説明

内視鏡用送水チューブ

【課題】内視鏡を通して臓器内の異物や細菌等の送水機内への逆流を防止し、送水機のタンク内の液体を汚染させたり、タンク内に収容した液体の質に影響を与えさせたりすることのない内視鏡用送水チューブを提供する。
【解決手段】送水機20に結合するための流入側コネクタ2と、内視鏡30に結合するための流出側コネクタ3とを備えたチューブ本体4を設け、該チューブ本体と前記両コネクタの三者のうち少なくとも一つに、流入側コネクタから流出側コネクタへ向かう流れのみを許容する逆止部材5を設置したものである。この逆止部材5はこれを設置したチューブ本体や両コネクタにて液体の逆流を確実に規制できる。これにより、送水機20のタンク内の液体を汚染させたり、タンク内の液体の質に影響を与えさせたりするおそれを完全に払拭できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食道・胃・腸等の消化管の正確な観察を目的とした、消化管内の洗浄のための送水、あるいは内視鏡のスコープ先端に備えた小型カメラを用いて鮮明に消化管内を記録するための消化管への送水、消化管内の出血部位及び止血後の部位の確認のための送水等に使用して好適な内視鏡用送水チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から内視鏡には種々の目的で送水できるようになっている。この送水について、今までは内視鏡操作部にある鉗子孔から、水または生理食塩水などの液体を収容したシリンジ(注射器)を接続し、該シリンジの操作により送水を行っていた。このシリンジを用いた送水は、内視鏡の操作と平行して行うことから困難を伴ったばかりでなく、内視鏡技師又は看護師の介添えが必要であった。しかも送水時の水圧が充分に出ないために企図した送水効果(観察部位の残渣及び泡の除去、出血部位の視野確保等)が得られ難かった。
【0003】
このため、最近、上記シリンジに代え、水または生理食塩水などの液体を貯留するためのタンク、該タンク内の液体を吐出させるためのポンプ、該ポンプを作動させるためのフットペタルとを備えた送水機を利用してスコープ内の洗浄、消化管内の洗浄等を行うシステム(特開2002−177208号)が提案されるに至った。これは水または生理食塩水などの液体の送水が、オペレータのフット操作により内視鏡の操作と平行して行える点で有利であった。
【特許文献1】特開2002−177208号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記送水機にて行われる送水時に、当該送水した水の一部、消化管内の粘膜の一部、消化管内で繁殖している細菌(ピロリ菌等)などが送水機内へ逆流することがあり、送水機のタンク内を汚染したり、タンク内に収容した液体の質に影響を与えたりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解消するためのもので、その目的とするところは、内視鏡を通して消化管内の異物や細菌等の送水機内への逆流を防止し、送水機のタンク内の液体を汚染させたり、タンク内に収容した液体の質に影響を与えさせたりすることのない内視鏡用送水チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る内視鏡用送水チューブは、送水機に結合するための流入側コネクタと、内視鏡に結合するための流出側コネクタとを備えたチューブ本体を設け、該チューブ本体と前記両コネクタの三者のうち少なくとも一つに、流入側コネクタから流出側コネクタへ向かう流れのみを許容する逆止部材を設置したものである。この逆止部材はこれを設置したチューブ本体や両コネクタにて液体の逆流を確実に規制できるようにしたものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る内視鏡用送水チューブは、前記チューブ本体の主部が柔軟素材で形成され、流出側コネクタ寄りの一部が硬質素材で湾曲状に形成したものである。