイスの斜視図である。
【0024】
【図17】開いた位置にある、図16のクリッピングデバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1−4を参照すると、止血クリップ付与デバイス10の第1の典型的な実施形態が示されている。該デバイスは、共にピン留めされ、且つ互いに対して鋏のようなメカニズムで枢動する一対の第1及び第2のアーム20、30を有する。第1及び第2のアーム20、30はその間に1つ以上の止血クリップ70を収容しており、該クリップは人又は哺乳動物などの患者の胃腸管(Gl track)又は患者の同様の領域における傷つけられた開口部を機械的に閉じるためにデバイス10から押し出すことができる。カニューレ60は、第1及び第2のアーム20、30から後方に延在しており、デバイス10の近位端を画定するようにアームから離れて延在してもよい。クリップ70が患者の組織に利用されるときに最も遠位のクリップ70をデバイス10から抜け出るように押し進め、またデバイス10内の隣のクリップを、第1及び第2のアーム20、30の遠位端22、32に隣接した位置まで進めるために、カニューレ60は、カニューレ60内を貫通して移動できるスタイレット又はロッド66を収容している。幾つかの実施形態では、スタイレット66はその近位端部分(即ち、カニューレ60から抜け出て延在する部分)にマーキングを有しており、該マーキングは、患者にクリップを1つずつ正確に取り付けるとともに、患者に取り付ける次のクリップ70を適切に位置決めするための視覚参照ガイドを使用者に提供するために、クリップ70の長さと実質的に同じ距離に(又は、別の適切な構成で)離間されている。幾つかの実施形態では、カニューレ60は、そこにルーメンを画定する固く巻かれたコイルバネ(coilspring)によって形成することができる。カニューレ60は、胃腸管(Gl track)内の所望の位置に配置するのに十分な長さを提供するために、内視鏡として従来から到達可能である約230センチメートルの長さであってもよい。カニューレ60は、デバイス10の患者への挿入に伴う摩擦を最小限に抑えるために、例えばPET、PEBAX、テフロン(登録商標)、PEEK、ナイロン等の低摩擦の外側コーティングを有していてもよい。
【0026】
第1のアーム20は、遠位端部分22と近位端部分24を備え、それらの間にピン連結を有する細長い部材である。第1のアーム20は、2つのアーム20、30を整列させて相対的な枢動を対して可能にするピン連結又は同様の連結で、第2のアーム30に枢動可能に連結されている。ピン連結40は、第1及び第2のアーム20、30の両方(及びカニューレ60)の孔を貫通する単一のピンを有してもよい。他の実施形態では、ピン連結は、実質的に互いに同一線上にあり、カニューレ60の反対側に独立して連結される2つのピンで形成されてもよい。2つのピンの使用は、カニューレ60内のルーメンをスタイレット66を貫通させるために空けておきつつ、第1及び第2のアーム20及び30の間に枢動可能なピン連結40を可能にする(即ち、各アームは静止したカニューレ60にピン留めされている)。
【0027】
第2のアーム30は第1のアーム20と同様に構成され、遠位端部分32と近位端部分34を有し、それらの間にピン連結40を同様に備えている。以下に考察するように、第1及び第2のアーム20、30のそれぞれの外側の構造は、第1及び第2のアーム20、30が隣接した位置に合わせられるとき、デバイス10の長さ部に沿って第1及び第2のアーム20、30の外側表面が実質的に円形断面を形成するように概ね半円となっている(図1、3)。幾つかの実施形態では、デバイス10は、2.8ミリメートルの内視鏡チャネル内に収まり、且つ該チャネルに沿って並進させられるように構成されている。他の実施形態では、該デバイスは、3.2ミリメートルの、及び他の一般的に使用される内視鏡チャネルなどの異なる大きさのルーメン内で移動するように構成されている。或いは、デバイス10は、柔軟性のあるシース又はカテーテルのルーメンを通して、或いは内視鏡の代わりに挿入されるように寸法を設定し且つ構成することができる。
【0028】
第1及び第2のアーム20、30のそれぞれの遠位端部分22、32は、遠位端部分22、32の長さ部に沿って、その遠位端から、それぞれのアーム20、30の遠位端部分22、32の長さ部の少なくとも一部を通って延びて途中で終端するように形成されているトラック28を含んでいる。トラック28は、デバイス10内に配置されるように意図された多数のクリップ70から伸張するピン78を受け入れるのに十分な長さのものである。以下詳細に考察するように、具体的には、それぞれのアームのトラック28内に摺動可能に受け入れられるクリップ70からピン78が伸張する第1及び第2のアーム20、30の遠位部分22、23の間に、1つ以上のクリップ70を配置することができる。例えば、2つのクリップを保持するように意図されたデバイスに関して、トラック28は、アーム20、30の間に配置された各クリップ70のピン78がトラック内に摺動可能に受け入れられるように、第1のクリップ70及び遠位端と外側に伸張するピン78の間の第2の(後方に組み入れられた)クリップ70の長さより少なくとも僅かに長いものでなければならない。他の実施形態では、デバイスが3つ以上のクリップ70を保持するように構成される場合には、トラック28は2つのクリップより少なくとも僅かに長いものでなければならない(即ち、トラック28は、デバイス10内に配置されるべきクリップの数より1つ少ないクリップの組み合わされた長さより僅かに長いものでなければならない)。
