説明

内視鏡挿入補助装置

【課題】内視鏡の挿入部を挿入方向に安全に自己推進させる。
【解決手段】内視鏡挿入補助装置20は、無端ベルト30、支持筒32、内視鏡10の先端部11aが装着される装着筒51を備える。三角形の各角部が湾曲されて丸まった形状の支持筒32の各湾曲部には、それぞれベルト支持部33が形成されている。各ベルト支持部33には、第1〜第3支持ローラ41〜43を有するローラユニット35が取り付けられている。無端ベルト30は、湾曲された状態で支持筒32に巻き付けられ、装着筒51の軸方向に循環する。装着筒51と、装着筒51の外側に配された伝達ギア52とは、収納筒53に収納されている。収納筒53には、ベルト駆動ギア66が回転可能に取り付けられている。ベルト駆動ギア66は、伝達ギア52のウォームギア61に噛合するとともに、第1〜第3支持ローラ41〜43との間で無端ベルト30を挟持して、無端ベルト30を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸等の消化管の管内に挿入された内視鏡の挿入部を、挿入方向に自己推進させる内視鏡挿入補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野において内視鏡を利用した診断が行われている。内視鏡は、CCD等の撮像素子を内蔵した挿入部が被検体内に挿入される。この撮像素子により得られた画像はモニタに表示され、このモニタに表示された画像により被検体内を観察する。
【0003】
近年では、内視鏡の挿入を補助する内視鏡挿入補助装置が提案されている。特許文献1記載の内視鏡用被検体内推進装置は、内視鏡の挿入部に装着される筒状の支持体に、無端ベルトを循環可能に取り付け、この無端ベルトの外側を消化管の内壁に接触させた状態で循環させることで、両者の間に生じる摩擦により内視鏡の先端を自走させて消化管内へ誘導している。これにより、例えば、大腸のように、体内で曲がりくねった構造である消化管への内視鏡の挿入を、挿入手技が未熟である者にも容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−253892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、無端ベルトが平らな状態で配されている。消化管は、その断面形状がほぼ円形であるため、平らな無端ベルトでは、幅方向の中央部が消化管の内壁に接触せずに、側縁が消化管の内壁に接触することがある。無端ベルトの側縁が消化管の内壁に接触すると、消化管の内壁が無端ベルトに巻き込まれて傷付いてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためのものであり、内視鏡の挿入部を挿入方向に安全に自己推進させることができる内視鏡挿入補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡挿入補助装置は、内視鏡の先端部が軸方向に沿って挿入される挿入孔が形成され、前記先端部と同じ軸方向となるように前記先端部に装着される装着筒と、前記装着筒の外側に配され、前記装着筒の軸方向に沿って延びる複数本の無端ベルトと、外周面が湾曲された形状で筒状に形成されて前記装着筒の外側に配され、前記各無端ベルトが巻き付けられて前記各無端ベルトを前記装着筒の軸方向に沿って循環可能に支持する支持筒と、前記各無端ベルトを駆動するベルト駆動部と、を備え、前記各無端ベルトは、前記支持筒の湾曲部分に配置されるとともに、前記支持筒の湾曲部分の形状に沿って幅方向に湾曲された状態で循環するように前記支持筒に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記支持筒に回転可能に取り付けられ、前記各無端ベルトの内周面に接触して前記各無端ベルトを循環可能に支持する複数の支持ローラを備え、前記各無端ベルトの前記各支持ローラと接触する部分は他の部分よりも剛性が高くされていることが好ましい。なお、前記各無端ベルトの前記各支持ローラと接触する部分を他の部分よりも剛性を高くする方法としては、他の部分よりも厚くする、支持ローラと接触する部分のみ積層する、他の部分より剛性の高い材料を用いる、または、高剛性の材料でできたメッシュ材などを無端ベルト内に包含して無端ベルトが曲がり易くかつ軸方向に伸びにくく(剛性を高くする)する等が挙げられる。
【0009】
さらに、前記各支持ローラは、前記各無端ベルトにより覆われていることが好ましい。
【0010】
また、前記ベルト駆動部は、前記装着筒の外側で、且つ前記支持筒の内側に回転可能に取り付けられた円筒状のウォームギアと、前記ウォームギアに噛合するとともに、前記支持ローラとの間で前記各無端ベルトを挟持して前記各無端ベルトを駆動する複数のベルト駆動ギアと、を備えることが好ましい。
