説明

内視鏡装置

【課題】光学アダプタの種類判別のために容易に実装可能な抵抗などの素子を用いる場合において、光学アダプタと先端部との接触抵抗が大きく変化しても確実に種類を判別することができ、更に、測定誤差が大きくなって、万が一種類判別を誤認識する可能性がある場合には、誤使用を防止することができる、内視鏡装置を提供する。
【解決手段】判別用抵抗24を備えた光学アダプタ22と、光学アダプタ22が先端部に着脱自在であり、光学アダプタ22が装着された状態において判別用抵抗24と直列に接続されるように配置された基準抵抗26と、基準抵抗26と直列接続された直流電源11と、判別用抵抗24と基準抵抗26との接続点Aの電圧値に基づき判別用抵抗24の容量を算出して光学アダプタ22の種類を判別する制御回路13とを備えた内視鏡23と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関し、特に、照明手段を備えた光学アダプタを挿入部の先端に装着して構成される内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体腔内に細長の挿入部を挿入することにより、体腔内臓器等を観察したり、必要に応じ処置具チャンネル内に挿通した処置具を用いて各種治療処置を行ったりすることができる内視鏡装置が広く利用されている。また、工業用分野においても、ボイラ、タービン、エンジン、化学プラント等の内部の傷、腐食等の観察、検査に工業用の内視鏡装置が広く用いられている。
【0003】
上述のように使用される内視鏡装置には挿入部の先端部に光学像を画像信号に光電変換するCCDなどの撮像素子を配設した電子内視鏡装置がある。この電子内視鏡装置では、前記撮像素子に結像した観察像の画像信号を画像処理部で映像信号に生成し、その映像信号をモニタに出力することによって画面上に内視鏡画像を表示させて観察を行える。
【0004】
そして、特に工業用の内視鏡装置では、検査箇所に応じた観察を行えるように複数種類の光学アダプタが用意されており、必要に応じて内視鏡装置の挿入部の先端部に着脱自在に装着できるようになっている。このように、複数種類の光学アダプタを用いる内視鏡装置では、光学アダプタに応じて駆動・制御などの仕様が変わるため、内視鏡装置に装着されている光学アダプタの種類を正確に判別することが重要になってくる。
【0005】
このような、交換式の光学アダプタを備えた内視鏡装置としては、例えば、光学アダプタの種類に応じた固有の制御情報を記憶させたEEPROMを、それぞれの光学アダプタに内蔵させておき、挿入部の先端部に光学アダプタが装着されると、内視鏡装置側でEEPROMに書き込まれている制御情報を読み出し、この制御情報に基づいて光学アダプタを制御する内視鏡装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
また、光学アダプタに内蔵されたRFIDタグに、光学アダプタの種類に応じた固有の制御情報を記憶させておき、挿入部の先端部に光学アダプタが装着されると、内視鏡装置側でRFIDタグに書き込まれている制御情報を読み出し、この制御情報に基づいて光学アダプタを制御する内視鏡装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)
更に、1kΩ、10kΩ、など容易に判別可能な抵抗を光学アダプタに実装し、内視鏡装置に光学アダプタが装着されると、この抵抗の値、もしくは外部抵抗と内視鏡本体内にある基準抵抗との分圧電圧を測定して光学アダプタの種類を判別し、制御する内視鏡装置も一般的に知られている。
【特許文献1】特開2006−212335号公報
【特許文献2】特開2006−191990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、交換式の光学アダプタは微小であり、かつ、照明用LED(または半導体レーザ)、照明光学系、及び対物光学系などが既に実装されているため、これらの提案のように、EEPROMやRFIDタグ、及びこれらを制御するための制御回路を更に実装することは物理的に困難であるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された提案においては、光学アダプタは非常に精密であり、また、工業用途で用いられる場合には、光学アダプタには樹脂を使用することができないため、一般的に樹脂が用いられているRFIDタグを光学アダプタに実装することは困難であるという問題があった。更に、特許文献2に記載された提案においては、RFIDタグから制御情報を受信するためのアンテナを、光学アダプタを対向する内視鏡の先端部に設ける必要があるが、内視鏡の先端部も光学アダプタ同様微小であり、かつ、樹脂を用いることができないため、アンテナを先端部に実装することは困難であるという問題があった。
