説明

内視鏡システム

【課題】時間の経過により病変部が変形又は消滅していたとしても、再診察の際に、内視鏡先端を前回診察時の画像と比較可能な画像が撮像できる位置まで容易かつ迅速に移動させることができる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】照明光を照射する光源装置15と、撮像画像情報を出力する撮像部26を有する内視鏡本体14と、識別情報、撮像条件、及び撮像画像情報を含む撮像情報を表示画像情報に変換する画像処理部52、撮像情報を記憶する記憶部58、並びに画像表示を制御する表示制御部56、を有するプロセッサ装置16と、を備え、内視鏡挿入時において、病変部から内視鏡先端35を抜去するまでを第1の撮像情報として外部サーバ12へ出力し、再挿入時において、外部サーバ12に記憶された第1の撮像情報を第2の撮像情報として取得し、表示制御部56は、第2の撮像情報を過去の撮像画像とし、現在の撮像画像と共に表示部17に同期表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再検査の際に、以前観察したことのある病変部までのガイド機能を備えた内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、内視鏡は、基本的に、人体に挿入される挿入部、挿入部の操作や送気/送水などの内視鏡の操作を行う操作部、送気源や吸引ポンプ等と接続されるLGコネクタ(Light guideコネクタ)、及びLGコネクタと操作部及び挿入部を接続するユニバーサルコード(LG軟性部)等から構成される。
【0003】
近年の内視鏡は、グラスファイバを利用して診察部位を直接的に観察する、いわゆるファイバースコープ型ではなく、CCDセンサ等のイメージセンサによって診察部位を撮像して、ディスプレイに撮像した画像を表示し、また、動画や静止画の撮像を行う、いわゆる電子スコープ型の内視鏡が主流である。
また、内視鏡で撮像した画像(画像情報)も、写真などのハードコピーとして保管/管理するのみならず、コンピュータやサーバ、CDやDVDなどの記憶媒体に記憶して管理し、再診察の際などに、前回の診察で撮像した画像を読み出し、比較診察に利用することが行われている。
【0004】
この再診察における比較診察では、比較のために前回の診察で撮像した病変部を再び内視鏡装置によって撮像する必要がある。よって、医師等の診察者は、前回の診察で撮像した病変部が体内のどの位置に存在するのかを事前に把握し、内視鏡先端を前回診察時の画像と比較可能な画像が撮像できる位置まで容易かつ迅速に移動させ、内視鏡を目的位置に挿入できるのが好ましい。
【0005】
特許文献1には、内視鏡の挿入部に、長手方向に配列して、長さの情報を保持するICタグ等の情報保持手段(あるいはICタグリーダ等の読取手段)を設け、また、マウスピースなど内視鏡での診察時に人体に装着する部材に、ICタグリーダ(あるいはICタグ)を設けて、内視鏡の挿入時に、ICタグの情報をICタグリーダで読み取ることにより、内視鏡の挿入長を知ることで、診察中に、医師が、体内における内視鏡(挿入部の先端)の位置を確認しながら、病変部の観察、組織の採取などの処置を行うことができ、また、撮像した画像や施した処置の情報と、内視鏡の挿入長の情報とを対応付けしてサーバやデータベースに保存することが可能となり、再診察の際に、前回の検査で撮像や処置を行った目的位置に内視鏡を挿入することを、容易かつ迅速に行うことを補助できる内視鏡システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−77764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、再診察の際、前回の診察で撮像した病変部等の観察対象は、時間の経過と共に変化しており、例えば、早期がんが疑われるものや小さな早期がんの場合、観察対象である病変部はもともと小さく、その病変部が消滅しているのか、それとも探し出せていないのか判断できないことがある。これは、特許文献1のように、内視鏡の挿入長から体内における内視鏡のおおよその位置が分かったとしても、そのおおよその位置から病変部を探すことには変わりなく、時間短縮は可能なものの、根本的な問題の解決には至っていない。
【0008】
本発明の目的は、再診察の際に、内視鏡先端を前回診察時の画像と比較可能な画像が撮像できる位置まで容易かつ迅速に移動させることができる内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、被写体毎に固有の識別情報を入力する入力部と撮像画像を表示する表示部とを備える内視鏡装置と、該内視鏡装置により取得した撮像情報を記憶する外部サーバと、からなる内視鏡システムであって、前記内視鏡装置は、内視鏡先端から前記被写体に向けて照明光を照射する光源装置と、前記被写体の体内に挿入される挿入部、前記内視鏡先端に設置され、前記照明光の前記被写体からの戻り光により撮像を行い、その撮像条件及び撮像画像情報を撮像画像信号として出力する撮像部、及び内視鏡の操作を行う操作部、を有する内視鏡本体と、前記撮像画像信号を取得し、前記識別情報、前記撮像条件、及び前記撮像画像情報を含む撮像情報を表示可能な表示画像情報に変換する画像処理部、前記撮像情報を記憶する記憶部、並びに前記表示部における画像表示を制御する表示制御部、を有するプロセッサ装置と、を備え、前記被写体への内視鏡挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記記憶部に、病変部撮像位置から内視鏡先端を抜去するまでの撮像情報を第1の撮像情報として記憶させて、前記外部サーバへ出力し、前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記識別情報に基づいて、前記外部サーバに記憶された前記第1の撮像情報を第2の撮像情報として取得し、前記表示制御部は、前記第2の撮像情報を過去の撮像画像とし、現在の撮像画像と共に前記表示部に同期表示させることを特徴とする内視鏡システムを提供する。
【0010】
さらに、前記画像処理部は、血管抽出部を備え、前記血管抽出部は、前記撮像画像における血管部分を抽出し、抽出された血管の情報を血管情報として出力し、前記表示制御部は、前記表示部において、前記撮像画像と共に前記血管情報を表示することが好ましい。
