説明

内視鏡システム

【課題】異常発生時(障害発生時)でも画像の伝送を確保することができる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】撮像部102は、被写体を撮像して画像情報を生成する。送信部109は、撮像部102が生成した画像情報を、複数の異なる伝送方式により送信する。受信部110は、送信部109によって複数の異なる伝送方式により送信された画像情報を受信する。画像処理部111は、受信部110によって受信された画像情報を処理する。また、送信部109は、撮像部102が生成した画像情報を、複数の異なる伝送方式のそれぞれに対応した、複数の異なる型式の変換画像情報に変換して出力する変換部を有する。受信部110は、受信された複数の異なる型式の変換画像情報を画像情報に再変換して出力する再変換部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像部が被写体を撮像して得られた画像情報を画像処理部に伝送し、伝送された画像情報に対して画像処理部が画像処理を行う内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡においては、撮像を行う内視鏡スコープと、画像処理を行う画像処理プロセッサ装置との間の画像の伝送方式として、アナログおよびデジタル等の電気信号による通信や、光ファイバーを用いた光通信、所定の帯域の電波を用いる無線通信を用いたものが提案されている。一方、配線上のストレスによる断線や、腐蝕等による接触不良、または、高周波処置具等の影響により上記の各種伝送方式による伝送ができなくなる場合がある。
【0003】
内視鏡のような医療機器では、診断中や治療中に上記のような状態となることは好ましくないため、伝送部に冗長性を持たせ、異常発生時でも画像出力を確保するシステムが各種提案されている。たとえば、特許文献1では、複数の伝送路を持ち、伝送路の異常を検出した場合には、中継手段により正常なラインを選択し、確実に伝送を行うシステムが開示されている。また、特許文献2には、高周波処置具の作動スイッチに連動して送信出力を増加させる無線方式の内視鏡システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−299694号公報
【特許文献2】特開2001−46334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の内視鏡では、異常発生時の代替伝送路として、通常時の伝送路と同等のものを使用している。しかし、異常発生の原因によっては代替伝送路も同様の異常が発生することが考えられ、画像の伝送が確保できない可能性がある。特許文献1,2ではこの観点について記載されていない。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、異常発生時(障害発生時)でも画像の伝送を確保することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、被写体を撮像して画像情報を生成する撮像部と、前記撮像部が生成した前記画像情報を、複数の異なる伝送方式により送信する送信部と、前記送信部によって前記複数の異なる伝送方式により送信された前記画像情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記画像情報を処理する画像処理部と、を有し、前記送信部は、前記撮像部が生成した前記画像情報を、前記複数の異なる伝送方式のそれぞれに対応した、複数の異なる型式の変換画像情報に変換して出力する変換部を有し、前記受信部は、受信された前記複数の異なる型式の前記変換画像情報を前記画像情報に再変換して出力する再変換部を有する内視鏡システムである。
【0008】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記受信部は、前記複数の異なる伝送方式のそれぞれによる伝送路の障害を検出する障害検出部を有し、いずれかの伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記再変換部は障害の無い伝送方式により送信された前記変換画像情報のみ前記画像情報に再変換して出力する。
【0009】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が第1の伝送方式と第2の伝送方式を含み、前記障害検出部は、障害を検出した結果を示す障害検出情報を前記送信部へ出力し、前記変換部は、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出されていない場合に、前記第1の伝送方式に対応した型式の第1の変換画像情報と、前記第2の伝送方式に対応した型式の第2の変換画像情報とを生成し、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記第2の伝送方式に対応した型式の第3の変換画像情報を生成し、前記再変換部は、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出されていない場合に、前記第1の変換画像情報と前記第2の変換画像情報とから前記画像情報を生成し、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記第3の変換画像情報から前記画像情報を生成する。
【0010】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式を含む。
【0011】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が、無線通信を用いる伝送方式を含む。
【0012】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が、電源線へ前記画像情報を重畳する伝送方式を含む。
【0013】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、無線通信を用いる伝送方式とを含む。
【0014】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、電源線へ前記画像情報を重畳する伝送方式とを含む。
【0015】
また、本発明の内視鏡システムは、前記送信部が対応可能な伝送方式を識別する識別情報を生成する識別部をさらに有し、前記再変換部は、前記識別情報に基づいて、前記受信部が対応可能な伝送方式のうち前記送信部が対応可能な伝送方式のみに対応した前記変換画像情報を前記画像情報に再変換する。
【0016】
また、本発明の内視鏡システムは、前記受信部が対応可能な伝送方式を識別する識別信号を生成する識別部をさらに有し、前記変換部は、前記識別情報に基づいて、前記送信部が対応可能な伝送方式のうち前記受信部が対応可能な伝送方式のみに対応した前記変換画像情報を出力する。