【0008】
更に、抵抗値により光学アダプタの種類を判別して制御する内視鏡装置においては、内視鏡の先端部から光学アダプタ内の抵抗を測定するために、内視鏡の先端部と光学アダプタとを物理的に接続することが必要である。しかし、光学アダプタ内の抵抗だけでなく、先端部と光学アダプタとの接点同士が接触することによって生じる接触抵抗と、端子や接触バネの導向抵抗(以下、接触抵抗と導向抵抗とを合わせた抵抗を、接触抵抗と示す)が光学アダプタ内の抵抗に加算されて合成抵抗として測定される。接触抵抗は、内視鏡装置を使用していくうちに、油脂、サビ、汚れ、接点部分の削れなどによって変化するため、測定値(合成抵抗)も変化してしまう。(多くの場合、接触抵抗は増加する方向に変化する。)
このため、判別容易な抵抗値が光学アダプタ内に実装されていたとしても、接触抵抗の抵抗値の変化が大きくなり、光学アダプタ内に実装された抵抗値に対して測定値(合成抵抗)との差が大きくなってくると、別の光学アダプタであるように誤認識されてしまうという問題があった。(例えば、1kΩの抵抗を実装した光学アダプタを先端部に装着した場合、接触抵抗が5kΩであれば、合成抵抗は6kΩとなる。この場合、この合成抵抗と内視鏡本体内にある基準抵抗とを基に、内視鏡本体内で分圧電圧を測定することで、合成抵抗が6kΩであることが求められる。また、光学アダプタAの判断基準が500Ω〜2kΩで、光学アダプタBの判断基準が5kΩ〜20kΩであることの判断基準を内視鏡装置が有している場合、本来、光学アダプタAと認識すべきところを光学アダプタBと誤った判断をする可能性が考えられる。)
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、光学アダプタの種類判別のために容易に実装可能な抵抗などの素子を用いる場合において、光学アダプタと先端部との接触抵抗が大きく変化しても確実に種類を判別することができ、更に、測定誤差が大きくなって、万が一種類判別を誤認識する可能性がある場合には、誤使用を防止することができる、内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る内視鏡装置は、並列接続された第1の抵抗とスイッチ素子とを備えた光学アダプタと、前記光学アダプタが先端部に着脱自在であり、前記光学アダプタが装着された状態において前記第1の抵抗と直列に接続されるように配置された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された直流電源と、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点の電圧値に基づき前記第1の抵抗の値を算出して前記光学アダプタの種類を判別する制御部とを備えた内視鏡と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
光学アダプタの種類判別のために容易に実装可能な抵抗などの素子を用いる場合において、光学アダプタと先端部との接触抵抗が大きく変化しても確実に種類を判別することができ、更に、測定誤差が大きくなって、万が一種類判別を誤認識する可能性がある場合には、誤使用を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
まず、本発明の実施の形態の説明に先立って、本発明の参考となる例について説明する。
【0013】
本発明の参考例となる内視鏡装置1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の参考例に係わる内視鏡装置1の構成を説明する概略図である。
【0014】
