説明

内部が放射性物質で汚染された装置又は設備の解体方法

【課題】内部が放射性物質で汚染された装置又は設備を経済的に解体する。
【解決手段】
先に解体される汚染装置又は設備(汚染グローブボックス)を解体用テント内の密封空間に収納して密封する(第1密封工程,S3〜S5)。次に、この密封空間で汚染装置等を解体し、解体物を密封空間に連通されたドラム缶に収納する(第1解体工程,S6)。そして、ドラム缶との連通部を塞いでドラム缶を切り離した後、使用済の解体用テントを潰して拡げる(平坦化工程,S7)。その後、拡げた使用済テントの上に、次に解体される汚染装置等を載せ(載置工程,S3)、上側テントによって、汚染装置等の上面及び側面を覆う(被覆工程,S4)。さらに、上側テントの開口部分を使用済テントに接合し、汚染装置等を密封する密封空間を新たに形成し(第2密封工程,S5)、この密封空間で汚染装置等を解体する(第2解体工程,S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部が放射性物質で汚染された装置又は設備の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プルトニウムの研究用大型グローブボックスを原位置(その場)で解体する場合、グリーンハウス(全体を覆う解体用テント)の中にグローブボックスを入れ、グリーンハウスの中に作業員が入って解体作業を行う。その際、放射性物質による作業者の汚染を抑えるため、作業員は外部から空気が送り込まれるエアラインスーツを着用する。このエアラインスーツは高価であるため、オーバースーツを着用するなどして放射性物質による汚染を避けている。さらに、放射線による人体への被ばくを避けるため、スーツ内には鉛のベストを着用するなどして対応している。
【0003】
ハウス内で作業員は、グローブボックスを切断する。この切断物は、ハウス内に連通されたドラム缶に収納されて廃棄される。このとき作業員は、10kgにも及ぶスーツやベスト等の衣類を着用した状態での作業を強いられる。そして、スーツの構造上汗を拭くことができず、過酷な環境での作業を余儀なくされる。また、スーツ等を脱ぐ際には補助者による補助を必要とし、スーツを脱ぐ毎に放射性物質による汚染の有無を測定しなければならない。このように、従来の解体作業は効率が悪く放射性廃棄物が大量に出るといった問題がある。
【0004】
ここで、引用文献1には、透明な柔軟性シートの袋状グローブバッグの内部に有害有機物収容機器を包み込み、袋状グローブバッグの外側から内部の有害有機物収容機器を解体する解体方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−200148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の大型グローブボックスのような、内部が放射性物質で汚染された装置又は設備(以下、汚染装置等ともいう)を解体するに際し、引用文献1に記載された解体方法を用いれば、エアラインスーツを着用しなくても汚染装置等の解体ができるとも考えられる。しかし、引用文献1の袋状グローブバッグで汚染装置等を解体しようとしても、解体手順に具体性が欠けているため実現が難しいし、袋状グローブバッグや解体用機器を、1台の汚染装置等を分解する毎に廃棄しなければならず不経済である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部が放射性物質で汚染された装置又は設備を経済的に解体することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、内部が放射性物質で汚染された装置又は設備の解体方法であって、先に解体される第1汚染装置又は設備を、透明性のある樹脂シート素材で作製された解体用テント内の密封空間に収納して密封する第1密封工程と、前記密封空間で前記第1汚染装置又は設備を解体し、解体物を前記密封空間に連通された放射性廃棄物用の収納容器に収納する第1解体工程と、前記収納容器との連通部を塞いで前記収納容器を切り離した後、前記解体用テントを潰して拡げる平坦化工程と、拡げた前記解体用テントの上に、次に解体される第2汚染装置又は設備を載せる載置工程と、前記解体用テント側の部位に開口を備え、透明性のある樹脂シート素材で作製された被覆用テントによって、前記第2汚染装置又は設備の上面及び側面を覆う被覆工程と、前記被覆用テントの開口部分を前記解体用テントに接合し、前記被覆用テントと前記解体用テントとで作製される新たな解体用テント内の密封空間に、前記第2汚染装置又は設備を収納して密封する第2密封工程と、前記密封空間で前記第2汚染装置又は設備を解体する第2解体工程と