【0029】
トラック28はアームの壁厚全体を貫いて画定されているスリットであってもよく(図10)、或いは別のトラック28はアームの壁厚の一部分だけを貫いて画定されていてもよい(図13)。トラック28は平行側壁、湾曲側壁を有していてもよく、キー溝28aを画定していてもよい(図11、14、15)。
【0030】
第1及び第2のアーム20、30のそれぞれの近位端部分24、34、及びそれぞれのピン連結40は、カニューレ即ち第1及び第2のアーム20、30を越えて後方に延在するチューブ60を囲んでいる。デバイス10が患者体内で内視鏡に挿通されて抜け出るとき、遠隔的に操作されることを可能にするために、カニューレ60はアーム20、30と連通して該アームを操作するためのルーメンを提供する細長い部材である。カニューレ60は、カニューレ60を通って延在し、且つ第1及び第2のアーム20、30の間に配置された最後尾のクリップ70の近位端部分71と選択的に係合している細長いスタイレットの移動用ルーメンを提供している。以下に考察するように、クリップ70が患者体内に留まり、且つクリップ70の顎部74、75の間に患者の組織を閉じたままにすることを可能にするために、スタイレット66はさらにカニューレ60に押し込まれ、デバイス10から抜け出た最も遠位のクリップ70を引き続き押し進めることができる。
【0031】
また、カニューレ60は、第1及び第2のアーム20、30から延在して、デバイス10を第1の閉じた位置(図1)から第2の開いた位置(図2)まで遠隔的に動かすために、医師によって操作できる2つ以上の操作ワイヤ82、84を支持し囲むことができる。幾つかの実施形態では、ワイヤ82、84はカニューレ60内に取り囲まれており、カニューレ60から抜け出て該カニューレの近位端64で伸張している。カニューレ60及びワイヤ82、84はハンドル90及び操作部92に結合されて、ワイヤに張力を発生させるための操作部92によってワイヤが選択的な張力が加わった状態で引っ張られるように配置されており、それによって、鋏のようなピン結合があることで、第1及び第2のアーム20,30の各近位端が互いに離れる方向に引っ張るようにすることができる(各アームの遠位端22,32は同様に互いから離れる方向に枢動する)。
【0032】
他の実施形態では、ワイヤ82、84をトラック93内で前方に摺動させられる操作部92によって、カニューレ60内で圧縮した状態で押すことができ、該ワイヤは、アーム20、30の近位端24、34(及び、枢動点40の反対側のアームの遠位端22、32)にクリップ70の内向きの付勢力に抗して互いから離れて伸張するようにさせる。クリップ70の持続的な内向きの付勢力があるので、止血クリッピング処置の間、クリップ70とアーム20、30を開いたままにするために、使用者は操作部92をアクティブな位置(例えば、図6に示すようにトラック93内の前方位置)に保持する必要がある。
【0033】
幾つかの実施形態では、第1及び第2のアーム20、30(及び、それぞれのアームに連結されているそれぞれのフィンガー72、73)が独立して枢動することができる一方、他の第1及び第2のアーム20、30が静止したままであるように、第1及び第2のワイヤ82、84は別個の専用の各操作部92に接続さる。ハンドル90の反対側に配置され、使用者の操作部と係合する親指や他の指が同時に各操作部或いは一度に単一の操作部を双方とも容易に操作できるように、互いに隣接した2つの専用の操作部を有する専用の操作部は、操作部92と類似していてもよい。
【0034】
ワイヤ82、84は、それぞれのアームの孔を通して延在する、或いはワイヤでアーム20、30を固定するための、他の既知の構造を使用するループ(図1を参照)を形成することにより、アーム20、30の近位端に接続することができる。ワイヤ82、84は、デバイスの全体のサイズ、重量、及びコストに著しく寄与することはなく、必要な圧縮力(又は張力)を支持するのに十分に強力な細い引抜きのステンレススチール、ニチノール、又は別の金属から作ることができる。幾つかの実施形態では、ワイヤ82、84は、互いから離れてアーム20、30を回転させるように押されているときに、座屈又は屈曲を避けるのに必要なだけの剛性を有する材料から作られている。幾つかの実施形態では、カニューレ60は、1つ以上のワイヤルーメンであって、ワイヤを支持してハンドル90からアーム20、30にまで導くようになっており、ワイヤが圧縮荷重下に置かれたときに該ワイヤルーメン内で座屈又は屈曲しないようにワイヤの外側断面と同様な内側断面を有するワイヤルーメンを画定している。アーム20、30は、ワイヤ82、84によって(最終的に操作部92から)該アームに掛けられた力が解放されるとき、互いに向かって回転するように構成されている。第1及び第2のアーム20、30の遠位端部分22、32の間に摺動可能に配置されたクリップ70は、閉じられる位置に向けて付勢されており(図1、7、及び9)、クリップ70の閉じる付勢力は、ワイヤ(及び操作部92)からのアーム上の力が解放されたときに、アームを互いに向かって付勢するようになっている。