本参考例における内視鏡装置1は、光学アダプタ2と、光学アダプタ2を装着可能な先端部を有する内視鏡3とを有する。光学アダプタ2は、光学アダプタ2の種類を内視鏡3側で判別するための、第1のコンデンサとしての判別用コンデンサ4と、照明用LED5と、図示しない対物光学系及び照明光学系とから主に構成されている。また、光学アダプタ2はコネクタ6a〜6dを有する。コネクタ6a〜6dと内視鏡3に設けられたコネクタ7a〜7dとがそれぞれ接続されることにより、光学アダプタ2が内視鏡3に装着される。
【0015】
コネクタ6a〜6d、7a〜7dには接触抵抗が存在する。この接触抵抗は、実際には特定の抵抗として光学アダプタ2内に実装されているものではないが、ここでは説明の便宜上、接触抵抗8、接触抵抗9として図1中に図示する。なお、接触抵抗8,9の値は、内視鏡装置を使用することにより、油脂類の付着、サビ、汚れ、接点部分の削れなどに起因して経時変化する。すなわち、接触抵抗8,9は、経時的に値が変動する。
【0016】
光学アダプタ2と内視鏡3とがコネクタ6a〜6d、7a〜7dによって接続されると、判別用コンデンサ4の一端は、コネクタ6a,7aを介し、内視鏡3に設けられた、第2のコンデンサとしての基準コンデンサ10の一端に接続される。なお、基準コンデンサ10の他端は、同じく内視鏡3に設けられた直流電源11に接続されている。また、判別用コンデンサ4の別の一端は、コネクタ6b,7bを介し、内視鏡3内からGNDに接地される。
【0017】
すなわち、基準コンデンサ10、接触抵抗8、判別用コンデンサ4、及び接触抵抗9は、直流電源11とGNDとの間に直列に接続されている。電源投入時の過渡期を除き、基準コンデンサ10と判別用コンデンサ4との接続点Aは、基準コンデンサ10と判別用コンデンサ4のそれぞれの容量に応じて、直流電源11から印加された直流電圧を分圧する。なお、直列接続されたコンデンサには直流電流が流れないため、接続点Aの電圧は接触抵抗8,9に影響されず、判別用コンデンサ4と基準コンデンサ10との容量比のみで決まる。
【0018】
判別用コンデンサ4と基準コンデンサ10との接続点Aには、更に、ADコンバータ12が接続されており、基準コンデンサ10と判別用コンデンサ4との分圧電圧である接続点Aの電圧値が、このADコンバータ12に入力されてデジタル化される。ADコンバータ12からの出力は、同じく内視鏡3内に設けられた、制御部としての制御回路13に入力される。制御回路13では、ADコンバータ12からの出力(=デジタル化された基準コンデンサ10と判別用コンデンサ4との分圧電圧)と、内視鏡3内の基準値(基準魂コンデンサ10)とを比較することで、光学アダプタ2の種類が判別される。制御回路13には、光学アダプタ2の照明用LED5も接続されており、判別した光学アダプタ2の種類に応じて照明用LED5に適切な電流が流れるよう制御を行う。
【0019】
例えば、内視鏡3に4種類の光学アダプタ2が装着可能な場合、基準コンデンサ10との容量比が、1:1、1:10、1:100、開放、となるような容量を有する4つのコンデンサを、判別用コンデンサ4としてそれぞれの光学アダプタ2内に実装しておく。一方、内視鏡3の制御回路13には、直流電源11から印加される電圧値に対するADコンバータ12から入力される電圧値の比と、光学アダプタ2との対応関係を初期設定しておく。
【0020】
この初期設定は、例えば次のようにして行われる。まず、制御回路13に対応関係が設定されていない状態において、内視鏡3に光学アダプタ2を装着すると、図2(a)に示すような画面15aが表示装置14に表示される。図2は、内視鏡3に装着する光学アダプタ2の初期設定時における表示装置14の画面の一例を説明する図である。ユーザが、表示装置14の画面15a、もしくは図示しない操作パネルなどを用いて、OKボタン16を選択すると、表示装置14には図2(b)に示すような画面15bが表示される。ユーザが、表示装置14の画面15a、もしくは図示しない操作パネルなどを用いて、アダプタリスト17に表示される4つの選択肢からAdapter Bを選択し、引き続きOKボタン18を選択すると、その時点で装着されている光学アダプタ2が、Adapter Bとして制御回路13に設定される。
【0021】
例えば、Adapter A,B,C,Dに、それぞれ、基準コンデンサ10との容量比が1:1、1:10、1:100、開放となる容量を有する判別用コンデンサ4が実装された光学アダプタ2を初期設定しておく。すると、内視鏡装置1を使用する際に、接続点Aの電圧値が直流電源11から印加される電圧値の9/10である場合、制御回路13では、Adapter B、すなわち、基準コンデンサ10との容量比が1:10の判別用コンデンサ4を有する光学アダプタ2が内視鏡3に接続されたと判別される。
