説明

内視鏡用補助観察装置

【課題】内視鏡挿入部を体管内から抜去しながら行う内視鏡観察前に体管内の観察を可能にする内視鏡用補助観察装置を提供すること。
【解決手段】オーバーチューブ2は、内視鏡挿入部11が挿通される内視鏡挿通孔2aを有する予め定めた挿入管部21と、挿入管部21に一体に設けられ、挿入管部21の外周方向を観察するための撮像素子3e及び発光素子3fを備える観察部3aが配置され、観察部3aの挿入管部21の一端側から他端側までの移動を可能にする経路を備える観察装置移動部2bと、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部が挿通可能で、かつ、体管内の観察が可能な内視鏡用補助観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入して検査、或いは処置等を行う医療分野の内視鏡は、体管内に挿入される細長で軟性な挿入部と、その挿入部に連設する操作部とを備えて構成されている。挿入部は、先端側から順に、観察手段を備えた先端部、例えば上下左右方向に湾曲する湾曲部、及び柔軟性と可撓性とを有する可撓管部とを連設して構成されている。
【0003】
術者が、挿入部を例えば大腸に挿入する場合、大腸にはS状結腸部、脾湾曲部などの屈曲部が存在すること、および、腸管の縮まろうとする力が挿入部に作用すること等により、挿入部をスムーズに大腸の深部に向けて挿入することが難しい。
【0004】
そのため、S状結腸部などの屈曲部に内視鏡の挿入部を挿入し易くする目的で、内視鏡用オーバーチューブ等の内視鏡用挿入補助具が提案されている。内視鏡用オーバーチューブを例えば挿入部と共に体管内に挿入することにより、挿入部の体管内への挿入経路を確保して、その後の挿入部の挿抜を容易に行える。また、近年においては、内視鏡用オーバーチューブと内視鏡とを併用し、腸管を手繰り寄せて短縮しつつ、内視鏡挿入部を深部に向けて挿入する手技が普及している。
【0005】
内視鏡用オーバーチューブと内視鏡とを併用し、腸管の深部に挿入された挿入部で腸管の観察を行う際、術者は、オーバーチューブを抜去し、その後、挿入部を後退させて、つまり、挿入部を腸管から抜去しながら内視鏡観察を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−037347号公報
【特許文献2】特開2010−142422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、腸管が手繰り寄せによって短縮されているため、術者が、挿入部を腸管から抜去しながら観察を行っている途中において、短縮されていた腸管等の臓器が元の状態に戻り、挿入部が術者の意図しない急激な速度で体管内を移動して観察に支障を来すおそれがある。
【0008】
なお、特許文献1には、内視鏡の挿入部が挿通可能で、撮像手段及び照明手段を備えるチューブ体が示されている。また、特許文献2には、内視鏡の挿入部が挿通可能なチューブ体と、観察装置が進退移動可能なプローブとを備える光観察装置が示されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、内視鏡用オーバーチューブと内視鏡とを併用して挿入部の先端部を体管深部の目的部位に到達させた後、内視鏡挿入部を体管内から抜去しながら行う内視鏡観察前に体管内の観察を可能にする内視鏡用補助観察装置を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様における内視鏡用補助観察装置は、内視鏡挿入部が挿通される内視鏡挿通孔を有する予め定めた可撓性のチューブ体と、前記チューブ体に一体に設けられ、該チューブ体の外周方向を観察するための撮像手段及び照明手段を備える観察部が配置され、該観察部の前記チューブ体の一端側から他端側までの移動を可能にする経路を備える観察装置移動部と、を具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内視鏡挿入部を体管内から抜去しながら行う内視鏡観察前に体管内の観察を可能にする内視鏡用補助観察装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの構成を説明する図
【図2】オーバーチューブを構成する挿入管部及びシール部を説明する図
【図3】図2の矢印Y3-Y3線断面図であり、挿入管部が備える内視鏡挿通孔と観察装置移動孔とを説明する図