を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1汚染装置又は設備を密封空間で解体し、第1汚染装置又は設備を解体した後の解体用テントと被覆用テントで形成される新たな解体用テント内の密封空間に、第2汚染装置又は設備を密封して解体するので、汚染グローブボックスを経済的に解体できる。
【0010】
前述の解体方法において、前記解体用テントが、前記第1汚染装置又は設備の底面を覆うと共に側面を底面側から覆い、側面を覆う部分に下側接合しろを設けた下側テントと、前記第1汚染装置又は設備の上面を覆うと共に側面を上面側から覆い、側面を覆う部分に上側接合しろを設けた上側テントとを備え、前記第1密封工程では、前記下側テントに前記第1汚染装置又は設備を載置した後に、前記上側テントを前記第1汚染装置又は設備に被せ、前記下側接合しろと前記上側接合しろとを接合することで、前記第1汚染装置又は設備を前記密封空間に収納して密封する場合、下側テントと上側テントとで第1汚染装置又は設備が覆われ、下側接合しろと上側接合しろとを接合することによって第1汚染装置又は設備が密封空間に収納及び密封されるので、第1汚染装置又は設備を容易に且つ確実に密封できる。
【0011】
前述の解体方法において、前記下側テントには、複数の前記下側接合しろが重畳した状態で設けられ、前記被覆用テントには、前記第1汚染装置又は設備の側面を覆う部分に上側接合しろが設けられ、前記第2密封工程では、前記第1密封工程で用いた下側接合しろよりも外側に位置する下側接合しろを、前記被覆用テントの上側接合しろに接合するようにした場合、被覆用テントを容易に且つ確実に解体用テントに接合できる。
【0012】
前述の解体方法において、前記下側接合しろに下側仮止め部材を、前記上側接合しろに上側仮止め部材をそれぞれ設け、前記第1密封工程では、前記下側接合しろと前記上側接合しろとの接合に先立って、前記下側仮止め部材と前記上側仮止め部材とを仮止めし、前記下側接合しろと前記上側接合しろを近接させた状態で保持するようにした場合、仮止めによって下側接合しろと上側接合しろとが近接されるので、下側接合しろと上側接合しろとを容易に接合できる。
【0013】
前述の解体方法において、前記下側接合しろに下側仮止め部材を、前記上側接合しろに上側仮止め部材をそれぞれ設け、前記第2密封工程では、前記下側接合しろと前記上側接合しろとの接合に先立って、前記下側仮止め部材と前記上側仮止め部材とを仮止めし、前記下側接合しろと前記上側接合しろを近接させた状態で保持するようにした場合、仮止めによって下側接合しろと上側接合しろとが近接されるので、下側接合しろと上側接合しろとを容易に接合できる。
【0014】
前述の解体方法において、前記下側仮止め部材及び前記上側仮止め部材を面ファスナーによって構成した場合、特別な工具を必要とせず、面ファスナー同士を押し付けるだけで容易に仮止めできる。
【0015】
前述の解体方法において、前記第1密封工程にて前記汚染装置又は設備を解体する解体装置を、前記解体用テント内の密封空間に収納して密封するようにした場合、第1汚染装置又は設備の解体に用いた解体装置を、第2汚染装置又は設備の解体にも用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部が放射性物質で汚染された装置又は設備を経済的に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】解体手順を説明するフローチャートである。
【図2】下側テントの載置作業を説明する図である。
【図3】載置状態の下側テントを説明する図である。
【図4】載置状態の切断装置を説明する図である。
【図5】汚染グローブボックスの載置作業を説明する図である。
【図6】載置状態の汚染グローブボックスを説明する図である。
【図7】上側テントを説明する斜視図である。
【図8】上側テントを下側テントに接合した状態を説明する図である。
【図9】使用済テントを潰した状態を説明する図である。
【図10】次に解体する汚染グローブボックスの載置作業を説明する図である。
【図11】上側テントを下側テントに接合した状態を説明する図である。
【図12】使用済テントを切除した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の解体作業では、図1のフローチャートに示すように、内部が放射性物質で汚染された1台目の汚染グローブボックス(第1汚染グローブボックス)を解体装置とともに下側テントと上側テントで構成される解体用テント内の密封空間に収納し(S1〜S5)、この密封空間で1台目の汚染グローブボックスを解体する(S6)。
【0019】