【0017】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記送信部は、前記複数の異なる伝送方式毎に独立した送信出力部を有し、各送信出力部は、同一の前記画像情報を、前記複数の異なる伝送方式間で異なるタイミングで送信する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、送信部において、画像情報を、複数の異なる伝送方式のそれぞれに対応した、複数の異なる型式の変換画像情報に変換し、受信部において、複数の異なる型式の変換画像情報を画像情報に再変換して出力することによって、特定の伝送方式に対応した伝送路で異常(障害)が発生して画像の伝送が確保できなくても他の伝送方式に対応した伝送路で画像の伝送を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態において、アナログ差動信号で画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において、デジタル差動信号で画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において、光通信を使用してアナログ画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態において、光通信を使用してデジタル画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態において、無線通信を使用してデジタル画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態において、人体通信を使用してデジタル画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において、電源ライン通信を使用してデジタル画像信号を伝送する伝送方式の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における伝送タイミングを示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける変換部の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第1の実施形態において、偶数画素間引き画像と奇数画素間引き画像を生成する様子を示す参考図である。
【図15】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける再変換部の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第1の実施形態において、間引き画像を合成して元画像を生成する様子を示す参考図である。
【図17】本発明の第1の実施形態において、片方の間引き画像から補間画像を生成する様子を示す参考図である。
【図18】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置の接続を示すブロック図である。
【図19】本発明の第1の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置の構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置の構成を示すブロック図である。
【図21】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第2の実施形態における伝送タイミングを示すタイミングチャートである。
【図23】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける変換部の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける再変換部の構成を示すブロック図である。
【図26】本発明の第2の実施形態による内視鏡システムにおける選択部が選択する画像を示す参考図である。
【図27】本発明の第3の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置の構成を示すブロック図である。
【図28】本発明の第3の実施形態による内視鏡システムにおける内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置が対応している伝送方式を識別するための構成を示すブロック図である。
【図29】本発明の第3の実施形態による内視鏡システムにおける送信部の構成を示すブロック図である。
【図30】本発明の第3の実施形態による内視鏡システムにおける受信部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による内視鏡システム(内視鏡装置)の構成を示している。本実施形態の内視鏡システムは、撮像部102を内蔵する内視鏡スコープ101と、画像処理プロセッサ装置103と、光源装置104と、システムコントローラ105と、操作部106と、表示装置107と、記録装置108とを有する。
【0022】
内視鏡スコープ101は、体腔内に挿入される部材である。撮像部102は、被写体である体腔内を撮像して、画像情報を含む撮像画像を生成する。画像処理プロセッサ装置103は、内視鏡スコープ101から出力された撮像画像に対して各種画像処理を施す。画像処理プロセッサ装置103によって処理された撮像画像は、表示・記録画像として表示装置107および記録装置108へ出力される。光源装置104は、システムコントローラ105から出力される発光量情報に基づいて内視鏡スコープ101に照明光を出力する。システムコントローラ105は内視鏡システム内の各部をコントロール(制御)する。操作部106は、操作者が各種操作を行うための操作部材を有し、操作者が操作を行った結果を示す操作情報をシステムコントローラ105へ出力する。表示装置107は、画像処理プロセッサ装置103から出力される表示・記録画像を表示する。記録装置108は、画像処理プロセッサ装置103から出力される表示・記録画像を媒体に記録する。
【0023】
次に、内視鏡システムの概略動作を説明する。内視鏡スコープ101は光源装置104からの照明光を導光し、体腔内の部位を照明する。また、内視鏡スコープ101は、内蔵されている撮像部102により対象部位の画像を撮像し、撮像画像を生成して出力する。撮像画像は画像処理プロセッサ装置103に入力され、画像処理プロセッサ装置103によってノイズ軽減,色補正,色強調,輪郭強調等の各種の画像処理が行われる。このような画像処理が施された後、表示・記録画像が表示装置107および記録装置108に出力される。システムコントローラ105は、操作部106からの操作情報に従い、例えば画像処理プロセッサ装置103の画像処理パラメータの変更を行い、操作者が所望する診断画像を得る。
【0024】