【図4】観察装置の構成例を説明する図
【図5】図4の矢印Y5-Y5線断面図であり、ケーブル部の構成を説明する図
【図6】オーバーチューブの先端から内視鏡の挿入部を突出させた状態を説明する図
【図7】オーバーチューブを外挿した内視鏡の挿入部を大腸の深部の盲腸近傍に到達させた状態を説明する図
【図8】二種類の樹脂部材で構成された挿入管部を説明する断面図
【図9】外周面に凸部と凹部とを備え、その凸部に内視鏡挿通孔を有する挿入管部を説明する図
【図10】螺旋孔を有する挿入管部を説明する図
【図11】図11及び図12は挿入管部の他の構成にかかり、螺旋状凸部を有する挿入管部を説明する断面図
【図12】螺旋状凸部を有する挿入管部を説明する側面図
【図13】図10の挿入管部の作用を説明する図
【図14】図14及び図15は挿入管部の別の構成にかかり、外表面に2つの螺旋状凸部を有する挿入管部を説明する断面図
【図15】外表面に2つの螺旋状凸部を有する挿入管部を説明する側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1−図7を参照して内視鏡1と内視鏡用補助観察装置2と観察装置3とを備える内視鏡システム10について説明する。
図1に示すように内視鏡システム10は、内視鏡1、内視鏡用挿入補助観察装置である観察用内視鏡オーバーチューブ(以下、単にオーバーチューブと記載する)2、および観察装置3を備えて構成されている。
【0014】
内視鏡1は、大腸などの体管内に挿入される挿入部11と、この挿入部11の基端側に設けられた操作部12と、この操作部12の側部から延出するユニバーサルコード13と、を備えて主に構成されている。
【0015】
内視鏡1の挿入部11は、先端側から順に硬性の先端部14と、この先端部14を所望の方向に向ける例えば上下左右方向に湾曲自在な湾曲部15と、可撓性を有する可撓管部16とを連設して構成されている。
【0016】
挿入部11の先端部14には観察手段(不図示)である、撮像光学系を構成する観察窓(図5の符号14a参照)及び照明光学系を構成する照明窓(図5の符号14b参照)が設けられると共に、処置具が導出される処置具チャンネル(不図示)の開口(図5の符号14c参照)が設けられている。
【0017】
内視鏡1の操作部12の側面には、湾曲部15を湾曲操作するための湾曲操作ノブ17、送気送水ボタン18及び吸引ボタン19等が設けられている。また、操作部12には処置具を処置具チャンネルに導入するための処置具挿入口20が設けられている。
【0018】
ユニバーサルコード13の基端部には電気コネクタ13aが設けられている。電気コネクタ13aは、外部機器である例えば光源装置及びビデオプロセッサを兼ねる内視鏡用制御装置4に着脱自在に接続される。
なお、符号5Aは第1の表示装置であり、第1の表示装置5Aは、内視鏡用制御装置4に接続され、その画面上には内視鏡1の撮像光学系でとらえた内視鏡画像が表示される。
【0019】
オーバーチューブ2は、挿入管部21と、チューブ把持部22と、シール部23とを主に備えて構成されている。
挿入管部21は、予め定めた可撓性と透明性とを有する断面外形形状及び断面内面形状が円形のチューブ体である。挿入管部21は、PP、PE等のオレフィン系樹脂部材、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂部材、或いはPTFE、ETFE等のフッ素樹脂部材で形成されている。
【0020】
チューブ把持部22は、樹脂製或いはゴム製であって把持性を考慮して構成されている。チューブ把持部22は、挿入管部21の基端側の外周面に外嵌配置され、接着或いは溶着等によって一体に固定されている。
【0021】
シール部23は、挿入管部21の先端面に接着或いは溶着等によって一体に固定されている。シール部23が一体な挿入管部21の長さ寸法は、内視鏡1の挿入部11の長さ寸法より予め定めた寸法短く設定されている。
【0022】
図2、図3を参照してオーバーチューブ2を説明する。
図2、図3に示すようにオーバーチューブ2の挿入管部21は、軸方向貫通孔である内視鏡挿通孔2aを有している。内視鏡挿通孔2aには、内視鏡1の挿入部11が挿通される。内視鏡挿通孔2aの内径寸法は、内視鏡1の挿入部11の外径寸法より予め定めた寸法大きく設定されている。
【0023】
挿入管部21は、内視鏡挿通孔2aの周囲に予め定めた扁平な断面形状の複数の観察装置移動孔2bを備えている。