解体したグローブボックスを収納容器に収納したならば、使用済テント(1台目の汚染グローブボックスの解体に用いられた解体用テント)を潰して拡げ(S7)、2台目の汚染グローブボックス(第2汚染グローブボックス)を使用済テントの上に載置する(S3)。そして、上側テントを汚染グローブボックスに被せ(S4)、上側テントの開口部分を使用済テントにおける下側テントに接合する(S5)。これにより、汚染グローブボックスが上側テントと下側テントによって形成される新たな解体用テント内の密封空間に収納される。そして、使用済テントを切除し、解体装置を露出させて使用可能な状態とし(S9)、2台目の汚染グローブボックスを解体する(S6)。
【0020】
なお、3台目以降のグローブボックスについては、2台目のグローブボックスと同様の手順で解体作業が行われ、最後のグローブボックスの解体が終了したならば(S6,S10)、解体装置や解体フレーム等の機材を解体し、搬出する(S11)。
【0021】
以下、解体作業について詳細に説明する。
【0022】
この解体作業では、図2に示すように、下側テント10を解体フレーム20に載置する(S1)。下側テント10は、長方形シート状の本体部分11と、本体部分11の各片から外側に向けて設けられた幅広舌片状の接合しろ12(下側接合しろ)とを有している。
この下側テント10は、放射性物質の漏洩を防止可能な素材で作製されたシートによって構成されている。例えば、透明或いは半透明の繊維強化ビニールシート(すなわち内部が視認可能な樹脂シート素材)によって構成されている。接合しろ12は、複数枚(図では4枚)が重畳された状態で設けられている。また、各接合しろ12の表面には、仮止め用の面ファスナー13(下側仮止め部材)が取り付けられている。
【0023】
なお、後述するように、この下側テント10には、切断装置30(図4を参照)や汚染グローブボックス40(図5を参照)が載置される。放射能を有する重量物を載置するため、下側テント10は多重構造とされていることが好ましい。例えば、接合しろ12が4枚重畳されていることから、4枚の繊維強化ビニールシートを重ねて本体部分11を接合することで、下側テント10を4重構造としてもよい。このように下側テント10を多重構造とすることで、放射性物質の漏えいを確実に防止できる。
【0024】
また、解体フレーム20は、鋼製床21と、フレーム部材22と、脚部23とを有している。鋼製床21は、長方形状の鋼板によって構成されている。鋼板の厚さは、切断装置30や汚染グローブボックス40を載置しても撓まない程度の厚さとされている。フレーム部材22は、鋼製床21の上面に設けられた直方体状の枠体であり、鋼製床21の四隅から立設された縦枠22aと、鋼製床21の各辺に沿って設けられ、隣り合う縦枠22aの上端同士を連結する横枠22bとを有する。なお、横枠22bは、鋼製床21の各短辺に沿って2本、各長辺に沿って2本の合計4本設けられている。そして、4本ある横枠22bのそれぞれが、個別に取り外し可能な状態に取り付けられている。脚部23は、鋼製床21の下面に設けられ、解体作業時における振動の室内への伝達を低減するため、防振性のゴム素材によって作製されている。
【0025】
下側テント10の本体部分11は、鋼製床21よりも一回り小さな長方形状に構成されている。そして、下側テント10を解体フレーム20に載置するに際しては、本体部分11の各長辺が鋼製床21の各長辺に、本体部分11の各短辺が鋼製床21の各短辺にそれぞれ平行となるように配置される。また、図3に示すように、本体部分11における各辺の中央と鋼製床21における各辺の中央とが略一致するように、下側テント10は鋼製床21の上面に載置される。
【0026】
下側テント10を載置したならば、図4に示すように、下側テント10の上に切断装置30を載置する(S2)。この切断装置30は、汚染グローブボックス40を解体するための解体装置に相当し、基盤31と、作業台32と、レール33と、可動式フレーム34と、切断工具35とを備えている。
【0027】
基盤31は、解体装置を支える部分であり、下側テント10の本体部分11と略同じ大きさの長方形状鋼板によって作成されている。
【0028】
作業台32は、解体対象となる汚染グローブボックス40が載置される台である。本実施形態の作業台32は、鋼製の直方体状の箱体によって構成されており、基盤31の上面に取り付けられている。
【0029】
レール33は、可動式フレーム34を水平方向へ移動させるための部材である。本実施形態では、基盤31の上面にてこの基盤31の長辺に沿って一対のレール33が設けられている。
【0030】