図2は内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103のインターフェース部を模式的に示している。内視鏡スコープ101内では、撮像部102によって取得された撮像画像は、送信部109に入力される。送信部109は、撮像画像に対して、後述する所定の変換を行うことにより、撮像部102が生成した撮像画像を、2つの異なる伝送方式である有線通信および無線通信のそれぞれに対応した、2つの異なる型式の変換データに変換し、有線通信および無線通信の伝送路を介して変換データを送信する。内視鏡スコープ101から出力された変換データは、2種類の伝送路を介して画像処理プロセッサ装置103内の受信部110に伝送される。受信部110は、2種類の伝送路を介して変換データを受信し、送信部109で行われた変換に対応する再変換を行って変換データを撮像画像に再変換し、受信画像データとして画像処理部111に出力する。画像処理部111は、受信画像データに対して、各種画像処理を行う。
【0025】
ここで、本実施形態で用いる伝送方式について説明する。内視鏡で用いられる伝送方式として、光信号や電気信号等の専用の通信線を使う方式、電源ラインに画像を重畳するなど他の伝送線路と伝送路を兼用する方式、無線通信や人体通信などのように、空中や人体を媒体として使う方式など、各種の方式が提案されている。本実施形態で用いる伝送方式は特定の伝送方式に限られるものではなく、上記のいずれかを組み合わせて使うことを前提とする。
【0026】
専用の通信線を使う、光信号や電気信号を用いる伝送方式では、スコープ内に専用のケーブルを使用する必要がある。しかし、無線通信や人体通信、電源ライン通信は送信部と受信部の間に専用のケーブルを必要としない。これらの伝送方式を用いる場合、撮像素子の近傍、すなわちスコープの先端部に送信部を配置し、画像処理プロセッサとの接続部近傍に受信部を配置することにより、スコープ内のケーブルを削減することが可能となり、スコープをより細径化することができる。
【0027】
それぞれの伝送方式について簡単に説明する。電気信号を伝送する方式としては、たとえば特開2008−80007号公報に開示されているような、差動信号により伝送を行うものがある。図3は、差動ラインでアナログ画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部201が設けられ、受信側に受信入力部202が設けられる。送信出力部201は、変調部203と差動ドライバ204を有する。変調部203はアナログ送信画像を変調する。差動ドライバ204は変調後のアナログ送信画像を差動信号として伝送路に出力する。電源からのノイズの影響を受けにくくするため、伝送路として差動ラインを使用する。受信入力部202は差動レシーバ205と復調部206を有する。差動レシーバ205は差動信号を受信してアナログ画像を再構成し、復調部206に出力する。復調部206はアナログ画像に所定の復調を行った後、アナログ受信画像として出力する。
【0028】
図4は、差動ラインでデジタル画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部207が設けられ、受信側に受信入力部208が設けられる。送信出力部207は、パラレルシリアル変換部209と差動ドライバ210を有する。受信入力部208は、差動レシーバ211とシリアルパラレル変換部212を有する。基本的にはアナログ信号の伝送と同様であるが、デジタル信号の場合には送信出力部207はパラレルシリアル変換部209によりパラレル信号を一旦シリアルに変換し伝送する。また、受信入力部208はシリアルパラレル変換部212によりシリアル信号をパラレルに変換する。
【0029】
光通信を利用する方式は、たとえば特開2008−36356号公報に開示されている。図5は、光通信でアナログ画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部213が設けられ、受信側に受信入力部214が設けられる。送信出力部213は、変調部215と電光変換部216を有する。変調部215はアナログ送信画像を変調する。電光変換部216は変調後のアナログ送信画像を光信号に変換して光信号を伝送路(光ファイバー)に出力する。受信入力部214は光電変換部217と復調部218を有する。光電変換部217は光信号を受信して電気信号に変換する。復調部218は変換後の電気信号を復調した後、アナログ受信画像として出力する。
【0030】
図6は、光通信でデジタル画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部219が設けられ、受信側に受信入力部220が設けられる。送信出力部219は、パラレルシリアル変換部221と、変調部222と、電光変換部223とを有する。受信入力部220は、光電変換部224と、復調部225と、シリアルパラレル変換部226とを有する。電気信号の場合と同様に、入力側と出力側にそれぞれパラレルシリアル変換部221とシリアルパラレル変換部226が設けられ、パラレル信号がシリアル化されて伝送される。
【0031】
無線通信を利用する方式は、たとえば特開2001−46334号公報に開示されている。図7は、無線通信でデジタル画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部227が設けられ、受信側に受信入力部228が設けられる。送信出力部227は、パラレルシリアル変換部229と変調部230を有する。パラレルシリアル変換部229は、デジタル送信画像を構成するパラレル信号をシリアルに変換する。変調部230は、シリアル信号を変調した後、アンテナ231を介して送信信号を無線で送信する。受信入力部228は、復調部233とシリアルパラレル変換部234を有する。復調部233は、アンテナ232を介して無線で受信した受信信号を復調する。シリアルパラレル変換部234は復調後の受信信号をパラレルに変換してデジタル受信画像として出力する。アナログ画像の無線伝送に関しては電気信号や光信号による伝送と同様にして行うことが可能である。
【0032】
人体通信を用いる方式は、たとえば特開2004−337356号公報に開示されている。図8は、人体通信でデジタル画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部235が設けられ、受信側に受信入力部236が設けられる。送信出力部235は、パラレルシリアル変換部237と変調部238を有する。受信入力部236は、復調部241とシリアルパラレル変換部242を有する。無線通信の場合と同様に、パラレル−シリアル変換が行われ、シリアル信号が変調された後、伝送路となる人体に接続した電極239,240を通して通信が行われる。受信側でも無線通信の場合と同様に、受信信号が復調されてシリアル−パラレル変換が行われた後、デジタル受信画像が出力される。
【0033】