【0022】
また、制御回路13は、この光学アダプタ2に実装されている照明用LED5の個数に応じた電流値を決定し、実際に照明用LED5に電流が流れるように制御する。制御回路13では、この他、装着された光学アダプタ2の種類に応じた各種処理や、種類に影響しない処理などの制御が行われる。
【0023】
更に、制御回路13には、内視鏡3内に設けられた表示装置14が接続されている。表示装置14には、内視鏡3内に設けられた図示しない撮像素子で撮像された画像や、制御回路13などによって制御された各種処理の結果などが表示される。
【0024】
なお、接続点Aの電圧値は接触抵抗8,9の値に影響されないが、油脂類の付着、サビ、汚れ、接点部分の削れなどによって接触抵抗8,9の値が非常に大きく変化した場合、接続点Aの電圧値を決定するまでに要する時間が長くなってしまう。限られた短い時間の中で光学アダプタ2の種類を判別しなくてはいけないため、このような状態においては、制御回路13では、過渡的な状態で分圧電圧を測定することになる。
【0025】
この場合、測定精度を保つことができなくなり、場合によっては光学アダプタ2の種類を誤認識する可能性があるため、例えば判別基準となる電圧値のプラスマイナス20%を超えた値が制御回路13に入力された場合、光学アダプタ2を自動的に判別するのではなく、ユーザに手動で光学アダプタ2の種類を選択させたり、検出した電圧値に対応するよう光学アダプタ2の種類を再設定させたりするよう、例えば、図3(a)に示すような警告の画面15cを表示装置14に表示させる。図3は、内視鏡3に装着する光学アダプタ2の再設定時における表示装置14の画面の一例を説明する図である。
【0026】
ユーザが、表示装置14の画面15c、もしくは図示しない操作パネルなどを用いて、OKボタン19を選択すると、表示装置14には図3(b)に示すような画面15dが表示される。ここで、OKボタン20aを選択した場合、制御回路13におけるAdapter Bの判別基準となる電圧値を、その時点の電圧値で上書きする。また、キャンセルボタン20bを選択した場合、光学アダプタ2と内視鏡3との接点を掃除した後、接続点Aの電圧値を再測定する。接点を掃除しても電圧値が判別基準となる電圧値のプラスマイナス20%を超えてしまう場合、再び図3(a)に示すような警告画面15cが表示される。このように、警告表示に従い、ユーザが光学アダプタ2の種類を選択・入力すると、入力された光学アダプタ2の種類に応じて制御回路13は各種制御を行う。
【0027】
このように、本参考例においては、抵抗などのインピーダンス素子でなく判別用コンデンサ4を光学アダプタ2に実装し、内視鏡3内の基準コンデンサ10と直列接続させて、接続点Aの分圧電圧を検出することによって光学アダプタ2を判別する。この分圧電圧は、光学アダプタ2と内視鏡3との接触抵抗8,9の影響を受けないため、確実に光学アダプタ2の種類を判別することができる。
【0028】
また、接触抵抗8,9の値が大きくなって、分圧電圧の値が一定に収束するまでに時間を要することにより、種類判別を誤認識する可能性がある場合には、ユーザに光学アダプタ2の種類を選択させるようにしたので、誤使用を防止することができる。また、ユーザが適切な種類を手動で選択することにより、確度の低い自動判別情報に基づく制御よりも、適切な制御を行うことができ、適切な光量で観察が容易に行えるようになる。
【0029】
更に、判別用コンデンサ4と基準コンデンサ10との比によって光学アダプタ2を判別するため、内視鏡3に装着する光学アダプタ2の種類が多くても、光学アダプタ2と内視鏡3とにそれぞれ検出用のコネクタ6a〜6d,7a〜7dを4つずつ設けるだけで適切な判別情報を得ることができ、装置が大型化されることを防ぐことができる。
【0030】
なお、本参考例においては、接触抵抗8,9の値が大きくなって光学アダプタ2の種類判別を誤認識する可能性がある場合、手動で種類を選択・入力するように表示装置14に警告を表示するようにしたが、制御回路13における自動判別を停止して手動に切り替えればよく、例えば、光学アダプタ2の交換を促すように表示してもよい。