【0035】
他の実施形態では、第1及び第2のアーム20、30は細長いワイヤ82、84以外の力伝達機構で遠隔的に回転させることができる。たとえば、幾つかの実施形態では、スタイレット66(又は、相対運動がカニューレ60とアーム20、30の間で可能な場合にはカニューレ60)の遠位端部分67は、スタイレット66(又はカニューレ60)の長手方向の動作がアーム20、30の回転を引き起こすように、第1及び第2のアーム20、30上に配置された(ピニオンの歯などの)補足的な歯に係合する(ラックの歯などの)複数の歯車の歯を有していてもよい。その他の既知の力伝達構造がアーム20、30の遠隔枢動を可能にするように企図される。
【0036】
最も外側のクリップ70(即ち、スタイレット66の遠位運動と共にアーム20、30から最初に放出されるクリップ70(後述))の近位端が、デバイス10内に配置された隣のクリップ70の遠位端に近接又は接触して配置されるように、1つ以上のクリップ70を一連の関係に配置されたクリップ70を有する第1及び第2のアーム20、30の各遠位端部分の間に設けることができる。図7−9に示すように、クリップ70は、その近位端71で互いに固定又は連結された第1及び第2のフィンガー72、73を有している。幾つかの実施形態では、第1及び第2のフィンガー72、73は、クリップ70の最終形状に加工され、曲げられ或いは他の方法で変形された2つのフィンガー72、73と共に一体となって形成することができる。他の実施形態では、第1及び第2のフィンガー72、73は、近位端におけるピン留めジョイント、溶接ジョイント、接着ジョイント、メカニカルファスナーなどのジョイントと共に取り付けられている2つの別個の部材であってもよい。
【0037】
第1及び第2のフィンガー72、73は互いに向かって付勢されてもよい。即ち第1及び第2のフィンガー72、73は、その遠位部分、及び特に第1及び第2のフィンガー72、73それぞれの顎部74、75が通常は互いに係合(又は互いの近接を維持)するために付勢されるように共に付勢される。幾つかの実施形態では、第1及び第2のフィンガー72、73を形成する材料が、第1及び第2のフィンガー72、73が概ね互いに平行に配置される方向に動かされるとき、クリップ70の第1及び第2フィンガー72、73の内向きの付勢力は設定された付勢力と共に付勢される。第1及び第2のフィンガー72、73は、組織を間にしっかりと保持して支援する顎部が噛み合うとき、第1及び第2の顎部74、75の間に圧縮力をもたらすように、共に付勢される構成とすることができる。第1及び第2のフィンガー72、73がピン留め又は他の方法で共に固定される実施形態では、第1及び第2のフィンガー72、73は、それらが連結される近位端に接続して配置される(螺旋状のバネなどの)バネ71b(図9)で付勢されてもよい。第1及び第2のフィンガー72、73は、クリップ70によって閉じられるべき患者の組織(T、S、R、図8−9)に位置合わせをするために、顎部74、75が離れるようにすることができるピン78とトラック28の間の係合により、第1及び第2のアーム20、30の枢動で開かれた形態(図2、8)まで拡張可能なように構成されている。以下詳細に考察するように、クリップ70の顎部が閉じられるべき所望の組織T、S、Rと適切に位置合わせされたときに、(操作部92が解放されるとき、アーム20、30が閉じられた位置まで戻ることができるようにすることで)第1及び第2のフィンガー72、73への外向きの力が解放されてクリップ70は通常の閉じた位置にまで戻り、クリップ70の顎部74、75が所望の組織T、S、R(図9)に係合した状態となる。
【0038】
図10−15に示すように、クリップ70が通常の係合位置(図1、7、9)にあるとき、第1及び第2のフィンガー72、73のそれぞれの顎部74、75は、幾つかのパターン又は形状で構成されてもよく、また第1及び第2の顎部74、75が係合するよう構成されてもよい。理解し易いように、図10−15は顎部74、75を閉じた位置に極めて接近した状態で描いている。図10−15に示した顎部74、75は、閉じた位置にあるときには、通常互いに接するように構成することができることを、当業者は理解するであろう。
【0039】
図10に示すように、第1及び第2の顎部74、75は、そこに配置された、各顎部に歯を形成する、1つ以上の山部76と谷部77を有していてもよい。クリップ70が通常の位置にあるとき、第1の顎部74の山部76が第2の顎部75の谷部77と適合して合致するように、また第2の顎部75の山部76が第1の顎部74の谷部77と適合して合致するように、山部76と谷部77は、向かい合った顎部に配置された山部76及び谷部77と実質的に同じ寸法及び形状であってもよく、また向かい合った顎部の向かい合った位置に配置されてもよい。図14に示す他の実施形態では、クリップ70が通常の位置にあるとき、第1の顎部74の先端が互いに接触する(又は互いに極めて近接して並ぶ)ように、向かい合った顎部74、75の山部76と谷部77は互いと適合して配置することができる。
【0040】