電源ライン通信を利用する方式は、たとえば特開2004−81748号公報に開示されている。図9は、電源ライン通信でデジタル画像信号を伝送する場合の構成を示している。送信側に送信出力部243が設けられ、受信側に受信入力部244が設けられる。送信出力部235は、パラレルシリアル変換部245と、変調部246と、波形重畳部247とを有する。パラレルシリアル変換部245は、デジタル送信画像を構成するパラレル信号をシリアルに変換する。変調部246は、シリアル信号を変調する。波形重畳部247は、変調後のシリアル信号を電源ラインに重畳する。受信入力部244は、電源供給部248と、波形分離部249と、復調部250と、シリアルパラレル変換部251とを有する。電源供給部248は、電源ラインに電源を供給する。波形分離部249は、電源ラインに重畳されているシリアル信号を分離する。復調部250は、分離されたシリアル信号を復調する。シリアルパラレル変換部251は復調後のシリアル信号をパラレルに変換してデジタル受信画像として出力する。以上の人体通信や電源ライン通信についても同様にシリアル信号の代わりにアナログ信号を入力することでアナログ信号を伝送することが可能となる。
【0034】
以上のそれぞれの信号については、内視鏡使用時の異常発生の原因が異なる。たとえば、有線による電気信号の伝送については電気接点の腐食や断線、コネクタの破損による接触不良が問題となる。光通信ではコネクタ部の汚れが原因となり、伝送エラーが発生する。また、無線通信や人体通信、電源ライン通信については外部のノイズによる影響を受けやすいため、たとえば高周波処置具などの作動により画像が乱れることが考えられる。
【0035】
本実施形態では、デジタル画像信号を差動信号で伝送する伝送方式(図4)と、デジタル画像信号を無線通信により伝送する伝送方式(図7)とを用いるものとする。なお、内視鏡ではスコープ自体やケーブル類の細径化が求められるが、複数の伝送方式を用いる場合、一方の伝送方式を、専用線を持たない無線方式とすることにより、通常の差動ラインによる伝送方式を用いる場合と同等の径でスコープやケーブル類を構成することが可能となる。
【0036】
図10は送信部109の構成を示している。送信部109は、タイミングジェネレータ300,301と、変換部302と、送信出力部303,304とを有する。送信出力部303は図4の送信出力部207に対応し、送信出力部304は図7の送信出力部227に対応する。変換部302は、撮像部102が生成した撮像画像を、複数の異なる伝送方式のそれぞれの伝送速度等に対応した、複数の異なる型式の変換データ(変換画像情報)に変換して出力する。たとえば、無線などでは法令により帯域や出力が決められており、送信できる伝送速度に限りがある。また、同様に差動信号で撮像画像を送る場合にも、伝送路の特性や消費電力などの観点から伝送速度が規定されてしまう。このため、何らかの画像データの削減(圧縮)が必要となる。変換部302はこのためのデータの削減も行う。
【0037】
図10に示すように、それぞれの伝送方式に対応して独立したタイミングジェネレータ300,301が設けられ、異なるタイミングで伝送が行われる。図11は伝送タイミングの例を示している。ここでは、1フレームの画像を模式的に3つに分けた場合を用いて説明するが、実際の伝送ではこれに限られるものではなく、1フレームの画像をより多数のブロックへ分割して伝送する場合や、1フレームの画像を各画素やラインごとに分割して伝送する場合、1フレームの画像を伝送路ごとに異なる分割方法で分割して伝送する場合でも同様である。
【0038】
タイミングジェネレータ300,301は、差動通信の伝送タイミングに対し、所定の時間遅れたタイミングで無線通信の伝送を行うように、各伝送方式に対応した送信出力部303,304におけるデータの送信タイミングを制御する伝送タイミング信号を生成して出力する。したがって、1フレームの画像を分割した単位で見ると、同一のデータが2つの伝送方式で異なるタイミングで送信される。これにより、差動通信と無線通信に同時に障害が発生した場合、たとえば、差動通信のデータ2と無線通信のデータ1の送信タイミングで障害が発生しても、それぞれ、差動通信のデータ1および無線通信のデータ2に障害は発生しない。なお、それぞれ独立したタイミングジェネレータにより通信を行う例を記載しているが、単一のタイミングジェネレータにより、異なる伝送タイミングを発生させてもよい。
【0039】
図12は受信部110の構成を示している。受信部110は、受信入力部310,311と、再変換部312と、障害検出部313とを有する。受信入力部310は図4の受信入力部208に対応し、受信入力部311は図7の受信入力部228に対応する。再変換部312は、受信入力部310,311から出力される変換データに対して、送信時の変換に対応した再変換を行い、受信画像を生成して出力する。障害検出部313は、高周波処置具の作動による障害や、差動通信や無線通信の伝送データ(差動入力、無線入力)から伝送路の障害を検出し、障害の有無に応じた障害検出信号(障害検出情報)を出力する。
【0040】
再変換部312は、障害検出部313からの障害検出信号に基づいて処理を行う。障害検出信号に基づいて、障害を検出した場合、または、高周波処置具の作動による障害が予測できる場合には、再変換部312は通常時の処理を変え、後述する障害発生に合わせた処理を行う。なお、受信データから障害を検出する方法としては、各種の方法が考えられる。たとえば、既知のデータを所定の周期で伝送し、その値を比較して検出したり、また、エラー検出コードをデータに付加し、その結果より検出したりしてもよい。また、複数系統で画像を送るので、その画像間の比較を行ってもよい。
【0041】
次に、変換部302と再変換部312について説明する。前述したように変換部302では、各伝送方式に対応する伝送路の帯域に合わせた変換が行われる。本実施形態では伝送路として無線通信路と差動ラインを使用するが、そのそれぞれについて、画像データの間引きが行われる。
【0042】
図13は変換部302の構成を示している。変換部302は、それぞれの伝送路用に画像の間引きを行うための間引き画像生成部315,316を有する。ここで、間引きとして画素またはラインの間引きを行うものが考えられる。本実施形態では、差動ライン側の間引き画像生成部315が、奇数画素を間引いた第1の間引き画像を出力し、無線側の間引き画像生成部316が、偶数画素を間引いた第2の間引き画像を出力するものとする。
【0043】
図14は、2種類の間引き画像を生成する様子を示している。図14に示すように、間引き前の画像である元画像の1画素ごとに各画素が偶数画素と奇数画素とに割り当てられる。間引き画像生成部315は、偶数画素に割り当てられた画素からなる第1の間引き画像を生成し、間引き画像生成部316は、奇数画素に割り当てられた画素からなる第2の間引き画像を生成する。
【0044】
図15は再変換部312の構成を示している。変換部302は、合成部317と、補間部318と、選択部319とを有する。合成部317は、それぞれの伝送路から受信された間引き画像(差動受信データ、無線受信データ)を合成し、間引き前の元画像を生成する。図16は、間引き画像を合成して元画像を生成する様子を示している。合成部317は、第1の間引き画像の各画素を偶数画素に配置し、第2の間引き画像の各画素を奇数画素に配置することで第1の間引き画像と第2の間引き画像を合成し、元画像を生成する。