【0031】
次に、本発明の一実施の形態に係わる内視鏡装置について、図4を用いて説明する。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態に係わる内視鏡装置21の構成を説明する概略図である。本実施の形態の内視鏡装置21の構成は、光学アダプタの種類判別のためのコンデンサを、インピーダンス素子(抵抗)及びスイッチ素子に置き換えた点を除き、図1を用いて説明した参考例の内視鏡装置1と同様であるため、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
本実施の形態の内視鏡装置21を構成する光学アダプタ22は、光学アダプタ22の種類を内視鏡23側で判別するための、第1の抵抗としての判別用抵抗24と、スイッチ素子25と、照明用LED5と、図示しない対物光学系及び照明光学系とから主に構成されている。また、光学アダプタ22はコネクタ6a〜6eを有する。判別用抵抗24と、スイッチ素子25とは、コネクタ6a,6bとの間に並列に接続されている。コネクタ6a〜6eと内視鏡23に設けられたコネクタ7a〜7eとがそれぞれ接続されることにより、光学アダプタ22が内視鏡23に装着される。
【0034】
光学アダプタ22と内視鏡23とがコネクタ6a〜6e、7a〜7eによって接続されると、判別用抵抗24及びスイッチ素子25の一端は、コネクタ6a,7aを介し、内視鏡23に設けられた、第2の抵抗としての基準抵抗26の一端に接続される。また、スイッチ素子25の制御端子は、コネクタ6e,7eを介し、内視鏡23内の制御回路13に接続される。なお、基準抵抗26の他端は、同じく内視鏡23に設けられた直流電源11に接続されている。また、判別用抵抗24及びスイッチ素子25の別の一端は、コネクタ6b,7bを介し、内視鏡3内からGNDに接地される。
【0035】
次に、本実施の形態における内視鏡装置21に関し、光学アダプタ22の判別方法を説明する。
【0036】
まず、内視鏡23に光学アダプタ22が装着されると、制御回路13からの制御信号に従い、スイッチ素子25が閉じられる。この状態で、接続点Aの電圧値Vaが測定され、ADコンバータ12でデジタル化された後、制御回路13に入力される。ここで、電圧値Vaは、基準抵抗26と、直列接続された接触抵抗8,9の合成抵抗との比に応じた分圧電圧であり、内視鏡23は、この電圧値Vaに応じて予め定めた光学アダプタ22の情報を有し、適切な光学アダプタ22を選択する。なお、内視鏡23の制御回路13へ光学アダプタ22の情報を初期設定する方法は、図2を用いて説明した参考例と同様にして行うことができる。
【0037】
次に、制御回路13からの制御信号に従い、スイッチ素子25が開放される。この状態で、接続点Aの電圧値Vbが測定され、ADコンバータ12でデジタル化された後、制御回路13に入力される。ここで、電圧値Vbは、基準抵抗26と、直列接続された接触抵抗8、判別用抵抗24、接触抵抗9の合成抵抗との比に応じた分圧電圧である。
【0038】
制御回路13では、電圧値Vaと電圧値Vbの両方が入力されると、これらの値と基準抵抗26の値を用いて判別用抵抗24の値が算出される。
【0039】
例えば、内視鏡23に4種類の光学アダプタ22が装着可能な場合、抵抗値が、1kΩ、10kΩ、100kΩ、開放、の4つの抵抗を、判別用抵抗24としてそれぞれの光学アダプタ22内に実装しておく。制御回路13では、上述の判別方法により算出された判別用抵抗24の値が800Ω以上2kΩ未満の場合、判別用抵抗24の抵抗値は1kΩであるとみなし、1kΩの判別用抵抗24を有する光学アダプタ22が内視鏡23に接続されたと判別される。
【0040】
同様に、上記の判別方法により算出された判別用抵抗24の値が、8kΩ以上20kΩ未満、80kΩ以上200kΩ未満、800kΩ以上の範囲にあるとき、それぞれ、判別用抵抗24の抵抗値が10kΩ、100kΩ、開放であるとみなし、これらの抵抗値を有する光学アダプタ22が内視鏡23に接続されたと判別される。
【0041】