可動式フレーム34は切断工具35が取り付けられる部分であり、本実施形態では棒状部材を下向きコ字状に接合することで構成されている。便宜上、上下方向に設けられている棒状部材を縦フレーム34aといい、水平方向に設けられている棒状部材を横フレーム34bという。そして、各縦フレーム34aの下端部分には、レール33の上を走行するための車輪(図示せず)が設けられている。この可動式フレーム34は、モータ(図示せず)を動力として或いは人力でレール33の上を走行する。
【0031】
切断工具35は、汚染グローブボックス40を切断するための工具であり、例えば電動ノコギリによって構成されている。本実施形態において、切断工具35は、可動式フレーム34の各フレーム34a,34bに対して移動可能な状態で取り付けられている。すなわち、縦フレーム34aと横フレーム34bのそれぞれに、合計3個取り付けられている。そして、切断工具35が有する切断用の歯は、汚染グローブボックス40にまで達する長さに設けられている。このため、各切断工具35を動作させつつ各フレーム34a,34bに沿って移動させることで、汚染グローブボックス40を切断できる。
【0032】
なお、切断装置30を下側テント10の上に載置する場合、解体フレーム20が有する4本の横枠22bのうち1本を外し、クレーンで吊られた切断装置30を外した横枠22aの方向から搬入する。そして、基盤31が下側テント10の本体部分11とちょうど重なるように、切断装置30が位置決めされる。
【0033】
切断装置30を載置したならば、切断装置30の作業台32に1台目の汚染グローブボックス40を載置する(S3)。この汚染グローブボックス40に関し、その内部には放射性物質が残っているが、この放射性物質は外部に放出されない。このため、図5に示すように、汚染グローブボックス40は、ワイヤーWRが掛けられた状態でクレーンCRによって吊られ、作業台32に載置される。このとき、解体フレーム20が有する4本の横枠22bのうち1本を外し、汚染グローブボックス40をその横枠22bの方向から搬入する。また、汚染グローブボックス40の長手方向が作業台32の長辺方向となるように、汚染グローブボックス40の向きを定める。そして、図5や図6に示すように、汚染グローブボックス40の底面中心を作業台32の上面中心にあわせる。これにより、作業台32に載置された状態で、汚染グローブボックス40を安定化させることができる。なお、この載置工程において、汚染グローブボックス40を搬送台車に載せて切断装置30へ移してもよい。
【0034】
汚染グローブボックス40を載置したならば、この汚染グローブボックス40を上側テントで覆う(S4)。図7に示すように、上側テント50は、下側テント10と対向する面に開口を有する直方体状をしており、側面には作業者の手や腕が挿入される複数のグローブ51が内側に向けて突設されている。この上側テント50もまた、放射性物質の漏洩を防止できる樹脂からなるシートによって作製されている。例えば、下側テント10と同じ素材である透明或いは半透明の繊維強化ビニールシートによって構成されている。そして、上側テント50の開口部には、接合しろ52(上側接合しろ)が下方に向けて設けられている。この接合しろ52は、下側テント10が有する接合しろ12(下側接合しろ)と溶着等によって接合される幅広舌片状の部分であり、4つの辺のそれぞれに設けられている。そして、各接合しろ52には面ファスナー53(上側仮止め部材)が設けられている。
【0035】
なお、放射性物質の漏えい防止の観点から、この上側テント50もまた多重構造をしている。具体的には、繊維強化ビニールシートを2枚重ねた状態で用いている。このため、接合しろ52も2枚が重なった状態で設けられ、それぞれに面ファスナー53が設けられる。
【0036】
上側テント50は、上方から汚染グローブボックス40に被せられる。これにより、上側テント50の上面部分が汚染グローブボックス40の上面を覆い、上側テント50の側面部分が汚染グローブボックス40の側面を上面側から覆う。そして、上側テント50の上面部分は、解体フレーム20の横枠22bに紐24やフックによって係止される(図8を参照)。
【0037】
汚染グローブボックス40を上側テント50で覆ったならば、上側テント50を接合する(S5)。ここでは、図8に示すように、上側テント50の接合しろ52を下側テント10の接合しろ12に接合する。なお、本実施形態では、各接合しろ12,52の溶着に先立って、面ファスナー13,53同士を押し付けることで仮止めをしている。
【0038】
この仮止めにより、下側テント10が汚染グローブボックス40の底面を覆うと共に側面を底面側から覆った状態になり、下側テント10の接合しろ12と上側テント50の接合しろ52とが近接状態で保持される。このため、接合しろ12,52同士を接合する際の作業性を向上させることができる。また、仮止め用の部材として面ファスナー13,53を用いているので、特別な工具を必要とせず、面ファスナー13,53同士を押し付けるだけで容易に仮止めができる。