【0011】
また、前記血管情報は、前記撮像画像より抽出された血管の位置情報、又は前記撮像画像より抽出された血管の形状の情報のみからなるベクトル情報であることが好ましい。
【0012】
また、前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記第1の撮像情報と前記第2の撮像情報とをマッチングさせることで、過去の撮像画像と現在の撮像画像とを前記表示部に同期表示させることが好ましい。
【0013】
また、前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報は前記血管情報であることが好ましく、また、前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報は前記挿入部の挿入長であることが好ましく、また、前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報として、前記病変部周辺までは前記挿入部の挿入長を用い、前記病変部周辺では前記血管情報を用いることが好ましい。
【0014】
また、前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記マッチングにより算出された前記内視鏡先端の現在の位置情報に基づいて、前記病変部までの方向と距離との少なくとも一方を前記表示部に表示することが好ましい。
【0015】
また、前記血管抽出部は、生体の深さ50μm以下にあり、太さ20〜500μmの血管を抽出することが好ましい。
【0016】
また、前記入力部より前記被写体の前記識別情報が再入力されると、前記プロセッサ装置は、該識別情報に基づいて前記外部サーバに記憶された前記第1の撮像情報を第2の撮像情報として自動的に取得することが好ましい。
【0017】
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記過去の撮像画像と共に過去の前記撮像条件を前記表示部に表示することが好ましい。
【0018】
また、前記撮像条件は、撮像時の撮像倍率、前記内視鏡先端の向き、前記挿入部の湾曲の情報、照明光の光量情報、光源装置の情報、前記挿入部の挿入長の情報を含むことが好ましい。
【0019】
さらに、前記被写体への内視鏡挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記記憶部に、前記病変部の形状を形状情報として記憶させて、前記外部サーバへ出力し、前記入力部より前記被写体の前記識別情報が再入力されると、前記プロセッサ装置は、該識別情報に基づいて前記外部サーバに記憶された前記病変部の形状情報を過去の形状情報として自動的に取得し、前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記内視鏡先端が前記病変部付近に到着した際に、現在の撮像画像に過去の病変部の形状を重ねて表示することが好ましい。
【0020】
また、前記記憶部は、一定間隔毎に前記撮像情報を記憶することが好ましく、また、前記光源装置は、照明光として、白色光及び狭帯域光の少なくとも一方を照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、たとえ、時間の経過により病変部が変形又は消滅していたとしても、再診察の際に、内視鏡先端を前回診察時の画像と比較可能な画像が撮像できる位置まで容易かつ迅速に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の内視鏡システムの全体構成の一実施例を模式的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の一実施形態の全体構成を示す外観図である。
【図3】図1に示す内視鏡システム及び図2に示す内視鏡装置の一実施形態の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す内視鏡装置の光源装置に用いられる青紫色レーザ光源から出射される青紫色レーザ光(405nmレーザ光(A))の発光スペクトルと、青色レーザ光源及び蛍光体からなる白色光源から出射される白色光(B)の発光スペクトルとを示すグラフである。
【図5】ガイドモードにおける画像表示の一実施例を示す説明図である。
【図6】保存モードにおける撮像画像の保存と、ガイドモードにおける撮像画像の逆再生とを示す概念図である。
【図7】保存モードにおける動作の一実施例を示すフローチャートである。
【図8】ガイドモードにおける動作の一実施例を示すフローチャートである。
【図9】ガイドモードにおける病変部到達時の画像表示の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る内視鏡システムを、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の内視鏡システム10の全体構成の一実施例を模式的に示すブロック図である。
同図に示すように、本発明の内視鏡システム10は、内視鏡装置11と、外部サーバ12と、複数の内視鏡装置11及び複数の外部サーバ12を繋ぐネットワーク13とを有する。ここで、内視鏡装置11は、撮像画像情報を含む撮像情報を外部サーバ12に出力し、また、被写体情報に基づいて、外部サーバ12から過去の診察における撮像情報を取得する。
【0024】
ここで被写体情報とは、被写体の識別情報(例えば、固有ID)と被写体の基本情報(例えば、氏名、性別、年齢、身長、体重、撮像日時、撮像対象部位等)とを含む情報をいい、撮像画像情報とは、撮像により得られる撮像画像の情報である。撮像画像情報を含む撮像情報については後述する。
【0025】
また、外部サーバ12は、被写体情報(特に、識別情報である固有ID)に対応したデータベースを有し、被写体情報と撮像情報と対応付けてデータベース上に保存する。そして、外部サーバ12は、他の外部サーバ12及びネットワーク13と連携してPACS(Picture Archiving and Communication Systems)と呼ばれる画像保存通信システムを形成し、内視鏡装置11から出力された被写体情報及び撮像情報を記憶する。つまり、内視鏡装置11は、ネットワーク13及び外部サーバと接続することで、前述するPACSの端末として機能する。