複数の観察装置移動孔2bは、挿入管部21の内視鏡挿通孔2aの中心軸に平行、言い換えれば、挿入管部21の中心軸に平行な貫通孔である。複数の観察装置移動孔2bは、内視鏡挿通孔2aの中心軸回りに等間隔で、例えば4つ、設けられている。すなわち、本実施形態の挿入管部21は、マルチルーメンチューブである。
【0024】
挿入管部21に設けられた各観察装置移動孔2bの先端側開口は、挿入管部21の先端面で開口し、基端側開口は挿入管部21の基端面で開口している。基端面側の開口は、観察装置挿入口である。
なお、観察装置移動孔2bの数は、4つに限定されるものではなく、それ以上、或いはそれ以下であってもよい。
【0025】
図2に示すようにシール部23は、先端側に位置する傾斜面部24と、基端側に位置する管部25とを備え、内視鏡1の挿入部11が挿通される軸方向貫通孔23aを有して構成されている。傾斜面部24は、体管内への挿入性を考慮して外周面がテーパー面で構成されている。シール部23の基端面である管部25の端面は、挿入管部21の先端面に固定されて、観察装置移動孔2bの先端側開口を閉塞する。
【0026】
シール部23は、樹脂製或いはゴム製の弾性体であって所定の可撓性を有し、内視鏡挿通孔2aの先端から突出する挿入部11の外周面に密着する構成になっている。この構成によれば、オーバーチューブ2の内視鏡挿通孔2aと内視鏡1の挿入部11との隙間に体管の粘膜等が巻き込まれることを防止する。
【0027】
オーバーチューブ2の挿入管部21に設けられた各観察装置移動孔2b内には図4に示す観察装置3の観察部3aがそれぞれ摺動自在に配置される。即ち、観察装置移動孔2bは、観察装置3の観察部3aの移動を可能にする経路を備えた観察装置移動部である。
【0028】
図1及び図4を参照して観察装置3を説明する。
図1、図4に示すように観察装置3は、複数の観察部3aと、各観察部3aからそれぞれ延出するケーブル部3bと、複数のケーブル部3bを収容する収容ケーブル3cと、観察用コネクタ3dとを備え構成されている。
【0029】
観察装置3は、オーバーチューブ2の挿入管部21に設けられている観察装置移動孔2bの数に対応する観察部3aを備えている。即ち、本実施形態において、観察装置3は、4つの観察部3aを備えている。
【0030】
観察部3aの外形形状は、観察装置移動孔2b内で観察方向が反転することを防止する目的で扁平形状であり、観察装置移動孔2bの断面形状に対して予め設定したクリアランス分、小さく形成してある。
【0031】
観察部3aには、観察手段として撮像光学系の撮像手段である例えばCCD、C−MOS等の撮像素子3e及び照明光学系の照明手段である例えばLED等の発光素子3fを備えている。撮像素子3e及び発光素子3fは、筐体3g内に内蔵されている。撮像素子3eの撮像面及び発光素子3fの発光面は、挿入管部21の外周方向を向くように一面側に配置されている。
【0032】
図5に示すようにケーブル部3bは、例えば扁平形状であり、電線3hと、信号線3jと、補強ワイヤー3kと、これら電線3h、信号線3j及び補強ワイヤー3kを一纏めに被覆する被覆部材3mとを備えて構成されている。
【0033】
電線3hは、発光素子3fに電力を供給する。信号線3jは、観察装置用制御装置(図1の符号6参照)に設けられた駆動回路(不図示)から撮像素子3eへの駆動信号の伝送及び電力の供給を行うと共に、撮像素子3eで光電変換された電気信号を観察装置用制御装置6の信号処理回路(不図示)に伝送する。補強ワイヤー3kは、金属の単線、撚り線ロープ、或いは超弾性合金製で、予め定めた弾発性を有する。被覆部材3mは、電線3h及び信号線3jを保護し、補強ワイヤー3kと一体に構成されて牽引操作部を構成する。
この結果、術者等が被覆部材3mを備えるケーブル部3bを押し引き操作することによって、観察部3aは、観察装置移動孔2b内を前進、或いは後退する。
【0034】
収容ケーブル3cは、可撓性を有し、軸方向貫通孔を備えるチューブ体である。複数のケーブル部3bが、収容ケーブル3cの軸方向貫通孔内に配置される。収容ケーブル3cの基端部には観察用コネクタ3dが着脱自在に配設される構成になっている。
【0035】
観察用コネクタ3dには、複数の端子部(不図示)が設けられており、収容ケーブル3c内に挿通された各ケーブル部3bの電線3hの端部及び信号線3jの端部が予め定められている端子に電気的に接続されている。観察用コネクタ3dは、光源装置及びビデオプロセッサを兼ねる観察装置用制御装置6の接続部に対して着脱自在な構成である。
【0036】