柔軟素材で構成したチューブ本体の主部は殆どの範囲を指し、硬質素材で構成したチューブ本体の一部は内視鏡に結合させたり、送水機の一部に引っかける僅かな範囲を指しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内視鏡を操作しつつ行われる鮮明な消化管内の観察視野を確保するための送水時、消化管内の出血時にその部位の視野を確保するための、又は止血後その部位の視野を確保するための洗浄に使用した水、粘膜の一部、消化管内で繁殖している細菌等がチューブ本体を通して送水機に逆流することを確実に防止できる。したがって、送水機のタンク内の液体を汚染させたり、タンク内の液体の質に影響を与えさせたりするおそれを完全に払拭できるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、チューブ本体の主部は柔軟素材で構成され丸めて小さく保管できるし、送水機と内視鏡との間にセットする作業を容易にする。また、流出側コネクタ側は硬いため内視鏡スコープの操作部において、チューブの接触を防ぎ、内視鏡操作の妨げにならず、しかも、内視鏡から外した時に送水機等適所にチューブ端が床面に触れて汚れないように引っかけておくことができるなどの優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願チューブの使用状態を示す略示的斜視図、図2は本願チューブのチューブ本体の一部を省略した正面図、図3は本願チューブに用いる逆止部材の拡大断面図である。
【0011】
本願チューブ1は、送水機20に結合するための流入側コネクタ2と、内視鏡30に結合するための流出側コネクタ3とを備えたチューブ本体4を設けてなる。該チューブ本体4と前記両コネクタ2、3の三者のうち少なくとも一つには、流入側コネクタ2から流出側コネクタ3へ向かう流れ(矢印A)のみを許容する逆止部材5を設置している。換言すれば、内視鏡30から送水機20へ向けての逆流(矢印A′)を規制し、異物や細菌等が送水機20に入らないようにしている。
【0012】
前記チューブ本体4の流入側コネクタ2を結合させる送水機20は、水または生理食塩水などの液体を貯留するためのタンク21と、該タンク21内の液体を吐出口22より吐出させるためのポンプ23が内蔵され、該ポンプ23を作動させるためのフットスイッチ24が機外にリード線25を介して延出されている。該フットスイッチ24の踏み込み方(あるいは他の操作手段の操作によることもある)により吐出量や流速が自在に変更できるようになっている。
【0013】
前記チューブ本体4の流出側コネクタ3を結合させる内視鏡30は、食道・胃・腸等の消化管などの空間に挿入するためのフレキブルチューブからなるスコープ挿入部31を備えている。該スコープ挿入部31には、スコープ先端の受像素子から本体へ映像信号を伝達するためのケーブルがあり、また、本体からスコープ先端へ照明用の光を体内に導くための光ファイバーが組み込まれている他、鉗子等の処置具(図示せず)を挿通するための鉗子孔32及びこれに続く鉗子チャンネル(図示せず)がスコープ挿入部31を縦通している。また、内視鏡30には消化管内に注入した液体等を排出させるための吸引口33及びこれに続くこれに続く鉗子チャンネル(図示せず)がスコープ挿入部31を縦通している。
【0014】
前記フレキブルチューブからなるスコープ挿入部31の先端部には、小型カメラ(図示せず)が組み込まれている。なお、図中、34は送気・送水ボタン、35は吸引ボタン、36、36′はスコープ挿入部31の先端31′を動かすために組み込んだアングル操作ノブである。37は内視鏡の主装置で、照明用の光源装置38a、画像モニタ38b、データ記録装置38cなどが組み込まれている。該主装置37はケーブル39を介して前記内視鏡30に連繋している。すなわち、内視鏡30の操作は前記主装置37の画像モニタ38bを見ながら行うこととなる。
【0015】
前記チューブ本体4は、その主部4aが柔軟素材(例えば、PVC)で形成され、流出側コネクタ3寄りの一部4bが硬質素材(例えば、高密度PE、PP)で湾曲状(湾曲度合は自由に決定され、必ずしも図示の例には限らない)に形成されている。ここに流出側コネクタ3寄りの一部4bを硬質素材にしたのは内視鏡30との結合力を増大させるため有効だからである。また、その一部4bを湾曲状に形成したのは内視鏡30から結合を外したときに、図1の如く、送水機20の適所に設けたフック26に引っかけておけるようにするためである。前記チューブ4の主部4aと一部4bとの結合部4cは後者を前者に差込んでなるが、他の結合方式を採ってもよい。