なお、油脂類の付着、サビ、汚れ、接点部分の削れなどによって接触抵抗8,9の値が非常に大きく変化した場合、判別用抵抗24の計算精度が低くなってしまうため、場合によっては光学アダプタ22の種類を誤認識してしまう可能性がある。このため、上記の判別方法により算出された判別用抵抗24の値が、判別可能な範囲外にある場合、例えば、0Ω以上800Ω未満、2kΩ以上8kΩ未満、20kΩ以上80kΩ未満、200kΩ以上800kΩ未満のいずれかの範囲にあるときは、光学アダプタ22を自動的に判別するのではなく、ユーザに手動で光学アダプタ22の種類を選択させたり、合成抵抗に対応する光学アダプタ22の種類を再設定させたりするよう、図3を用いて説明した参考例の内視鏡装置1と同様に、表示装置14に警告を表示させる。警告表示に従い、ユーザが光学アダプタ22の種類を選択・入力すると、入力された光学アダプタ22の種類に応じて制御回路13は各種制御を行う。
【0042】
このように、本実施の形態においては、判別用抵抗24とスイッチ素子25とを並列接続して光学アダプタ2に実装し、内視鏡23内の基準抵抗26と直列接続させ、スイッチ素子25を閉じた状態での接続点Aの分圧電圧Vaと、スイッチ素子25を開いた状態での接続点Aの分圧電圧Vbと、基準抵抗26の値とを用いて光学アダプタ22を判別することにより、光学アダプタ22と内視鏡23との接触抵抗8,9の影響を排除することができるため、確実に光学アダプタ22の種類を判別することができる。
【0043】
また、接触抵抗8,9の値が大きくなって、判別用抵抗24の計算精度が低くなり、種類判別を誤認識する可能性がある場合には、ユーザに光学アダプタ22の種類を選択させるようにしたので、誤使用を防止することができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、警告手段として、LCDやCRTといった表示装置14に警告メッセージを表示する視覚的手段を用いたが、音声やブザーなどによる聴覚的手段を用いたり、同じく視覚的手段でも、アイコン,操作パネル,操作部,内視鏡23本体などの一部に表示させたり、LEDを点灯させたりしてもよい。
【0045】
以上の実施の形態から、次の付記項に記載の点に特徴がある。
【0046】
(付記項1)内視鏡と、前記内視鏡の先端に着脱可能に接続される光学アダプタとからなり、前記光学アダプタと前記内視鏡の内部に、それぞれ第1及び第2の容量素子を設け、前記第1の容量素子と、前記第2の容量素子とから、前記光学アダプタの種類判別を行うようにしたことを特徴とする内視鏡装置。
【0047】
(付記項2)内視鏡と、前記内視鏡の先端に着脱可能に接続される光学アダプタとからなり、前記光学アダプタには第1のインピーダンス素子とスイッチ素子との並列接続を有し、前記内視鏡の内部には、第2のインピーダンス素子を設け、前記第1及び第2のインピーダンス素子のインピーダンス比を前記スイッチ素子の開閉で複数回測定して前記光学アダプタの種類判別を行うようにした内視鏡装置。
【0048】
(付記項3)内視鏡と、前記内視鏡の先端に着脱可能に接続される光学アダプタとからなり、前記光学アダプタの種類判別を容量比またはインピーダンス比で行うようにした種類判別において、判別結果が事前に定めた範囲外になった場合に、使用者に対して警告を発生し、及び/叉は、適正な光学アダプタの選択を促すようにした内視鏡装置。
【0049】
(付記項4)第1のコンデンサを備えた光学アダプタと、前記光学アダプタが先端部に着脱自在な内視鏡とを有する内視鏡装置であって、前記内視鏡は、前記光学アダプタが装着された状態において前記第1のコンデンサと直列に接続されるように配置された第2のコンデンサと、前記第2のコンデンサと直列接続された直流電源と、前記第1のコンデンサと前記第2のコンデンサとの接続点の電圧値を判別基準電圧値と照合して前記光学アダプタの種類を判別する制御部とを備えており、前記判別基準電圧値は、観察に先立って、前記光学アダプタを前記内視鏡に装着した状態における前記接続点の電圧値を用いて初期設定することを特徴とする、内視鏡装置。
【0050】
(付記項5)前記制御部で算出された前記接続点の電圧値が予め決められた設定範囲に含まれない場合、前記判別基準電圧値を再度設定することが可能であることを特徴とする、付記項4に記載の内視鏡装置。
【0051】