【0045】
補間部318は、2つの伝送方式のいずれかに障害がある場合に対応するため、片方の間引き画像から、元画像に相当する補間画像を生成する。図17は、片方の間引き画像から補間画像を生成する様子を示している。ここでは、無線通信に障害があった場合に使用される補間画像を生成する様子が示されている。補間部318は、差動ラインで伝送された第1の間引き画像の画素を偶数画素に配置し、さらに奇数画素については、隣接する偶数画素から補間を行い、元画像に相当する補間画像を生成する。上記と同様に補間部318は、第2の間引き画像から補間画像を生成する。
【0046】
上記の説明では、2つの伝送方式に割り当てる画素の間引きの割合や方法について言及しなかったが、実際には各伝送路での伝送速度は異なるため、その間引き率も伝送路ごとに異なる。
【0047】
選択部319は、障害検出信号に基づいて、合成部317が生成した元画像と、補間部318が生成した2種類の補間画像との中からいずれかを選択し、受信画像として出力する。たとえば、無線通信にも差動ラインにも障害が検出されていない場合には、選択部319は、元画像を選択して受信画像として出力する。また、高周波処置具等の影響で無線通信に障害が検出された場合には、選択部319は、差動ラインで伝送された第1の間引き画像のみから生成された補間画像を選択して受信画像として出力する。また、コネクタの腐食等により差動ラインに障害が検出された場合には、選択部319は、無線通信で伝送された第2の間引き画像のみから生成された補間画像を選択して受信画像として出力する。
【0048】
次に、本実施形態の変形例を説明する。この例では、2種類の伝送方式として、電源ライン通信と無線通信を用いる。図18は、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103の接続を模式的に示している。この例では、機構的な接続は、内視鏡スコープ101内部の電気回路を動作させるための電源ラインと、図示しない送気・送水のチャネルや導光のためのライトガイドのみとなる。
【0049】
図19は、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103の内部の構成を示している。内視鏡スコープ101内では撮像部102が取得した撮像画像は変換部302に入力され、変換後の撮像画像が、電源ライン通信に対応した送信出力部303と、無線通信に対応した送信出力部304とに入力される。すなわち、撮像画像は、電源ライン通信と無線通信によって画像処理プロセッサ装置103に伝送される。
【0050】
画像処理プロセッサ装置103内では、受信入力部310が電源ラインから分離した撮像画像と、受信入力部311が無線通信により受信した撮像画像とが再変換部312に入力される。なお、以後の動作は、前述した動作と同様である。この構成では、撮像部102の近傍すなわち内視鏡スコープ101の先端部に送信出力部303,304を配置することにより、内視鏡スコープ101の先端部から内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103の接続部までの伝送のための専用ケーブルが不要となるため、内視鏡スコープ101を細径化することが可能となる。なお、ここでは画像処理プロセッサ装置103内に受信入力部310,311を配置したが、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103のインターフェースの汎用化を考慮し、内視鏡スコープ101内に配置された、画像処理プロセッサ装置103とのコネクタ部に内蔵することも可能である。
【0051】
上述したように、本実施形態によれば、内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103との間で複数の伝送方式で撮像画像を伝送することによって、特定の伝送方式において、各種の異常による伝送の障害が発生しても、画像が途切れることなく画像伝送を行うことができる。なお、本実施形態では伝送方式として、デジタル信号を差動信号で伝送する方式と、デジタル信号を無線通信で伝送する方式とを使用した例で説明したが、これに限られるものではなく、アナログ信号を差動信号で伝送する方式等を使用することも可能である。また、光通信や人体通信を用いる場合も、本実施形態の主旨を変えずに、送信部と受信部に対して、それぞれの伝送方式に対応した変更を行うことで実現することが可能である。
【0052】
また、いずれかの伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、選択部319が、障害の無い伝送方式により送信された画像を選択して出力することによって、伝送路の障害が受信画像に影響しなくなる。
【0053】
また、専用線による有線通信を用いる伝送方式(光信号や電気信号を用いる伝送方式)や、電源ライン(電源線)へ撮像画像を重畳する伝送方式で撮像画像を伝送する場合には、電磁波等による周辺環境の影響を受けにくい伝送路により伝送を行うため、障害が発生しにくく、画像の伝送を確保することができる。
【0054】
また、無線通信を用いる伝送方式で撮像画像を伝送する場合には、腐食や汚れ、破損による接触不良が起こりにくい伝送路により伝送を行うため、障害が発生しにくく、画像の伝送を確保することができる。
【0055】
また、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、無線通信を用いる伝送方式とを組み合わせて撮像画像を伝送する場合には、同一原因による障害が発生しにくくなる。さらに、専用線を用いない無線通信との組み合わせであるため、従来の内視鏡システムの構成を変更して本実施形態を実現する場合に、ケーブル径を増やさずに画像の伝送を確保することができる。
【0056】
また、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、電源ライン(電源線)へ撮像画像を重畳する伝送方式とを組み合わせて撮像画像を伝送する場合には、同一原因による障害が発生しにくくなる。さらに、専用線を用いない、電源ラインへ撮像画像を重畳する伝送方式との組み合わせであるため、従来の内視鏡システムの構成を変更して本実施形態を実現する場合に、ケーブル径を増やさずに画像の伝送を確保することができる。
【0057】
また、撮像画像を複数の分割画像に分割して送信する際に、同一の分割画像を複数の異なる伝送方式間で異なるタイミングで送信することによって、同一データに対する障害を受けにくくなる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の内視鏡システムの全体構成は、第1の実施形態で示した構成(図1)と同様である。図20は、本実施形態の内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103のインターフェース部を模式的に示している。第1の実施形態で説明したインターフェース部(図2)とほぼ同様であるが、本実施形態では、伝送の信頼性を上げるために3系統の伝送方式を使用している。本実施形態では、デジタル画像信号を光通信で伝送する伝送方式(図6)と、デジタル画像信号を人体通信で伝送する伝送方式(図8)と、デジタル画像信号を電源ライン通信で伝送する伝送方式(図9)とを用いるものとする。