【0011】
さらに、前記各支持ローラと前記各ベルト駆動ギアとは、前記装着筒の軸方向において交互に配されるとともに、前記支持筒の径方向において重なるように配されていることが好ましい。
【0012】
また、前記各ベルト駆動ギアは、前記各無端ベルトの湾曲形状に沿って湾曲されていることが好ましい。
【0013】
さらに、前記各支持ローラは、前記各無端ベルトの湾曲形状に沿って湾曲されていることが好ましい。
【0014】
また、前記各無端ベルトは、両側縁の各角が丸くされていることが好ましい。
【0015】
さらに、前記支持筒は、多角形の各角部が湾曲された形状で筒状に形成され、前記各無端ベルトは、前記支持筒の各角部の湾曲部分の形状に沿って湾曲された状態で循環するように前記支持筒の各湾曲部分に取り付けられていることが好ましい。
【0016】
また、前記支持筒は、三角形の各角部が湾曲された形状で筒状に形成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、前記支持筒は、円筒状に形成され、前記各無端ベルトは、前記支持筒の円形状に沿って湾曲された状態で循環するように前記支持筒に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支持筒の湾曲部分に配置した無端ベルトを、支持筒の湾曲部分の形状に沿って幅方向に湾曲させた状態で循環させるから、無端ベルトの側縁が消化管の内壁に接触することがなく、さらには、支持筒の湾曲部分が消化管の内壁に接触することがないので、内壁が傷付くのを防止することができる。
【0019】
また、無端ベルトは、無端ベルトを支持する支持ローラと接触する部分が他の部分よりも剛性が高いから、循環時の無端ベルトの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内視鏡挿入補助装置を装着した内視鏡を示す模式図である。
【図2】内視鏡挿入補助装置を示す斜視図である。
【図3】内視鏡挿入補助装置の主要部の分解構造を示す斜視図である。
【図4】B−B’線に沿う断面構造を示す断面図である。
【図5】支持ローラの部分の断面図である。
【図6】ベルト駆動ギアの部分の断面図である。
【図7】円筒状の支持筒を有する第2実施形態の内視鏡挿入補助装置を示す斜視図である。
【図8】第2実施形態の主要部の分解構造を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態の支持ローラの部分の断面図である。
【図10】第2実施形態のベルト駆動ギアの部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡10は、超小型固体撮像素子(CCDセンサ、CMOSセンサ等)が内蔵され、大腸等の消化管内に挿入される挿入部11と、内視鏡10の把持及び挿入部11の操作に用いられる操作部12と、内視鏡10をプロセッサ装置及び光源装置(いずれも図示せず)に接続するためのユニバーサルコード13とから構成されている。
【0022】
挿入部11は、可撓性を有する棒状体であり、その先端部11aには、周知の観察窓、照明窓、送気・送水ノズル(いずれも図示せず)等が設けられている。操作部12は、アングルノブ14、操作ボタン15等を備えている。アングルノブ14は、挿入部11の湾曲方向及び湾曲量を調整する際に回転操作される。操作ボタン15は、送気・送水や吸引等の各種操作の際に用いられる。
【0023】
操作部12には、ユニバーサルコード13が接続されている。このユニバーサルコード13には、送気・送水チャンネルと、撮像信号出力用ケーブル及びライトガイドが組み込まれている。
【0024】
挿入部11の先端部11aには、消化管内で挿入部11を前進または後進させる内視鏡挿入補助装置20が着脱可能に取り付けられている。この内視鏡挿入補助装置20は、モータ21によって駆動される。このモータ21は、内視鏡挿入補助装置20を推進させるための回転トルクを伝達させるトルクワイヤ63(図3参照)と連結されており、このトルクワイヤ63は、全長に亘って保護シース22の内部に挿通されている。モータ21の駆動により、トルクワイヤ63は、保護シース22内で回動する。
【0025】
モータ21は制御装置25により制御される。この制御装置25は操作ユニット26に接続されている。操作ユニット26は、内視鏡挿入補助装置20の前進・後進・停止の指示を入力するための駆動制御ボタン27と、内視鏡挿入補助装置20の移動速度を変更するための速度変更ボタン28とを備える。
【0026】
挿入部11には、オーバーチューブ23が外嵌されており、保護シース22は、オーバーチューブ23と挿入部11との間に挿通されている。
【0027】