【0039】
仮止めが終わったならば、上側テント50の接合しろ52を下側テント10の接合しろ12に溶着する。例えば、両接合しろ12,52を重ねた状態でヒータや超音波溶着器を接合部分にあてて加熱する。これにより、溶着部分が気密状態で接合される。この溶着作業を1周分行うことで、上側テント50と下側テント10(具体的には、本体部分11と接合しろ12)とが形成する密封空間に汚染グローブボックス40が収納される。すなわち、解体用テントが有する密封空間に汚染グローブボックス40が収納される。
【0040】
なお、本実施形態において、上側テント50は二重構造をしている。このため、溶着作業も内側の接合しろ12,52同士と外側の接合しろ12,52同士のそれぞれについて行われる。また、上側テント50の上面には、HEPAフィルタを介して換気装置61が取り付けられている。そして、換気装置61によって、密封空間が大気圧よりも多少低い気圧に維持される。さらに、上側テント50における長辺側の側面には、連通チューブ62を介してドラム缶63(廃棄物収納容器)が接続されている。
【0041】
密封空間に汚染グローブボックス40が密封されたならば、この汚染グローブボックス40を解体して搬出する(S6)。図8(b)に示すように、上側テント50の側面にはグローブ51が設けられているので、解体作業者は、グローブ51に腕や手を挿入して切断装置30を操作し、汚染グローブボックス40を切断する。切断部分は、連通チューブ62を通じてドラム缶63に収納される。なお、このドラム缶63が一杯になったら、新たなドラム缶63に付け替えられる。そして、汚染グローブボックス40の切断と搬出とが繰り返し行われ、汚染グローブボックス40の切断部分が全てドラム缶63に収納されたならば、溶着等によって連通チューブ62を途中で塞ぎ、ドラム缶63を解体用テントから切り離して、この解体搬出工程を終了する。
【0042】
切断部分の搬出に関し、解体用テントにおける側面の一部を外側へ向かって靴下状に屈曲させて設け、この靴下状の部分をドラム缶63の中に入れ、切断部分で一杯になったら融着等で先端側の部分(切断片)を密封状態で切断するようにしてもよい。
【0043】
このようにして1台目の汚染グローブボックス40の解体処理を行ったならば、2台目の汚染グローブボックス40について解体処理を行う(S10)。この場合、使用済テント(1台目の汚染グローブボックス40の解体処理に用いた解体用テント)を潰して拡げる(S7)。
【0044】
使用済テントを潰す際、使用済テントから換気装置61を取り外す。ここでは、使用済テントにおける換気装置61の周辺部分を重ね合わせて溶着することで切断部を形成する。この切断部は、密封空間側の溶着部と換気装置61側の溶着部とを、切断予定線の分だけ間隔を空けて形成することで設けられる。そして、溶着部同士の間を切断予定線に沿って切断することで、換気装置61が使用済テントから取り外される。これにより、例えば図9に示すように、使用済テントXは切断装置30の表面形状に倣って拡がった状態になる。なお、次の載置工程のため、作業台32の上面については、使用済テントXが上面の形状に倣って平坦となるように拡げる。
【0045】
使用済テントXを拡げたならば、図10に示すように、拡げた使用済テントXに重ねて2台目の汚染グローブボックス40を作業台32に載置する(S3)。この場合、切断装置30の可動式フレーム34を可動範囲における端部に退避させて、汚染グローブボックス40の載置場所を確保する。そして、解体フレーム20が有する4本の横枠22bのうち1本を外し、クレーンCRで吊られた汚染グローブボックス40を搬入する。また、汚染グローブボックス40の長手方向が作業台32の長辺方向となるように、汚染グローブボックス40の向きを定める。なお、この載置工程においても、2台目の汚染グローブボックス40を搬送台車に載せて切断装置30へ移してもよい。
【0046】
汚染グローブボックス40を載置したならば、この汚染グローブボックス40を図7の上側テント50(被覆用テント)で覆い、上側テント50と予め敷設しておいた下側テント10(すなわち使用済テントXの下側テント10)とを接合する(S4,S5)。本実施形態では、前述したように下側テント10に接合しろ12を4枚重ねた状態で設けている。このため、図11に示すように、上側テント50の接合しろ52と下側テント10の外側に設けられた未使用の接合しろ12とを溶着することで上側テント50と下側テント10とを接合でき、汚染グローブボックス40を、新たに形成される密封空間に収納できる。すなわち、使用済テントXの下側テント10と上側テント50とによって新たな解体用テントを作製し、汚染グローブボックス40を解体用テントが有する密封空間に収納している。なお、接合しろ12,52同士が完全に接合される前に、カッターやハサミといった切断具を内部空間に収納しておく。この切断具は使用済テントXを切除するときに用いられる。また、換気装置61を上側テント50の上面に接続する。
