説明

内視鏡用光源装置

【課題】 極めて簡単な構成によって従来よりも高い磁石の高温防止効果が得られる内視鏡用光源装置を提供する。
【解決手段】 内視鏡内に配設された導光ファイバを介して、該内視鏡の挿入部先端に光を供給する放電ランプMLと、該放電ランプの陰極ML2と陽極ML1の間に形成されるアークにローレンツ力を及ぼして、該アークの軌跡を安定させる磁石MGと、を具備する内視鏡用光源装置において、上記磁石に該磁石内部の熱を外部に放熱するための放熱フィンMG4を一体的に形成した内視鏡用光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に光を供給するための内視鏡用光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用光源装置の一種として、陰極と陽極の間にアークを発生させる放電ランプを利用したものがある。放電ランプの陰極と陽極の間におけるアークの軌跡が安定しないと発生する光に明るい部分と暗い部分が出来てしまい、その結果体腔内や機械の内部を均一に照らせなくなってしまう。このため、内視鏡用光源装置に放電ランプを用いる場合は、放電ランプの近傍にアークにローレンツ力を及ぼしてアークの軌跡を安定させる磁石を配設するのが一般的である。
【0003】
このように放電ランプの近傍に磁石を配設すると、放電ランプから発生する熱が磁石に及ぶため磁石が高温化する。磁石が高温化すると磁石の磁力が低下し、アークの軌跡を安定させられなくなってしまう。
そのため特許文献1の考案では、磁石の近傍にファンを配設し、ファンで発生した冷却風を磁石に吹き付けて磁石の高温化を防止しようとしている。
【特許文献1】実公平6−10617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の考案によれば磁石の高温化をある程度は防止できるが、高温化防止対策としては十分ではなく、改善の余地が多くある。
【0005】
本発明の目的は、極めて簡単な構成によって従来よりも高い磁石の高温防止効果が得られる内視鏡用光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内視鏡用光源装置は、内視鏡内に配設された導光ファイバを介して、該内視鏡の挿入部先端に光を供給する放電ランプと、該放電ランプの陰極と陽極の間に形成されるアークにローレンツ力を及ぼして、該アークの軌跡を安定させる磁石と、を具備する内視鏡用光源装置において、上記磁石に該磁石内部の熱を外部に放熱するための放熱フィンを一体的に形成したことを特徴としている。
【0007】
上記放電ランプのケース及び磁石より熱伝導性の高い材料からなるヒートシンクを具備し、上記ケース及び磁石を該ヒートシンクに接触状態で固定し、上記放電ランプ及び磁石の熱をヒートシンクから外部に排熱するのが好ましい。
【0008】
水平な回転軸回りに回転可能なファンを配設し、上記放熱フィンを水平に形成し、かつ上記ファンの直前に位置させるのが好ましい。
【0009】
上記ヒートシンクを間隔をあけて一対設け、上記磁石を一方のヒートシンクの他方のヒートシンクとの対向面に固着し、両ヒートシンクの間に形成された上記磁石が位置する隙間の背後に上記ファンを配設し、該隙間を上記ファンで発生する冷却風の流路とするのが好ましい。
【0010】
上記磁石に放熱フィンを間隔をあけて複数形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、極めて簡単な構成によって従来よりも高い磁石の高温防止効果が得られる。
磁石を磁石より熱伝導性の高いヒートシンクに接触させれば、磁石の熱がヒートシンクからも放熱されるので、磁石の高温化防止効果が高まる。
磁石の放熱フィンの背後に水平な回転軸回りに回転するファンを配設すれば、ファンで発生する冷却風が磁石を冷却するので冷却効果がさらに高まる。さらに放熱フィンとファンの回転軸を水平にすれば、ファンの冷却風の流れが放熱フィンによって妨げられないので、冷却風によって磁石を効果的に冷却できる。
放熱フィンを複数枚とすれば冷却効果が上昇する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明中における前後左右の方向は図中の矢印方向を基準としている。