さらに他の実施形態では、顎部74、75は、平面(図11)、示された(図13)又は示されていない対向した段のある面76e、77e、或いは示された(図12)又は示されていない弓状面76b、77b、などの複数の異なる形状を有することができる。幾つかの実施形態では、第1及び第2の顎部74、75は、その上に、記載内(即ち、図15に示す、向かい側の顎部の谷部77と合致する1つの顎部の山部76)であっても、又は記載外であってもよい、2つ以上の山部76と谷部77を有することができる。
【0041】
先に説明し、また図10−15に示すように、第1及び第2のフィンガー72、73のそれぞれは、各ピンの外側表面から半径方向外側に伸張するピン78を含んでいる。幾つかの実施形態では、ピン78は、それぞれのフィンガー72、73の遠位端に隣接して、及び各フィンガーの顎部74、75に隣接して配置されている。ピン78は、それぞれ第1及び第2のアーム20、30の遠位端部分22、32内に画定されたトラック28内に受け入れられるように構成されている。幾つかの実施形態では、ピン78は拡大ヘッド部分78aを有する円筒形の部材であり(図10)、クリップ70の内向きの付勢力に抗してトラック28と係合したピン78を保持するために、円筒形の本体部分がトラック28を画定しているそれぞれのアームの壁の間で伸張するように構成され、且つヘッド部分がアームの外側表面に接触して配置されている。幾つかの実施形態では、ヘッド部分は、クリップ70の付勢力に抗してトラック28内にピン78を保持するのに十分な大きさの直径を持つ立方体又は箱状(図10)、球状(図12、78d)、円盤型、楕円形であってもよく、或いは任意の形状に形成されてもよい。
【0042】
図11、14、及び15に示す他の実施形態では、ピン78はキー78cであっても(又は含んでも)よく、該キーの側面は、非平行であり、それぞれのアーム内でトラックの28aを画定する同様の大きさのキー溝28b内に重なるように構成されている。図13−15に示す幾つかの実施形態では、トラック28はアームの壁を貫いて部分的にしか画定されておらず、ピン78は、クリップ70の内向きの付勢力に抗して、該トラックと該ピン間の摺動連結を維持するために、トラック28内の解放容積内に摺動するように構成された頭部を有する大きさとなっている。図15に示す実施形態では、第1及び第2のアーム20、30の遠位端部分22、32(場合によっては、第1及び第2のアーム20、30の長さ全体)は、使用時に内視鏡のルーメンを通して患者に挿入されるデバイス10の全体の幅とサイズを最小化するために、クリップ70の第1及び第2のフィンガー72、73(及び顎部74、75)の幅に実質的に等しい幅で形成されている。
【0043】
幾つかの実施形態では、ニチノールの超弾性特性を利用するために、クリップ70はニチノール又は種々の合金で形成されてもよい。幾つかの実施形態では、クリップ70は、約3から約14%のパラジウム、又は他の放射線不透過性の要素を有する合金などの、放射線不透過性の特性を示すニチノールの合金から形成することができる。クリップ70は、様々な形状や大きさに形成することができるが、フィンガーが弛緩位置にある場合(図7,9)は、通常、対向するフィンガー72、73は実質的に平行である。クリップ70は、開いた位置にあるとき(図8)、第1及び第2のフィンガー72、73が、対向する顎部74、75の間に約11ミリメートルの開口部を形成するために拡張可能であるように構成された状態で、約1.27センチメートル(0.5インチ)の長さであり得る。理解されるように、クリップ78(及びデバイス10の他の部分)は患者内の他の用途のための様々な形状やサイズで構成することができる。クリップ70は、クリップ70の複数回の使用後に閉じた位置への付勢力を維持しながら、デバイス10の操作中に複数回の開閉が可能であるのに十分な強さであるように構成されている。
【0044】
図16−17を参照すると、止血クリッピングデバイス200の別の代表的な実施形態が提供されている。デバイス200は、上記デバイス10に関して説明したものと同様な多くの構成部品を含んでおり、簡潔にするために同様の構成部品が同様な符号で説明されている。デバイス200は、枢動点40に枢動可能に取り付けられている第1及び第2のアーム220、230と、第1及び第2のアーム220、230の近位部分の間に延在し、例えば230センチメートルの長い距離に向かってアームの近位方向にさらに延在するカニューレ60を含んでいる。カニューレ60は、第1及び第2のアーム220、230間に配置されたクリップ70の位置決め及び除去を補助するために該カニューレを貫通してスタイレット又はロッド66を収容するように構成されている。
【0045】
第1のアーム220は、遠位端部分222と近位端部分224を含む細長い部材である。第1のアーム220は、合致して互いに対して2つのアーム220、230の相対枢動を可能にするピン留めされた又は類似の連結40で第2のアーム230に枢動可能に連結されている。第1及び第2のアーム220、230は、アームが開かれた位置(図17)に枢動されるとき「V」の形を形成するように、アーム220、230の近位端に近接して配置された枢動点40と共に枢動可能に連結されている。ピン連結40は、第1及び第2のアーム220、230の両方(及びカニューレ60)の孔を通って延在する単一のピンを有することができる。他の実施形態では、ピン連結40は、実質的に互いに一直線上にあって、カニューレ60の反対側に独立して連結される2つのピンで形成することができる。2つのピンの使用は、カニューレ60内のルーメンをスタイレット66が貫通して通過するために空けておきつつ、第1及び第2のアーム220、230間に枢動可能な連結を可能にさせている(即ち、各アームは静止状態のカニューレ60にピン留めされている)。