【0016】
前記逆止部材5は、前記チューブ4の主部4aの途中に設置したものを示している。該逆止部材5は、図3の如く、チューブ連結部6aを備えたスカート部6に、チューブ連結部7aを備えたソケット部7を嵌入固定してなるハウジング内には弾性部材(ゴム部材)からなる円錐形の弁体8を設置している。該弁体8は流入側コネクタ2から流出側コネクタ3へ向かう流れ(矢印A)の上流側が大きく開口し、下流側が狭窄され、かつ該狭窄頂部にスリット9を設けている。該スリット9は矢印A方向の流れは、通過させるが、矢印A′方向の流れは規制する構造になっている。勿論、逆止部材5の構造は、図3に示したものに限定する必要はない。また、逆止部材5は、図示の例では、チューブ本体4の途中に設けているが、前記流入側コネクタ2あるいは流出側コネクタ3に内蔵しても、あるいはコネクタ2、3に連結させる第2コネクタを用意しその内に構成してももよい。
【0017】
次の3つの場合について本願チューブ1の作用を具体的に説明する。すなわち、
(1)内視鏡30のスコープ挿入部31の先端部に組み込んだ小型カメラ(図示せず)を
用いて消化管表面を観察のために送水する場合
(2)消化管内の出血部位又はその止血後その部位を観察のために送水する場合
(3)使用後の内視鏡30のスコープ挿入部31を縦通するパイプ内面を洗浄する場合
【0018】
上記(1)の場合について
まず、チューブ本体4の流入側コネクタ2を送水機20に結合し、流出側コネクタ3を内視鏡30の鉗子孔32に結合する。この場合、流出側コネクタ3寄りの一部4bが硬質であるため内視鏡30へのまとわり付きを防いでくれる。次いで主装置37のモニタを見ながら、アングル操作ノブ36、36′を操作しつつスコープ挿入部31の先端部31′の小型カメラ(図示せず)を目的の方向に向け、フットスイッチ24を踏み込む。これにより送水機20のタンク21内に、予め貯留した液体を、吐出口22より流入側コネクタ2、チューブ本体4、逆止部材5、流出側コネクタ3を順次、経させて内視鏡30のスコープ挿入部31を縦通させた鉗子チャンネル(図示せず)を通して噴射させると、小型カメラが向いた目的の部位(消化管表面)が洗浄されるから、観察部位の鮮明な写真が得られ、円滑な内視鏡検査の進行にも寄与することが実験的に確認されている。
【0019】
この画像鮮明度向上のための送水中、チューブ本体4の途中に設置した逆止部材5の作用により内視鏡30のスコープ挿入部31を縦通した鉗子チャンネルを通して消化管表面の粘膜の一部や消化管内に生息していたピロリ菌などの異物の逆流を確実に遮断する。したがって、タンク21内の液体は汚染されたり変質させられるようなことがない。
【0020】
上記(2)の場合について
まず、チューブ本体4の流入側コネクタ2を送水機20に結合し、流出側コネクタ3を内視鏡30の鉗子孔32に結合する。次いで、主装置37のモニタを見ながら、アングル操作ノブ36、36′を操作しつつスコープ挿入部31の先端部31′を目的の方向に向け、フットスイッチ24を踏み込む。これにより送水機20のタンク21内に予め貯留した液体を、吐出口22より流入側コネクタ2、チューブ本体4、逆止部材5、流出側コネクタ3を順次経て内視鏡30のスコープ挿入部31を縦通させた鉗子チャンネル(図示せず)を通して噴射させると、出血部位付近が洗浄され、止血の処置までが円滑に行える。また、止血後、その部位を再び洗浄することにより止血の確認も明確に行える。
【0021】
この止血部位の洗浄のための送水中、チューブ本体4の途中に設置した逆止部材5の作用により内視鏡30のスコープ挿入部31を縦通した鉗子チャンネルを通して粘膜の一部や消化管内に生息していたピロリ菌などの異物の逆流を確実に遮断する。したがって、タンク21内の液体は汚染されたり変質させられるようなことがない。
【0022】
上記(3)の場合について
まず、チューブ本体4の流入側コネクタ2を送水機20に結合し、流出側コネクタ3を内視鏡30の鉗子孔32に結合する。次いで、フットスイッチ24を踏み込んで、タンク21内に予め貯留した洗浄水を吐出口22から流入側コネクタ2、チューブ本体4、逆止部材5、流出側コネクタ3を、順次経させて内視鏡30のスコープ挿入部31内に注入する。これにより、使用後の鉗子チャンネル内に付着している粘膜などの汚れが確実に洗浄される。