図1に示す電子内視鏡(内視鏡)10は、操作部11と挿入部12を有し、挿入部12の先端部には、操作部11に設けた湾曲操作装置13の操作に応じて上下及び左右方向に湾曲される湾曲部12aが設けられている。湾曲部12aの先端面には、図示しない観察窓(対物窓)と照明光学系が設けられている。
【0013】
操作部11からはユニバーサルチューブ14が延びており、このユニバーサルチューブ14の先端に設けられたコネクタ部14aにはライトキャリングバンドルスリーブ14bが突設されている。さらに、ライトキャリングバンドルスリーブ14b、コネクタ部14a、ユニバーサルチューブ14、操作部11及び挿入部12の内部には、導光ファイバ15が配設されており、その先端に形成された出射端面が、挿入部11の先端内部において上記照明光学系に接続されている。
【0014】
プロセッサ(内視鏡用光源装置)20は図1及び図2に示すように、そのケーシング21の前面21aに、コネクタ部14aのライトキャリングバンドルスリーブ14bを差し込むための差込口22が設けられている。ケーシング21の底板21bの上面には、差込口22の直後に位置する起立部材23が設けられており、起立部材23の差込口22と対向する位置には支持用孔23aが穿設されている。
【0015】
さらに、ケーシング21の底板21bの上面にはハウジング25が固定されており、ハウジング25にはハウジング25を左右方向に貫通する収容部26が形成されている。収容部26には前後一対のヒートシンク27、28が前後方向に間隔を開けて不動状態で配設されている。
図3から図5に拡大して示すヒートシンク27、28は、金属等の熱伝導性が良好な(ランプMLのケースC及びプラスチック磁石MGより熱伝導性の高い)材料から成形されたものである。前側のヒートシンク27の前部には水平な板状の放熱用フィン27aが上下に並べて形成されており、後側のヒートシンク28の後部には水平な板状の放熱用フィン28aが上下に並べて形成されている。
【0016】
前側のヒートシンク27の後面(対向面)と後側のヒートシンク28の前面(対向面)には、嵌合用孔部27bと嵌合用凹部28bがそれぞれ設けられている。嵌合用孔部27bと嵌合用凹部28bにはランプ(放電ランプ)MLの略円筒状の金属ケースCの前端部と後部端がそれぞれ嵌合固定されている。このランプMLはキセノンランプ等の放電ランプであり、ハウジング25の前壁25aに穿設された採光孔25b(図2参照)を通して、支持用孔23a及び差込口22と前後方向に対向している(支持用孔23a及び差込口22と同心をなしている)。ランプMLはケーシング21の外面に設けられたスイッチSW(図1参照)のON操作により点灯し、OFF操作により消灯するものであり、挿入部12を体腔内や機械内へ挿入する場合は常時点灯させるものである。
【0017】
前側のヒートシンク27の後面は扁平な取付面(対向面)27cとなっており、取付面27cの上部には、2つのねじ孔27d(図3及び図5参照)が穿設されている。射出成形によって成形された角柱状のプラスチック磁石(磁石)MGには、射出成形時に2個の貫通孔MG2(図3〜図5参照)が形成されている。このプラスチック磁石MGの前面をなす扁平面MG1は、取付面27cのねじ孔27dが形成された箇所に接触している。そして、両貫通孔MG2には2本の固定ねじBのねじ部B1がそれぞれ挿入され、各ねじ部B1が各ねじ孔27dにそれぞれ螺合され、貫通孔MG2より大径の頭部B2とヒートシンク27の取付面27cの間でプラスチック磁石MGが挟持されている。
このプラスチック磁石MGは、ランプML内の陽極ML1と陰極ML2(図5参照)の間に形成されるアークにローレンツ力を及ぼして、アークの軌跡を安定させる働きをする。プラスチック磁石MGからランプMLまでの距離、及びプラスチック磁石MGに要求される磁力の強さは、ランプMLの特性を考慮して決定される。
【0018】
プラスチック磁石MGの下部は上部より左右幅が小さい断面方形の狭幅部MG3となっており、狭幅部MG3の左右両面及び後面には平面視コ字形をなす水平な放熱フィンMG4が一体的に形成されている(放熱フィンMG4も磁石の一部である)。放熱フィンMG4は上下2枚であり、上下の放熱フィンMG4の間には隙間が形成されている。
