説明

内視鏡用光源装置

【課題】 感温変色インクを用いて、ユーザが安全に光源ランプの交換を行なえるような警告表示を備えた内視鏡用光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 光源ランプを交換するための開口部と該開口部を覆う蓋部材とを有する筐体を備え、前記蓋部材の外表面には、感温変色インクによる表示がなされていることを特徴とする内視鏡用光源装置が提供される。また、該蓋部材には、該蓋部材の温度が所定の温度以上の場合に可視となり、該所定の温度より低い場合に不可視となるような表示、および/もしくは該蓋部材の温度が所定の温度以下の場合に可視となり、該所定の温度より高い場合に不可視となるような表示がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告表示が施された内視鏡用光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡システムとして、先端部に撮像素子を備えた内視鏡と、撮像素子により生成された画像信号を処理してモニタに出力するプロセッサと、内視鏡に体腔内を照らすための照明光を供給する光源装置を備えたものが広く知られており、実用に供されている。患者の体腔内を診断又は治療するための内視鏡は、観察部位を照明するための光を内視鏡に供給する内視鏡用光源装置に接続して使用される。これらの内視鏡システムで用いられる内視鏡用光源装置には、内視鏡のライトガイドに照明光を供給するための光源ランプや、光源ランプを冷却するための冷却ファンが内蔵されている。また、内視鏡用光源装置は、プロセッサと一体に構成されることもある。
【0003】
従来の内視鏡システムでは、優れた演色性と寿命により、主にキセノンランプが光源ランプとして採用されている。キセノンランプは、性能が優れている反面、高価であり、また流通量が多くないため医療機関側で一定数の予備を用意しておく必要があるといった管理上の不便な点もある。ところで、近年は電子内視鏡の普及が進み、大学病院等の大規模医療施設のみならず、比較的小規模な医療機関や後進国の医療機関においても広く使用されつつある。このような小規模医療機関等においては、高価なキセノンランプの予備を十分に用意することは難しいため、安価なハロゲンランプを採用した内視鏡システムが望まれている。しかしながら、ハロゲンランプには寿命が短いという欠点があるため、頻繁なランプ交換が必要となる。
【0004】
光源ランプを交換する際には、光源装置内部に手を入れてランプを取り出す必要がある。しかし、上記内視鏡システムに用いられる高輝度な光源ランプは、点灯中に熱を発生し、例えばハロゲンランプの場合にはランプ自体の温度がおよそ400℃の高温に達する。また、光源ランプの発生する熱によって装置内部も高温となり、交換を行うために不用意に装置内部に手を入れると火傷をする危険がある。
【0005】
このような危険を回避する方法として、例えば特許文献1に記載されているような、光源ランプの交換が必要となった場合に、ユーザに光源ランプおよび装置内部の温度が十分下がっていることを通知する方法が知られている。特許文献1に記載されている内視鏡システムの本体ユニットは、警告すべき状態(例えばランプの交換が必要になった場合)を検出する検出手段、および該警告に関する情報を表示するためのタッチパネルを備えている。この構成により、例えばランプの交換が必要となった場合は、装置内部の検出手段によりそのことを自動的に検出し、タッチパネルに表示することで、ユーザに交換が必要であることを通知することができる。さらに、本体ユニットには、本体ユニット内部の温度を測定するための温度センサも備えられている。そして、温度センサにより測定された温度をタッチパネルに表示することにより、ユーザがユニット内部の温度を確認することが可能となっている。また、上記警告に関する情報として、警告すべき状態に対する解決策(例えばランプの交換方法など)をタッチパネルに表示し、ユーザがその表示を確認しながら容易に交換作業などを行うことができるようになっている。
【特許文献1】特許3771959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている警告表示を行うためには、上述のように検出手段やタッチパネル、温度センサ等の機構を備える必要があり、本体ユニットの構造が複雑になってしまう。そのため、部材点数の増加に伴うコストアップや装置の大型化という問題も生じる。また、安全性の観点から、通常は光源ランプを交換する際には光源装置の電源を切ることが望ましいが、上記特許文献1に記載されている本体ユニットにおいては、ランプ交換作業中にタッチパネルを表示させておく必要があるため、完全に電源を切ることができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光源装置に複雑な構成を追加することなく、ユーザが安全にランプの交換を行なえるような警告表示を可能とする内視鏡用光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明により、内視鏡に照明光を供給するための内視鏡用光源装置であって、光源ランプを交換するための開口部と該開口部を覆う蓋部材とを有する筐体を備え、前記蓋部材の外表面には、感温変色インクによる表示がなされていることを特徴とする内視鏡用光源装置が提供される。