図2に示すように、内視鏡挿入補助装置20は、消化管の内壁に接触して、内視鏡10の挿入部11の挿入方向とは反対の反挿入方向に前進力を生じさせる無端ベルト30を備えている。無端ベルト30は、挿入軸Aに沿う方向に循環するように支持筒32に支持されており、挿入軸Aの周り(周方向C)に沿って略等間隔に複数(例えば、3個)配設されている。無端ベルト30は、外表面30bが消化管の内壁と接触する。図2における矢印は、循環の方向を示している。この無端ベルト30は、柔軟性を有する材料(可撓性部材)により形成されており、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ウレタンやポリウレタンなどの生体適合プラスチックで形成されていることが好ましい。
【0028】
図3〜図6に示すように、支持筒32は、挿入軸Aに直交する方向の断面形状が略三角形(正三角形の各角部が湾曲されて丸まった形状)の管状体であって、各無端ベルト30が巻き付けられている。支持筒32の内部には、内視鏡10の先端部11aが装着される円筒状の装着筒51が配されている。
【0029】
無端ベルト30は、支持筒32の3個の湾曲部(湾曲された角部)それぞれに配されている。無端ベルト30は、両端のある状態で支持筒32の形状に沿って180°折り曲げられて支持筒32に巻付けられた後、両端が熱溶着等により接着されて、無端状態となる。
【0030】
支持筒32の各湾曲部には、それぞれ各無端ベルト30を支持するベルト支持部33が形成されている。各ベルト支持部33は、各無端ベルト30を、幅方向のほぼ中心部から両側縁部に向かうにつれて装着筒51の中心からの距離が短くなるように、支持筒32の各湾曲部の形状に沿って幅方向に湾曲させた状態で湾曲させた状態で支持する。各ベルト支持部33の前端及び後端それぞれには、各無端ベルト30の180°折り曲げられた部分に接触する半円状のベルト接触体34が取り付けられている。ベルト接触体34は、無端ベルト30が滑らかに循環するような素材(例えば、ナイロン)から構成されている。なお、ベルト接触体34は、ナイロンに限らず、PEEK、テフロン(登録商標)などの摺動性の高い材料であればよい。
【0031】
各ベルト支持部33には、それぞれ開口33aが形成されている。これらの各開口33aには、それぞれ各無端ベルト30を循環可能となるように支持するローラユニット35が取り付けられている。ローラユニット35は、2枚の支持プレート40の間に、挿入軸Aに沿って順に第1〜第3支持ローラ41〜43が回転可能に取り付けられている。なお、各ローラ41〜43を、支持筒32自体に回転可能に取り付けてもよい。
【0032】
無端ベルト30は、内表面30aが各支持ローラ41〜43に接触する。無端ベルト30は、両側縁の各角が丸くされている。無端ベルト30は、各支持ローラ41〜43に接触する部分が、他の部分よりも厚くされ、他の部分よりも剛性が高くなっている。
【0033】
各支持ローラ41〜43には、それぞれ中央部に溝部41a〜43aが形成されている。各無端ベルト30の内表面30aには、線状突起30cが全周に亘って形成されている。この線状突起30cは、溝部41a〜43aに摺動自在に係合しており、無端ベルト30が周方向Cに回転することを防止している。同様に、ベルト支持部33には、線状突起30cが摺動自在に係合する溝部33bが形成され、ベルト接触体34には、線状突起30cが摺動自在に係合する溝部34aが形成されている。なお、溝部33b,34a及び溝部41a〜43aと、線状突起30cとの間には、両者間の摺動性を高めるために、潤滑剤が塗布されている。
【0034】
支持筒32の内部には、装着筒51の他に、装着筒51の外側に回動可能に支持された伝達ギア52と、装着筒51及び伝達ギア52を収納する収納筒53とが配されている。
【0035】
収納筒53の後端には、蓋部材56が取り付けられている。収納筒53の先端には、消化管の内壁の侵入を防止する前ストッパ57が取り付けられ、同様に、蓋部材56には、後ストッパ58が取り付けられている。
【0036】
伝達ギア52は、円筒状に形成され、装着筒51に外嵌されて挿入軸Aを中心に回転する。伝達ギア52には、挿入軸Aを中心軸とした螺旋状のウォームギア61と、周方向に複数のギアが配列された周歯ギア62とが形成されている。この周歯ギア62は、伝達ギア52の後端部に形成され、トルクワイヤ63に接続されたピニオン(小歯車)64が噛合している。ピニオン64は、トルクワイヤ63により回転され、この回転により周歯ギア62を回転して、伝達ギア52を回転させる。
【0037】