PACSは、内視鏡装置11からの要求に限らず、例えば、画像表示装置等の他の端末からの要求に応じて、外部サーバ12のデータベース上に保存された撮像情報を検索し、その撮像情報を要求した端末へ出力する。
【0026】
図2は、図1の内視鏡装置11の一実施形態としての外観図であり、図3は図2の内視鏡装置11の内部構成を説明するための概念的なブロック図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置11は、内視鏡本体14、光源装置15、プロセッサ装置16、表示部17、及び入力部18を有する。プロセッサ装置16には、画像情報等を画像として表示する表示部17と、入力操作を受け付ける入力部18とが接続されている。内視鏡本体14は、内視鏡挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子26(図3参照)を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。
また、照明光とは、特殊光と、通常光(白色光)とを問わず、内視鏡本体14から被写体に向けて照射される光をいう。
【0027】
また、内視鏡本体14は、被写体内に挿入される可撓性の内視鏡挿入部19と、内視鏡挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23と、内視鏡本体14を光源装置15及びプロセッサ装置16に着脱自在に接続するコネクタ部25A、25Bを備える。なお、図示はしないが、操作部23及び内視鏡挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
【0028】
内視鏡挿入部19は、可撓性を持つ軟性部31と、湾曲部33と、先端部(以降、内視鏡先端とも呼称する)35とから構成される。内視鏡先端35には、図3に示すように、被観察領域へ照明光を照射する照射口21と、被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子26が配置されている。照射口21の奥には、光源装置から照明光を導光する光ファイバ20が配置され、撮像素子26の受光面には対物レンズユニット24が配置される。
【0029】
また、図3に示すように、内視鏡本体14は、撮像素子26からの撮像画像の画像信号の信号処理系として、アナログ信号である撮像画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行うためのCDS・AGC回路27と、CDS・AGC回路27でサンプリングと利得制御が行われたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換するA/D変換器(A/Dコンバータ)28とを有する。A/D変換器28でA/D変換されたデジタル画像信号は、コネクタ部25Bを介してプロセッサ装置16の画像処理部52に入力される。
【0030】
湾曲部33は、軟性部31と先端部35との間に設けられ、操作部23に配置されたアングルノブの回転動作により湾曲自在にされている。この湾曲部33は、内視鏡本体14が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端35の照射口21、及び撮像素子26の観察方向を、所望の観察部位に向けることができる。また、図示は省略するが、内視鏡挿入部19の照射口21にはカバーガラスやレンズが配置される。
【0031】
内視鏡装置11は、通常光観察を行う通常光モード、特殊光観察を行う特殊光モード、面順次で通常光観察と特殊光観察とを繰り返す同時撮像モード、内視鏡観察において、撮像画像を動画で保存する、又は、撮像画像を所定間隔毎に静止画で保存する保存モード、及び、被写体情報に基づいて内視鏡の挿入をガイドするガイドモードなどの様々な撮像モードを備える。
通常光モード、特殊光モード、及び同時撮像モード、並びに、保存モード及びガイドモードの説明については、後述するが、これら撮像モードの切替は、前述の操作部23により行う。
【0032】
光源装置15は、蛍光体22を通して、内視鏡先端35の照射口21から照射する照明光を発生し、プロセッサ装置16は、照明光の被写体からの戻り光により撮像を行う撮像素子26から、撮像画像信号を取得する。撮像素子26は、その手前に設置された図示しないカラーフィルタによって赤色光(R光)、緑色光(G光)及び青色光(B光)に分光された照明光をそれぞれ感受して、3chカラー画像信号(R画像信号、G画像信号及びB画像信号)を撮像画像信号として出力する。3chカラー画像信号は、そのカラーフィルタのカラーフィルタ特性(つまり、撮像素子26の分光感度特性となる)に基づいたR画像信号、G画像信号及びB画像信号である。
光源装置15は、コネクタ部25Aを介して、プロセッサ装置16はコネクタ部25Bを介して、それぞれ内視鏡本体14と接続される。また、プロセッサ装置16には前述の表示部17と入力部18が接続されている。プロセッサ装置16は、入力部18や操作部23からの指示に基づいて、内視鏡本体14から伝送されてくる撮像画像信号を復調して画像処理可能な撮像画像情報とし、画像処理を施して、表示部17で表示可能な表示画像情報に変換して、表示部17へ出力する。
【0033】
図3に示すように、光源装置15は、後述する通常光モード及び特殊光モードの両方に用いられる白色光源として用いられる中心波長445nmの青色レーザ光源(445LD)42と、後述する特殊光モードにおいて特殊光光源として用いられる中心波長405nmの青紫色レーザ光源(405LD)44とを発光源として備えている。なお、405LD44からの中心波長405nmの青紫色レーザ光は、生体の構造・成分の分光スペクトル特性に応じて、好ましくは合致して狭帯域化された波長帯域幅を持つ狭帯域光であるので、生体の構造・成分の検出能が優れている。
【0034】
これら445LD42及び405LD44からの発光は、光源制御部40(図3参照)により個別に制御されており、各光源42及び44の発光条件、すなわち445LD42の出射光と、405LD44の出射光の光量比(発光比率)は変更自在になっている。
【0035】
445LD42及び405LD44は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
【0036】