【0009】
この構成によれば、光源ランプを交換するための開口部を覆う蓋部材に感温変色インクによる表示が施されるため、ユーザは交換の際に該蓋部材の表示を確認するだけで装置内部の温度を知ることができる。そのため、光源装置にモニタなどの部材を追加する必要がなく簡易な構成となり、コストアップや大型化を防ぐことができる。
【0010】
また、感温変色インクによる表示は、該蓋部材の温度が所定の温度以上の場合に可視となり、該所定の温度より低い場合に不可視となるような表示がなされても良い。さらに、この場合の表示は、光源装置の内部が高温であることを警告する警告表示であっても良い。
【0011】
この構成により、ユーザは蓋部材の表示を確認することで、装置内部が高温であることを知ることができる。
【0012】
また、感温変色インクによる表示は、該蓋部材の温度が所定の温度以下の場合に可視となり、該所定の温度より高い場合に不可視となるような表示がなされても良い。さらに、この場合の表示は、光源ランプの交換方法の表示であっても良い。
【0013】
この構成により、ユーザは蓋部材の表示を確認することで、装置内部が高温であることを知ることができる。また、蓋部材に表示されている交換方法に従って、容易にランプの交換を行なうことができる。さらに、モニタ等の表示を必要としないため、装置の電源を切って安全にランプの交換を行なうことができる。
【0014】
また、感温変色インクによる表示は、第1の感温変色インクによる第1の表示と第2の感温変色インクによる第2の表示とを含み、該蓋部材の温度が第1の温度以上の場合に第1の表示が可視となり、第2の温度より低い場合に第2の表示が可視となるような表示がなされても良い。さらに、この場合の第1の表示は光源装置の内部が高温であることを警告する警告表示であり、第2の表示は、光源ランプの交換方法の表示であっても良い。
【0015】
この構成により、ユーザは蓋部材の表示を確認することで、装置内部が高温であり危険な状態であるか、もしくはランプの交換が可能な状態であるかを的確に知ることができる。
【0016】
また、蓋部材は、光源ランプの近傍に配置され、さらに、光源ランプを冷却するための冷却ファンからの風を、前記光源ランプを介して受ける位置に配置されても良い。
【0017】
この構成により、蓋部材は装置内部の温度変化の影響を最も受けることになり、装置内部の温度変化を的確に反映した表示を行うことが可能となる。
【0018】
さらに、蓋部材の内側面には前記冷却ファンからの風が前記蓋部材に直接当たることを防ぐプレート部材が更に設けられていてもよい。
【0019】
この構成により、蓋部材が必要以上に加熱することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
したがって、本発明によれば、光源装置に複雑な構成を追加することなく、ユーザが安全にランプの交換を行なえるような警告表示を可能にする内視鏡用光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る内視鏡用光源装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る内視鏡用光源装置を含むプロセッサ1の外観図である。図1に示されるように、プロセッサ1は筐体100に覆われており、筐体100の外装側面には、後述する光源ランプなどの交換の際に用いられる開口部101と、開口部101を覆う蓋102が設けられている。蓋102は、ねじ111によって筐体100に着脱可能に取り付けられている。また、プロセッサ1の外装正面には、内視鏡のライトガイドと接続するためのライトガイド接続部103、内視鏡と電気的に接続して給電及び通信を行なうための電気接続部104、ユーザ操作を受け付ける各種の操作ボタンやプロセッサ1の動作状況を表示するインジケータ等を備える操作パネル105、およびプロセッサ1の主電源スイッチ106等が設けられている。
【0023】