【0046】
第2のアーム230は、第1のアーム220と同様に構成され、遠位端部分232と近位端部分234を同様に含んでいる。以下に考察するように、第1及び第2のアーム220、230が閉じられた位置で合致するとき、第1及び第2のアーム220、230の外側表面がデバイス200の長さ部に沿って実質的な円形断面を全体として形成するように、第1及び第2のアーム220、230のそれぞれの外側の構造が実質的に半円形であってもよい。幾つかの実施形態では、デバイス200は、2.8ミリメートルの内視鏡のチャネル内に収まるように構成されて、該チャネルに沿って並進される。他の実施形態では、デバイスは、3.2ミリメートル及び他の一般的に使用される内視鏡のチャンネルなどの異なるサイズのルーメン内を、移動するように構成されている。或いは、デバイス200は、内視鏡ではなく或いは内視鏡に加えて、柔軟性のあるシース又はカテーテルに挿入されるように寸法を設定し且つ構成することができる。
【0047】
第1及び第2のアーム220、230のそれぞれの遠位端部分は、(図16−17に内部キー溝28aとして示しているが、先に説明しまた図10−15に示した他のトラック28に類似していてもよい)トラック28を含んでいる。トラック28は、それぞれのアーム220、230の長さ部に沿って外側から見えないようにその遠位端から画定されており、またデバイス10内に配置されることを意図している多数のクリップ70から伸張するピン78を受け入れるのに十分な長さである。デバイス10と同様に、トラック28は、第1及び第2のアーム220、230の間に1つ以上のクリップ70を受け入れるように構成されている。トラック28は、上記実施形態で考察している様々なサイズと形状のピン78及び顎部74、75を有するクリップ70を受け入れるように構成されている。
【0048】
第1及び第2のアーム220、230は、ハンドル90(図5−6)に移動可能に連結されている操作部(図5、6、要素92、93を参照)を使用して遠隔的に開くことができ、該ハンドルは、デバイス200が、患者(及び内視鏡)内に挿入され、クリップ70で閉じられるべき隣接した組織に配置されるとき、操作部92が操作可能になるようにカニューレ60の近位端に設けられている。デバイス10と同様に、操作部92は、第1及び第2のアーム220、230をそれらの間に配置されているワイヤ82、84(又は前述の他の力伝達機構)の助けを借りて互いから離れて選択的に枢動する。ワイヤ82、84は、第1及び第2のアーム220、230と、それらの間の枢動点40の前方に連結することができ、その結果、(ハンドル90に対する操作部92の移動による)張力のかかったワイヤの牽引が、第1及び第2のアーム220、230を互いから離れて枢動させて、クリップ70のフィンガー72、73(及び顎部)を開く(図17)。他の実施形態では、ワイヤと第1及び第2のアーム220、230は、圧縮状態のワイヤを押すと、アーム220、230の外側への枢動を促すことができるように構成されてもよい。第1及び第2のアーム220、230に連結された1つ以上のクリップ70のフィンガーが閉じた位置に向かって付勢されるので、ワイヤの力が解放されるとき、クリップ70は第1及び第2のアーム220、230を互いに向かって枢動するように付勢する。ワイヤ82、84は、第1及び第2のアーム220、230の近位端と操作部92の間のカニューレ60のルーメンに通すことができ、幾つかの実施形態では、カニューレ60は、ワイヤを囲んで保護するために、専用のワイヤルーメンを有することができる。
【0049】
最も外側のクリップをデバイス200から押し出すために、そのクリップが、隣接した組織を処置するために隣のクリップ70と整列している最も外側のクリップ70の除去、及び操作部92を介してアーム220、230の繰り返し操作での除去と共に閉じられるべき組織と係合するときに、カニューレ60内に移動可能に挿入できるスタイレット66をデバイス200は備えている。
【0050】
使用時には、デバイス10の第1及び第2のアーム20、30(又はデバイス200の第1及び第2のアーム220、230)の中に画定されるトラック28に、クリップ70の第1及び第2のフィンガー72、73のそれぞれから伸張しているピン78を通すことにより、止血クリップ付与デバイス10(又はデバイス200)を1つ以上(通常は2つ又は3つ)のクリップ70と共に装填することができる。デバイス10及び200の第1及び第2のアームの枢動点40位置の場所、並びに(別の実施形態のためのワイヤ82、84及び操作部92の潜在的に異なる動作をもたらす)ワイヤとデバイス10及び200の第1及び第2のアームの間の異なる連結点以外、デバイス10とデバイス200は、概ね同じ方法で構成され、操作される。従って、どちらのデバイスの使用と操作も、本明細書で特に言及したデバイス200の例外を除いて、本明細書のデバイス10の説明と一致している。