これら445LD42及び405LD44から出射されるレーザ光は、集光レンズ(図示せず)により、それぞれ光ファイバ20に入力され、合波部材46を介してコネクタ部に伝送される。なお、本発明は、これに限定されず、合波部材を用いずに各光源42、44からの各レーザ光を直接コネクタ部に送出する構成であってもよい。
【0037】
中心波長445nmの青色レーザ光及び中心波長405nmの青紫色レーザ光が合波され、コネクタ部まで伝送されたレーザ光は、照明光学系を構成する光ファイバ20によって、それぞれ内視鏡本体14の先端まで伝播される。そして、青色レーザ光は、内視鏡本体14の先端の、光ファイバ20の光出射端に配置された蛍光体22を励起して蛍光光を発光させる。また、一部の青色レーザ光は、そのまま蛍光体22を透過する。青紫色レーザ光は、蛍光体22をほとんど励起させることなく透過して、狭帯域波長の照明光(いわゆる狭帯域光)となる。
【0038】
光ファイバ20は、マルチモードファイバであり、一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用できる。
【0039】
蛍光体22は、青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光(蛍光発光)する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の蛍光光と、蛍光体22により吸収されずに透過した青色レーザ光とが合わされて、白色(疑似白色)の照明光となる。本構成例のように、半導体発光素子を励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0040】
上記の蛍光体22は、レーザ光の可干渉性により生じるスペックルに起因して、撮像の障害となるノイズの重畳や、動画像表示を行う際のちらつきの発生を防止できる。また、蛍光体22は、蛍光体を構成する蛍光物質と、充填材となる固定・固化用樹脂との屈折率差を考慮して、蛍光物質そのものと充填剤に対する粒径を、赤外域の光に対して吸収が小さく、かつ散乱が大きい材料で構成することが好ましい。これにより、赤色や赤外域の光に対して光強度を落とすことなく散乱効果が高められ、光学的損失が小さくなる。
【0041】
図4は、405LD44からの青紫色レーザ光と、445LD42からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体22により波長変換された発光スペクトルとを示すグラフである。青紫色レーザ光は、中心波長405nmの輝線(プロファイルA)で表され、本発明の狭帯域光であり、特殊光となる。また、青色レーザ光は、中心波長445nmの輝線で表され、青色レーザ光による蛍光体22からの励起発光光は、概ね450nm〜700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる。この励起発光光と青色レーザ光によるプロファイルBによって、上述した白色光が形成され、通常光とされる。
【0042】
ここで、本発明でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限定されず、上述した疑似白色光を始めとして、R、G、B等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含むものとする。
【0043】
この内視鏡装置11では、プロファイルAとプロファイルBとの発光強度を光源制御部40により相対的に増減制御して、任意の輝度バランスの照明光を生成することができる。なお、本発明の内視鏡装置11において、通常光モードでは、プロファイルBの光のみが用いられ、特殊光モードでは、プロファイルA及びBが重畳された光が用いられる。
【0044】
なお、445LD42及び405LD44の代わりに、例えば、白色光を照射するキセノン光源、発光を制御するシャッタ、光量を制御する絞り、及び所定の狭帯域光(例えば、青色光及び緑色光)を透過させる狭帯域光フィルタ含む回転フィルタの組み合わせを用いてもよい。この場合、特殊光観察は面順次での撮像となるが、1つのキセノン光源のみで光源装置を構成することも可能である。この場合、当然に合波部材46も不要となる。
【0045】
また、図3に示すように、発光源としてレーザダイオードを用いた場合、光源制御部40によりそれぞれの光源の駆動電流値を変えるだけで光量を調整することができるため、絞りを用いて光量を調整するキセノン光源に比べて出射光量の調整を簡単に行うことができる。
【0046】
これら445LD42及び405LD44から出射される青色レーザ光及び青紫色レーザ光は、集光レンズ(図示省略)によりそれぞれ光ファイバ20に入力され、合波部材46により合波されて、光ファイバ20を通ってコネクタ部25Aに伝送される。なお、これに限らず、合波部材46を用いずに、各光源42、44からの青色レーザ光及び青紫色レーザ光を直接コネクタ部25Aに送出する構成であってもよい。
【0047】
光源制御部40は、プロセッサ装置16の後述する制御部50の指示により、445LD42及び405LD44の照射及び照射光量を制御する。前述のとおり、445LD42及び405LD44がレーザダイオードで構成される場合には、レーザダイオードを流れる駆動電流を制御することで、その照射及び照射光量を制御する。
【0048】
また、これらの光源がキセノン光源で構成されている場合には、シャッタを用いることで照射を制御でき、絞りを調節することでその照射光量を制御する。また、キセノン光源で構成される場合には、透過する狭帯域光フィルタの半値幅を変更することで、照射光量を制御することができる。
【0049】
図3のプロセッサ装置16は、光源制御部40を通じて光源装置15を制御する制御部50と、制御部50に接続される画像処理部52と、撮像情報を一時的に記憶する記憶部58とを有する。制御部50は、445LD42及び405LD44からの照射光量が変化しても撮像画像が基準のホワイトバランスを維持するように、ホワイトバランスゲインを調整することで、画像処理部52における撮像画像情報又はCDS・AGC回路27において撮像画像信号のホワイトバランスを調整する。
【0050】
また、制御部50は、前述のとおり操作部23からの撮像モードの切替により、各撮像モードに対応するように、光源制御部40、画像処理部52、及び表示部17を制御する。各撮像モードの説明については後述する。