収納筒53は、支持筒32よりも一回り小さい三角形の各角部を切り落とした五角形で形成されている。収納筒53は、支持筒32と同軸となるように配されている。収納筒53の5個の各面には、それぞれ伝達ギア52を挿入するための開口53aが形成されている。これら5個の開口53aのうち、支持筒32の各ベルト支持部33に対向する3個の開口53a内には、各無端ベルト30を駆動するベルト駆動ギア66が配されている。このベルト駆動ギア66は、3個の開口53a内に2個ずつ計6個配されている。これら6個のベルト駆動ギア66は、収納筒53に形成された取付リブ53bに回転可能に取り付けられている。ベルト駆動ギア66は、第1支持ローラ41と第2支持ローラ42との間と、第2支持ローラ42と第3支持ローラ43との間とに配されている。
【0038】
ベルト駆動ギア66は、伝達ギア52のウォームギア61に噛合するとともに、無端ベルト30の外表面30bに接触している。このベルト駆動ギア66は、無端ベルト30の湾曲形状に沿って太鼓状に湾曲され、第1〜第3支持ローラ41〜43との間で無端ベルト30を挟持する。ベルト駆動ギア66は、支持筒32の径方向において、各支持ローラ41〜43とオーバーラップしており、各支持ローラ41〜43とベルト駆動ギア66との間では、無端ベルト30は波状に湾曲されている。
【0039】
収納筒53の前面には、開口53cが形成され、この開口53cには、装着筒51の先端部が挿入されている。
【0040】
前ストッパ57は、開口53cに挿入されるリング状の挿入部57aと、消化管の内壁が内視鏡挿入補助装置20の内部に侵入するのを防止するストッパ部57bとからなる。ストッパ部57bは、挿入部57aからの距離に従って径が増加するすり鉢形状となっており、その断面形状は、支持筒32と同様な形状(略三角形)で、支持筒32よりも一回り小さい。
【0041】
蓋部材56は、収納筒53と同一の形状(五角形)で形成され、装着筒51の内部空間51aと連通する開口56aが形成されている。また、蓋部材56には、ピニオン64を回動自在に収容する凹部56bが形成されている。この凹部56bに収容されたピニオン64は、伝達ギア52の周歯ギア62に噛合している。トルクワイヤ63は、蓋部材56に形成された孔(図示せず)を介してピニオン64に接続されている。
【0042】
後ストッパ58は、前ストッパ57と同様な構成であり、蓋部材56の開口56aに挿入されるリング状の挿入部58aと、ストッパ部58bとからなる。
【0043】
次に、内視鏡挿入補助装置20の作用について説明する。先ず、内視鏡10の挿入部11の先端部11aを、装着筒51の内部空間51aに嵌入させて、先端部11aに内視鏡挿入補助装置20を装着する。次に、プロセッサ装置、光源装置、操作ユニット26等の電源をオンして、検査準備を行い、この検査準備が完了した後、内視鏡10の先端部11aを患者の消化管内に挿入する。
【0044】
先端部11aが消化管内の所定位置、例えばS状結腸の手前まで進められた後、操作ユニット26の駆動制御ボタン27が操作されて前進指示が入力されると、モータ21が駆動され、トルクワイヤ63が所定方向に回転される。このトルクワイヤ63の回転に伴うピニオン64の回転により、ピニオン64に噛合している周歯ギア62が回転し、伝達ギア52が回転する。
【0045】
伝達ギア52が回転すると、伝達ギア52のウォームギア61に噛合しているベルト駆動ギア66が回転する。このベルト駆動ギア66の回転により、ベルト駆動ギア66と第1〜第3支持ローラ41〜43との間で挟持されている各無端ベルト30が、図4の矢印で示す方向に駆動(回転)する。この駆動により、支持筒32の外側に位置し、消化管の内壁と接触する各無端ベルト30の各外表面30bは、反挿入方向に移動する。このとき、支持筒32の内部に位置する各無端ベルト30の各外表面30bは、挿入方向に移動し、無端ベルト30は循環する。
【0046】
各無端ベルト30は、消化管の内壁に接触しており、循環により、先端部11aの挿入方向とは反対の反挿入方向に前進力を生じさせる。内視鏡挿入補助装置20は、この前進力で消化管の内壁を前方から後方に手繰り寄せることにより、内視鏡10の先端部11aを消化管の内壁に沿って前進させる。一方、内視鏡挿入補助装置20を反挿入方向に推進(後進)させる場合には、各無端ベルト30は、上記とは逆向きに循環する。
【0047】
無端ベルト30は湾曲されており、内視鏡挿入補助装置20により先端部11aを消化管の内壁に沿って前進させるとき、各無端ベルト30の幅方向のほぼ中心である頂点部が消化管の内壁に接触するから、無端ベルト30の側縁が消化管の内壁に接触することがない。これにより、内壁が各無端ベルト30内に巻き込まれることがなく、内壁が傷付くのが防止される。また、消化管の内壁に最も接触しやすい略三角形の頂点部分に無端ベルト30が配置され、消化管の内壁に接触しにくい略三角形の辺部分に無端ベルトが配置されていないため、無端ベルトが配置されていない部位が消化管の内壁に接触することで前進の妨げとなる摩擦力が発生することを防止する効果もある。