図3から図5に示すように、底板21bの上面にはハウジング25の左側(ヒートシンク27、28の左側)に位置する態様でファンFNが固定されている。ファンFNはその回転軸FAが左右方向(水平方向)を向いており、側面視において回転軸FAが隙間Sと重合する。このファンFNはスイッチSWのON操作により回転しOFF操作により停止するものであり、ランプMLの点灯中は常に回転するものである。ファンFNが回転すると、ファンFNで発生した冷却風が前後のヒートシンク27、28の間に形成された隙間(流路)S(ハウジング25の収容部26)を通ってハウジング25の右側に流れ、この間にランプMLとプラスチック磁石MGとヒートシンク27、28を冷却する。このとき冷却風は隣り合う放熱用フィン27a、放熱用フィン28a、及び放熱フィンMG4の間、さらに上側の放熱フィンMG4と固定ねじBの頭部B2の間を通る。
【0019】
図2に示すように、ケーシング21の底板21bの上面には、起立部材23とハウジング25の間に位置させてレンズホルダ30が固定されている。レンズホルダ30にはレンズ支持用孔30aが貫通孔として形成されており、レンズ支持用孔30aに2枚の集光レンズL1、L2が前後に並べて嵌合固定されている。両集光レンズL1、L2の光軸は、ランプML、差込口22及び支持用孔23aの各中心を結ぶ直線上に位置している。
【0020】
次に、このような構成からなる内視鏡システムの動作について説明する。
スイッチSWがOFFの状態で、プロセッサ20の差込口22と支持用孔23aにライトキャリングバンドルスリーブ14bを差し込むと、その内部に配設された導光ファイバ15の入射端面15aが、集光レンズL1、L2及び採光孔25bを通してランプMLと前後方向に対向する。この状態でスイッチSWをONにするとランプMLが点灯しファンFNが回転する。ランプMLから発せられた光束Oは採光孔25b、集光レンズL1、L2を通って、導光ファイバ15の入射端面15aに導かれ、さらに導光ファイバ15を通って照明光学系に送られる。照明光学系によって照らされた被写体を挿入部12先端の観察窓を介して観察すると、この被写体の画像がプロセッサ20に接続されたテレビモニタ(図示略)に映し出される。
【0021】
プラスチック磁石MGは常にランプMLのアークに所定のローレンツ力を及ぼすので、点灯中のランプMLのアーク軌跡は安定状態を保ち、ランプMLからは均一な光が射出される。点灯中のランプMLは多量の熱を出すが、ヒートシンク27、28はランプMLのケースCより熱伝導性の高い材料で成形されているため、この熱はケースCからヒートシンク27、28に伝わり易く、ヒートシンク27、28に伝わった熱は主に放熱用フィン27a、28aから外部に効率よく放熱される。
また、ランプMLの熱はプラスチック磁石MGに及ぶが、プラスチック磁石MGの熱は上下の放熱フィンMG4から外部に効率よく排熱される。さらにヒートシンク27はプラスチック磁石MGより熱伝導性が高いので、プラスチック磁石MGの熱の一部はプラスチック磁石MGからヒートシンク27に伝わり放熱用フィン27aから放熱される。
【0022】
さらに、ファンFNで生じた冷却風がランプML、ヒートシンク27、28、プラスチック磁石MGを冷却する。放熱用フィン27a、28a及び放熱フィンMG4は水平なのでこれらがファンFNの冷却風の流れを妨げることはなく、ファンFNはランプML、ヒートシンク27、28及びプラスチック磁石MGを効果的に冷却する。そして冷却風が放熱用フィン27a、28a及び放熱フィンMG4の表面を冷却するので、放熱用フィン27a、28a及び放熱フィンMG4は効率の良い冷却効果を持続する。
挿入部12を体腔内や機械内から完全に引き抜いた後に、プロセッサ20のスイッチS2をOFFにすると、ランプMLが消灯しファンFNが停止する。
【0023】
このように本実施形態によれば、プラスチック磁石MGに2枚の放熱フィンMG4を形成するという極めて簡単な構成によってプラスチック磁石MGの熱を効率よく放熱することが可能である。さらに放熱用フィン27aからもプラスチック磁石MGの放熱を行い、かつプラスチック磁石MGをファンFNによって冷却するので、プラスチック磁石MGの高温化を効果的に防止できる。そのため、ランプMLの点灯中にプラスチック磁石MGの磁力が低下してアーク軌跡が不安定になることがない。