【0051】
さらに、制御部50は、表示制御部56を備え、画像処理部52により画像処理を施された撮像画像情報を表示部17へ出力し、前述のとおり撮像モードに応じて撮像画像の表示方法を変更するように表示部17を制御する。
【0052】
表示部17は、例えば、図5に示すとおり、撮像画像が比較可能なように、現在の撮像画像と、過去の撮像画像とを同期させて1つの画面上に並べて表示してもよく、また、撮像画像の撮像条件や後述する血管情報(特に、後述する中深層血管の血管情報。以下同様)などを撮像画像と共に表示してもよく、また、現在の撮像画像上で、内視鏡先端35の進む向きや方向をガイドするガイド表示を行ってもよい。例えば、内視鏡再挿入時の際に、内視鏡挿入部19の向きを補正するために回転方向を指示してもよく、また、過去の撮像画像及び血管情報を現在の撮像画像及び血管情報に合わせて回転させて表示してもよい。
【0053】
なお、撮像条件とは、例えば、撮像の際のズーム倍率、内視鏡先端35の向き、湾曲部33の湾曲の情報、照明光の光量情報(例えば、キセノン光源の場合は絞り値)、使用した光源の情報、内視鏡挿入部19の挿入長、使用したフィルタ等の撮像の際の内視鏡本体14及び光源装置15の情報である。
【0054】
また、図5に示すとおり、現在の撮像画像に、過去の撮像画像の視野を重ねたり、過去の撮像条件として、撮像倍率及び光源等を表示してもよく、また、後述する血管情報に基づいて撮像画像の血管部分を彩度を上げて強調表示してもよい。さらに、ガイド表示として、過去の撮像位置との誤差を表示してもよく、また目的とする病変部までの方向と距離との少なくとも一方を表示してもよい。
【0055】
後述するガイドモードでは、表示部17は、現在の撮像画像と同期した(結果として、逆再生された)過去の撮像画像との2画面表示であり、両撮像画像は通常光画像と特殊光画像とを問わないが、比較のためには同種の画像であることが好ましい。また、後述する同時撮像モードでは、表示部17は、通常光画像と特殊光画像との2画面表示であってもよい。
【0056】
記憶部58は、識別情報を含む被写体情報、撮像条件、撮像画像情報、後述する血管情報等を含む撮像情報を操作部23の指示により第1の撮像情報として記憶し、制御部50の指示により、制御部50を通して、画像処理部52、表示部17、及び外部サーバ12へ第1の撮像情報を出力する。
また、記憶部58は、外部サーバ12より取得された過去の第1の撮像情報を第2の撮像情報として記憶し、現在の第1の撮像情報と同様に、制御部50の指示により、制御部50を通して、画像処理部52及び表示部17へ出力する。
第2の撮像情報は、原則として内視鏡抜去時の撮像情報であるため、図6に示すように、現在の撮像画像と同期して表示されるように、結果として保存のされた場合と時間を逆に再生される。
【0057】
なお、前述の同期表示は、表示制御部56からの指示により、現在の撮像情報である第1の撮像情報と、過去の撮像情報である第2の撮像情報とに基づいて行われる。撮像情報のうち、後述する血管情報によるマッチング(現在の血管情報と過去の血管情報との一致、つまり、撮像画像における血管位置及び位置関係や血管形状等の一致)に基づく正確な同期表示はもちろん、単純に内視鏡挿入部19の挿入長によるマッチング(現在の挿入長と過去の挿入長との一致)に基づいておおよその同期表示が行われてもよい。なお、上述のマッチングは、表示制御部56において行われ、血管情報によるマッチングにおいては、画像マッチングに関する種々の公知の手法(例えば、パターンマッチング等)が用いられる。
【0058】
また、病変部周辺までは内視鏡挿入部19の挿入長によるマッチングに基づいておおよその同期表示が行われ、内視鏡先端35が病変部周辺に到達した際に、血管情報によるマッチングを行い正確な同期表示が行われてもよい。なお、病変部周辺とは、撮像画像上に病変部が表示される付近、又は、撮像画像上に病変部が表示されるであろう挿入長に達した付近をいう。
マッチングを行うことで、過去の撮像情報に対応した、現在の撮像画像(内視鏡先端35)の位置情報が得られる。
【0059】
画像処理部52は、血管抽出部54を備え、撮像素子26からの撮像画像信号に基づいて、血管抽出部54において、撮像画像における血管部分を抽出し、その情報を血管情報として保存する。
なお、血管抽出部54が抽出する血管部分は、後述する中深層血管であることが好ましい。具体的には、例えば、画像処理部52は、前述のG画像信号に基づいてG画像を生成し、G画像に対して中深層血管を強調する周波数帯域フィルタを適用することで、中深層血管の血管情報を抽出する。中深層血管部分の抽出には、前述のとおり、特殊光画像を用いることでよりよく中深層血管部分を抽出することができる。
なお、ここでいう中深層血管とは、被写体表面から深さ約50μm以下にある、太さ約20〜500μmの血管をいう。
また、前述の血管部分の抽出は、撮像画像間の差分のみにおいて、抽出してもよい。
【0060】
画像処理部52は、前述の血管情報に基づいて、例えば、撮像画像における血管部分の彩度を高めることで、血管部分が強調された撮像画像を得ることができる。なお、上述のとおり、彩度を高める血管は、視認し易く、時間によって形状の変化しにくい中深層血管が望ましい。
【0061】
内視鏡装置11によって、病変部の経過観察を行う場合、前述のとおり観察対象となる病変部分はもともと小さい場合が多く、その病変部分が消滅しているのか、それとも探し出せていないのか判断が困難である。そのため、血管の中で、ある程度の時間が経過してもその形状が変化しにくい中深層血管の位置情報及び走行パターン情報を、観察対象である病変の位置と共に記憶することで、病変部分が消滅しているのか、それとも探し出せていないのか判断できる。
したがって、血管情報、特に、中深層血管の血管情報は、後述するガイドモードにおいて、内視鏡挿入部19の挿入をガイドするためのガイド情報となる。
【0062】
また、本発明の内視鏡装置11は、特殊光源を備えており、特殊光観察を行うことで、表層血管を強調した特殊光画像を撮像することが可能である。また、特殊光観察の場合は、画像処理部52は特殊光画像の撮像画像情報に所定の色情報を反映させることで、疑似カラー表示した特殊光画像を生成することができる。具体的には、画像処理において、G画像信号をR画像情報に割り付け、B画像信号をG画像情報及びB画像情報に割り付け、3chカラー画像情報からなる特殊光画像が生成できる。この特殊光画像は、疑似カラー画像であるため撮像画像を正確に表しているとはいえないが、主として表層組織の情報を含むB画像信号(B狭帯域データ)を多く含んでいるため、表層組織の微細血管や微細構造の状態がより詳細に表現されたものとなり、表層組織の微細血管や微細構造が観察しやすくなる。