(付記項6)並列接続された第1の抵抗とスイッチ素子とを備えた光学アダプタと、前記光学アダプタが先端部に着脱自在な内視鏡とを有する内視鏡装置であって、前記内視鏡は、前記光学アダプタが装着された状態において前記第1の抵抗と直列に接続されるように配置された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された直流電源と、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点の電圧値に基づき算出した抵抗値と判別基準抵抗値とを照合して前記光学アダプタの種類を判別する制御部とを備えており、前記判別基準抵抗値は、観察に先立って、前記光学アダプタを前記内視鏡に装着した状態における前記接続点の電圧値基づき算出した抵抗値を用いて初期設定することを特徴とする、内視鏡装置。
【0052】
(付記項7)前記制御部で算出された前記抵抗値が予め決められた設定範囲に含まれない場合、前記判別基準抵抗値を再度設定することが可能であることを特徴とする、付記項6に記載の内視鏡装置。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の参考例の内視鏡装置1の構成を説明する概略図。
【図2】内視鏡3に装着する光学アダプタ2の初期設定時における表示装置14の画面の一例を説明する図。
【図3】内視鏡3に装着する光学アダプタ2の再設定時における表示装置14の画面の一例を説明する図。
【図4】本発明の一実施の形態に係わる内視鏡装置21の構成を説明する概略図。
【符号の説明】
【0054】
21…内視鏡装置、22…光学アダプタ、23…内視鏡、24…判別用抵抗、26…基準抵抗、5…照明用LED、6a〜6d,7a〜7d…コネクタ、8,9…接触抵抗、11…直流電源、12…ADコンバータ、13…制御回路、14…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1の抵抗とスイッチ素子とを備えた光学アダプタと、
前記光学アダプタが先端部に着脱自在であり、前記光学アダプタが装着された状態において前記第1の抵抗と直列に接続されるように配置された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された直流電源と、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点の電圧値に基づき前記第1の抵抗の値を算出して前記光学アダプタの種類を判別する制御部とを備えた内視鏡と、
を有することを特徴とする、内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチ素子が閉じた状態における前記接続点の電圧値と、前記スイッチ素子が開いた状態における前記接続点の電圧値と、前記第2の抵抗の値とに基づき前記第1の抵抗の値を算出して前記光学アダプタの種類を判別することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記制御部で算出された第1の抵抗の値が予め決められた設定範囲に含まれない場合、前記制御部は、前記光学アダプタの種類の判別を中止することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記内視鏡は、前記制御部で算出された前記第1の抵抗の値が予め決められた設定範囲内に含まれないことを警告する警告手段を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記内視鏡は更に表示部を備え、前記制御部で算出された第1の抵抗の値が予め決められた設定範囲に含まれない場合、前記表示部にアラームが表示されることを特徴とする、請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記制御部で算出された前記第1の抵抗の値が予め決められた設定範囲に含まれない場合、前記光学アダプタの種類が設定可能であることを特徴とする、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−120879(P2012−120879A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54468(P2012−54468)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2007−25983(P2007−25983)の分割
【原出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】