なお、符号5Bは第2の表示装置であり、第2表示装置5Bは、観察装置用制御装置6に接続されている。第2表示装置5Bの画面には、各観察部3aに内蔵された撮像素子3eから伝送されて信号処理回路で生成された観察画像が表示される。観察画像としては、各観察部3aに対応する4つの画像を画面上にそれぞれ表示する、或いは4つの観察部3aの画像を1つに合成して、表示されるようになっている。
【0037】
また、上述において観察部3aの撮像光学系を撮像素子3eとしているが、撮像光学系は観察用光ファイバーであってもよい。この場合、観察用ファイバーの基端部にはカメラ装置が接続される。また、照明光学系を発光素子3fとしているが、照明光学系は照明光伝送用光ファイバーであってもよい。この場合、観察装置用制御装置6には照明光を供給するランプが備えられる。
【0038】
さらに、内視鏡挿通孔2aの内周面及び観察装置移動孔2bの内面に親水コート、シリコンコート、DCL、パラキシリレンコート等の潤滑コーティングを施して摺動性の向上を図るようにしてもよい。
【0039】
上述のように構成された内視鏡システム10を用いた大腸内視鏡検査について説明する。
大腸の内視鏡検査を行うに当たって、術者及びスタッフは、観察装置3が備える4つの観察部3aを図6に示すようにオーバーチューブ2が有する4つの観察装置移動孔2bの予め定められた観察装置移動孔2bに挿入し、矢印に示すように押し込んで、シール部23近傍の所定位置に配置する。
【0040】
次に、術者は、内視鏡1の挿入部11をオーバーチューブ2の内視鏡挿通孔2a内に挿入し、図6に示すように内視鏡1の先端部14及び湾曲部15をオーバーチューブ2のシール部23の軸方向貫通孔23aから所望の量、突出させておく。この後、術者は、挿入部11を大腸に挿入する。
【0041】
挿入部11及びオーバーチューブ2の挿入手順を説明する。
術者は、オーバーチューブ2が外挿されている内視鏡1の挿入部11の大腸内への挿入作業を開始する。術者は、第1の表示装置5Aの画面を観察しつつ、大腸の屈曲状態に合わせ、操作部12に設けられている湾曲操作ノブ17を適宜操作して湾曲部15を湾曲動作させ、挿入部11を大腸の深部に向けて挿入していく。
【0042】
術者は、図7に示すように挿入部11の先端部14が直腸51を通過してS状結腸52の入り口に到達したと判断したなら、オーバーチューブ2を挿入部11に沿って大腸内へスライド移動させる。
【0043】
その後、術者は、挿入部11の深部への挿入と、オーバーチューブ2の上述したスライド移動とを繰り返し行って、屈曲部であるS状結腸52、脾湾曲部53、肝湾曲部54を通過させて先端部14を盲腸55近傍に到達させる。その後、術者は、大腸内の検査を行う。
【0044】
なお、オーバーチューブ2を挿入部11に沿ってスライド移動させている間、シール部23が内視鏡1の可撓管部16の外周面に密着する。また、オーバーチューブ2の挿入管部21が有する可撓性によって大腸が縮まろうとする力を抑えて、挿入部11の挿通路が確保される。符号56は下行結腸、符号57は横行結腸、符号58は上行結腸である。
【0045】
第1の検査である観察装置3による検査及び第2の検査である内視鏡1による検査について説明する。
術者は、まず、観察装置3による第1の検査を開始する。この際、術者、又はスタッフは、オーバーチューブ2を体内に留置させたままの状態で、オーバーチューブ2のチューブ把持部22から延出している観察装置3のケーブル部3bを4本同時、又は1本ずつ牽引操作する。
【0046】
すると、牽引操作に伴ってケーブル部3bが移動されて、シール部23の近傍に配置されていた観察部3aが矢印Y7に示すように観察装置移動孔2b内を後退していく。このとき、第2の表示装置5Bの画面には観察部3aに設けられている撮像素子3eで撮像された大腸壁の画像が表示される。
【0047】
術者等は、第2の表示装置5Bの画面に表示される大腸壁の画像を観察して検査を行う。そして、術者は、全ての観察装置移動孔2bから観察部3aが抜去されたことを確認したなら、引き続き、第2の検査に移行する。
【0048】
術者は、次に、第2の検査である内視鏡1による観察を行う。この際、術者は、挿入部11とオーバーチューブ2とを大腸から抜去しつつ、第1の表示装置5Aの画面に表示される大腸壁の画像を観察する。
なお、術者が、オーバーチューブ2を予め大腸から抜去した後、挿入部11を大腸から抜去しつつ、第1の表示装置5Aの画面に表示される大腸壁の画像を観察するようにしてもよい。
【0049】