図2は、図1に示されるプロセッサ1の内部構成図である。プロセッサ1は、内視鏡400に供給するための照明光を発生する2つの光源ランプ201aおよび201bと、各光源ランプが取り付けられた回転盤202と、点灯している光源ランプを空冷して制限温度以上に蓄熱するのを防ぐための冷却ファン203と、各光源ランプに給電するためのランプ電源204と、操作パネル105を制御するためのパネル制御部205と、電気信号接続部104から送られてくる画像を処理するための画像処理回路207とを備えている。上記各部は、同じくプロセッサ1に備えられる制御部206によって制御され、図示しないシステム電源によって給電される。
【0024】
また、上記プロセッサ1において、光源ランプ201aおよび201bと、回転盤202と、冷却ファン203と、ランプ電源204と、パネル制御部205と、それらを制御する制御部206とにより、内視鏡400に照明光を供給する光源部200が構成される。また、パネル制御部205と、画像処理回路207と、それらを制御する制御部206によって、画像処理部300が構成される。
【0025】
上記構成のプロセッサ1では、光源部200が上記ライトガイド接続部103を介して内視鏡400のライトガイドに照明光を供給し、内視鏡400で撮影された画像が電気信号接続部104を介して画像処理部300に供給される。画像処理部300では、内視鏡400からの映像信号に対して増幅、A/D変換等の処理が施される。処理後の映像信号はプロセッサ1に接続されたモニタ208に送信され、映像信号に対応する画像がモニタ208に表示される。
【0026】
尚、上記のように本実施形態では、光源部200と画像処理部300が単一のプロセッサ1内に実装され、パネル制御部205及び制御部206が光源部200と画像処理部300とによって共用される構成が採用されている。しかしながら、当該構成に限定されるものではなく、光源部200を単体の光源装置としてプロセッサ1から独立させた構成としても良い。
【0027】
次に、本実施形態における光源部200について詳述する。ここで、光源部200ならびに開口部101および蓋102は、図2に示される位置関係をもってプロセッサ1内に配置されているものとする。
【0028】
光源部200に含まれる光源ランプ201aおよび201bは、一方(本実施形態においては201a)がライトガイド接続部103に照明光を供給するために、ライドガイドの光軸上に配置されており、もう一方(本実施形態においては201b)は予備のランプとしてライドガイドの光軸から退避した位置に配置される。そして、ユーザが操作パネル105上のランプスイッチを操作することにより、ランプ電源204が制御部206によって制御され、ライドガイドの光軸上に配置された光源ランプ201aにのみ給電される。これにより、光源ランプ201aの点灯/消灯が行われる。
【0029】
なお、光源ランプ201aが切れた場合には、回転盤202を回転させることによって、もう一方の光源ランプ201bをライトガイドの光軸上に配置させる。これにより、点灯させるランプが光源ランプ201bに切り替えられる。また、回転盤202の回転は、プロセッサ1の外装面に設けられた図示しないスイッチ等を操作することにより自動で行われる。もしくは、光源ランプ201aの光量が落ちたことを検出し、自動的に回転するように構成されても良い。どちらの場合においても、ランプの切り替えの際は、蓋102を開ける必要はない。このように、本実施形態によれば、短時間で簡単に点灯させるランプを切り替えることが可能な構成となっている。
【0030】
また、光源ランプは点灯時に熱を発生するが、最も熱が蓄積され易い封止部の温度を耐熱温度の400℃以下に抑える必要がある。そのため、常時、冷却ファン203を回転させ、光源ランプ201aの封止部に向けて送風を行なうことにより、光源ランプ201aを冷却している。冷却ファン203は、光源ランプ201aおよび201bを間に挟んで、蓋102に対向して配置される。本実施形態では、図2に示されるように、冷却ファン203は、操作パネル105などが配置されるプロセッサ1の正面から見て、光源ランプ201aおよび201bの側方(右側)に配置される。
【0031】
次に、筐体100に設けられた開口部101および蓋102について、図3(a)および(b)を参照して説明する。図3(a)および(b)は、プロセッサ1の側面図である。図3(a)は蓋102が取り付けられた状態を示し、図3(b)は蓋102が取り外された状態を示す。
【0032】
図3(b)に示すように、開口部101及び蓋102は、光源ランプ201aを交換する際に、光源ランプ201aおよび光源ランプ201aが取り付けられている回転盤202を臨める位置(図2においては、プロセッサの正面から見て、光源ランプの左側)に設けられる。図2および図3(b)に示されるように、冷却ファン203と光源ランプ201aと開口部101(すなわち、蓋102)は略直線上に並ぶように配置される。この配置により、冷却ファン203から送られた風は、光源ランプ201aによって熱せられ、蓋102に直接当たる。つまり、蓋102は、プロセッサ1の外装の中で、光源ランプ201aの熱の影響を最も受ける位置にある。