【0051】
クリップ70は、最も外側のクリップ70の近位端が隣接するクリップ70の遠位端に接触或いは隣接するように、デバイス10の第1及び第2のアーム20、30の間に直列に組み込まれている。クリップ70がデバイス10に挿入された後、デバイス10は、事前に配置された内視鏡の作業ルーメンに通されることによって、患者体内の適所(例えば、胃腸管(Gl track))に挿入される。デバイス10は、同様に第1及び第2のアーム20、30並びにその間のクリップ70を移動させるカニューレ60を押すことにより、所定の位置に付勢される。デバイス10が内視鏡及び患者内に位置決めされる間、操作部92は、第1及び第2のアーム20、30の互いに対する枢動を避けるために、通常の位置に保持されており、そのことは、内視鏡内でのさらなる動き、及びデバイス10、内視鏡又は患者の組織の潜在的な損傷、さらに処置を複雑にすることを阻止する。幾つかの実施形態では、カニューレ60は、内視鏡に挿入されるカニューレ60の長さ部分に対応する外側表面にマーキングを有することができる。
【0052】
デバイス10が完全に患者に挿入されたときに、第1及び第2のアーム20、30の外側への枢動を可能にし、さらに、カメラや内視鏡に付属の他の遠隔視覚システムを介してデバイス10と内視鏡を取り巻く患者の組織を視認するために、内視鏡内でさらにカニューレ60を押して第1及び第2のアーム20、30を内視鏡のルーメンの外側に配置する。デバイス10及び内視鏡は、その後、第1及び第2のアーム20、30の遠位端22、32を止血クリップ70で閉じられるべき組織(T、S、R、図8−9)と合致させるように、医師によって操作される。
【0053】
適切に配置されたとき、第1及び第2のアーム20、30を互いから離れるように枢動させ、同様に該アームの間に配置されたクリップ70を同じ距離に開くように、医師はハンドル90に配置された操作部92を移動させる。該距離は組織(T、S、R)が(図8に示すように)クリップ70の顎部74、75の間のスペース内に配置されることを可能にする。操作部92は、その後解放され、顎部74、75がその間に、クリップ70(即ち、組織及びデバイス10内に位置決めされた任意のクリップ70を係合している最も外側のクリップ)の内側への付勢力により選択された組織(T、S、R)と係合できるようにする。閉じているクリップ及び患者の組織(T、S、R)を係合している顎部74、75によってスタイレット66を固定しながら、内視鏡からカニューレ60を徐々に取り出すことにより、クリップ70は第1及び第2のアーム20、30の間から放出される。カニューレ60とスタイレット66の間の相対運動により、スタイレット66の遠位端67をアーム20、30内に前進するようにさせ、アーム20、30の間の最も近位のクリップ70の近位端を押すようにさせる。従って、最も近位のクリップ70は、最も遠位のクリップ70を、トラック28を介して摺動させ、デバイス10から抜け出させるまで隣接したクリップ70を押す。スタイレット66(又はカニューレ60)に設けられた複数の長さのマーキング69、及び/又は内視鏡のカメラを介したデバイス10とクリップ70の視認、或いは超音波、X線、蛍光透視などの間接表示手段により監視されるので、スタイレット66とカニューレ60の相対運動はほぼクリップ70の長さに維持される。クリップ70がデバイス10から放出されたとき、デバイス10は、第1及び第2のアーム20、30の間の次のクリップ70が、クリップ70によって閉じられるべきさらなる組織に係合できるように再配置することができる。或いは、処置を完了する(又はデバイス内の全てのクリップが放出される)と、デバイス10は、内視鏡からカニューレ60とスタイレット66の両方を取り出すことにより、患者から除去される。デバイス10は、処置を継続するために、必要に応じてさらにクリップ70を装填してもよく、また内視鏡を通して患者内に再挿入してもよい。
【0054】
本開示の好適な実施形態を説明してきたが、本開示は、その様に限定されているわけではなく、本開示から逸脱することなく、修正を加えることができるものと理解されたい。本発明の範囲は附随の特許請求の範囲によって定義されており、字義通りにせよ又は等価物によるにせよ、特許請求の範囲の意味に入る全てのデバイスは、同範囲に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0055】
10 止血クリップ付与デバイス
20、220 第1のアーム
22、32、67、222 遠位端、遠位端部分
24、34、71 近位端、近位端部分
28、93 トラック
28a 内部キー溝
28b キー溝
30、230 第2のアーム
40 ピン連結、枢動点
60 カニューレ
66 スタイレット、ロッド
69 マーキング
70、78? 止血クリップ
72、73 フィンガー
74、75 顎部
76 山部
76b、77b 弓状面
76e、77e 段のある面
77 谷部
78 ピン
78a 拡大ヘッド部分
78c キー
82、84 操作ワイヤ
90 ハンドル
92、93 操作部