このように、本実施形態においては、オーバーチューブ2に複数の観察装置移動孔2bを設け、その観察装置移動孔2bに撮像素子3e及び発光素子3fを有する観察部3aをシール部23側に配置しておく。そして、観察部3aを配置した状態のオーバーチューブ2が外挿されている挿入部11の先端部14を例えば大腸内の所望の位置に到達させる。
【0050】
この結果、術者は、オーバーチューブ2を大腸内に留置した状態で観察装置移動孔2b内に配置されている観察部3aを後退させて第1の検査を行うことができ、その後、挿入部11を大腸内から抜去しつつ第2の検査を行うことができる。
【0051】
観察装置移動孔2b内に配置した観察部3aを後退させて行う第1の検査によれば、検査中において大腸等の体管が術者の意図しない変形をして観察に支障を来す不具合が防止される。加えて、第1の検査においては、観察装置移動孔2b内を後退する観察部3aを前進操作することによって、観察部3aが一度通過した部位の再検査を容易に繰り返し行うことができる。
【0052】
また、観察装置3による第1の検査後に、内視鏡による第2の検査を行うことにより、第1の検査によって確認した特定部位の精査を行える等、内視鏡1による検査精度の向上を図ることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態においては、挿入管部21であるマルチルーメンチューブを、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、或いはフッ素樹脂等、1種類の樹脂部材で形成している。しかし、図8に示すように挿入管部21を、2種類の異なる樹脂部材を組み合わせたマルチルーメンチューブで構成するようにしてもよい。
【0054】
図8に示す挿入管部21Aは、第1樹脂部材であるシリコンゴム、ウレタン等で形成される内視鏡挿通孔2aを有するチューブ本体26と、第2樹脂部材であるフッ素樹脂製の観察装置移動孔2bを構成するルーメン部27とで構成されている。
この構成によれば、チューブ本体26は、可撓性に優れ、ルーメン部27は、摺動性に優れた特性を有する。
【0055】
また、上述した実施形態においては、複数の観察装置移動孔2bを有する挿入管部21の外周の断面形状を滑らかな円形としている。しかし、挿入管部21の断面形状は円形に限定されるものではなく、図9に示すように挿入管部21Bの外周に凸部28Aおよび凹部28Bを設け、その凸部28Aに観察装置移動孔2bを形成するようにしてもよい。なお、チューブ本体26の断面形状も円形に限定されるものではなく、凹凸部を設ける構成であってもよい。
この構成によれば、体管内壁と挿入管部21との接触面積を減少させることができる。
【0056】
さらに、上述した実施形態においては、複数の観察装置移動孔2bを挿入管部21の中心軸に対して平行に設けている。しかし、図10に示す挿入管部21Cのように中心軸に対して螺旋状の観察装置移動螺旋孔2cを設ける、或いは図11及び図12の挿入管部21Dに示すように外表面から突出した螺旋状凸部29を設け、その螺旋状凸部29に観察装置移動螺旋孔2cを設けるようにしてもよい。
【0057】
この構成によれば、図13に示すように観察装置移動螺旋孔2cに配置した観察部3aを矢印Y13Bに示すように後退させる、或いは矢印Y13Fに示すように前進させて、1つの観察部3aで第1の検査を行うことができる。
【0058】
また、図14、図15に示す挿入管部21Eに示すように挿入管部21Eの外表面から突出する2つの螺旋状凸部29A、29Bを設けるようにしてもよい。この構成においては、例えば第1の螺旋状凸部29Aに撮影装置移動孔2eを設け、第2の螺旋状凸部29Bに照明装置移動孔2fを設ける。
そして、撮影装置移動孔2eに撮像素子3eを備えるカメラ(不図示)を配置し、照明装置移動孔2fに例えば発光素子3fを備える照明装置(不図示)を配置する。
【0059】
この構成によれば、撮影装置移動孔2e内のカメラと照明装置移動孔2f内の照明装置の位置とを適宜調整することによって、体管内壁に対して観察に最適な照明光を照射して、術者の所望する観察画像を取得して第1の検査を行うことができる。なお、前記図10に示した挿入管部21Cに、挿入管部21の中心軸に対して螺旋状の観察装置移動螺旋孔2cを設ける代わりに、撮影装置移動孔2e及び照明装置移動孔2fを設けるようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態において、内視鏡1の挿入部11を大腸に挿入される挿入部としている。しかし、内視鏡1の挿入部11は、大腸に挿入される挿入部に限定されるものではなく、小腸に挿入される挿入部等であってもよい。