【0033】
また、筐体100の底面には、小さな通気孔が多数並んで形成された排気部(図示せず)が設けられており、蓋102に当った風はこの排気部から筐体100の外へ排出される。このように筐体100に排気部を設けることにより、光源ランプによって熱せられた空気が筐体100の内部にこもることを防ぐことができる。さらに、筐体100の底面に排気部を設けたことにより、熱せられた空気がプロセッサ1の側面から吹き出されて、プロセッサ1の近くにいるユーザ等に直接当たることを防ぐことができる。
【0034】
次に、本実施形態における蓋102に施される表示について説明する。蓋102はアルミニウムなどの金属板によって形成され、外表面には感温変色インクによる警告表示が印刷されている。感温変色インクとは、温度によって可逆的または非可逆的に発色または変色する特殊なインクである。感温変色インクには、例えば、「示温インキ STカラー」(久保田インキ株式会社製)などの、所定の温度以上になると発色する温感インクや所定の温度以下になると発色する冷感インクなどがある。本実施形態においては、上述の冷却ファン203、光源ランプ201a及び蓋102の配置により、蓋102の温度が装置内部の温度を反映するように構成されている。また、蓋102の温度が所定の温度以上の場合のみ発色して表示が現れ、所定の温度より低い場合は表示が消えるような温感インクを用いて、図4に示すように蓋102に「内部高温 ふた開けるな」という内容の警告表示が印刷されている。本実施形態においては、プロセッサ1内の温度が、光源ランプの交換を十分に安全にかつ不快感なく行なえる温度にまで下がったときの蓋102の温度である摂氏35℃を所定の温度に設定し、この温度で発色/消色するような温感変色インクが使用されている。
【0035】
内視鏡が暫く使用されていない状態では、蓋102の温度は35℃を下回るため、温感インクで印刷された警告表示は発色せず、警告表示は不可視となる。内視鏡による検査等が行なわれている間、すなわち光源ランプ201aが点灯している間は、上記のように冷却ファン203によって送風された空気が光源ランプ201aにより熱せられて蓋102に当たることにより、蓋102の温度が35℃を超える。このとき、温感インクによって蓋102に印刷された「内部高温 ふた開けるな」との警告表示が発色して可視化され、蓋102が熱せられていること、すなわち光源ランプ201aによってプロセッサ1の内部が高温となっていることをユーザに通知し、蓋102を開けないように注意を喚起することができるようになっている。
【0036】
なお、使用中に光源ランプ201aが切れて交換が必要になった場合は、光源ランプ201aに代わって光源ランプ201bが点灯され、検査が継続される。そして、引き続き、光源ランプ201bの熱によってプロセッサ1の内部温度は高温となり、蓋102の警告表示も可視状態が維持される。
【0037】
内視鏡による検査等が終了し、光源ランプ201bが消灯されると、冷却ファンから送られる風によって光源ランプ201bの温度は徐々に低下する。そのため、蓋102に当たる空気の温度も次第に低下し、蓋102の温度は次第に低下する。そして、プロセッサ1内部の温度が十分に安全な温度にまで低下して、蓋102の温度が35℃を下回ると、温感インクが発色しなくなり、蓋102の外表面に印刷された上記警告表示が再び不可視になる。ユーザは、警告表示が不可視になったことから、プロセッサ1の内部が光源ランプを交換するのに十分に安全な温度にまで下がっていることを認識することができる。上述のように、蓋102は、光源ランプの温度、すなわちプロセッサ1内部の温度に最も影響を受ける位置に配置されているため、蓋102の温度とプロセッサ1の内部温度とは比較的に高い相関を有している。このため、蓋102の温度に基づいて、プロセッサ1の内部がランプ交換等の作業を行なうのに十分に安全な温度であるかどうかを判断することが可能になっている。
【0038】
そして、ユーザは、蓋102の表示が消えたことを確認すると、安全を確保するためにプロセッサ1の主電源スイッチ106を切ってから、蓋102の上部のねじ111を外して、蓋102を取り外し、十分に低い温度まで下がったプロセッサ1内部の光源ランプ201aを安全に交換することができる。
【0039】