【0047】
また、接合しろ12,52同士の接合時においても、面ファスナー13,53によって仮止めを行う。これにより、それぞれの接合しろ12,52を近接した状態で保持できるため、接合しろ12,52同士を容易に溶着できる。
【0048】
汚染グローブボックス40を密封空間に収納したならば、図12に示すように、使用済テントXの余剰部分を切除する(S8,S9)。この切除は、密封空間に収納された切断具を用いて行う。すなわち、上側テント50に設けたグローブ51を介して密封空間内の切断具をテント外側から掴み、掴んだ切断具によって余剰部分を切断する。例えば、使用済テントXを作業台32の上面に沿って切断したり、可動式フレーム34に沿って切断したりして切断装置30を露出させる。そして、切除された余剰部分をドラム缶63に収納する。
【0049】
なお、使用済テントXの内部は、先に解体した汚染グローブボックス40の放射性物質によって汚染されている。このため、使用済テントXを切断することで内部から放射性物質が放出されるが、前述したように新たな解体用テントには密封空間が形成されている。従って、放射性物質はこの密封空間内に留まり、外部への漏出を防止できる。
【0050】
使用済テントXの余剰部分を切除して切断装置30を露出させたならば、密封された汚染グローブボックス40を解体して搬出する(S6)。ここでの手順は、1台目の汚染グローブボックス40の解体時と同様である。すなわち、解体作業者は、グローブ51に腕や手を挿入して切断装置30を操作し、汚染グローブボックス40を切断する。そして、切断部分を、連通チューブ62を通じてドラム缶63に収納する。
【0051】
3台目以降の汚染グローブボックス40については、2台目の汚染グローブボックス40と同様の手順で解体される(S10)。すなわち、使用済テントX(先の汚染グローブボックス40の解体処理に用いた解体用テント)を潰して拡げ(S7)、作業台32の上面で平坦とされた部分に新たな汚染グローブボックス40を載置する(S3)。その後、新たな上側テント50で覆って密封空間に収納し(S4,S5)、使用済テントXを切除して切断装置30を露出させる(S8,S9)。さらに、切断装置30を用いて汚染グローブボックス40を解体し、解体部分を搬出する(S6)。
【0052】
ところで、本実施形態において、下側テント10には4枚の接合しろ12を設けている。このため、2台目の汚染グローブボックス40を分解する際に全部の接合しろ12が使われることになる。そこで、3台目以降の汚染グローブボックス40を分解する際には、既存の下側テント10(使用済テントXの下側テント10)に対して新たに接合しろ12を溶着し、この接合しろ12を用いて解体作業を行う。
【0053】
なお、2台目以降の汚染グローブボックス40に関し、解体が終了すると作業台32の上には、作業台32と汚染グローブボックス40の底面とに挟まれていた使用済テントXの一部が残る。この部分については、新たな汚染グローブボックス40を載置する前に取り除き、解体された汚染グローブボックス40と共にドラム缶63へ収納することが好ましい。
【0054】
そして、全ての汚染グローブボックス40について解体作業が終了したならば(S10)、解体フレーム20、切断装置30、及び、切断具といった機材を適宜解体し、ドラム缶63へ収納して搬出する(S11)。
【0055】
<まとめ>
以上説明したように本実施形態の解体方法では、まず、先に解体される汚染グローブボックス40(第1グローブボックス)を、透明性のある樹脂シート素材で作製された解体用テントが有する密封空間に収納する(第1密封工程,S3〜S5)。次に、この密封空間で汚染グローブボックス40を解体し、解体物を密封空間に連通されたドラム缶63(放射性廃棄物用の収納容器)に収納する(第1解体工程,S6)。そして、ドラム缶63との連通部(連通チューブ62)を塞いでドラム缶63を切り離した後、使用済テントXを潰して拡げる(平坦化工程,S7)。
【0056】
その後、拡げた使用済テントXの上に、次に解体される汚染グローブボックス40(第2グローブボックス)を載せ(載置工程,S3)、使用済テントX側に開口を備えた直方体状の繊維強化ビニール製上側テント50(被覆用テント)によって、汚染グローブボックス40の上面及び側面を覆う(被覆工程,S4)。さらに、上側テント50の開口部分を下側テント10に接合し、上側テント50と下側テント10とによって新たな解体用テントを作製し、新たな解体用テント内の密封空間に汚染グローブボックス40を収納し(第2密封工程,S5)、この密封空間で前記汚染グローブボックス40を解体する(第2解体工程,S6)。