200 止血クリッピングデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い第1及び第2のアームであって、各アームは遠位部分及び近位部分を備え、前記第1及び第2のアームの間で相対運動を可能にするように構成され、前記第1及び第2のアームのそれぞれの遠位部分は各アームの遠位端から各アームの前記近位部分に向かって延びて途中で終端するように形成されたトラックを備えているアームと、
前記第1及び第2のアームの対向する遠位部分の間に摺動可能に配置されるクリップであって、遠位部分及び近位部分をそれぞれ有する第1及び第2のフィンガーを有し、前記第1及び第2のフィンガーの近位部分は、前記第1及び第2のフィンガーの遠位部分が互いに向って付勢されるように接続され、前記第1及び第2のフィンガーはその遠位部分から半径方向外側に伸張しているピンをさらに有する、クリップと、を備え、
前記第1のフィンガーから伸張する前記ピンは前記第1のアームの前記トラック内に摺動可能に受け入れられ、前記第2のフィンガーから伸張する前記ピンは前記第2のアームの前記トラック内に摺動可能に受け入れられるようになされた、医療デバイス。
【請求項2】
前記第1及び第2のアームが鋏のような連結部によって枢動可能に連結され、各アームの前記遠位部分と前記近位部分とが前記枢動可能な連結部に対して反対側に配置されるようになされた、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2のアームがその近端端で枢動可能に連結され、該枢動可能な連結部のすぐ遠位の位置において各アームに加えられた力によって、各アームの前記遠位端を駆動するようになされた、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
各アームの前記近位部分がそれぞれワイヤに接続されており、前記ワイヤによって各アームの前記近位部分に加えられる外力が、前記第1及び第2のアームの前記近位部分を互いに離れる方向に動かすようにされている、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2のアームの前記近位部分の間で前記枢動可能な連結部の後方に配置されたカニューレと、前記カニューレを通すように配置された細長い部材であって、前記第1及び第2のアームの間に配置されている最後尾のクリップに対して選択的に接触及び長手方向の力の印加ができるように構成された細長い部材と、をさらに備える、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記細長い部材は、前記第1及び第2のアームの間から最も遠位のクリップを押し出すために、前記第1及び第2のアームの前記遠位端に向かって遠隔的に押すことができるようになっている、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2のアームが半円状の外形を有しており、枢動して組み合わされたときに、前記第1及び第2のアームの断面が円状になるようになっている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2のアームが、その間に2つ以上のクリップを受け入れるように構成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記2つ以上のクリップは、最も外側にある第1のクリップの前記遠位部分が前記第1及び第2のアームの前記遠位部分に隣接し、前記第1のクリップの前記近位部分に第2のクリップの遠位部分が隣接した状態で配置されている、請求項8に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記トラックが、その中に前記第1及び第2のクリップのそれぞれからの伸張する各ピンを受け入れるように構成されている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
各フィンガーから伸張する前記ピンが各フィンガーの前記外側表面に対して実質的に垂直に伸張している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第1及び第2のフィンガーが互いに一体となって形成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2のフィンガーが、ねじりバネによって閉じた位置に付勢されるようになっている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記第1及び第2のフィンガーのそれぞれの前記遠位部分が、それらの間に位置する組織に封止力を加えるように構成された係合部分を備える、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