上記のように、プロセッサ1の蓋102に温感インクによる印刷を行うことで、プロセッサ1の内部温度が高温である場合にのみ可視となる警告表示を行うことができ、ユーザにプロセッサ1の内部温度が高いことを通知することができる。また、内部温度が安全な温度まで下がると、蓋102の警告表示は不可視となるため、ユーザは、内部温度が下がり光源ランプを安全に交換可能になったことを知ることができる。また、温感インクを用いることで、蓋102の熱を利用して温度変化に伴った表示を行うことができるため、温度を検知するための温度センサや、ユーザに通知するためのモニタ等が不要となり、警告表示を行なうための部品を追加することなく、上記警告表示が実現できる。また、温感表示には排熱が利用されるため、警告表示を行なうために別途電力を消費する必要がない。
【0040】
また、本実施形態では、蓋102は、光源ランプ201の近傍に配置されているため、光源ランプ201の熱が伝わりやすい。さらに、蓋102は、光源ランプ201と冷却ファン203とを結ぶ直線上に配置されているため、冷却ファン203から送られ、光源ランプ201によって熱せられた風を、直接受けることになる。そのため、蓋102は光源ランプ201の温度、すなわちプロセッサ1の内部温度の影響を最も受けることになり、当該蓋102に表示を行なうことで、内部の温度変化を的確に反映することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態の蓋102aに施される表示の例を示す。図5に示されるように、第2の実施形態においては、蓋102aに光源ランプの交換方法が印刷される。また、上記第1の実施形態では、蓋102が所定の温度以上となった場合に可視となるような温感インクを用いて警告表示が行われていたが、第2の実施形態では、蓋102aが所定の温度(例えば35℃)以下の場合に発色し、所定の温度より高い場合に不可視となる性質を持つ冷感インクを用いた印刷により、蓋102aに光源ランプの交換方法の表示が行なわれる。
【0042】
上記のように冷感インクによる印刷が施されることにより、プロセッサ1内部の温度が高く、蓋102aの温度が所定の温度より高いときには、蓋102aの外表面には何も表示されていない状態となる。その後、光源ランプ201が消灯されて蓋102aの温度が低くなったとき、すなわちプロセッサ1の内部温度が下がって安全に交換作業が行なえる状態となった場合にのみ、冷感インクによって蓋102aに印刷された光源ランプの交換方法の表示が可視となる。このため、ユーザは、蓋102aに光源ランプの交換方法の表示が現われることによって、プロセッサ1の内部の光源ランプを交換可能であることを知ることができる。
【0043】
また、交換の際に光源ランプを間違った方法で取り付けてしまうと、光源ランプの光軸がずれてしまい、本来の光量が得られなくなってしまう。本実施形態のように蓋102aに交換方法を表示すれば、わざわざ取扱説明書を取り出して見なくても、蓋102aに表示された交換方法を参照して適切に光源ランプの交換を行なうことができる。また、プロセッサ1の内部温度が十分に低いときにのみランプ交換作業に便利な表示が視認できる構成とすることにより、ランプの温度が十分に下がるのを待ってから安全にランプ交換作業を行なうことをユーザに促すことができる。
【0044】
さらに、蓋102aの表示は35℃以下の常温で発色するインクを使った印刷によるため、表示のために給電を行なう必要がない。従って、プロセッサ1の主電源を切った状態でも、蓋102aに表示されたランプ交換方法を視認することができ、安全かつ確実にランプ交換作業を行なうことができる。また、表示を行なうために特別な機構をプロセッサ1に設ける必要がないため、プロセッサ1の内部構成の複雑化や大型化を招くことなく、比較的に低コストで適時表示を実現することができる。また、印刷が施された蓋102aはプロセッサ1の筐体100から取り外し可能に構成されているため、ユーザが作業中に参照し易い任意の位置に置いて作業を行なうことができる。蓋102aの表示に給電が不要であることも、蓋部102aが着脱可能な構成となることを容易にしている。
【0045】
上記の第1及び第2実施形態では、蓋102(102a)がプロセッサ1の内部温度の影響を受けることを利用して、蓋102(102a)に感温変色インクによる表示を行っている。各実施形態において、蓋102(102a)の温度は、光源ランプ点灯時(つまりピーク時)には約40℃と想定している。そして、装置内部での光源ランプ交換作業に不適である、換言すれば装置内部が高温であることを示す蓋102(102a)の温度範囲を40℃〜35℃と想定している。従って、各実施形態では、警告表示、非表示の基準となる温度を35℃に設定している。しかし、設計によっては、光源ランプ点灯時の蓋102(102a)の温度が例えば50℃以上の比較的に高い温度に達してしまう場合もある。このような状態を想定したのが以下に説明する第3の実施形態である。
【0046】