【0063】
A/D変換器28から出力された撮像画像信号は、前述の画像処理部52に入力される。画像処理部52では、入力されたデジタル画像信号を画像情報に変換して適切な画像処理を行い、表示部17で表示可能な撮像画像情報を生成する。生成された出力用画像情報は、入力部18及び操作部23等の指示により、制御部50を通じて表示部17へ出力される。
以上が、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置11の構成である。
【0064】
次に本発明の一実施形態に係る内視鏡装置11の動作である撮像モードについて説明する。
本発明の撮像モードには、通常光モード、特殊光モード、及び同時撮像モード、並びに、保存モード及びガイドモードの5つのモードがある。通常光モード、特殊光モード、及び同時撮像モードと、保存モード及びガイドモードとは、同時に設定することができる。つまり、通常光モードかつ保存モードや、特殊光モードかつガイドモードといった設定が可能である。
【0065】
通常光モードとは、445LD42及び蛍光体22を用いて、内視鏡先端35より被写体に向けて通常光(白色光)を照射して、通常光観察を行うモードである。入力部18からの入力により、制御部50が光源制御部40に向けて、445LD42からの青色レーザ光の出射指示を出す。出射された青色レーザ光は、光ファイバ20により導光されて内視鏡先端35の蛍光体22を励起し、照射口21より被写体に向けて白色光を照射する。そして、撮像素子26において、被写体からの戻り光により撮像が行われて撮像画像信号が出力される。出力された撮像画像信号は、CDS・AGC回路27でホワイトバランスの調整が行われ、A/D変換器28でデジタル画像信号に変換され、画像処理部52に入力する。画像処理部52では、撮像画像信号を撮像画像情報に復調し、表示部17に表示するために、撮像画像情報から表示画像情報への変換が行われる。また、血管抽出部54において、撮像画像信号における血管情報(特に、中深層血管の血管情報)の抽出が行われる。表示画像情報は、制御部50へ出力され、表示制御部56の指示により表示部17へ出力され、表示部17で表示される。
【0066】
なお、445LD42からの青色レーザ光の出射から、表示部17での撮像画像の表示までの処理は常にリアルタイムで行われる。
以上より、表示制御部56は、入力部18の指示により、血管抽出部54で抽出された血管情報を元に、表示部17に表示される通常光観察画像の血管部分を強調表示することができる。ここでいう強調表示とは、例えば、血管部分の彩度を変えて表示することが挙げられる。
【0067】
特殊光モードとは、405LD44を用いて、内視鏡先端35より被写体に向けて青紫色レーザ光を照射して、特殊光観察を行うモードである。内視鏡装置11の基本的な動作は通常光モードと同じであるが、画像処理部52における画像処理が異なる。
具体的には、画像処理部52において入力された撮像画像信号を、前述のとおり3chカラー画像信号(R画像信号、G画像信号、及びB画像信号)それぞれに分離して、G画像信号をR画像情報に割り付け、B画像信号をG画像情報及びB画像情報に割り付け、通常光画像とは異なる疑似カラー画像情報からなる特殊光画像を生成する。なお、表示制御及び強調表示については、通常光モードと同様であるため、説明を省略する。
【0068】
また、405LD44からの特殊光の照射のみに限らず、445LD42からの通常光と405LD44からの特殊光とを同時に照射してもよい。特殊光のみで撮像した特殊光画像より明るく、また、通常光画像よりも、表層血管の構造が強調された特殊光画像を取得することができる。
【0069】
同時撮像モードとは、445LD42からの青色レーザ光の照射と、405LD44からの青紫色レーザ光の照射とを同時に行い、通常光画像と特殊光画像とを面順次で撮像するモードである。面順次で撮像を行うことにより、通常光画像と特殊光画像とをそれぞれ取得することができる。画像処理及び表示制御については、通常光モード及び特殊光モードと略同様であるが、通常光画像と特殊光画像とを同時に取得できるため、表示制御部50の指示により、表示部17において通常光画像と特殊光画像との両方の画像を表示することができる。
以上が、通常光モード、特殊光モード、及び同時撮像モードの動作説明である。
【0070】
次に、図7に示すフローチャートに基づいて保存モードについて説明する。保存モードとは、内視鏡観察時において動画保存する、又は内視鏡観察時において所定間隔で静止画を保存する撮像モードである。また、保存モードにおいて抽出される血管としては、前述のとおり、視認し易く、時間によって形状の変化しにくい中深層血管が最適であるため、通常は、中深層血管を抽出し、中深層血管の血管情報が保存される。
【0071】
保存モードは、病変部の経過観察のための再診時において、なるべく短時間で病変部を探索するため、通常は、病変部観察位置から内視鏡を抜去する場合に用いられる。もちろん、内視鏡挿入時から、病変部の発見までを保存してもよいが、一般的に内視鏡の挿入から病変の発見までは病変位置からの内視鏡の抜去に比べて時間が掛かるため、抜去時に保存モードが用いられる。したがって、内視鏡抜去時を前提に保存モードの説明する。
【0072】
まず始めに、入力部18により内視鏡装置11に被写体情報が入力される。被写体情報とは、前述のとおり被写体を識別するための識別情報と被写体の基本情報を含む情報である(S10)。
【0073】
被写体の体内に内視鏡が挿入され、内視鏡観察が開始される。内視鏡観察においては、入力部18により、通常光観察モード、特殊光観察モード、及び同時撮像モードのいずれかが選択されている(S12)。
【0074】
観察者は、被写体の体内を内視鏡観察し、表示部17に表示された撮像画像を確認しつつ、経過観察すべき病変部分を発見する。病変部分としては、例えば、経過観察が必要な、早期がんが疑われるものや小さな早期がん等である(S14)。
【0075】