各係合部分が下方に延在する1つ以上の歯及び上方に延在する1つ以上の陥凹部を備え、前記クリップが付勢された位置にあるときに、一方の係合部分の前記延在する歯が他方の係合部分の陥凹部とかみ合うように前記係合部分が整列している、請求項10に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記第1及び第2のアームが互いから離れるように枢動したときに、前記係合部分が互いから離れるようになる、請求項14に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記トラックが前記それぞれのアームの壁厚全体を貫いて画定されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記トラックが前記それぞれのアームの前記壁厚の一部分だけを延在している、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記ピンがキーであり、前記トラックがキー溝である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
第1及び第2のアームの間に配置される円筒形の部材であって、当該デバイス内に配置された前記最後尾のクリップの前記第1及び第2のフィンガーの前記近位端と接触する遠位端を有する円筒形の部材をさらに備える、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項21】
細長い第1及び第2のアームであって、各アームは遠位部分及び近位部分を備え、前記第1及び第2のアームは前記第1及び第2のアームが実質的に互いに平行に配置されている第1の閉じた位置と前記第1及び第2のアームが互いに対して斜角に配置されている第2の開いた位置の間で選択的に枢動できるように枢動可能に連結され、前記第1及び第2のアームのそれぞれの遠位部分は各アームの遠位端から各アームの近位部分に向かって延びて途中で終端するように形成されたトラックをさらに備えているアームと、
前記第1及び第2のアームの対向する遠位部分の間に摺動可能に配置されたクリップであって、遠位部分及び近位部分を有する第1及び第2のフィンガーを有し、前記第1及び第2のフィンガーそれぞれがその遠位部分から半径方向外側に伸張しているピンをさらに備えているクリップと、を備え、
前記第1のフィンガーから伸張する前記ピンは前記第1のアームの前記トラック内に摺動可能に受け入れられ、前記第2のフィンガーから伸張する前記ピンは前記第2のアームの前記トラック内に摺動可能に受け入れられており、前記第1及び第2のフィンガーの前記遠位部分を付勢するように前記第1及び第2のフィンガーの近位部分が連結されて、各フィンガーから伸張する前記ピンが各アームの前記トラックと係合されているときに、前記第1及び第2のアームが前記閉じた位置に付勢されるようになされている、医療デバイス。
【請求項22】
細長い第1のフィンガー及び細長い第2のフィンガーであって、前記第1及び第2のフィンガーのそれぞれは、各フィンガーの対向する遠位端を互いに向かって動かすように互いに一体となっている近位端を備えているフィンガーと、
各フィンガーの前記遠位端に隣接した各フィンガーの外側表面から半径方向外側に伸張しているピンと、
前記第1及び前記第2のフィンガーの前記遠位端に画定された顎部であって、前記第1及び第2のフィンガーの対向する前記顎部に向かってそれぞれ延在する顎部と、
を備える止血クリップ。
【請求項23】
前記第1及び第2のフィンガーの前記顎部がそれぞれ1つ以上の山部と1つ以上の谷部を備えている、請求項22に記載のクリップ。
【請求項24】
前記第1のフィンガーの1つ以上の山部が前記第2のフィンガーの1つ以上の谷部とかみ合って合致し、且つ前記第1のフィンガーの1つ以上の谷部が前記第2のフィンガーの1つ以上の山部とかみ合って合致するように、前記第1及び第2のフィンガーの山部と谷部が配置されている、請求項23に記載のクリップ。
【請求項25】
前記ピンはキーを形成しており、該キーは、互いの間に鋭角をなす側壁であって、前記フィンガーの外側表面から離れる方向に向かって間の距離が増大するように構成されている側壁を有している、請求項22に記載のクリップ。
【請求項26】
前記第1及び第2のフィンガーの前記ピンが、第1及び第2の外側アームのトラック内に受け入れられるように構成されており、前記外側アームが互いに対して枢動可能に配置され、且つ各フィンガーの外側表面の少なくとも一部分を取り囲むようになっている、請求項22に記載のクリップ。
【請求項27】
前記第1及び第2のフィンガーは、通常、それらの長さ部に沿って実質的に互いに平行に位置するように互いに接続されており、外力が前記第1及び第2のフィンガーの前記ピンに掛けられたときには、前記第1及び第2のフィンガーが互いに対して鋭角をなす第2の方向に移動可能である、請求項22に記載のクリップ。
【請求項28】
前記第1及び第2のフィンガーを前記第2の方向に繰り返し複数回動かした後でも、前記第1及び第2のフィンガーは互いに平行な方向に戻るように構成されている、請求項22に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−525216(P2012−525216A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508534(P2012−508534)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/031845
【国際公開番号】WO2010/126751
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】