第3実施形態では、温度上昇を防ぐ構成を有する蓋102bについて説明する。図6(a)および(b)は第3実施形態に用いられる蓋102bを示す外観図である。図6(a)は蓋102bの内表面を示す図であり、図6(b)は蓋102bの外表面を示す図である。図6(a)に示されるように、第3実施形態においては、蓋102bの内表面に、開口部101と略同じ大きさのプレート112が、所定の間隔をあけて取り付けられる。本実施形態においては、プレート112は蓋102bと同じくアルミニウム製である。図6(a)に示されるようにプレート112は、四隅に立てられたスペーサー113を介して、例えばねじ等を用いて蓋102bに取り付けられる。この場合、プレート112の四隅には、スペーサー113を介して蓋102bにねじ止めするためのねじを通す貫通穴が設けられており、また蓋102bの対応する箇所にはプレート112を取り付けるためのねじ孔が設けられている。
【0047】
このように、プレート112を取り付けることによって蓋102bが二重構造となる。蓋102bをこのような構造にすることにより、冷却ファン203から光源ランプを介して送られた風は、蓋102bではなくプレート112に当たった後、排気部から筐体100の外へ排出される。プレート112と蓋102bの間には空気層が設けられているため、プレート112の熱は蓋102bまで伝わらず、蓋102bの温度は光源ランプで熱せられた風の影響を直接受けず、室温に近い温度となる。
【0048】
ここで、本実施形態においては、実施形態1と同様に、蓋102bの外表面には、35℃以上の温度で発色する温感インクによって警告表示が印刷されている。しかし、本実施形態で印刷される警告表示は、単に内部が高温であることを知らせるものではない。本実施形態においては、プロセッサ1が正常動作している場合は、蓋102bの温度が35℃以上まで上昇することはなく、蓋102bの温度が温感インクの発色温度である35℃に達する場合には何らかの異常が発生している可能性が高い。そのため、本実施形態の蓋102bには、図6(b)に示すように異常な温度上昇を知らせる「異常高温」の表示が温感インクによって印刷されている。本実施形態の蓋102bは、通常動作時には内部温度の影響をほとんど受けないため、温感インクによる印刷は可視とならない。しかしながら、例えば、プロセッサ1に何らかの異常が発生し、プロセッサ1内部全体の温度が異常に高い温度に達した場合には、プレート112と蓋102bとの間の空気層の温度まで上昇する。さらに、プレート112からスペーサー113を介して伝達する熱も高温となる。上記空気層およびプレート112から伝達される熱の温度上昇に伴い、蓋102bの温度も温感インクの発色温度以上に上昇され、異常警告表示が可視となる。
【0049】
上記第3の実施形態により、プロセッサ1が正常に動作している場合は、蓋102bの温度がユーザが触れても安全な常温に保たれる。また、プロセッサ1に異常が生じた場合は、蓋102bの温度上昇に伴って、異常警告表示が可視となり、ユーザにプロセッサ1に異常が生じていることを通知することができる。
【0050】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば、上記第1および第2の実施形態では、蓋の温度が所定の温度以上の場合、もしくは所定の温度以下の場合のいずれか一方にのみ表示が可視となるような構成となっているが、蓋に温感インクおよび冷感インクの両方で異なる表示を行なうことにより、所定の温度以上の場合と所定の温度以下の場合で、異なる2種類の表示が可視となるようにしても良い。この場合、例えば第1および第2の実施形態のように、プロセッサ1の内部温度が高い場合は、蓋102の外表面には「内部高温 ふた開けるな」との警告表示がなされ、プロセッサ1の内部温度が十分に下がった場合には、光源ランプの交換方法の表示が可視となるようにしても良い。これらの表示により、ユーザは蓋を確認するだけで、プロセッサの内部温度、および交換方法を知ることができる。この場合、温感インクの所定の温度と冷感インクの所定の温度とは、同じ温度に設定してもよいし、異なる温度に設定してもよい。
【0051】
また、その他にも、異なる温度で発色する温感インクを用いて、例えば、蓋の温度が光源ランプの点灯時における通常の温度範囲(例えば35℃から40℃)にある場合には、上記実施形態1のように通常の警告表示を行い、蓋が異常に高い温度(例えば40℃以上)にまで上昇した場合は、プロセッサの内部になんらかの異常が発生したために、内部温度が通常の光源ランプ点灯時以上の高温に達したと推定されるため、異常が発生したことを知らせる表示がなされるようにしても良い。
【0052】