【0023】
上記の如く、本願チューブ1を用いて内視鏡検査を行う時、通常の観察以外に消化管表面の細胞を検査目的で採取する際など、鉗子類を使う必要がある時は、流出側コネクタ3を内視鏡30の鉗子孔32から外し、処置を行う。また、通常の観察に戻る際、フック26に掛けてある流出側コネクタ3を内視鏡30の鉗子孔32に結合し、送水を行う。これらの操作は、従来、シリンジ(注射器)を用いた際、助手(看護師)から受け取って送水等を行っていたが、本願チューブ1の使用により検査医単独でチューブの脱着ができるので、検査医が必要と認めた時いつでも送水できる。
【0024】
これらの洗浄中、洗浄水の流路内に存在する逆止部材5の作用により内視鏡30のスコープ挿入部31内に付着していた粘膜の一部や消化管内に生息していたピロリ菌などは確実に遮断される。したがって、タンク21内の液体が汚染されたり変質させられたりすることが一切ない。この洗浄の場合、内視鏡に結合したチューブ本体の端末にシリンジ(注射器)の先端を接続し、該シリンジの操作により洗浄水を送水していた場合において、看護師の介添えが少なくとも3人以上必要であったが、本洗浄方式によると多くても2人の介添えで済み、ドクター及び婦長からの評価の高いことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願チューブ1は、内視鏡使用後の洗浄のための送水、消化管内の鮮明な観察視野を確保するための送水、出血、止血部位の確認のための送水、送水機のタンク内を汚染させないために有効である。この場合において、内視鏡使用後の洗浄のための送水用としての本願チューブ1は非医療用具となるが、消化管内の鮮明な観察視野を確保するための送水や出血、止血部位の確認のための送水用として本願チューブ1は医療用具となることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願チューブの使用状態を示す略示的斜視図である。
【図2】本願チューブのチューブ本体の一部を省略した正面図である。
【図3】本願チューブに用いる逆止部材の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 本願チューブ
2 流入側コネクタ
3 流出側コネクタ
4 チューブ本体
4a 主部
4b 一部
4c 結合部
5 逆止部材
6 スカート部
6a チューブ連結部
7 ソケット部
7a チューブ連結部
8 弁体
9 スリット
20 送水機
21 タンク
22 吐出口
23 ポンプ
24 フットスイッチ
25 リード線
26 フック
30 内視鏡
31 スコープ挿入部
31′ スコープ挿入部の先端
32 鉗子孔
33 吸引口
34 送気・送水ボタン
35 吸引ボタン
36、36′ アングル操作ノブ
37 内視鏡の主装置
38a 照明用の光源装置
38b 画像モニタ
38c データ記録装置
39 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水機に結合するための流入側コネクタと、内視鏡に結合するための流出側コネクタとを備えたチューブ本体を設け、該チューブ本体と前記両コネクタの三者のうち少なくとも一つに、流入側コネクタから流出側コネクタへ向かう流れのみを許容する逆止部材を設置したことを特徴とする内視鏡用送水チューブ。
【請求項2】
前記チューブ本体の主部が柔軟素材で形成され、流出側コネクタ寄りの一部が硬質素材で湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用送水チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−25888(P2006−25888A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205331(P2004−205331)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000147785)フォルテ グロウ メディカル株式会社 (6)
【出願人】(504268663)有限会社コスマメディック (1)
【Fターム(参考)】