【0024】
本実施形態ではヒートシンク27にプラスチック磁石MGを固着しているが、ヒートシンク28の前面にプラスチック磁石MGを固着してもよい。
放熱フィンMG4の枚数は本実施形態のものに限定されず、ランプMLの種類やランプMLとプラスチック磁石MGの距離等に応じて枚数を適宜変更し各放熱フィンの間に隙間を設けて実施できる(放熱フィンMG4の枚数が多いほど放熱効果が高まる)。放熱フィンMG4の形状も同様に変更可能である。
さらに、ランプMLとしてキセノンランプを用いたが、放電ランプであれば他のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の全体構造を示す外観図である。
【図2】プロセッサの一部を破断して示す側面図である。
【図3】ランプとヒートシンクと磁石の拡大平面図である。
【図4】ランプとヒートシンクと磁石の一部を破断した拡大背面図である。
【図5】ランプとヒートシンクと磁石の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 電子内視鏡(内視鏡)
11 操作部
12 挿入部
12a 湾曲部
13 湾曲操作装置
14 ユニバーサルチューブ
14a コネクタ部
14b ライトキャリングバンドルスリーブ
15 導光ファイバ
15a 入射端面
20 プロセッサ(内視鏡用光源装置)
21 ケーシング
22 差込口
23 起立部材
23a 支持用孔
25 ハウジング
25a 前壁
25b 採光孔
26 収容部
27 ヒートシンク
27a 放熱用フィン
27b 嵌合用孔部
27c 取付面(対向面)
27d ねじ孔
28 ヒートシンク
28a 放熱用フィン
28b 嵌合用凹部
30 レンズホルダ
30a レンズ支持用孔
B 固定ねじ
B1 ねじ部
B2 頭部
C ケース
FN ファン
FA ファンの回転軸
L1 L2 集光レンズ
MG プラスチック磁石(磁石)
MG1 扁平面
MG2 貫通孔
MG3 狭幅部
MG4 放熱フィン
ML ランプ(放電ランプ)
ML1 陽極
ML2 陰極
S 隙間(流路)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡内に配設された導光ファイバを介して、該内視鏡の挿入部先端に光を供給する放電ランプと、
該放電ランプの陰極と陽極の間に形成されるアークにローレンツ力を及ぼして、該アークの軌跡を安定させる磁石と、を具備する内視鏡用光源装置において、
上記磁石に該磁石内部の熱を外部に放熱するための放熱フィンを一体的に形成したことを特徴とする内視鏡用光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡用光源装置において、
上記放電ランプのケース及び磁石より熱伝導性の高い材料からなるヒートシンクを具備し、
上記ケース及び磁石を該ヒートシンクに接触状態で固定し、上記放電ランプ及び磁石の熱をヒートシンクから外部に排熱する内視鏡用光源装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内視鏡用光源装置において、
水平な回転軸回りに回転可能なファンを配設し、
上記放熱フィンを水平に形成し、かつ上記ファンの直前に位置させた内視鏡用光源装置。
【請求項4】
請求項3記載の内視鏡用光源装置において、
上記ヒートシンクを間隔をあけて一対設け、
上記磁石を一方のヒートシンクの他方のヒートシンクとの対向面に固着し、
両ヒートシンクの間に形成された上記磁石が位置する隙間の背後に上記ファンを配設し、該隙間を上記ファンで発生する冷却風の流路とした内視鏡用光源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の内視鏡用光源装置において、
上記磁石に放熱フィンを間隔をあけて複数形成した内視鏡用光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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