また、上記の実施形態では、温感発色インクを使用して警告表示を行う構成をとっているが、冷感発色インクを使用して警告表示を高温時に可視化させることもできる。例えば、通常のインクを用いて印刷した警告表示を覆うように冷感インクでマスキングする印刷を行えば、低温時には冷感インクが発色してマスキングが有効になるため通常インクによる警告表示はマスキングで覆われるため不可視となり、高温時には冷感インクが透明化するためマスキングが無効となって通常インクによる警告表示を可視化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る内視鏡用光源部を内蔵したプロセッサの外観図である。
【図2】図1に示されるプロセッサの内部構成図である。
【図3】図1に示されるプロセッサの側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における、蓋に表示される警告表示を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における、蓋に表示される光源ランプの交換方法の表示を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における、蓋の内表面および外表面を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 プロセッサ
100 筐体
101 開口部
102、102a、102b 蓋
112 プレート
200 光源部
201a、201b 光源ランプ
203 冷却ファン
300 画像処理部
400 内視鏡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に照明光を供給するための内視鏡用光源装置であって、
光源ランプを交換するための開口部と該開口部を覆う蓋部材とを有する筐体を備え、
前記蓋部材の外表面には、感温変色インクによる表示がなされていることを特徴とする内視鏡用光源装置。
【請求項2】
前記感温変色インクによる表示は、該蓋部材の温度が所定の温度以上の場合に可視となり、該所定の温度より低い場合に不可視となることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項3】
前記感温変色インクによる表示は、前記光源装置の内部が高温であることを警告する表示であることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項4】
前記感温変色インクによる表示は、前記蓋部材の温度が所定の温度以下の場合に可視となり、該所定の温度より高い場合に不可視となることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項5】
前記感温変色インクによる表示は、前記光源ランプの交換方法の表示であることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項6】
前記感温変色インクによる表示は、第1の感温変色インクによる第1の表示と第2の感温変色インクによる第2の表示とを含み、該蓋部材の温度が第1の温度以上の場合に前記第1の表示が可視となり、第2の温度より低い場合に前記第2の表示が可視となることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項7】
前記第1の表示が前記光源装置の内部が高温である旨を警告する表示であり、前記第2の表示が前記光源ランプの交換方法の表示であることを特徴とする請求項6に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項8】
前記蓋部材は、前記光源ランプの近傍に配置されることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の内視鏡用光源装置。
【請求項9】
前記内視鏡用光源装置は、冷却ファンをさらに備え、
前記蓋部材は前記光源ランプを介して前記冷却ファンからの風を受ける位置に配置されることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の内視鏡用光源装置。
【請求項10】
前記蓋部材の内側面には前記冷却ファンからの風が前記蓋部材に直接当たることを防ぐプレート部材が更に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡用光源装置。
【請求項11】
前記蓋部材は前記筐体から着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の内視鏡用光源装置。
【請求項12】
前記蓋部材はアルミニウム製であることを特徴とする請求項1から11の何れかに記載の内視鏡用光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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