【0059】
図21は送信部109の構成を示している。送信部109は、タイミングジェネレータ400と、変換部401と、送信出力部402,403,404とを有する。送信出力部402は図6の送信出力部219に対応し、送信出力部403は図8の送信出力部235に対応し、送信出力部404は図9の送信出力部243に対応する。
【0060】
変換部401は、第1の実施形態と同様に、撮像部102が生成した撮像画像を、複数の異なる伝送方式のそれぞれの伝送速度等に対応した、複数の異なる型式の変換データ(変換画像情報)に変換して出力する。タイミングジェネレータ400は、各伝送方式に対応した送信出力部402,403,404におけるデータの送信タイミングを制御する伝送タイミング信号を生成して出力する。
【0061】
図22は伝送タイミングの例を示している。ここでは、第1の実施形態と同様に1フレームの画像を模式的に3つに分けた場合を用いて説明するが、実際の伝送ではこれに限られるものではない。タイミングジェネレータ400は、同一の分割画像に関して、光通信、人体通信、電源ライン通信で異なる順番で伝送を行うように伝送タイミング信号を発生する。図22では、1フレームの画像がデータ1,2,3の3つのデータに分割され、光通信ではデータ1,2,3の順に画像が伝送され、人体通信ではデータ2,3,1の順に画像が伝送され、電源ライン通信ではデータ3,1,2の順に画像が伝送される。
【0062】
第1の実施形態と同様に、光通信、人体通信、電源ライン通信のそれぞれに同時に障害が発生した場合、たとえば、光通信のデータ2と人体通信のデータ3と電源ライン通信のデータ1の送信タイミングで障害が発生しても、障害発生時に送信された画像は他の送信タイミングで伝送されている。なお、単一のタイミングジェネレータを用いる例を説明したが、第1の実施形態と同様のそれぞれ独立したタイミングジェネレータにより伝送タイミングを発生させてもよい。
【0063】
図23は受信部110の構成を示している。受信部110は、受信入力部410,411,412と、再変換部413と、障害検出部414とを有する。受信入力部410は図6の受信入力部220に対応し、受信入力部411は図8の受信入力部236に対応し、受信入力部412は図9の受信入力部244に対応する。再変換部413は、受信入力部410,411,412から出力される変換データに対して、送信時の変換に対応した再変換を行い、受信画像を生成して出力する。障害検出部414は、光通信、人体通信、電源ライン通信の伝送データ(光通信入力、人体通信入力、電源ライン通信入力)から伝送路の障害を検出し、障害の有無に応じた障害検出信号を出力する。障害が検出された場合には、送信側の変換部401および受信側の再変換部413はその処理を変え、障害発生に合わせた処理を行う。
【0064】
次に、変換部401と再変換部413の詳細について説明する。第1の実施形態と同様に変換部401は、対応する伝送路の帯域に合わせた変換を行う。図24は変換部401の構成を示している。変換部401は、画像圧縮部415と、差分生成部416と、選択部417とを有する。本実施形態では、光通信の伝送路には非圧縮の撮像画像が出力される。画像圧縮部415は、撮像画像に対してJPEGや、ガンマ変換、間引き等の非可逆圧縮を施すことにより撮像画像を圧縮した圧縮画像(第1の変換画像情報)を生成し、人体通信の伝送路に出力する。差分生成部416は、人体通信用の圧縮画像を一旦伸長し、撮像部102からの撮像画像と、非可逆圧縮により圧縮された圧縮画像を伸張した画像との差分画像を生成することにより圧縮差分データ(第2の変換画像情報)を生成する。
【0065】
選択部417は、電源ライン通信の伝送路に出力するデータを選択する。受信部110からの障害検出信号に基づいて、人体通信に障害が発生していないことが検出された場合には、選択部417は、差分生成部416からの圧縮差分データを選択する。また、人体通信に障害が発生したことが検出された場合には、圧縮差分データのみを送っても受信部110で圧縮差分データを伸長できないため、選択部417は、画像圧縮部415からの通常の圧縮データ(第3の変換画像情報)を選択する。
【0066】
図25は再変換部413の構成を示している。再変換部413は、伸長部418と、伸長部419と、加算部420と、選択部421とを有する。伸長部418は、人体通信の伝送路から受信した圧縮データを伸長する。加算部420は、伸長部418が伸長したデータに対して、電源ライン通信の伝送路から受信した圧縮差分データを加算することにより、撮像画像を復元する。伸長部419は、人体通信に障害が発生した場合に電源ライン通信で圧縮データが伝送されることに対応して設けられており、電源ライン通信の伝送路から受信した圧縮データを伸長する。
【0067】
選択部421は、光通信の伝送路から受信した、撮像画像に対応する非圧縮画像D0と、加算部420が復元した撮像画像D1と、伸長部418が伸長した伸長画像D2と、伸長部419が伸長した伸長画像D3との中からいずれかを選択して受信画像として出力する。図26は、障害検出信号に応じて選択部が選択する画像を示している。光通信に障害が発生していない場合には、選択部421は、光通信の伝送路から受信した非圧縮画像D0を選択する。また、光通信に障害が発生し、人体通信と電源ライン通信には障害が発生していない場合には、選択部421は、加算部420が復元した撮像画像D1を選択する。
【0068】
さらに、光通信に障害が発生し、かつ、電源ライン通信に障害が発生している場合には、選択部421は、伸長部418が伸長した伸長画像D2を選択する。また、光通信に障害が発生し、かつ、人体通信に障害が発生している場合には、選択部421は、伸長部419が伸長した伸長画像D3を選択する。
【0069】
上述したように、本実施形態によれば、光通信に障害が発生した場合でも、人体通信と電源ライン通信に障害が発生していなければ、劣化のない画像を伝送することができる。また、光通信に加え、もう一系統の通信に障害が発生した場合にも、劣化はするものの画像伝送自体は途切れることなく行うことができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態の内視鏡システムの全体構成は、第1の実施形態で示した構成(図1)と同様である。図27は本実施形態の内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103のインターフェース部を模式的に示している。本実施形態では、伝送路として、デジタル画像信号を光通信で伝送する伝送方式(図6)による伝送路1と、デジタル画像信号を差動通信で伝送する伝送方式(図4)による伝送路2と、デジタル画像信号を電源ライン通信で伝送する伝送方式(図9)による伝送路3と、デジタル画像信号を人体通信で伝送する伝送方式(図8)による伝送路4とを用いるものとする。