【0048】
操作ユニット26の速度変更ボタン28が操作されて速度変更指示が入力されると、モータ21の回転速度が変更されて、トルクワイヤ63の回転速度が変更され、内視鏡挿入補助装置20の移動速度が変更される。また、操作ユニット26の駆動制御ボタン27が操作されて後進指示が入力されると、モータ21が逆回転されてトルクワイヤ63が逆回転され、内視鏡挿入補助装置20が後進する。さらに、駆動制御ボタン27の操作により停止指示が入力されると、モータ21の回転が停止されてトルクワイヤ63の回転が停止され、内視鏡挿入補助装置20が停止する。以上の操作を適宜行うことにより、内視鏡10の先端部11aを消化管の所望の位置まで推進させることができる。
【0049】
[第2実施形態]
図7〜図10に示す第2実施形態の内視鏡挿入補助装置70は、円筒状の支持筒72を備える。なお、第1実施形態のものと同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
支持筒72には、無端ベルト30を支持するベルト支持部73が120°ピッチで3個形成されている。各ベルト支持部73は、各無端ベルト30を、幅方向のほぼ中心部から両側縁部に向かうにつれて装着筒51の中心からの距離が短くなるように、支持筒72の形状に沿って幅方向に湾曲させた状態で支持する。各ベルト支持部73の前端及び後端それぞれには、各無端ベルト30の180°折り曲げられた部分に接触する半円状のベルト接触体74が取り付けられている。
【0051】
各ベルト支持部73には、それぞれ開口73aが形成され、これらの各開口73aには、それぞれローラユニット35が取り付けられている。各ベルト支持部73には、それぞれ各無端ベルト30の線状突起30cが摺動自在に係合する溝部73bが形成されている。同様に、各ベルト接触体74には、それぞれ線状突起30cが摺動自在に係合する溝部74aが形成されている。
【0052】
支持筒72の内部には、装着筒51と、伝達ギア52と、装着筒51及び伝達ギア52を収納する円筒状の収納筒75とが配されている。収納筒75は、支持筒72と同軸となるように配されている。
【0053】
収納筒75の後端には、蓋部材76が取り付けられている。収納筒75の先端には、消化管の内壁の侵入を防止する前ストッパ77が取り付けられ、同様に、蓋部材76には、後ストッパ78が取り付けられている。
【0054】
収納筒75には、支持筒72の各ベルト支持部73に対向する3箇所に開口75aが形成されている。各開口75a内には、ベルト駆動ギア66が2個ずつ配されている。これら6個のベルト駆動ギア66は、収納筒75に形成された取付リブ75bに回転可能に取り付けられている。
【0055】
収納筒75の前面には、開口75cが形成され、この開口75cには、装着筒51の先端部が挿入されている。
【0056】
蓋部材76は、リング状に形成され、装着筒51の内部空間51aと連通する開口76aと、ピニオン64を回動自在に収容する凹部76bとが形成されている。
【0057】
前ストッパ77は、収納筒75の開口75cに挿入される挿入部77aと、すり鉢形状のストッパ部77bとからなる。同様に、後ストッパ78は、蓋部材76の開口76aに挿入される挿入部78aと、すり鉢形状のストッパ部78bとからなる。
【0058】
無端ベルト30は湾曲されており、各無端ベルト30の幅方向のほぼ中心である頂点部が消化管の内壁に接触するから、無端ベルト30の側縁が消化管の内壁に接触することがない。これにより、内壁が各無端ベルト30内に巻き込まれることがなく、内壁が傷付くのが防止される。
【0059】
なお、上記実施形態では、支持筒及び収納筒の断面形状を、略三角形または円形としているが、これに限定されることなく、四角形、五角形、六角形等のいかなる多角形としてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、伝達ギアのウォームギアによってベルト駆動ギアを回転し、このベルト駆動ギアにより無端ベルトを駆動しているが、ウォームギアにより無端ベルトを直接駆動してもよい。なお、ベルト駆動ギアを設ける場合と設けない場合とで、自己推進装置を前進・後進させるためのウォームギアの回転方向が逆となるため、操作ユニットによりなされる前進・後進指示と動力源によるトルクワイヤの回転方向の関係を変更する必要がある。
【0061】
さらに、上記実施形態では、支持ローラとベルト駆動ギアとを、装着筒の軸方向において交互に配置し、支持筒の径方向において重なるように配置することで、無端ベルトを挟持するとともに支持筒を位置決めしているが、支持筒を収納筒に固定した上で、支持ローラとベルト駆動ギアとを、装着筒の軸方向において同位置で、無端ベルトを挟持するように対向する位置に配置してもよい。