【0057】
このように、本実施形態では、予め敷設しておいた下側テント10(使用済テントXの下側テント10)と新たな上側テント50によって新たな解体用テントを作製し、後の汚染グローブボックス40を新たな解体用テントが有する密封空間に収納している。このため、複数台の汚染グローブボックス40を解体するに際しては、新たな上側テント50を追加すればよく、複数台の汚染グローブボックス40を経済的に解体できる。
【0058】
また、本実施形態の解体用テントは、汚染グローブボックス40の底面を覆うと共に側面を底面側から覆い、側面を覆う部分に下側接合しろ12を設けた下側テント10と、汚染グローブボックス40の上面を覆うと共に側面を上面側から覆い、側面を覆う部分に上側接合しろ52を設けた上側テント50とから構成されている。
【0059】
そして、初回の分解作業時には、下側テント10に1台目の汚染グローブボックス40を載置した後、上側テント50をこの汚染グローブボックス40に被せ、下側接合しろ12と上側接合しろ52とを接合することで、汚染グローブボックス40を密封空間に収納して密封している。
【0060】
このように、汚染グローブボックス40が下側テント10と上側テント50とで覆われ、下側接合しろ12と上側接合しろ52とを接合することで、汚染グローブボックス40の収納と密封とが行われるため、汚染グローブボックス40を容易に且つ確実に密封できる。
【0061】
また、本実施形態の下側テント10には、複数枚の下側接合しろ12が重畳した状態で設けられている。一方、2台目の解体に用いる上側テント50の下端部には、上側接合しろ52が設けられている。そして、2台目の汚染グローブボックス40を密封する場合、1台目の汚染グローブボックス40を密封する際に用いた下側接合しろ12よりも外側に位置する下側接合しろ12を、上側接合しろ52に接合している。これにより、予め準備された下側接合しろ12に上側接合しろ52を接合すればよいので、上側テント50を容易に且つ確実に使用済テントXに接合できる。
【0062】
また、本実施形態では、下側接合しろ12と上側接合しろ52のそれぞれに、面ファスナー13,53で構成された仮止め部材(下側仮止め部材,上側仮止め部材)が設けられている。そして、1台目及び2台目の汚染グローブボックス40を密封する際、下側接合しろ12と上側接合しろ52との接合に先立って、下側仮止め部材と上側仮止め部材とを仮止めし、下側接合しろ12と上側接合しろ52を近接させた状態で保持しているので、下側接合しろ12と上側接合しろ52を容易に溶着できる。
【0063】
また、本実施形態では、1台目の汚染グローブボックス40を密封する際に、切断装置30(グローブボックス解体装置)も解体用テント内の密封空間に収納して密封している。このため、1台目の汚染グローブボックス40の解体に用いた切断装置30を、2台目以降の汚染グローブボックス40の解体にも用いることができ、経済的である。
【0064】
===その他の実施形態===
ところで、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、次のように構成してもよい。
【0065】
グローブボックス解体装置に関し、前述の実施形態では切断装置30を例示したが、他の解体装置であってもよい。例えば、汚染グローブボックス40の内部まで切断可能な切断装置30であってもよいし、チェーンソーであってもよい。また、電動工具に限らず、解体用ハサミといった手動で動作するものであってもよい。
【0066】
仮止め部材に関し、前述の実施形態では面ファスナー13,53を例示したが、これに限定されない。例えば、ボタンであってもよいし、フックであってもよい。
【0067】
上記の実施形態では接合しろ12,52を用いて下側テント10と上側テント50を接合していたが、接合しろ12,52を設けずに下側テント10と上側テント50を接合して密封してもよい。この場合、2台目以降の汚染グローブボックス40を解体するに際しては、上側テント50の下端開口部分を使用済テントXに接合すれば足りる。
【0068】
そして、密封時の接合手段に関し、前述の実施形態では溶着を例示したが、これに限定されない。例えば、接着剤を用いてもよい。
【0069】
下側テント10及び上側テント50に関し、前述の実施形態では、内部が視認可能な繊維強化ビニールシートを二重にしたものを用いていたが、これに限定されない。内部が視認可能であって放射性物質の漏洩を防止でき、切断具によって切断できるシート状の樹脂であればよい。
【0070】