経過観察したい病変部分が、内視鏡装置11によって撮像されている状態で、操作部23より保存モードをONにする。保存モードをONにすることで、現在、表示部17に表示されている撮像画像の撮像画像情報はもちろん、画像処理部52の血管抽出部54で抽出される血管情報を含むその他の撮像情報について、記憶部58へ記憶され始める(S16)。
なお、保存モードをONにした際に、表示部17に表示されている病変部分のおおよその形状を抽出し、前述の撮像情報の一部として保存してもよい。
【0076】
保存モードをONにした後、撮像画像がぶれたりしないように、病変部分の観察位置より内視鏡挿入部19をゆっくりと抜去する。前述と同様、撮像画像情報が記憶部58で記憶される(S18)。
なお、画像処理部52の血管抽出部54では、撮像画像情報から血管情報が抽出され、撮像画像情報と同様に記憶部58で記憶される(S20)。
【0077】
内視鏡装置11は、内視鏡本体14を被写体の体内から抜去するまで、前述のステップS18及びS20により、撮像画像情報を記憶し、撮像画像情報からの血管情報の抽出及びその記憶をし続ける。
そして、内視鏡装置11は、内視鏡挿入部19の抜去終了時に、保存モードをOFFにする。内視鏡挿入部19の抜去終了の判断は、例えば、撮像画像の輝度値で判断してもよく、また、抜去終了時点で撮像される歯を撮像画像情報より認識することで判断してもよい。また、単純に観察者の判断により、抜去終了とし、保存モードをOFFにしてもよい(S22)。
【0078】
保存モードがOFFにされると、記憶部58に記憶された撮像画像情報を含む撮像情報が、前述の被写体情報と共にネットワーク13を経由して外部サーバ12のデータベース上に保存される(S24)。
外部サーバ12のデータベースに保存された前述の撮像情報は、その外部サーバ12が含まれるPACSの各端末において利用が可能となる。
以上が、本発明の内視鏡装置の一実施形態の保存モードの動作の一実施例である。
【0079】
次に、図8に示すフローチャートに基づいてガイドモードについて説明する。ガイドモードとは、再診の際に、内視鏡先端35を、病変部分の観察位置までガイドする撮像モードである。保存モードと同様、ガイドモードにおいても抽出される血管は中深層血管であることが好ましい。同様の血管でなければガイドとならないからである。
【0080】
ガイドモードは、保存モードと同様、病変部の経過観察のため、再診時において、なるべく短時間で病変部を探索することを目的とする。観察者は、ガイドモードにおいて、表示される前回診断時の撮像画像及びその中の中深層血管の形状等に基づいて、病変部を探索することができる。
【0081】
まず始めに、入力部18により内視鏡装置11に被写体情報が入力される(S30)。
内視鏡装置11に被写体情報が入力されると、内視鏡装置11の制御部50は、ネットワーク13を通じて外部サーバ12のデータベースを参照し、データベース上に被写体情報が存在するか否かを確認する。ガイドモードを使用するのは再診時であるため、データベース上に前回診察時の被写体情報が存在する(S32)。
【0082】
制御部50は、被写体情報に基づいて、外部サーバ12のデータベースより、該被写体の撮像情報(撮像画像情報、血管情報、及び撮像条件)を取得する。取得した撮像情報は、記憶部58に記憶される(S34)。
【0083】
内視鏡装置11の操作部23において、ガイドモードをONにし、内視鏡挿入部19を被写体の体内に挿入して内視鏡観察を開始する(S36)。
撮像画像がぶれたりしないように、内視鏡挿入部19をゆっくりと挿入しつつ被写体の体腔内を撮像する。現在の撮像画像情報は、表示制御部56を経て表示部17に表示される(S38)。
【0084】
また、前述と同様、現在の撮像画像情報は、画像処理部52の血管抽出部54において、血管の抽出(前述のとおり、特に、中深層血管)が行われ、血管情報が算出される(S40)。
ここで算出された現在の血管情報は、制御部50の表示制御部56へ出力され、記憶部58に記憶された前回の診察時の血管情報、つまり過去の血管情報とのマッチングが行われる。現在の血管情報と過去の血管情報とのマッチングとは、例えば、中深層血管の形状や複数の中深層血管の位置関係に基づいて現在の撮像画像と過去の撮像画像との位置ずれの情報を算出することである(S42)。
ここでは、血管情報のマッチングについて記載しているが、マッチングの対象は血管情報以外の情報でもよく、例えば、上述のとおり、内視鏡挿入部19の挿入長(現在の挿入長と過去の挿入長)によるマッチングが行われてもよい。
【0085】
上述のマッチングが行われると、表示制御部56は、そのマッチングの情報に基づいて、記憶部58に記憶された過去の撮像画像から、現在の撮像画像に対応する画像を検出し、現在の撮像画像と共に表示部17で同期表示する。例えば、表示部17の左側に現在の撮像画像を、右側に過去の撮像画像をそれぞれ表示する。現在の撮像画像は挿入時の画像であるため、抜去時の画像である過去の撮像画像は逆再生されて表示される(S44)。
【0086】
現在の撮像画像と過去の撮像画像との同期表示は、内視鏡先端35が経過観察の対象である病変部付近に到着するまで、継続して行われる(S46)。
なお、過去の画像には、過去の撮像時の撮像条件を表示してもよく、また、現在の画像には、過去の撮像時の撮像条件になるべく近づくための撮像指示を表示してもよく、また、病変部に到着するまでの内視鏡挿入部19の操作指示を表示してもよい(S48)。
【0087】
内視鏡先端35が、被写体付近に到着すると、表示制御部56は、その旨を表示部17に表示し、ガイドモードを終了する(S50)。
以上が、本発明のガイドモードの動作の一例である。
【0088】
なお、保存モードで病変部を保存する際に、病変部のおおよその形状を画像処理部52で抽出して撮像情報の一部として保存しておき、再診において、ガイドモードで病変部に到達した際に、図9に示すように、過去の撮像画像における病変部の形状を、現在の病変部に重ねて表示してもよい。過去の病変部の形状を現在の病変部に重ねることで、病変部の経時変化をよりよく診断できる。なお、病変部の形状の保存の際には、特殊光画像を使用してもよく、また、入力部18より、医師などが形状を微修正してもよい。
【0089】
以上、本発明の内視鏡システムの一実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 内視鏡システム