【0062】
また、上記実施形態は、本発明を医療診断用の内視鏡に適用したものであるが、本発明は医療診断用途に限られず、工業用等のその他の内視鏡やプローブ等に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 内視鏡
20,70 内視鏡挿入補助装置
30 無端ベルト
30a 内表面
30b 外表面
32,72 支持筒
33,73 ベルト支持部
41〜43 第1〜第3支持ローラ
51 装着筒
52 伝達ギア
61 ウォームギア
66 ベルト駆動ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部が軸方向に沿って挿入される挿入孔が形成され、前記先端部と同じ軸方向となるように前記先端部に装着される装着筒と、
前記装着筒の外側に配され、前記装着筒の軸方向に沿って延びる複数本の無端ベルトと、
外周面が湾曲された形状で筒状に形成されて前記装着筒の外側に配され、前記各無端ベルトが巻き付けられて前記各無端ベルトを前記装着筒の軸方向に沿って循環可能に支持する支持筒と、
前記各無端ベルトを駆動するベルト駆動部と、
を備え、
前記各無端ベルトは、前記支持筒の湾曲部分に配置されるとともに、前記支持筒の湾曲部分の形状に沿って幅方向に湾曲された状態で循環するように前記支持筒に取り付けられていることを特徴とする内視鏡挿入補助装置。
【請求項2】
前記支持筒に回転可能に取り付けられ、前記各無端ベルトの内周面に接触して前記各無端ベルトを循環可能に支持する複数の支持ローラを備え、
前記各無端ベルトの前記各支持ローラと接触する部分は他の部分よりも剛性が高くされていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項3】
前記各支持ローラは、前記各無端ベルトにより覆われていることを特徴とする請求項2記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項4】
前記ベルト駆動部は、
前記装着筒の外側で、且つ前記支持筒の内側に回転可能に取り付けられた円筒状のウォームギアと、
前記ウォームギアに噛合するとともに、前記支持ローラとの間で前記各無端ベルトを挟持して前記各無端ベルトを駆動する複数のベルト駆動ギアと、
を備えることを特徴とする請求項2または3記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項5】
前記各支持ローラと前記各ベルト駆動ギアとは、前記装着筒の軸方向において交互に配されるとともに、前記支持筒の径方向において重なるように配されていることを特徴とする請求項4記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項6】
前記各ベルト駆動ギアは、前記各無端ベルトの湾曲形状に沿って湾曲されていることを特徴とする請求項4または5記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項7】
前記各支持ローラは、前記各無端ベルトの湾曲形状に沿って湾曲されていることを特徴とする請求項2ないし6いずれか1つ記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項8】
前記各無端ベルトは、両側縁の各角が丸くされていることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項9】
前記支持筒は、多角形の各角部が湾曲された形状で筒状に形成され、
前記各無端ベルトは、前記支持筒の各角部の湾曲部分の形状に沿って湾曲された状態で循環するように前記支持筒の各湾曲部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1つ記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項10】
前記支持筒は、三角形の各角部が湾曲された形状で筒状に形成されていることを特徴とする請求項9記載の内視鏡挿入補助装置。
【請求項11】
前記支持筒は、円筒状に形成され、
前記各無端ベルトは、前記支持筒の円形状に沿って湾曲された状態で循環するように前記支持筒に取り付けられていることを特徴とする求項1ないし8いずれか1つ記載の内視鏡挿入補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143445(P2012−143445A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4994(P2011−4994)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】