【0061】
また、挿入管部21の外周面に、体管を拡張する拡張手段と、オーバーチューブ2を体管に固定する固定手段とを兼用する拡張固定手段として、例えば膨縮自在なバルーン(不図示)を設けるようにしてもよい。
このことによって、本実施形態の内視鏡システムのオーバーチューブと内視鏡とを併用して腸管を手繰り寄せて短縮しつつ、内視鏡挿入部を深部に挿入する手技が可能になる。
【0062】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…内視鏡 2…内視鏡用補助観察装置(オーバーチューブ) 2a…内視鏡挿通孔
2b…観察装置移動孔 2c…観察装置移動螺旋孔 2e…撮影装置移動孔
2f…照明装置移動孔 3…観察装置 3a…観察部 3b…ケーブル部
3c…収容ケーブル 3d…観察用コネクタ 3e…撮像素子 3f…発光素子
3g…筐体 3h…電線 3j…信号線 3k…補強ワイヤー 3m…被覆部材
4…内視鏡用制御装置 5A…第1の表示装置 5B…第2の表示装置
6…観察装置用制御装置 10…内視鏡システム 11…挿入部 12…操作部
13…ユニバーサルコード 13a…電気コネクタ 14…先端部
14a…観察窓 14b…照明窓 14c…開口 15…湾曲部
16…可撓管部 17…湾曲操作ノブ 18…送気送水ボタン 19…吸引ボタン
20…処置具挿入口 21、21A、21B、21C、21D、21E…挿入管部
22…チューブ把持部 23…シール部 23a…軸方向貫通孔 24…傾斜面部
25…管部 26…チューブ本体 27…ルーメン部 28A…凸部
28B…凹部 29…螺旋状凸部 29A…第1の螺旋状凸部
29B…第2の螺旋状凸部 51…直腸 52…S状結腸 53…脾湾曲部
54…肝湾曲部 55…盲腸 56…下行結腸 57…横行結腸
58…上行結腸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部が挿通される内視鏡挿通孔を有する予め定めた可撓性のチューブ体と、
前記チューブ体に一体に設けられ、該チューブ体の外周方向を観察するための撮像手段及び照明手段を備える観察部が配置され、該観察部の前記チューブ体の一端側から他端側までの移動を可能にする経路を備える観察装置移動部と、
を具備することを特徴とする内視鏡用補助観察装置。
【請求項2】
前記チューブ体は、予め定めた透明性を有し、
前記観察装置移動部は、前記チューブ体の内視鏡挿通孔の周囲に設けられた、該挿通孔の中心軸回りに等間隔でかつ当該挿通孔の軸に平行な、複数の観察装置移動孔であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用補助観察装置。
【請求項3】
前記チューブ体は、予め定めた透明性を有し、
前記観察装置移動部は、前記チューブ体の内視鏡挿通孔の周囲に設けられた、該挿通孔の中心軸に対して螺旋状の少なくとも1つの観察装置移動孔であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用補助観察装置。
【請求項4】
前記観察装置移動孔を、前記チューブ体の外周面側から突出する凸部に設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内視鏡用補助観察装置。
【請求項5】
前記チューブ体の内視鏡挿通孔の内周面及び前記観察装置移動孔の内周面に潤滑コーティングを施したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内視鏡用補助観察装置。
【請求項6】
前記チューブ体を可撓性に優れた第1樹脂部材で構成し、前記チューブ体に設けられる前記観察装置移動部を摺動特性に優れた第2樹脂部材で構成したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用補助観察装置。
【請求項7】
前記チューブ体の外周面に、体管を拡張する、或いは該チューブ体を体管に固定するための拡張固定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用補助観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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