さらに、上記の実施形態では、汚染グローブボックスを解体する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、汚染グローブボックス以外の、内部が放射性物質により汚染された他の装置又は設備を解体する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
10 下側テント
11 本体部分
12 接合しろ
13 面ファスナー
20 解体フレーム
21 鋼製床
22 フレーム部材(22a 縦枠,22b 横枠)
23 脚部
24 紐
30 切断装置
31 基盤
32 作業台
33 レール
34 可動式フレーム
35 切断工具(34a 縦フレーム,34b 横フレーム)
40 汚染グローブボックス
50 上側テント
51 グローブ
52 接合しろ
53 面ファスナー
61 換気装置
62 連通チューブ
63 ドラム缶
X 使用済テント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が放射性物質で汚染された装置又は設備の解体方法であって、
先に解体される第1汚染装置又は設備を、透明性のある樹脂シート素材で作製された解体用テント内の密封空間に収納して密封する第1密封工程と、
前記密封空間で前記第1汚染装置又は設備を解体し、解体物を前記密封空間に連通された放射性廃棄物用の収納容器に収納する第1解体工程と、
前記収納容器との連通部を塞いで前記収納容器を切り離した後、前記解体用テントを潰して拡げる平坦化工程と、
拡げた前記解体用テントの上に、次に解体される第2汚染装置又は設備を載せる載置工程と、
前記解体用テント側の部位に開口を備え、透明性のある樹脂シート素材で作製された被覆用テントによって、前記第2汚染装置又は設備の上面及び側面を覆う被覆工程と、
前記被覆用テントの開口部分を前記解体用テントに接合し、前記被覆用テントと前記解体用テントとで作製される新たな解体用テント内の密封空間に、前記第2汚染装置又は設備を収納して密封する第2密封工程と、
前記密封空間で前記第2汚染装置又は設備を解体する第2解体工程と
を行うことを特徴とする解体方法。
【請求項2】
前記解体用テントは、
前記第1汚染装置又は設備の底面を覆うと共に側面を底面側から覆い、側面を覆う部分に下側接合しろを設けた下側テントと、
前記第1汚染装置又は設備の上面を覆うと共に側面を上面側から覆い、側面を覆う部分に上側接合しろを設けた上側テントとを備え、
前記第1密封工程では、
前記下側テントに前記第1汚染装置又は設備を載置した後に、前記上側テントを前記第1汚染装置又は設備に被せ、前記下側接合しろと前記上側接合しろとを接合することで、前記第1汚染装置又は設備を前記密封空間に収納して密封することを特徴とする請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
前記下側テントには、
複数の前記下側接合しろが重畳した状態で設けられ、
前記被覆用テントには、
前記第1汚染装置又は設備の側面を覆う部分に上側接合しろが設けられ、
前記第2密封工程では、
前記第1密封工程で用いた下側接合しろよりも外側に位置する下側接合しろを、前記被覆用テントの上側接合しろに接合することを特徴とする請求項2に記載の解体方法。
【請求項4】
前記下側接合しろに下側仮止め部材を、前記上側接合しろに上側仮止め部材をそれぞれ設け、
前記第1密封工程では、
前記下側接合しろと前記上側接合しろとの接合に先立って、前記下側仮止め部材と前記上側仮止め部材とを仮止めし、前記下側接合しろと前記上側接合しろを近接させた状態で保持することを特徴とする請求項2又は3に記載の解体方法。
【請求項5】
前記下側接合しろに下側仮止め部材を、前記上側接合しろに上側仮止め部材をそれぞれ設け、
前記第2密封工程では、
前記下側接合しろと前記上側接合しろとの接合に先立って、前記下側仮止め部材と前記上側仮止め部材とを仮止めし、前記下側接合しろと前記上側接合しろを近接させた状態で保持することを特徴とする請求項3に記載の解体方法。
【請求項6】
前記下側仮止め部材及び前記上側仮止め部材は、面ファスナーによって構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の解体方法。
【請求項7】
前記第1密封工程では、
前記汚染装置又は設備を解体する解体装置を、前記解体用テント内の密封空間に収納して密封することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−232160(P2011−232160A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102371(P2010−102371)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)