【0071】
内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103はそれぞれ3系統の伝送方式を使用している。内視鏡スコープ101は、光通信(伝送路1)、差動通信(伝送路2)、電源ライン通信(伝送路3)に対応し、画像処理プロセッサ装置103は、光通信(伝送路1)、差動通信(伝送路2)、人体通信(伝送路4)に対応している。この場合、内視鏡スコープ101は伝送路3に接続できるが、画像処理プロセッサ装置103は、対応するインターフェースがないため、伝送路3に接続できない。また、画像処理プロセッサ装置103は伝送路4に接続できるが、内視鏡スコープ101は、対応するインターフェースがないため、伝送路4に接続できない。
【0072】
ここで、内視鏡の画像処理プロセッサ装置は、用途などに応じて複数のスコープを付け替えて使用するのが一般的である。この場合、スコープ毎に画像処理や制御信号などを変える必要があるため、スコープ内にはスコープの種別を示すスコープ情報が格納されており、画像処理プロセッサ装置はスコープ情報を読み出すことによりスコープの識別を行う。また、同様にスコープ側でも、接続する画像処理プロセッサ装置の種類により伝送方式などの各種設定を変更するために、画像処理プロセッサ装置の識別を行う必要がある。
【0073】
本実施形態の内視鏡スコープ101と画像処理プロセッサ装置103が対応している伝送方式の識別について、図28を用いて説明する。図28において、図27に示した構成については図示を省略している。本実施形態では画像処理プロセッサ装置103内に識別信号生成部120と画像処理プロセッサ情報ROM121が内蔵されている。画像処理プロセッサ情報ROM121には、画像処理プロセッサ装置103を識別する画像処理プロセッサ情報が格納されている。画像処理プロセッサ情報には、画像処理プロセッサ装置103が対応している伝送方式に関する情報が含まれており、画像処理プロセッサ情報によって、画像処理プロセッサ装置103が対応可能な伝送方式を識別することが可能である。
【0074】
また、内視鏡スコープ101内に、内視鏡スコープ101の種別を識別するスコープ情報ROMが格納されたスコープ情報ROM122が内蔵されている。スコープ情報には、内視鏡スコープ101が対応している伝送方式に関する情報が含まれており、スコープ情報によって、内視鏡スコープ101が対応可能な伝送方式を識別することが可能である。
【0075】
識別信号生成部120は、画像処理プロセッサ情報ROM121から画像処理プロセッサ情報を読み出し、画像処理プロセッサ情報に基づいて、画像処理プロセッサ装置103が対応可能な伝送方式の情報を含む画像処理プロセッサ識別信号を生成する。また、識別信号生成部120は、スコープ情報ROM122からスコープ情報を読み出し、スコープ情報に基づいて、内視鏡スコープ101が対応可能な伝送方式の情報を含むスコープ識別信号を生成する。
【0076】
図29は送信部109の構成を示している。送信部109は、タイミングジェネレータ500と、変換部501と、送信出力部502,503,504とを有する。送信出力部502は図6の送信出力部219に対応し、送信出力部503は図4の送信出力部207に対応し、送信出力部504は図9の送信出力部243に対応する。
【0077】
変換部501は、第1の実施形態と同様に、撮像部102が生成した撮像画像を、複数の異なる伝送方式のそれぞれの伝送速度等に対応した、複数の異なる型式の変換データ(変換画像情報)に変換して出力する。タイミングジェネレータ500は、各伝送方式に対応した送信出力部502,503,504におけるデータの送信タイミングを制御する伝送タイミング信号を生成して出力する。伝送タイミング信号に関する制御は、第2の実施形態で説明した制御と同様である。
【0078】
変換部501には、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した障害検出信号に加えて、画像処理プロセッサ装置103の識別信号生成部120が生成した画像処理プロセッサ識別信号が入力される。本実施形態では画像処理プロセッサ装置103は電源ライン通信に対応していない。変換部501は、画像処理プロセッサ識別信号に基づいて、画像処理プロセッサ装置103が対応していない伝送方式である電源ライン通信の伝送路への画像データの出力をマスクする(電源ライン通信の伝送路への画像データの出力を停止する)。また、第2の実施形態と同様に、電源ライン通信の有無に応じて差動通信用のデータの型式を変更する場合には、画像処理プロセッサ識別信号に応じてデータの型式を変更すればよい。
【0079】
図30は受信部110の構成を示している。受信部110は、受信入力部510,511,512と、再変換部513と、障害検出部514とを有する。受信入力部510は図6の受信入力部220に対応し、受信入力部511は図4の受信入力部208に対応し、受信入力部512は図8の受信入力部236に対応する。再変換部513は、受信入力部510,511,512から出力される変換データに対して、送信時の変換に対応した再変換を行い、受信画像を生成して出力する。障害検出部514は、光通信、差動通信、人体通信の伝送データ(光通信入力、差動通信入力、人体通信入力)から伝送路の障害を検出し、障害の有無に応じた障害検出信号を出力する。
【0080】
再変換部513には、障害検出信号に加えて、画像処理プロセッサ装置103の識別信号生成部120が生成したスコープ識別信号が入力される。本実施形態では内視鏡スコープ101は人体通信に対応していない。人体通信の伝送路からの情報を用いることは、誤動作の原因等にもつながるため好ましくない。再変換部513は、受信入力部512からの画像データをマスクし(受信入力部512からの画像データの入力を停止し)、受信入力部510および受信入力部511からの画像データのみから受信画像の再変換を行う。
【0081】
本実施形態において、障害検出に係る動作は第2の実施形態で説明した動作と同様である。本実施形態では内視鏡スコープおよび画像処理プロセッサ装置がそれぞれ3系統の伝送方式に対応した例について説明したが、必ずしもこれに限られるわけではない。内視鏡の用途や使用環境によっては必ずしもここまでの機能が必要ない場合がある。すなわち3系統のうちの2系統や1系統のみでも使用することは可能であり、2系統あるいは1系統のみの伝送方式を用意することにより内視鏡スコープや画像処理プロセッサ装置の小型化やコストダウンを実現することができる。この場合、前述した例と同様に、内視鏡スコープまたは画像処理プロセッサ装置のどちらかに未使用の伝送路が存在するが、上記のようにその伝送路に係るデータをマスクすることによって誤動作を防止することが可能となる。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、特定の伝送方式において、各種の異常による伝送の障害が発生しても、画像が途切れることなく画像伝送を行うことができ、かつ、内視鏡スコープと画像処理プロセッサ装置とで対応可能な伝送方式が異なる場合でも、正常に画像伝送を行うことができる。なお、本実施形態では伝送方式として第1の実施形態で使用した、デジタル信号を送信する差動通信と無線通信を使用しても同様に実現することが可能である。