11 内視鏡装置
12 外部サーバ
13 ネットワーク
14 内視鏡本体
15 光源装置
16 プロセッサ装置
17 表示部
18 入力部
19 内視鏡挿入部
20 光ファイバ
21 照射口
22 蛍光体
23 操作部
24 対物レンズユニット
25A、25B コネクタ部
26 撮像素子
27 CDS・AGC回路
28 A/D変換器
31 軟性部
33 湾曲部
35 先端部(内視鏡先端)
40 光源制御部
42 青色レーザ光源(445LD)
44 青紫色レーザ光源(405LD)
46 合波部材
50 制御部
52 画像処理部
54 血管抽出部
56 表示制御部
58 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体毎に固有の識別情報を入力する入力部と撮像画像を表示する表示部とを備える内視鏡装置と、該内視鏡装置により取得した撮像情報を記憶する外部サーバと、からなる内視鏡システムであって、
前記内視鏡装置は、
内視鏡先端から前記被写体に向けて照明光を照射する光源装置と、
前記被写体の体内に挿入される挿入部、前記内視鏡先端に設置され、前記照明光の前記被写体からの戻り光により撮像を行い、その撮像条件及び撮像画像情報を撮像画像信号として出力する撮像部、及び内視鏡の操作を行う操作部、を有する内視鏡本体と、
前記撮像画像信号を取得し、前記識別情報、前記撮像条件及び前記撮像画像情報を含む撮像情報を表示可能な表示画像情報に変換する画像処理部、前記撮像情報を記憶する記憶部、並びに前記表示部における画像表示を制御する表示制御部、を有するプロセッサ装置と、を備え、
前記被写体への内視鏡挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記記憶部に、病変部撮像位置から内視鏡先端を抜去するまでの撮像情報を第1の撮像情報として記憶させて、前記外部サーバへ出力し、
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記識別情報に基づいて、前記外部サーバに記憶された前記第1の撮像情報を第2の撮像情報として取得し、前記表示制御部は、前記第2の撮像情報を過去の撮像画像とし、現在の撮像画像と共に前記表示部に同期表示させることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
さらに、前記画像処理部は、血管抽出部を備え、
前記血管抽出部は、前記撮像画像における血管部分を抽出し、抽出された血管の情報を血管情報として出力し、
前記表示制御部は、前記表示部において、前記撮像画像と共に前記血管情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記血管情報は、前記撮像画像より抽出された血管の位置情報、又は前記撮像画像より抽出された血管の形状の情報のみからなるベクトル情報であることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記第1の撮像情報と前記第2の撮像情報とをマッチングさせることで、過去の撮像画像と現在の撮像画像とを前記表示部に同期表示させることを特徴とする請求項2又は3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報は前記血管情報であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報は前記挿入部の挿入長であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記第1の撮像情報及び前記第2の撮像情報として、前記病変部周辺までは前記挿入部の挿入長を用い、前記病変部周辺では前記血管情報を用いることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記マッチングにより算出された前記内視鏡先端の現在の位置情報に基づいて、前記病変部までの方向と距離との少なくとも一方を前記表示部に表示することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記血管抽出部は、生体の深さ50μm以下にあり、太さ20〜500μmの血管を抽出することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記入力部より前記被写体の前記識別情報が再入力されると、前記プロセッサ装置は、該識別情報に基づいて前記外部サーバに記憶された前記第1の撮像情報を第2の撮像情報として自動的に取得することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記表示制御部は、前記過去の撮像画像と共に過去の前記撮像条件を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記撮像条件は、撮像時の撮像倍率、前記内視鏡先端の向き、前記挿入部の湾曲の情報、照明光の光量情報、光源装置の情報、前記挿入部の挿入長の情報を含む請求項1〜11のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項13】
さらに、前記被写体への内視鏡挿入時において、前記プロセッサ装置は、前記記憶部に、前記病変部の形状を形状情報として記憶させて、前記外部サーバへ出力し、
前記入力部より前記被写体の前記識別情報が再入力されると、前記プロセッサ装置は、該識別情報に基づいて前記外部サーバに記憶された前記病変部の形状情報を過去の形状情報として自動的に取得し、
前記被写体への内視鏡再挿入時において、前記内視鏡先端が前記病変部付近に到着した際に、現在の撮像画像に過去の病変部の形状を重ねて表示することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記記憶部は、一定間隔毎に前記撮像情報を記憶することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記光源装置は、照明光として、白色光及び狭帯域光の少なくとも一方を照射することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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