【0083】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0084】
101・・・内視鏡スコープ、102・・・撮像部、103・・・画像処理プロセッサ装置、104・・・光源装置、105・・・システムコントローラ、106・・・操作部、107・・・表示装置、108・・・記録装置、109・・・送信部、110・・・受信部、111・・・画像処理部、120・・・識別信号生成部、121・・・画像処理プロセッサ情報ROM、122・・・スコープ情報ROM、201,207,213,219,227,235,243,303,304,402,403,404,502,503,504・・・送信出力部、202,208,214,220,228,236,244,310,311,410,411,412,510,511,512・・・受信入力部、203,215,222,230,238,246・・・変調部、204,210・・・差動ドライバ、205,211・・・差動レシーバ、206,218,225,233,241,250・・・復調部、209,221,229,237,245・・・パラレルシリアル変換部、212,226,234,242,251・・・シリアルパラレル変換部、216,223・・・電光変換部、217,224・・・光電変換部、231,232・・・アンテナ、239,240・・・電極、247・・・波形重畳部、248・・・電源供給部、249・・・波形分離部、300,301,400,500・・・タイミングジェネレータ、302,401,501・・・変換部、312,413,513・・・再変換部、313,414,514・・・障害検出部、315・・・間引き画像生成部、316・・・間引き画像生成部、317・・・合成部、318・・・補間部、319・・・選択部、415・・・画像圧縮部、416・・・差分生成部、417,421・・・選択部、418,419・・・伸長部、420・・・加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像情報を生成する撮像部と、
前記撮像部が生成した前記画像情報を、複数の異なる伝送方式により送信する送信部と、
前記送信部によって前記複数の異なる伝送方式により送信された前記画像情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記画像情報を処理する画像処理部と、
を有し、
前記送信部は、前記撮像部が生成した前記画像情報を、前記複数の異なる伝送方式のそれぞれに対応した、複数の異なる型式の変換画像情報に変換して出力する変換部を有し、
前記受信部は、受信された前記複数の異なる型式の前記変換画像情報を前記画像情報に再変換して出力する再変換部を有する内視鏡システム。
【請求項2】
前記受信部は、前記複数の異なる伝送方式のそれぞれによる伝送路の障害を検出する障害検出部を有し、
いずれかの伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記再変換部は障害の無い伝送方式により送信された前記変換画像情報のみ前記画像情報に再変換して出力する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記複数の異なる伝送方式が第1の伝送方式と第2の伝送方式を含み、
前記障害検出部は、障害を検出した結果を示す障害検出情報を前記送信部へ出力し、
前記変換部は、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出されていない場合に、前記第1の伝送方式に対応した型式の第1の変換画像情報と、前記第2の伝送方式に対応した型式の第2の変換画像情報とを生成し、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記第2の伝送方式に対応した型式の第3の変換画像情報を生成し、
前記再変換部は、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出されていない場合に、前記第1の変換画像情報と前記第2の変換画像情報とから前記画像情報を生成し、前記第1の伝送方式による伝送路の障害が検出された場合に、前記第3の変換画像情報から前記画像情報を生成する、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式を含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記複数の異なる伝送方式が、無線通信を用いる伝送方式を含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記複数の異なる伝送方式が、電源線へ前記画像情報を重畳する伝送方式を含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、無線通信を用いる伝送方式とを含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記複数の異なる伝送方式が、専用線による有線通信を用いる伝送方式と、電源線へ前記画像情報を重畳する伝送方式とを含む、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記送信部が対応可能な伝送方式を識別する識別情報を生成する識別部をさらに有し、
前記再変換部は、前記識別情報に基づいて、前記受信部が対応可能な伝送方式のうち前記送信部が対応可能な伝送方式のみに対応した前記変換画像情報を前記画像情報に再変換する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記受信部が対応可能な伝送方式を識別する識別信号を生成する識別部をさらに有し、
前記変換部は、前記識別情報に基づいて、前記送信部が対応可能な伝送方式のうち前記受信部が対応可能な伝送方式のみに対応した前記変換画像情報を出力する、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記送信部は、前記複数の異なる伝送方式毎に独立した送信出力部を有し、
各送信出力部は、同一の前記画像情報を、前記複数の異なる伝送方式間で異なるタイミングで送信する、請求項1に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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